説明

コンタクトとそれを備えるカードアダプタ及びカードコネクタ

【課題】カードアダプタやカードコネクタに備えるカード接触用コンタクトに安定した接触圧と高寿命を確保する。
【解決手段】カードアダプタやカードコネクタのカード挿入空間5fに配置して、カード1の片主面に設けられた接触パッド2に接触させるカード接触用コンタクト11を、一方に第1支点部11bを有する第1板バネ片部11cが、カード厚み方向に弾性変位可能に第1支点部11bからカード挿入方向とは逆方向に片持ち梁状に延び、その第1板バネ片部11cの他方を第2支点部11dとして一方に有する第2板バネ片部11eが、カード厚み方向に弾性変位可能に第2支点部11dから傾斜角を持ってカード挿入方向に片持ち梁状に延びる形状に形成され、その第2板バネ片部11eの他方をカード1の接触パッド2に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリカード等のカードの片主面に設けられた接触パッドに接触させるコンタクトとそれを備えるカードアダプタ及びカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
メモリカードを電子機器に接続するためのカードコネクタ及び1の規格、即ち小型化前のメモリカードに対応しているカードコネクタに、1の規格より小型化された他の規格のメモリカードを接続するためのカードアダプタのそれぞれのカード挿入空間には、カードの片主面に並設された複数の接触パッドのそれぞれに接触させる良導電性の金属板バネからなるコンタクト(接触部材)が備えられている。
【0003】
従来のコンタクトは、一方に荷重を支える支点部を有し、その支点部から傾斜角を持たせてカード挿入方向とは逆方向に延びる単純な片持ち梁形状に形成され、コンタクトの他方をカードの接触パッドに押し当てて接触させる構造になっている。
【0004】
このような従来のコンタクトとそれを備える従来のカードアダプタ及びカードコネクタは、例えば特許文献1、2によって知られている。
【特許文献1】特開2005−150000号公報
【特許文献2】特開2006−269102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カード接触用のコンタクトの現状としては、携帯電話に代表されるように電子機器の小型・薄型化やカード自体の小型・薄型化により、コンタクトも小型化され、しかもコンタクト変位量も益々抑えられ、それに伴って十分な接触圧を確保することが困難になっている(接触圧はフックの法則に従ってコンタクト変位量に比例する)。
【0006】
従来のコンタクトは、単純な片持ち梁形状に形成された対向型で、カード挿入による座屈の危険性があり、コンタクト変位量をある一定以上に大きくすることはできないため、十分な接触圧を確保するには、バネ定数を大きくするしかない。
【0007】
しかしながら、図18に示したコンタクトの接触圧F(N)と変位量x(mm)の関係から明らかなように、コンタクトのバネ定数kを大きくすると、適正な接触圧を得ることのできる変位量の範囲が狭くなるため(B<A)、接触部の位置を厳密に管理してバラツキを抑えないと安定した接触圧は得られず、安定した接触圧を確保することが困難になる。また、構造的に1箇所(1つの支点部)に応力が集中するのに加え、発生する応力もバネ定数kの増大に伴って大きくなるために寿命が短くなる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来のコンタクト形状では、安定した接触圧と高寿命を確保することができない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のコンタクトは、カード挿入空間に配置して、カードの片主面に設けられた接触パッドに接触させるコンタクトにおいて、一方に第1支点部を有する第1板バネ片部が、カード厚み方向に弾性変位可能に第1支点部からカード挿入方向とは逆方向に片持ち梁状に延び、その第1板バネ片部の他方を第2支点部として一方に有する第2板バネ片部が、カード厚み方向に弾性変位可能に第2支点部から傾斜角を持ってカード挿入方向に片持ち梁状に延びる形状に形成され、その第2板バネ片部の他方をカードの接触パッドに接触させることを特徴とする。
【0010】
上記構成を有する本発明のコンタクトは、カードの接触パッドに接触させる板バネ片部(第2板バネ片部)がその支点部(第2支点部)から傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に片持ち梁状に延びる非対向型になるため、カード挿入による座屈の危険性がなく、コンタクトの変位量を増減することで、接触圧を増減できる。よって、コンタクトのバネ定数を大きくしなくても十分な接触圧を確保することができ、適正な接触圧を得ることのできる変位量の範囲が狭くならず、接触部の位置を厳密に管理してバラツキを抑える必要もなくなる。したがって、コンタクトの安定した接触圧を容易に確保することができる。また、構造的に2箇所(第1板バネ片部の第1支点部と第2板バネ片部の第2支点部)に応力を分散することができるのに加え、発生する応力もバネ定数を大きくしないことで小さく抑えることができ、このような応力緩和によりコンタクトの寿命を延ばすことがでる。
【0011】
本発明のコンタクトにおいては、第2板バネ片部は、第1板バネ片部の他方から折り返し状に形成することもできるが、第1板バネ片部を部分的に切り起こして形成することが好ましい。この形態では、第2板バネ片部を第1板バネ片部の他方から折返部(曲げ半径)を介することなく直接、傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に片持ち梁状に延ばすことができ、より大きなコンタクトの変位量を得ることができるようになり、コンタクトの安定した接触圧がより確保し易くなる。
【0012】
また、本発明のコンタクトにおいては、第1板バネ片部の第1支点部に、カード挿入空間を形成するケース体への取付部を一体に連設することができる。さらに、取付部の第1板バネ部とは反対側に、外部接続用端子を一体に連設することができる。
【0013】
本発明のカードアダプタは、上記本発明のコンタクトを備えると共に、カード挿入空間を形成するケース体が、カード挿入空間に挿入するカードよりも大型の他のカードの外形形状を備えるアダプタ本体を構成していることを特徴とする。
【0014】
本発明のカードコネクタは、上記本発明のコンタクトを備えると共に、カード挿入空間を形成するケース体が、コンタクトを取付ける絶縁性の下ケースとその下ケースに被着する導電性の上ケースとで箱形状を備えるコネクタハウジングを構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンタクトによれば、安定した接触圧と高寿命を容易に確保することができる。
【0016】
本発明のカードアダプタによれば、それに備えるカード接触用のコンタクトに安定した接触圧と高寿命を容易に確保することができる。
【0017】
本発明のカードコネクタによれば、それに備えるカード接触用のコンタクトに安定した接触圧と高寿命を容易に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態を図1〜図12を参照して説明する。本実施形態では、1の規格、即ち小型化前のメモリカード、例えばメモリースティックPRO Duo(ソニー株式会社の商標)(以下、「大型カード」という。)を、1の規格より小型化された他の規格のメモリカード、例えばメモリースティックマイクロ(ソニー株式会社の商標)(以下、「小型カード」という。)に対応しているカードコネクタに接続するためのカードアダプタについて説明する。
【0019】
図1は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタを使用する小型カードの(A)表面図、(B)側面図、(C)裏面図である。図1に示すように、小型カード1は、この小型カード1に対応しているカードコネクタや本実施形態のカードアダプタへの挿入時に、前側に位置し、上側と下側のそれぞれにテーパ部1a,1bを有して断面先細り状に形成される前端部1cと、後側に位置し、平坦面からなる後端部1dとを備えている。また、左右両側縁部のそれぞれには、後端部1dと協働して、この小型カード1に対応しているカードコネクタや本実施形態のカードアダプタへの前後逆の誤挿入及び表裏逆の誤挿入を防止するための段部1e,1fを有し、これら段部1e,1fの後端部1d側には、この小型カード1に対応しているカードコネクタへの挿入時に、小型カード1をカードコネクタの装着位置に保持するための凹部1g,1hが形成されると共に、図1の(A)において右側の段部1fにおける凹部1hより前端部1c側には、本実施形態のカードアダプタへの挿入時に、小型カード1を本実施形態のカードアダプタの装着位置に保持するための凹部1iが形成されている。さらに、裏面(片主面)の前端部1c側には、外部接続用の接触パッド2が複数(11本)並設されている。
【0020】
