説明

コンタクトレンズとその製造方法

【課題】多種多様な機能を有し、装用可能なコンタクトレンズを提供する。
【解決手段】コンタクトレンズの前面または後面の少なくとも一方の面の所定範囲を覆う位置に、生体適合性を備えた第1のレンズ材料の第1の層を配置し、この第1のレンズ材料よりも、コンタクトレンズの中心側に機能性材料を配置する。コンタクトレンズの機能は、この機能性材料により果たされることになる。更に、生体適合性を備えた第2のレンズ材料を成型型に入れ、第1のレンズ材料および機能性材料と共にモールドする。こうして機能性材料による機能を備え、安全に装用可能なコンタクトレンズが得られる。
を備えたコンタクトレンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜に直接装着して使用されるコンタクトレンズおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズの素材が有する色とは異なる色彩を施したコンタクトレンズが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。これらのカラーコンタクトレンズは、虹彩欠損や虹彩切除などの虹彩異常に対処するための医療用、角膜白点などに対処するための整容用といった目的で利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平2−134612号公報
【0004】
これらのコンタクトレンズでは、例えば着色剤をコンタクトレンズ表面に塗布あるいはレンズ材料であるモノマーと共にモールドして形成している。従って従来のカラーコンタクトレンズ等では、着色剤などがコンタクトレンズの表面に存在することになる。このため、角膜などの生体との適合性のない材料を用いることはできなかった。例えば、コンタクトレンズに光を反射する金属などの材料を塗布して眩暈性を持たせるといったことはできなかった。目の機能に対して何らかの光学的、電磁的機能を持たせる種々の機能材料の中には、生体適合性のないものが存在するため、コンタクトレンズに種々の機能を持たせようとしても、簡単には実現できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンタクトレンズに種々の機能を付与使用とする際に生じる課題を解決し、機能性を有するコンタクトレンズを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明のコンタクトレンズは、以下に記載する種々の構成を採用した。
【0007】
[適用例1]
コンタクトレンズであって、
当該コンタクトレンズの前面または後面の少なくとも一方の面の所定範囲を覆う位置に設けられ、生体適合性を備えた第1のレンズ材料と、
該第1のレンズ材料より、当該コンタクトレンズの中心側に配置された機能性材料と、
生体適合性を備え、前記第1のレンズ材料および前記機能性材料と共に成型型によりモールドされて、当該コンタクトレンズを形成する第2のレンズ材料と
を備えたコンタクトレンズ。
【0008】
係る構成を有するコンタクトレンズは、機能性材料を生体適合性を備えた第1のレンズ材料と第2のレンズ材料とで挟み込む構造となるため、種々の機能性材料を、コンタクトレンズ内に保持することができる。
【0009】
ここで、生体適合性を有するコンタクトレンズのレンズ材料としては、公知の種々の材料が利用可能であり、酸素非透過性ハードコンタクトレンズのMMA(メタルメタクリレート)、酸素透過性ハードコンタクトレンズのSMA(シロキサニルメタクリレート)やFMA(フルオロメタクリレート)、含水性ソフトコンタクトレンズのHEMA(ハイドロキシエチルメタクリレート),N−VP(N−ビニルピロリドン),DMAA(ジメチルアクリアミド),GMA(グリセロールメタクリレート)、非含水性ソフトコンタクトレンズのシリコンラバー,ブチルアクリレート,ジメチルシロキサン、生体親和性コンタクトレンズのコラーゲン,アミノ酸共重合体などに適用できる。
【0010】
第1,第2のレンズ材料としては、いわゆる重合性モノマーを用いることがてきる。こうした重合性モノマーとしては、一般的に用いられるラジカル重合可能な化合物が考えられ、例えばビニル基、アリル基、アクリル基、またはメタクリル基を分子中に1個以上含む化合物で、通常ハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズ材料として使用されている物質ならばどのようなものでも利用可能である。具体的には、アルキルアクリレート、シロキサニルアクリレート、フルオロアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ビニルアクリレート等のアクリル酸エステル類、スチレンの誘導体、N−ビニルラクタム、(多価)カルボン酸ビニル等のビニル化合物等を考えることができる。さらに具体的には、例えば、スチレン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、フマル酸およびそれらのエステル類、メタクリロニトリル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等を用いることが可能である。
