コンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造
【課題】梁の貫通孔の上方又は下方において、あばら筋の密度が疎らな部分に設けられる補助補強部材の配筋を、容易に可能とする。
【解決手段】梁1に、その梁1の梁軸方向に配筋された主筋6と、その主筋6を囲んで配筋されたあばら筋7と、その梁1の梁幅方向に伸びる貫通孔2とを備え、前記主筋6に係止される補助補強部材20を前記貫通孔2の上下に備え、前記補助補強部材20は、前記主筋6へ係止される係止部21と、その係止部21から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に梁高さ方向中心に向かう補強部22,22とを備え、前記補強部22は、その最も梁高さ方向中心寄りに位置する部分が、前記貫通孔2の上縁又は下縁に至らない高さとしたコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造である。また、係止部21を係止した前記主筋6の梁高さ方向中心側に補助筋25を配置し、前記補強部22に第二係止部23を設け、その第二係止部23を前記補助筋25に係止した。
【解決手段】梁1に、その梁1の梁軸方向に配筋された主筋6と、その主筋6を囲んで配筋されたあばら筋7と、その梁1の梁幅方向に伸びる貫通孔2とを備え、前記主筋6に係止される補助補強部材20を前記貫通孔2の上下に備え、前記補助補強部材20は、前記主筋6へ係止される係止部21と、その係止部21から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に梁高さ方向中心に向かう補強部22,22とを備え、前記補強部22は、その最も梁高さ方向中心寄りに位置する部分が、前記貫通孔2の上縁又は下縁に至らない高さとしたコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造である。また、係止部21を係止した前記主筋6の梁高さ方向中心側に補助筋25を配置し、前記補強部22に第二係止部23を設け、その第二係止部23を前記補助筋25に係止した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリート造梁、あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造梁に設けた貫通孔周囲の配筋構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
設備配管等をコンクリート造梁を有する建物内に、あるいはその建物内部から外部へ配する場合、その配管が階高設定に影響を与えないようにするため、例えば、図10に示すように、柱4,4間を結ぶコンクリート造梁(以下、単に「梁」という)1の腹部に配管3を挿通するための貫通孔2を設ける手法が一般的である。
【0003】
梁1に貫通孔2を設ける場合、そのままでは断面減少、貫通孔周囲への応力集中等により、梁1のせん断耐力が低下するので、その貫通孔2周囲を、鉄筋や溶接金網等のせん断補強材で補強する手法が一般的に用いられている。
【0004】
せん断補強材として、例えば、図11(a)〜(c)に示すように、梁1に設けた貫通孔2の周囲を囲む環状補強部材10がある。
【0005】
この種の環状補強部材10は、梁1にせん断応力が作用した場合に生じる初期せん断ひび割れが、図11(a)に示す断面において、符号5で示す矢印のように、貫通孔2から梁軸方向に対して概ね45度方向のラインに沿って4方向へ進展するため、その初期のせん断ひび割れに対してほぼ直交する方向に向くせん断補強材を配置して、その補強効果を高めようとするものである。せん断補強材は、コンクリートとの付着力により、せん断ひび割れの進展を抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、上記のように、梁1に貫通孔2を備えたことによって、特に、梁の高さ(上限方向の幅)が大きい場合に、あるいは、貫通孔2の径が大きい場合に、あばら筋7の密度が疎らになってしまうことがある。
すなわち、貫通孔2の介在する部分を夾んで、梁軸方向に隣り合うあばら筋7,7間の間隔(図11(a)参照)が長くなってしまい、貫通孔の上部及び下部におけるコンクリートがあばら筋によって拘束されないために、このままの状態では主筋が座屈する恐れもある。
【0007】
このため、特許文献2には、図12(a)(b)に示すように、その貫通孔2を夾んで上下に、それぞれ、あばら筋7に並列する複数の補助補強部材8を配置する技術が開示されている。
【0008】
この補助補強部材8は、梁1の上部及び下部において、それぞれ上下に並列する主筋6と補助筋9との間に掛け渡された状態に固定される。すなわち、図12(c)に示すように、側面視コ字状の部材が、幅方向両側からそれぞれ差し入れられて、その主筋6と補助筋9に係止されている。
ここで、主筋6は、梁1の上面又は下面近くの梁軸方向の配筋であり、図示するように上下二本の主筋6a,6bで構成される場合もある。補助筋9は、その主筋6よりも貫通孔2寄りに設けられた梁軸方向の配筋である(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに、貫通孔2を形成するための筒状部材(鋼管)に、あばら筋7に沿って配置される複数の補助補強部材8を、溶接で固定する技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−175021号公報
【特許文献2】特開平07−207837号公報
【特許文献3】特開2007−51533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2に示す補助補強部材8(図12参照)は、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ、梁1の幅方向両側から、側面視コ字状の鉄筋を複数組み差し入れている。
【0012】
このため、部材の点数が多くなるとともに、主筋等への係止箇所数や、その結束作業の箇所数も多くなり、作業が繁雑であるという問題がある。
【0013】
また、特許文献3に記載の補助補強部材は、貫通孔2を構成する鋼管との溶接に際し、相当な精度が要求される。また、溶接の手間は相当なものであり、配筋箇所の主筋と鋼管との位置関係に合わせて、各箇所毎に製作する必要がある。
【0014】
そこで、この発明は、梁の貫通孔の上方又は下方において、あばら筋の密度が疎らな部分に設けられ主筋の座屈に対抗する補助補強部材の配筋を、容易に可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、梁に、その梁の梁軸方向に配筋された主筋と、その主筋を囲んで配筋されたあばら筋と、その梁の梁幅方向に伸びる貫通孔とを備え、前記主筋に係止される補助補強部材を前記貫通孔の上方又は下方に備え、前記補助補強部材は、前記梁の主筋へ係止される係止部と、その係止部から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に前記貫通孔の梁高さ方向の中心を通る梁軸線に近づく補強部とを備え、前記補強部は、前記梁軸線に最も近い部分の高さが、前記係止部を係止した前記主筋の高さと、その主筋に最も近い前記貫通孔の外縁の高さとの間に位置することを特徴とするコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造を採用した。
【0016】
すなわち、補助補強部材が貫通孔の上方に備えられている場合、その補助補強部材は、前記梁の上部の主筋へ係止される係止部と、その係止部から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に下方に向かう補強部とを備え、前記補強部は、その最も下方に位置する部分が、前記貫通孔の上縁の高さよりも上方に位置する構成である。また、補助補強部材が貫通孔の下方に備えられている場合、補助補強部材は、前記梁の下部の主筋へ係止される係止部と、その係止部から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に上方に向かう補強部とを備え、前記補強部は、その最も上方に位置する部分が、前記貫通孔の下縁の高さよりも下方に位置する構成である。
【0017】
