コンデンサの放電回路
【課題】放電抵抗体26a,26bの異常の有無の判断精度の低下を抑制することのできるコンデンサの放電回路を提供する。
【解決手段】高圧バッテリ16と、一対の入力端子を有して且つ一対の入力端子を介して高圧バッテリ16と接続されるインバータ12と、上記一対の入力端子間に接続されるコンデンサ15と、上記一対の入力端子間に接続される遅延回路36とを備える電力変換システムがある。ここで、遅延回路36は、一対の放電抵抗体26a,26bと、放電抵抗体26bに並列接続される遅延用コンデンサ32とを備えて構成される。そして、放電抵抗体26b及び遅延用コンデンサ32の接続点の電圧に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。
【解決手段】高圧バッテリ16と、一対の入力端子を有して且つ一対の入力端子を介して高圧バッテリ16と接続されるインバータ12と、上記一対の入力端子間に接続されるコンデンサ15と、上記一対の入力端子間に接続される遅延回路36とを備える電力変換システムがある。ここで、遅延回路36は、一対の放電抵抗体26a,26bと、放電抵抗体26bに並列接続される遅延用コンデンサ32とを備えて構成される。そして、放電抵抗体26b及び遅延用コンデンサ32の接続点の電圧に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサと、前記一対の入力端子間に接続される放電経路とを備えるシステムに適用されるコンデンサの放電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1,2に見られるように、スイッチ(リレー)を介してバッテリがインバータ、コンデンサ、及び放電抵抗体を有する放電経路に並列接続されるシステムが知られている。詳しくは、上記システムに備えられるコンデンサは、インバータの一対の入力端子間の電圧変動を抑制する機能を有している。また、放電抵抗体は、スイッチがオフされてバッテリ及びインバータ間が遮断される状況下においてコンデンサの放電を行う機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−257778号公報
【特許文献2】特許第4679675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放電抵抗体に断線(オープン故障)が生じる等、上記放電経路に異常が生じると、コンデンサの放電を行うことができなくなるおそれがある。こうした事態を回避すべく、放電経路の異常の有無を判断する技術を上記システムに取り入れることが考えられる。ここで、本発明者らは、放電経路の異常の有無に応じて放電経路の中間点における電位が変化することに着目し、上記中間点における電位に基づき、放電経路の異常の有無を判断する技術を上記システムに取り入れることとした。
【0005】
しかしながら、放電経路の異常の有無に応じた放電経路の中間点における電位の変化が小さいと、放電経路の異常の有無の判断精度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、放電経路の異常の有無の判断精度の低下を抑制することのできるコンデンサの放電回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサと、前記一対の入力端子間に接続される放電経路とを備えるシステムに適用され、前記放電経路の中間点における電位の変化を遅延させて出力する遅延回路を備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、放電経路の中間点における電位の変化が遅延されて遅延回路から信号が出力されることとなる。こうした遅延回路の出力信号によれば、放電経路の異常の有無に応じた上記中間点における電位の推移について時間スケールを拡大して把握することができる。すなわち、遅延回路を備える上記発明によれば、放電経路の異常の有無の判断精度の低下を抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間に基づき、前記放電経路の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、遅延回路の出力信号の変化が開始されてから上記出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間を放電経路の異常判断に用いることで、放電経路の異常の有無を簡易且つ的確に判断することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記放電経路は、複数の抵抗体の直列接続体からなり、前記遅延回路は、遅延用コンデンサを更に備え、前記複数の抵抗体の一部に前記遅延用コンデンサが並列接続されてなることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、上記態様にて遅延回路を構成することで、例えば、遅延用コンデンサ及び抵抗体の接続点の電圧を遅延回路の出力信号として用いることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記放電経路は、抵抗体からなり、前記遅延回路は、リアクトルを更に備え、前記抵抗体に該リアクトルが直列接続されてなることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、上記態様にて遅延回路を構成することで、例えば、抵抗体及びリアクトルの接続点の電圧を遅延回路の出力信号として用いることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記遅延回路は、前記コンデンサ及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第1の開閉手段と、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第2の開閉手段とを更に備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、第1,第2の開閉手段を備えている。これら開閉手段の開閉操作によれば、遅延用コンデンサの充放電を行うことができるため、放電経路としての抵抗体の異常判断に用いる出力信号を遅延回路から出力可能な時期を拡大することができる。すなわち、遅延回路の出力信号を用いた抵抗体の異常判断可能な時期を拡大させることができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記遅延回路は、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路に抵抗体を更に備えることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、抵抗体を更に備えることで、例えば、遅延用コンデンサの放電期間において、放電経路としての抵抗体の異常判断用の信号として遅延回路の出力信号を用いることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記第1の開閉手段が閉状態とされて且つ前記第2の開閉手段が開状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第1の閾値に到達するまでの時間と、前記第1の開閉手段が開状態とされて且つ前記第2の開閉手段が閉状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第2の閾値に到達するまでの時間との比に基づき、前記放電経路としての前記抵抗体の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする。
【0021】
遅延用コンデンサの容量は、コンデンサの個体差によってばらついたり、コンデンサの温度によって変化したりする等、種々の要因に影響を及ぼされる。遅延用コンデンサの容量が相違すると、遅延回路の出力信号の変化が開始されてから出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間が相違し得る。この場合、例えば上記時間を用いて放電経路としての抵抗体の異常の有無を判断するならば、抵抗体の異常の有無の判断精度が低下するおそれがある。この点、上記発明では、上記比を用いることで、遅延用コンデンサの容量の相違が抵抗体の異常判断に及ぼす影響を極力排除することができる。これにより、抵抗体の異常の有無の判断精度の低下を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる放電抵抗体の構成を示す図。
【図3】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図4】第2の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図5】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図6】第3の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図7】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図8】第4の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図9】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図10】第5の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図11】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるコンデンサの放電回路を、ハイブリッド車両の主機回転機に接続される電力変換システムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0025】
図示されるように、モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータ12及び昇圧回路14を介して高圧バッテリ16に接続されている。
【0026】
詳しくは、高圧バッテリ16は、例えば百V以上となる端子電圧を有する蓄電池である。また、昇圧回路14は、図示しない一対のスイッチング素子の直列接続体、及びこれに並列接続されるコンデンサ15(平滑コンデンサ)等を備えて構成され、これらスイッチング素子の操作によって高圧バッテリ16の電圧を所定の電圧(例えば「650V」)を上限として昇圧する機能を有する。ここで、コンデンサ15は、インバータ12に対する出力電圧の変動を抑制するためのものである。なお、図中、説明の便宜上、コンデンサ15を昇圧回路14の外に示している。
【0027】
高圧バッテリ16及び昇圧回路14間には、これらの間を導通又は遮断するリレー18及びプリチャージ用リレー20が設けられている。詳しくは、高圧バッテリ16の正極及び負極のそれぞれと、昇圧回路14の一対の入力端子のそれぞれとを接続する一対の電気経路のうち高電位側にはリレー18が設けられている。そして、リレー18には、プリチャージ用リレー20及びプリチャージ用抵抗体22の直列接続体が並列接続されている。こうした構成によれば、高圧バッテリ16の正極及び昇圧回路14の高電位側の入力端子間を接続する電気経路のうち、リレー18を備える電気経路の抵抗値よりもプリチャージ用リレー20及びプリチャージ用抵抗体22を備える電気経路の抵抗値の方が大きくなる。なお、実際には、高圧バッテリ16の負極及び昇圧回路14の低電位側入力端子間を接続する電気経路にもリレーが設けられている。