【0011】
さらに架橋剤として、エチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、ジビニルベンゼンジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の多官能モノマーを用いることができる。
【0012】
上記のコンタクトレンズにおいて、機能性材料として、光学性材料、電磁気材料うちの少なくとも一つを用いることができる。これらの材料を選択すれば、特異な光学的、電磁気的特性をコンタクトレンズに付与することができる。
【0013】
さらに、こうしたコンタクトレンズにおいて、光学性材料は、着色材料、遮光性材料、蛍光材料、調光性材料、反射性材料、高屈折率材料、偏光材料のうちの少なくとも一つとすることができる。着色材料や蛍光性材料などには、生体適合性を有しないものも存在するが、こうした着色材料などを第1,第2のレンズ材料で挟み込んでいるので、コンタクトレンズとして使用することができる。なお、他の材料についても同様である。
【0014】
ここで、色素としては、Iron oxide,Titanium dioxide,Phthalocyanine green,Phthalocyanine blue,Reactive Red11,Reactive Yellow86,Reactive Black5等を単体または適宜配合したものが利用できる。また、インクを注入する凹部としては、微細加工の容易な金属板が利用でき、特に銅板が適している。インクを採取するパッドとしては、モノマーに対して科学的に安定した物性を有する軟質ポリマーなどの材質が適しており、特にシリコンが好適である。インクをプリントする成型型としては、ポリビニール製樹脂が適しているが、他に金属製の型なども用いることができる。この様にして製造されるコンタクトレンズは、その着色部の製造に当たって大幅な製造工程の追加・改変を必要としない。また、形成される着色部をコンタクトレンズと全く同一のモノマーから形成すれば、光学的特性を同一とし、屈折異常の矯正用のコンタクトレンズとして利用可能となる。異なるモノマーを用いれば、そのモノマーの特性を着色部に利用することができる。かかる構成では、着色用に用いる色素をモノマーに混合するため、その着色部はコンタクトレンズと完全一体となり、たとえ色素の成分が単独では涙液などによって劣化する性質のものであっても使用することができる。
【0015】
更に、機能性材料として薬剤を用い、第1のレンズ材料は、前記薬剤を徐放する薬剤透過性を有するものとしても良い。この場合、薬剤は第1のレンズ材料を介して徐々に放散されるので、薬効を永く保つことができる。
【0016】
こうした薬剤透過性を有する第1のレンズ材料は、連続多孔体などにより形成することができる。また、薬剤としては、殺菌剤、栄養剤、アレルギ抑制剤、涙質補助剤のうちの少なくとも一つを用いることも可能である。近年のスギ花粉アレルギにより、角膜に炎症を生じたりするケースが増えていることを考えると、こうしたアレルギに対処するアレルギ抑制剤を、内部に挟み込み、徐放させることも好適である。
【0017】
こうしたコンタクトレンズでは、機能性材料が配置される範囲としては、当該コンタクトレンズの中心部を含む光学部、または当該光学部の周辺部(いわゆるベベル部)とすることができる。また、第1のレンズ材料が配置されるのは、当該コンタクトレンズの前面としても良いし、後面としても良い。
【0018】
[適用例2]
こうしたコンタクトレンズを製造する方法としては、次の構成を採ることができる。
凸型および凹型を用意し、
前記凸型または凹型の一方の成型面の所定の範囲である第1の範囲に、転写パッドを用いて、生体適合性を有する第1のレンズ材料を転写し、
前記転写された第1のレンズ材料の上の、前記第1の範囲より狭い第2の範囲に、機能性材料を配置し、
前記第1のレンズ材料の転写と前記機能性材料の配置とがなされた凸型または凹型と、これに対応する凹型または凸型とを用い、両型の間に、生体適合性を有する第2のレンズ材料を充填し、
