説明

コンタクトレンズ用液剤組成物

【課題】 コンタクトレンズに付着した脂質汚れの如き汚れを除去し得る機能や、コンタクトレンズ表面に対するタンパク質の如き汚れの付着を効果的に抑制し得る機能を保持すると共に、涙液層の破壊による角膜へのダメージを引き起こすこと等のない、生体への安全性の高いコンタクトレンズ用液剤組成物を提供すること。
【解決手段】 特定の非イオン性界面活性剤を臨界ミセル濃度付近において含有せしめると共に、ポリエチレングリコールを、かかる非イオン性界面活性剤に対して、大割合にて含有せしめるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ用液剤組成物に係り、特に、コンタクトレンズの汚れ除去機能や、それに対する汚れ付着防止機能を確保しつつ、眼に対する安全性を高めた、点眼液として好適に用いられ得るコンタクトレンズ用液剤組成物に関するものである。
【0002】
従来から、コンタクトレンズは、非含水性コンタクトレンズと含水性コンタクトレンズとに分類されたり、またハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズとに大別されたりして、用いられてきている。そして、それらの何れのコンタクトレンズにあっても、その装用中において、涙液に由来するタンパク質や眼脂等の汚れが、コンタクトレンズ表面に付着、堆積し易く、また、その取扱い時において、指先に存在するタンパク質や脂質等の汚れが、コンタクトレンズ表面に付着することがあり、そして、そのような汚れが付くと、コンタクトレンズの透明性の低下を引き起こしたり、付着した汚れによる異物感の発生等の装用感の悪化や、視力の低下を引き起こしたり、更には、角膜炎症、結膜充血等の眼障害を惹起するようになったりすることとなる。
【0003】
そこで、かかるコンタクトレンズを安全に且つ快適に装用するために、毎日の取扱いの中で、眼からコンタクトレンズを取り外した際に、コンタクトレンズに対して洗浄操作を行なうべく、そのための各種のコンタクトレンズ用洗浄剤が提案され、その代表的な一つとして、リパーゼやプロテアーゼの如き分解酵素を含有せしめてなる洗浄液が知られている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、そのような洗浄液は、眼から取り外したコンタクトレンズに対する洗浄操作には有効であるもののの、眼に装用された状態のコンタクトレンズの汚れの除去のために、そのような洗浄液を点眼液として用いて点眼し、汚れの分解除去を図ることは、分解酵素自体の眼組織に対する作用を考えると、本質的に避けなければならないものであった。
【0004】
また、コンタクトレンズに付着した眼脂等の汚れの除去効果を更に向上させるために、コンタクトレンズ用液剤に、所定の界面活性剤を添加、含有せしめることも考えられており(特許文献4等参照)、そして、そのような界面活性剤の適用に関連して、特許文献5においては、所定の非イオン性界面活性剤と粘調剤を組み合わせることにより、コンタクトレンズの濡れ性が良好な眼科用組成物が提供され得ることが明らかにされ、更に、特許文献6においては、AKYPO RLM−100等と称される特定構造の陰イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン長鎖アルキルエーテルの末端−CH2 OH基を酸化してなる形態のもの)を有効成分とするコンタクトレンズの水性洗浄組成物も、明らかにされている。
【0005】
しかしながら、それら界面活性剤を含有せしめた液状組成物によるコンタクトレンズの洗浄操作にあっては、界面活性剤の高い脂質可溶化能の故に、コンタクトレンズに付着した脂質汚れを除去する効果につき、in vitro の試験においては、高い効果が得られるものの、その高い界面活性能によって、そのような液状組成物を点眼剤として用いたり、或いはコンタクトレンズに付着して界面活性剤が眼内に持ち込まれたりしたときに、眼球面上に形成される正常な涙液層が破壊され、健康な角膜上皮に損傷を与える恐れがある等の問題を発生させる懸念があった。
【0006】
このため、界面活性剤を含有する眼科用の液体組成物は、今一つ、生体への安全性において、充分なものではなかったのであり、それ故に、そのような眼科用液剤組成物を点眼液として用いて、コンタクトレンズの装用状態下において点眼し、以て、コンタクトレンズの表面を湿潤させたり、更には、コンタクトレンズの装用中の不快感の主たるものとして認識されている、乾燥感を解消せしめようとすることは、困難であったのである。
【0007】
【特許文献1】特開平7−76700号公報
【特許文献2】特開平4−370197号公報
【特許文献3】特開平9−87682号公報
【特許文献4】特開平10−108899号公報
【特許文献5】国際公開第97/28827号パンフレット