【0028】
昇圧回路14の一対の出力端子には、インバータ12の一対の入力端子(U,V,W相を接続する点)が接続されている。インバータ12は、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えて構成されており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、これらスイッチング素子S*#(*=u,v,w、#=p,n)として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。また、これらスイッチング素子S*#にはそれぞれ、ダイオードD*#が逆並列に接続されている。
【0029】
インバータ12の一対の入力端子間には、一対の放電抵抗体26a,26bが接続されている。放電抵抗体26a,26bは、後述する放電制御処理を行うことができなくなる非常時においてコンデンサ15の放電を行う等の機能を有するものである。詳しくは、放電抵抗体26a及び放電抵抗体26bは直列接続され、これら抵抗体26a,26bの直列接続体の一端は、インバータ12の一対の入力端子のうち高電位側に接続され、他端は低電位側に接続されている。
【0030】
なお、本実施形態では、実際には図2に示すように、放電抵抗体26aは、一対の放電抵抗体26al,26arの並列接続体からなり、放電抵抗体26bは、一対の放電抵抗体26bl,26brの並列接続体からなるものである。すなわち、放電抵抗体26a,26bの直列接続体は、一対の放電抵抗体の並列接続体が直列接続されてなるものである。この構成は、放電抵抗体にて発生する熱の分散等を目的とするものである。
【0031】
先の図1の説明に戻り、ハイブリッド制御装置(HVECU28)は、モータジェネレータ制御装置(MGECU30)よりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求からみて上流側)の制御装置である。
【0032】
HVECU28は、モータジェネレータ10を駆動させる際等にリレー18及びプリチャージ用リレー20を開閉操作するリレー制御処理等を行う。
【0033】
上記リレー制御処理は、高圧バッテリ16及びインバータ12間が導通状態とされることに伴い大電流が流れ、リレー18が溶着すること等を回避するためのプリチャージを含む処理である。
【0034】
すなわち、高圧バッテリ16と昇圧回路14とを接続する際には、まず、リレー18を開状態として且つプリチャージ用リレー20を閉状態とする。これにより、高圧バッテリ16の正極及び昇圧回路14の入力端子間を接続する電気経路の抵抗値を大きくすることができ、高圧バッテリ16からコンデンサ15等に流れる電流を抑制することができる。なお、コンデンサ15が所定以上充電された後、リレー18を閉状態とし、プリチャージ用リレー20を開状態とする。これにより、高圧バッテリ16と昇圧回路14とを低抵抗で接続する。
【0035】
なお、本実施形態において、上記リレー制御処理は、HVECU28によって実行されたがこれに限らず、他のECUによって実行されてもよい。
【0036】
一方、MGECU30は、インバータ12のスイッチング素子S*#を操作することでモータジェネレータ10の制御量(例えばトルク)を所望に制御するための制御装置である。MGECU30は、マイクロコンピュータ(マイコン30a)と、スイッチング素子S*#のゲート電圧を調節するためのゲート駆動回路30bとを備えている。
【0037】
MGECU30(マイコン30a)は、スイッチング素子S*#の開閉操作によるモータジェネレータ10の制御処理や、昇圧回路14の操作による高圧バッテリ16の電圧の昇圧処理等を行う。
【0038】
特に、マイコン30aは、放電制御処理を行う。この処理は、リレー18及びプリチャージ用リレー20が開状態とされて高圧バッテリ16及び昇圧回路14間が遮断される状況下、コンデンサ15の放電を行うものであり、その後の車両メンテナンス等に備えて安全を確保することを目的とするものである。本実施形態では、放電制御処理を、モータジェネレータ10に無効電流を流すように(モータジェネレータ10の生成トルクを0とするように)インバータ12を操作する処理とする。こうした放電制御処理によれば、迅速にコンデンサ15の放電を行うことができる。
【0039】
なお、MGECU30等は、高圧バッテリ16よりも端子電圧が十分に低い図示しない低圧バッテリを備える車載低圧システムに配置され、リレー18やスイッチング素子S*#等は、高圧バッテリ16を備える車載高圧システムに配置される。このため、MGECU30等は、高圧システム及び低圧システム間を絶縁しつつ、これらシステム間の信号を伝達するフォトカプラ等の絶縁伝達手段を介してスイッチング素子S*#等を操作する。
【0040】
ところで、車両の衝突等によって電力変換システムが損傷することがある。具体的には、例えば、マイコン30aの電力供給源が断たれたり、スイッチング素子S*#の実装される回路基板が損傷したりする。電力変換システムが損傷すると、インバータ12を適切に通電操作できなくなることによって放電制御処理を行うことができなくなる懸念がある。こうした非常時に備えて上記放電抵抗体26a,26bが備えられるものの、これら抵抗体26a,26bに異常が生じる場合には、コンデンサ15の放電を行うことができなくなる懸念がある。
【0041】
こうした事態を回避すべく、本実施形態では、上記放電抵抗体26a,26b、コンデンサ(遅延用コンデンサ32)及び判断部34を有する遅延回路36を備え、遅延回路36の出力信号に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する異常判断処理を行う。以下、この処理について説明する。
【0042】
まず、遅延回路36について説明する。
【0043】
遅延回路36は、インバータ12の一対の入力端子間に接続されている。詳しくは、放電抵抗体26b(放電抵抗体26bl,26brの並列接続体)には、遅延用コンデンサ32が並列接続されている。遅延回路36は、放電抵抗体26a,26bの直列接続体の接続点(放電経路の中間点)の電圧の変化を遅延させて異常判断用電圧Vdelayとして出力する機能する。本実施形態では、異常判断用電圧Vdelayとして、遅延用コンデンサ32の電圧(充電電圧)を用いている。
【0044】
異常判断用電圧Vdelayは、判断部34に取り込まれる。判断部34は、インバータ12の起動に先立ってリレー制御処理によって高圧バッテリ16からインバータ12への給電が開始される状況下において、異常判断用電圧Vdelayの上昇が開始されてからこの電圧Vdelayが閾値電圧Vthに到達するまでの時間(立ち上がり時間τa)に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。なお、判断部34には、インバータ12の入力電圧(コンデンサ15の充電電圧)も取り込まれる。また、判断部34には、図示しないが、立ち上がり時間τaの起算点に関する情報も取り込まれるようになっている。
【0045】
次に、図3(A)を用いて、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様を示す。
【0046】
本実施形態では、立ち上がり時間τaの起算点をプリチャージ用リレー20の閉タイミング(時刻t1)とする。そして、図中実線にて示すように、立ち上がり時間τaが規定時間範囲内(τa=τ1)であると判断された場合、放電抵抗体26a,26bに異常が生じていない(正常である)旨判断する。
【0047】
一方、図中2点鎖線にて示すように、立ち上がり時間τaが規定時間範囲の下限値未満(τa=τs)であると判断された場合、放電抵抗体26al,26ar,26bl,26brのいずれかに短絡(ショート故障)が生じている旨判断する。また、図中破線にて示すように、立ち上がり時間τaが規定時間範囲の上限値を上回る(τa=τo)と判断された場合、放電抵抗体26al,26ar,26bl,26brのいずれかに断線(オープン故障)が生じている旨判断する。
【0048】
なお、放電抵抗体26a,26bに異常が生じている旨判断された場合、その旨の信号digが判断部34からマイコン30aへと伝達される。そして、マイコン30a内のフェール処理部30cからフェール信号FLをHVECU28に対して出力するフェール処理を行う(先の図1参照)。これにより、HVECU28側で異常が生じたことを把握することができ、ひいてはHVECU28からユーザにその旨を通知することなどができる。
【0049】
続いて、上記立ち上がり時間τaを用いて放電抵抗体26a,26bの異常判断が可能となる理由を説明する。
【0050】
遅延回路36にステップ状の電圧VL(>Vth)が入力される場合における異常判断用電圧Vdelayの推移は、遅延用コンデンサ32の容量をCt、放電抵抗体26aの抵抗値をRh、放電抵抗体26bの抵抗値をRl、これら抵抗体26a,26bの合計抵抗値をRhl、立ち上がり時間τaの起算点(ステップ状の電圧VLの印加開始タイミング)からの経過時間をtとすると、下式(e1)によって表される。
【0051】
Vdelay=Va×[1−exp{―t/(Ct×Rhl)}]…(e1)
Va=Rl/(Rh+Rl)×VL…(e2)
Rhl=Rh×Rl/(Rh+Rl)…(e3)
なお、ここでは、プリチャージ用抵抗体22の抵抗値が放電抵抗体26a,26bの抵抗値Rh,Rlよりも十分に小さいとしている。また、上式(e2)にて表される電圧Vaを、以降、収束電圧と称すこととする。
【0052】
そして、上式(e1)について、異常判断用電圧Vdelayに閾値電圧Vthを代入してtについて解くと、立ち上がり時間τaが下式(e4)によって表される。
【0053】
τa=―Ct×Rhl×ln(1−Vth/Va)…(e4)
ここで、放電抵抗体26al,26ar,26bl,26brのいずれかに異常が生じると、上記合計抵抗値Rhlが変化する。詳しくは、放電抵抗体26al,26arのいずれかにショート故障が生じると放電抵抗体26aの抵抗値Rhが低下し、放電抵抗体26bl,26brのいずれかにショート故障が生じると放電抵抗体26bの抵抗値Rlが低下する。そして、放電抵抗体26aの抵抗値Rhや放電抵抗体26bの抵抗値Rlが低下すると、合計抵抗値Rhlが低下し、遅延回路36の時定数(遅延回路36に対する入力信号の変化に起因して異常判断用電圧Vdelayが変化する場合、異常判断用電圧Vdelayの全変化量に対する実際の異常判断用電圧Vdelayの変化量の割合が略63%に到達するまでの時間)が小さくなる。すなわち、立ち上がり時間τaが短くなる。
【0054】
一方、放電抵抗体26al,26arのいずれかにオープン故障が生じると放電抵抗体26aの抵抗値Rhが増大し、放電抵抗体26bl,26brのいずれかにオープン故障が生じると放電抵抗体26bの抵抗値Rlが増大する。そして、放電抵抗体26aの抵抗値Rhや放電抵抗体26bの抵抗値Rlが増大すると、合計抵抗値Rhlが増大して遅延回路36の時定数が大きくなる。すなわち、立ち上がり時間τaが長くなる。
【0055】
