説明

コンクリート構造物の非破壊検査装置及びコンクリート構造物の非破壊検査方法

【課題】
構造物内部の鉄筋や鉄骨等の金属体を一様に加熱し、浮き、剥離の位置又は鉄筋や鉄骨等の金属体の腐食状態等について高い精度で検査することができるコンクリート構造物の非破壊検査装置及び非破壊検査方法の提供。
【解決手段】
コンクリート構造物10内の鉄筋や鉄骨等の金属体12,12を加熱する加熱機と、コンクリート構造物表面の温度を測定し、それを画像化することによりコンクリート構造物10の状態を検知できるサーモグラフィ装置とを備えたコンクリート構造物の非破壊検査装置11において、加熱機は、渦電流により金属体12を加熱する誘導加熱コイル16と、誘導加熱コイル16に高周波交流電流を供給するインバータ装置17とを有し、誘導加熱コイル16を移動手段20によりコンクリート構造物表面に沿って移動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にRC鉄筋コンクリート構造物等の内部に鉄筋構造を有するコンクリート構造物の検査を行う為のコンクリート構造物の非破壊検査装置及びコンクリート構造物の非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛来塩分の浸透や海砂の使用、中性化の進行等によりコンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体が腐食した場合、その構造物の耐荷・耐久性能の低下を招き、また、鉄筋等に腐食が発生すること等により鉄筋の断面積が膨張し、かぶりコンクリート部分の浮きや剥離等が発生する原因にもなるので、このような鉄筋等の腐食が生じた場合には速やかに対処することが求められる。
【0003】
しかし、このようなコンクリート構造物は、外観からその状態を検知することができない為、コンクリート構造物を検査する方法として、例えば、赤外線サーモグラフィ装置を使用したコンクリート構造物の非破壊検査方法が利用されている。
【0004】
この赤外線サーモグラフィ装置を用いた検査方法は、空洞や浮き等が生じた箇所では熱伝導率が変化し、それによってその部分と他の部分との間に温度差が生じることを利用しており、コンクリート構造物表面の表面温度分布を測定し、それを画像処理することにより、視覚的にコンクリート構造物に生じた空洞や浮き・剥離等の有無及びその位置を検知できるようになっている。
【0005】
尚、この赤外線サーモグラフィ装置を用いた検査方法においては、日射熱を利用するのが一般的であるが、トンネル坑口付近や橋台等の日射熱の影響を受け難い場所では、ヒータやハロゲンランプ等によりコンクリート構造物を人工的に加熱するようにしている。
【0006】
しかし、この赤外線サーモグラフィ装置を用いた検査方法では、コンクリート構造物内に生じた空洞や浮き、剥離等の有無及びその位置を検知することはできるが、コンクリート構造物内の鉄筋の位置やその腐食状態等を検知することはできなかった。
【0007】
また、人工的にコンクリート構造物を加熱する場合、ヒータやハロゲンランプ等による加熱では、コンクリート構造物全体を広範囲に加熱することが困難であるという問題があった。
【0008】
一方、鉄筋等の金属体の腐食に関する検査方法には、鉄筋に電極を設置しその鉄筋の自然電位を測定することにより検査する自然電位法が知られているが、この方法では、鉄筋や鉄骨等の金属体に電極を設置する必要がある為、コンクリート構造体の一部を斫る必要があるという問題があり、また、かぶりコンクリートの塩分含有量や温度などにより測定精度に影響を受け易いという問題があった。
【0009】
そこで、上述の如き問題を解決すべく新しい検査方法が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0010】
この検査方法では、コンクリート構造物内に縦横に配置された複数の鉄筋等の金属体を加熱することによりコンクリート構造物全体を加熱し、そのコンクリート構造体の表面温度分布をサーモグラフィ装置により測定し、それを画像処理することにより鉄筋等の金属体の位置及び腐食の状態等を検知できるようになっている。
【特許文献1】特開2003−139731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述の如き従来技術において、鉄筋等の金属体を直接加熱するには、加熱用の電極等を設置するために金属体を露出させなければならず、かぶりコンクリートの一部を斫る必要があるという問題があった。
【0012】
また、金属体を非接触で加熱する方法として誘導加熱による方法が知られているが、検査箇所が広範囲に亘る場合、鉄筋全体を一様に加熱することが困難であり、金属体の腐食状態やかぶりコンクリート部の浮きや剥離を検知する際の精度が低いという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上述の従来技術の問題を鑑み、構造物内部の鉄筋や鉄骨等の金属体を一様に加熱し、浮き、剥離の位置又は鉄筋や鉄骨等の金属体の腐食状態等について高い精度で検査することができるコンクリート構造物の非破壊検査装置及びコンクリート構造物の非破壊検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体を加熱する加熱機と、前記コンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それを画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知できるサーモグラフィ装置とを備えたコンクリート構造物の非破壊検査装置において、前記加熱機は、渦電流により前記金属体を加熱する誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに高周波交流電流を供給するインバータ装置とを有し、前記誘導加熱コイルを移動手段により前記コンクリート構造物表面に沿って移動させるようにしたコンクリート構造物の非破壊検査装置であることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加え、前記コンクリート構造物の表面に移動軌道を支持させ、該移動軌道に誘導加熱コイルを移動可能に支持させ、前記誘導加熱コイルを移動手段により前記移動軌道上で移動させるようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成に加え、誘導加熱コイルは、導電性部材が互いに平行に配置された部分を有する形状に形成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3の構成に加え、前記加熱機は、前記誘導加熱コイルを含む共振回路を有することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3又は4の構成に加え、前記インバータ装置及び移動手段を制御する制御演算部を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体を加熱し、然る後、前記コンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それを画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知するコンクリート構造物の非破壊検査方法において、渦電流により前記金属体を加熱する誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに高周波交流電流を供給するインバータ装置とを有する加熱機を使用し、前記誘導加熱コイルを前記コンクリート構造物表面に沿って移動させつつ前記金属体を加熱した後、該加熱されたコンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それをサーモグラフィにより画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知するコンクリート構造物の非破壊検査方法であることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6の構成に加え、前記加熱機は、前記誘導加熱コイルを含む共振回路を有し、前記誘導加熱コイルを移動させつつ、所定の各位置において前記共振回路の共振周波数を測定し、該共振周波数に基づいて該各測定位置におけるコンクリート構造物のかぶりコンクリート厚を算出することを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項7の構成に加え、前記算出されたかぶりコンクリート厚に基づいて、前記測定位置における前記誘導加熱コイルの移動速度を制御することを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8の構成に加え、前記算出されたかぶりコンクリート厚に基づいて、前記測定位置における前記誘導加熱コイルに供給する高周波交流電流を制御することを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項6の構成に加え、任意の位置における前記共振周波数を測定し、該共振周波数を一定に保ちつつ、前記誘導加熱コイルの移動速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査装置は、コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体を加熱する加熱機と、前記コンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それを画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知できるサーモグラフィ装置とを備えたコンクリート構造物の非破壊検査装置において、前記加熱機は、渦電流により前記金属体を加熱する誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに高周波交流電流を供給するインバータ装置とを有し、前記誘導加熱コイルを移動手段により前記コンクリート構造物表面に沿って移動させるようにしたことによって、金属体全体を均一に加熱することができ、広い範囲でより高い精度でコンクリート構造物を検査することができる。
【0025】
前記コンクリート構造物の表面に移動軌道を支持させ、該移動軌道に誘導加熱コイルを移動可能に支持させ、前記誘導加熱コイルを移動手段により前記移動軌道上で移動させるようにしたことによって、好適にコンクリート構造物の表面部に沿って誘導加熱コイルを移動させることができる。
【0026】
誘導加熱コイルは、導電性部材が互いに平行に配置された部分を有する形状に形成されたことによって、誘導加熱コイルが金属体に対して横向きに配置され、複数の金属体に亘って加熱する場合には、平行部分はどの位置においてもコイル幅や巻数等が同一であるので、各金属体を均等に加熱することができ、また、誘導加熱コイルが金属体に対して縦向きに配置された場合には、金属体の平行部分に係る部分を均等に加熱することができるので、検査精度が向上する。
【0027】
前記加熱機は、前記誘導加熱コイルを含む共振回路を有することによって、好適に誘導加熱コイルに高周波交流電流を供給することができる。
【0028】
前記インバータ装置及び移動手段を制御する制御演算部を備えたことによって、金属体を均一に加熱することができる。
【0029】
