説明

コンタクトレンズ材料の製造方法

【課題】高い酸素透過性および機械的強度を有し、残留する未重合モノマー量がきわめて少なく、かつ低吸水率で、レンズの形状安定性に優れたCL材料を提供する。
【解決手段】特定のシリコーン含有モノマーを含む共重合成分を重合して得られる共重合体からなるコンタクトレンズ材料であって、該共重合体中に残留する未重合モノマー成分の、該共重合体に対する残留量の合計が、3.5重量%以下であり、該共重合体の酸素透過係数が、130×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))以上であり、かつ該共重合体の吸水率が、0.3重量%以下であるコンタクトレンズ材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ(以下、「CL」とする)材料に関する。さらに詳しくは、高い酸素透過性および高い機械的強度を有するとともに、CL材料中の未重合モノマー量、吸水量がきわめて少なく、形状安定性に優れたCL材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、酸素透過性CL材料は、シリコーン系(メタ)アクリレートまたはシリコーン系スチレンを主成分としており、その他に成分として、耐汚染性、強度、水濡れ性などを付与する目的で、それぞれの目標性能に合わせたモノマーが共重合成分として選択、重合されている。
【0003】
しかしながら、多成分系での共重合の場合、各モノマーの重合部位の構造や特性が異なることから、これらを良好に共重合させることは基本的に難しく、経験とノウハウに委ねられる場合が多かった。したがって、再現性良く、さらに良好な共重合を進行させ、最終製品として完成させるためには、非常に長い時間と労力を要するものであった。とくに、親水性モノマーを共重合成分として選択した場合は、主成分のシリコーン系モノマーとは相反する極性を持つため、良好な重合を進行させることはきわめて困難である。このような系では、非常に長い時間をかけてゆっくりと重合させなければならなかった。
【0004】
また、水濡れ性を付与するために親水性モノマーが添加されるが、基本的にはレンズ表面には表面自由エネルギーの低いシリコーンなどが出現するため、添加による水濡れ性の効果はさほどない。付言すれば、親水性モノマーを添加することによって酸素透過性が損なわれることになる。
【0005】
一方で、CLの形状を安定化させるためには、レンズ中の残留成分、とくに揮発成分および水系溶媒への溶出成分を極力抑えなければならず、さらにレンズ材料の吸水率も関与すると考えられる。必要以上に吸水率が付与されると、水とレンズ中の残留成分との置換現象が起こったり、わずかな歪みが材料に残留していた場合には、吸水することによって歪みが緩和され、レンズ変形が加速される可能性が考えられる。
【0006】
特許文献1には、Si原子数15以下のシランまたはシロキサン結合を含有するスチレンの少なくとも1種からなる重合体、または前記シランまたはシロキサン結合を有するスチレンの少なくとも1種と、疎水性モノマーおよび/または親水性モノマーからなる共重合体を材質とする酸素透過性硬質CLが記載されている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載のCLはモノマー成分の共重合性を意図しておらず、良好な共重合ができない(未重合モノマーが多くなる)、もしくは非常に長時間かけてゆっくりと重合させないとうまく共重合しないなどの問題があった。具体的には、シロキサン含有スチレンモノマーと親水性モノマーを共重合させた場合(シロキサン含有スチレンモノマー以外の疎水性モノマーを含んでも同様)、極性が反対であり、重合部位の構造や重合特性が異なることから、数分から数時間以内での短い時間で重合を行うと、重合反応が不完全となり、未重合モノマーが共重合体中に多く残留することになる。その結果、眼への安全性が懸念されるだけでなく、未重合モノマーの、揮発、涙液および保存液などへの溶出により、CL形状が変化するなどの可能性があった。したがって、このような組み合わせの場合は、長時間かけてゆっくり重合させなければならず、労力がかかり、製造コストの面からも満足のいくものではなかった。
【0008】
さらに、親水性モノマーを添加することによって、酸素透過性が低下するだけでなく、共重合体の吸水量が増加し、前記のとおり、レンズ形状の変形が加速される結果となる。
【0009】
特許文献2には、分子量が700以下の揮発成分を3.5重量%以下含有することを特徴とする寸法安定性や耐クリープ性を向上させたCL材料が記載されている。
【0010】
しかし、このようなCLを得るためには、分子量が700以下の揮発成分を5重量%以下含有するシリコン系樹脂またはCL材料に、高エネルギー放射線を照射して揮発成分を3.5重量%以下に低減させなければならず、非常に煩雑で、かつ労力を有し、製造コストの面からも満足のいくものではなかった。また、この技術は、シリコン系樹脂を製造後、結果的に揮発成分が5重量%以下となったCL樹脂材料に、揮発成分(未重合モノマー)などの成分を除去する後処理を施すことによって、寸法安定性や耐クリープ性を付与しているにすぎず、モノマー成分や配合割合、あるいは重合方法を規定して、揮発成分を少なくする技術ではなく、また、モノマー成分の共重合性を意図したものでもない。親水性モノマーの使用についても、前記のとおり、レンズ形状の変形を促進させることが考えられ、好ましくない。
【0011】
また、特許文献3には、第1成分としてシリコン原子含有量が10〜50%でラジカル重合性の官能基を分子中に1個有するシリコン系単量体を20〜70重量部、第2成分としてラジカル重合性の官能基を分子中に2個以上有する単量体を1〜5重量部、第3成分としてこれらと共重合可能なアルキル(メタ)アクリレート、スチレンまたはアルキルスチレンを30〜70重量部含む共重合体からなる、36℃における比重が0.9〜1.05で、酸素透過係数が40以上のCLが記載されている。しかし、このCLの酸素透過係数は、実際には、120以下であり、酸素透過性が充分とはいえない。
【0012】