図2は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの表面側の外観を示す斜視図、図3は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの裏面側の外観を示す斜視図である。図2,図3に示すように、本実施形態のカードアダプタ3は、内側に小型カード1を着脱自在に装着するアダプタ本体4が大型カードの外形形状を備えており、その大型カードに対応しているカードコネクタに接続できるようになっている。即ちアダプタ本体4は、大型カードと同様に、大型カードに対応しているカードコネクタへの挿入時に、前側に位置し、下側にデーパ部4aを有する前端部4bと、後側に位置し、平坦面からなる後端部4cとを備えている。また、大型カードに対応しているカードコネクタへの前後逆の誤挿入や表裏逆の誤挿入を防止するために、前端部4b側の図2において左端部に角落とし部4cを有すると共に、その角落とし部4cの直後の裏面(片主面)には、前方及び下方に開放した凹部4dが形成されている。さらに、裏面の前端部4b側には、外部接続用端子保護用に前方及び下方に開放した凹部4eが誤挿入防止用の凹部4dと並べて複数(10本)形成され、その外部接続用端子保護用の凹部4eのそれぞれの底部に外部接続用端子4fが配置されて、裏面(片主面)の前端部4b側に、外部接続用端子4fが複数(10本)並設されている。そして、このようなアダプタ本体4には、その後端部4c側の側面に小型カード1を挿入するカード挿入口4gが形成されている。
【0021】
図4は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタを分解した状態を示す斜視図である。図4に示すように、本実施形態のカードアダプタ3は、絶縁性の合成樹脂からなる1ピース構造の下ケース5と、この下ケース5とでアダプタ本体4を構成する2ピース構造の上ケース、即ち絶縁性の合成樹脂からなる樹脂カバー6及び静電破壊対策やノイズ対策を施す導電性の金属板からなる金属カバー7と、アダプタ本体4に内蔵し、小型カード1をアダプタ本体4の装着位置に保持するためのロックバネ8と、絶縁性の合成樹脂からなるインシュレータ(絶縁体)9に一体的に保持してアダプタ本体4に内蔵し、金属カバー7に接触させて両端の外部接続用端子4fを導通接続させる複数(2本)のシールド用コンタクト10、及び、小型カード1の接触パッド2に接触させて対応する外部接続用端子4fを導通接続させる本発明に係る複数(9本)のカード接触用コンタクト11から構成されている。
【0022】
図5は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの上ケースを除去した状態(上ケース取付け前の半組立て状態)を示す斜視図である。図4,図5に示すように、下ケース5は、底壁5aと、底壁5aの前端縁部及び左右両側縁部に立設された側壁5bとを一体に形成してなり、側壁5bには、上ケース位置決め用凹部5c-1を複数設けると共に、側壁5bの上部には、上ケース溶着用凸部5c-2を上方に突出して複数設けている。また、下ケース5の内側には、その前端部側に外部接続用端子4fを位置決めして支持するための外部接続用端子装着部5dを形成し、その外部接続用端子装着部5dの後側にインシュレータ9を位置決めして支持するためのインシュレータ装着部5eを連通して連続形成し、そのインシュレータ装着部5の後側にカード挿入空間5fを連通して連続形成し、そのカード挿入空間5fの後端側がカード挿入口4fに連通接続される。また、外部接続用端子装着部5dの底面には、外部接続用端子保護用の凹部4eのそれぞれに貫通する外部接続用端子露出孔5gが複数(10個)並設されている。また、側壁5bには、インシュレータ装着部5の後端部側で図4において左側の角部に部分的に突出し、小型カード1のカード挿入空間5fへの挿入時に、小型カード1の前端部1cを受け止めてその小型カード1の挿入規制を行うためのストッパー部5hが形成され、そのストッパー部5hの厚み内には、一方のシールド用コンタクト10を装着するためのコンタクト装着部5jがインシュレータ装着部5に連通して連続形成されると共に、底壁5aには、インシュレータ装着部5の後端部側で図4において右側の角部付近に島状に立設し、小型カード1のカード挿入空間5fへの挿入時に、小型カード1の前端部1cを受け止めてその小型カード1の挿入規制を行うためのストッパー部5kが形成され、インシュレータ装着部5の後端部側で図4において右側の角部に作られるストッパー部5kと側壁5bの隙間で、他方のシールド用コンタクト10を装着するためのコンタクト装着部5mがインシュレータ装着部5e及びカード挿入空間5fに連通して連続形成されている。また、カード挿入空間5fの底面には、その前端部側(奥側)にカード接触用コンタクト11のそれぞれに対応して前後方向(カード挿抜方向)に延びる細幅のコンタクト収容溝5nが複数(9本)並設されている。さらに、カード挿入空間5fの図4において右側にある側壁の厚み内には、ロックバネ8を装着するためのロックバネ装着部5qが形成され、そのロックバネ装着部5qの後端部側がカード挿入空間5fに連通接続されている。
【0023】
図6は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの断面図、図7は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの小型カード装着状態の断面図である。図2,図4,図6,図7に示すように、樹脂カバー6及び金属カバー7からなる2ピース構造の上ケースは、樹脂カバー6によりカード挿入空間5f以外の下ケース5上部を一体的に覆い、金属カバー7によりカード挿入空間5fの上部を覆うように、樹脂カバー6は、その後端部側にカード挿入空間5fに対応する大きさの切欠部6aを有し、後方に向けて開口される略コの字形状に形成され、金属カバー7は、樹脂カバー6の切欠部6a形状に対応して矩形状に形成され、その切欠部6aに嵌合できるようになっている。また、樹脂カバー6の内表面には、下ケース5の上ケース位置決め用凹部5c-1のそれぞれに嵌合させる図示しない複数の上ケース位置決め用凸部及び下ケース5の上ケース溶着用凸部5c-2のそれぞれに嵌合させる図示しない複数の上ケース溶着用凹部が形成されている。また、金属カバー7の左右両側縁部のそれぞれには、カード挿入空間5fの左右両側にある下ケース5の側壁5b上部に重ね合わせる固定片7a,7bが、段部7c,7dを介し1段下げられて一体的に連設され、これら固定片7a,7bのそれぞれには、カード挿入空間5fの左右両側にある下ケース5の上ケース溶着用凸部5c-2に嵌合させる金属カバー位置決め用の上下貫通の係合孔7eが複数形成されている。さらに、金属カバー7の前端縁部は、下向きに曲げ形成されて金属カバー位置決め用の係合片7fになっている。
【0024】
図4,図5に示すように、ロックバネ8は、略U字状に曲げられた金属板バネからなり、そのロックバネ8の一端部側には、金属板バネを長さ方向に沿って山形に曲げてなる係合部8aが設けられている。
【0025】
本実施形態のカードアダプタ3の組立ては、図5に示すように、ロックバネ8を下ケース5のロックバネ装着部5qに装着し、ロックバネ8の弾性力によってその係合部8aをロックバネ装着部5q後端部側のカード挿入空間5fとの連通部からカード挿入空間5fに突出させる。また、インシュレータ9を下ケース5のインシュレータ装着部5eに装着し、全ての外部接続用端子4fとともにシールド用コンタクト10及びカード接触用コンタクト11を下ケース5に一括に装着する。この後、金属カバー7の係合孔7eを下ケース5の上ケース溶着用凸部5c-2に嵌合させると共に、金属カバー7の前端縁部の係合片7fをインシュレータ9の後述する係合溝に嵌合させながら、金属カバー7の固定片7a,7bをカード挿入空間5fの左右両側にある下ケース5の側壁5b上部に重ね合わせて、金属カバー7によりカード挿入空間5fの上部を覆った後、樹脂カバー6の上ケース位置決め用凸部及び上ケース溶着用凹部を下ケース5の上ケース位置決め用凹部5c-1及び上ケース溶着用凸部5c-2に嵌合させるとと共に、金属カバー7を樹脂カバー6の切欠部6aに嵌合させながら、金属カバー7の固定片7a,7bとインシュレータ9を下ケース5との間に挟み込んだ状態で、樹脂カバー6によりカード挿入空間5f以外の下ケース5の上部を覆い、図2,図6に示すように、樹脂カバー6と金属カバー7からなる2ピース構造の上ケースにより下ケース5の上部全面を覆う。そして、樹脂カバー6によりカード挿入空間5f以外の下ケース5の上部を覆った後に、嵌合状態の下ケース5の上ケース溶着用凸部5c-2と樹脂カバー6の上ケース位置決め用凸部とを超音波溶着して、樹脂カバー6と金属カバー7からなる2ピース構造の上ケースを下ケース5上部に固定し、アダプタ本体4を形成することにより、完了する。
【0026】
上記のように組立てられた本実施形態のカードアダプタ3は、アダプタ本体4が、図2,図3に示すように、大型カードの外形形状を備えて、その後端部4c側の側面にカード挿入口4gが形成されている。また、図5に示すように、ロックバネ8がアダプタ本体4に内蔵されると共に、インシュレータ9を介して全ての外部接続用端子4fとともにシールド用コンタクト10及びカード接触用11がアダプタ本体4に一括に内蔵されている。さらに、アダプタ本体4内におけるインシュレータ9の後側には、インシュレータ9により閉じられた前端部及びカード挿入口4gにより外部に開放された後端部とを有するカード挿入空間5fが形成され、図2,図3,図6に示すように、小型カード1がアダプタ本体4のカード挿入口4gを通してカード挿入空間5fに挿入装着できるようになっている。
