説明

コンテナ荷役車両

【課題】コンテナのダンプ動作を電子タグ等の近距離通信システムで感知することにより、不法投棄を検出することを課題とする。
【解決手段】車体1に搭載されたコンテナCが、荷役装置2により傾動して積載物を排出するダンプ姿勢に姿勢変更自在に設けられ、前記コンテナには、車体側に設けられた情報読み取り装置4により該コンテナを特定する情報を読み取るためのコンテナ用情報媒体3が設けられている。しかも、前記荷役装置の昇降部22bには、前記コンテナの昇降動作を検出するためのダンプ動作検出用情報媒体7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナのダンプ動作を電子タグ等の近距離通信システムで感知して不法投棄を検出するコンテナ荷役車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナ荷役車両でコンテナを運搬して所定の場所に設置するとともに、このコンテナに積載した廃棄物等の積載物をコンテナごと車両に積み込んで処理場等に運搬している。そして、処理場等の所定場所において、荷役装置によりコンテナを傾動するダンプ姿勢に姿勢変更し、コンテナ内の積載物を排出している。
【0003】
このようなコンテナ荷役車両では、当該車両一台について複数台から数十台のコンテナを運搬する作業を担っており、コンテナ荷役車両を多く所有しているユーザでは数百を超えるコンテナを所有して運用しているのが現状である。
【0004】
そこで、複数のコンテナの位置情報を把握しその位置管理を行うコンテナ管理システムが開発されている。かかるコンテナ管理システムは、コンテナ側に、コンテナ識別情報を記憶させたRFID等の電子タグのコンテナ用情報媒体を取り付けるとともに、車体側に、コンテナ用情報媒体に記憶させたコンテナ識別情報を読み取る読取装置と、GPS等のコンテナの位置を認識する位置情報認識装置を設け、前記読取装置で読み取ったコンテナ識別情報と位置情報認識装置で認識したコンテナ位置情報とを無線装置で基地局に送信し、コンテナの位置管理を行うというものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−212351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、廃棄物を運搬する廃棄物運搬車両では、上記従来のコンテナ位置管理システムのようにGPSや通信手段を用いて、コンテナの位置情報だけを管理していても、その位置の測位精度が極めて高くなおかつ非常に頻繁な測位情報を連続して記録したり、通信したりしていなければ不法投棄場所を通り過ぎただけなのか、その場所で不法投棄を行ったのかを判定することは困難であるという問題がある。
【0006】
つまり、運転者が荷役装置の操作端末から操作情報(コンテナ積込・積卸、ダンプ排出)を入手できない既存の車両においては、コンテナの状態を把握することができないため、コンテナ内容物の廃棄場所を特定することができず、不法投棄場所付近を通過しただけなのか不法投棄をしたのかを判別できないという問題がある。
【0007】
本発明は、コンテナのダンプ操作を電子タグ等の近距離通信システムで感知することにより、不法投棄を検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、車体に搭載されたコンテナが、荷役装置により傾動して積載物を排出するダンプ姿勢に姿勢変更自在に設けられ、前記コンテナには、前記車体側に設けられた情報読み取り装置により該コンテナを特定する情報を読み取るためのコンテナ用情報媒体が設けられたコンテナ荷役車両において、前記コンテナの昇降動作を検出するためのダンプ動作検出手段が設けられたことにある。
【0009】
本発明は、前記荷役装置の昇降部には、前記コンテナの昇降動作を検出するためのダンプ動作検出用情報媒体が設けられていることにある。
【0010】
本発明は、前記情報読み取り装置により、前記ダンプ動作検出用情報媒体の情報を読み取るようにするのが好ましい。
【0011】