また、このようなCLは、比重を低くすることで、装用時の涙液交換を良好とし、角膜への負担を減少させることと、表面グラフト重合によりレンズ表面を親水化させることを目的としたものであり、本発明とは目的が異なる。
【0013】
以上のように、シリコーン系(メタ)アクリレートまたはシリコーン系スチレンを主成分とする酸素透過性CL材料であって、多成分系材料、とくに親水性モノマーを含む場合においては、非常に煩雑で、かつ大変な労力を要した。さらに、そのような煩雑な工程を経た場合でも、レンズの形状安定性、眼への安全性、酸素透過性などに満足のいくものではなかった。
【0014】
本発明は、シリコーン含有モノマーを含む共重合成分を重合して得られる共重合体からなるCL材料であって、この共重合体中に残留する未重合モノマー成分の残留量が低く、酸素透過性に優れ、かつ低吸水率であることから、形状安定性や機械的強度、眼への安全性などに優れ、ひいては製造コストの低減を達成できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭60−142324号公報
【特許文献2】特開平6−27424号公報
【特許文献3】特開平11−326847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
高い酸素透過性および機械的強度を有し、残留する未重合モノマー量がきわめて少なく、かつ低吸水率で、レンズの形状安定性に優れたCL材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明は、一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーを含む共重合成分を重合して得られる共重合体からなるコンタクトレンズ材料であって、該共重合体中に残留する未重合モノマー成分の、該共重合体に対する残留量の合計が、3.5重量%以下であり、該共重合体の酸素透過係数が、130×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))以上であり、かつ該共重合体の吸水率が、0.3重量%以下であるコンタクトレンズ材料に関する。
【0018】
【化1】

【0019】
前記共重合体が、前記一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーおよびアルキル基の炭素数が1〜6であり、かつ該アルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル(メタ)アクリレートから実質的になるモノマー成分ならびに架橋剤を重合して得られることが好ましい。
【0020】
前記共重合体が、前記一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーを45〜70重量部、前記アルキル(メタ)アクリレートを20〜45重量部および架橋剤を5〜15重量部含む共重合成分を重合して得られることがより好ましい。
【0021】
前記共重合体が、さらに紫外線吸収剤および/または色素を含有することがさらに好ましい。
【0022】
前記共重合体が、前記モノマー成分および架橋剤を、40〜120℃で、30分から5時間、重合して得られることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、前記コンタクトレンズ材料からなるコンタクトレンズに関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のCL材料は、残留する未重合モノマー量がきわめて少なく、優れた酸素透過性、かつ低吸水率を有することから、今まで以上に安全かつ形状安定性に優れる。また、加工性がよく、形状安定性にも優れることから、CLの厚みを薄くすることが可能となり、装用感の向上につながる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、シリコーン含有モノマーを含む共重合成分を重合して得られるCL材料であって、未重合モノマー量がきわめて少ない状態に重合できる点、材料が吸水しない点、さらには酸素透過性を充分に発揮できる点で好ましいCL材料に関する。より詳細には、一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーを含む共重合成分を重合して得られる共重合体からなるCL材料であって、該共重合体中に残留する未重合モノマー成分の、該共重合体に対する残留量の合計が、3.5重量%以下であり、該共重合体の酸素透過係数が、130×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))以上であり、かつ該共重合体の吸水率が、0.3重量%以下であるCL材料に関する。
【0026】
【化2】

【0027】
シリコーン含有モノマーは、酸素透過性を向上させる成分である。
【0028】
シリコーン含有モノマーの具体例としては、シランまたはシロキサン結合部分の構造により種々のものが存在するが、本発明に用いるシリコーン含有モノマーとしては、前記一般式(I)で表される化合物があげられる。
【0029】
前記一般式(I)で表される化合物において、lは1よりも0の場合の方が合成しやすく安定した化合物となるため好ましく、またnおよびmは大きくなるほど柔らかく脆い化合物となる。nおよびmに関しては、1〜5程度の場合にとくに好ましい酸素透過性とすぐれた硬度、硬質性を有し、かつ屈折率の高いCL材料をうることができる。
【0030】
一般式(I)で表される化合物におけるシロキサン結合部分は直鎖状および分岐鎖状のいずれのシロキサン結合も用い得るが、分岐鎖状のものの方が、直鎖状のものより硬質性を有するものとなるため好ましい。
【0031】
