説明

コンデンサ素子の製造方法及びその成形装置

【課題】計測したコンデンサ素子の重量に基づいて、次に成形されるコンデンサ素子のタンタル粉末の投入量が、自動補正されるようにしたコンデンサ素子の製造方法及びその製造装置を提供する。
【解決手段】本発明によるコンデンサ素子の製造方法は、コンデンサ素子の成形装置に、電子天秤でコンデンサ素子の重量を測定する段階と、測定した前記コンデンサ素子の重量がHH、HI、OK、LO、LLのどの範囲に入るか判別する段階と、HH、LLの場合を不良品とし、HI、OK、LOの場合を良品として分離する段階と、HH、HI、LO、LLの場合、コンデンサ成形粉末の金型への投入量を補正率に基づいて増量または減量する段階とが備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ成形粉末を押し固めてコンデンサ素子を成形するのに好適なコンデンサ素子の製造方法及びその成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として図10にタンタルコンデンサの製品種別を示す。タンタルコンデンサは、金属ケース型タンタルコンデンサ(TSM)80、樹脂モールド型タンタルコンデンサ(TSD)81、モールドチップ型タンタルコンデンサ(TMC)82などがある。定格電圧範囲は、TSMが3.15〜50VDC、TSDが3.15〜50VDC、TMCが4〜35VDCである。静電容量範囲は、TSMが0.1〜2200μF、TSDが0.1〜330μF、TMCが0.1〜100μFである。モールドチップ型(TMC)は、小型で自動実装が可能なこともあり、VTRやヘッドフォンステレオなどのポータブル電子機器、携帯電話等に多用されている。
【0003】
タンタルコンデンサは、小容量の積層セラミックコンデンサと比較して、有極(+極と−極がある)のため基板への実装に注意を要するが、小型で大きな容量が得られ、電圧によって静電容量が変化しないとの長所がある。大容量が可能なアルミ電解コンデンサと比較して、やや高価であるが、周波数特性と温度特性が良好で、小型で長寿命との長所がある。ニオブは、タンタルより多量に産出し、高純度で微細な粉末ができるようになった。そのためタンタルの置き換えが進んでいる。コンデンサ成形粉末には、タンタル粉末の他、ニオブ粉末、酸化ニオブ粉末がある。コンデンサの成形装置は、これらコンデンサ成形粉末からコンデンサ素子を作ることができる。
【0004】
図10に示すように、タンタルコンデンサは、内部の中央部分にコンデンサ素子40があり、陽極端子85と陰極端子86は、タンタル系または銅系または銀系または鉄系などである。コンデンサ素子40は、タンタルコンデンサの陽極となる部分で、コンデンサ素子の成形装置を用いて成形される。コンデンサ素子の成形装置の例としては、本出願人が出願した特許文献1がある。ここでは、平均粒径数μmの高純度タンタル粉末が成形用の溝に投入され、リード線42が挿入され、蓋をして左右両側から押圧器で押圧することによって1つのコンデンサ素子40が成形される。このコンデンサ素子40は、さらに高温、高真空下で焼結され、40〜60%の空隙率を有する多孔質焼結体とされる。
【0005】
タンタルコンデンサの容量の許容範囲は、例えばカタログ仕様で±10%以内などされる。一方、コンデンサ素子は、前述のそれより小さい範囲、例えば重量が±5%以内に入るように成形されねばならない。これはコンデンサ素子の重量が、タンタルコンデンサの容量に大きく影響するからである。そのため、コンデンサ素子は成形装置において重量が測定され、規格を満たさないものは取り除かれる。しかし、タンタル粉末は、例えばロットによってばらつきがあり、その都度オペレータによる成形装置の調整に頼っている状況にある。そのため、調整に予想以上の時間がかかれば、所定の生産量が得られない場合も発生する。