本発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査方法は、コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体を加熱し、然る後、前記コンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それを画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知するコンクリート構造物の非破壊検査方法において、渦電流により前記金属体を加熱する誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに高周波交流電流を供給するインバータ装置とを有する加熱機を使用し、前記誘導加熱コイルを前記コンクリート構造物表面に沿って移動させつつ前記金属体を加熱した後、該加熱されたコンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それをサーモグラフィにより画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知することによって、広い範囲に亘って高い精度で検査を行うことができる。
【0030】
前記加熱機は、前記誘導加熱コイルを含む共振回路を有し、前記誘導加熱コイルを移動させつつ、所定の各位置において前記共振回路の共振周波数を測定し、該共振周波数に基づいて該各測定位置におけるコンクリート構造物のかぶりコンクリート厚を算出することによって、得られたかぶりコンクリート厚に基づいて各種の制御及び画像処理における補正を行うことができる。
【0031】
前記算出されたかぶりコンクリート厚に基づいて、前記測定位置における前記誘導加熱コイルの移動速度を制御することにより、金属体を均一に加熱することができ、より精度の高い検査を行うことができる。
【0032】
前記算出されたかぶりコンクリート厚に基づいて、前記測定位置における前記誘導加熱コイルに供給する高周波交流電流を制御することにより、金属体を均一に加熱することができ、より精度の高い検査を行うことができる。
【0033】
任意の位置における前記共振周波数を測定し、該共振周波数を一定に保ちつつ、前記誘導加熱コイルの移動速度を制御することによって、制御が簡便となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明に係るコンクリート構造物の非破壊検査装置について説明する。
【0035】
図1は、本発明装置の概略を示し、図中符号10はコンクリート構造物、符号11は非破壊検査装置である。
【0036】
コンクリート構造物10は、RC構造やSRC構造等の構造を有し、複数の鉄筋や鉄骨等の金属体12,12…が縦横に間隔をおいて配置されている。
【0037】
この非破壊検査装置11は、コンクリート内部の金属体12,12…を加熱する誘導加熱機と、サーモグラフィ装置とを備え、金属体12を加熱することによりコンクリート構造物10全体を加熱し、該加熱されたコンクリート構造物10の表面部の温度を測定し、それを画像処理することにより視覚的にコンクリート構造物10の状態、即ち、金属体12の腐食状態、かぶりコンクリートの浮き・剥離の状態等を検知できるようになっている。
【0038】
また、この非破壊検査装置は、コンピュータからなる制御演算部13を備え、この制御演算部13により装置全体を制御するようになっている。尚、図中符号14はコンクリート表面温度を測定する温度計、符号15は外気温計である。
【0039】
加熱機は、誘導加熱コイル16と、インバータ装置17とを有し、インバータ装置17より高周波交流電流を供給して誘導加熱コイル16に通電させることにより、鉄筋等の金属体12に渦電流を生じさせ、それにより金属体12を発熱させるようになっている。
【0040】
誘導加熱コイル16は、銅管等の導電性部材が互いに平行に配置された部分(平行部分)を有するように、導電性部材を一方向に長い矩形状に巻いて形成されている。
【0041】
このように誘導加熱コイル16が平行部分を有することによって、金属体12,12…に対し誘導加熱コイル16を横向きに配置し、複数の金属体12,12…に亘って加熱する場合、円形や楕円形状のように各位置でコイル幅が異なるコイルと異なり、平行部分においてはコイル幅や巻数等がどの位置でも同じであるので、各金属体12,12を均等に加熱することができ、加熱むらを無くすことができる。
【0042】
また、金属体12に対し誘導加熱コイル16を縦向きに配置した場合においても、平行部分に係る部分を均等に加熱することができる。
【0043】
この誘導加熱コイル16は、木材等の絶縁性部材からなる台車18に縦向きに固定され、台車18を介してコンクリート構造物10の表面部に固定された移動軌道19に移動可能に支持されている。
【0044】
また、台車18には、進行方向前方に配置された移動手段たるウインチ20より繰り出されたワイヤ21の先端が固定され、ウインチ20がワイヤ21を巻き取ることにより誘導加熱コイル16はコンクリート構造物10の表面部を移動するようになっている。
【0045】
移動手段、即ちウインチ20は、制御演算部13によりその巻き取り速度を制御され、コイルの移動速度を制御できるようになっている。
【0046】
インバータ装置17は、商用電源を変換し、誘導加熱コイル16に高周波交流電流を出力する。
【0047】
このインバータ装置17は、制御演算部13により交流電流の周波数及び電流の出力が制御されるとともに、周波数及び電力値を制御演算部13にフィードバックするようになっている。
【0048】
尚、このインバータ装置17を構成する回路に含まれるコンデンサ及び抵抗と、誘導加熱コイル16とによってRLC共振回路が形成されている。
【0049】
