説明

コントラスト検査装置

【課題】プロジェクターのライトバルブに用いられる液晶パネル10のコントラストを、スクリーンを用いずに検査する。
【解決手段】光源110により放出された光は、入射側集光レンズ32によって集光され、このうち、S方向成分が偏光ビームスプリッター40を透過して液晶パネル10の一部に照射される。液晶パネル10で反射した光のうち、P方向成分が偏光ビームスプリッター40によって反射し、出射側集光レンズ34によって集光されて、受光部120に導かれる。検査部は、液晶パネル10に白画像が表示されたときの照度情報と黒画像が表示されたときの照度情報とを受光部120から取得して当該液晶パネル10のコントラストを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクターのライトバルブに用いられる液晶パネルのコントラストを検査するコントラスト検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、電子機器の表示装置のほか、プロジェクターのライトバルブとしても用いられている。プロジェクターにおいては、液晶パネルによって対角で1インチ程度の変調像が生成され、この画像が拡大されてスクリーンに投写される。液晶パネルで生成される変調像は、非常に小さいので、当該液晶パネルを検査する場合、実機と同様にスクリーンに拡大投写された画像を目視や画像解析などによって検査する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−94140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スクリーンに投写された画像を検査するためには、スクリーンを設置するための広い空間を必要とするために、検査装置の設置場所が限られてしまう。
そこで本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、スクリーンを用いずに液晶パネルのコントラストを検査することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明に係るコントラスト検査装置にあっては、光源と、前記光源により放出された光を第1の光束に集光して液晶パネルの一部に照射するとともに、前記液晶パネルからの出射光を第2の光束に集光して受光部に導く光学部材と、前記受光部に導かれた第2の光束に基づいて前記液晶パネルのコントラストを検査する検査部と、を具備することを特徴とする。本発明によれば、光源による光が第1の光束に集光されて液晶パネルの一部に照射されるとともに、当該液晶パネルの出射光(透過光または反射光)が第2の光束に集光されて受光部に導かれるので、スクリーンや、スクリーンを設置する空間を必要としない。また、光源による光を第1の光束に集光して液晶パネルの一部に照射するので、安価で低消費電力の光源を用いることができる。
【0006】
本発明において、前記液晶パネルの一部に照射された前記第1の光束と前記受光部に導かれた前記第2の光束との比を1:1とした構成が好ましい。この構成によれば、受光部は、液晶パネルから出射光をほぼそのままで入射するので、液晶パネルを適切に検査することが可能になる。
また、前記光源は、LEDである態様も好ましい。本発明では、液晶パネルに対し光を全面ではなく、一部に集光して照射する。このため、他のランプと比較的して出力が弱いLEDであっても、ハロゲンランプやキセノンランプと同等な光束で照射することができる。
ここで、前記光学部材としては、検査対象となる液晶パネルが反射型であれば、入射側偏光子、入射側集光レンズ、偏光ビームスプリッター、位相差補償板、出射側偏光子および出射側集光レンズを含む態様が好ましく、また、透過型であれば、入射側偏光子、入射側集光レンズ、出射側偏光子および出射側集光レンズを含む態様が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】検査対象となる液晶パネルの構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るコントラスト検査装置の光学構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係るコントラスト検査装置の構成を示すブロック図である。
【図4】第2実施形態に係るコントラスト検査装置の光学構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るコントラスト検査装置において、検査対象となる液晶パネル10の構成を示す斜視図である。この液晶パネル10は、プロジェクターのライトバルブとして用いられる反射型であり、表示部本体12が図において上側から入射した光を上側に反射して変調像を生成する。表示部本体12は、変調像の生成部分で開口したフレーム14にケーシングされている。
【0009】
表示部本体12は、良く知られたように複数の画素毎に個別の画素電極を有する素子基板と、複数の画素にわたって共通のコモン電極を有する対向基板とが一定の間隙を保って電極形成面が互いに対向するように貼り合わせられるとともに、この間隙に液晶が挟持された構造である。
表示部本体12には、FPC(Flexible Printed Circuits)基板20の一端が接続されている。FPC基板20には、ベアチップのドライバーIC22が、COF(Chip On Film)技術によって実装されるとともに、表示部本体12に接続され一端と反対側では、端子部24において複数の端子26が設けられている。端子部24が、後述する検査部のコネクターに接続されて、当該検査部から複数の端子26を介してそれぞれ各種の制御信号や映像信号が供給されると、ドライバーIC22が表示部本体12を駆動し、これにより表示部本体12が、当該映像信号に応じた変調像を生成する構成となっている。