【特許文献1】特開平8−124810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決するためになされたもので、計測したコンデンサ素子の重量に基づいて、次に成形されるコンデンサ素子のコンデンサ成形粉末の投入量が自動補正されるようにしたコンデンサ素子の製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明による請求項1記載のコンデンサ素子の製造方法は、コンデンサ成形粉末を金型に投入し押し固めて作るコンデンサ素子の成形方法において、前記コンデンサ素子を成形する毎に、その重量を電子天秤で測定する段階と、前記コンデンサ素子の良品の重量が、第2上限値と第2下限値の範囲にあり、前記第2上限値と前記第2下限値の範囲内に第1上限値と第1下限値が定められ、前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にあるかを判別する段階と、前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合を不良品、前記コンデンサ素子の重量が、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にある場合を良品として分離する段階と、前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、前記タンタル粉末の前記金型への投入量を、あらかじめ設定した補正率に基づいて増量または減量する段階とが備えられていることを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項2記載のコンデンサ素子の製造方法によれば、前記コンデンサ素子の重量が(a)前記第2上限値の外の範囲または(e)前記第2下限値の外の範囲にあって、これがあらかじめ設定された回数連続した場合、前記コンデンサ素子の製造を停止する段階がさらに備えられたことが好ましい。
【0009】
本発明による請求項3記載のコンデンサ素子の成形装置は、筒部を有する金型と、前記筒部にコンデンサ成形粉末を投入する粉末供給箱と、前記筒部の下側に装着される下パンチと、前記筒部の上側に装着され中央にリード線が通されて、前記下パンチと合わせて前記筒部内に投入されたコンデンサ成形粉末を押し固める上パンチとを含んで構成された縦押し成形部と、前記コンデンサ素子を成形する毎にその重量を測定する測定部と、前記コンデンサ素子の良品の重量範囲である第2上限値と第2下限値、前記第2上限値と前記第2下限値の範囲内に定められる第1上限値と第1下限値、前記下パンチの基準位置、前記下パンチの位置を補正する補正率とが設定されるパネル操作部と、前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、これを不良品としてイジェクトボックスに排出し、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にある場合、良品トレイに集積し、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、前記下パンチの基準位置を、前記補正率に基づいて変更する制御部とが備えられたことを特徴とする。
【0010】
本発明による請求項4記載のコンデンサ素子の成形装置は、横長の溝部を有する金型と、前記溝部にコンデンサ成形粉末を投入する粉末供給箱と、前記コンデンサ成形粉末が前記溝部に投入された後に前記溝部の上側を閉じ、中央にリード線が通された上蓋と、前記溝部の左側に装着される左パンチと、前記溝部の右側に装着され、前記左パンチと合わせて前記溝部内に投入された前記粉末を押し固める右パンチとを含んで構成された横押し成形部と、前記コンデンサ素子を成形する毎にその重量を測定する測定部と、前記コンデンサ素子の良品の重量範囲である第2上限値と第2下限値、前記第2上限値と前記第2下限値の範囲内に定められる第1上限値と第1下限値、前記左パンチと前記右パンチの基準位置、前記左パンチと前記右パンチの位置を補正する補正率とが設定されるパネル操作部と、前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、これを不良品としてイジェクトボックスに排出し、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にある場合、良品トレイに搬送し、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、前記左パンチと前記右パンチの基準位置を前記補正率に基づいて変更する制御部とが備えられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による請求項1の製造方法によれば、コンデンサ素子の重量が良品の範囲外にある場合はもちろん、コンデンサ素子の重量が良品の範囲にあっても、その重量が良品と不良品の境界に近い範囲にあるなら、粉末の投入量を自動的に補正するようにしたため、より精度が高く、ばらつき範囲の小さなコンデンサ素子を成形することができる。また、成形装置を運転するオペレータの負担を軽減させることができる。