【特許文献6】米国特許第4808239号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、コンタクトレンズに付着した脂質汚れの如き汚れを除去し得る機能や、コンタクトレンズ表面に対するタンパク質の如き汚れの付着を効果的に抑制し得る機能を保持すると共に、涙液層の破壊による角膜へのダメージを引き起こすこと等のない、生体への安全性の高いコンタクトレンズ用液剤組成物を提供することにあり、また、コンタクトレンズの表面を効果的に湿潤させることの出来る、コンタクトレンズ用点眼液として好適に用いられ得る眼科用液剤組成物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明者等は、そのような課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、眼科用液剤の配合成分として使用実績があり、比較的安全とされる特定の非イオン性界面活性剤を、特定の低濃度、具体的には、臨界ミセル濃度付近において含有せしめると共に、ポリエチレングリコールを、かかる非イオン性界面活性剤に対して、大割合にて含有せしめるようにすることにより、コンタクトレンズの脂質汚れを可溶化する能力や、コンタクトレンズに対するタンパク質汚れの付着抑制能力を保持しつつ、涙液層に影響を与えることのない眼科用液剤組成物を得ることが出来ることを見出したのである。
【0010】
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その第一の態様とするところは、水性媒体中に、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステアレート及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の非イオン性界面活性剤を、0.0001〜0.04w/w%の範囲内で含有すると共に、ポリエチレングリコールを、該非イオン性界面活性剤の1重量部に対して20重量部以上の割合において含有していることを特徴とするコンタクトレンズ用液剤組成物にある。
【0011】
なお、そのような本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物における望ましい第二の態様にあっては、前記ポリエチレングリコールは、1000〜100000の平均分子量を有している。
【0012】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物における第三の態様では、前記ポリオキシエチレンソルビタンアルキレートとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートが、好適に用いられることとなる。
【0013】
さらに、本発明にあっては、その望ましい第四の態様として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コンドロイチン硫酸塩及びヒアルロン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の増粘剤が、コンタクトレンズ用液剤組成物中に、更に含有せしめられる構成が、有利に採用されることとなる。
【0014】
加えて、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物の好ましい第五の態様によれば、前記液剤組成物の浸透圧が、生理食塩液に対する浸透圧比にて、0.85〜1.55の範囲内にあるように、調整されるのである。
【0015】
なお、本発明にあっては、また、第六の態様として、等張化剤、pH緩衝剤、キレート化剤、防腐剤、殺菌剤、清涼化剤、消炎剤、血管収縮剤、ビタミン類及びアミノ酸類からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の添加剤を、更に含有してなる構成も、採用されることとなる。
【0016】
そして、本発明にあっては、上述せる如きコンタクトレンズ用液剤組成物が、2mEq/L〜30mEq/Lの範囲内のK+ を含有している第七の態様が、有利に採用されることとなる。
【0017】
また、本発明の第八の態様によれば、上述せる如きコンタクトレンズ用液剤組成物が、コンタクトレンズ用点眼液として有利に用いられることとなる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物における、先述した第一の態様によれば、眼科用洗浄剤の配合成分として比較的安全とされる、特定の非イオン性界面活性剤が、0.04w/w%以下の、極めて低い濃度において含有せしめられているために、そのような非イオン性界面活性剤が存在しても、それによる脂質を可溶化する能力は小さいものと考えられ、従って、涙液層を破壊し、油膜を全て可溶化させてしまうほどの力はないものと考えられ、そのために、涙液層の破壊による角膜へのダメージ等が惹起されるようなことがない一方、低濃度とはいえ、非イオン性界面活性剤の存在によって、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物には、界面活性能が付与されており、またそれによって、コンタクトレンズ表面を効果的に湿潤させることが出来る効果も、奏するのである。
【0019】
しかも、本発明にあっては、非イオン性界面活性剤の含有量が、そのような低濃度であっても、実用的に充分な脂質汚れの除去効果が発揮され得ると共に、ポリエチレングリコールの大割合での存在により、本発明に従うところのコンタクトレンズ用液剤組成物の脂質可溶化速度が効果的に向上され得て、脂質汚れの如き汚れの除去作用を有利に高め得る特徴も有しているのである。すなわち、脂質を除去するためには、先ず、洗浄過程におけるレンズ表面に付着した脂質汚れを液化する必要があるところ、ポリエチレングリコールは、脂質に浸透することが出来、それによって、汚れを液化及び浮き上がらせることが可能となって、効果的に非イオン性界面活性剤の可溶化作用の働きを引き出し、以て、有効な汚れ除去効果を発揮せしめ得るものと考えられるのである。
【0020】