本発明は、前記荷役装置の昇降部には、コンテナ用情報媒体よりも下方に位置するように、遮蔽体が突設され、該遮蔽体の下面に前記ダンプ動作検出用情報媒体が取り付けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、コンテナのダンプ動作を検出して不法投棄の有無を証明できるコンテナ管理システムを構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、コンテナを搭載したコンテナ荷役車両を示し、図3は、コンテナがダンプ姿勢にあるコンテナ荷役車両を示し、図4は、コンテナを地面に卸した状態のコンテナ荷役車両を示している。
【0014】
コンテナ荷役車両は、その車体1に例えば金属製のコンテナCを積卸し自在に搭載すとともに、コンテナC内の積載物を排出するための荷役アーム(荷役装置)2が設けられたものである。
【0015】
荷役装置2は、コンテナCが搭載された状態(図2参照)において、水平に配置されるアウタアーム21と、同状態において垂直に配置された垂直部22bを有する伸縮アーム22とにより全体としてL字状に構成されている。
【0016】
アウタアーム21は、スイングフレーム2aの先端に回動自在に支持されているとともに、このスイングフレーム2aの後端が車体1の後端に回動自在に支持されている(図3参照)。伸縮アーム22は、前記アウタアーム21内に挿入された水平部22aと、この水平部22aの前端部から立設された垂直部22bとで略L字状に形成されており、水平部22aが図示しない伸縮シリンダによりアウタアーム21に対して長手方向に伸縮自在になされている。
【0017】
垂直部22bの先端には、コンテナCに設けられた係合ピン30と係脱自在なフック23が設けられている。また、アウタアーム21と車体1との間には、起伏シリンダ24が連設されており、この起伏シリンダ24の伸縮動作により荷役装置2がその後端部を中心にして上下方向に回動自在に構成されている。さらに、車体1の後端部には、コンテナCを当該車体1と地上との間で円滑に積卸すためのローラ11が設けられている。
【0018】
コンテナCは、上面が開放された開放式のものや、上面も閉じられた密閉式のもの等が用いられ、後壁(図示省略)が積載物を排出可能なように開閉自在になされている。なお、コンテナCの底面前部に支持脚C2が、底面後部に支持ローラC3が設けられている。
【0019】
前記構成からなるコンテナ荷役車両によるコンテナCの積卸作業は、まず、図2に示すようにコンテナCを搭載した状態で、伸縮シリンダにより伸縮アーム22をアウタアーム21に対して縮退させ、車体1上のコンテナCを後方に所定長さスライドさせる。
【0020】
この後、図4に仮想線で示すように起伏シリンダ24により荷役装置2全体を上方に回動させてコンテナCを傾動させる。これによりコンテナCを同図に示すように車体1上から地上に卸すことができる。
【0021】
また、上述と逆の動作により地上のコンテナCを車体1上に積込むことができる。
【0022】
コンテナC内に積載された積載物を排出する場合には、コンテナCを車体1上に搭載した状態で、伸縮アーム22をアウタアーム21に対して縮退させることなく、荷役装置2を上方に回動させてコンテナCを傾動させることでダンプ姿勢に姿勢変更し、このコンテナC内の積載物を後方から排出する(図3参照)。
【0023】
次に、コンテナ荷役車両によるコンテナCの管理システムについて詳説する。前記荷役車両には、図1に示すようにコンテナC(例えば、前壁C1)に設けられたコンテナ用情報媒体3からその情報を読み取る情報読み取り装置4と、車載端末5とが設けられている。
【0024】
コンテナ情報媒体3としては、RFID等の電子タグ、バーコードラベルが挙げられ、これらにコンテナCを特定するための情報が書き込まれている。
【0025】
情報読み取り装置4は、コンテナ用情報媒体3と対向するように車体1側に設けられている。情報読み取り装置4は、上記コンテナ用情報媒体3に各種の形態で書き込まれた情報を読み取り可能なIDタグリーダ(電子タグリーダ)、バーコードリーダや磁気リーダなどであり、情報読み取り装置4によってコンテナ用情報媒体3の情報を読み取ることによってコンテナCを特定することができる。
【0026】