これらの構成によれば、補助補強部材が、主筋への係止部を夾んで、梁軸方向両方へそれぞれ伸びるので、その補助補強部材は、その係止部を夾んで両側のバランスがよい。
このため、その係止部を、一旦主筋に係止すれば、その後は補助補強部材の体勢が変わりにくい。したがって、補助補強部材を容易に固定できる。
【0018】
なお、上記のように、補助補強部材は、前記貫通孔の上方に備えられていてもよいし、前記貫通孔の下方に備えられていてもよいが、さらには、前記貫通孔の上方及び下方にそれぞれ備えられていても良い。
【0019】
また、上記の各構成において、前記係止部を係止した前記主筋の梁高さ方向中心側に、前記梁の梁軸方向に伸びる補助筋を配置し、前記補強部に第二係止部を設け、その第二係止部を前記補助筋に係止した構成を採用することができる。
【0020】
補助補強部材が、主筋への係止部を夾んで、梁軸方向両方へそれぞれ伸びて、その先に補助筋への第二係止部を備えるので、その補助補強部材を配筋する際は、例えば、補助筋を配筋する前に、既に配筋されている主筋に係止部を係止しておき、その後、補助筋を梁軸方向に沿って所定の位置まで挿通することにより、その補助補強部材の第二係止部を補助筋に係止させることができる。
【0021】
あるいは、その補助補強部材を配筋する際において、主筋と補助筋の配筋の順序を逆としてもよい。すなわち、例えば、主筋を配筋する前に、既に配筋されている補助筋に、補助補強部材の第二係止部を係止しておき、その後、主筋を梁軸方向に沿って所定の位置まで挿通することにより、その補助補強部材の係止部を主筋に係止させることができる。
【0022】
このとき、補助補強部材の第二係止部を、一旦、補助筋に係止すれば、その後は補助補強部材の体勢が変わりにくい。したがって、補助補強部材を容易に固定できる。
【0023】
なお、補助補強部材の前記係止部、第二係止部は、その補助補強部材を、主筋又は補助筋に係止できる機能を有していればよく、例えば、補助補強部材の一部にフック状の部材を溶接等により取付けて、そのフック状の部材を、主筋又は補助筋に引っ掛けてもよいし、あるいは、補助補強部材の一部を番線等で縛って主筋又は補助筋に係止し、その係止した箇所を前記係止部、第二係止部としてもよい。
【0024】
また、補助筋とは、係止部を係止する対象となる主筋に沿って、その主筋よりも梁高さ方向中央側、すなわち、貫通孔側に配置された配筋を言い、この補助筋は、貫通孔の介在する部分のみに配置される比較的短い配筋であってもよいし、梁の全長に亘って配筋される比較的長い配筋であってもよい。また、貫通孔の上方、あるいは下方において、主筋を梁高さ方向に複数本並列して備える場合は、その並列する主筋のうち、貫通孔から遠い方を係止部を係止する対象となる主筋とし、貫通孔に近い方を前述の補助筋とすることもできる。
【0025】
これらの各構成において、前記補助補強部材は、軸状の部材又は板状の部材で構成されており、前記係止部及び第二係止部は、前記軸状の部材又は板状の部材を曲げて形成されたその曲げた部分の内側面が、前記主筋又は前記補助筋に当接する構成を採用することができる。
【0026】
軸状部材又は板状部材の屈曲部でもって、補助補強部材を主筋又は補助筋に係止する構成とすれば、その補助補強部材の製作が容易であるし、配筋時の係止作業も容易である。
【0027】
さらに、前記補助補強部材は前記係止部を複数備え、一方の前記係止部から伸びて他方の前記係止部側に向かう前記補強部と、他方の前記係止部から伸びて一方の前記係止部側に向かう前記補強部とが接続部で連結されている構成を採用することができる。
【0028】
このとき、例えば、その隣り合う二つの係止部から、それぞれその中央の接続部側と反対方向に向かう補強部において、それぞれ補助筋への第二係止部を設けることができる。
【0029】
また、前記補助補強部材は前記係止部を複数備え、一方の前記係止部から伸びて他方の前記係止部側に向かう前記補強部と、他方の前記係止部から伸びて一方の前記係止部側に向かう前記補強部との間に、前記第二係止部を備える構成を採用することができる。
【0030】
この場合、例えば、その隣り合う二つの係止部から、それぞれその中央の第二係止部側と反対方向に向かう補強部において、それぞれ補助筋への第二係止部を設けることができる。あるいは、隣り合う二つの係止部間に第二係止部が介在するから、中央の第二係止部側と反対方向に向かう補強部においては、第二係止部の設置を省略した構成も考えられる。
【0031】
これらのいずれの構成においても、主筋への係止部が、梁軸方向に沿って複数備えられるので、その補助補強部材の主筋への係止が、さらに安定する。
【0032】
さらに、これらの各構成において、前記補助補強部材を、同一の前記主筋に対して梁軸方向に複数個並列して係止した構成を採用することができる。
例えば、係止部を一つ備えた補助補強部材を、一本の主筋に対して二つ、あるいは、貫通孔の径が特に大きい場合等は、三つ以上を梁軸方向に並列して係止してもよいし、係止部を二つ備えた補助補強部材を、一本の主筋に対して同様に二つ以上並列して配置してもよい。
【発明の効果】
【0033】
この発明は、梁の貫通孔の上方又は下方において、あばら筋の密度が疎らな部分に設けられる補助補強部材の固定を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施形態の正面断面図
【図2】図1の側面断面図
【図3】一実施形態の補助補強部材の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図、(f)は背面図
【図4】図3の補助補強部材の斜視図
【図5】他の実施形態の補助補強部材の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は底面図
【図6】図5の補助補強部材の斜視図
【図7】さらに他の実施形態を示す正面断面図
【図8】図7の実施形態の補助補強部材の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図、(f)は背面図
【図9】さらに他の実施形態を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)の右側面図
【図10】貫通孔を設けたコンクリート造梁の施工例を示す説明図
【図11】従来例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は環状補強部材の正面図
【図12】従来例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は補強部材を配筋する際の説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を、図1乃至図4に基づいて説明する。この実施形態のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造は、柱4,4間を結ぶ梁1(例えば、図10参照)に設けた貫通孔2の周囲を環状補強部材10で補強し、さらに、その貫通孔2の上方及び下方を、それぞれ補助補強部材20で補強した構成である。
【0036】
環状補強部材10は、梁1にせん断応力が作用した場合に生じる初期せん断ひび割れが、貫通孔2の周囲に進展した場合に、その初期のせん断ひび割れに対して交差する方向に所定の部材が位置するように配置されている。
すなわち、環状補強部材10は、コンクリートとの付着力により、貫通孔2周囲に発生しやすいせん断ひび割れの進展を抑制する。
【0037】
図1及び図2は、梁1内の配筋状態の一部を示したものである。図中に示す符号6は主筋を、符号7は、その主筋6周りに巻回して固定されるあばら筋(せん断補強筋)を示している。
【0038】
梁1の貫通孔2は、その孔中心線の方向が、その梁1の長さ方向(梁1の梁軸方向)に直交して設けられており、その貫通孔2周囲には、その貫通孔2の長さ方向(梁1の梁幅方向)に沿って、梁1の表裏二箇所に、それぞれ前述の環状補強部材10を配置している。その各環状補強部材10は、図2に示すように、梁1の梁幅方向表面側と裏面側とに、それぞれ所定の被りを確保して貫通孔2を囲むように配置されており、例えば、それぞれ対応する側のあばら筋7に番線等の結束材等により固定されている。
【0039】
前記主筋6は、図1及び図2に示すように、梁1の上面又は下面近くで梁軸方向に配筋されている。この実施形態では、上下に並ぶ二本の主筋6a,6bを1組として、その二本の主筋6a,6bを、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ梁1の梁幅方向表面側と裏面側とに設けている。