一般式(I)で表される化合物の代表としては、たとえば、トリメチルシリルスチレン、ペンタメチルジシロキサニルスチレン、ヘプタメチルトリシロキサニルスチレン、ノナメチルテトラシロキサニルスチレン、ペンタデカメチルヘプタシロキサニルスチレン、ヘンエイコサメチルデカシロキサニルスチレン、ヘプタコサメチルトリデカシロキサニルスチレン、ヘントリアコンタメチルペンタデカシロキサニルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、トリメチルシロキシ・ペンタメチルジシロキシ・メチルシリルスチレン、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シリルスチレン、(トリス・トリメチルシロキシ)シロキサニル・ビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)メチルシリルスチレン、トリス(メチルビス・トリメチルシロキシ・シロキシ)シリルスチレン、トリメチルシロキシ・ビス(トリス・トリメチルシロキシ・シロキシ)シリルスチレン、ヘプタキス(トリメチルシロキシ)トリシロキサニルスチレン、ノナメチルテトラシロキシ・ウンデシルペンタシロキシ・メチルシリルスチレン、トリス(トリス・トリメチルシロキシ・シロキシ)シリルスチレン、(トリストリメチルシロキシ・ヘキサメチル)テトラシロキシ・(トリス・トリメチルシロキシ)シロキシ・トリメチルシロキシシリルスチレン、ノメキス(トリメチルシロキシ)テトラシロキサニルスチレン、ビス(トリデカメチルヘキサシロキシ)メチルシリルスチレンなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0032】
前記代表例のなかでも、酸素透過性、機械的強度、加工性および屈折率の向上のため、たとえば、式:
【0033】
【化3】

【0034】
で示されるトリメチルシリルスチレン、式:
【0035】
【化4】

【0036】
で示されるビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、式:
【0037】
【化5】

【0038】
で示されるトリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレンなどが好ましい。
【0039】
本発明のCL材料は、前記共重合体中に残留する未重合モノマー成分の、該共重合体に対する残留量が、3.5重量%以下であり、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2.0重量%以下である。残留量が3.5重量%をこえると、加工性、形状安定性が劣る。
【0040】
前記共重合体の酸素透過係数(Dk)は、130×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))以上であり、好ましくは140×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))以上である。Dkが130×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))未満であると、レンズ装用時の眼への酸素供給量が充分とはいえず安全性が劣る傾向がある。また、酸素透過係数の低い共重合体をCL材料として使用した場合、角膜表面よりレンズを介して角膜に必要な酸素を充分に供給することが困難になり、長時間の連続装用をした場合、角膜の生理的負担が大きくなる傾向がある。
【0041】
前記共重合体の吸水率は、0.3重量%以下であり、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。吸水率が0.3重量%をこえると、形状安定性の低下につながる傾向がある。
【0042】
本発明のCL材料は、高い酸素透過性および高い機械的強度を有するとともに、CL材料中の未重合モノマー量、吸水率がきわめて少なく、形状安定性に優れる。
【0043】
なお、本明細書中では、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」および「・・・メタクリレート」の2つの化合物を総称するものとする。
【0044】
本発明における共重合体は、好ましくは、前記一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーおよびアルキル基の炭素数が1〜6であり、かつこのアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル(メタ)アクリレートから実質的になるモノマー成分ならびに架橋剤を重合して得られる。
【0045】
ここで、「モノマー成分」とは、一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーおよびアルキル基の炭素数が1〜6であり、かつこのアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル(メタ)アクリレートの2成分をいい、これらのモノマー成分以外の成分(重合性および非重合性の紫外線吸収剤、色素、重合開始剤ならびにその他の重合性モノマー)は、本発明でいうモノマー成分には該当しない。
【0046】
また、「実質的に」とは、前記モノマー成分以外のその他の重合性モノマー(重合性および非重合性の紫外線吸収剤、色素ならびに重合開始剤を除く)を、前記モノマー成分の性質が十分に発揮できる程度、具体的には、モノマー成分と架橋剤の混合物中に、モノマー成分、架橋剤およびその他の重合性モノマーの混合物100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下含んでいてもよいことを意味する。前記モノマー成分以外のその他の重合性モノマーを、10重量部より多く用いると、共重合性が低下することにより、未重合モノマー量が増加し、それにより形状安定性が悪化し、さらには安全性が劣る傾向がある。また、酸素透過性が低下する傾向がある。
【0047】
その他の重合性モノマーの具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのメタクリル酸またはアクリル酸のアルキルエステル;スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−1,1,3,3−テトラメチルブチルスチレンなどのスチリル化合物;イタコン酸またはクロトン酸のアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0048】