サーモグラフィ装置は、赤外線カメラ等の測定器22を備え、制御演算部13が画像処理部として機能し、コンクリート構造物10表面部の温度分布を画像表示するようになっている。
【0050】
測定器22は、コンクリート構造物10表面をX軸方向及びY軸方向に走査する走査手段と、コンクリート構造物10表面より放射された赤外線放射エネルギーを検出する検出器と、検出器で検出した赤外線放射エネルギーを電気信号に変換する変換部とを備え、電気信号は変換部で増幅されて制御演算部13に出力される。
【0051】
制御演算部13は、測定器22より出力された電気信号に各種の信号処理を施し、コンクリート構造物10の表面温度をそれに対応する色で表示し、コンクリート構造物10表面部の温度分布を画像で表示させるようになっている。
【0052】
このように構成された非破壊検査装置11は、誘導加熱コイル16を移動させつつ、インバータ出力、周波数、コイル移動速度等を制御することにより、コンクリート構造物10内の鉄筋等の金属体12を均一に加熱することができる。
【0053】
また、コンクリート構造物10の表面温度分布を画像処理により視覚的に表示することができ、その画像を熱伝導解析することによりコンクリート構造物10の状態、即ち、鉄筋等の金属体12の位置及び腐食状態、かぶりコンクリート部の浮き・剥離の有無及びその位置等を検知できるようになっている。
【0054】
次に上述の非破壊検査装置を使用したコンクリート構造物の非破壊検査方法について説明する。
【0055】
この非破壊検査方法は、コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体を加熱し、然る後、サーモグラフィによりコンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それを画像化することによりコンクリート構造物の状態を検知するようになっており、以下の手順によって行う。
【0056】
まず、コンクリート構造物10の表面部に、その長手方向に沿って移動軌道19を設置し、その移動軌道19上に台車18を介して誘導加熱コイル16を移動可能に支持させる。
【0057】
そして、誘導加熱コイル16を初期位置に配置し、インバータ装置17より誘導加熱コイル16に高周波交流電流を供給するとともに、移動手段たるウインチ20を作動させて誘導加熱コイル16を検査対象範囲内で移動させ、誘導加熱コイルを移動させつつ金属体12を加熱する。
【0058】
このとき、制御演算部13は、誘導加熱コイル16を移動させつつ、図2に示す手順に従って、瞬時にかぶりコンクリート厚を算出する作業と、それに基づいてインバータ装置出力、周波数又はコイル移動速度のいずれか若しくはそれらの組合せを制御して、鉄筋等の金属体12を加熱させる作業とを行い、この一連の作業を繰り返すことにより、金属体12全体を均一に加熱するようになっている。尚、図3は、その際のコイル出力の状態を示している。
【0059】
即ち、コイル移動速度を一定とし、インバータ装置17出力及び周波数を制御する場合には、まず、インバータ装置17出力を所定値に固定した状態で一瞬、高周波交流電流AC1を通電させ(図2(1))、その際に周波数を加熱に最も適した周波数、即ち共振周波数に同調させ、その共振周波数を測定し、制御演算部13にフィードバックする(図2(2))。
【0060】
また、それと同時にレーザーによる距離測定方式等を利用して誘導加熱コイル16とコンクリート表面との間の距離を測定し、そのデータを制御演算部13にフィードバックする。
【0061】
制御演算部13は、コイル−金属体間距離の変化と共振周波数が比例関係にあることを利用し、フィードバックされた共振周波数及びコイル−コンクリート間距離データに基づいて測定位置におけるかぶりコンクリート厚を算出する(図2(3))。
【0062】
そして、制御演算部13は、このかぶりコンクリート厚に応じてインバータ装置17を制御し(図2(4)〜(7))、周波数を前述した共振周波数に固定するとともに、かぶりコンクリート厚に対応した所定の高周波交流電流AC2を一定時間出力させて誘導加熱コイル16に通電し(図2(8))、金属体12を初期の状態より20℃〜30℃上昇させるように加熱する。
【0063】
尚、出力する高周波交流電流AC2は、実験等により予め得られた、かぶりコンクリート厚と所定の金属体12が一定温度に達するまでに必要な電力量との関係に基づいて決められている。
【0064】
このようにすることによって、かぶりコンクリート厚が大きい場合には、インバータ装置17の出力が大きく、かぶりコンクリート厚が小さい場合には、インバータ装置17の出力が小さくなるように制御される。
【0065】
従って、このような作業をコンクリート構造物10の一端から他端まで繰り返すこと(図2(9))によって、どの位置においても金属体12を同じ温度に加熱することができ、金属体12全体を均等に加熱することができる。
【0066】
尚、上述のインバータ装置出力、即ち高周波交流電流を一定とし、誘導加熱コイル16の移動速度を制御するようにしてもよい。
【0067】
即ち、かぶりコンクリート厚が大きい場合には、移動速度を遅くし、かぶりコンクリート厚の小さい場合には、コイルの移動速度を速くする。
【0068】
このようにコンクリート構造物10内部に縦横に間隔をおいて配置された鉄筋等の金属体12を均一に加熱することによって、コンクリート構造物10(表面)全体を加熱することができる。
【0069】
次に、コンクリート構造物10の加熱が終了したら、誘導加熱コイル16及び移動軌道19を撤去し、加熱されたコンクリート構造物10の表面部の温度分布を所定時間毎に赤外線カメラ等の測定器22により測定し、それを電気信号に変換・増幅して制御演算部13に出力する。
【0070】
