説明

コンデンサ用電極及びそれを用いた電気二重層コンデンサ

【課題】炭素系の多孔質材料を含まない新規なコンデンサ用電極及び、それを用いた電気二重層コンデンサを提供する。
【解決手段】誘電体5と、誘電体を介して設けられる1対の電極10a、10bとを具備する電気二重層コンデンサ1において、それらの電極は電界効果を有する半導体からなるコンデンサ用電極であり、電極10aは、誘電体と接する面と対向する面に設けられた導電体20aを介して直流電源50の一方の極に接続され、電極10bは、誘電体と接する面と対向する面に設けられた導電体20bを介して直流電源の他方の極に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用電極及びそれを用いた電気二重層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサは、従来の二次電池のように充放電において化学反応を伴わないため長寿命であり、かつ高サイクル特性を有し、さらに大電流による充放電が可能になるなどの特徴から、近年注目を集めており、特に、大容量・高出力の電気二重層コンデンサの開発が進められている。
【0003】
そして、このような電気二重層コンデンサ用電極としては、活性炭粉末などの炭素系の多孔質材料を硫酸などの電解液の溶媒を用いて混練してスラリ状とし、それを加圧プレスにより成形したものが用いられている。このようにして得られる電極は、多孔質構造を有するので、亀裂や破壊が生じ易く、長期の使用に耐えることができないという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、活性炭粉末と電解液の混合物を必要に応じてポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)のバインダを加えて混練し、この混練物を延伸又は圧延などした電極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−31986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような電極は、すべて炭素系の多孔質材料を含んでおり、その電極を用いて構成される電気二重層コンデンサの容量は炭素系の多孔質材料の特性に依存するという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑み、炭素系の多孔質材料を含まない新規なコンデンサ用電極及び、それを用いた電気二重層コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、有機半導体トランジスタに関する研究を通じて、コンデンサ用電極は導電体からなるものであるという既成概念にとらわれず、半導体をコンデンサ用電極として用いることができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、電界効果を有する半導体からなることを特徴とするコンデンサ用電極にある。
【0010】
かかる第1の態様では、炭素系の多孔質材料を含まない新規なコンデンサ用電極を提供することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のコンデンサ用電極において、前記半導体が有機半導体であることを特徴とするコンデンサ用電極にある。
【0012】
かかる第2の態様では、可撓性を有するコンデンサ用電極を提供することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載のコンデンサ用電極において、前記半導体が無機半導体であることを特徴とするコンデンサ用電極にある。
【0014】
かかる第3の態様では、炭素系の多孔質材料を含まない新規なコンデンサ用電極を提供することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、誘電体と、前記誘電体を介して設けられる1対の電極とを具備する電気二重層コンデンサにおいて、前記1対の電極は第1〜3の何れかの態様に記載のコンデンサ用電極であり、前記1対の電極の一方は、前記誘電体と接する面と対向する面に設けられた導電体を介して直流電源の一方の極に接続され、前記1対の電極の他方は、前記誘電体と接する面と対向する面に設けられた導電体を介して前記直流電源の他方の極に接続されることを特徴とする電気二重層コンデンサにある。
【0016】
かかる第4の態様では、電極に炭素系の多孔質材料を含まず、かつ電極を構成する半導体の性質に応じた特性を有する電気二重層コンデンサを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るコンデンサ用電極及びそれを用いた電気二重層コンデンサによると、炭素系の多孔質材料の特性に依存しない新規なコンデンサ用電極及び、電極を構成する半導体の性質に応じた特性を有する電気二重層コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電気二重層コンデンサを示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る電気二重層コンデンサ1は、電界効果を有する半導体からなる1対の電極10a、10bが誘電体5を介して平行に配置されている。そして、電極10aの誘電体5に接する面に対向する面には、薄膜状に形成された導電体層20aが設けられており、電極10aは導電体層20aを介して直流電源50の正極に接続された配線30aと接続されている。また、同様に、電極10bの誘電体5に接する面に対向する面には、薄膜状に形成された導電体層20bが設けられており、電極10bは導電体層20bを介して直流電源50の負極に接続された配線30bと接続されている。
【0020】
このように構成された電気二重層コンデンサ1では、直流電源50から配線30aを介して導電体層20aに電圧が印加されると、電界効果によって電極10aが分極し、導電体層20aと接する電極10aの表面近傍に電子が蓄積すると共に、誘電体5と接する電極10aの表面近傍に正孔が蓄積する。一方、直流電源50から配線30bを介して導電体層20bに電圧が印加されると、電界効果によって電極10bが分極し、導電体層20bと接する電極10bの表面近傍に正孔が蓄積すると共に、誘電体5と接する電極10bの表面近傍に電子が蓄積する。すると、電極10aと電極10bとの間に電位差が生じ、誘電体5が分極する。そして、図2に示すように誘電体5中の陰イオンが電極10aと接する誘電体5の表面近傍に移動して電気二重層を形成すると共に、図3に示すように誘電体5中の陽イオンが電極10bと接する誘電体5の表面近傍に移動して電気二重層を形成する。