アルキル基の炭素数が1〜6であり、かつこのアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル(メタ)アクリレートは、酸素透過性を維持しつつ、耐汚染性および加工性を向上させるための成分である。
【0049】
前記アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、たとえば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロ−tert−アミル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−tert−ヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いられる。なかでも、加工性、前記一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーとの共重合性を良好にするため、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレートが好ましい。
【0050】
共重合体中に残留する未重合モノマー成分の、該共重合体に対する残留量について、前記一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーおよび前記アルキル(メタ)アクリレートを含む系において、シリコーン含有モノマーの、該共重合体に対する残留量は、好ましくは3.0重量%以下、より好ましくは2.0重量%以下であり、前記アルキル(メタ)アクリレートの、該共重合体に対する残留量は、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。シリコーン含有モノマーの残留量が3.0重量%をこえると、加工性の低下、形状安定性が劣る傾向がある。また、アルキル(メタ)アクリレートの残留量が0.5重量%をこえると、硬度が著しく低下し、加工性が悪化し、また、CL材料からの揮発により、変形などを引き起こし形状が不安定となる傾向がある。
【0051】
架橋剤の具体例としては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼンなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。なかでも、良好な機械的強度を付与し、加工性、硬度、強度、耐溶媒性の付与および共重合性を向上させる効果が大きいという点から、エチレングリコールジメタクリレート、4−ビニルベンジルメタクリレートがとくに好ましい。
【0052】
前記共重合体が前記モノマー成分および架橋剤を重合して得られる場合、前記モノマー成分と架橋剤の混合物中のシリコーン含有モノマーの配合量は、好ましくは45〜70重量部である。配合量が45重量部未満であると、酸素透過性が低下する傾向がある。一方、70重量部より多くなると、酸素透過性は向上するものの、得られた共重合体が脆くなり加工性が低下し、また、耐溶剤性の低下、材料表面に傷が非常につきやすくなるという不具合を生じ、さらにはシリコーン含有モノマーの未重合モノマー量が増加し、CLの形状安定性に影響を及ぼす傾向がある。
【0053】
また、前記モノマー成分と架橋剤の混合物中のアルキル(メタ)アクリレートの配合量は、好ましくは20〜45重量部である。配合量が20重量部未満であると、耐汚染性および加工性が低下する傾向がある。一方、45重量部より多くなると、得られる共重合体中におけるケイ素原子の相対量が低下することで、酸素透過係性が低下し、さらには、アルキル(メタ)アクリレートの未重合モノマー量が増加し、CLの形状安定性に影響を及ぼす傾向がある。
【0054】
前記モノマー成分と架橋剤の混合物中の架橋剤の配合量は、好ましくは5〜15重量部である。配合量が5重量部未満であると、加工性が悪化する、傷がつきやすくなる、耐溶剤性が低下する、モノマー成分の未重合モノマー量が増加するなどの傾向がある。一方、15重量部より多くなると得られる共重合体が脆くなる傾向がある。
【0055】
本発明によれば、とくに親水性モノマーを用いないことによりシリコーン含有モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの重合性が良好となり、その結果として、未重合モノマー量が著しく増加するという現象を有利に回避することができる。また、吸水率を低く抑えることができるため、前記未重合モノマー量の減少との相乗効果により、CLの形状安定性が優れ、加えて酸素透過係数の低下を抑えることもできる。
【0056】
本発明においては、必要に応じて、従来からCL材料に一般的に用いられている各種の添加剤、たとえば、CL材料に紫外線吸収能を付与したり、CL材料を着色するために、重合性または非重合性の紫外線吸収剤、色素、紫外線吸収性色素などを、共重合成分に存在させて共重合させたり、あるいは重合後に添加したりすることも可能である。
【0057】
紫外線吸収剤としては、たとえば、ベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤などがあげられる。
【0058】
ベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−tert−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2’,4’−ジクロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどがあげられる。
【0059】
ベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤としては、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールなどがあげられる。
【0060】
これら紫外線吸収剤と同様の化学構造部分を有し、かつ本発明における重合成分と重合しうる官能基を有する重合性紫外線吸収剤を使用することもできる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0061】