【0040】
また、それらの主筋6よりも貫通孔2寄り(梁高さ方向中心側)に、梁軸方向に伸びる補助筋25を備えている。補助筋25は、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ梁幅方向表裏両側で、その主筋6に沿って設けられる。
【0041】
また、この実施形態では、補助筋25は、梁1の全長に亘って設けるのではなく、貫通孔2の近傍にのみ設けられる梁軸方向長さLの水平筋で構成されている。補助筋25はその長さが短いから、あばら筋7への固定も簡単である。
【0042】
そして、前記補助補強部材20は、この主筋6と補助筋25との間に掛け渡される。この補助補強部材20についても、前記補助筋25と同様に、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ梁幅方向表裏両側に設けられる。
【0043】
補助補強部材20の構成は、図3及び図4に示すように、一本の連続する鉄筋(軸状部材)で構成される。なお、この軸状部材の素材は自由であり、この実施形態で用いた鉄筋以外の素材であってもよい。例えば、連続繊維に未硬化の樹脂を含浸させてその樹脂を硬化させたものを用いてもよい。
【0044】
その補助補強部材20は、図2及び図3に示すように、前記軸状部材の長さ方向中ほどに、前記主筋6への係止箇所となる2箇所の係止部21を備えている。この係止部21は、前記軸状部材に設けられた屈曲部21aで構成されている。
【0045】
また、その補助補強部材20は、主筋6への係止部21から梁軸方向両側に伸びて、それぞれ徐々に、図1等に示す梁軸線Mに近づく補強部22,22を備える。この梁軸線Mは、梁1の正面視において、貫通孔2の梁高さ方向の中心を通って、梁1の梁軸方向に並行に伸びる仮想線を示している。
この実施形態では、補強部22は、係止部21から梁軸方向両側にそれぞれ伸びて、それぞれ徐々に前記補助筋25に近づく、斜め方向の直線状の補強部22,22となっている。
【0046】
さらに、その各補強部22,22の先端に、前記補助筋25に係止される第二係止部23をそれぞれ備える。この第二係止部23も、前記軸状部材に設けられた屈曲部23aで構成されている。
【0047】
この実施形態では、補助補強部材20は、前記係止部21を複数(二つ)備え、その二つの係止部21,21間において、一方の前記係止部21から伸びて他方の前記係止部21側に向かう前記補強部22と、他方の前記係止部21から伸びて一方の前記係止部21側に向かう前記補強部22とが、接続部24で連結されている。接続部24も、前記軸状部材に設けられた屈曲部24aで構成されている。
【0048】
すなわち、補助補強部材20は、梁軸方向に沿って順に、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、接続部24、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23が配置されている。
【0049】
この補助補強部材20は、軸状の部材を曲げて構成されているから、前記係止部21及び第二係止部23を構成する屈曲部21a,23aは、その屈曲部21a,23aの内側面が、前記主筋6又は前記補助筋25に当接することで、その主筋6又は補助筋25に係止されている。
【0050】
この実施形態では、補強部22は、梁軸方向、梁高さ方向に対して交差する方向に伸びる直線状の傾斜部で構成されているが、この補強部22において、例えば、前記係止部21と第二係止部23とを結ぶ途中に、梁軸方向に直交して上下方向に伸びる部分や、梁軸方向に並行に伸びる部分などが部分的に介在したり、あるいは、湾曲部や屈曲部を伴っていても差し支えない。このため、例えば、梁軸方向に直交して上下方向に伸びる部分と梁軸方向に並行に伸びる部分とが交互に配置された階段状の補強部22としてもよい。
【0051】
なお、この補助補強部材20は、貫通孔2の上部に配置される場合は、その補強部22の下端が、貫通孔2の上端(外周面の最上部の位置)を超える程の長さは必ずしも必要ない。また、補助補強部材20が貫通孔2の下部に配置される場合は、その補強部22の上端が、貫通孔2の下端(外周面の最下部の位置)を超える程の長さは必ずしも必要ない。これは、補助補強部材20は、貫通孔2の上方又は下方における無筋部分を補強するためのものだからである。
【0052】
すなわち、補助補強部材20の補強部22は、前記梁軸線Mに最も近い部分の高さが、前記係止部21を係止した前記主筋6の高さと、その主筋6に最も近い前記貫通孔2の外縁の高さとの間に位置している。
【0053】
また、この実施形態では、前記屈曲部21a,23aは、両側の補強部22,22間を結ぶように円弧状に形成されており、その円弧の内側向きの面が、前記主筋6(この例では主筋6a)又は補助筋25に当接した状態で、補助補強部材20は主筋6に係止されるようになっている。すなわち、図3(b)(d)に示すように、その屈曲部21a,23aが側面視U字状となっている。
この屈曲部21a,23aは、例えば、曲げ加工によるのではなく、別々の部材を溶接により接合して形成してもよいから、このように円弧状に形成されたものに限定されず、例えば、側面視V字状など鋭角状に屈曲する構成を採用してもよい。
【0054】
また、この実施形態では、図3(c)(f)に示すように、補強部22,22間の成す角度は60度となって、補助補強部材20は、全体として正面視二等辺の山形形状の連続となっている。なお、この角度は、60度に限定されず、例えば、90度など他の角度に設定してもよい。
【0055】
また、この実施形態では、軸状部材は全長に亘って同一径となっており、二つの前記係止部21,21間の中央を夾んで、両側の部材は、等しい重量、等しい長さに形成されている。このため、補助補強部材20のバランスがよく、その補助補強部材20の姿勢を安定させる上で有効であり、貫通孔2の梁軸方向の両側を均等に補強できる。
【0056】
この実施形態の施工方法について説明すると、まず、コンクリート造梁1に必要な通常の配筋を行う。すなわち、図示しない型枠内に、主筋6、あばら筋7、及び貫通孔2を形成するための筒状部材、環状補強部材10を配置する。
この配置方法は通常通りであり、主筋6は、梁軸方向に沿ってその梁1の上部と下部にそれぞれ複数本並列して配置する。また、その主筋6に直交する方向にあばら筋7を配置していく。あばら筋7は、梁長さ方向に沿って所定の間隔で配置し、貫通孔2の位置は避けて配置する。
【0057】
そのあばら筋7とあばら筋7との間の隙間から、環状補強部材10をそのあばら筋7で囲まれた空間内に差し入れて、その環状補強部材10を貫通孔2周囲に固定する。環状補強部材10は、例えば、あばら筋7に対して番線等の結束材で固定することができる。
【0058】
つぎに、補助補強部材20を、所定の箇所に配置する。補助補強部材20は、図4に示すように、梁軸方向に沿って二つの係止部21,21を備えているから、貫通孔2の上部については、その係止部21,21が、主筋6に引っ掛かるように、上方から下方に向かって差し入れる。また、貫通孔2の下部については、その係止部21,21が、主筋6に引っ掛かるように、下方から上方に向かって差し入れる。
【0059】
その後、あばら筋7とあばら筋7との間の隙間から、水平筋である前記補助筋25をそのあばら筋7で囲まれた空間内に差し入れる。補助筋25は、あばら筋7等に対して番線等の結束材で固定することができる。
【0060】
この補助筋25の挿入によって、補助補強部材20は、主筋6と補助筋25とに係止されて、所定の位置に動かないように固定される。なお、このとき、二つの係止部21,21間の中央が、貫通孔2の直上にくるようにする。すなわち、貫通孔2の中心を通る鉛直線に対して、補助補強部材20の配置を梁軸方向に対称としているのである。
【0061】
以上のように、梁1に配置される貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ、主筋6への係止部21、及び補助筋25への第二係止部23とを備えた補助補強部材20を配置したので、あばら筋7の配筋が疎らとなりがちな貫通孔2の上方及び下方において、その容易な配筋が可能となる。
【0062】