【0010】
図2は、第1実施形態に係るコントラスト検査装置1の光学系を示す概略図である。
コントラスト検査装置1は、光源110と光学部材と受光部120とを有し、光学部材は、入射側集光レンズ32、入射側偏光子52、偏光ビームスプリッター40、位相差補償板60、出射側偏光子54および出射側集光レンズ34を含む構成となっている。
このような構成において、検査対象となる液晶パネル10は、図の位置において入射側集光レンズ32の光軸30aに対し、入射面(出射面)が下向きとなるようにセットされる。
【0011】
光源110は、液晶パネル10に向けて光を出力するものであり、本実施形態ではLED(Light Emitting Diode)が用いられる。絞り72は、光源110から出力される光束を一部に制限する。入射側集光レンズ32は、光源110から発せられた拡散光を入射して、液晶パネル10に向けて集光する。
入射側偏光子52は、入射光のうち、ある一方向、例えば次の偏光ビームスプリッターの透過成分であるS方向成分の光を透過する。偏光ビームスプリッター40は、入射側偏光子52を通過したS方向成分の光を透過し、P偏光成分の光を反射するものであって、例えばワイヤーグリッド偏光フィルムなどが用いられる。ここで、偏光ビームスプリッター40の反射面は、図において光軸30aに対し反時計回りで45度にセットされている。
【0012】
位相差補償板60は、液晶パネル10の位相差を、光軸30aを中心にした回転角度に応じて補償する。なお、実際には、アクチュエーター62が位相差補償板60を回転させる。
本実施形態において液晶パネル10に入射する光束の直径φaは、表示部本体12における表示サイズよりも小さくなるように、入射側集光レンズ32および絞り72が調整される。このため、表示部本体12のうち、一部の画素についてのみ光が入射することになる。
【0013】
偏光ビームスプリッター40に対し、図において3時方向(反射側)に設けられた出射側偏光子54は、偏光ビームスプリッター40の反射成分であるP方向成分の光を透過する。出射側集光レンズ34は、液晶パネル10および偏光ビームスプリッター40で反射した光束を入射して、受光部120に向けて集光する。なお、出射側集光レンズ34の光軸30bは、光軸30aに対して偏光ビームスプリッター40の反射面において例えば90度にセットされている。
受光部120はセンサー122を有する。当該センサー122は、受光面に受光した光の例えば照度(単位面積当たりの光束の量)を検出して、その照度情報を出力する。本実施形態においてセンサー122に入射する光束の直径φbは、液晶パネル10に入射する光束の直径φaと同じになるように、すなわちセンサー122に入射する光束が液晶パネル10に入射する光束と同じなるように出射側集光レンズ34が調整されている。
【0014】
このような構成において、光源110から放射される光は、光源110から離れるにつれて拡がるが、絞り72を経て入射側集光レンズ32に入射すると、今度は逆に液晶パネル10に向かうにつれて集光することになる。入射側集光レンズ32から出射された光のうち、S方向成分だけが、入射側偏光子52および偏光ビームスプリッター40を透過し、位相差補償板60を経て液晶パネル10に対して、直径φaの光束で入射する。
液晶パネル10に入射した光は、変調されつつ反射する。このとき当該反射光は、再び拡がりを持つことになる。液晶パネル10の反射光は、位相差補償板60を再度経て偏光ビームスプリッター40に入射する。この入射光のうち、P偏光成分だけが反射して、出射側偏光子54を透過する。この透過光は拡がりを持っているが、出射側集光レンズ34に入射すると、今度は逆に受光部120に向かうにつれて集光して、センサー122において液晶パネル10と同じ直径の光束で入射する。
【0015】
図3は、コントラスト検査装置1の電気的な構成を示す図である。
図に示されるように、検査部80は、コネクター82を含む。このコネクター82に、検査対象となる液晶パネル10の端子部24が接続されると、検査部80は、次のように動作する。
すなわち、検査部80は、第1に、コネクター82に端子部24が接続された液晶パネル10に対し、例えば画素のすべてを白画素にする白画像を表示させ、次に黒画素にする黒画像を表示させる映像信号および制御信号を供給する。検査部80は、第2に、受光部120(センサー122)から、白画像が表示されているときの照度情報と黒画像が表示されているときの照度情報とから、表示された黒画像に対する白画像の明るさの比を求める。検査部80は、第3に、アクチュエーター62を操作して、位相差補償板60を光軸に対して所定方向(例えば光源110からみて時計回りに)微小角度(例えば0.2度)だけ回転させる。以降、検査部80は、第1から第3までの動作を上記比が最大値を迎えるまで繰り返す。この動作が繰り返し実行されると、位相差補償板60が微小角度ずつ回転しながら、液晶パネル10において黒画像に対する白画像の明るさの比が求められる。そして、上記比が最大値を迎えたとき、位相差補償板60が液晶パネル10の位相差を最適に補償する地点に調整されたとみなすことができる。このため、検査部80は、当該比の最大値を当該液晶パネル10のコントラスト(比)として出力する。
なお、液晶パネル10の位相差は個体毎に異なるが、ある範囲におおよそ限られているので、位相差補償板60を360度全周にわかって回転させる必要はない。このため、検査に要する時間は短くて済む。
【0016】
第1実施形態によれば、光源110から発せられた拡散光は、入射側集光レンズ32によって集光されて、液晶パネル10の一部に照射される。当該液晶パネル10の反射光は、再び拡散光になるが、出射側集光レンズ34によって集光されて受光部120に導かれるので、検査にあたってスクリーンを用いる必要がなく、設置場所に制限を受けにくい。このため、省スペースで検査することが可能である。