色素としては、生体に対する安全性が要求される他はとくに限定はなく、食品および医薬品などの分野で使用されている色素(非重合性色素および重合性色素)が選ばれる。
【0062】
非重合性色素の具体例としては、たとえば、1,4−ビス[(4−メチルフェニル)アミノ]−9,10−アントラキノン(D&C Green No.6)、1−[[4−(フェニルアゾ)フェニル]アゾ]−2−ナフタレノール(D&C Red No.17)、1−ヒドロキシ−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]−9,10−アントラキノン(D&C Violet No.2)、2−(2−キノリル)−1,3−インダンジオン(D&C Yellow No.11)、4−[(2,4−ジメチルフェニル)アゾ]−2,4−ジヒドロ−5−メチル−2−フェニル−3H−ピラゾール−3−オン(C.I Solvent Yellow 18)、2−(1,3−ジオキソ−2−インダニル)−3−ヒドロキシキノリン(MACROLEX(商標)Yellow−G)などがあげられる。
【0063】
重合性色素の具体例としては、アゾ系重合性色素、アントラキノン系重合性色素、ニトロ系重合性色素、フタロシアニン系重合性色素などがあげられる。
【0064】
アゾ系重合性色素としては、1−フェニルアゾ−4−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−フェニルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−ナフチルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(α−アントリルアゾ)−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−((4’−フェニルアゾ)フェニル)アゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(2’,4’−キシリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(o−トリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、2−(m−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4,6−ビス(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−フェニルアゾフェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(8’−ヒドロキシ−3’,6’−ジスルホ−1’−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(1’−フェニルアゾ−2’−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(p−トリルアゾ)フェノール、4−フェニルアゾ−7−(メタ)アクリロイルアミド−1−ナフトール、2−(m−ビニルアニリノ)−4−((p−ニトロフェニルアゾ)−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(1−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチルオキシ)−4−(m−ビニルアニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(p−ビニルアニリノ)−4−(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチルアミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、N−(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチル)−3−ビニルフタル酸モノアミド、N−(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチル)−6−ビニルフタル酸モノアミド、3−ビニルフタル酸−(4’−(p−スルホフェニルアゾ)−1’−ナフチル)モノエステル、6−ビニルフタル酸−(4’−(p−スルホフェニルアゾ)−1’−ナフチル)モノエステル、2−アミノ−4−(m−(2’−ヒドロキシ−1’−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(2’−ヒドロキシ−1’−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(4’−ヒドロキシ−1’−フェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(4’−ヒドロキシフェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(3’−メチル−1’−フェニル−5’−ヒドロキシ−4’−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(3’−メチル−1’−フェニル−5’−ヒドロキシ−4’−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(p−フェニルアゾアニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジンなどがあげられる。
【0065】