荷役装置2の昇降部としての垂直部22bの側面には、コンテナ用情報媒体3の下方に位置するように、金属板からなる遮蔽体40が側方に突設され、この遮蔽体40の下面には、コンテナの昇降動作を検出するためのダンプ動作検出手段としてのダンプ動作検出用情報媒体7が設けられている。なお、ダンプ動作検出用情報媒体7は、コンテナ用情報媒体3と同様のものが採用され、電子タグの場合にはメタル対応のものが採用されている。
【0027】
このように、コンテナ用情報媒体3に対してダンプ動作検出用情報媒体7を所定距離だけ離間させて、遮蔽体40の下面にダンプ動作検出用情報媒体7を設けている。従って、コンテナCが車体1に搭載された状態において、情報読み取り装置4は、コンテナ用情報媒体3の情報を読み取とれるが、ダンプ動作検出用情報媒体7の情報は、遮蔽体40により遮蔽されるため読み取れないようになっている。
【0028】
車載端末5は、コンテナ荷役車両の現在位置を認識することができるGPS受信装置等の位置情報認識装置50と、データの記憶部51と、無線通信機能を備えた無線機52とを備えている。車載端末5に、情報読み取り装置4が接続され、位置情報、時刻情報、コンテナ用情報媒体3によって検出したコンテナの特定情報並びにダンプ動作検出用情報媒体7によって検出したダンプ動作情報を記憶部51に記憶するようになっている。
【0029】
コンテナ荷役車両に地上からコンテナCを積込む動作は、前述したように行われ、コンテナCを積込んだ時に、コンテナC側のコンテナ用情報媒体3がコンテナ荷役車両側の情報読み取り装置4に合致する位置に配置されるので、積込んだコンテナCの特定情報が情報読み取り装置4によって読み取られる。このコンテナCの特定情報は、当該コンテナCを積込んだコンテナ荷役車両の車両情報とともに、無線機52を通じて管理センター等の基地局の管理サーバー55に送信にされる。基地局では、管理サーバー55の情報に基づいて当該コンテナCの現在位置やコンテナの特定情報が適宜把握できるようになっている。
【0030】
前記コンテナ荷役車両によりコンテナCを所定の目的地に運搬し、コンテナ荷役車両からコンテナCを卸す。所定の目的地でコンテナC内の積載物を排出する場合には、コンテナCをダンプ動作位置(ダンプ姿勢)に傾動させ積載物を排出する。かかるコンテナのダンプ動作は、コンテナの積載物を排出する時に運転手の操作で行なわれるが、基地局の管理者等は、リモートで各車両の全ダンプ動作を荷役装置2に取り付けられた電子タグ等の近距離通信システムで把握できる。
【0031】
すなわち、コンテナ荷役車両が運転者によりダンプ操作されると、荷役装置2の上方への回動により、コンテナCに取り付けられているコンテナ用情報媒体3は、上方に移動するとともに、遮蔽体40により電子タグリーダー等の情報読み取り装置4からの電波が遮断される。
【0032】
一方、荷役装置2とともに上方に回動するダンプ動作検出用情報媒体7が、情報読み取り装置4と対向するようになるため、情報読み取り装置4はダンプ動作検出用情報媒体7の情報を読み取ることができる(図5参照)。コンテナCのダンプ動作の検出は、情報読み取り装置4がダンプ動作検出用情報媒体7の情報を読み取れる範囲であれば、ダンプ動作の初期時、ダンプ姿勢の完了時の範囲で行なうことができる。
【0033】
なお、遮蔽体40に、電波吸収材を取り付けることにより情報読み取り装置4への干渉を防ぐので、より確実にダンプ状態を検出することができる。
【0034】
以上のように、コンテナCがダンプ状態であることを、ダンプ動作検出用情報媒体7と、情報読み取り装置4により検出し、リアルタイムで無線通信を用いて管理センターに通知したり、GPS付き車載端末5の記憶部51に記録したりして、無線LAN等の近距離通信網やインターネットを介して管理センターの基地局の管理サーバー55に送信する。基地局において、管理者は、全ダンプ動作を荷役装置2に取り付けた電子タグ等の近距離通信システムで把握することにより、コンテナ管理における作業状況だけでなく不法投棄現場の近傍での走行履歴を監視することで不法投棄の有無を判断できる。
【0035】