【0021】
このようにして、本実施形態に係る電気二重層コンデンサ1は電気二重層コンデンサとして機能することになる。すなわち、電気二重層コンデンサ1を構成する電極10a、10bは、電圧が印加されて初めて電極として機能する「潜在的導電体」であり、従来の導電体からなる電極とはまったく異なる新規な電気二重層コンデンサ用電極である。そして、この電極を用いた電気二重層コンデンサ1は、電極10a、10bを構成する半導体の性質に応じた特性を有するという効果を奏する。例えば、電極を構成する半導体として表面積が大きな有機半導体を用いると、容易に表面積を大きくすることができるので、可撓性を有し、かつ大容量化が容易な電気二重層コンデンサを提供することができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る電気二重層コンデンサを構成する構成要素について説明する。電極10a、10bを構成する半導体は無機半導体であっても有機半導体であってもよい。また、電極10a、10bを構成する半導体は、単結晶で構成されても多結晶で構成されてもよいが単結晶の方が好ましいのはいうまでもない。さらに、有機半導体で構成することによって可撓性を有する電極10a、10bを形成することができる。電極10a、10bを構成する有機半導体化合物としては、電界効果を有するものであれば特に限定されないが、例えば、(1)ペンタセン、テトラセン、アントラセンなどのオリゴアセン分子、(2)ルブレン、テトラメチルペンタセン、テトラクロロペンタセン、ジフェニルペンタセンなどのオリゴアセン誘導体分子、(3)セクシチオフェンなどのオリゴチオフェン分子及びその誘導体分子、(4)TCNQ(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)及びその誘導体分子、(5)TTF(1,4,5,8−テトラチアフルバレン)及びその誘導体分子、(6)ペリレン及びその誘導体分子、(7)ピレン及びその誘導体分子、(8)C60などのフラーレン分子及びその誘導体分子、(9)フタロシアニン及び銅フタロシアニンなどのメタルフタロシアニン分子及びその誘導体分子、(10)ポルフィリン、亜鉛ポルフィリン、鉄ポルフィリンなどのメタルポルフィリン分子及びその誘導体分子、(11)BEDT−TTF(ビスエチレンジチオテトラチオフルバレン)及びその誘導体分子などが挙げられ、特にルブレンやペンタセンはキャリアの移動度が大きいので好ましい。
【0023】
電極10a、10bを構成する無機半導体化合物としては、電界効果を有するものであれば特に限定されないが、例えば、GaN、AlGaNなどの窒化ガリウム系化合物、ポリマーSi、アモルファスシリコン、SiGeなどのシリコン系半導体、さらには、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニンや金属ポルフィリンなどの金属錯体半導体材料などが挙げられる。
【0024】
導電体層20a、20bを構成する物質は特に限定されず、例えばAu、Al、Cu、Ag、Mo、W、Mg、Znなどの金属が挙げられ、特に比抵抗が低いAu、Al、Cu、Ag又はこれらを含む合金が好ましい。
【0025】
誘電体5は、特に限定されないが、強誘電体が好ましいのはいうまでもない。
【0026】
配線30a、30bは直流電源50と導電体層20a、20bとを接続することができるものであれば特に限定されない。
【0027】
直流電源50は、電気二重層コンデンサ1に所定の電圧を印加することができるものであれば特に限定されない。
【0028】
(他の実施形態)
実施形態1では、電気二重層コンデンサ用電極及びそれを用いた電気二重層コンデンサについて説明したが、通常のコンデンサにも本発明のコンデンサ用電極を用いることができると共に、本発明のコンデンサ用電極を用いて通常のコンデンサを構成することもできることはいうまでもない。
【0029】
また、実施形態1では、上述したように同一半導体で各電極を形成したが、異なる半導体で形成してもよい。また、同様にして、各導電体を異なる物質で形成してもよい。このようにしても、実施形態1と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係る電気二重層コンデンサの概略図である。
【図2】図1に示す部分Aを拡大した拡大図である。
【図3】図1に示す部分Bを拡大した拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
1 電気二重層コンデンサ
5 誘電体
10a、10b 電極
20a、20b 導電体層
30a、30b 配線
50 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果を有する半導体からなることを特徴とするコンデンサ用電極。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサ用電極において、
前記半導体が有機半導体であることを特徴とするコンデンサ用電極。
【請求項3】
請求項1に記載のコンデンサ用電極において、
前記半導体が無機半導体であることを特徴とするコンデンサ用電極。
【請求項4】
誘電体と、
前記誘電体を介して設けられる1対の電極とを具備する電気二重層コンデンサにおいて、
前記1対の電極は請求項1〜3の何れかに記載のコンデンサ用電極であり、
前記1対の電極の一方は、前記誘電体と接する面と対向する面に設けられた導電体を介して直流電源の一方の極に接続され、
前記1対の電極の他方は、前記誘電体と接する面と対向する面に設けられた導電体を介して前記直流電源の他方の極に接続されることを特徴とする電気二重層コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−273797(P2007−273797A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98533(P2006−98533)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】