【0012】
本発明による請求項2によれば、コンデンサ成形粉末の投入量の自動的な調整によっても適正な重量が回復しない場合、例えばパンチの駆動機構の故障または不具合で重量不適切の状態が連続するような場合には、装置を停止するようにしたため、不良品を大量に作ることが防止される。
【0013】
本発明による請求項3によれば、請求項1に記載の製造方法を縦押し成形部を有するコンデンサ素子の成形装置に適用することができる。成形したコンデンサ素子の重量を毎回測定し、この重量に基づき制御部は、下パンチを下げて金型に投入されるタンタル粉末の量を増やし、あるいは下パンチを上げて金型に投入されるタンタル粉末の量を減らすことができる。粉末を増減させる量は、パネル操作部から設定する補正率で大きい値にも小さい値にもできる。
【0014】
本発明による請求項4によれば、請求項1に記載の製造方法を横押し成形部を有するコンデンサ素子の成形装置に適用することができる。成形したコンデンサ素子の重量を毎回測定し、この重量に基づき制御部は、例えば左右のパンチの位置を広げまたは狭めることにより、金型に投入される粉末の量を増やしまたは減らすことができる。コンデンサ成形粉末の増減させる量は、パネル操作部から設定する補正率で大きい値にも小さい値にもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明によるコンデンサ素子の製造方法及びその成形装置を説明する。なお、ここでのコンデンサ成形粉末は、タンタル粉末またはニオブ粉末または酸化ニオブ粉末とする。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明によるコンデンサ素子の成形装置の平面図である。図2はその左側面図である。成形装置100は、縦押し成形部を有するもので、一例として、高さ2200mm、幅1600mm、奥行き1300mmの箱型である。図1、図2に示すように、成形装置100は、主筐体1と前側に位置する副筐体2からなる。副筐体2には、成形されたコンデンサ素子が搬送される搬送部があり、コンデンサ素子を取り出すことができる。主筐体1で成形されたコンデンサ素子は、これが良品である場合、副筐体2に設けられた良品トレイ16に集められ、トレイコンベア15で左側から右側方向に搬送される。すなわち、良品トレイ16、トレイコンベア15を含む搬送部は、良品のコンデンサ素子を運ぶ箇所である。トレイコンベア15の右端に到達した良品トレイ16は、次の工程に渡される。
【0017】
図3は成形装置100を構成する主筐体の正面図である。図4は主筐体の左側面図である。主筐体1には、パネル操作部12、プログラム制御の制御部11、それにコンデンサ素子を成形する縦押し成形部がある。縦押し成形部は、1つのコンデンサ素子成形に必要なタンタル粉末が投入される金型13、下パンチと上パンチ、下パンチを昇降させるACサーボモータ4、上パンチを昇降させるACサーボモータ3、粉末供給箱6がある。この他に、コンデンサ成形粉末が蓄えられる粉末リザーバ5、リード線を切断するワイヤカッタ7、リード線の供給元であるワイヤスプールホルダ9、リード線を送り出すワイヤ送り機構10、下パンチを昇降させる駆動機構14、上パンチを昇降させる駆動機構などがある。
【0018】
図5は成形装置100を構成する副筐体の正面図である。図6は副筐体の左側面図である。図5に示すように、副筐体2には、成形したコンデンサ素子が所定の個数、例えば100個が集められる良品トレイ16、トレイコンベア15の搬送部が設けられる。また、不良品を集める収集部であるイジェクトボックス26が設けられる。図6に示すように、副筐体2には、電子天秤17、コンデンサ素子の搬送のための第1搬送手段20、第2搬送手段22、トレイステージ19等が設けられる。電子天秤17がコンデンサ素子の重量を測る測定部である。
【0019】
このような成形装置100で成形されるコンデンサ素子は、金型の筒部が例として円筒型であれば、円筒の高さが5〜30mm、径が1.5〜9mm、リード線の径は0.5mm、リード線のワイヤ長(円筒部からの突出長さ)が8〜20mm、成形嵩密度が5〜8.5g/cmなどとされる。なお、筒部は、角筒型としても良い。