このため、立ち上がり時間τaに基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断することが可能となる。
【0056】
なお、遅延回路36の入力電圧VLが高いほど、立ち上がり時間τaが短くなる傾向にある。このため、例えば、上記規定時間範囲を遅延回路36の入力電圧VLに基づき可変設定することが望ましい。
【0057】
また、図3(A)における異常判断用電圧Vdelayの推移が、上式(e1)から算出される電圧の推移(例えば、後述する図5(a)の実線)となっていないのは、インバータ12の起動の際にプリチャージ用抵抗体22を介して遅延回路36に電圧が印加されることに起因して、遅延回路36の入力電圧VLの上昇度合いが多少緩やかになるためである。
【0058】
ここで、本実施形態において、放電抵抗体26a,26bの異常判断処理において遅延回路36の出力信号を用いるメリットについて説明する。
【0059】
遅延回路36(遅延用コンデンサ32)を採用せず、例えば放電抵抗体26a,26bの直列接続体の接続点の電圧を異常判断用電圧Vdelayとして用いると、図3(B)に示すように、放電抵抗体26a,26bが正常な場合の立ち上がり時間τ1と、放電抵抗体26a,26bに異常(図中、ショート故障を例示)が生じる場合の立ち上がり時間τsとの差が過度に小さくなることがある。このとき、判断部34によって検出される立ち上がり時間τaのばらつき等に起因して、立ち上がり時間τaに基づき放電抵抗体26a,26bの異常の有無を的確に判別することができなくなるおそれがある。
【0060】
これに対し、遅延回路36の出力信号を異常判断用電圧Vdelayとする回路構成によれば、放電抵抗体26a,26bの直列接続体の接続点の電圧(遅延用コンデンサ32の電圧)の変化を遅延させることができる。すなわち、遅延回路36から出力される異常判断用電圧Vdelayによれば、放電抵抗体26a,26bの異常の有無に応じた遅延用コンデンサ32の電圧の推移について時間スケールを拡大して把握することができる。したがって、立ち上がり時間τaに基づく放電抵抗体26a,26bの異常の有無の判断精度の低下を抑制することができる。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0062】
(1)放電抵抗体26bに遅延用コンデンサ32を並列接続して遅延回路36を構成し、遅延用コンデンサ32の電圧を異常判断用電圧Vdelayとして用いた。そして、この電圧Vdelayから把握される立ち上がり時間τaに基づき放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行った。これにより、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を的確に判断することができ、ひいては放電抵抗体26a,26bの異常の有無の判断精度の低下を好適に抑制することができる。
【0063】
さらに、立ち上がり時間τaを用いて放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断するため、例えば、放電抵抗体26a,26bが正常の場合の異常判断用電圧の波形と実際の異常判断用電圧の波形との比較に基づく異常判断手法と比較して、これら抵抗体26a,26の異常の有無を簡易に判断することもできる。
【0064】
(2)放電抵抗体26a,26bに異常が生じている旨判断された場合、フェール処理を行った。これにより、電力変換システムの信頼性が低下した状態でこのシステムが継続して使用される事態を回避することができる。
【0065】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図4に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0067】
図示されるように、放電抵抗体26a,26bの接続点と遅延用コンデンサ32とを接続する電気経路には、この経路を開閉すべく通電操作される第1のスイッチSW1が設けられている。また、遅延用コンデンサ32の両端のうち第1のスイッチSW1側と、インバータ12の低電位側の入力端子とを接続する電気経路には、この経路を開閉すべく通電操作される第2のスイッチSW2が設けられている。これらスイッチSW1,SW2は、上記絶縁伝達手段を介してマイコン30aによって開閉操作される。
【0068】
次に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理について説明する。
【0069】
本実施形態では、第1のスイッチSW1を閉状態として且つ第2のスイッチSW2を開状態とする状況下における立ち上がり時間τaに基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。これは、インバータ12の起動の際のみならず、モータジェネレータ10が駆動されている期間内において上記異常判断処理を実行可能とするためである。
【0070】
図5に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様の一例を示す。詳しくは、図5(a)に、異常判断用電圧Vdelayの推移を示し、図5(b)に、第1のスイッチSW1の操作態様の推移を示し、図5(c)に、第2のスイッチSW2の操作態様の推移を示す。
【0071】
図示されるように、時刻t1において第1のスイッチSW1が閉状態とされることで、遅延用コンデンサ32への充電が開始され、異常判断用電圧Vdelayが上昇を開始する。
【0072】
そして、時刻t2において第1のスイッチSW1が開状態とされ、その後時刻t3において第2のスイッチSW2が閉状態とされる。ここで、第2のスイッチSW2に関する処理は、次回の異常判断処理に備えて、遅延用コンデンサ32の放電を行うためのものである。
【0073】
ちなみに、本実施形態では、例えばモータジェネレータ10の制御処理等が行われる周期よりも十分長い所定周期(例えば数時間)で異常判断処理が実行される。また、遅延用コンデンサ32の容量Ctは、例えば、遅延回路36の出力信号の時間スケールを拡大させること、及び遅延用コンデンサ32の充電によってモータジェネレータ10の駆動に及ぼす影響を小さくすることを考慮しつつ設定すればよい。
【0074】
このように、本実施形態では、第1のスイッチSW1及び第2のスイッチSW2を備える構成とした。このため、例えばモータジェネレータ10が駆動されている期間の任意のタイミングにおいて放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行うことができる等、異常判断処理を実行可能な時期を拡大することができる。
【0075】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
本実施形態では、単一のスイッチを用いて遅延用コンデンサ32の充放電を行う。
【0077】
図6に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図6において、先の図4に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0078】
図示されるように、放電抵抗体26a,26bの直列接続体の両端のうち放電抵抗体26a側と、インバータ12の高電位側の入力端子とを接続する電気経路には、この経路を開閉すべく通電操作される第3のスイッチSW3が設けられている。この第3のスイッチSW3は、上記絶縁伝達手段を介してマイコン30aによって開閉操作される。
【0079】
次に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理について説明する。
【0080】
本実施形態では、第3のスイッチSW3を閉状態とする状況下における立ち上がり時間τaに基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。
【0081】
図7に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様の一例を示す。詳しくは、図7(a),図7(b)は先の図5(a),図5(b)に対応している。
【0082】
図示されるように、時刻t1において第3のスイッチSW3が閉状態とされることで、遅延用コンデンサ32への充電が開始され、異常判断用電圧Vdelayが上昇を開始する。
【0083】
その後、時刻t2において第3のスイッチSW3が開状態とされることで、次回の異常判断処理に備えて遅延用コンデンサ32の放電が行われる。
【0084】
ここで、本実施形態において、第3のスイッチSW3は常時閉状態とされない。このため、放電抵抗体26a,26bに常時電流が流れることに伴う電力損失や放電抵抗体26a,26bの発熱を抑制することができる。
【0085】
このように、本実施形態では、上記第3のスイッチSW3が常時閉状態とされないため、電力変換システムの無駄な電力消費等を抑制することができる。
【0086】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0087】
図8に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図8において、先の図4に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0088】
図示されるように、第2のスイッチSW2とインバータ12の低電位側の入力端子との間は、抵抗体(リファレンス抵抗体38)を介して接続されている。リファレンス抵抗体38は、遅延用コンデンサ32の容量Ctが相違することに起因した放電抵抗体26a,26bの異常判断精度の低下を回避するために設けられる。
【0089】
遅延用コンデンサ32の容量Ctは、遅延用コンデンサ32の個体差によってばらついたり、遅延用コンデンサ32の温度によって変化したりする等、種々の要因に影響を及ぼされる。ここで、遅延用コンデンサ32の容量Ctが相違すると、立ち上がり時間τaが変化し、この時間τaを用いた放電抵抗体26a,26bの異常判断精度が低下するおそれがある。
【0090】
こうした問題を解決すべく、本実施形態では、第1のスイッチSW1が開状態とされて且つ第2のスイッチSW2が閉状態とされる場合において、異常判断用電圧Vdelayが低下を開始してからこの電圧Vdelayが第2の閾値電圧Vtl(<Vth)に到達するまでの時間(立ち下がり時間τb)に対する立ち上がり時間τaの比である時間比率「τa/τb」に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行う。これにより、放電抵抗体26a,26bの異常の有無の判断精度の低下の抑制を図る。
【0091】
図9に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様を示す。詳しくは、図9(a)〜図9(c)は、先の図5(a)〜図5(c)に対応している。なお、本実施形態では、上記第2の実施形態における閾値電圧Vthを第1の閾値電圧Vthと称すこととする。
【0092】
本実施形態では、立ち下がり時間τbの起算点(時刻t2)を第2のスイッチSW2の閉タイミングとする。ここで、立ち下がり時間τbは、リファレンス抵抗体38の抵抗値をRrefとすると、下式(e4)によって表される。
【0093】
τb=―Ct×Rref×ln(Vtl/Va)…(e5)