前記第2のレンズ材料の重合後に、前記成型型からレンズを脱離し、後処理を行なってコンタクトレンズを形成する
コンタクトレンズの製造方法。
【0019】
係る製造方法によれば、生体適合性を有する第1,第2のレンズ材料により機能性材料を挟み込んだコンタクトレンズを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[コンタクトレンズの実施例]
以上説明した本発明の構成及び作用を一層明らかにするために、以下本発明のコンタクトレンズについて、その実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施例であるコンタクトレンズ10の中心断面図、図2はその正面図である。図示するように本実施例のコンタクトレンズ10は、円形の外形をしており、全体的には無色透明であって所望の光学特性を有する一般的なコンタクトレンズである。図2に最内周の円として示したものは、このコンタクトレンズ10の光学効果を有する光学部14の境界を示す仮想線である。
【0021】
このコンタクトレンズ10は、光学部14の周辺部に、機能性材料20を備える。この機能性材料20は、実際には、第1のレンズ材料であるHydroxyethyl Mathacrylate (通称「ヘマ」、以下モノマーという)を用いたフィルム層12上であってレンズの内側に存在する。第1実施例では、機能性材料20として、遮光性の高いカーボンを用いた。このため、このコンタクトレンズ10は光学部14の周りに高い遮光性の領域を有することになる。
れている。
【0022】
[コンタクトレンズの製造方法]
次に、このコンタクトレンズ10の製造方法について説明する。図3は、このコンタクトレンズ10の製造方法を示す工程図である。また図4は、製造過程の各型やレンズの状態を模式的に示す説明図である。両図において、(A)ないし(E)の符号は、それぞれ対応した工程を示している。
【0023】
まず図4に示したように、コンタクトレンズをモールディング法により形成するための凸型モールドの成形(A1)と凹型モールドの成形(B1)とを行なう。凸型と凹型モールドは、これらの型を作るための型に、ポリビニール製樹脂を注入することにより製造される。この結果、モールディング用の凸型モールド(A1)と凹型モールド(B1)が得られる。凹型モールドの内側表面は、できあがるコンタクトレンズのフロントカーブの元になる形状とされており、他方凸型モールドの凸部は、成形されるコンタクトレンズ10の角膜との接触部を形成することになるために均一でなめらかな面(ベースカーブBC)とされている。なお凹型モールド,凸型モールドの表面を更に滑らかにするために、プラズマ加工などを行なっても良い。
【0024】
凹凸型モールドを用意した上で、図3に示した製造工程を開始し、第1のレンズ材料に相当するモノマーを用いて第1層目をプリントする処理を行なう(工程S100)。これは、実際には、凹型の内面にモノマーを塗布する方法、凹型の内面にシルクスクリーンにより第1層をモノマーにより形成する方法、あるいはシリコンゴムにモノマーを付けてこれを凹型の内面に転写すると言った方法により行なわれる。この結果、図4(B2)に示すように、凹型の内面に、第1層が形成される。この状態を図5に示した。凹型の中心部は、コンタクトレンズ10のの光学部14に対応した箇所となっており、図では理解の便を図って、符号14を付した。この光学部に対応する部位14を囲むドーナツ形状に、第1のレンズ材料(モノマー)による第1層がプリントされた状態となる。
【0025】
続いて、この第1層の上に、機能性材料20をプリントする処理を行なう(工程S110)。第2層となる機能性材料は、第1のレンズ材料であるモノマーと同様に、塗布、シルクスクリーン、転写などの手法により形成すればよい。本実施例では、第1層はシルクスクリーンにより凹型の内面に形成し,第2層は以下の方法で転写した。
【0026】
まず、図柄転写用の銅板の製作と、機能性材料20の調合とを行なう。銅板の製作は、銅板表面に、刻線による図柄を彫り込むことにより行なわれる。実施例の銅板には、図1に示した機能性材料の存在箇所に対応した図柄として、ドーナツ形状に彫り込まれている。この図柄には、後述するようにインクが塗布されて残存し、転写に供される。これは、版画におけるドライポイントと同様の手法である。なお、銅板への刻線の彫り込みは、手作業によっても良いし、NCなどの自動化された工作機械によっても良い。
【0027】
他方、インクを調合する工程は次のように行なわれる。ここでは、インクは、カーボン入りのリアルブラックのインクである。コンタクトレンズ10の主たる材料であるヘマと同一のモノマーとカーボンとを混合する。ここでは、黒色となるカーボンを用いたが、混合する色素を適宜選択すれば、インクは、種々の色に調合することができる。