アントラキノン系重合性色素としては、1,5−ビス((メタ)アクリロイルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−アミノ−4−(3’−(メタ)アクリロイルアミノフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、2−(3’−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3’−(3’’−スルホ−4’’−アミノアントラキノン−1’’−イル)−アミノ−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(3’−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3’−(3’’−スルホ−4’’−アミノアントラキノン−1’’−イル)−アミノ−アニリノ)−6−ヒドラジノ−1,3,5−トリアジン、1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−アミノ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、5−アミノ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、8−アミノ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ニトロ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ヒドロキシ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(4’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス−(4’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5−ビス−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5−ビス−(4’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(3’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(4’−ビニルベンゾイルオキシエチルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−アミノ−4−(3’−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(4’−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(2’−ビニルベンジルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−(β−エトキシカルボニルアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1,5−ジ−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−イソプロポキシカルボニルアリルアミノ)−5−ベンゾイルアミド−9,10−アントラキノン、2,4−ビス−((4’’−メトキシアントラキノン−1’’−イル)−アミノ)−6−(3’−ビニルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−(2’−ビニルフェノキシ)−4−(4’−(3’’−スルホ−4’’−アミノアントラキノン−1’’−イル−アミノ)−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジンなどがあげられる。
【0066】
ニトロ系重合性色素としては、o−ニトロアニリノメチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0067】
フタロシアニン系重合性色素としては、(メタ)アクリロイル化テトラアミノ銅フタロシアニン、(メタ)アクリロイル化(ドデカノイル化テトラアミノ銅フタロシアニン)などがあげられる。
【0068】
重合性紫外線吸収性色素としては、2,4−ジヒドロキシ−3−(P−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(p−スチレノアゾ)安息香酸フェニルなどの重合性紫外線吸収性色素などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記モノマー成分と架橋剤の混合物中の含有量は、材料の厚さに大きく影響されることなどを考慮して、通常、モノマー成分、架橋剤およびその他の重合性モノマーの混合物100重量部に対して、紫外線吸収剤にあっては、0.01〜1重量部、色素および紫外線吸収性色素にあっては、0.001〜0.1重量部であることが望ましいが、目的とするCL材料の用途に応じて適宜調整すればよく、とくに限定されるものではない。
【0070】
紫外線吸収剤および色素の含有量が過大となると、CL材料の機械的強度などが低下する恐れがあり、また、透明性が低下する問題も生じる。さらに、CL材料を、生体組織に接触せしめて使用する場合にあっては、紫外線吸収剤、色素および紫外線吸収性色素の毒性も考慮して、その含有量を調整しなければならない。
【0071】
本発明のCL材料となる共重合体は、前記モノマー成分と架橋剤の混合物を、40〜120℃で、30分から5時間、重合して得ることができる。これは、共重合性に優れたモノマー成分を実質的に選択して用いたことにより、短時間で良好な重合が可能となったためである。
【0072】
重合温度については、40〜120℃の温度範囲で適宜調整し、重合途中で昇温することが好ましい。40〜50℃程度の低い温度範囲における一定温度の重合反応では、重合が完結しない、または重合時間が長時間かかるため、昇温が必要となる。たとえば、初期温度を40〜60℃とした場合には、この温度で1〜4時間予備重合を行い、その後、80〜120℃に昇温して10〜60分加熱し、重合反応を完結させることができる。また、予備重合を行わず、はじめから70℃以上で重合反応を行う場合は、3時間以内の重合時間が好ましい。初期温度が40℃以下での予備重合では、重合の進行が遅く、重合反応を完結させるために時間がかかる傾向がある。また、120℃をこえる重合温度では、重合反応が暴走し、未重合モノマーが増加する傾向がある。
【0073】
また、重合時間については、好ましくは30分から5時間である。重合時間が30分未満であると、重合が不完全となる(未重合モノマーが多くなる)傾向がある。また、5時間より長くなると製造時間が長くなり、結果としてコストが高くなる傾向がある。
