説明

コンデンサ用リード線の製造方法及びそのコンデンサ用リード線

【課題】 銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接することにより形成したコンデンサ用リード線の表面にウィスカが発生しないコンデンサ用リード線の製造方法及びそのコンデンサ用リード線を提供する。
【解決手段】 銅めっきを施した鉄線11とアルミニウム線12とを溶接してコンデンサ用リード線10を形成する溶接工程と、該溶接工程の後、コンデンサ用リード線10の表面であって、且つ溶接部を含まない予め定められた部分に、錫をめっきするリード線めっき工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用リード線の製造方法及びそのコンデンサ用リード線に関し、詳しくは銅めっきを施した鉄線等とアルミニウム線とを溶接した溶接部にウィスカを発生させないコンデンサ用リード線の製造方法及びそのコンデンサ用リード線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、コンデンサ用リード線の溶接部にウィスカが発生した状態を示す要部側面図である。従来より、極めて純度の高い錫をめっきしたCP線111とアルミニウム線112とが溶接されたコンデンサ用リード線100が知られている。
【0003】
このようなコンデンサ用リード線100では、溶接時に、溶接部113に錫が露出して、太さ数ミクロンメータの繊維状結晶(以下、ウィスカ(Whisker)という)120が金属結晶の表面から発生し成長する。
【0004】
ウィスカは、錫からなる単体金属で構成されており、リード線表面に設けられた錫めっきに由来するものであるが、リード線全体にウィスカが発生することはなく、リード線の溶接部に集中してウィスカが発生する。それは、アルミニウム線とCP線との溶接時の残留応力が残されたままアルミニウム線とCP線の鉄、銅、錫の金属が固化するが、鉄や銅と異なり、錫は融点が低く(約232℃)、低温でも結晶変態を起こすからである。
【0005】
このように残留応力が残っている状態で常温時でも錫の結晶化が進み、針状のウィスカとなって溶接部から生じる。このウィスカの成長は、数ヶ月の間に徐々に成長するため、あらゆる方法で抑制しても根本的な解決には繋がらない。
【0006】
現在、電気製品の小型化によって、プリント基板上の部品と部品との間が狭くなっており、ウィスカ120の成長によってショート事故が発生するおそれがある。また、ウィスカ120が電気・電子機器の中で脱落し、機器の中で浮遊することにより、機器の重大な故障の原因となる場合もある。このために、従来より、錫めっきに際し鉛を添加して、ウィスカ120の発生を防止していた。なお、CP線には、錫めっき以外にも銀或いは金めっきのものがあり、これらの金属によるものもウィスカが発生するおそれがあった。
【0007】
しかし、現在、環境問題に関心が集まっており、鉛の使用を制限又は全廃する計画が話題となっており、西暦2001年施行された家電リサイクル法では、鉛の回収が義務付けられている。このために、環境対策として、鉛の使用ができず、コンデンサ用リード線の溶接部から発生するウィスカの対策が急務である。また、ウィスカの発生を防止する他の方法には、リード線にビスマス錫層を被覆する方法が提案されているが、ビスマス錫めっきリード線は汎用のCP線ではなく、使用し難い欠点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
上記の問題を解決すべく、本出願人は、コンデンサ用リード線の製造に際し、錫、銀或いは金をめっきしたCP線とアルミニウム線とを利用してコンデンサ用リード線を製造し、このCP線とアルミニウム線との溶接部にウィスカの発生を防止することができるコンデンサ用リード線の製造方法を提案している(特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2記載の発明によると、コンデンサ用リード線の製造工程の中において、最終仕上げの洗浄後に、高熱乾燥させる工程を含むため、コンデンサ用リード線の溶接部の内部応力を緩和させることができ、その結果ウィスカが溶接部に発生するのを抑制することができるという優れた効果を奏するに至っている。
【0010】
【特許文献1】特開2000−012386(明細書全文、図面全図)
【特許文献2】特願2006−313763(明細書前文、図面全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の技術では、溶接部に生じるウィスカの発生の抑制を実現することは可能ではあったが、完全にウィスカの発生を無くすことは極めて困難であった。また、ウィスカを発生させないようにするならば、錫めっきを行わなければよいが、電子部品としてコンデンサ用リード線を用いる以上、半田濡れ性等の観点からコンデンサ用リード線に対する錫のめっきを避けて通ることはできない。