また、白と黒との比であるコントラストの検査にあたっては、黒の検出時における周辺光が誤差の大きな要因となり得るが、本実施形態にあっては、受光部120には、液晶パネル10の反射光が集光されて入射するので、迷光の影響を受けにくい。このため特に本実施形態のように、高いコントラストの表示が可能である反射型の液晶パネル10について、コントラストの検査精度を高めことが可能である。
液晶パネル10の全面ではなく一部に、集光した光を照射するので、出力の弱いLEDを光源110に用いても、ハロゲンランプやキセノンランプと同等な光束を液晶パネル10に入射させることができる。このため、プロジェクターに組み込む前の液晶パネル10を、安価に、かつ、低消費電力で、組み込んだときと同等な光束でコントラスト検査することが可能になる。
さらに、本実施形態では、液晶パネル10に照射される光束とセンサー122に到達する光束とが同じである。このため、センサー122が検出する照度は、すなわち単位面積あたりの光束の量は、液晶パネル10からの出射光の照度と同等になるので、液晶パネル10の性能をより正確に検査することも可能になる。
【0017】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、透過型の液晶パネル10を検査対象としている。透過型の液晶パネル10の構成については、図2とほぼ同等であるが、図2において上側から入射した光が変調されて下側に出射するので、フレーム14においては入射側と同じように出射側も開口している。
【0018】
図4は、第2実施形態に係るコントラスト検査装置の光学系を示す概略図である。
第2実施形態では、透過型の液晶パネル10を検査対象とするので、出射側偏光子54、出射側集光レンズ34および受光部120を、光軸30aと同軸に、液晶パネル10の背面出射側に配置させた構成となっている。
【0019】
このような第2実施形態においても、透過型の液晶パネル10のコントラストを検査するにあたって、第1実施形態と同様に、スクリーンを用いる必要がなく、迷光の影響を受けにくいので、検査の精度を高めることも可能になる。
また、プロジェクターに組み込む前の透過型の液晶パネル10を、安価に、かつ、低消費電力で、組み込んだときと同等な光束でコントラスト検査することが可能になる。さらに、液晶パネル10に照射される光束とセンサー122に到達する光束とが同じにすれば、液晶パネル10の性能をより正確に検査することも可能になる。
【0020】
本発明は、上述した第1実施形態や第2実施形態に限られず、次のように種々の応用・変形が可能である。
例えば、第1および第2実施形態では、それぞれ光源110にLEDを用いたが、ハロゲンランプやキセノンランプなどのように液晶パネル10を組み込むプロジェクターと同タイプのものや、固体光源としてLED以外の例である半導体レーザーを用いても良い。ハロゲンランプやキセノンランプなどを用いることで、組み込むプロジェクターと同波長の光で検査することが可能になる。さらに、本実施形態では、集光するとともに液晶パネル10の一部に入射するために、光源にハロゲンランプやキセノンランプなどを用いる場合でも光量を落とすことができるので、ランプ寿命の延命化が図られる。このため、検査コストを低減することも可能になる。
【0021】
実施形態においては、入射側偏光子52を入射側集光レンズ32の出射側に配置させたが、入射側でも良い。同様に、出射側偏光子54を出射側集光レンズ34の入射側に配置させたが、出射側でも良い。
また、実施形態においては、絞り72とは別の絞りを、出射側集光レンズ34と受光部120との間に設けて、センサー122に到達する光束を自在に調整しても良い。
【符号の説明】
【0022】
1…検査装置、10…液晶パネル、32…入射側集光レンズ、34…出射側集光レンズ、40…偏光ビームスプリッター、52…入射側偏光子、54…出射側偏光子、60…位相差補償板、80…検査部、110…光源、120…受光部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源により放出された光を第1の光束に集光して液晶パネルの一部に照射するとともに、前記液晶パネルからの出射光を第2の光束に集光して受光部に導く光学部材と、
前記受光部に導かれた第2の光束に基づいて前記液晶パネルのコントラストを検査する検査部と、
を具備することを特徴とするコントラスト検査装置。
【請求項2】
前記液晶パネルの一部に照射された前記第1の光束と前記受光部に導かれた前記第2の光束との比を1:1とした
ことを特徴とする請求項1に記載のコントラスト検査装置。
【請求項3】
前記光源は、LEDである
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコントラスト検査装置。
【請求項4】
前記液晶パネルは、反射型であり、
前記光学部材として、
入射側偏光子、入射側集光レンズ、偏光ビームスプリッター、位相差補償板、出射側偏光子、出射側集光レンズを含む
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のコントラスト検査装置。
【請求項5】
前記液晶パネルは、透過型であり、
前記光学部材として、
入射側偏光子、入射側集光レンズ、出射側偏光子、出射側集光レンズを含む
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のコントラスト検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−208181(P2012−208181A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71853(P2011−71853)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】