【0020】
制御部11とパネル操作部12は、RS232Cインタフェースで接続されている。制御部11と電子天秤17は、専用インタフェースで接続されている。制御部11は、パネル操作部12と電子天秤17の、ステータスレジスタ、割り込みレジスタ、コマンドレジスタ、各種データレジスタなどを介して制御している。成形装置100の外部に設けられたPC(パソコン)と制御部11を接続して、複数の成形装置100の持っている重量データをPCに集めることができる。
【0021】
図7と図8は縦押し成形工程を示す。図7と図8は、成形装置100において、コンデンサ素子の成形を一連の流れ図として示したものである。図7と図8は、金型13、粉末供給箱6、下パンチ36、上パンチ35を断面図で示している。
【0022】
図7(a)に示すように、下パンチ36は、金型13の筒部27内の下部に挿入され基準位置まで上昇させておく。基準位置は金型13の上面からの長さ(L)で表している。下パンチ36の位置によって、1つのコンデンサ素子を作るのに必要なコンデンサ成形粉末41の投入量が決まり、長さLは下パンチ36の位置を駆動機構14で微調整することができる。上パンチ35は中央にリード線42が通された状態、粉末供給箱6は、コンデンサ成形粉末41が投入された状態にある。最初に、図7(a)に示すように、粉末供給箱6を矢印の方向に移動し、図7(b)に示すように、コンデンサ成形粉末41を筒部27内に落下させる。
【0023】
次に、図7(c)に示すように、粉末供給箱6を金型13の上面を擦るようにして元の位置に移動する。これによりコンデンサ成形粉末41が金型13の筒部27を満たす。そして、リード線42が通された上パンチ35を下降させ、金型13の筒部27の上側に位置させる。この位置から上パンチ35をさらに下降させると、押圧が開始される。図7(d)に示すように、下パンチ36を上昇させながら、同時に上パンチ35を下降させるので、コンデンサ成形粉末41が圧縮される。図7(e)は、圧縮が完了したコンデンサ素子40を、下パンチ36、上パンチ35を共に上昇させて、金型13の上部に押し出している。図7(f)は、ワイヤカッタ7によるリード線42の切断を示す。
【0024】
図8(a)に示すように、金型13の上部に押し出されたコンデンサ素子40を第1搬送手段20でつかみ、電子天秤17側に移動する。第1搬送手段20と電子天秤17は、図6に示すように副筐体2に設けられている。図8(b)は、第1搬送手段20でコンデンサ素子40が電子天秤17に戴置され、その間下パンチ36が基準位置まで下降されることを示す。図8(b)では、電子天秤17によるコンデンサ素子の重量測定が行なわれる。図8(c)に示すように、重量が所定の範囲にあれば、第2搬送手段22でコンデンサ素子40が良品トレイ16に搬送される。秤量の結果、重量が適切でないと判断されたコンデンサ素子40は、良品トレイ16には搬送されず、イジェクトボックス26に集められる。なお、測定した重量の判定によっては、後述するように、下パンチ36の基準位置が補正される。
【0025】
図9は、横押し成形工程を示す。横押し成形部を有する成形装置は、縦押し成形部を有する成形装置100と同じ部分の詳細な説明は省略する。横押し成形部は、図9(a)に示すように、金型13、金型13の上部に設けられた溝部28、左パンチ37、右パンチ38、リード線42が通された上蓋29で構成される。図面の手前側と奥側には、ガイド部材(図示せず)があり、溝部28は左パンチ37と右パンチ38と金型13(底部)とこのガイド部材で作られる空間で、コンデンサ成形粉末41が投入される。左パンチ37と右パンチ38が動いて、左右パンチの先端間距離で溝部28の容量が決まる。また、リード線42の位置は、左パンチ37と右パンチ38のちょうど中央に位置する。左パンチと右パンチの位置を動かす際は、リード線42の位置が常に中央に来るように左右同量づつ動かす。このような機構は、油圧あついはボールネジなど様々な要素で構成することができる。
【0026】