そして、上式(e4),(e5)を用いると、上記時間比率「τa/τb」は下式(e6)によって表される。
【0094】
τa/τb=
Rhl/Rref×ln(1−Vth/Va)/ln(Vtl/Va)…(e6)
上式(e6)によれば、時間比率「τa/τb」は、遅延用コンデンサ32の容量Ctの影響を受けない。このため、時間比率によれば、遅延用コンデンサ32の温度の変化等が生じる場合であっても、これらの影響を極力排除して放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断することができる。
【0095】
ここで、本実施形態では、第1の閾値電圧Vth及び第2の閾値電圧vtlの和が上記収束電圧Vaと等しくなるように(「Va=Vth+Vtl」となるように)、これら閾値電圧Vth,Vtlを設定する。この設定によれば、上式(e6)は以下の式(e7)となる。
【0096】
τa/τb=Rhl/Rref…(e7)
なお、上式(e7)にて表される時間比率「τa/τb」を用いた具体的な異常判断手法としては、例えば、時間比率「τa/τb」が規定範囲内であると判断された場合、放電抵抗体26a,26bが正常である旨判断し、時間比率「τa/τb」が規定範囲の下限値未満になると判断された場合、放電抵抗体26a,26bにショート故障が生じている旨判断し、時間比率「τa/τb」が規定範囲の上限値を上回ると判断された場合、放電抵抗体26a,26bにオープン故障が生じている旨判断すればよい。ここで、上記規定範囲は、例えば固定値として設定することができる。
【0097】
このように、本実施形態では、時間比率「τa/τb」に基づく放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行うことで、これら抵抗体26a,26bの異常判断精度の低下を好適に抑制することができる。
【0098】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
図10に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図10において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0100】
本実施形態では、遅延回路36を、放電抵抗体26aと、リアクトル40とを備えて構成する。なお、本実施形態では、放電抵抗体26aを、一対の抵抗体の並列接続体が3つ以上直列接続されてなるものとする。
【0101】
詳しくは、放電抵抗体26a及びリアクトル40の直列接続体は、インバータ12の一対の入力端子間に接続されている。具体的には、上記直列接続体の両端のうち放電抵抗体26a側は、インバータ12の高電位側の入力端子に接続され、リアクトル40側はインバータ12の低電位側の入力端子に接続されている。
【0102】
遅延回路36は、放電抵抗体26a及びリアクトル40の接続点の電圧を異常判断用電圧Vdelayとして出力する。
【0103】
次に、図11を用いて、本実施形態にかかる放電抵抗体26aの異常判断処理態様を示す。
【0104】
本実施形態では、プリチャージ用リレー20の閉タイミング(時刻t1)から異常判断用電圧Vdelayが閾値電圧Vthに低下するまでの時間(時刻t1〜t2)を立ち下がり時間τcとする。そして、この立ち下がり時間τcを用いて放電抵抗体26aの異常判断処理を行う。ここで、立ち下がり時間τcは、リアクトル40のインダクタンスをLtとすると、下式(e8)によって表される。
【0105】
τc=―Lt/Rh×ln(Vth/VL)…(e8)
放電抵抗体26aを構成するいずれかの抵抗体にオープン故障が生じる場合、放電抵抗体26aの抵抗値Rhが増大することから、立ち下がり時間τcが短くなる。一方、放電抵抗体26aを構成するいずれかの抵抗体にショート故障が生じる場合には、放電抵抗体26aの抵抗値Rhが低下することから、立ち下がり時間τcが長くなる。
【0106】
このように、本実施形態では、リアクトル40を備える遅延回路36を電力変換システムに備えることで、放電抵抗体26aの異常判断処理を適切に行うことができる。
【0107】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0108】
・放電抵抗体の異常の有無の判断手法としては、立ち上がり時間τaや立ち下がり時間τbを用いたものに限らない。例えば、上記第2の実施形態において、遅延用コンデンサ32の充電期間又は放電期間における異常判断用電圧Vdelayの波形を用いた手法であってもよい。この場合、例えば、遅延用コンデンサ32の充電期間又は放電期間において放電抵抗体が正常な場合に想定される異常判断用電圧の波形(基準波形)と、実際の異常判断用電圧Vdelayの波形との比較に基づき、放電抵抗体の異常の有無を判断することとなる。より具体的には、基準波形と実際の異常判断用電圧Vdelayの波形とのずれが大きいと判断されることに基づき、放電抵抗体に異常が生じている旨判断すればよい。
【0109】
・上記第2の実施形態において、放電経路の中間点における電位(異常判断用電圧Vdelay)の変化を直接検出する代わりに、上記中間点における電流(異常判断用電流Idelay)の変化を検出してもよい。この場合、異常判断用電流Idelayとして、例えば、放電抵抗体26aを流れる電流(一対の放電抵抗体26al,26arを流れる電流の合計値)を用いると、先の図5の時刻t1を基準とした異常判断用電流Idelayの推移は、下式(e9)で表される。
【0110】
Idelay=Va/Rh
×[Rh/Rl+exp{−t/(Ct×Rhl)}]…(e9)
このため、時刻t1から異常判断用電流Idelayが所定の閾値に到達するまでの時間に基づき、放電抵抗体の異常の有無を判断することとなる。
【0111】
・上記各実施形態では、一対の抵抗体の並列接続体を2つ直列接続することで放電抵抗体を構成したがこれに限らない。例えば、上記並列接続体を3つ以上直列接続することで放電抵抗体を構成してもよい。また、例えば、複数の抵抗体の直列接続体を放電抵抗体として構成してもよい。この場合であっても、放電抵抗体を構成するいずれかの抵抗体に異常が生じることで、立ち上がり時間が変化することから、放電抵抗体の異常の有無を判断することはできる。
【0112】
・上記各実施形態において、高圧バッテリ16と昇圧回路14との間に平滑コンデンサを接続してもよい。この場合、高圧バッテリ16及び昇圧回路14の間に遅延回路をさらに設けてもよい。
【0113】
・上記第1の実施形態において、インバータ12の停止時において、放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行ってもよい。この場合、リレー18及びプリチャージ用リレー20の双方が開状態とされたタイミングを起算点とした立ち下がり時間τbを用いて放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行うこととなる。
【0114】
・上記第4の実施形態において、上式(e6)で表される時間比率「τa/τb」を用いて異常判断処理を行ってもよい。この場合であっても、遅延回路36への入力電圧VLに応じて上記規定範囲を可変設定するなら、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断することができる。
【0115】
・上記第2の実施形態において、放電抵抗体26a及びインバータ12の高電位側の入力端子間を接続する電気経路に、この経路を開閉すべく通電操作される開閉手段(スイッチ)を設けてもよい。こうした構成によれば、例えば、スイッチを常時閉状態としないことで、放電抵抗体に常時電流が流れることに伴う電力変換システムの無駄な電力消費等を抑制することができる。
【0116】
また、第1のスイッチSW1を設ける位置を、放電抵抗体26a及びインバータ12の高電位側の入力端子間を接続する電気経路上としてもよい。
【0117】
・上記各実施形態では、判断部34によって放電抵抗体の異常の有無を判断する回路構成としたがこれに限らない。例えば、判断部34では立ち上がり時間τaや立ち下がり時間τbのみを検出し、判断部34から絶縁伝達手段を介してマイコン30aにこの情報を伝達し、マイコン30aにて異常判断処理を行う回路構成としてもよい。
【0118】
・電力変換回路(インバータ)としては、駆動輪に機械的に連結される回転機に接続されるものに限らない。例えば、高圧バッテリ16を直接の電源とする空調装置のコンプレッサに内蔵される回転機等に接続されるものであってもよい。また、例えば、高圧バッテリ16の電圧を降圧して低圧システム内のバッテリに出力するDCDCコンバータであってもよい。
【0119】
・電力変換システムに備えられる電力変換回路としては、インバータ12及び昇圧回路14の双方に限らない。例えば、インバータ12のみ備えられてもよい。
【0120】
・本願発明が適用される車両としてはハイブリッド車に限らず、例えば車載主機としての内燃機関を備えない電気自動車や燃料電池車等であってもよい。
【符号の説明】
【0121】
12…インバータ、15…コンデンサ、16…高圧バッテリ、18…リレー、20…プリチャージ用リレー、26a,26b…放電抵抗体、30a…マイコン、32…遅延用コンデンサ、S*#…スイッチング素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサと、前記一対の入力端子間に接続される放電経路とを備えるシステムに適用されるコンデンサの放電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1,2に見られるように、スイッチ(リレー)を介してバッテリがインバータ、コンデンサ、及び放電抵抗体を有する放電経路に並列接続されるシステムが知られている。詳しくは、上記システムに備えられるコンデンサは、インバータの一対の入力端子間の電圧変動を抑制する機能を有している。また、放電抵抗体は、スイッチがオフされてバッテリ及びインバータ間が遮断される状況下においてコンデンサの放電を行う機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−257778号公報
【特許文献2】特許第4679675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放電抵抗体に断線(オープン故障)が生じる等、上記放電経路に異常が生じると、コンデンサの放電を行うことができなくなるおそれがある。こうした事態を回避すべく、放電経路の異常の有無を判断する技術を上記システムに取り入れることが考えられる。ここで、本発明者らは、放電経路の異常の有無に応じて放電経路の中間点における電位が変化することに着目し、上記中間点における電位に基づき、放電経路の異常の有無を判断する技術を上記システムに取り入れることとした。
【0005】