また、本発明において用いられるポリエチレングリコールは、タンパク質との相互作用によって、その沈殿化を誘発する機能も備えており、これによって、涙液中のタンパク質が、レンズ表面に直接に沈着するのを抑制乃至は阻止することにより、コンタクトレンズへのタンパク質汚れの如き、汚れ付着抑制効果をも、有利に発揮せしめ得るのである。
【0021】
従って、かくの如き本発明に係るコンタクトレンズ用液剤組成物は、コンタクトレンズに付着した脂質汚れ等の汚れを効果的に除去し、また、タンパク質等の汚れの付着抑制効果も、有利に発揮し得ると共に、表面が疎水化されたコンタクトレンズの表面を効果的に湿潤させることが出来る一方、涙液層の破壊による角膜へのダメージ等の問題を引き起こすことのない、安全性に優れたものであり、このため、前記した本発明の第八の態様の如く、コンタクトレンズ用点眼液として、コンタクトレンズの装用された眼に対する点眼に用いることにより、上記した本発明の作用・効果を有利に発揮せしめ得るのである。
【0022】
なお、本発明の第二の態様に従って、ポリエチレングリコールとして、所定範囲の平均分子量のものを用いることにより、また、本発明の第三の態様に従って、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレートとして、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートを用いることにより、更には、本発明の第五の態様に従って、液剤組成物の浸透圧を、所定範囲内のものとすることにより、本発明の特徴は、更に有利に発揮され得るものとなるのである。
【0023】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物においては、本発明の第四の態様に従って、所定の増粘剤が、更に含有せしめられたり、また、第六の態様に従って、所定の添加剤が更に含有せしめられることにより、それぞれの含有成分に応じた更なる特徴が、コンタクトレンズ用液剤組成物に付与され、その実用性が、より一層高められ得ることとなる。
【0024】
本発明にあっては、先述した第七の態様の如く、コンタクトレンズ用液剤組成物中におけるカリウムイオン(K+ )の濃度が、所定範囲内となるように調整することにより、涙液電解質組成に近くなり、液剤組成物の生体適合性がより一層向上せしめられ得ることとなる。一般に、点眼液は生体適合性を増すために、浸透圧を涙液と同程度に調整されるものであるが、張度調節剤として主として塩化ナトリウム(NaCl)が使用されている。しかしながら、生体にとって食塩NaClは欠かすことが出来ない成分ではあるものの、同時にK+ やCa2+等適度な量の他の電解質の存在によって生理機能が維持されていることがわかっている。当然ながら、涙液中にも適度なカリウム(K+ )が存在しており、眼組織の生理機能を維持するべく、点眼液中にも涙液と同程度のカリウムが存在することが望ましいのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
ところで、かかる本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物は、水性媒体を主体として、その中に、必須の成分の一つとして、所定の非イオン性界面活性剤を低濃度において含有するものであるが、そこで用いられる非イオン性界面活性剤としては、眼科用液剤の配合成分として使用実績があり、また比較的安全とされている、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレンステアレート及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを挙げることが出来、それらの中から、少なくとも1種以上が選択されて、用いられることとなる。その中でも、脂質可溶化能が有利に増強され得、また、国内において眼科用液剤の配合成分として使用実績の多い成分であって、マイルドな界面活性能を示す成分である、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、特にポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、例えば、ポリソルベート80(商品名:日光ケミカルズ株式会社)等の各種市販品が、好適に用いられることとなる。
【0026】
そして、そのような非イオン性界面活性剤は、本発明の目的を達成すべく、0.0001〜0.04w/w%、好ましくは、0.001〜0.03w/w%の低濃度において、コンタクトレンズ用液剤組成物中に含有せしめられることとなる。なお、かかる非イオン性界面活性剤の含有量が、上記した下限量よりも少なくなると、臨界ミセル濃度(CMC)よりも遥かに低くなって、洗浄力が極端に低下するという問題があり、また、上限量よりも多い場合にあっては、涙液層を破壊し、角膜上皮を損傷させる等の問題が、惹起され易くなる。
【0027】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物の必須の成分の他の一つであるポリエチレングリコールは、一般に、エチレンオキシドの開環重合で得られる両末端ヒドロキシル基のポリエーテルであって、本発明においては、前記した非イオン性界面活性剤の脂質可溶化速度を向上せしめ、また、タンパク質汚れ等の汚れの付着を抑制する成分として用いられるものであり、そして、そのような機能を充分に奏せしめるべく、非イオン性界面活性剤の1重量部に対して20重量部以上の割合となるように、含有せしめられることとなるが、コンタクトレンズ用液剤組成物における含有量としては、一般に、0.01〜5.0w/w%、好ましくは0.1〜1.0w/w%とされることとなる。ポリエチレングリコールの含有量があまりにも少なくなると、脂質の可溶化に効果的に作用し難くなる問題やタンパク質汚れ等の汚れ付着防止効果が充分でなくなる問題があり、また、その含有量が多くなり過ぎると、コンタクトレンズの膨潤や変形等の問題が惹起され易くなるからである。