図9に示すように、横押し成形の工程は、(a)まず粉末供給箱6を溝部28の上側に移動する。(b)コンデンサ成形粉末41が溝部28に投入される。(c)上蓋29を下降させ溝部28の上側を閉じる。(d)左パンチ37と右パンチ38が動いて、コンデンサ成形粉末41を圧縮する。(e)上蓋29を上昇させ、リード線42を所定の位置で切断する。(f)成形されたコンデンサ素子40を電子天秤17側に移動する。となる。良品トレイ16への搬送、イジェクトボックス26への廃棄は、縦押し成形工程と同じである。コンデンサ成形粉末41の投入量は、左パンチ37と右パンチ38の基準位置を変更することによる。縦押し成形では下パンチのみを動かすが、横押し成形では、前記のように左右同量づつ動かすために左パンチ37と右パンチ38が共に動くので、調整量は左右の2つの和となる。
【0027】
図11は、コンデンサ素子の重量を区分する振分け図である。コンデンサ素子40は、例えば所定の重量の±5%が規格(重量の許容値)とする。これに相当するのが、第2上限値と第2下限値で、良品と不良品を分ける境界となる。重量が第2上限値と第2下限値を超える範囲(HHまたはLL)にあるコンデンサ素子は、不良品と判定する。第2上限値と第2下限値の範囲内に第1上限値と第1下限値が定められる。重量が第1上限値と第1下限値を超える範囲(HI〜HHまたはLO〜LL)にあるコンデンサ素子は、縦押し成形では下パンチの基準位置が、横押し成形では左パンチと右パンチの基準位置が補正される。すなわち、基準位置の補正は、重量が良品の範囲にあっても、第2上限値と第2下限値に近い範囲では、補正を行なうものである。第1上限値と第1下限値が補正を行なうか、行なわないかを分ける境界となる。第1上限値と第1下限値の値を第2上限値と第2下限値の範囲内に定めて、補正する範囲を広げ、良品が取れる割合を多くしている。
【0028】
図12は、縦押し成形部を有する成形装置100における、パネル操作部の画面の一例である設定画面を示す。カーソルを入力したい項目に合わせて、数値を入力しエンターキーを押して設定を行なう。下パンチの基準位置は、金型13の上面からの長さ(記号Rpで表わす)であり、例えば−20mmなどと設定する。この値はマイナスの値としている。第1上限値と第1下限値は、例えば±3%と指定する。第2上限値と第2下限値は例えば±5%と指定する。範囲外重量の連続する回数(記号Dcで表わす)は、1〜9が設定可能で、例えば5回などと設定する。下パンチの現在の基準位置(記号Ppで表わす)は、何度か補正された場合の現在の基準位置を示す。設定画面でRpを設定すると、同時にPpにも同じ値が設定される。
【0029】
図13は、縦押し成形部を有する成形装置100における、コンデンサ素子の重量補正の手順を示すフローチャートである。コンデンサ素子は、コンデンサ成形粉末の金型への供給(S52)、電子天秤による測定(S54)、良品としての搬送(S66)などがシーケンシャルに実行される。1つのコンデンサ素子の生成が終了するとサイクルが完了し次のコンデンサ素子の成形に入る。1サイクルは本実施例では6秒である。従って、成形されたコンデンサ素子の重量による補正は必ず次のコンデンサ素子のタンタル粉末投入量にフィードバックできる。一方、これらを同時並行して行なうことも可能である。例えば、重量の測定結果の結果が出る前に次のタンタル粉末の金型への投入が終了しているなら、補正がかかるのはさらに次のコンデンサ素子となる。この場合は、生産スピードは上がるが、その分だけ補正がかかるのは遅くなる。HHまたはLLとなる測定結果が、所定の回数(Dc)分連続する原因は、設定画面の設定不良、下パンチの駆動機構や制御回路の故障などである。ここではコンデンサ素子の製造を停止させたが、下パンチをイニシャルの位置に戻して再度基準位置に戻すようにリトライ動作をさせ、それでも同じ結果なら停止とすることもできる。また、制御回路等を2重にして切り替え、装置を停止させないようにもできる。
【0030】
図14は、縦押し成形部を有する成形装置100における、コンデンサ素子の重量を判定する振り分け処理ルーチンのフローチャートである。図11に示す振り分けに従って判定している。下パンチの位置を補正する場合、コンデンサ生成粉末を減量するなら、‘修正された基準位置=Pp(現在の基準位置)+Rp×(補正率÷100)’で下パンチの位置を求めている。Ppはマイナスの値なので、Rp×(補正率÷100)を加えることは、左辺の「修正された基準位置」が、マイナスのより小さな値となる。つまり粉末の投入量が減量される。コンデンサ生成粉末を増量するなら、‘修正された基準位置=Pp(現在の基準位置)−Rp×(補正率÷100)’で計算し、Ppから(Rp−Rp×(補正率÷100))を引いている。そのため、左辺の「修正された基準位置」は、マイナスのより大きな値となる。つまり粉末の投入量が増量される。左辺の「修正された基準位置」は、新しい「現在の基準位置」となるので、例えば増量の補正が続いた場合、その分が累積されて、下パンチの位置は当初の供給基準位置Rpからは離れてゆく。