【0027】
図8は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるコンタクト郡の外観を示す斜視図、図9は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるコンタクト郡の(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。また、図10は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるコンタクト郡を成形したフープ材の(A)平面図、(B)断面図、(C)側面図である。本実施形態のカードアダプタ3に備えるコンタクト郡、即ち2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11は、図10に示すように、良導電性を持ったバネ材料からなるフープ材12に打抜き加工で並列に一体に連結した状態で成形される。この成形状態では、コンタクト郡の左右両端に2本のシールド用コンタクト10が形成され、その2本のシールド用コンタクト10の間に9本のカード接触用コンタクト11が並列に形成されている。また、シールド用コンタクト10のそれぞれには、その中間部にアダプタ本体4への取付部10aが形成され、カード接触用コンタクト11のそれぞれにも、その中間部にアダプタ本体4への取付部11aが形成されている。ここで、図10において右側のシールド用コンタクト10の取付部10aは、図10において右端のカード接触用コンタクト11の取付部11aに一体に形成され、図10において左側のシールド用コンタクト10の取付部10aと図10において左端のカード接触用コンタクト11の取付部11aの間及びカード接触用コンタクト11のそれぞれの取付部11aの間には、隣接する取付部を一体に連結する繋ぎ部12aが複数形成されると共に、シールド用コンタクト10のそれぞれの取付部10aとフープ材12の間には、一体に連結された2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11(コンタクト郡)をフープ材(キャリア)12に一体に連結する繋ぎ部12bが複数形成されている。
【0028】
また、図10において左側のシールド用コンタクト10の取付部10aと9本のカード接触用コンタクト11のそれぞれの取付部11aには、その一端側に外部接続端子4fが一体に連続形成されて、一体に連結された2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11(コンタクト郡)の一端側に外部接続端子4fが複数(10本)並列に配置されている。なお、図10において右端の外部接続端子4fは、図10において右側のシールド用コンタクト10と図10において右端のカード接触用コンタクト11との共通の外部接続端子になっている。
【0029】
さらに、シールド用コンタクト10のそれぞれの取付部10aには、その他端側に屈曲部が形成され、その屈曲部を荷重を支える支点部10bとして一方(根元)に有し、フープ材12の厚み方向に弾性変位可能に、支点部10bから傾斜角を持って連続して片持ち梁状に延びる断面略への字形状に形成された板バネ片部10cが形成され、その板バネ片部10cの他方(自由端側)に金属カバー7に接触させる接触部10dが形成されている。
【0030】
さらに、カード接触用コンタクト11のそれぞれの取付部11aは、その他端側がシールド用コンタクト10のそれぞれの接触部10dの間まで延ばされ、その先端側に屈曲部が形成され、その屈曲部を荷重を支える第1支点部11bとして一方(根元)に有し、フープ材12の厚み方向に弾性変位可能に、第1支点部11bから取付部11aとの間に段差を持って連続して片持ち梁状に延びる形状に形成された第1板バネ片部11cが形成されると共に、その第1板バネ片部11cを部分的に切り起こすことによって、その第1板バネ片部11cの他方(自由端側)に形成される屈曲部を荷重を支える第2支点部11dとして一方(根元)に有し、フープ材12の厚み方向に弾性変位可能に、第2支点部11dから傾斜角を持って第1板バネ片部11cとは逆方向に連続して片持ち梁状に延びる断面略への字形状に形成された第2板バネ片部11eが形成され、その第2板バネ片部11dの他方(自由端側)に小型カード1の対応する接触パッド2に接触させる接触部11fが形成されている。
【0031】
上記のようにフープ材(キャリア)12に打抜き加工で一体に連結された状態で成形された2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11(コンタクト郡)は、次に、インサート成型により、シールド用コンタクト10及びカード接触用コンタクト11のそれぞれの取付部10a,11aが絶縁性の合成樹脂で一体的にモールドされて、そのモールド樹脂によって成形されたインシュレータ9と一体化される。
【0032】
インシュレータ9は、下ケース5のインシュレータ装着部5eに嵌合させるように、略矩形板状に形成されており、下ケース5の外部接続用端子装着部5dの後端部側(インシュレータ装着部5eの前端部側)に位置する平坦面でなる前端部9aと、下ケース5のコンタクト装着部5j,5mのそれぞれの前端部側に位置する後端部の両端部9b,9c及びその後端部の両端部9b,9cの間から後側に突出して下ケース5のストッパー部5h,5kの間に位置する後端部の中央部9bとを有する段付きの後端部とを備えている。また、後端部の中央部9b側の上面には、金属カバー7の前端縁部の係合片7fを嵌合させる係合溝9eが形成されている。さらに、モールド部には、シールド用コンタクト10とカード接触用コンタクト11のそれぞれの繋ぎ部12aをインシュレータ9の上下面に露出させる上下貫通の抜き孔9fが複数形成されている。
【0033】
上記のようにフープ材(キャリア)12に一体に連結された状態でインサート成型された2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11(コンタクト郡)は、次に、打抜き加工により、インシュレータ9の抜き孔9fのそれぞれに工具を通してシールド用コンタクト10とカード接触用コンタクト11のそれぞれの繋ぎ部12aを切断し、一体に連結された状態の2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11を個別に分離する。また、それと同時にインシュレータ9の左右両側縁部から突出しているフープ材(キャリア)12との繋ぎ部12bも切断し、フープ材(キャリア)12からも分離することによって、図5,図8,図9に示すように、本実施形態のカードアダプタ3に備えるコンタクト郡、即ち絶縁性の合成樹脂からなるインシュレータ9に一体的に保持された2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11を有する電気接続部品として完成する。
【0034】
インシュレータ9に一体的に保持された2本のシールド用コンタクト10及び9本のカード接触用コンタクト11は、それぞれの取付部10a,11aがインシュレータ9内に埋設され、それぞれの外部接続用端子4fがインシュレータ9の前端部9aの側面から前側に長さを揃えて並列に突出されている。また、シールド用コンタクト10のそれぞれの支点部10bとそれより先の板バネ片部10c,接触部10dは、インシュレータ9の後端部の両端部9b,9cのそれぞれの側面から後側に並行に突出されている。さらに、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第1支点部11bとそれより先の第1板バネ片部11c,第2支点部11d,第2板バネ片部11e,接触部11fは、インシュレータ9の後端部の中央部9dの側面から後側に並列に突出されている。
【0035】
また、図5に示すように、本実施形態のカードアダプタ3を組立てる際に、インシュレータ9を下ケース5のインシュレータ装着部5eに装着することにより、インシュレータ9(シールド用コンタクト10及びカード接触用コンタクト11のそれぞれの取付部10a,11a)がインシュレータ装着部5eに位置決めされて支持される。また、外部接続用端子装着部5dの後端部側の側面になるインシュレータ9の前端部9a側の側面から前側へ並列に突出しているシールド用コンタクト10及びカード接触用コンタクト11のそれぞれの外部接続用端子4fが、外部接続用端子装着部5dに外部接続用端子露出孔5gのそれぞれの上で位置決めされて支持される。さらに、インシュレータ9の後端部の両端部9b,9c側のそれぞれの側面から後側へ並行に突出しているシールド用コンタクト10のそれぞれの支点部10bとそれより先の板バネ片部10c,接触部10dが、コンタクト装着部5j,5m内に収納配置される。また、カード挿入空間5fの前端部側(奥側)の側面になるインシュレータ9の後端部の中央部9d側の側面から後側へ並列に突出しているカード接触用コンタクト11のそれぞれの第1支点部11bとそれより先の第1板バネ片部11c,第2支点部11d,第2板バネ片部11e,接触部11fとともにカード挿入空間5f内の前端部側(奥側)に収納配置される。