【0028】
なお、かかるポリエチレングリコールは、本発明の目的を充分に達成しつつ、コンタクトレンズへの吸着取り込みを抑え、同時に水への充分な溶解性を確保する等という理由から、その平均分子量が1000〜100000の範囲内にあるものが、好適に用いられることとなる。特に、その中でも、3000〜20000の範囲内の平均分子量を有するポリエチレングリコールが、本発明においては、有利に用いられるのである。
【0029】
さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物には、そのような液剤組成物の粘度調整を行い、また、その保湿性や湿潤性を高めて、コンタクトレンズにより一層優れた使用感を与える増粘剤の少なくとも1種以上が、更に含有せしめられることとなる。そして、そのような増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コンドロイチン硫酸塩、ヒアルロン酸塩等を挙げることが出来る。その中でも、国内において、眼科用液剤の配合成分として使用実績の多い成分であり、またコンタクトレンズに付着した脂質の除去効果が期待され得る等の理由から、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、有利に用いられることとなる。なお、かかる増粘剤の含有量としては、一般に0.05〜0.8w/w%程度、好ましくは0.1〜0.8w/w%程度である。この増粘剤の含有量が少ない場合にあっては、充分な増粘効果が得られないといった問題があり、また、その上限値よりも多くなると、粘度が高くなり過ぎ、使用感が悪くなる等といった問題を生じる。
【0030】
加えて、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物においては、上述の如き成分の他にも、更に必要に応じて、従来より、眼科用液剤組成物に用いられている各種の添加成分のうちの1種乃至は2種以上が適宜に選択されて、通常の含有割合において含有せしめられていても、何等、差支えない。なお、そのような添加成分(添加剤)は、生体への安全性が高く、尚且つ眼科的に許容され、しかもコンタクトレンズの形状や物性に対して影響のないものであることが好ましく、また、そういった要件を満たす量的範囲内で用いられることが望ましいのであり、これによって、本発明の効果を何等阻害することなく、その添加成分に応じた各種の機能を、本発明に従う液剤組成物に対して有利に付与することが出来る。
【0031】
例えば、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物にあっては、その浸透圧が大きくなり過ぎても、逆に小さくなり過ぎても、眼に対して刺激を与えたり、コンタクトレンズの形状に影響を及ぼしたり、眼障害を招来する恐れがあるところから、通常、コンタクトレンズ用液剤組成物の浸透圧は、等張化剤(浸透圧調整剤)等を添加せしめることによって、涙液の浸透圧に近いものであることが望ましく、一般に、生理食塩液に対する浸透圧比にて(生理食塩液の浸透圧を1として)、0.85〜1.55程度の範囲、好ましくは、0.8〜1.2程度の範囲に調整されていることが望ましい。なお、かかる浸透圧の調整に用いられる浸透圧調整剤としては、一般に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、糖アルコール、及び多価アルコール若しくはそのエーテル又はそのエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物が、用いられることとなる。
【0032】
また、コンタクトレンズ用液剤組成物にあっては、そのpH値が大きくなり過ぎても、逆に小さくなり過ぎても、眼に対して刺激を与えたり、眼障害を招来する恐れがあるところから、通常、そのような液剤組成物のpH値は、適当なpH調整剤や緩衝剤等の添加によって、5.3〜8.5程度、中でも7.0付近に調整されることが望ましい。なお、そのようなpHの調整のために用いられるpH調整剤としては、水酸化ナトリウムや塩酸等が利用される一方、液剤組成物のpHを、前記した範囲に有効に且つ眼に対して安全な範囲に保つためのpH緩衝剤としては、従来から公知の各種のものの中から、適宜に選択されて、用いられることとなる。具体的には、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸等のカルボン酸類、オキシカルボン酸等の酸や、その塩(例えば、ナトリウム塩等)、更にはGood−Bufferやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸水素ナトリウム等を、眼に対して安全であり、しかもコンタクトレンズに対する影響を少なくすることが出来るという理由から、挙げることが出来る。
【0033】