特に、貫通孔2の上方の主筋6に係止する補助補強部材20の場合は、係止部21が主筋6に係止されることで、その補助補強部材20はその自重で垂れ下がるように支持される。
このため、別段に作業者が持ち上げて向きを変えたりしなくても所定の向きに配置されるので、補助補強部材20の配置、固定作業が、格段に容易となる。
【0063】
なお、補助補強部材20の前記係止部21や第二係止部23は、梁幅方向に並列する複数の主筋6に係止できるようにしてもよい。
【0064】
他の実施形態を図5及び図6に示す。この実施形態は、補助補強部材20は、前記係止部21を複数(二つ)備えているから、その二つの係止部21,21間において、一方の前記係止部21から伸びて他方の前記係止部21側に向かう前記補強部22と、他方の前記係止部21から伸びて一方の前記係止部21側に向かう前記補強部22との間に、前記第二係止部23を備える。
【0065】
すなわち、補助補強部材20は、梁軸方向に沿って順に、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23が配置されている。
【0066】
補助補強部材20に関するその他の構成や、その施工方法等については、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
さらに他の実施形態を図7及び図8に示す。この実施形態は、係止部21を一つ備えた補助補強部材20を、同一の主筋6に対して梁軸方向に2個並列して係止したものである。
【0068】
この実施形態では、貫通孔2の位置が梁高さ方向に対してやや下方に偏心して配置されている。すなわち、貫通孔2の中心を通る梁軸方向に並行な梁軸線Mの位置は、梁1の梁高さ方向中央よりも、やや下方に位置している。このため、補助補強部材20は、貫通孔2の上部にのみ設けられている。
【0069】
補助補強部材20の構成は、図7に示すように、主筋6への係止部21から梁軸方向両側に伸びて、それぞれ徐々に梁軸線Mに近づく補強部22,22を備える。その補強部22の先端に、それぞれ補助筋25への第二係止部23を備えている。
【0070】
すなわち、補助補強部材20は、梁軸方向に沿って順に、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23が配置されている。
【0071】
その補助補強部材20を、梁軸方向に沿って複数並列して配置したことにより、例えば、貫通孔2の径が比較的大きい場合において、あばら筋7が疎らとなる貫通孔2の上部又は下部の補強範囲が広い場合にも、その補助補強部材20の配置数を増やすことで容易に対応できる。すなわち、様々な形状の補助補強部材20を用意する必要がない。
【0072】
また、並列する二つの補助補強部材20,20は、図7に示す正面視において、第二係止部23,23同士が、梁軸方向に重なり代をもって配置されている。この重なり代の部分において、一方の補助補強部材20の第二係止部23は、梁幅方向一方側から他方側に向かって補助筋25に巻回されており、他方の補助補強部材20の第二係止部23は、梁幅方向他方側から一方側に向かって補助筋25に巻回されている。
【0073】
このように、重なり代の部分において、重複する第二係止部23,23同士の向きを梁幅方向に反対方向とすることで、配筋時の作業の容易化と、整然とした配筋を可能としている。
【0074】
この補助補強部材20に関するその他の構成や、その施工方法等については、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
さらに他の実施形態を図9に示す。この実施形態は、図5及び図6に示す実施形態の補助補強部材20を、貫通孔2の位置が梁高さ方向に対して偏心している梁1に適用したものである。
【0076】
この実施形態では、貫通孔2の位置が梁高さ方向に対してやや上方に偏心して配置されているため、貫通孔2の中心を通る梁軸方向に並行な梁軸線Mの位置は、梁1の梁高さ方向中央よりも、やや上方に位置している。
【0077】
補助補強部材20は、貫通孔2の上部にのみ設けられている。また、貫通孔2の下部においては、梁1の最も下部に位置する主筋6と、貫通孔2の直下に設けられた補助筋25とを結ぶあばら筋7に並行な補強部材26を配置している。
【0078】
この補助補強部材20に関するその他の構成や、その施工方法等については、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0079】
なお、いずれの実施形態においても、補助補強部材20は、その構成素材を前述の軸状部材に代えて、板状部材としてもよい。補助補強部材20として板状部材を採用する場合において、前記係止部21や第二係止部23を屈曲部21a,23aで構成する場合は、その屈曲は、フラットな板状部材の板面を湾曲させるように曲げ加工を施して前記屈曲部とすると、容易に製作できる。
【0080】
また、これらの各実施形態では、補助筋25は、梁1の全長に亘って設けるのではなく、貫通孔2の近傍にのみ設けられる梁軸方向長さLの水平筋で構成したが、この補助筋25を、主筋6と同様に、梁1の軸方向全長に亘って設けてもよい。あるいは、上下に並列して配置された複数本の主筋6のうちの一つを、前記補助筋25としてもよい。
また、補助補強部材20は、前記貫通孔2の上方及び下方の両方に備えてもよいし、上方又は下方のいずれか一方に備えてもよい。
【0081】
また、これらの各実施形態では、補助補強部材20は、主筋6に対する係止部21を梁軸方向に沿って二つ設けたが、この係止部21を梁軸方向に沿って三つ以上設けてもよい。このとき、梁軸方向に沿って隣り合う二つの係止部21,21間には、前述の接続部24を設けてもよいし、前述の第二係止部23を設けてもよい。
逆に、主筋6に対する係止部21を梁軸方向に沿って一つだけ設けた補助補強部材20としてもよい。このとき、第二係止部23は、係止部21から梁軸方向両側に伸びる補強部22,22のうち一方に設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0082】
また、これらの各構成からなる補助補強部材20を、同一の前記主筋6に対して梁軸方向に複数個並列して係止した構成を採用することができる。
例えば、係止部21を一つ又は二つ以上備えた上記各実施形態の補助補強部材20を、貫通孔2の上部及び下部、又はそのいずれかにおいて、一本の主筋6に対して二つ、あるいは、三つ以上を梁軸方向に並列して係止してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 梁(コンクリート造梁)
2 貫通孔
3 配管
4 柱
6,6a,6b 主筋
7 あばら筋(せん断補強筋)
8 補助補強部材
9 補助筋
10 環状補強部材
20 補助補強部材
21 係止部
22 補強部
23 第二係止部
24 接続部
21a,23a,24a 屈曲部
25 補助筋
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリート造梁、あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造梁に設けた貫通孔周囲の配筋構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
設備配管等をコンクリート造梁を有する建物内に、あるいはその建物内部から外部へ配する場合、その配管が階高設定に影響を与えないようにするため、例えば、図10に示すように、柱4,4間を結ぶコンクリート造梁(以下、単に「梁」という)1の腹部に配管3を挿通するための貫通孔2を設ける手法が一般的である。
【0003】
梁1に貫通孔2を設ける場合、そのままでは断面減少、貫通孔周囲への応力集中等により、梁1のせん断耐力が低下するので、その貫通孔2周囲を、鉄筋や溶接金網等のせん断補強材で補強する手法が一般的に用いられている。
【0004】
せん断補強材として、例えば、図11(a)〜(c)に示すように、梁1に設けた貫通孔2の周囲を囲む環状補強部材10がある。
【0005】
この種の環状補強部材10は、梁1にせん断応力が作用した場合に生じる初期せん断ひび割れが、図11(a)に示す断面において、符号5で示す矢印のように、貫通孔2から梁軸方向に対して概ね45度方向のラインに沿って4方向へ進展するため、その初期のせん断ひび割れに対してほぼ直交する方向に向くせん断補強材を配置して、その補強効果を高めようとするものである。せん断補強材は、コンクリートとの付着力により、せん断ひび割れの進展を抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、上記のように、梁1に貫通孔2を備えたことによって、特に、梁の高さ(上限方向の幅)が大きい場合に、あるいは、貫通孔2の径が大きい場合に、あばら筋7の密度が疎らになってしまうことがある。