【0036】
さらに、図8,図9に示すように、本実施形態のカードアダプタ3の組立て最終段階で、樹脂カバー6と金属カバー7からなる2ピース構造の上ケースを下ケース5上部に固定してアダプタ本体4を形成することにより、インシュレータ9とシールド用コンタクト10及びカード接触用コンタクト11のそれぞれの外部接続用端子4fは、それらの上部が樹脂カバー6で押えられて、アダプタ本体4内に固定される。また、図5において左側のシールド用コンタクト10の接触部10dが金属カバー7の固定片7aで押えられて接触し、図5において右側のシールド用コンタクト10の接触部10dが金属カバー7で押えられて接触し、シールド用コンタクト10のそれぞれが金属カバー7を両端の外部接続用端子4fに常時導通接続させる。
【0037】
また、図11は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるカード接触用コンタクト接触部の変位前の状態を示す部分拡大断面図、図12は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるカード接触用コンタクト接触部の変位後の状態を示す部分拡大断面図である。図11,図12に示すように、カード挿入空間5fの底面前端部側(奥側)に複数並設されているコンタクト収容溝5nのそれぞれには、その深さが前端部側から後端部側に向かって漸次深くなるように傾斜した底面5pを設けている。そして、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cは、その一方(根元)に有する第1支点部11bを形成している屈曲部によってインシュレータ9の後端部の中央部9d側の側面から対応するコンタクト収容溝5n内まで下げられて、第1支点部11bをコンタクト収容溝5nの底面5p前端部側に当接させた状態で、コンタクト収容溝5n内においてその前端部側から後端部側に向かって連続して片持ち梁状に略水平に延ばされている。これにより、第1支点部11bから先の第1板バネ片部11cがコンタクト収容溝5nの底面5pから漸次離反し、その第1支点部11bから先の第1板バネ片部11cとコンタクト収容溝5nの底面5pとの間に、第1板バネ片部11cの他方(自由端側)に行くに連れて漸次大きくなる隙間13を形成している。即ちカード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cは、その一方に有する第1支点部11bを支点に上下方向(小型カード1の厚み方向)に弾性変位可能に、カード挿入空間5fの底面前端部側(奥側)に複数並設されたコンタクト収容溝5n内に配置されて、第1支点部11bからカード挿入方向とは逆方向に連続して片持ち梁状に略水平に延ばされている。したがって、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cは、その一方に有する第1支点部11bからカード挿入方向とは逆方向に連続して延びる単純な片持ち梁形状に形成される対向型であるものの、カード挿入空間5fへ挿入される小型カード1による座屈の危険性がない。
【0038】
また、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cには、その自由端部上側の角部に面取りを施してテーパ部11gを形成する一方、コンタクト収容溝5nのそれぞれの後端部側の溝壁上部には、第1板バネ片部11cのテーパ部11gと対面するテーパ部5n−1を下側に有するコンタクト浮き上がり防止用の押え部5nー2がコンタクト収容溝5nの前端部側に向かって突出形成され、コンタクト収容溝5nのそれぞれの後端部側を袋状に形成している。これにより、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cの自由端部は、コンタクト収容溝5nのそれぞれの後端部側の袋状部に収容され、カード接触用コンタクト11作製時のバラツキを吸収しながら、カード挿入空間5fへの浮き上がりが押え部5nー2によって防止されるため、カード挿入空間5fへ挿入される小型カード1の前端部1cと突き合い接触することがない。即ちカード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cの、カード挿入空間5fへ挿入される小型カード1による座屈の危険性をより確実になくす構造になっている。
【0039】
さらに、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第2板バネ片部11eは、コンタクト収容溝5nの後端部側に位置する第1板バネ片部11cの他方を第2支点部11dとして一方に有し、その第2支点部11dから前斜め上方に連続して片持ち梁状に延ばされて、第2支点部11dを支点に上下方向(小型カード1の厚み方向)に弾性変位可能に、カード挿入空間5fの前端部側(奥側)に前高後低の傾斜状態で並列に突出配置され、その他方(自由端側)に有する接触部11fをカード挿入空間5fに挿入された小型カード1の対応する接触パッド2に接触させるようになっている。したがって、カード挿入空間5fに配置して、カード挿入空間5fに挿入された小型カード1の接触パッド2に接触させる第2板バネ片部11eは、その一方に有する第2支点部11dから傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に連続して片持ち梁状に延びる非対向型になるため、カード挿入空間5fへ挿入される小型カード1による座屈の危険性がない。
【0040】
上記のように構成された本実施形態のカードアダプタ3に小型カード1を装着する際には、小型カード1の接触パッド2が並設された裏面(片主面)をアダプタ本体4の下ケース5側に位置させた状態で、小型カード1をその前端部1cからアダプタ本体4のカード挿入口4gを通してカード挿入空間5fに正規挿入すると、カード挿入空間5fの一側縁部には、ロックバネ装着部5qに装着されたロックバネ8の係合部8aが突出されているので、小型カード1は、その凹部1iが形成された段部1f側の側縁部で、ロックバネ8の係合部8aを外側に押圧し、ロックバネ8を外側に撓み変形させながら、その係合部8aをロックバネ装着部5q内に退入させた状態で、カード挿入空間5fの前端部側(奥側)に向かって挿入される。続いて小型カード1を挿入すると、小型カード1の前端部1cがアダプタ本体4の下ケース5に形成されたストッパー部5h,5kに突き当たり、その時点で、小型カード1の挿入が規制されると共に、小型カード1の凹部1iにロックバネ8の係合部8aが対向し、ロックバネ8の弾性力によりその係合部8aが復帰して小型カード1の凹部1iに係合する。これにより、図2,図3,図7に示すように、小型カード1がアダプタ本体4のカード挿入空間5fに完全挿入されると共に、その小型カード1の不用意な脱落がロックバネ8により防止される。
【0041】
また、小型カード1をアダプタ本体4のカード挿入空間5fに正規挿入すると、カード挿入空間5fの底面前端部側(奥側)に複数並設されているコンタクト収容溝5n内には、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cが、その一方(根元)に有する第1支点部11bをコンタクト収容溝5nの底面5p前端部側に当接させ、その第1支点部11bから先の第1板バネ片部11cとコンタクト収容溝5nの底面5pとの間に、第1板バネ片部11cの他方(自由端側)に行くに連れて漸次大きくなる隙間13を形成した状態で、第1支点部11bからカード挿入方向とは逆方向に連続して片持ち梁状に略水平に延ばされていると共に、カード挿入空間5fの前端部側(奥側)には、コンタクト収容溝5nのそれぞれの後端部側に位置する第1板バネ片部11cの他方を第2支点部11dとして一方に有する第2板バネ片部11eが、その第2支点部11dから前斜め上方に連続して片持ち梁状に延ばされて、前高後低の傾斜状態で並列に突出配置されているので、図11に示すように、小型カード1は、その前端部1c下側でカード接触用コンタクト11のそれぞれの第2板バネ片部11eの傾斜表面を接触後に摺動して押し下げる。これにより、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11cが、コンタクト収容溝5nの底面5p前端部側に当接している第1支点部11bを支点に下側に撓み変形して、コンタクト収容溝5nの底面5pに当接した後、カード接触用コンタクト11のそれぞれの第2板バネ片部11eが、コンタクト収容溝5nの底面5p後端部側に当接している第2支点部11dを支点に下側に撓み変形する。続いて小型カード1を挿入すると、図12に示すように、小型カード1の前端部1c下側がカード接触用コンタクト11のそれぞれの接点部11を通過して、小型カード1がカード接触用コンタクト11のそれぞれの撓み変形した第1板バネ片部11c及び第2板バネ片部11eに乗り上がり、カード接触用コンタクト11のそれぞれの接点部11fが第1板バネ片部11c及び第2板バネ片部11eの弾性力により小型カード1の裏面(片主面)に並設された接触パッド2に下側から押し付いて接触する。これにより、アダプタ本体4のカード挿入空間5fに完全挿入された小型カード1のそれぞれの接触パッド2がカード接触用コンタクト11により対応する外部接続用端子4fに導通接続される。また、カード接触用コンタクト11の第1板バネ片部11c及び第2板バネ片部11eは、小型カード1をアダプタ本体4のカード挿入空間5fから抜き去り、小型カード1による押し下げが解除されることにより、第2板バネ片部11eがその弾性力により第2支点部11dを支点に元の形状に復帰した後、第1板バネ片部11cが元の形状に復帰し、図11に示す自由状態に復帰する。