加えて、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズには、一般に、涙液からの汚れとして、カルシウム等が沈着乃至は吸着する可能性があることから、そのようなカルシウム等の沈着乃至は吸着を防止するべく、コンタクトレンズ用液剤組成物には、キレート化剤も、また、有利に添加せしめられることとなる。そのようなキレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)等が挙げられる。
【0034】
さらに、本発明に係るコンタクトレンズ用液剤組成物にあっては、眼やコンタクトレンズに対する消毒効果乃至は殺菌効果、更には、コンタクトレンズ用液剤組成物の防腐・保存効果を有利に発現させるために、防腐効力乃至は殺菌効力を有する防腐剤や殺菌剤が、かかる液剤組成物に対して、適宜に添加せしめられる。なお、そのような防腐剤や殺菌剤としては、一般に、防腐乃至は殺菌効力と共に、眼やコンタクトレンズへの適合性に優れたもの、更には、アレルギー等の障害の要因となり難いものが望ましく、公知の各種のものの中から、適宜なものが選定されて、単独で或いは複数が組み合わされて、用いられることとなる。
【0035】
ここで、防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸或いはその塩、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、クロロブタノール、過ホウ酸或いは過ホウ酸ナトリウムのような過ホウ酸塩、二酸化塩素等が挙げられ得る。一方、殺菌剤としては、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)等のビグアニド系殺菌剤や、ポリクオタニウム等の4級アンモニウム塩系殺菌剤等を挙げることが出来る。
【0036】
更にまた、点眼時に爽快感を与えたり、コンタクトレンズ装用時の異物感や痒みを解消すること等を目的として、メントール、ボルネオール、カンフル、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油、ウィキョウ油、ハッカ油、ローズ油、クールミント等の清涼化剤を添加せしめることも、可能である。
【0037】
なお、この他にも、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物には、ストレスやコンタクトレンズの装用等に起因する眼内の炎症を抑えるために、グリチルリチン酸及びその塩、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム等の消炎剤や、眼球中の強膜血管に作用し、眼の充血を解消すると共に、眼精疲労の回復に効果があるとされる、硝酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン等の血管収縮剤、ビタミンA類(パルミチン酸レチノール、β−カロチン等を含む)、ビタミンB2 、B6 、B12、酢酸d−α−トコフェロール等のビタミンE類、パンテノール等のビタミン類、アスパラギン酸及びその塩、アミノエチルスルホン酸、アルギニン、アラニン、リジン、グルタミン酸等のアミノ酸類等、各種添加成分を、目的とするコンタクトレンズ用液剤組成物の用途に応じて、適宜、添加することが可能である。
【0038】
そして、かくの如き各種成分が含有せしめられてなる、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物は、その生体適合性を高めるべく、そこに含まれるカリウムイオン(K+ )の濃度が、一般に、2mEq/L〜30mEq/L程度、好ましくは、4mEq/L〜28mEq/L程度の範囲内となるように、調整されることとなる。このカリウムイオン濃度が低くなり過ぎても、また、高くなり過ぎても、オキュラー・サーフェス(Ocular Surface)に悪影響をもたらす恐れがある。なお、このカリウムイオンは、等張化剤として添加されるKClや、K塩タイプの各種添加成分から持ち込まれるものであって、その全体量が、前記した範囲内となるように、液剤組成物が調整されるのである。
【0039】
ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物は、上述の如き成分を、従来と同様に、適当な水性媒体中に、それぞれ適量において添加、含有せしめることにより、調製されることとなるのであるが、それに際して用いられる水性媒体としては、水道水や精製水、蒸留水等の水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、生体への安全性が高く、尚且つ眼科的に充分に許容され得るものである限りにおいて、何れも、利用することが可能であることは、言うまでもないところである。また、そのような液剤組成物を調製するにあたっては、何等特殊な方法を必要とせず、通常の水溶液を調製する場合と同様に、水性媒体中に各成分を任意の順序にて溶解させることにより、容易に得ることが出来るものである。
【0040】
そして、以上のようにして得られる本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物は、眼に対する安全性に優れ、涙液層を破壊したり、角膜上皮に損傷を与えたりするものではなく、また、コンタクトレンズの形状又は物性に悪影響を与えるものではないところから、特に点眼液として、有利に用いられ、以て、前記した本発明の作用・効果が、効果的に発揮せしめられることとなる。この点眼液として用いる場合には、従来から公知の点眼液乃至は点眼薬と同様に、その適量が、コンタクトレンズを装用した状態において、点眼せしめられることとなる。このようなコンタクトレンズ装用時における点眼により、レンズ表面が疎水性となったコンタクトレンズであっても、その表面を効果的に湿潤させ、乾燥感の低減効果がより一層持続せしめられ得るのであり、また、レンズ表面に付着した油脂汚れ等の汚れが除去されたり、タンパク質等の汚れの付着も有利に抑制されるといった効果が享受される。