すなわち、貫通孔2の介在する部分を夾んで、梁軸方向に隣り合うあばら筋7,7間の間隔(図11(a)参照)が長くなってしまい、貫通孔の上部及び下部におけるコンクリートがあばら筋によって拘束されないために、このままの状態では主筋が座屈する恐れもある。
【0007】
このため、特許文献2には、図12(a)(b)に示すように、その貫通孔2を夾んで上下に、それぞれ、あばら筋7に並列する複数の補助補強部材8を配置する技術が開示されている。
【0008】
この補助補強部材8は、梁1の上部及び下部において、それぞれ上下に並列する主筋6と補助筋9との間に掛け渡された状態に固定される。すなわち、図12(c)に示すように、側面視コ字状の部材が、幅方向両側からそれぞれ差し入れられて、その主筋6と補助筋9に係止されている。
ここで、主筋6は、梁1の上面又は下面近くの梁軸方向の配筋であり、図示するように上下二本の主筋6a,6bで構成される場合もある。補助筋9は、その主筋6よりも貫通孔2寄りに設けられた梁軸方向の配筋である(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに、貫通孔2を形成するための筒状部材(鋼管)に、あばら筋7に沿って配置される複数の補助補強部材8を、溶接で固定する技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−175021号公報
【特許文献2】特開平07−207837号公報
【特許文献3】特開2007−51533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2に示す補助補強部材8(図12参照)は、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ、梁1の幅方向両側から、側面視コ字状の鉄筋を複数組み差し入れている。
【0012】
このため、部材の点数が多くなるとともに、主筋等への係止箇所数や、その結束作業の箇所数も多くなり、作業が繁雑であるという問題がある。
【0013】
また、特許文献3に記載の補助補強部材は、貫通孔2を構成する鋼管との溶接に際し、相当な精度が要求される。また、溶接の手間は相当なものであり、配筋箇所の主筋と鋼管との位置関係に合わせて、各箇所毎に製作する必要がある。
【0014】
そこで、この発明は、梁の貫通孔の上方又は下方において、あばら筋の密度が疎らな部分に設けられ主筋の座屈に対抗する補助補強部材の配筋を、容易に可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、梁に、その梁の梁軸方向に配筋された主筋と、その主筋を囲んで配筋されたあばら筋と、その梁の梁幅方向に伸びる貫通孔とを備え、前記主筋に係止される補助補強部材を前記貫通孔の上方又は下方に備え、前記補助補強部材は、前記梁の主筋へ係止される係止部と、その係止部から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に前記貫通孔の梁高さ方向の中心を通る梁軸線に近づく補強部とを備え、前記補強部は、前記梁軸線に最も近い部分の高さが、前記係止部を係止した前記主筋の高さと、その主筋に最も近い前記貫通孔の外縁の高さとの間に位置することを特徴とするコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造を採用した。
【0016】
すなわち、補助補強部材が貫通孔の上方に備えられている場合、その補助補強部材は、前記梁の上部の主筋へ係止される係止部と、その係止部から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に下方に向かう補強部とを備え、前記補強部は、その最も下方に位置する部分が、前記貫通孔の上縁の高さよりも上方に位置する構成である。また、補助補強部材が貫通孔の下方に備えられている場合、補助補強部材は、前記梁の下部の主筋へ係止される係止部と、その係止部から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に上方に向かう補強部とを備え、前記補強部は、その最も上方に位置する部分が、前記貫通孔の下縁の高さよりも下方に位置する構成である。
【0017】
これらの構成によれば、補助補強部材が、主筋への係止部を夾んで、梁軸方向両方へそれぞれ伸びるので、その補助補強部材は、その係止部を夾んで両側のバランスがよい。
このため、その係止部を、一旦主筋に係止すれば、その後は補助補強部材の体勢が変わりにくい。したがって、補助補強部材を容易に固定できる。
【0018】
なお、上記のように、補助補強部材は、前記貫通孔の上方に備えられていてもよいし、前記貫通孔の下方に備えられていてもよいが、さらには、前記貫通孔の上方及び下方にそれぞれ備えられていても良い。
【0019】
また、上記の各構成において、前記係止部を係止した前記主筋の梁高さ方向中心側に、前記梁の梁軸方向に伸びる補助筋を配置し、前記補強部に第二係止部を設け、その第二係止部を前記補助筋に係止した構成を採用することができる。
【0020】
補助補強部材が、主筋への係止部を夾んで、梁軸方向両方へそれぞれ伸びて、その先に補助筋への第二係止部を備えるので、その補助補強部材を配筋する際は、例えば、補助筋を配筋する前に、既に配筋されている主筋に係止部を係止しておき、その後、補助筋を梁軸方向に沿って所定の位置まで挿通することにより、その補助補強部材の第二係止部を補助筋に係止させることができる。
【0021】
あるいは、その補助補強部材を配筋する際において、主筋と補助筋の配筋の順序を逆としてもよい。すなわち、例えば、主筋を配筋する前に、既に配筋されている補助筋に、補助補強部材の第二係止部を係止しておき、その後、主筋を梁軸方向に沿って所定の位置まで挿通することにより、その補助補強部材の係止部を主筋に係止させることができる。
【0022】
このとき、補助補強部材の第二係止部を、一旦、補助筋に係止すれば、その後は補助補強部材の体勢が変わりにくい。したがって、補助補強部材を容易に固定できる。
【0023】
なお、補助補強部材の前記係止部、第二係止部は、その補助補強部材を、主筋又は補助筋に係止できる機能を有していればよく、例えば、補助補強部材の一部にフック状の部材を溶接等により取付けて、そのフック状の部材を、主筋又は補助筋に引っ掛けてもよいし、あるいは、補助補強部材の一部を番線等で縛って主筋又は補助筋に係止し、その係止した箇所を前記係止部、第二係止部としてもよい。
【0024】
また、補助筋とは、係止部を係止する対象となる主筋に沿って、その主筋よりも梁高さ方向中央側、すなわち、貫通孔側に配置された配筋を言い、この補助筋は、貫通孔の介在する部分のみに配置される比較的短い配筋であってもよいし、梁の全長に亘って配筋される比較的長い配筋であってもよい。また、貫通孔の上方、あるいは下方において、主筋を梁高さ方向に複数本並列して備える場合は、その並列する主筋のうち、貫通孔から遠い方を係止部を係止する対象となる主筋とし、貫通孔に近い方を前述の補助筋とすることもできる。
【0025】
これらの各構成において、前記補助補強部材は、軸状の部材又は板状の部材で構成されており、前記係止部及び第二係止部は、前記軸状の部材又は板状の部材を曲げて形成されたその曲げた部分の内側面が、前記主筋又は前記補助筋に当接する構成を採用することができる。
【0026】
軸状部材又は板状部材の屈曲部でもって、補助補強部材を主筋又は補助筋に係止する構成とすれば、その補助補強部材の製作が容易であるし、配筋時の係止作業も容易である。
【0027】
さらに、前記補助補強部材は前記係止部を複数備え、一方の前記係止部から伸びて他方の前記係止部側に向かう前記補強部と、他方の前記係止部から伸びて一方の前記係止部側に向かう前記補強部とが接続部で連結されている構成を採用することができる。
【0028】
このとき、例えば、その隣り合う二つの係止部から、それぞれその中央の接続部側と反対方向に向かう補強部において、それぞれ補助筋への第二係止部を設けることができる。