【0074】
得られた共重合体の歪みを除去するために、共重合体のガラス転移温度以上の温度条件下で1時間程度加熱処理をさらに施しても良い。
【0075】
前記モノマー成分の共重合時には、従来から公知の各種のラジカル重合開始剤、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
【0076】
ラジカル重合開始剤としては、たとえば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロバーオキサイドなどをあげることができる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0077】
添加量としては、モノマー成分、架橋剤およびその他の重合性モノマーの混合物100重量部に対して、0.001〜2重量部、より好ましくは、0.01〜1重量部である。
【0078】
光重合開始剤としては、たとえば、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテルなどのベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノンなどのフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアントラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジルなどがあげられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0079】
添加量としては、モノマー成分、架橋剤およびその他の重合性モノマーの混合物100重量部に対して、0〜2重量部、より好ましくは0.001〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部である。
【0080】
光重合において、電子線を照射する場合には、かかる光重合開始剤を添加しなくてもモノマー成分を重合することができる。
【0081】
得られたCL材料は、実質的に、疎水性成分からなるためにレンズ表面が撥水性となる。したがって、レンズ表面に水濡れ性を付与するためには、レンズ表面への親水性モノマーのグラフト重合もしくはコーティング、種々のガスを用いたプラズマ処理、プラズマとグラフト重合の併用など何らかの表面処理が必要となる。
【0082】
これらのなかでも、簡便かつレンズ表面に均一に水濡れ性を付与できる方法として、酸素ガスによるプラズマ処理(たとえば、プラズマ処理装置:京都電子計測株式会社製 低温灰化装置PA−102AT、条件:40W−2分、酸素ガス雰囲気、真空度:0.8Torr)が好ましい。
【0083】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
実施例1
トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン(以下、TMSiSt)45重量部、トリフルオロエチルメタクリレート(以下、3FEMA)45重量部、エチレングリコールジメタクリレート(以下、EDMA)10重量部を混合した。得られた混合物に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−65)を、この混合物100重量部に対して0.3重量部添加し、良く撹拌して混合した。
【0085】
前記混合物をポリプロピレン製成形型(直径12mm、深さ5mm)に注入し、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを被せて密閉し、窒素雰囲気とされた循環式乾燥器中で、50℃で2時間予備重合を行ったのち、90℃へ昇温して30分間加熱保持し、重合を完結させた(重合条件A)。
【0086】
得られたボタン形状の共重合体に切削加工を施し、各種物性測定用の試験片を作製した。試験片の物性は以下の方法にしたがい測定をした。その結果を表1に示す。
【0087】
実施例2〜9
配合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体を作製、切削加工を施し、得られた試験片の物性を以下の方法にしたがい測定をした。その結果を表1に示す。
【0088】
比較例1〜2、4〜5
配合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体を調製、切削加工を施し、得られた試験片の物性を以下の方法にしたがい測定をした。その結果を表1に示す。
【0089】
比較例3
表1にしたがい配合された共重合成分をガラス製試験管に注入し、窒素置換したのち密栓し、循環式恒温水槽に入れ、35℃で40時間予備重合を行ったのち、50℃へ昇温して8時間加熱保持した。その後、循環式恒温乾燥器中で、50〜120℃まで10℃/1.5時間の昇温速度で加熱し、重合を完結させた(重合条件B)。
【0090】
得られた共重合体に切削加工を施し、各種物性測定用の試験片を作製した。試験片の物性は以下の方法にしたがい測定をした。その結果を表1に示す。
【0091】
物性測定
<酸素透過係数(Dk)>
GTG(GAS to GAS)ANALYZER(REHDERDEVELOPMENT COMPANY(米国)製)を用いて、測定時間2分、温度35℃にて測定し、その得られた測定値を、ISO 9912−2にて規格化されたメニコンEX(Dk値=64)を用いて換算して、Dk値を求め、その結果を表1に示した。なお、Dk値は、酸素透過係数の値[(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))]を意味し、とくに、酸素透過係数の値に10-11を乗じた数値である。
【0092】
<吸水率>
厚さ0.5mmの試験片(乾燥したもの)を10枚一組として、各一組毎にその重量(A[g])を測定し、蒸留水の入ったサンプル瓶に、25℃の温度にて24時間浸漬した後、試験片の湿潤重量(B[g])を測定した。下式によって吸水率を算出した。その結果は、表1に示した。