【0028】
こうして調合・準備したカーボン入りのインク(遮光性材料)を銅板に塗布し、その後銅板表面のインクをぬぐい取る。この結果、銅板には、その刻線の凹部にのみインクが残っていることになる。次に、シリコン製のパッドをこの銅板の表面に押しつける。シリコン製のパッドは弾力に富むので、押しつけることにより変形し、刻線内部のインクは、パッドの表面に採取される。そこで次に、このシリコン製のパッドを、凹型モールドの凹部に押し当てる(B3)。パッド表面のインクは、この結果、凹型の内表面に転写される。この状態を図6に示した。第1層のモノマー12上に、機能性材料であるカーボン入りのインク層が形成されている。
【0029】
以上の処理により、第1のレンズ材料による第1層12および機能性材料であるカーボン入りインクの第2層20が形成される。そこで、次に、コンタクトレンズとなるモノマー(調合済み)を凹型モールドに充填する処理を行なう(工程S120)。この結果、(B4)に示したように、凹型モールド内にはレンズモノマーで満たされる。本実施例では、最終的にコンタクトレンズ10となる素材として、Hydroxyethyl Mathacrylate (「ヘマ」)を用いている。このモノマーを、成分の調整後に凹型モールドのの凹部に適量充填し、凸型モールドを嵌合し、モノマーを所定の条件下で重合させる(工程S130)。所定の条件としては、本実施例では、嵌合した凹型と凸型をオーブンに入れて、70度〜80度で加熱した。加熱することにより、モノマーは、重合しコンタクトレンズ10が成形される。このとき、カーボンが含有されたインクも重合し、コンタクトレンズに一体となる。
【0030】
重合が完了した頃を見計らって、凹凸型を離型する(工程S140)。この結果、成形されたコンタクトレンズ10が(D)のように脱離して、得られることになる。
【0031】
コンタクトレンズを成形する重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート97重量部、エチレングリコールジメタクリレート2重量部、アゾビス(2,4ージメチルバレロニトリル)0.3重量部をよく混合し、この混合物の脱気、窒素置換を行なったものを使用することもできる。この混合物を上記の凹型モールドに充填し、凸型モールドを嵌合した後、これを熱風循環式の恒温槽内に投入して、40℃で8時間、80℃で5時間程度加熱しても、コンタクトレンズの成形は完了する。
【0032】
こうして成形を終えたコンタクトレンズ10については、そのまま製品として用いることも可能だが、例えば、脱離後、コンタクトレンズ10を旋盤に取り付け、コンタクトレンズ10の光学特性を決定するフロントカーブ(FC)や周縁部のカットなどの切削加工ならびに前面および周縁部のエッジなどの研磨などを行なっても良い。周縁部の研磨などにより、コンタクトレンズには、適切なベベルを設けても良い。こうして得られたコンタクトレンズ10は、純水中で膨潤させ洗浄した後、生理食塩水に浸漬して所定量の吸水をさせる(工程S150)。こうしてコンタクトレンズ10は完成するが(E)、製品として扱うために、さらに検査を行なった後、プリスター容器やバイアルビン等に入れて滅菌処理を行なうことも一般的である。
【0033】
以上のような製造方法によれば、簡略な手順により、内側に機能性材料20を挟み込んだコンタクトレンズ10を得ることができる。このコンタクトレンズでは、内部にカーボンを含有する機能性材料20による遮光性の領域を形成しているので、通常のインクで着色しただけの構成と比べて、高い遮光性を実現することができる。しかもこの機能性材料20をレンズ内部に挟み込んでいるので、機能性材料として選択したカーボンの粒子が有る程度荒くても、装用感を損なうことがない。
【0034】
[その他の機能性材料を用いた実施例]
上記の実施例では機能性材料として、カーボンを用い、遮光性を実現しているが、機能性材料としては、種々のものを用いることができる。例えば、遮光性を得るために、金属系の着色剤を機能性材料として使用するものが考えられる。通常のコンタクトレンズでは、金属系着色剤は、角膜などに接触することを考えると使用できないが、本実施例のコンタクトレンズ10であれば、金属系着色剤はコンタクトレンズ内側に挟み込まれるので、使用することができる。この結果、高い遮光性をコンタクトレンズに付与することができる。
【0035】