【0041】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物を、点眼液ではなく、コンタクトレンズ用液剤として用いる場合には、例えば、かかる眼科用組成物にてコンタクトレンズの洗浄乃至は濯ぎを行ない、その後、そのコンタクトレンズの表面に液剤組成物が付着した状態で、コンタクトレンズを装用したり、或いは、かかる液剤組成物中にコンタクトレンズを一定時間浸漬して保存せしめた後、そのコンタクトレンズを取り出し、そのまま装用するようにすれば良い。このように使用すれば、本発明に従う、コンタクトレンズ用液剤組成物による効果が、有利に発揮されるのである。
【0042】
なお、上記したコンタクトレンズ用液剤としては、単一の用途を目的とする、コンタクトレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用濯ぎ液、コンタクトレンズ保存液等の他、洗浄、濯ぎ、殺菌及び保存等のうちの2つ以上の用途を目的とする、マルチパーパスソリューション等、従来からコンタクトレンズのケアに用いられている公知の液剤を、何れも挙げることが出来、その用途は、何等限定されるものではない。
【0043】
また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物を、コンタクトレンズ用点眼液や、コンタクトレンズ用液剤として用いた際に、その対象となるコンタクトレンズとしては、その種類が何等限定されるものではなく、例えば、非含水、低含水、高含水等の全てに分類されるソフトコンタクトレンズ及びハードコンタクトレンズが、その対象となり得るのであって、コンタクトレンズの材質等が、本発明の適用に際して、何等問われることはないのである。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。そして、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0045】
−実施例1−
先ず、精製水に対して、所定の配合成分を、下記表1に示される各種割合において、それぞれ添加して、溶解せしめることにより、pHが6.5とされた各種試験液1〜7をそれぞれ調製した。また、それら得られた7種の試験液の浸透圧は、何れも、生理食塩液に対する浸透圧比で、約1.1となるものであった。
【0046】
なお、かかる試験液の調製に際して用いられたHPMC2910は、増粘剤としてのヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製メトローズTC−5E)であり、また、PEG#6000は、平均分子量が6000であるポリエチレングリコール(Fluka Bio Chemika社製)であり、更に、ポリソルベート80は、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(日光ケミカルズ株式会社製TO−10M)である。また、ホウ砂の使用量は、それぞれの試験液のpHが6.5となるような割合において、決定された。
【0047】
【表1】

【0048】
ついで、かかる調製された試験液1〜5及び生理食塩液を用いて、それら液剤の脂質に対する洗浄効果を、脂質可溶化速度法によって、それぞれ調べた。
【0049】
具体的には、脂質としてのトリグリセリドと色素であるスダンIとを99:1の重量比にて混合せしめてなる着色脂質を用いて、その0.5gを、所定の試験瓶に収容せしめた後、かかる試験瓶に、上記で得られた試験液又は生理食塩液の20mlを更に添加、収容せしめ、その後、その試験瓶の開口部を適当な蓋にて覆蓋する操作を、各液剤試料について、それぞれ行った。次いで、このようにして準備した着色脂質と液剤試料を収容する試験瓶のそれぞれを、25℃の温度下において1〜24時間の間、一定の速度で振盪せしめ、更に、所定時間静置した後、各試験瓶内の上澄み液を、それぞれ採取して、それら上澄み液の各々について、分光光度計(株式会社島津製作所製自記分光光度計UV−2200)により、485.5nmの波長での吸光度を測定した。
【0050】
そして、上記の試験瓶に対する振盪時間が1時間、3時間、6時間、9時間及び24時間の経過時点における、各試験瓶内の上澄み液の吸光度の測定結果を、下記表2に示すと共に、図1にも、図示した。
【0051】
【表2】

【0052】
その後、各試験液及び生理食塩液についての脂質可溶化速度を、上記で測定した3時間後までの吸光度の切片傾きとして求め、その結果を、下記表3に示すと共に、棒グラフの形態において、図2にも示した。
【0053】
【表3】

【0054】
かかる脂質可溶化試験の結果から明らかな如く、試験液1と試験液2、及び試験液3と試験液4は、その脂質可溶化量において略同様な値を示しているが、脂質可溶化速度の値においては、試験液1の方が試験液2よりも大きく、また、試験液3の方が試験液4よりも大きいことを示していることが、認められる。そこで、各試験液の組成の違いを見てみると、試験液1と試験液3は、どちらも、ポリエチレングリコールと非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)とが併用されているのに対して、試験液2と試験液4とは、それら2つの物質のうち、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)しか含有されていない(ポリエチレングリコールが含有せしめられていない)ことが、理解される。