しかしながら、放電経路の異常の有無に応じた放電経路の中間点における電位の変化が小さいと、放電経路の異常の有無の判断精度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、放電経路の異常の有無の判断精度の低下を抑制することのできるコンデンサの放電回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサと、前記一対の入力端子間に接続される放電経路とを備えるシステムに適用され、前記放電経路の中間点における電位の変化を遅延させて出力する遅延回路を備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、放電経路の中間点における電位の変化が遅延されて遅延回路から信号が出力されることとなる。こうした遅延回路の出力信号によれば、放電経路の異常の有無に応じた上記中間点における電位の推移について時間スケールを拡大して把握することができる。すなわち、遅延回路を備える上記発明によれば、放電経路の異常の有無の判断精度の低下を抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間に基づき、前記放電経路の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、遅延回路の出力信号の変化が開始されてから上記出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間を放電経路の異常判断に用いることで、放電経路の異常の有無を簡易且つ的確に判断することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記放電経路は、複数の抵抗体の直列接続体からなり、前記遅延回路は、遅延用コンデンサを更に備え、前記複数の抵抗体の一部に前記遅延用コンデンサが並列接続されてなることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、上記態様にて遅延回路を構成することで、例えば、遅延用コンデンサ及び抵抗体の接続点の電圧を遅延回路の出力信号として用いることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記放電経路は、抵抗体からなり、前記遅延回路は、リアクトルを更に備え、前記抵抗体に該リアクトルが直列接続されてなることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、上記態様にて遅延回路を構成することで、例えば、抵抗体及びリアクトルの接続点の電圧を遅延回路の出力信号として用いることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記遅延回路は、前記コンデンサ及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第1の開閉手段と、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第2の開閉手段とを更に備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、第1,第2の開閉手段を備えている。これら開閉手段の開閉操作によれば、遅延用コンデンサの充放電を行うことができるため、放電経路としての抵抗体の異常判断に用いる出力信号を遅延回路から出力可能な時期を拡大することができる。すなわち、遅延回路の出力信号を用いた抵抗体の異常判断可能な時期を拡大させることができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記遅延回路は、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路に抵抗体を更に備えることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、抵抗体を更に備えることで、例えば、遅延用コンデンサの放電期間において、放電経路としての抵抗体の異常判断用の信号として遅延回路の出力信号を用いることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記第1の開閉手段が閉状態とされて且つ前記第2の開閉手段が開状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第1の閾値に到達するまでの時間と、前記第1の開閉手段が開状態とされて且つ前記第2の開閉手段が閉状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第2の閾値に到達するまでの時間との比に基づき、前記放電経路としての前記抵抗体の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする。
【0021】
遅延用コンデンサの容量は、コンデンサの個体差によってばらついたり、コンデンサの温度によって変化したりする等、種々の要因に影響を及ぼされる。遅延用コンデンサの容量が相違すると、遅延回路の出力信号の変化が開始されてから出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間が相違し得る。この場合、例えば上記時間を用いて放電経路としての抵抗体の異常の有無を判断するならば、抵抗体の異常の有無の判断精度が低下するおそれがある。この点、上記発明では、上記比を用いることで、遅延用コンデンサの容量の相違が抵抗体の異常判断に及ぼす影響を極力排除することができる。これにより、抵抗体の異常の有無の判断精度の低下を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる放電抵抗体の構成を示す図。
【図3】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図4】第2の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図5】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図6】第3の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図7】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図8】第4の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図9】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【図10】第5の実施形態にかかる遅延回路を示す図。
【図11】同実施形態にかかる放電抵抗体の異常判断手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるコンデンサの放電回路を、ハイブリッド車両の主機回転機に接続される電力変換システムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0025】
図示されるように、モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータ12及び昇圧回路14を介して高圧バッテリ16に接続されている。
【0026】
詳しくは、高圧バッテリ16は、例えば百V以上となる端子電圧を有する蓄電池である。また、昇圧回路14は、図示しない一対のスイッチング素子の直列接続体、及びこれに並列接続されるコンデンサ15(平滑コンデンサ)等を備えて構成され、これらスイッチング素子の操作によって高圧バッテリ16の電圧を所定の電圧(例えば「650V」)を上限として昇圧する機能を有する。ここで、コンデンサ15は、インバータ12に対する出力電圧の変動を抑制するためのものである。なお、図中、説明の便宜上、コンデンサ15を昇圧回路14の外に示している。
【0027】
高圧バッテリ16及び昇圧回路14間には、これらの間を導通又は遮断するリレー18及びプリチャージ用リレー20が設けられている。詳しくは、高圧バッテリ16の正極及び負極のそれぞれと、昇圧回路14の一対の入力端子のそれぞれとを接続する一対の電気経路のうち高電位側にはリレー18が設けられている。そして、リレー18には、プリチャージ用リレー20及びプリチャージ用抵抗体22の直列接続体が並列接続されている。こうした構成によれば、高圧バッテリ16の正極及び昇圧回路14の高電位側の入力端子間を接続する電気経路のうち、リレー18を備える電気経路の抵抗値よりもプリチャージ用リレー20及びプリチャージ用抵抗体22を備える電気経路の抵抗値の方が大きくなる。なお、実際には、高圧バッテリ16の負極及び昇圧回路14の低電位側入力端子間を接続する電気経路にもリレーが設けられている。
【0028】
昇圧回路14の一対の出力端子には、インバータ12の一対の入力端子(U,V,W相を接続する点)が接続されている。インバータ12は、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えて構成されており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、これらスイッチング素子S*#(*=u,v,w、#=p,n)として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。また、これらスイッチング素子S*#にはそれぞれ、ダイオードD*#が逆並列に接続されている。
【0029】
インバータ12の一対の入力端子間には、一対の放電抵抗体26a,26bが接続されている。放電抵抗体26a,26bは、後述する放電制御処理を行うことができなくなる非常時においてコンデンサ15の放電を行う等の機能を有するものである。詳しくは、放電抵抗体26a及び放電抵抗体26bは直列接続され、これら抵抗体26a,26bの直列接続体の一端は、インバータ12の一対の入力端子のうち高電位側に接続され、他端は低電位側に接続されている。
【0030】
なお、本実施形態では、実際には図2に示すように、放電抵抗体26aは、一対の放電抵抗体26al,26arの並列接続体からなり、放電抵抗体26bは、一対の放電抵抗体26bl,26brの並列接続体からなるものである。すなわち、放電抵抗体26a,26bの直列接続体は、一対の放電抵抗体の並列接続体が直列接続されてなるものである。この構成は、放電抵抗体にて発生する熱の分散等を目的とするものである。
【0031】
先の図1の説明に戻り、ハイブリッド制御装置(HVECU28)は、モータジェネレータ制御装置(MGECU30)よりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求からみて上流側)の制御装置である。
【0032】
HVECU28は、モータジェネレータ10を駆動させる際等にリレー18及びプリチャージ用リレー20を開閉操作するリレー制御処理等を行う。
【0033】
上記リレー制御処理は、高圧バッテリ16及びインバータ12間が導通状態とされることに伴い大電流が流れ、リレー18が溶着すること等を回避するためのプリチャージを含む処理である。
【0034】
すなわち、高圧バッテリ16と昇圧回路14とを接続する際には、まず、リレー18を開状態として且つプリチャージ用リレー20を閉状態とする。これにより、高圧バッテリ16の正極及び昇圧回路14の入力端子間を接続する電気経路の抵抗値を大きくすることができ、高圧バッテリ16からコンデンサ15等に流れる電流を抑制することができる。なお、コンデンサ15が所定以上充電された後、リレー18を閉状態とし、プリチャージ用リレー20を開状態とする。これにより、高圧バッテリ16と昇圧回路14とを低抵抗で接続する。
【0035】
なお、本実施形態において、上記リレー制御処理は、HVECU28によって実行されたがこれに限らず、他のECUによって実行されてもよい。