【0042】
上記のように小型カード1を装着した本実施形態のカードアダプタ3を、大型カードに対応しているカードコネクタに正規挿入して装着することにより、アダプタ本体4の外部接続用端子4fのそれぞれがカードコネクタのカード挿入空間に並設された複数のコンタクトに接触して、小型カード1と大型カードに対応している例えば携帯電話等の電子機器(大型カードに対応しているカードコネクタをプリント回路基板に実装した電子機器)とが電気的に接続され、それらの間で信号伝送を行うことができ、小型カード1を大型カードに対応している電子機器で使用することができる。
【0043】
以上から明らかなように、本実施形態のカードアダプタ3は、カード挿入空間5fに配置して、カード1の片主面に設けられた接触パッド2に接触させるカード接触用コンタクト11であって、一方に第1支点部11bを有する第1板バネ片部11cが、カード厚み方向に弾性変位可能に第1支点部11bからカード挿入方向とは逆方向に片持ち梁状に延び、その第1板バネ片部11cの他方を第2支点部11dとして一方に有する第2板バネ片部11eが、カード厚み方向に弾性変位可能に第2支点部11dから傾斜角を持ってカード挿入方向に片持ち梁状に延びる形状に形成され、その第2板バネ片部11eの他方をカード1の接触パッド2に接触させるカード接触用コンタクト11を備えると共に、カード挿入空間5fを形成するケース体5,6,7が、カード挿入空間5fに挿入するカード1よりも大型の他のカードの外形形状を備えるアダプタ本体4を構成している。
【0044】
そして、カード接触用コンタクト11を上記のような形状に形成することにより、カード1の接触パッド2に接触させる板バネ片部(第2板バネ片部11e)がその支点部(第2支点部11d)から傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に片持ち梁状に延びる非対向型になるため、カード1挿入による座屈の危険性がなく、コンタクト11の変位量を増減することで、接触圧を増減できる。よって、コンタクト11のバネ定数を大きくしなくても十分な接触圧を確保することができ、適正な接触圧を得ることのできる変位量の範囲が狭くならず(図18参照)、接触部11fの位置を厳密に管理してバラツキを抑える必要もなくなる。したがって、コンタクト11の安定した接触圧を容易に確保することができる。また、構造的に2箇所(第1板バネ片部11cの第1支点部11bと第2板バネ片部11eの第2支点部11d)に応力を分散することができるのに加え、発生する応力もバネ定数を大きくしないことで小さく抑えることができ、このような応力緩和によりコンタクト11の寿命を延ばすことがでる。
【0045】
また、第2板バネ片部11eは、第1板バネ片部11cの他方から折り返し状に形成することもできるが、第1板バネ片部11cを部分的に切り起こして形成することにより、第2板バネ片部11eを第1板バネ片部11cの他方から折返部(曲げ半径)を介することなく直接、傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に片持ち梁状に延ばすことができ、より大きなコンタクト11の変位量を得ることができるようになり、コンタクト11の安定した接触圧がより確保し易くなる。
【0046】
したがって、本実施形態のカードアダプタ3は、それに備えるカード接触用のコンタクト11に安定した接触圧と高寿命を容易に確保することができる。
【0047】
なお、本実施形態のカードアダプタ3では、図5において左右両端の2本の外部接続用端子4f(2本のシールド用コンタクト10及び図5において右端のカード接触用コンタクト11)がグランド用であり、これら2本の外部接続用端子4fのそれぞれを個別に分離したものを示したが、これら2本の外部接続用端子4fは、連続一体に成形して導通接続し(短絡)たり、別部品としての導電部材を用いて導通接続(短絡)しても良い。
【0048】
次に、本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態を図13〜図17を参照して説明する。本実施形態では、1の規格のメモリカード、例えばmicroSDカード(以下、「第3カード」という。)に対応しているカードコネクタに、本発明を適用した場合について説明する。
【0049】
図13は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタを使用する第3カードの(A)表面図、(B)側面図、(C)裏面図である。図13に示すように、第3カード21は、この第3カード21をそれより大型のカードに対応しているカードコネクタに接続するためのカードアダプタや本実施形態のカードコネクタへの挿入時に、前側に位置し、下側にテーパ部21aを有する前端部21bと、後側に位置し、平坦面からなる後端部21cとを備えている。また、図13の(A)において右側縁部の前端部21b側には、この第3カード21をそれより大型のカードに対応しているカードコネクタに接続するためのカードアダプタや本実施形態のカードコネクタへの前後逆の誤挿入及び表裏逆の誤挿入を防止するための切欠部21dを有し、この誤挿入防止用の切欠部21dより後端部21c側には、この第3カード21をそれより大型のカードに対応しているカードコネクタに接続するためのカードアダプタや本実施形態のカードコネクタへの挿入時に、第3カード21をカードアダプタやカードコネクタの装着位置に保持するための切欠部21eが形成されている。さらに、裏面(片主面)の前端部21d側には、外部接続用の接触パッド22が複数(8本)並設されている。
【0050】
図14は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタの外観を示す斜視図、図15は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタの上ケースを除去した状態の斜視図、図16は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタに備えるカード接触用コンタクトの外観を示す斜視図である。図14,図15に示すように、本実施形態のカードコネクタ23は、電子機器の筺体に設けるカード挿入口部に位置する前端部25aとその反対側の後端部25bを備え、第3カード21をその接触パッド22が並設された裏面を下にして前端部21bから挿入するカード挿入口24を前端部25a側の側面に開口した箱形状のコネクタハウジング25と、コネクタハウジング25に内蔵され、第3カード21の接触パッド22のそれぞれに接触させて電子機器のプリント回路基板に電気的に導通接続させるための本発明に係る複数(8本)のカード接触用コンタクト26と、コネクタハウジング25に内蔵され、電子機器側において第3カード21の装着を電気的に検出するための一対の金属片で形成される図示しないカード認識スイッチと、コネクタハウジング25に内蔵され、第3カード21による1回目の押し込み操作によって第3カード21をコネクタハウジング25内の決められた位置に保持して装着させると共に、第3カード21による2回目の押し込み操作によってコネクタハウジング25に装着された第3カード21を排出するプッシュ/プッシュ型のカード排出機構27とから構成されている。
【0051】
コネクタハウジング25は、カード挿入口25の奥側(後側)の内部空間が、カード接触用コンタクト26及びカード認識スイッチを配置するカード挿入空間28になり、このカード挿入空間28右側の内部空間が、カード排出機構27の配置スペースになっている。このようなコネクタハウジング25は、カード接触用コンタクト26のそれぞれ及びカード認識スイッチ用の一対の金属片等の導電部材体を取り付ける絶縁性の合成樹脂からなる下ケース29と、下ケース29に上方から被着して静電破壊対策やノイズ対策を施す金属板を打ち抜き及び曲げ加工して形成した上ケース30とから構成されている。
【0052】
下ケース29は、ハウジング底壁29aと、ハウジング右側壁29bと、ハウジング後側壁29cと、カード挿入口24右側のハウジング前側壁29dとを一体的に形成してなり、ハウジング底壁29aの左側端面及びハウジング右側壁29bの外面には、上ケース30と結合するために位置決め用の係合部29e及び複数の固定用の係合部29fを外側方へ突出して設けている。また、第3カード1の接触パッド22が並設された裏面に対向するカード挿入空間28の底面には、その後端部側(奥側)にカード接触用コンタクト26のそれぞれに対応して前後方向(カード挿抜方向)に延びる細幅のコンタクト収容溝29gが複数(8本)並設されている。さらに、カード排出機構27の配置スペースの前端部側及び後端部側には、カード排出機構27のスライド部材を受け止める前側ストッパー部29h及び後側ストッパー部29iが設けられ、この前側ストッパー部29hの厚み内には、カード排出機構27のカムピンを支持するための軸受け部29jが設けられている。また、ハウジング前側壁29dの端部には、カード排出機構27の第3カード21に対するロックバネの係合部を係止させる復帰側のストッパー部29kが設けられている。