【0029】
また、前記補助補強部材は前記係止部を複数備え、一方の前記係止部から伸びて他方の前記係止部側に向かう前記補強部と、他方の前記係止部から伸びて一方の前記係止部側に向かう前記補強部との間に、前記第二係止部を備える構成を採用することができる。
【0030】
この場合、例えば、その隣り合う二つの係止部から、それぞれその中央の第二係止部側と反対方向に向かう補強部において、それぞれ補助筋への第二係止部を設けることができる。あるいは、隣り合う二つの係止部間に第二係止部が介在するから、中央の第二係止部側と反対方向に向かう補強部においては、第二係止部の設置を省略した構成も考えられる。
【0031】
これらのいずれの構成においても、主筋への係止部が、梁軸方向に沿って複数備えられるので、その補助補強部材の主筋への係止が、さらに安定する。
【0032】
さらに、これらの各構成において、前記補助補強部材を、同一の前記主筋に対して梁軸方向に複数個並列して係止した構成を採用することができる。
例えば、係止部を一つ備えた補助補強部材を、一本の主筋に対して二つ、あるいは、貫通孔の径が特に大きい場合等は、三つ以上を梁軸方向に並列して係止してもよいし、係止部を二つ備えた補助補強部材を、一本の主筋に対して同様に二つ以上並列して配置してもよい。
【発明の効果】
【0033】
この発明は、梁の貫通孔の上方又は下方において、あばら筋の密度が疎らな部分に設けられる補助補強部材の固定を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施形態の正面断面図
【図2】図1の側面断面図
【図3】一実施形態の補助補強部材の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図、(f)は背面図
【図4】図3の補助補強部材の斜視図
【図5】他の実施形態の補助補強部材の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は底面図
【図6】図5の補助補強部材の斜視図
【図7】さらに他の実施形態を示す正面断面図
【図8】図7の実施形態の補助補強部材の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図、(f)は背面図
【図9】さらに他の実施形態を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)の右側面図
【図10】貫通孔を設けたコンクリート造梁の施工例を示す説明図
【図11】従来例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は環状補強部材の正面図
【図12】従来例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は補強部材を配筋する際の説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を、図1乃至図4に基づいて説明する。この実施形態のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造は、柱4,4間を結ぶ梁1(例えば、図10参照)に設けた貫通孔2の周囲を環状補強部材10で補強し、さらに、その貫通孔2の上方及び下方を、それぞれ補助補強部材20で補強した構成である。
【0036】
環状補強部材10は、梁1にせん断応力が作用した場合に生じる初期せん断ひび割れが、貫通孔2の周囲に進展した場合に、その初期のせん断ひび割れに対して交差する方向に所定の部材が位置するように配置されている。
すなわち、環状補強部材10は、コンクリートとの付着力により、貫通孔2周囲に発生しやすいせん断ひび割れの進展を抑制する。
【0037】
図1及び図2は、梁1内の配筋状態の一部を示したものである。図中に示す符号6は主筋を、符号7は、その主筋6周りに巻回して固定されるあばら筋(せん断補強筋)を示している。
【0038】
梁1の貫通孔2は、その孔中心線の方向が、その梁1の長さ方向(梁1の梁軸方向)に直交して設けられており、その貫通孔2周囲には、その貫通孔2の長さ方向(梁1の梁幅方向)に沿って、梁1の表裏二箇所に、それぞれ前述の環状補強部材10を配置している。その各環状補強部材10は、図2に示すように、梁1の梁幅方向表面側と裏面側とに、それぞれ所定の被りを確保して貫通孔2を囲むように配置されており、例えば、それぞれ対応する側のあばら筋7に番線等の結束材等により固定されている。
【0039】
前記主筋6は、図1及び図2に示すように、梁1の上面又は下面近くで梁軸方向に配筋されている。この実施形態では、上下に並ぶ二本の主筋6a,6bを1組として、その二本の主筋6a,6bを、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ梁1の梁幅方向表面側と裏面側とに設けている。
【0040】
また、それらの主筋6よりも貫通孔2寄り(梁高さ方向中心側)に、梁軸方向に伸びる補助筋25を備えている。補助筋25は、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ梁幅方向表裏両側で、その主筋6に沿って設けられる。
【0041】
また、この実施形態では、補助筋25は、梁1の全長に亘って設けるのではなく、貫通孔2の近傍にのみ設けられる梁軸方向長さLの水平筋で構成されている。補助筋25はその長さが短いから、あばら筋7への固定も簡単である。
【0042】
そして、前記補助補強部材20は、この主筋6と補助筋25との間に掛け渡される。この補助補強部材20についても、前記補助筋25と同様に、貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ梁幅方向表裏両側に設けられる。
【0043】
補助補強部材20の構成は、図3及び図4に示すように、一本の連続する鉄筋(軸状部材)で構成される。なお、この軸状部材の素材は自由であり、この実施形態で用いた鉄筋以外の素材であってもよい。例えば、連続繊維に未硬化の樹脂を含浸させてその樹脂を硬化させたものを用いてもよい。
【0044】
その補助補強部材20は、図2及び図3に示すように、前記軸状部材の長さ方向中ほどに、前記主筋6への係止箇所となる2箇所の係止部21を備えている。この係止部21は、前記軸状部材に設けられた屈曲部21aで構成されている。
【0045】
また、その補助補強部材20は、主筋6への係止部21から梁軸方向両側に伸びて、それぞれ徐々に、図1等に示す梁軸線Mに近づく補強部22,22を備える。この梁軸線Mは、梁1の正面視において、貫通孔2の梁高さ方向の中心を通って、梁1の梁軸方向に並行に伸びる仮想線を示している。
この実施形態では、補強部22は、係止部21から梁軸方向両側にそれぞれ伸びて、それぞれ徐々に前記補助筋25に近づく、斜め方向の直線状の補強部22,22となっている。
【0046】
さらに、その各補強部22,22の先端に、前記補助筋25に係止される第二係止部23をそれぞれ備える。この第二係止部23も、前記軸状部材に設けられた屈曲部23aで構成されている。
【0047】
この実施形態では、補助補強部材20は、前記係止部21を複数(二つ)備え、その二つの係止部21,21間において、一方の前記係止部21から伸びて他方の前記係止部21側に向かう前記補強部22と、他方の前記係止部21から伸びて一方の前記係止部21側に向かう前記補強部22とが、接続部24で連結されている。接続部24も、前記軸状部材に設けられた屈曲部24aで構成されている。
【0048】
すなわち、補助補強部材20は、梁軸方向に沿って順に、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、接続部24、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23が配置されている。
【0049】
この補助補強部材20は、軸状の部材を曲げて構成されているから、前記係止部21及び第二係止部23を構成する屈曲部21a,23aは、その屈曲部21a,23aの内側面が、前記主筋6又は前記補助筋25に当接することで、その主筋6又は補助筋25に係止されている。
【0050】