【0031】
図15は、縦押し成形部を有する成形装置100において、第1のパラメータを設定して運転された場合(試行1)の重量の分布図である。第1のパラメータは、コンデンサ素子の基準の重量が1.200gである。第2上限値と第2下限値を±5%とし、第2上限値が1.260g、第2下限値が1.140gとした。第1上限値と第1下限値が±3%で、第1上限値が1.236g、第1下限値が1.164gとした。コンデンサ素子の外径は5.09mmで、供給基準位置(Rp)は−28mmとした。補正率は0.5%で、0.14mmとした。すなわち、下パンチは駆動機構によって0.14mmづつ歩進できるものとする。Dg(圧縮密度)は5.38g/mmとした。電子天秤は0.001gの測定精度を有する。図15に示すように、最初(1サイクル目)のコンデンサ素子の重量は1.112gで、軽すぎてLLの範囲にあった。下パンチの基準位置が増量側に変更され、2サイクル目は1.129gとなって重量は増えた。しかしまだ軽すぎてLLの範囲にある。2度目の補正をかけ、3サイクル目からはLOの良品の範囲に入った。重量は次第の重くなってOKの範囲には10サイクル目で入っている。19サイクル目では急に重量が軽くなっている。コンデンサ素子の重量は、コンデンサ生成粉末の粒度分布、流動性、粒子の形状、添加されたバインダの性質などによって左右される。20サイクル目の時点では、結局、増量の補正が10回行なわれているから、1.4mm(=0.14mm×10)だけ、下パンチの基準位置が下降され、現在の基準位置が−29.4mmになっていることを示す。
【0032】
図16は、縦押し成形部を有する成形装置100において、第2のパラメータを設定して運転された場合(試行2)の重量の分布図である。第2のパラメータは、コンデンサ素子の基準の重量が1.500gである。第2上限値と第2下限値を±5%とし、第2上限値が1.575g、第2下限値が1.425gとした。第1上限値と第1下限値が±3%で、第1上限値が1.545g、第1下限値が1.455gとした。コンデンサ素子の外径は5.09mmで、供給基準位置(Rp)は−32mmとした。補正率は0.5%で、0.16mmとした。すなわち、下パンチは駆動機構によって0.16mmづつ歩進できるものとする。Dg(圧縮密度)は6.52g/mmとした。電子天秤は0.001gの測定精度を有する。図20に示すように、最初(1サイクル目)のコンデンサ素子の重量は1.445gで、LOの範囲にあった。下パンチは増量側に変更されたが、2サイクル目は、1.438gと逆に減っているが、LOの範囲にはある。LOの範囲からはOKの範囲へは、9サイクル目で入っている。それまで7回増量側に補正されている。その後、18サイクル目と20サイクル目に、重量が軽くなりLOの領域に戻っている。30サイクル目では急に重量が軽くなり、LLの不良品が成形されている。その後は、LOの範囲に5回入っている。46サイクル目の時点では、結局、増量の補正が16回行なわれているから、2.56mm(=0.16mm×16)だけ、下パンチの基準位置が下降され、現在の基準位置が−34.56mmの位置になっていることを示す。なお、第2のパラメータでのリード線の重量は0.465gで、リード線の重量比率は3%(=0.465g÷1.500g×100%)である。
【0033】
図17は、縦押し成形部を有する成形装置100において、第2のパラメータ2を設定して運転された場合(試行3)の重量の分布図である。1サイクル目と3サイクル目にLLの不良品が成形されている。補正は全部で14回、増量側に行なわれているから、34サイクル目の時点では、2.24mm(=0.16mm×14)だけ、下パンチの基準位置が下降され、現在の基準位置が−34.24mmの位置になっていることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、縦押し成形部あるいは横押し成形部を有するいずれのコンデンサ素子の成形装置でも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による内部に縦押し成形部を有するコンデンサ素子の成形装置の平面図である。(実施例1)