同様に、機能性材料として、偏光特性を有する微粉体を用いれば、コンタクトレンズに偏光特性を付与することができる。コンタクトレンズの装着方向を特定すれば、水面や路面からの反射によって偏光となった光を選択的に遮ることができる。更に、特定波長の光を透過する性質を有する多層の薄膜を機能性材料により形成すれば、紫外光、赤外光、あるいは可視光のうちの特定の領域の光のみを選択的に遮ることができ、ある種の眼病などに有効である。
【0036】
あるいは、機能性材料としては、特定波長の光に反応する材料を用いることもできる。ここで、特定波長の光とは紫外線、赤外線、可視光などの光であり、日常生活上で容易に取り扱うことができるものであることがより好ましい。また、反応とは、その特定波長の光に起因して着色部である機能性材料が発光したり変色したりするなどの変化である。この様な材質により構成された着色部は、特定波長の光が照射されることでその存在を容易に知ることができる。このため、眼球にコンタクトレンズが存在していることの認識を自他共に容易としたり、コンタクトレンズの紛失時に特定波長の光を照射して簡単に探し出すことができる。また、複数個を組としたコンタクトレンズに異なる反応の着色部を設けることで、自然な状態では左右何れに装着するものであるか判別不可能なコンタクトレンズに対し、特定波長の光を照射することで左右何れに装着するものであるかを見分ける識別表示としても利用できる。また、着色部の一部にのみこうした特殊なインクを用い、ブラックライトなどを当てたときのみ、そのインクが蛍光を発するようにすること可能である。こうしたインク(染料)としては、フローレスセインといった材料が知られている。
【0037】
次に、機能性材料として反射材料を用いたコンタクトレンズについて説明する。機能性材料として、ガラスやカーボンの微粉体を用い、これをヘマなどのモノマーに混合して調合する。その上で、上記製造方法に従って、反射性材料を含む領域をコンタクトレンズ内に形成する。この結果、コンタクトレンズの装用感を損なうことなく、眩明防止機能を備えたコンタクトレンズを製造することができる。こうしたコンタクトレンズを用いれば、夜間順応したときに起きる遠方視力低下を防止することができる。
【0038】
次に、機能性材料として、香料や薬剤などを用いたコンタクトレンズについて説明する。機能性材料として香料や薬剤を用いた場合には、第1のレンズ材料としては、内部に挟み込まれた香料や薬剤が徐々に放散されるような性質を有する必要がある。こうしたレンズ材料としては、モノマーに水溶性の微粒子を調合し、モノマーを重合させた後に、この微粒子を溶融除去して、気孔連続の多孔体を形成することにより得ることができる。香料、薬剤などは、この多孔体を介して徐々に外部に放散する。例えば、涙腺に対する刺激性のある香料などを用いれば、ドライアイなどの場合にも涙腺を刺激して涙液を得ることができる。また香料により、コンタクトレンズの装用者に、香料の持つ種々の作用、例えばアロマセラピーなどの効果をもたらすことも可能である。また眼病などの薬剤を内部に挟み込み、徐々に放散させることで、十分な薬効を得ることもできる。
【0039】
薬剤としては、殺菌効果を有する薬剤、栄養効果を要する栄養剤、涙質の安定化を図る薬剤(例えば脂質、ムチン質など)、ビタミン類、タウリン、アスパラギン酸などを用いることができる。
【0040】
次に、機能性材料として、光学的特性を有する材料を用いた実施例について説明する。この例では、機能性材料として、高屈折率の材料を用いた。すなわち、機能性材料として屈折率の異なる材料を採用し、これをコンタクトレンズ内側に挟み込む。係る構成により、堅さの異なるレンズ材料を挟み込むことができ、中心部に安定した光学的特性を実現することができる。したがって、近視用、遠視用、遠近両用、乱視用などのコンタクトレンズを容易に製造することができる。あるいは、部位によりこれらの光学特性の異なるコンタクトレンズを製造することも容易である。
【0041】
次に機能性材料として、高屈折率のガラスレンズあるいは高屈折率のプラスチックレンズを用いたコンタクトレンズについて説明する。この例では、高屈折率の微小レンズ(半径0.5ないし3ミリ程度半球または球形レンズ)を、機能性材料として、コンタクトレンズ内に挟み込んでいる。高屈折率のガラスレンズは通常は破損の場合の危険性に配慮して、高屈折率のプラスチックレンズは生体適合性がない(弱毒性を示す場合が多い)ことに配慮して、使用されないが、本発明のコンタクトレンズのように、生体適合性を有する第1,第2のレンズ素材により挟み込んでしまえば、これらの材料も用いることができる。こうした高屈折率の微小レンズを内部に挟み込むことで、高屈折率のコンタクトレンズを製造することができ、例えば従来不可能に近かった水中用コンタクトレンズなどを実現することも可能である。
【0042】