【0053】
コンタクト収容溝29gのそれぞれは、後端部側がハウジング後側壁29cを貫通してその外面に開放されている。また、コンタクト収容溝29gのそれぞれには、その深さが後端部側から前端部側に向かって漸次深くなるように傾斜した底面を設けている。
【0054】
上ケース30は、ハウジング天板30aと、ハウジング左側壁30bと、下ケース29のハウジング右側壁29b外面を覆うハウジング右側壁カバー30cとを一体的に形成してなり、そのハウジング左側壁30b及びハウジング右側壁カバー30cには、下ケース29側の位置決め用の係合部29eのそれぞれに嵌合させる位置決め用の係合凹部30d及び下ケース29側の固定用の係合部29fのそれぞれを嵌合させる複数の固定用の係合孔30eを設けている。また、ハウジング左側壁30b及びハウジング右側壁カバー30cのそれぞれには、その下縁部の前後端部から外側に向かって略水平に突出させるように折り曲げ形成されたコネクタ実装用の端子部30fが設けられている。さらに、ハウジング天板30aには、カード排出機構27のカムピンを常時下方に押圧するための可撓性を持った片持ち梁状の板バネ片30gが切り起こし形成されている。
【0055】
カード接触用コンタクト26のそれぞれは、良導電性を持ったバネ材料からなるフープ材に打抜き加工で並列に一体に連結した状態で成形される。図16に示すように、カード接触用コンタクト26のそれぞれには、その後端部側に下ケース29への取付部26aが形成されている。また、カード接触用コンタクト26のそれぞれの取付部26aには、その後端部側に屈曲部26bを介して一段下げた位置より連続して後方へ略水平に延ばす外部接続用端子26cが形成されている。さらに、カード接触用コンタクト26のそれぞれには、その取付部26aの前端部側を荷重を支える第1支点部26dとして一方(根元)に有し、フープ材の厚み方向に弾性変位可能に、第1支点部26dから前方に連続して片持ち梁状に延びる形状に形成された第1板バネ片部26eが形成されると共に、その第1板バネ片部26eを部分的に切り起こすことによって、その第1板バネ片部26eの他方(自由端側)に形成される屈曲部を荷重を支える第2支点部26fとして一方(根元)に有し、フープ材の厚み方向に弾性変位可能に、第2支点部26fから傾斜角を持って第1板バネ片部26eとは逆方向(後方)に連続して片持ち梁状に延びる断面略への字形状に形成された第2板バネ片部26gが形成され、その第2板バネ片部26gの他方(自由端側)に第3カード21の対応する接触パッド22に接触させる接触部26hが形成されている。また、成形状態では、カード接触用コンタクト26のそれぞれの外部接続用端子26cが繋ぎ部によって一体に連結されると共に、その繋ぎ部が複数の繋ぎ片によりフープ材(キャリア)に一体に連結されて、8本のカード接触用コンタクト26がフープ材に並列に一体に連結されている。
【0056】
上記のようにフープ材(キャリア)に打抜き加工で一体に連結された状態で成形された8本のカード接触用コンタクト26(コンタクト郡)は、繋ぎ片を切断してフープ材(キャリア)から分離し、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eの他方(自由端側)を下ケース29の後側から対応するコンタクト収容溝29gに差し込み、カード接触用コンタクト26のそれぞれの取付部26aをケース29のハウジング後側壁29cに圧入固定した後、繋ぎ部を切断することにより、8本のカード接触用コンタクト26を個別に分離した状態で下ケース29に装着される。
【0057】
図15に示すように、装着状態のカード接触用コンタクト26のそれぞれは、外部接続用端子26cが屈曲部26bを介して下ケース29の下部まで下げられてハウジング後側壁29cの外面から後側へ並列に突出固定されている。
【0058】
また、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eは、その一方(根元)に有する第1支点部11bをコンタクト収容溝29gの底面後端部側に当接させた状態で、コンタクト収容溝29g内においてその後端部側から前端部側に向かって連続して片持ち梁状に略水平に延ばされている。これにより、第1支点部26dから先の第1板バネ片部26eがコンタクト収容溝29gの底面から漸次離反し、その第1支点部26dから先の第1板バネ片部26eとコンタクト収容溝29gの底面との間に、第1板バネ片部26eの他方(自由端側)に行くに連れて漸次大きくなる隙間を形成している。即ちカード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eは、その一方に有する第1支点部26dを支点に上下方向(第3カード21の厚み方向)に弾性変位可能に、カード挿入空間28の底面後端部側(奥側)に複数並設されたコンタクト収容溝29g内に配置されて、第1支点部26dからカード挿入方向とは逆方向に連続して片持ち梁状に略水平に延ばされている。したがって、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eは、その一方に有する第1支点部26dからカード挿入方向とは逆方向に連続して延びる単純な片持ち梁形状に形成される対向型であるものの、カード挿入空間28へ挿入される第3カード21による座屈の危険性がない。
【0059】
また、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eには、その自由端部上側の角部に面取りを施してテーパ部を形成する一方、コンタクト収容溝29gのそれぞれの前端部側の溝壁上部には、第1板バネ片部26eのテーパ部と対面するテーパ部を下側に有するコンタクト浮き上がり防止用の押え部をコンタクト収容溝29gの後端部側に向かって突出形成し、コンタクト収容溝29gのそれぞれの前端部側を袋状に形成している。これにより、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eの自由端部は、コンタクト収容溝29gのそれぞれの前端部側の袋状部に収容され、カード接触用コンタクト26作製時のバラツキを吸収しながら、カード挿入空間28への浮き上がりが押え部によって防止されるため、カード挿入空間28へ挿入される第3カード21の前端部21bと突き合い接触することがない。即ちカード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eの、カード挿入空間28へ挿入される第3カード21による座屈の危険性をより確実になくす構造になっている。
【0060】
さらに、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第2板バネ片部26gは、コンタクト収容溝29gの前端部側に位置する第1板バネ片部26eの他方を第2支点部26fとして一方に有し、その第2支点部26fから後斜め上方に連続して片持ち梁状に延ばされて、第2支点部26fを支点に上下方向(小型カード1の厚み方向)に弾性変位可能に、カード挿入空間28の後端部側(奥側)に前低後高の傾斜状態で並列に突出配置され、その他方(自由端側)に有する接触部26hをカード挿入空間28に挿入された第3カード21の対応する接触パッド22に接触させるようになっている。したがって、カード挿入空間28に配置して、カード挿入空間28に挿入された第3カード21の接触パッド22に接触させる第2板バネ片部26gは、その一方に有する第2支点部26fから傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に連続して片持ち梁状に延びる非対向型になるため、カード挿入空間28へ挿入される第3カード21による座屈の危険性がない。
【0061】
図15に示すように、プッシュ/プッシュ型のカード排出機構27は、スライド部材31と、このスライド部材31の付勢部材であるコイルバネ32と、ハート状のカム溝33及びカムピン34から形成されるスライド部材31の位置保持機構と、第3カード21をスライド部材31に係合保持させるロックバネ35とから構成されている。
【0062】
スライド部材31は、絶縁性の合成樹脂からなり、ハウジング25内のカード排出機構27の配置スペースに、前側ストッパー部29hと後側ストッパー部29iとの間でハウジング右側壁29bに沿って前後方向(カード挿抜方向)に往復移動自在に配置されている。また、スライド部材31には、カード挿入空間28の左側に張り出して、カード挿入時に、第3カード21の誤挿入防止用の切欠部21dに嵌合する張出部31aと、第3カード21によりスライド部材31を奥側に押し込むために、第3カード21の前端部21bに当接するよう張出部31aの後部からカード挿入空間28に突出した操作部31bと、位置保持機構のハート状のカム溝33と、ロックバネ35を取り付けるためのスリット溝31cとを一体に形成している。
【0063】
コイルバネ32は、スライド部材31と後側ストッパー部29iとの間に配置され、スライド部材31を前側(カード排出方向)に常時付勢している。
【0064】