【0055】
以上のことを念頭に置くと、ポリエチレングリコールは、非イオン性界面活性剤と併用することで、非イオン性界面活性剤の界面活性能による脂質可溶化量は減少させることなく、脂質可溶化速度のみを増大させていることが理解されるのである。また、脂質可溶化量に変化を与えず、可溶化速度のみを増大させるということは、点眼した際に、より迅速に眼脂等の脂質性汚れ成分に働きかけて、その除去処理を有利に行うことが出来るということになり、従って、非イオン性界面活性剤を単独で用いるよりも、ポリエチレングリコールと併用した方が、洗浄作用において、効果的な洗浄液とすることが出来るのである。
【0056】
−実施例2−
上記した実施例1の結果を踏まえて、ポリエチレングリコールと非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)の2成分を併用している試験液1と試験液3についての比較検討を行うために、眼表面への影響を調べるNi−BUT(Non-invasive Tear Break-up Time )測定試験を実施した。
【0057】
具体的には、市販のコンタクトレンズ(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製ACUVUE2)を対象者(1名)の眼に装用した状態において、先の試験液1を点眼し、コンタクトレンズ前面の涙液のNi−BUTを1分毎に測定した。測定機器は、興和株式会社製ドライアイ観察装置DR−1を使用した。また、かかる試験液1についてのNi−BUT測定試験の後、涙液が正常な状態に戻ったことを確認し、更に、その後、実施例1において調製された試験液3を点眼し、同様に、コンタクトレンズ前面の涙液のNi−BUTを1分毎に測定した。そして、その点眼後、30分経過以降は、5分間隔において測定した。そして、それらの測定結果を、下記表4に示した。
【0058】
【表4】

【0059】
かかる表4に示されるNi−BUT測定試験の結果から明らかなように、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80の濃度を臨界ミセル濃度付近に処方した試験液1においては、対象者の点眼前の値である「Ni−BUT=10秒」に戻るまでに、約10分間を要している。これに対して、ポリソルベート80の濃度を、臨界ミセル濃度の約10倍に処方した試験液3にあっては、「Ni−BUT=10秒」に戻るのに45分間も要し、このことから、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80の濃度が高くなるほど、涙液層は破壊され、正常な涙液に戻るまでの時間が増長されることが、確認された。また、このことから、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80の含有量が、臨界ミセル濃度の約10倍である試験液3よりも、臨界ミセル濃度付近の濃度に設定されている試験液1の方が、眼に対して、非常に安全となって、好ましいことが理解されるのである。
【0060】
−実施例3−
実施例1において調製された試験液1、2、6及び7を用いて、それら試験液を更にホウ砂の適量を用いてpH=7.3とした後、それぞれ2mlずつ、バイアル瓶に収容せしめ、そしてその後、それぞれのバイアル瓶に、市販のコンタクトレンズ(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製「1DAY ACUVUE」)の3枚を、それぞれ2日間浸漬した。次いで、このように浸漬処理されたコンタクトレンズを、1枚ずつ、人工涙液(リゾチーム:496μg/ml、塩化ナトリウム:0.9%、塩化カルシウム:1mM、リン酸二水素ナトリウム:4mM、pH=7.0)の5mlが入ったバイアル瓶(25℃保持)に収容して浸漬せしめ、そして5分間浸漬した後の人工涙液中のリゾチーム濃度を、高速液体クロマトグラフィーにて測定した。そして、コンタクトレンズ浸漬前の人工涙液中のリゾチーム濃度と、コンタクトレンズ浸漬後の人工涙液中のリゾチーム濃度との差から、コンタクトレンズに付着したリゾチーム量を算出した。3つの測定値(n=3)の平均値を求め、その結果を、下記表5に示した。また、比較検討を行うために、試験液1、試験液6、試験液7及び試験液2の順番に、表5の結果を、図3に、棒グラフで示した。なお、比較対照の生理食塩水処理レンズのリゾチーム付着量は、96.0μg/lensであった。
【0061】
【表5】

【0062】
かかる表の結果から明らかなように、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)の0.01%とポリエチレングリコールの0.10%が含まれている試験液6と、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)の0.01%とポリエチレングリコールの0.20%が含まれている試験液7との間には、大きな差が存在し、そこではポリソルベート80とポリエチレングリコールとの比が1:10と1:20との間で顕著な差が認められ、前者の試験液6の方が、後者の試験液7よりもタンパク質付着量が少ないことを見出すことが出来る。なお、高分子量のポリエチレングリコールが高濃度で含まれると、粘度が高くなりすぎることを考慮すると、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)とポリエチレングリコールとの量比は、1:20〜1:50の範囲が好ましい、と考えられる。