【0036】
一方、MGECU30は、インバータ12のスイッチング素子S*#を操作することでモータジェネレータ10の制御量(例えばトルク)を所望に制御するための制御装置である。MGECU30は、マイクロコンピュータ(マイコン30a)と、スイッチング素子S*#のゲート電圧を調節するためのゲート駆動回路30bとを備えている。
【0037】
MGECU30(マイコン30a)は、スイッチング素子S*#の開閉操作によるモータジェネレータ10の制御処理や、昇圧回路14の操作による高圧バッテリ16の電圧の昇圧処理等を行う。
【0038】
特に、マイコン30aは、放電制御処理を行う。この処理は、リレー18及びプリチャージ用リレー20が開状態とされて高圧バッテリ16及び昇圧回路14間が遮断される状況下、コンデンサ15の放電を行うものであり、その後の車両メンテナンス等に備えて安全を確保することを目的とするものである。本実施形態では、放電制御処理を、モータジェネレータ10に無効電流を流すように(モータジェネレータ10の生成トルクを0とするように)インバータ12を操作する処理とする。こうした放電制御処理によれば、迅速にコンデンサ15の放電を行うことができる。
【0039】
なお、MGECU30等は、高圧バッテリ16よりも端子電圧が十分に低い図示しない低圧バッテリを備える車載低圧システムに配置され、リレー18やスイッチング素子S*#等は、高圧バッテリ16を備える車載高圧システムに配置される。このため、MGECU30等は、高圧システム及び低圧システム間を絶縁しつつ、これらシステム間の信号を伝達するフォトカプラ等の絶縁伝達手段を介してスイッチング素子S*#等を操作する。
【0040】
ところで、車両の衝突等によって電力変換システムが損傷することがある。具体的には、例えば、マイコン30aの電力供給源が断たれたり、スイッチング素子S*#の実装される回路基板が損傷したりする。電力変換システムが損傷すると、インバータ12を適切に通電操作できなくなることによって放電制御処理を行うことができなくなる懸念がある。こうした非常時に備えて上記放電抵抗体26a,26bが備えられるものの、これら抵抗体26a,26bに異常が生じる場合には、コンデンサ15の放電を行うことができなくなる懸念がある。
【0041】
こうした事態を回避すべく、本実施形態では、上記放電抵抗体26a,26b、コンデンサ(遅延用コンデンサ32)及び判断部34を有する遅延回路36を備え、遅延回路36の出力信号に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する異常判断処理を行う。以下、この処理について説明する。
【0042】
まず、遅延回路36について説明する。
【0043】
遅延回路36は、インバータ12の一対の入力端子間に接続されている。詳しくは、放電抵抗体26b(放電抵抗体26bl,26brの並列接続体)には、遅延用コンデンサ32が並列接続されている。遅延回路36は、放電抵抗体26a,26bの直列接続体の接続点(放電経路の中間点)の電圧の変化を遅延させて異常判断用電圧Vdelayとして出力する機能する。本実施形態では、異常判断用電圧Vdelayとして、遅延用コンデンサ32の電圧(充電電圧)を用いている。
【0044】
異常判断用電圧Vdelayは、判断部34に取り込まれる。判断部34は、インバータ12の起動に先立ってリレー制御処理によって高圧バッテリ16からインバータ12への給電が開始される状況下において、異常判断用電圧Vdelayの上昇が開始されてからこの電圧Vdelayが閾値電圧Vthに到達するまでの時間(立ち上がり時間τa)に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。なお、判断部34には、インバータ12の入力電圧(コンデンサ15の充電電圧)も取り込まれる。また、判断部34には、図示しないが、立ち上がり時間τaの起算点に関する情報も取り込まれるようになっている。
【0045】
次に、図3(A)を用いて、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様を示す。
【0046】
本実施形態では、立ち上がり時間τaの起算点をプリチャージ用リレー20の閉タイミング(時刻t1)とする。そして、図中実線にて示すように、立ち上がり時間τaが規定時間範囲内(τa=τ1)であると判断された場合、放電抵抗体26a,26bに異常が生じていない(正常である)旨判断する。
【0047】
一方、図中2点鎖線にて示すように、立ち上がり時間τaが規定時間範囲の下限値未満(τa=τs)であると判断された場合、放電抵抗体26al,26ar,26bl,26brのいずれかに短絡(ショート故障)が生じている旨判断する。また、図中破線にて示すように、立ち上がり時間τaが規定時間範囲の上限値を上回る(τa=τo)と判断された場合、放電抵抗体26al,26ar,26bl,26brのいずれかに断線(オープン故障)が生じている旨判断する。
【0048】
なお、放電抵抗体26a,26bに異常が生じている旨判断された場合、その旨の信号digが判断部34からマイコン30aへと伝達される。そして、マイコン30a内のフェール処理部30cからフェール信号FLをHVECU28に対して出力するフェール処理を行う(先の図1参照)。これにより、HVECU28側で異常が生じたことを把握することができ、ひいてはHVECU28からユーザにその旨を通知することなどができる。
【0049】
続いて、上記立ち上がり時間τaを用いて放電抵抗体26a,26bの異常判断が可能となる理由を説明する。
【0050】
遅延回路36にステップ状の電圧VL(>Vth)が入力される場合における異常判断用電圧Vdelayの推移は、遅延用コンデンサ32の容量をCt、放電抵抗体26aの抵抗値をRh、放電抵抗体26bの抵抗値をRl、これら抵抗体26a,26bの合計抵抗値をRhl、立ち上がり時間τaの起算点(ステップ状の電圧VLの印加開始タイミング)からの経過時間をtとすると、下式(e1)によって表される。
【0051】
Vdelay=Va×[1−exp{―t/(Ct×Rhl)}]…(e1)
Va=Rl/(Rh+Rl)×VL…(e2)
Rhl=Rh×Rl/(Rh+Rl)…(e3)
なお、ここでは、プリチャージ用抵抗体22の抵抗値が放電抵抗体26a,26bの抵抗値Rh,Rlよりも十分に小さいとしている。また、上式(e2)にて表される電圧Vaを、以降、収束電圧と称すこととする。
【0052】
そして、上式(e1)について、異常判断用電圧Vdelayに閾値電圧Vthを代入してtについて解くと、立ち上がり時間τaが下式(e4)によって表される。
【0053】
τa=―Ct×Rhl×ln(1−Vth/Va)…(e4)
ここで、放電抵抗体26al,26ar,26bl,26brのいずれかに異常が生じると、上記合計抵抗値Rhlが変化する。詳しくは、放電抵抗体26al,26arのいずれかにショート故障が生じると放電抵抗体26aの抵抗値Rhが低下し、放電抵抗体26bl,26brのいずれかにショート故障が生じると放電抵抗体26bの抵抗値Rlが低下する。そして、放電抵抗体26aの抵抗値Rhや放電抵抗体26bの抵抗値Rlが低下すると、合計抵抗値Rhlが低下し、遅延回路36の時定数(遅延回路36に対する入力信号の変化に起因して異常判断用電圧Vdelayが変化する場合、異常判断用電圧Vdelayの全変化量に対する実際の異常判断用電圧Vdelayの変化量の割合が略63%に到達するまでの時間)が小さくなる。すなわち、立ち上がり時間τaが短くなる。
【0054】
一方、放電抵抗体26al,26arのいずれかにオープン故障が生じると放電抵抗体26aの抵抗値Rhが増大し、放電抵抗体26bl,26brのいずれかにオープン故障が生じると放電抵抗体26bの抵抗値Rlが増大する。そして、放電抵抗体26aの抵抗値Rhや放電抵抗体26bの抵抗値Rlが増大すると、合計抵抗値Rhlが増大して遅延回路36の時定数が大きくなる。すなわち、立ち上がり時間τaが長くなる。
【0055】
このため、立ち上がり時間τaに基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断することが可能となる。
【0056】
なお、遅延回路36の入力電圧VLが高いほど、立ち上がり時間τaが短くなる傾向にある。このため、例えば、上記規定時間範囲を遅延回路36の入力電圧VLに基づき可変設定することが望ましい。
【0057】
また、図3(A)における異常判断用電圧Vdelayの推移が、上式(e1)から算出される電圧の推移(例えば、後述する図5(a)の実線)となっていないのは、インバータ12の起動の際にプリチャージ用抵抗体22を介して遅延回路36に電圧が印加されることに起因して、遅延回路36の入力電圧VLの上昇度合いが多少緩やかになるためである。
【0058】
ここで、本実施形態において、放電抵抗体26a,26bの異常判断処理において遅延回路36の出力信号を用いるメリットについて説明する。
【0059】
遅延回路36(遅延用コンデンサ32)を採用せず、例えば放電抵抗体26a,26bの直列接続体の接続点の電圧を異常判断用電圧Vdelayとして用いると、図3(B)に示すように、放電抵抗体26a,26bが正常な場合の立ち上がり時間τ1と、放電抵抗体26a,26bに異常(図中、ショート故障を例示)が生じる場合の立ち上がり時間τsとの差が過度に小さくなることがある。このとき、判断部34によって検出される立ち上がり時間τaのばらつき等に起因して、立ち上がり時間τaに基づき放電抵抗体26a,26bの異常の有無を的確に判別することができなくなるおそれがある。
【0060】
これに対し、遅延回路36の出力信号を異常判断用電圧Vdelayとする回路構成によれば、放電抵抗体26a,26bの直列接続体の接続点の電圧(遅延用コンデンサ32の電圧)の変化を遅延させることができる。すなわち、遅延回路36から出力される異常判断用電圧Vdelayによれば、放電抵抗体26a,26bの異常の有無に応じた遅延用コンデンサ32の電圧の推移について時間スケールを拡大して把握することができる。したがって、立ち上がり時間τaに基づく放電抵抗体26a,26bの異常の有無の判断精度の低下を抑制することができる。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0062】
(1)放電抵抗体26bに遅延用コンデンサ32を並列接続して遅延回路36を構成し、遅延用コンデンサ32の電圧を異常判断用電圧Vdelayとして用いた。そして、この電圧Vdelayから把握される立ち上がり時間τaに基づき放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行った。これにより、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を的確に判断することができ、ひいては放電抵抗体26a,26bの異常の有無の判断精度の低下を好適に抑制することができる。
【0063】
さらに、立ち上がり時間τaを用いて放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断するため、例えば、放電抵抗体26a,26bが正常の場合の異常判断用電圧の波形と実際の異常判断用電圧の波形との比較に基づく異常判断手法と比較して、これら抵抗体26a,26の異常の有無を簡易に判断することもできる。
【0064】