位置決め機構のカムピン34は、コの字形に曲げた細い金属の丸棒からなり、一端をスライド部材31に形成したカム溝32の底部に略直角に接するようにし、他端を下ケース29に設けた軸受け部29jに回転自在に支持して、カム溝33内をスライド部材31の動きに合わせて移動させる。また、カムピン34は、上ケース30に設けた板バネ片30gにより常時下方に押圧され、一端がカム溝34に略直角に押し付けられ、他端が軸受け部29j内に押し込まれている。
【0065】
ロックバネ35は、金属板バネからなり、その一端部には、金属板バネを長さ方向に沿って山形に曲げてなる係合部35aが設けられている。このようなロックバネ35は、スライド部材31のスリット溝31cに上方から圧入することにより、ロックバネ35の一方がスリット溝31cを介してスライド部材31に固定され、その固定部から前側に向かって延出される他方がスライド部材31の前側にカード横幅方向に弾性変位可能に突出される。また、ロックバネ35の他方に設けられている係合部35aは、スライド部材31の張出部31aの手前側でカード横幅方向に弾性変位可能に突出されている。
【0066】
上記のように構成された本実施形態のカードコネクタ23は、例えば携帯電話等の電子機器の筺体に内蔵されるプリント回路基板に、上ケース30の端子部30fのそれぞれと、カード接触用コンタクト26のそれぞれの外部接続用端子26cと、カード認識スイッチを形成する一対の金属片の外部接続端子のそれぞれとを、半田付けにより機械的に固定、電気的に接続して表面実装することにより、使用することができる。
【0067】
図17は本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタのカード装着状態を示す平面図である。上記のように構成された本実施形態のカードコネクタ23に第3カード21を装着する際には、第3カード21の接触パッド22が並設された裏面(片主面)を下ケース29側に位置させた状態で、第3カード21をその前端部21bからコネクタハウジング25のカード挿入口24を通してカード挿入空間28に正規挿入すると、第3カード21は、この第3カード21の誤挿入防止用の切欠部21dにスライド部材31の張出部31aを嵌合しながら、ハウジング左側壁30bとスライド部材31との間に嵌め込まれ、第3カード21の前端部21bがスライド部材31の操作部31bに当接する。また、このような第3カード21の正規挿入に伴い、第3カード21の誤挿入防止用の切欠部21dがスライド部材31に取り付けたロックバネ35の係合部35aを通過する際、その係合部35aは、切欠部21dの側面に摺接してロックバネ35の外側(右側)への撓みを伴って第3カード21の誤挿入防止用の切欠部21dとロック用の切欠部21eとの間の側縁部に乗り上がった後、第3カード21の前端部21bがスライド部材31の操作部31bに当接するのと略同時に、第3カード21のロック用の切欠部21eに対向して、ロックバネ35の弾性力により第3カード21のロック用の切欠部21eに嵌り込む。これにより、第3カード21とスライド部材31がカード挿抜方向で係合連結される。
【0068】
続いて第3カード21を挿入すると、第3カード21は、その前端部21bによってスライド部材31の操作部31bを後側へ押し、スライド部材31をコイルバネ32の弾性力に抗して後側へと押し込んで、後側ストッパー部29iに突き当たる最押し込み位置に押し込んで止まる。
【0069】
この状態から第3カード21によるスライド部材31の押し込み力を除き、スライド部材31を開放すると、スライド部材31はコイルバネ32の弾性力により最押込み位置から前側へ押し戻され、これに伴って第3カード21も前側へ押し戻される。
【0070】
上記のようなスライド部材31の初期位置(図15に示す位置)からの一連の動作により、カムピン34は、カム溝33の起点部33aから往路33bを通過して起点部33aと反対側にある係止部33cに導入係止され、カムピン34がカム溝33の係止部33cに係止した時点で、スライド部材31の前側への移動が規制される。これにより、図17に示すように、スライド部材31は、最押込み位置より少し手前側のカード装着位置に保持され、このスライド部材31とカード挿抜方向で係合連結されている第3カード21をカード装着位置に保持して、コネクタハウジング25に装着する。
【0071】
また、第3カード21をコネクタハウジング25のカード挿入空間28に正規挿入すると、カード挿入空間28の底面後端部側(奥側)に複数並設されているコンタクト収容溝29g内には、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eが、その一方(根元)に有する第1支点部26dをコンタクト収容溝29gの底面後端部側に当接させ、その第1支点部26dから先の第1板バネ片部26eとコンタクト収容溝29gの底面との間に、第1板バネ片部26eの他方(自由端側)に行くに連れて漸次大きくなる隙間を形成した状態で、第1支点部26dからカード挿入方向とは逆方向に連続して片持ち梁状に略水平に延ばされていると共に、カード挿入空間28の後端部側(奥側)には、コンタクト収容溝29gのそれぞれの前端部側に位置する第1板バネ片部26eの他方を第2支点部26fとして一方に有する第2板バネ片部26gが、その第2支点部26fから後斜め上方に連続して片持ち梁状に延ばされて、前低後高の傾斜状態で並列に突出配置されているので、第3カード1は、その前端部21b下側でカード接触用コンタクト26のそれぞれの第2板バネ片部26gの傾斜表面を接触後に摺動して押し下げる。これにより、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26eが、コンタクト収容溝29gの底面後端部側に当接している第1支点部26dを支点に下側に撓み変形して、コンタクト収容溝29gの底面に当接した後、カード接触用コンタクト26のそれぞれの第2板バネ片部26gが、コンタクト収容溝29gの底面前端部側に当接している第2支点部26fを支点に下側に撓み変形する。そして、第3カード21の前端部21b下側がカード接触用コンタクト26のそれぞれの接点部26hを通過して、第3カード21がカード接触用コンタクト26のそれぞれの撓み変形した第1板バネ片部26e及び第2板バネ片部26gに乗り上がり、カード接触用コンタクト26のそれぞれの接点部26hが第1板バネ片部26e及び第2板バネ片部26gの弾性力により第3カード21の裏面(片主面)に並設された接触パッド22に下側から押し付いて接触する。これにより、コネクタハウジング25に装着された第3カード21のそれぞれの接触パッド22がカード接触用コンタクト26により、例えば携帯電話等の電子機器(本実施形態のカードコネクタ23をプリント回路基板に実装した電子機器)とが電気的に接続され、それらの間で信号伝送を行うことができる。なお、本実施形態のカードコネクタ23における上記のようなカード接触用コンタクト26のそれぞれの第1板バネ片部26e及び第2板バネ片部26gの変位動作については、図11,図12に示したカードアダプタ3におけるカード接触用コンタクト11のそれぞれの第1板バネ片部11c及び第2板バネ片部11eの変位動作と同じであるため、その図示を省略している。
【0072】
一方、図17に示したカード装着状態から第3カード21を押し込み操作すると、第3カード21は、その前端部21bによりスライド部材31をカード装着位置から後側(奥側)へと押し込み、後側ストッパー部29iに突き当たる最押し込み位置に再度押し込んで止まる。このスライド部材31のカード装着位置から最押し込み位置への動作により、カムピン34は、カム溝33の係止部33cから離脱して復路33dに導入されて、スライド部材31の位置保持を解除する。この後、第3カード21によるスライド部材31の押し込み力を除き、スライド部材31を開放すると、スライド部材30は、コイルバネ32の弾性力により操作部31bで第3カード21の前端部21bを前側へ押しながら、最押込み位置から前側へ押し戻されて初期位置に復帰し、第3カード21を排出する。また、カムピン34は、カム溝33の復路33dを通過して起点部33aに戻る。さらに、カード接触用コンタクト26の第1板バネ片部26e及び第2板バネ片部26gは、カード21の排出に伴い、第3カード1の前端部21b下側がカード接触用コンタクト26のそれぞれの第2板バネ片部26gの傾斜表面から離れた時点で、第3カード21による押し下げが解除されることにより、第2板バネ片部26gがその弾性力により第2支点部26fを支点に元の形状に復帰した後、第1板バネ片部26eが元の形状に復帰し、自由状態に復帰する。
【0073】
上記のようにカード排出機構27により排出された第3カード21は、カード挿入口11からハウジング12の外側に突出しているカード1の後端部21c側を指で摘んで引っ張ることにより、ロックバネ35の係合部35aは、第3カード21のロック用の切欠部21eの側面に摺接して、ロックバネ35の外側(右側)への撓みを伴って第3カード21のロック用の切欠部21eと誤挿入防止用の切欠部21dとの間の側縁部に乗り上がり、第3カード21とスライド部材31のカード挿抜方向での係合連結が解除され、第3カード21をコネクタハウジング25からカード挿入口24を通して抜き去ることができる。そして、第3カード21の抜き去り後は、図15に示す状態になる。