この実施形態では、補強部22は、梁軸方向、梁高さ方向に対して交差する方向に伸びる直線状の傾斜部で構成されているが、この補強部22において、例えば、前記係止部21と第二係止部23とを結ぶ途中に、梁軸方向に直交して上下方向に伸びる部分や、梁軸方向に並行に伸びる部分などが部分的に介在したり、あるいは、湾曲部や屈曲部を伴っていても差し支えない。このため、例えば、梁軸方向に直交して上下方向に伸びる部分と梁軸方向に並行に伸びる部分とが交互に配置された階段状の補強部22としてもよい。
【0051】
なお、この補助補強部材20は、貫通孔2の上部に配置される場合は、その補強部22の下端が、貫通孔2の上端(外周面の最上部の位置)を超える程の長さは必ずしも必要ない。また、補助補強部材20が貫通孔2の下部に配置される場合は、その補強部22の上端が、貫通孔2の下端(外周面の最下部の位置)を超える程の長さは必ずしも必要ない。これは、補助補強部材20は、貫通孔2の上方又は下方における無筋部分を補強するためのものだからである。
【0052】
すなわち、補助補強部材20の補強部22は、前記梁軸線Mに最も近い部分の高さが、前記係止部21を係止した前記主筋6の高さと、その主筋6に最も近い前記貫通孔2の外縁の高さとの間に位置している。
【0053】
また、この実施形態では、前記屈曲部21a,23aは、両側の補強部22,22間を結ぶように円弧状に形成されており、その円弧の内側向きの面が、前記主筋6(この例では主筋6a)又は補助筋25に当接した状態で、補助補強部材20は主筋6に係止されるようになっている。すなわち、図3(b)(d)に示すように、その屈曲部21a,23aが側面視U字状となっている。
この屈曲部21a,23aは、例えば、曲げ加工によるのではなく、別々の部材を溶接により接合して形成してもよいから、このように円弧状に形成されたものに限定されず、例えば、側面視V字状など鋭角状に屈曲する構成を採用してもよい。
【0054】
また、この実施形態では、図3(c)(f)に示すように、補強部22,22間の成す角度は60度となって、補助補強部材20は、全体として正面視二等辺の山形形状の連続となっている。なお、この角度は、60度に限定されず、例えば、90度など他の角度に設定してもよい。
【0055】
また、この実施形態では、軸状部材は全長に亘って同一径となっており、二つの前記係止部21,21間の中央を夾んで、両側の部材は、等しい重量、等しい長さに形成されている。このため、補助補強部材20のバランスがよく、その補助補強部材20の姿勢を安定させる上で有効であり、貫通孔2の梁軸方向の両側を均等に補強できる。
【0056】
この実施形態の施工方法について説明すると、まず、コンクリート造梁1に必要な通常の配筋を行う。すなわち、図示しない型枠内に、主筋6、あばら筋7、及び貫通孔2を形成するための筒状部材、環状補強部材10を配置する。
この配置方法は通常通りであり、主筋6は、梁軸方向に沿ってその梁1の上部と下部にそれぞれ複数本並列して配置する。また、その主筋6に直交する方向にあばら筋7を配置していく。あばら筋7は、梁長さ方向に沿って所定の間隔で配置し、貫通孔2の位置は避けて配置する。
【0057】
そのあばら筋7とあばら筋7との間の隙間から、環状補強部材10をそのあばら筋7で囲まれた空間内に差し入れて、その環状補強部材10を貫通孔2周囲に固定する。環状補強部材10は、例えば、あばら筋7に対して番線等の結束材で固定することができる。
【0058】
つぎに、補助補強部材20を、所定の箇所に配置する。補助補強部材20は、図4に示すように、梁軸方向に沿って二つの係止部21,21を備えているから、貫通孔2の上部については、その係止部21,21が、主筋6に引っ掛かるように、上方から下方に向かって差し入れる。また、貫通孔2の下部については、その係止部21,21が、主筋6に引っ掛かるように、下方から上方に向かって差し入れる。
【0059】
その後、あばら筋7とあばら筋7との間の隙間から、水平筋である前記補助筋25をそのあばら筋7で囲まれた空間内に差し入れる。補助筋25は、あばら筋7等に対して番線等の結束材で固定することができる。
【0060】
この補助筋25の挿入によって、補助補強部材20は、主筋6と補助筋25とに係止されて、所定の位置に動かないように固定される。なお、このとき、二つの係止部21,21間の中央が、貫通孔2の直上にくるようにする。すなわち、貫通孔2の中心を通る鉛直線に対して、補助補強部材20の配置を梁軸方向に対称としているのである。
【0061】
以上のように、梁1に配置される貫通孔2の上方及び下方において、それぞれ、主筋6への係止部21、及び補助筋25への第二係止部23とを備えた補助補強部材20を配置したので、あばら筋7の配筋が疎らとなりがちな貫通孔2の上方及び下方において、その容易な配筋が可能となる。
【0062】
特に、貫通孔2の上方の主筋6に係止する補助補強部材20の場合は、係止部21が主筋6に係止されることで、その補助補強部材20はその自重で垂れ下がるように支持される。
このため、別段に作業者が持ち上げて向きを変えたりしなくても所定の向きに配置されるので、補助補強部材20の配置、固定作業が、格段に容易となる。
【0063】
なお、補助補強部材20の前記係止部21や第二係止部23は、梁幅方向に並列する複数の主筋6に係止できるようにしてもよい。
【0064】
他の実施形態を図5及び図6に示す。この実施形態は、補助補強部材20は、前記係止部21を複数(二つ)備えているから、その二つの係止部21,21間において、一方の前記係止部21から伸びて他方の前記係止部21側に向かう前記補強部22と、他方の前記係止部21から伸びて一方の前記係止部21側に向かう前記補強部22との間に、前記第二係止部23を備える。
【0065】
すなわち、補助補強部材20は、梁軸方向に沿って順に、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23が配置されている。
【0066】
補助補強部材20に関するその他の構成や、その施工方法等については、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
さらに他の実施形態を図7及び図8に示す。この実施形態は、係止部21を一つ備えた補助補強部材20を、同一の主筋6に対して梁軸方向に2個並列して係止したものである。
【0068】
この実施形態では、貫通孔2の位置が梁高さ方向に対してやや下方に偏心して配置されている。すなわち、貫通孔2の中心を通る梁軸方向に並行な梁軸線Mの位置は、梁1の梁高さ方向中央よりも、やや下方に位置している。このため、補助補強部材20は、貫通孔2の上部にのみ設けられている。
【0069】
補助補強部材20の構成は、図7に示すように、主筋6への係止部21から梁軸方向両側に伸びて、それぞれ徐々に梁軸線Mに近づく補強部22,22を備える。その補強部22の先端に、それぞれ補助筋25への第二係止部23を備えている。
【0070】
すなわち、補助補強部材20は、梁軸方向に沿って順に、第二係止部23、補強部22、係止部21、補強部22、第二係止部23が配置されている。
【0071】
その補助補強部材20を、梁軸方向に沿って複数並列して配置したことにより、例えば、貫通孔2の径が比較的大きい場合において、あばら筋7が疎らとなる貫通孔2の上部又は下部の補強範囲が広い場合にも、その補助補強部材20の配置数を増やすことで容易に対応できる。すなわち、様々な形状の補助補強部材20を用意する必要がない。
【0072】
また、並列する二つの補助補強部材20,20は、図7に示す正面視において、第二係止部23,23同士が、梁軸方向に重なり代をもって配置されている。この重なり代の部分において、一方の補助補強部材20の第二係止部23は、梁幅方向一方側から他方側に向かって補助筋25に巻回されており、他方の補助補強部材20の第二係止部23は、梁幅方向他方側から一方側に向かって補助筋25に巻回されている。
【0073】
このように、重なり代の部分において、重複する第二係止部23,23同士の向きを梁幅方向に反対方向とすることで、配筋時の作業の容易化と、整然とした配筋を可能としている。
【0074】
この補助補強部材20に関するその他の構成や、その施工方法等については、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
さらに他の実施形態を図9に示す。この実施形態は、図5及び図6に示す実施形態の補助補強部材20を、貫通孔2の位置が梁高さ方向に対して偏心している梁1に適用したものである。
【0076】
この実施形態では、貫通孔2の位置が梁高さ方向に対してやや上方に偏心して配置されているため、貫通孔2の中心を通る梁軸方向に並行な梁軸線Mの位置は、梁1の梁高さ方向中央よりも、やや上方に位置している。