(2)放電抵抗体26a,26bに異常が生じている旨判断された場合、フェール処理を行った。これにより、電力変換システムの信頼性が低下した状態でこのシステムが継続して使用される事態を回避することができる。
【0065】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図4に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0067】
図示されるように、放電抵抗体26a,26bの接続点と遅延用コンデンサ32とを接続する電気経路には、この経路を開閉すべく通電操作される第1のスイッチSW1が設けられている。また、遅延用コンデンサ32の両端のうち第1のスイッチSW1側と、インバータ12の低電位側の入力端子とを接続する電気経路には、この経路を開閉すべく通電操作される第2のスイッチSW2が設けられている。これらスイッチSW1,SW2は、上記絶縁伝達手段を介してマイコン30aによって開閉操作される。
【0068】
次に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理について説明する。
【0069】
本実施形態では、第1のスイッチSW1を閉状態として且つ第2のスイッチSW2を開状態とする状況下における立ち上がり時間τaに基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。これは、インバータ12の起動の際のみならず、モータジェネレータ10が駆動されている期間内において上記異常判断処理を実行可能とするためである。
【0070】
図5に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様の一例を示す。詳しくは、図5(a)に、異常判断用電圧Vdelayの推移を示し、図5(b)に、第1のスイッチSW1の操作態様の推移を示し、図5(c)に、第2のスイッチSW2の操作態様の推移を示す。
【0071】
図示されるように、時刻t1において第1のスイッチSW1が閉状態とされることで、遅延用コンデンサ32への充電が開始され、異常判断用電圧Vdelayが上昇を開始する。
【0072】
そして、時刻t2において第1のスイッチSW1が開状態とされ、その後時刻t3において第2のスイッチSW2が閉状態とされる。ここで、第2のスイッチSW2に関する処理は、次回の異常判断処理に備えて、遅延用コンデンサ32の放電を行うためのものである。
【0073】
ちなみに、本実施形態では、例えばモータジェネレータ10の制御処理等が行われる周期よりも十分長い所定周期(例えば数時間)で異常判断処理が実行される。また、遅延用コンデンサ32の容量Ctは、例えば、遅延回路36の出力信号の時間スケールを拡大させること、及び遅延用コンデンサ32の充電によってモータジェネレータ10の駆動に及ぼす影響を小さくすることを考慮しつつ設定すればよい。
【0074】
このように、本実施形態では、第1のスイッチSW1及び第2のスイッチSW2を備える構成とした。このため、例えばモータジェネレータ10が駆動されている期間の任意のタイミングにおいて放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行うことができる等、異常判断処理を実行可能な時期を拡大することができる。
【0075】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
本実施形態では、単一のスイッチを用いて遅延用コンデンサ32の充放電を行う。
【0077】
図6に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図6において、先の図4に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0078】
図示されるように、放電抵抗体26a,26bの直列接続体の両端のうち放電抵抗体26a側と、インバータ12の高電位側の入力端子とを接続する電気経路には、この経路を開閉すべく通電操作される第3のスイッチSW3が設けられている。この第3のスイッチSW3は、上記絶縁伝達手段を介してマイコン30aによって開閉操作される。
【0079】
次に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理について説明する。
【0080】
本実施形態では、第3のスイッチSW3を閉状態とする状況下における立ち上がり時間τaに基づき、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断する。
【0081】
図7に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様の一例を示す。詳しくは、図7(a),図7(b)は先の図5(a),図5(b)に対応している。
【0082】
図示されるように、時刻t1において第3のスイッチSW3が閉状態とされることで、遅延用コンデンサ32への充電が開始され、異常判断用電圧Vdelayが上昇を開始する。
【0083】
その後、時刻t2において第3のスイッチSW3が開状態とされることで、次回の異常判断処理に備えて遅延用コンデンサ32の放電が行われる。
【0084】
ここで、本実施形態において、第3のスイッチSW3は常時閉状態とされない。このため、放電抵抗体26a,26bに常時電流が流れることに伴う電力損失や放電抵抗体26a,26bの発熱を抑制することができる。
【0085】
このように、本実施形態では、上記第3のスイッチSW3が常時閉状態とされないため、電力変換システムの無駄な電力消費等を抑制することができる。
【0086】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0087】
図8に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図8において、先の図4に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0088】
図示されるように、第2のスイッチSW2とインバータ12の低電位側の入力端子との間は、抵抗体(リファレンス抵抗体38)を介して接続されている。リファレンス抵抗体38は、遅延用コンデンサ32の容量Ctが相違することに起因した放電抵抗体26a,26bの異常判断精度の低下を回避するために設けられる。
【0089】
遅延用コンデンサ32の容量Ctは、遅延用コンデンサ32の個体差によってばらついたり、遅延用コンデンサ32の温度によって変化したりする等、種々の要因に影響を及ぼされる。ここで、遅延用コンデンサ32の容量Ctが相違すると、立ち上がり時間τaが変化し、この時間τaを用いた放電抵抗体26a,26bの異常判断精度が低下するおそれがある。
【0090】
こうした問題を解決すべく、本実施形態では、第1のスイッチSW1が開状態とされて且つ第2のスイッチSW2が閉状態とされる場合において、異常判断用電圧Vdelayが低下を開始してからこの電圧Vdelayが第2の閾値電圧Vtl(<Vth)に到達するまでの時間(立ち下がり時間τb)に対する立ち上がり時間τaの比である時間比率「τa/τb」に基づき、放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行う。これにより、放電抵抗体26a,26bの異常の有無の判断精度の低下の抑制を図る。
【0091】
図9に、本実施形態にかかる放電抵抗体26a,26bの異常判断処理態様を示す。詳しくは、図9(a)〜図9(c)は、先の図5(a)〜図5(c)に対応している。なお、本実施形態では、上記第2の実施形態における閾値電圧Vthを第1の閾値電圧Vthと称すこととする。
【0092】
本実施形態では、立ち下がり時間τbの起算点(時刻t2)を第2のスイッチSW2の閉タイミングとする。ここで、立ち下がり時間τbは、リファレンス抵抗体38の抵抗値をRrefとすると、下式(e4)によって表される。
【0093】
τb=―Ct×Rref×ln(Vtl/Va)…(e5)
そして、上式(e4),(e5)を用いると、上記時間比率「τa/τb」は下式(e6)によって表される。
【0094】
τa/τb=
Rhl/Rref×ln(1−Vth/Va)/ln(Vtl/Va)…(e6)
上式(e6)によれば、時間比率「τa/τb」は、遅延用コンデンサ32の容量Ctの影響を受けない。このため、時間比率によれば、遅延用コンデンサ32の温度の変化等が生じる場合であっても、これらの影響を極力排除して放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断することができる。
【0095】
ここで、本実施形態では、第1の閾値電圧Vth及び第2の閾値電圧vtlの和が上記収束電圧Vaと等しくなるように(「Va=Vth+Vtl」となるように)、これら閾値電圧Vth,Vtlを設定する。この設定によれば、上式(e6)は以下の式(e7)となる。
【0096】
τa/τb=Rhl/Rref…(e7)
なお、上式(e7)にて表される時間比率「τa/τb」を用いた具体的な異常判断手法としては、例えば、時間比率「τa/τb」が規定範囲内であると判断された場合、放電抵抗体26a,26bが正常である旨判断し、時間比率「τa/τb」が規定範囲の下限値未満になると判断された場合、放電抵抗体26a,26bにショート故障が生じている旨判断し、時間比率「τa/τb」が規定範囲の上限値を上回ると判断された場合、放電抵抗体26a,26bにオープン故障が生じている旨判断すればよい。ここで、上記規定範囲は、例えば固定値として設定することができる。
【0097】
このように、本実施形態では、時間比率「τa/τb」に基づく放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行うことで、これら抵抗体26a,26bの異常判断精度の低下を好適に抑制することができる。
【0098】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
図10に、本実施形態にかかる遅延回路36を示す。なお、図10において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0100】
本実施形態では、遅延回路36を、放電抵抗体26aと、リアクトル40とを備えて構成する。なお、本実施形態では、放電抵抗体26aを、一対の抵抗体の並列接続体が3つ以上直列接続されてなるものとする。
【0101】
詳しくは、放電抵抗体26a及びリアクトル40の直列接続体は、インバータ12の一対の入力端子間に接続されている。具体的には、上記直列接続体の両端のうち放電抵抗体26a側は、インバータ12の高電位側の入力端子に接続され、リアクトル40側はインバータ12の低電位側の入力端子に接続されている。
【0102】
遅延回路36は、放電抵抗体26a及びリアクトル40の接続点の電圧を異常判断用電圧Vdelayとして出力する。
【0103】
次に、図11を用いて、本実施形態にかかる放電抵抗体26aの異常判断処理態様を示す。
【0104】
本実施形態では、プリチャージ用リレー20の閉タイミング(時刻t1)から異常判断用電圧Vdelayが閾値電圧Vthに低下するまでの時間(時刻t1〜t2)を立ち下がり時間τcとする。そして、この立ち下がり時間τcを用いて放電抵抗体26aの異常判断処理を行う。ここで、立ち下がり時間τcは、リアクトル40のインダクタンスをLtとすると、下式(e8)によって表される。
【0105】