以上、本発明が実施される形態を説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施例では、凹型の内面に、第1のレンズ材料で第1,第2層を形成したが、反対に凸型の表面に第1,第2層を形成しても差し支えない。また、機能性材料の配置は、ドーナツ形状に限るものではなく、円、楕円、多角形などの形状の領域としても良いし、星形や三日月形状、クローバやハート型など、様々な形状が採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例であるコンタクトレンズ10の中心断面図である。
【図2】実施例であるコンタクトレンズ10の正面図である。
【図3】実施例におけるコンタクトレンズ10の製造方法を示す工程図である。
【図4】コンタクトレンズの製造過程の説明図である。
【図5】製造過程(B2)にある凹型の内面を模式的に示す説明図である。
【図6】同じく製造過程(B3)にある凹型の内面を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10 … コンタクトレンズ
12 … 第1層(第1のレンズ材料)
14 … 光学部
20 … 機能性材料(第2層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
当該コンタクトレンズの前面または後面の少なくとも一方の面の所定範囲を覆う位置に設けられ、生体適合性を備えた第1のレンズ材料と、
該第1のレンズ材料より、当該コンタクトレンズの中心側に配置された機能性材料と、
生体適合性を備え、前記第1のレンズ材料および前記機能性材料と共に成型型によりモールドされて、当該コンタクトレンズを形成する第2のレンズ材料と
を備えたコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記機能性材料は、光学性材料、電磁気材料うちの少なくとも一つである請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
請求項2記載のコンタクトレンズであって、
前記光学性材料は、着色材料、遮光性材料、蛍光材料、調光性材料、反射性材料、高屈折率材料、偏光材料のうちの少なくとも一つである
コンタクトレンズ。
【請求項4】
請求項1記載のコンタクトレンズであって、
前記機能性材料は、薬剤であり、
前記第1のレンズ材料は、前記薬剤を徐放する薬剤透過性を有する
コンタクトレンズ。
【請求項5】
前記薬剤透過性を有する第1のレンズ材料は、連続多孔体である請求項4記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
請求項4記載のコンタクトレンズであって、
前記薬剤は、殺菌剤、栄養剤、アレルギ抑制剤、涙質補助剤のうちの少なくとも一つを含むコンタクトレンズ。
【請求項7】
請求項1記載のコンタクトレンズであって、
前記機能性材料が配置される範囲は、当該コンタクトレンズの中心部を含む光学部、または当該光学部の周辺部あるコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記第1のレンズ材料が配置されるのは、当該コンタクトレンズの前面である請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記第1のレンズ材料が配置されるのは、当該コンタクトレンズの後面である請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
コンタクトレンズの製造方法であって、
凸型および凹型を用意し、
前記凸型または凹型の一方の成型面の所定の範囲である第1の範囲に、転写パッドを用いて、生体適合性を有する第1のレンズ材料を転写し、
前記転写された第1のレンズ材料の上の、前記第1の範囲より狭い第2の範囲に、機能性材料を配置し、
前記第1のレンズ材料の転写と前記機能性材料の配置とがなされた凸型または凹型と、これに対応する凹型または凸型とを用い、両型の間に、生体適合性を有する第2のレンズ材料を充填し、
前記第2のレンズ材料の重合後に、前記成型型からレンズを脱離し、後処理を行なってコンタクトレンズを形成する
コンタクトレンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8848(P2009−8848A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169401(P2007−169401)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(397014237)株式会社日本オプティカル (3)
【Fターム(参考)】