本実施の形態は、コンテナ識別情報を記録した電子タグ等とその情報を読み取る電子タグリーダー等とGPS受信機と無線通信機能を利用して、コンテナの設置場所をリアルタイムに認識しコンテナの管理とメンテナンスを実現するコンテナ管理システムに、ダンプ動作検出用電子タグ等のダンプ操作を検出する手段を追加するだけで、操作端末からの操作情報(コンテナ積込・積卸、ダンプ排出)を検出する手段が装備されていないコンテナ荷役車両を使用する場合においても、コンテナのダンプ動作を検出でき不法投棄の有無を証明できるコンテナ管理システムを構築することが可能となる。
【0036】
この管理システムによって、指向性の強い高周波帯域の電子タグをコンテナ用情報媒体3およびダンプ動作検出用情報媒体7として採用した場合、電子タグは通信距離も長く、コンテナ管理のシステムに適しているだけでなく、互いに干渉や混信することなく併用でき、電子タグリーダー等は共有できるので安いコストで使用できる。
【0037】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば電子タグ等のダンプ動作検出用情報媒体以外のダンプ動作検出手段としては、荷役アームの回動を物理的(接触又は非接触)に検知するリミットスイッチや近接センサ等のセンサ、荷役装置2に設けられたコンテナロック機構等を利用する手段が考えられる。なお、コンテナロック機構を利用する場合には、コンテナのロックをコンテナロック機構が解除したときに、ダンプ動作と判断する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態のコンテナの位置情報管理システムの概要を示す側面図である。
【図2】同コンテナ荷役車両の概略の全体構成を示す側面図である。
【図3】同コンテナのダンプ姿勢を示すコンテナ荷役車両の側面図である。
【図4】同コンテナを地面に卸したコンテナ荷役車両の側面図である。
【図5】同コンテナのダンプ状態を示すコンテナ荷役車両の要部側面図である。
【符号の説明】
【0039】
C コンテナ
1 車体
2 荷役装置
3 コンテナ用情報媒体
4 情報読み取り装置
7 ダンプ動作検出用情報媒体(ダンプ動作検出手段)
22b 垂直部(昇降部)
40 遮蔽体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載されたコンテナが、荷役装置により傾動して積載物を排出するダンプ姿勢に姿勢変更自在に設けられ、前記コンテナには、前記車体側に設けられた情報読み取り装置により該コンテナを特定する情報を読み取るためのコンテナ用情報媒体が設けられたコンテナ荷役車両において、
前記コンテナの昇降動作を検出するためのダンプ動作検出手段が設けられたことを特徴とするコンテナ荷役車両。
【請求項2】
車体に搭載されたコンテナが、荷役装置により傾動して積載物を排出するダンプ姿勢に姿勢変更自在に設けられ、前記コンテナには、車体側に設けられた情報読み取り装置により該コンテナを特定する情報を読み取るためのコンテナ用情報媒体が設けられたコンテナ荷役車両において、
前記荷役装置の昇降部には、前記コンテナの昇降動作を検出するためのダンプ動作検出用情報媒体が設けられたことを特徴とするコンテナ荷役車両。
【請求項3】
前記情報読み取り装置により、前記ダンプ動作検出用情報媒体の情報を読み取るようにした請求項2に記載のコンテナ荷役車両。
【請求項4】
前記荷役装置の昇降部には、コンテナ用情報媒体よりも下方に位置するように、遮蔽体が突設され、該遮蔽体の下面に前記ダンプ動作検出用情報媒体が取り付けられた請求項2または3に記載のコンテナ荷役車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−145291(P2007−145291A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346007(P2005−346007)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(505443816)株式会社日本環境プロジェクト (8)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】