τc=―Lt/Rh×ln(Vth/VL)…(e8)
放電抵抗体26aを構成するいずれかの抵抗体にオープン故障が生じる場合、放電抵抗体26aの抵抗値Rhが増大することから、立ち下がり時間τcが短くなる。一方、放電抵抗体26aを構成するいずれかの抵抗体にショート故障が生じる場合には、放電抵抗体26aの抵抗値Rhが低下することから、立ち下がり時間τcが長くなる。
【0106】
このように、本実施形態では、リアクトル40を備える遅延回路36を電力変換システムに備えることで、放電抵抗体26aの異常判断処理を適切に行うことができる。
【0107】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0108】
・放電抵抗体の異常の有無の判断手法としては、立ち上がり時間τaや立ち下がり時間τbを用いたものに限らない。例えば、上記第2の実施形態において、遅延用コンデンサ32の充電期間又は放電期間における異常判断用電圧Vdelayの波形を用いた手法であってもよい。この場合、例えば、遅延用コンデンサ32の充電期間又は放電期間において放電抵抗体が正常な場合に想定される異常判断用電圧の波形(基準波形)と、実際の異常判断用電圧Vdelayの波形との比較に基づき、放電抵抗体の異常の有無を判断することとなる。より具体的には、基準波形と実際の異常判断用電圧Vdelayの波形とのずれが大きいと判断されることに基づき、放電抵抗体に異常が生じている旨判断すればよい。
【0109】
・上記第2の実施形態において、放電経路の中間点における電位(異常判断用電圧Vdelay)の変化を直接検出する代わりに、上記中間点における電流(異常判断用電流Idelay)の変化を検出してもよい。この場合、異常判断用電流Idelayとして、例えば、放電抵抗体26aを流れる電流(一対の放電抵抗体26al,26arを流れる電流の合計値)を用いると、先の図5の時刻t1を基準とした異常判断用電流Idelayの推移は、下式(e9)で表される。
【0110】
Idelay=Va/Rh
×[Rh/Rl+exp{−t/(Ct×Rhl)}]…(e9)
このため、時刻t1から異常判断用電流Idelayが所定の閾値に到達するまでの時間に基づき、放電抵抗体の異常の有無を判断することとなる。
【0111】
・上記各実施形態では、一対の抵抗体の並列接続体を2つ直列接続することで放電抵抗体を構成したがこれに限らない。例えば、上記並列接続体を3つ以上直列接続することで放電抵抗体を構成してもよい。また、例えば、複数の抵抗体の直列接続体を放電抵抗体として構成してもよい。この場合であっても、放電抵抗体を構成するいずれかの抵抗体に異常が生じることで、立ち上がり時間が変化することから、放電抵抗体の異常の有無を判断することはできる。
【0112】
・上記各実施形態において、高圧バッテリ16と昇圧回路14との間に平滑コンデンサを接続してもよい。この場合、高圧バッテリ16及び昇圧回路14の間に遅延回路をさらに設けてもよい。
【0113】
・上記第1の実施形態において、インバータ12の停止時において、放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行ってもよい。この場合、リレー18及びプリチャージ用リレー20の双方が開状態とされたタイミングを起算点とした立ち下がり時間τbを用いて放電抵抗体26a,26bの異常判断処理を行うこととなる。
【0114】
・上記第4の実施形態において、上式(e6)で表される時間比率「τa/τb」を用いて異常判断処理を行ってもよい。この場合であっても、遅延回路36への入力電圧VLに応じて上記規定範囲を可変設定するなら、放電抵抗体26a,26bの異常の有無を判断することができる。
【0115】
・上記第2の実施形態において、放電抵抗体26a及びインバータ12の高電位側の入力端子間を接続する電気経路に、この経路を開閉すべく通電操作される開閉手段(スイッチ)を設けてもよい。こうした構成によれば、例えば、スイッチを常時閉状態としないことで、放電抵抗体に常時電流が流れることに伴う電力変換システムの無駄な電力消費等を抑制することができる。
【0116】
また、第1のスイッチSW1を設ける位置を、放電抵抗体26a及びインバータ12の高電位側の入力端子間を接続する電気経路上としてもよい。
【0117】
・上記各実施形態では、判断部34によって放電抵抗体の異常の有無を判断する回路構成としたがこれに限らない。例えば、判断部34では立ち上がり時間τaや立ち下がり時間τbのみを検出し、判断部34から絶縁伝達手段を介してマイコン30aにこの情報を伝達し、マイコン30aにて異常判断処理を行う回路構成としてもよい。
【0118】
・電力変換回路(インバータ)としては、駆動輪に機械的に連結される回転機に接続されるものに限らない。例えば、高圧バッテリ16を直接の電源とする空調装置のコンプレッサに内蔵される回転機等に接続されるものであってもよい。また、例えば、高圧バッテリ16の電圧を降圧して低圧システム内のバッテリに出力するDCDCコンバータであってもよい。
【0119】
・電力変換システムに備えられる電力変換回路としては、インバータ12及び昇圧回路14の双方に限らない。例えば、インバータ12のみ備えられてもよい。
【0120】
・本願発明が適用される車両としてはハイブリッド車に限らず、例えば車載主機としての内燃機関を備えない電気自動車や燃料電池車等であってもよい。
【符号の説明】
【0121】
12…インバータ、15…コンデンサ、16…高圧バッテリ、18…リレー、20…プリチャージ用リレー、26a,26b…放電抵抗体、30a…マイコン、32…遅延用コンデンサ、S*#…スイッチング素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサと、前記一対の入力端子間に接続される放電経路とを備えるシステムに適用され、
前記放電経路の中間点における電位の変化を遅延させて出力する遅延回路を備えることを特徴とするコンデンサの放電回路。
【請求項2】
前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間に基づき、前記放電経路の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のコンデンサの放電回路。
【請求項3】
前記放電経路は、複数の抵抗体の直列接続体からなり、
前記遅延回路は、遅延用コンデンサを更に備え、前記複数の抵抗体の一部に前記遅延用コンデンサが並列接続されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のコンデンサの放電回路。
【請求項4】
前記放電経路は、抵抗体からなり、
前記遅延回路は、リアクトルを更に備え、前記抵抗体に該リアクトルが直列接続されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のコンデンサの放電回路。
【請求項5】
前記遅延回路は、前記コンデンサ及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第1の開閉手段と、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第2の開閉手段とを更に備えることを特徴とする請求項3記載のコンデンサの放電回路。
【請求項6】
前記遅延回路は、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路に抵抗体を更に備えることを特徴とする請求項5記載のコンデンサの放電回路。
【請求項7】
前記第1の開閉手段が閉状態とされて且つ前記第2の開閉手段が開状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第1の閾値に到達するまでの時間と、前記第1の開閉手段が開状態とされて且つ前記第2の開閉手段が閉状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第2の閾値に到達するまでの時間との比に基づき、前記放電経路としての前記抵抗体の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする請求項6記載のコンデンサの放電回路。
【請求項1】
直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサと、前記一対の入力端子間に接続される放電経路とを備えるシステムに適用され、
前記放電経路の中間点における電位の変化を遅延させて出力する遅延回路を備えることを特徴とするコンデンサの放電回路。
【請求項2】
前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が所定の閾値に到達するまでの時間に基づき、前記放電経路の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のコンデンサの放電回路。
【請求項3】
前記放電経路は、複数の抵抗体の直列接続体からなり、
前記遅延回路は、遅延用コンデンサを更に備え、前記複数の抵抗体の一部に前記遅延用コンデンサが並列接続されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のコンデンサの放電回路。
【請求項4】
前記放電経路は、抵抗体からなり、
前記遅延回路は、リアクトルを更に備え、前記抵抗体に該リアクトルが直列接続されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のコンデンサの放電回路。
【請求項5】
前記遅延回路は、前記コンデンサ及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第1の開閉手段と、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路を開閉する電子制御式の第2の開閉手段とを更に備えることを特徴とする請求項3記載のコンデンサの放電回路。
【請求項6】
前記遅延回路は、前記遅延用コンデンサの充電電圧よりも低い電圧を有する部材及び前記遅延用コンデンサを接続する電気経路に抵抗体を更に備えることを特徴とする請求項5記載のコンデンサの放電回路。
【請求項7】
前記第1の開閉手段が閉状態とされて且つ前記第2の開閉手段が開状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第1の閾値に到達するまでの時間と、前記第1の開閉手段が開状態とされて且つ前記第2の開閉手段が閉状態とされる場合において、前記遅延回路の出力信号の変化が開始されてから該出力信号が第2の閾値に到達するまでの時間との比に基づき、前記放電経路としての前記抵抗体の異常の有無を判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする請求項6記載のコンデンサの放電回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−38903(P2013−38903A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172684(P2011−172684)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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