制御演算部13は、入力された電気信号に対し、かぶり厚の変動、インバータ装置17出力の変動等を考慮して信号処理を施して温度分布画像データに変換し、それを画像処理して温度をそれぞれ対応する色で表示させた時間毎の温度分布画像を形成する。
【0071】
そして、この得られたコンクリート表面温度分布画像を画像処理し、それに基づいて欠陥位置を判断する。
【0072】
以上で検査が完了する。
【0073】
更に、上述の実施例では、金属体加熱時にインバータ装置の電流出力及び周波数、又は電流周波数及びコイル移動速度を調整する方法について説明したが、周波数及び電流出力を一定としコイル移動速度のみを調整するようにしてもよく、電流出力及びコイル移動速度を一定とし周波数のみを調整するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る非破壊検査装置を示す概略図である。
【図2】加熱処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】インバータ装置出力と時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
10 コンクリート構造物
11 非破壊検査装置
12 金属体
13 制御演算部
14 温度計
15 外気温計
16 誘導加熱コイル
17 インバータ装置
18 台車
19 移動軌道
20 ウインチ
21 ワイヤ
22 測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体を加熱する加熱機と、前記コンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それを画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知できるサーモグラフィ装置とを備えたコンクリート構造物の非破壊検査装置において、
前記加熱機は、渦電流により前記金属体を加熱する誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに高周波交流電流を供給するインバータ装置とを有し、前記誘導加熱コイルを移動手段により前記コンクリート構造物表面に沿って移動させるようにしたことを特徴としてなるコンクリート構造物の非破壊検査装置。
【請求項2】
前記コンクリート構造物の表面に移動軌道を支持させ、該移動軌道に誘導加熱コイルを移動可能に支持させ、前記誘導加熱コイルを移動手段により前記移動軌道上で移動させるようにした請求項1に記載のコンクリート構造物の非破壊検査装置。
【請求項3】
誘導加熱コイルは、導電性部材が互いに平行に配置された部分を有する形状に形成された請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記加熱機は、前記誘導加熱コイルを含む共振回路を有する請求項1、2又は3に記載のコンクリート構造物の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記インバータ装置及び移動手段を制御する制御演算部を備えた請求項1〜3又は4に記載のコンクリート構造物の非破壊検査装置。
【請求項6】
コンクリート構造物内の鉄筋や鉄骨等の金属体を加熱し、然る後、前記コンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それを画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知するコンクリート構造物の非破壊検査方法において、
渦電流により前記金属体を加熱する誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに高周波交流電流を供給するインバータ装置とを有する加熱機を使用し、前記誘導加熱コイルを前記コンクリート構造物表面に沿って移動させつつ前記金属体を加熱した後、該加熱されたコンクリート構造物表面の温度分布を測定し、それをサーモグラフィにより画像化することにより前記コンクリート構造物の状態を検知することを特徴としてなるコンクリート構造物の非破壊検査方法。
【請求項7】
前記加熱機は、前記誘導加熱コイルを含む共振回路を有し、前記誘導加熱コイルを移動させつつ、所定の各位置において前記共振回路の共振周波数を測定し、該共振周波数に基づいて該各測定位置におけるコンクリート構造物のかぶりコンクリート厚を算出する請求項6に記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法。
【請求項8】
前記算出されたかぶりコンクリート厚に基づいて、前記測定位置における前記誘導加熱コイルの移動速度を制御する請求項7に記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法。
【請求項9】
前記算出されたかぶりコンクリート厚に基づいて、前記測定位置における前記誘導加熱コイルに供給する高周波交流電流を制御する請求項7又は8に記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法。
【請求項10】
任意の位置における前記共振周波数を測定し、該共振周波数を一定に保ちつつ、前記誘導加熱コイルの移動速度を制御する請求項6に記載のコンクリート構造物の非破壊検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−337231(P2006−337231A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163613(P2005−163613)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(501424031)
【Fターム(参考)】