【0012】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたものであり、コンデンサ用リード線の製造に際し、銅をめっきした鉄線等とアルミニウム線とを利用してコンデンサ用リード線を製造し、この鉄線とアルミニウム線との溶接部にウィスカが発生しないコンデンサ用リード線の製造方法及びそのコンデンサ用リード線を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を採用した。
コンデンサ用リード線の製造方法において、銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接してコンデンサ用リード線を形成する溶接工程と、該溶接工程の後、コンデンサ用リード線の表面であって、且つ予め定められた部分に、錫をめっきするリード線めっき工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ用リード線の製造方法である。
また、前記溶接工程における銅めっきを施した鉄線の代わりに、銅線であってもよいし、また銅めっきの代わりに、銅を被覆させたものでも良い。
【0014】
またさらに、前記リード線めっき工程は錫をめっきすることにしているが、めっきする金属は、半田濡れ性のよい金属であればよく、例えば銀や亜鉛等を代替金属として利用してもよい。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のコンデンサ用リード線の製造方法において、前記予め定められた部分は、前記銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接した溶接部を含まないことを特徴とするコンデンサ用リード線の製造方法である。
【0016】
またさらに、請求項3記載の発明は、請求項1記載のコンデンサ用リード線の製造方法であって、前記予め定められた部分は、半田実装部分であることを特徴としている。
【0017】
続いて、請求項4記載の発明は、銅めっきを施した鉄線と、アルミニウム線とが溶接されたコンデンサ用リード線であって、前記コンデンサ用リード線の表面であって、且つ予め定められた部分に、錫をめっきしたことを特徴とするコンデンサ用リード線である。
この場合も、前記溶接工程における銅めっきを施した鉄線の代わりに、銅線であってもよいし、また銅めっきの代わりに、銅を被覆させたものでも良い。
【0018】
またさらに、前記リード線めっき工程は錫をめっきすることにしているが、めっきする金属は、半田濡れ性のよい金属であればよく、例えば銀や亜鉛等を代替金属として利用してもよい。
【0019】
さらに、請求項5記載の発明は、請求項4記載のコンデンサ用リード線であって、前記予め定められた部分は、前記銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接した溶接部を含まないことを特徴とするコンデンサ用リード線である。
【0020】
そして、請求項6記載の発明は、請求項4記載のコンデンサ用リード線であって、前記予め定められた部分は、半田実装部分であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接してコンデンサ用リード線を形成する溶接工程と、該溶接工程の後、コンデンサ用リード線の表面であって、且つ予め定められた部分に、錫をめっきするリード線めっき工程と、を含むことを特徴としたコンデンサ用リード線の製造方法及びそのコンデンサ用リード線であるため、これら発明により、コンデンサ用リード線の表面の予め定められた部分にウィスカが発生しなくなるという優れた効果が奏される。
【0022】
尚、前記リード線めっき工程のうち、錫をめっきする部分は、前記錫めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接した溶接部を含まない部分とした場合には、溶接部による残留応力が働かないので、将来にわたってウィスカの発生を防止することができる。また、後に半田実装する部分に錫めっきをする場合には、めっき部分が少なく費用が軽減でき、かつ実装部での半田濡れ性が良好でウィスカの発生も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照し説明する。
図1は、本実施形態のコンデンサ用リード線の要部側面図である。図1(a)は、銅めっきが施された鉄線11とアルミニウム線12とを溶接部13で接続したコンデンサ用リード線10であり、予め定められた部分に錫等の半田濡れ性のよい金属20をめっきしたものである。
【0024】
また、図1(b)は、銅めっきが施された鉄線11とアルミニウム線12とを溶接部13で接続したコンデンサ用リード線10であり、溶接部13を除いた部分に錫等の半田濡れ性のよい金属20をめっきしたものである。なお、この溶接部13を除いた部分を、溶接部13及び溶接部13からコンデンサ用リード線の使用状態下方向に向かって1〜2mmの範囲を除いた部分としてもよい。
【0025】