【0074】
以上から明らかなように、本実施形態のカードコネクタ23は、カード挿入空間28に配置して、カード21の片主面に設けられた接触パッド22に接触させるカード接触用コンタクト26であって、一方に第1支点部26dを有する第1板バネ片部26eが、カード厚み方向に弾性変位可能に第1支点部26dからカード挿入方向とは逆方向に片持ち梁状に延び、その第1板バネ片部26eの他方を第2支点部26fとして一方に有する第2板バネ片部26gが、カード厚み方向に弾性変位可能に第2支点部26fから傾斜角を持ってカード挿入方向に片持ち梁状に延びる形状に形成され、その第2板バネ片部26gの他方をカード21の接触パッド22に接触させるカード接触用コンタクト26を備えると共に、カード挿入空間28を形成するケース体が、カード接触用コンタクト26を取り付ける絶縁性の下ケース29とその下ケース29に被着する導電性の上ケース30とで箱形状を備えるコネクタハウジング25を構成している。
【0075】
そして、カード接触用コンタクト26を上記のような形状に形成することにより、カード21の接触パッド22に接触させる板バネ片部(第2板バネ片部26g)がその支点部(第2支点部26f)から傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に片持ち梁状に延びる非対向型になるため、カード21挿入による座屈の危険性がなく、コンタクト26の変位量を増減することで、接触圧を増減できる。よって、コンタクト26のバネ定数を大きくしなくても十分な接触圧を確保することができ、適正な接触圧を得ることのできる変位量の範囲が狭くならず(図18参照)、接触部26hの位置を厳密に管理してバラツキを抑える必要もなくなる。したがって、コンタクト26の安定した接触圧を容易に確保することができる。また、構造的に2箇所(第1板バネ片部26eの第1支点部26dと第2板バネ片部26gの第2支点部26f)に応力を分散することができるのに加え、発生する応力もバネ定数を大きくしないことで小さく抑えることができ、このような応力緩和によりコンタクト26の寿命を延ばすことがでる。
【0076】
また、第2板バネ片部26gは、第1板バネ片部26eの他方から折り返し状に形成することもできるが、第1板バネ片部26aを部分的に切り起こして形成することにより、第2板バネ片部26gを第1板バネ片部26eの他方から折返部(曲げ半径)を介することなく直接、傾斜角を持ってカード挿入方向(順方向)に片持ち梁状に延ばすことができ、より大きなコンタクト26の変位量を得ることができるようになり、コンタクト26の安定した接触圧がより確保し易くなる。
【0077】
したがって、本実施形態のカードコネクタ23は、それに備えるカード接触用のコンタクト26に安定した接触圧と高寿命を容易に確保することができる。
【0078】
以上、各実施形態は本発明のコンタクトとそれを備えるカードアダプタ及びカードコネクタの好適な実施形態の一例を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタを使用する小型カードの(A)表面図、(B)側面図、(C)裏面図である。
【図2】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの表面側の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの裏面側の外観を示す斜視図である。
【図4】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタを分解した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの上ケースを除去した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの断面図である。
【図7】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタの小型カード装着状態の断面図である。
【図8】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるコンタクト郡の外観を示す斜視図である。
【図9】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるコンタクト郡の(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【図10】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるコンタクト郡を成形したフープ材の(A)平面図、(B)断面図、(C)側面図である。
【図11】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるカード接触用コンタクト接触部の変位前の状態を示す部分拡大断面である。
【図12】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードアダプタの実施形態に係るカードアダプタに備えるカード接触用コンタクト接触部の変位後の状態を示す部分拡大断面図である。
【図13】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタを使用する第3カードの(A)表面図、(B)側面図、(C)裏面図である。
【図14】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタの外観を示す斜視図である。
【図15】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタの上ケースを除去した状態の斜視図である。
【図16】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタに備えるカード接触用コンタクトの外観を示す斜視図である。
【図17】本発明のコネクタ及びそれを備えるカードコネクタの実施形態に係るカードコネクタのカード装着状態を示す平面図である。
【図18】コンタクトの接触圧F(N)と変位量x(mm)の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
1 カード
2 接触パッド
3 カードアダプタ
4 アダプタ本体
4f 外部接続用端子
5 下ケース
5f カード挿入空間
6 樹脂カバー(上ケース)
7 金属カバー(上ケース)
11 カード接触用コンタクト
11a 取付部
11b 第1支点部
11c 第1板バネ片部
11d 第2支点部
11e 第2板バネ片部
11f 接触部
21 カード
22 接触パッド
23 カードコネクタ
26 カード接触用コンタクト
26a 取付部
26c 外部接続用端子
26d 第1支点部
26e 第1板バネ片部
26f 第2支点部
26g 第2板バネ片部
26h 接触部
28 カード挿入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード挿入空間に配置して、カードの片主面に設けられた接触パッドに接触させるコンタクトにおいて、一方に第1支点部を有する第1板バネ片部が、カード厚み方向に弾性変位可能に第1支点部からカード挿入方向とは逆方向に片持ち梁状に延び、その第1板バネ片部の他方を第2支点部として一方に有する第2板バネ片部が、カード厚み方向に弾性変位可能に第2支点部から傾斜角を持ってカード挿入方向に片持ち梁状に延びる形状に形成され、その第2板バネ片部の他方をカードの接触パッドに接触させることを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
第2板バネ片部は第1板バネ片部を部分的に切り起こして形成する請求項1に記載のコンタクト。
【請求項3】
第1板バネ片部の第1支点部に、カード挿入空間を形成するケース体への取付部を一体に連設する請求項1又は2に記載のコンタクト。
【請求項4】
取付部の第1板バネ部とは反対側に、外部接続用端子を一体に連設する請求項3に記載のコンタクト。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1に記載のコンタクトを備えると共に、カード挿入空間を形成するケース体が、カード挿入空間に挿入するカードよりも大型の他のカードの外形形状を備えるアダプタ本体を構成していることを特徴とするカードアダプタ。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1に記載のコンタクトを備えると共に、カード挿入空間を形成するケース体が、コンタクトを取り付ける絶縁性の下ケースとその下ケースに被着する導電性の上ケースとで箱形状を備えるコネクタハウジングを構成していることを特徴とするカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−146873(P2008−146873A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329702(P2006−329702)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】