【図2】図1の成形装置の左側面図である。(実施例1)
【図3】図1の成形装置を構成する主筐体の正面図である。(実施例1)
【図4】図1の成形装置を構成する主筐体の左側面図である。(実施例1)
【図5】図1の成形装置を構成する副筐体の正面図である。(実施例1)
【図6】図1の副筐体の左側面図である。(実施例1)
【図7】縦押し成形工程を示す。(a)粉末供給箱を筒部の上側に向けて移動する。(b)コンデンサ成形粉末が筒部に投入する。(c)粉末供給箱が元の位置に引き戻され、上パンチの下降を開始する。(d)コンデンサ成形粉末を圧縮する。(e)は圧縮後、下パンチと上パンチを上昇させコンデンサ素子を金型の上側に押し出す。(f)リード線をワイヤカッタで切断する。
【図8】縦押し成形工程を示す。(a)コンデンサ素子を第1搬送手段でつかみ電子天秤側に移動する。(b)コンデンサ素子を電子天秤側に載せ、コンデンサ素子の重量を電子天秤で測定する。(c)重量が適正なら第2搬送手段で良品トレイに運ぶ。重量が適正でないならイジェクトボックスに集める。
【図9】横押し成形工程を示す。(a)粉末供給箱を移動して溝部にコンデンサ成形粉末を投入する。(b)上蓋を下降させる。(c)上蓋で溝部の上側を閉じる。(d)コンデンサ成形粉末を左パンチと右パンチで圧縮してコンデンサ素子に成形する。(e)リード線を所定の位置で切断する。(f)コンデンサ素子を金型の孔を通して電子天秤側に移す。
【図10】一般的な3種類のタンタルコンデンサの断面図である。
【図11】本発明によるコンデンサ素子の重量を区分する振分け図である。
【図12】本発明による縦押し成形部を有する成形装置における、パネル操作部の画面の一例である設定画面を示す。
【図13】本発明による縦押し成形部を有する成形装置における、コンデンサ素子の重量補正の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明による縦押し成形部を有する成形装置における、コンデンサ素子の重量を判定する振り分け処理ルーチンのフローチャートである。
【図15】本発明による縦押し成形部を有する成形装置において、第1のパラメータを設定して運転された場合(試行1)の重量変動の分布図である。
【図16】本発明による縦押し成形部を有する成形装置において、第2のパラメータを設定して運転された場合(試行2)の重量変動の分布図である。
【図17】本発明による縦押し成形部を有する成形装置において、第2のパラメータを設定して運転された場合(試行3)の重量変動の分布図である。
【符号の説明】
【0036】
1 主筐体
2 副筐体
3、4 ACサーボモータ
5 粉末リザーバ
6 粉末供給箱
7 ワイヤカッタ
9 ワイヤスプールホルダ
10 ワイヤ送り機構
11 制御部
12 パネル操作部
13 金型
14 下パンチの駆動機構
15 トレイコンベア
16 良品トレイ
17 電子天秤
19 トレイステージ
20 第1搬送手段
22 第2搬送手段
26 イジェクトボックス
27 筒部
28 溝部
29 上蓋
35 上パンチ
36 下パンチ
37 左パンチ
38 右パンチ
40 コンデンサ素子
41 コンデンサ成形粉末
42 リード線
80 金属ケース型タンタルコンデンサ(TSM)
81 樹脂モールド型タンタルコンデンサ(TSD)
82 モールドチップ型タンタルコンデンサ(TMC)
85 陽極端子
86 陰極端子
100 成形装置
S50〜S65 制御ステップ
S70〜S83 制御ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ成形粉末を金型に投入し押し固めて作るコンデンサ素子の成形方法において、
前記コンデンサ素子を成形する毎に、その重量を電子天秤で測定する段階と、
前記コンデンサ素子の良品の重量が、第2上限値と第2下限値の範囲にあり、前記第2上限値と前記第2下限値の範囲内に第1上限値と第1下限値が定められ、前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にあるかを判別する段階と、