そして、図1(c)は、銅めっきが施された鉄線11とアルミニウム線12とを溶接部13で接続したコンデンサ用リード線10であり、後に半田を実装する部分に錫等の半田濡れ性のよい金属20をめっきしたものである。
【0026】
次に、図2は、本実施形態における上記コンデンサ用リード線10の製造工程を示しており、図2(a)は、銅めっきが施された鉄線11とアルミニウム線12の接続前を示したものである。
【0027】
また、図2(b)は、銅めっきが施された鉄線11とアルミニウム線12が溶接部13において溶接され接続している状態を示している。そして、図2(c)は、銅めっきが施された鉄線11とアルミニウム線12が接続された接続部13を除いた部分に錫等の半田濡れ性がよい金属をめっきした状態を示したものである。
【0028】
まず図2(a)に示すように、銅をめっきした鉄線とアルミニウム線を用意し、図2(b)に示すように溶接により銅をめっきした鉄線11とアルミニウム線12を溶接部13で密着させ加熱溶接する。そして、図2(c)に示すように溶接部13を除いた部分(溶接部13を含まない部分)に錫等の半田濡れ性のよい金属20をめっきする。このような工程を踏むことにより、接続部13に錫をめっきを施さず、且つ電子部品としての機能を全うするために必要な部分には錫めっきを施すということが可能となる。
【0029】
その結果、接続部13にウィスカが発生することが無くなり、将来的にも安定したコンデンサ用リード線を製造することが可能となる。尚、銅をめっきした鉄線は、銅線でもよく、また、銅めっきの代わりに銅を被覆させてもよい。いずれにしても同じ作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のコンデンサ用リード線の製造方法及びその製造方法によって製造されるコンデンサ用リード線は、ウィスカが発生することがないため将来的に安全な使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は、予め定められた部分に錫等の半田濡れ性のよい金属をめっきした状態を示した図で、(b)は、溶接した後のコンデンサ用リード線の要部側面図であり、接続部を除く部分に錫等の半田濡れ性のよい金属をめっきした状態を示した図で、(c)は、後に半田実装する部分に錫等の半田濡れ性のよい金属をめっきした状態を示した図である。
【図2】本発明のコンデンサ用リード線の製造方法を示した図であり、(a)は、溶接による接続前の銅めっきを施した鉄線と、アルミニウム線を示した図で、(b)は、銅めっきを施した鉄線と、アルミニウム線を溶接した状態を示した図で、(c)は、予め定められた部分に錫等の半田濡れ性のよい金属をめっきした状態を示した図である。
【図3】コンデンサ用リード線の溶接部にウィスカが発生した状態を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 コンデンサ用リード線
11 銅めっきを施した鉄線
12 アルミニウム線
13 溶接部
20 半田濡れ性がよい金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ用リード線の製造方法において、
銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接してコンデンサ用リード線を形成する溶接工程と、
該溶接工程の後、コンデンサ用リード線の表面であって、且つ予め定められた部分に、錫をめっきするリード線めっき工程と、
を含むことを特徴とするコンデンサ用リード線の製造方法。
【請求項2】
前記予め定められた部分は、前記銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接した溶接部を含まないことを特徴とする請求項1記載のコンデンサ用リード線の製造方法。
【請求項3】
前記予め定められた部分は、半田実装する部分であることを特徴とする請求項1記載のコンデンサ用リード線の製造方法。
【請求項4】
銅めっきを施した鉄線と、アルミニウム線とが溶接されたコンデンサ用リード線であって、
前記コンデンサ用リード線の表面であって、且つ予め定められた部分に、錫をめっきしたことを特徴とするコンデンサ用リード線。
【請求項5】
前記予め定められた部分は、前記銅めっきを施した鉄線とアルミニウム線とを溶接した溶接部を含まないことを特徴とする請求項4記載のコンデンサ用リード線。
【請求項6】
前記予め定められた部分は、半田実装する部分であることを特徴とする請求項4記載のコンデンサ用リード線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−311405(P2008−311405A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157318(P2007−157318)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000111225)ニューセントラル株式会社 (5)
【Fターム(参考)】