【0077】
補助補強部材20は、貫通孔2の上部にのみ設けられている。また、貫通孔2の下部においては、梁1の最も下部に位置する主筋6と、貫通孔2の直下に設けられた補助筋25とを結ぶあばら筋7に並行な補強部材26を配置している。
【0078】
この補助補強部材20に関するその他の構成や、その施工方法等については、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0079】
なお、いずれの実施形態においても、補助補強部材20は、その構成素材を前述の軸状部材に代えて、板状部材としてもよい。補助補強部材20として板状部材を採用する場合において、前記係止部21や第二係止部23を屈曲部21a,23aで構成する場合は、その屈曲は、フラットな板状部材の板面を湾曲させるように曲げ加工を施して前記屈曲部とすると、容易に製作できる。
【0080】
また、これらの各実施形態では、補助筋25は、梁1の全長に亘って設けるのではなく、貫通孔2の近傍にのみ設けられる梁軸方向長さLの水平筋で構成したが、この補助筋25を、主筋6と同様に、梁1の軸方向全長に亘って設けてもよい。あるいは、上下に並列して配置された複数本の主筋6のうちの一つを、前記補助筋25としてもよい。
また、補助補強部材20は、前記貫通孔2の上方及び下方の両方に備えてもよいし、上方又は下方のいずれか一方に備えてもよい。
【0081】
また、これらの各実施形態では、補助補強部材20は、主筋6に対する係止部21を梁軸方向に沿って二つ設けたが、この係止部21を梁軸方向に沿って三つ以上設けてもよい。このとき、梁軸方向に沿って隣り合う二つの係止部21,21間には、前述の接続部24を設けてもよいし、前述の第二係止部23を設けてもよい。
逆に、主筋6に対する係止部21を梁軸方向に沿って一つだけ設けた補助補強部材20としてもよい。このとき、第二係止部23は、係止部21から梁軸方向両側に伸びる補強部22,22のうち一方に設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0082】
また、これらの各構成からなる補助補強部材20を、同一の前記主筋6に対して梁軸方向に複数個並列して係止した構成を採用することができる。
例えば、係止部21を一つ又は二つ以上備えた上記各実施形態の補助補強部材20を、貫通孔2の上部及び下部、又はそのいずれかにおいて、一本の主筋6に対して二つ、あるいは、三つ以上を梁軸方向に並列して係止してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 梁(コンクリート造梁)
2 貫通孔
3 配管
4 柱
6,6a,6b 主筋
7 あばら筋(せん断補強筋)
8 補助補強部材
9 補助筋
10 環状補強部材
20 補助補強部材
21 係止部
22 補強部
23 第二係止部
24 接続部
21a,23a,24a 屈曲部
25 補助筋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁(1)に、その梁(1)の梁軸方向に配筋された主筋(6)と、その主筋(6)を囲んで配筋されたあばら筋(7)と、その梁(1)の梁幅方向に伸びる貫通孔(2)とを備え、前記主筋(6)に係止される補助補強部材(20)を前記貫通孔(2)の上方又は下方に備え、
前記補助補強部材(20)は、前記梁(1)の主筋(6)へ係止される係止部(21)と、その係止部(21)から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に前記貫通孔(2)の梁高さ方向の中心を通る梁軸線(M)に近づく補強部(22,22)とを備え、前記補強部(22)は、前記梁軸線(M)に最も近い部分の高さが、前記係止部(21)を係止した前記主筋(6)の高さと、その主筋(6)に最も近い前記貫通孔(2)の外縁の高さとの間に位置することを特徴とするコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項2】
前記係止部(21)を係止した前記主筋(6)の梁高さ方向中心側に、前記梁(1)の梁軸方向に伸びる補助筋(25)を配置し、前記補強部(22)に第二係止部(23)を設け、その第二係止部(23)を前記補助筋(25)に係止したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項3】
前記補助補強部材(20)は、軸状の部材又は板状の部材で構成されており、前記係止部(21)及び第二係止部(23)は、前記軸状の部材又は板状の部材を曲げて形成されたその曲げた部分の内側面が、前記主筋(6)又は前記補助筋(25)に当接することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項4】
前記補助補強部材(20)は前記係止部(21)を複数備え、一方の前記係止部(21)から伸びて他方の前記係止部(21)側に向かう前記補強部(22)と、他方の前記係止部(21)から伸びて一方の前記係止部(21)側に向かう前記補強部(22)とが接続部(24)で連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項5】
前記補助補強部材(20)を、同一の前記主筋(6)に対して梁軸方向に複数個並列して係止したことを特徴とする1乃至4のいずれか一つに記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項1】
梁(1)に、その梁(1)の梁軸方向に配筋された主筋(6)と、その主筋(6)を囲んで配筋されたあばら筋(7)と、その梁(1)の梁幅方向に伸びる貫通孔(2)とを備え、前記主筋(6)に係止される補助補強部材(20)を前記貫通孔(2)の上方又は下方に備え、
前記補助補強部材(20)は、前記梁(1)の主筋(6)へ係止される係止部(21)と、その係止部(21)から梁軸方向両側に伸びてそれぞれ徐々に前記貫通孔(2)の梁高さ方向の中心を通る梁軸線(M)に近づく補強部(22,22)とを備え、前記補強部(22)は、前記梁軸線(M)に最も近い部分の高さが、前記係止部(21)を係止した前記主筋(6)の高さと、その主筋(6)に最も近い前記貫通孔(2)の外縁の高さとの間に位置することを特徴とするコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項2】
前記係止部(21)を係止した前記主筋(6)の梁高さ方向中心側に、前記梁(1)の梁軸方向に伸びる補助筋(25)を配置し、前記補強部(22)に第二係止部(23)を設け、その第二係止部(23)を前記補助筋(25)に係止したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項3】
前記補助補強部材(20)は、軸状の部材又は板状の部材で構成されており、前記係止部(21)及び第二係止部(23)は、前記軸状の部材又は板状の部材を曲げて形成されたその曲げた部分の内側面が、前記主筋(6)又は前記補助筋(25)に当接することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項4】
前記補助補強部材(20)は前記係止部(21)を複数備え、一方の前記係止部(21)から伸びて他方の前記係止部(21)側に向かう前記補強部(22)と、他方の前記係止部(21)から伸びて一方の前記係止部(21)側に向かう前記補強部(22)とが接続部(24)で連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【請求項5】
前記補助補強部材(20)を、同一の前記主筋(6)に対して梁軸方向に複数個並列して係止したことを特徴とする1乃至4のいずれか一つに記載のコンクリート造梁の貫通孔周囲の配筋構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−196141(P2011−196141A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66154(P2010−66154)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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