【0063】
−実施例4−
実施例1における試験液の調製に用いられた非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80に代えて、他の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステアレート又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(BASF社製)を用いて、実施例1と同様にして、調製された試験液にあっても、また、ポリエチレングリコールとして、平均分子量が4000であるもの(ナカライテスク株式会社製)を用いた場合にあっても、装用中のコンタクトレンズ表面に付着した脂質汚れを効果的に除去することが出来、また、タンパク質の付着を効果的に抑制し、更に、生体に対して安全である眼科用液剤組成物を得ることが出来た。
【0064】
−実施例5−
実施例1における試験液1の配合成分である、非イオン性界面活性剤としてのポリソルベート80の配合割合を、0.001w/w%とし、またポリエチレングリコール(PEG#6000)の配合量を0.05w/w%として、同様な試験液を調製したところ、その脂質可溶化量の絶対値においては、実施例1の試験液1には劣るものの、生理食塩液よりも高い値を示すことを認めた。また、BUT測定試験においては、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)の含有量が少ないために、それを、実施例2の場合と同様に点眼しても、涙液が正常な状態に戻る時間が速く、より一層安全な眼科用液剤組成物であることを認めた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1において得られた、各試験液と生理食塩液の振盪時間と吸光度測定結果の関係を示すグラフである。
【図2】実施例1において得られた、各試験液と生理食塩液についての脂質可溶化速度を示すグラフである。
【図3】実施例3において得られた、各試験液とコンタクトレンズへのタンパク質付着量との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステアレート及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の非イオン性界面活性剤を、0.0001〜0.04w/w%の範囲内で含有すると共に、ポリエチレングリコールを、該非イオン性界面活性剤の1重量部に対して20重量部以上の割合において含有していることを特徴とするコンタクトレンズ用液剤組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールが、1000〜100000の平均分子量を有している請求項1に記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレンソルビタンアルキレートが、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートである請求項1又は請求項2に記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。
【請求項4】
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コンドロイチン硫酸塩及びヒアルロン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の増粘剤を、更に含有している請求項1乃至請求項3の何れかに記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。
【請求項5】
前記液剤組成物の浸透圧が、生理食塩液に対する浸透圧比にて、0.85〜1.55の範囲内にある請求項1乃至請求項4の何れかに記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。
【請求項6】
等張化剤、pH緩衝剤、キレート化剤、防腐剤、殺菌剤、清涼化剤、消炎剤、血管収縮剤、ビタミン類及びアミノ酸類からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の添加剤を、更に含有している請求項1乃至請求項5の何れかに記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。
【請求項7】
前記液剤組成物が、2mEq/L〜30mEq/Lの範囲内のK+ を含有している請求項1乃至請求項6の何れかに記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。
【請求項8】
コンタクトレンズ用点眼液として用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−162899(P2006−162899A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353394(P2004−353394)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】