吸水率(%)={(B−A)/A}×100
【0093】
<残留成分>
FDA GUIDANCE DOCUMENT FOR CLASS III CONTACT LENSES APRIL 1989 p.18 「Leachable and residual monomers」を参考に、直径12mm、厚み0.5mmのプレート1枚をアセトニトリル5mLで50℃、72時間抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;高速液体クロマトグラフ:WATERS社製2695セパレーションモジュール;検出器:WATERS社製フォトダイオードアレイ検出器996;カラム:野村化学株式会社製 Develosil ODS HG−5 Length 250mm×I.D.4.6mm)を用いて、各共重合成分の標準液から作成された検量線により、アセトニトリル抽出液中の各未重合モノマー成分の濃度を定量し、下式により未重合モノマー成分の残留量を算出した。HPLCの分析条件は、移動相の初期設定値をアセトニトリル/蒸留水=30/70とし、測定開始と同時に移動相の組成を連続的に変化させ(リニアグラジエント)、30分後にアセトニトリル/蒸留水=100/0になるように設定した。そして、分析終了までアセトニトリル/蒸留水=100/0で保持した。なお、検出波長は210nm、流量は1.0mL/分、オーブン温度は40℃、打込み量は20μLとした。
【0094】
各未重合モノマー成分の残留量(重量%)
=(アセトニトリル抽出液中の各未重合モノマー濃度(10-6g/mL)×5(mL)
/プレート重量(g))×100
【0095】
<硬度>
株式会社明石製作所製ロックウェルスーパーフィッシャル硬度計を使用し、荷重30kg、圧子1/4インチ(約0.64cm)により、温度25℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内で、直径12.0mm、厚さ4.0mmの試験片について測定した。
【0096】
<加工性>
ダイヤモンドバイトを用いた切削加工機を使用して、CL形状試験片への加工を行った。加工性および加工後の試料片表面状態を目視で観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:容易にレンズへ加工・研磨できる
△:加工可能であるが、若干毟れが発生する
×:チッピング様の毟れがひどく加工が困難
【0097】
<傷>
得られた試験片の両面を研磨し、布やティッシュペーパーなどで擦ったのち、試験片の表面状態を目視で観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:ほとんど傷はみられない
△:若干の傷がみられた
×:傷が多くみられた(弱い力で擦っても容易に傷付いた)
【0098】
<形状安定性>
重合したボタン形状の共重合体を切削加工し、一定規格(ベースカーブ:7.90mm、パワー:−10.0D(ディオプトリー)、レンズ直径:9.2mm)のレンズを作製した。湿潤状態(界面活性剤含有CLケア用品)および乾燥状態で、40℃の過酷条件で6ヶ月間保存したのちに、ベースカーブおよびレンズ直径の測定を行った。
【0099】
すべての実施例および比較例の共重合体から得られたレンズは、湿潤状態および乾燥状態ともに、ベースカーブおよびレンズ直径の変動が0.05mm以内であった。
【0100】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーおよび架橋剤を、重合温度40〜120度、重合時間30分〜5時間の重合条件により重合することを特徴とする、共重合体からなるコンタクトレンズ材料の製造方法であり、該共重合体中に残留する未重合モノマー成分の、該共重合体に対する残留量の合計が、3.5重量%以下であり、該共重合体の酸素透過係数が、130×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL・mmHg))以上であり、かつ該共重合体の吸水率が、0.3重量%以下であるコンタクトレンズ材料の製造方法。
【化1】

【請求項2】
前記重合条件が、重合温度40〜60度、重合時間1〜4時間で予備重合し、その後、重合温度80〜120度、重合時間10〜60分で重合する請求項1記載のコンタクトレンズ材料の製造方法。
【請求項3】
前記共重合体が、前記一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーおよびアルキル基の炭素数が1〜6であり、かつ該アルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル(メタ)アクリレートのみからなるモノマー成分ならびに架橋剤を重合して得られる請求項1または2記載のコンタクトレンズ材料の製造方法。
【請求項4】
前記共重合体が、前記一般式(I)で表されるシリコーン含有モノマーを45〜70重量部、前記アルキル(メタ)アクリレートを20〜45重量部および架橋剤を5〜15重量部含む共重合成分を重合して得られる請求項3記載のコンタクトレンズ材料の製造方法。
【請求項5】
前記共重合体が、さらに紫外線吸収剤および/または色素を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ材料の製造方法。
【請求項6】
前記共重合体が、前記モノマー成分および架橋剤を、40〜120℃で、30分から5時間、重合して得られる請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ材料の製造方法により得られるコンタクトレンズ。

【公開番号】特開2010−111880(P2010−111880A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26629(P2010−26629)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【分割の表示】特願2003−423038(P2003−423038)の分割
【原出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】