前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合を不良品、前記コンデンサ素子の重量が、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にある場合を良品として分離する段階と、
前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、前記タンタル粉末の前記金型への投入量を、あらかじめ設定した補正率に基づいて増量または減量する段階とが備えられていることを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【請求項2】
前記コンデンサ素子の重量が(a)前記第2上限値を超えた範囲または(e)前記第2下限値を超えた範囲にあって、これがあらかじめ設定された回数連続した場合、前記コンデンサ素子の製造を停止する段階がさらに備えられたことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項3】
筒部を有する金型と、前記筒部にコンデンサ成形粉末を投入する粉末供給箱と、前記筒部の下側に装着される下パンチと、前記筒部の上側に装着され中央にリード線が通されて、前記下パンチと合わせて前記筒部内に投入されたコンデンサ成形粉末を押し固める上パンチとを含んで構成された縦押し成形部と、
前記コンデンサ素子を成形する毎にその重量を測定する測定部と、
前記コンデンサ素子の良品の重量範囲である第2上限値と第2下限値、前記第2上限値と前記第2下限値の範囲内に定められる第1上限値と第1下限値、前記下パンチの基準位置、前記下パンチの位置を補正する補正率とが設定されるパネル操作部と、
前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、これを不良品としてイジェクトボックスに排出し、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にある場合、良品トレイに集積し、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、前記下パンチの基準位置を、前記補正率に基づいて変更する制御部とが備えられたことを特徴とするコンデンサ素子の成形装置。
【請求項4】
横長の溝部を有する金型と、前記溝部にコンデンサ成形粉末を投入する粉末供給箱と、前記コンデンサ成形粉末が前記溝部に投入された後に前記溝部の上側を閉じ、中央にリード線が通された上蓋と、前記溝部の左側に装着される左パンチと、前記溝部の右側に装着され、前記左パンチと合わせて前記溝部内に投入された前記粉末を押し固める右パンチとを含んで構成された横押し成形部と、
前記コンデンサ素子を成形する毎にその重量を測定する測定部と、
前記コンデンサ素子の良品の重量範囲である第2上限値と第2下限値、前記第2上限値と前記第2下限値の範囲内に定められる第1上限値と第1下限値、前記左パンチと前記右パンチの基準位置、前記左パンチと前記右パンチの位置を補正する補正率とが設定されるパネル操作部と、
前記コンデンサ素子の重量が、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、これを不良品としてイジェクトボックスに排出し、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(c)前記第1上限値と前記第1下限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にある場合、良品トレイに搬送し、(a)前記第2上限値を超えた範囲にあるか、(b)前記第1上限値と前記第2上限値の間にあるか、(d)前記第1下限値と前記第2下限値の間にあるか、(e)前記第2下限値を超えた範囲にある場合、前記左パンチと前記右パンチの基準位置を前記補正率に基づいて変更する制御部とが備えられたことを特徴とするコンデンサ素子の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−16804(P2008−16804A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346273(P2006−346273)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(501215820)OPPC株式会社 (8)
【Fターム(参考)】