説明

コントローラ、効果装置セットおよび電気弦楽器

【課題】操作性に優れ、演奏に支障をきたすことなく、二胡に代表される弦楽器から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置に対して所定の信号を出力することができるコントローラ、効果装置セットおよび電気弦楽器を提供すること。
【解決手段】コントローラ4の筐体は、操作ボタン41乃至45が配設されている操作面46、その操作面46と対向して棹23に被覆される被覆面47、および、操作面46の長手方向両縁部から被覆面47に向かって延びる側面48a,48bを有し、扁平な棒状に形成されている。よって、コントローラ4を弦241,242と対向する二胡の棹23の面に被覆面47が覆われるように取着することができる。これにより、操作面46は弦241,242と棹23との間に位置し、演奏者は難なく操作ボタン41乃至45を操作でき、また、演奏者の手が筐体に衝突せず、演奏に支障をきたすこともない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラ、効果装置セットおよび電気弦楽器に関し、特に、操作性に優れ、演奏に支障をきたすことなく、二胡に代表される弦楽器から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置に対して所定の信号を出力することができるコントローラ、効果装置セットおよび電気弦楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、弦楽器の一つとして二胡が知られている。この二胡は、「擦弦楽器の一種で、2本の弦を間に挟んだ弓で弾く。琴筒はニシキヘビの皮で覆われている。原型楽器は、唐代〜宋代にシルクロードを経由して西方より伝来したとされている。その後劉天華などにより改良を重ねられ、現在普及している形は、1950年代から(文化大革命の停滞期を挟み)80年代ごろに出来上がったものが基本となっている。」(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)。
【0003】
一方、この二胡に関し、次の特許文献1には、「静音効果を高めるため、二胡の本体前面の共振部分1に、蛇皮などのかわりに、ほとんど共振しない材料(木材など)を使用する。これにより弦2に与えられた振動は、駒3より共振部分1でほとんど共振せず、これにより本体での共鳴も防げ、音量は大幅に縮小する。演奏者本人が、演奏音を聞くには、駒3に直接接続された本体内部にあるピックアップ4により電気信号化されたものを、本体側面にあるヘッドフォン接続口5よりヘッドフォンを用いる。」と記載され、電気二胡に関する技術が開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第3117409号公報(段落第「0006」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている電気二胡では、二胡から発生される楽音に音量に関する効果しか付与できなかった。そこで、本出願人は、二胡に関し、音量に加え、リバーブ、ディレイ、オクターブ等の音色に関する効果を付与することができる効果装置を考案した。しかし、この場合、付与する効果を演奏者に選択させるための操作子が複数存在し、それら複数の操作子を、単に、上述した特許文献1に開示されているように二胡本体に配設した場合には、操作性に劣り、演奏の邪魔になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、操作性に優れ、演奏に支障をきたすことなく、二胡に代表される弦楽器から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置に対して所定の信号を出力することができるコントローラ、効果装置セットおよび電気弦楽器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載のコントローラは、胴敷と、その胴敷上に設置される中空状の共鳴胴と、その共鳴胴から立設する棹と、その棹の一端側と前記胴敷の底面に設置されているテールピースとの間で前記共鳴胴の前面に設置されている駒を介して張設される弦と、その弦を前記棹の途中で束ねる千斤とを備えた弦楽器から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置とは別体に前記弦楽器の棹に着脱可能に取着され、前記効果装置に対して所定の信号を出力するものであって、演奏者によって操作され前記所定の信号を出力することを指示する操作子と、その操作子が配設され帯状に延びる操作面、その操作面と対向して前記棹に被覆される被覆面、および、前記操作面の長手方向両縁部から前記被覆面に向かって延びる側面を有し、扁平な棒状に形成されている筐体とを備えている。
【0007】
請求項2記載のコントローラは、請求項1に記載のコントローラにおいて、前記筐体は、その長手方向の全長が前記共鳴胴の上面から前記千斤までの間隔よりも小さく、前記操作面と前記被覆面との間隔である最大高さが前記弦と前記棹との間隔よりも小さく、前記両側面の間隔である最大幅が前記棹の最大幅よりも小さく形成されている。
【0008】
請求項3記載のコントローラは、請求項1又は2に記載のコントローラにおいて、前記操作面は、前記被覆面に対して傾斜して形成されている。
【0009】
請求項4記載のコントローラは、請求項1から3のいずれかに記載のコントローラにおいて、前記操作面は、前記被覆面の長手方向に延びる両縁部の一方の縁部側に偏って形成されており、前記操作子は、前記操作面の長手方向に延びる中心線から前記一方の縁部側に偏って配設されている。
【0010】
請求項5記載のコントローラは、請求項1から4のいずれかに記載のコントローラにおいて、前記両側面のうち、前記操作面の長手方向に延びる縁部から前記被覆面までの距離が長い方の側面に配設され、前記操作子の操作状況を表示する表示装置を備えている。
【0011】
請求項6記載のコントローラは、請求項5に記載のコントローラにおいて、前記表示装置が配設される側面と、前記操作面とは鈍角に交差して形成されている。
【0012】
請求項7記載のコントローラは、請求項5又は6に記載のコントローラにおいて、前記所定の信号を前記効果装置に送信するケーブルの一端が導出する導出口を備え、その導出口を鉛直方向下方に向けて前記操作面と対面した場合、前記表示装置が配設される側面は、向かって左側の側面に形成されている。
【0013】
請求項8記載のコントローラは、請求項1から7のいずれかに記載のコントローラにおいて、前記筐体の長手方向における一端側は円弧状に形成されている。
【0014】
請求項9記載のコントローラは、請求項1から8のいずれかに記載のコントローラにおいて、前記筐体と前記棹とを連結する連結具が挿入され、前記筐体の長手方向において前記操作子を挟む位置に穿設されている連結口を備えている。
【0015】
請求項10記載のコントローラは、請求項1から8のいずれかに記載のコントローラにおいて、前記筐体に連結され前記棹を巻回した状態で前記棹を締め付ける締結バンドを備えている。
【0016】
請求項11記載のコントローラは、請求項1から10のいずれかに記載のコントローラにおいて、前記弦楽器は、二胡である。
【0017】
請求項12記載の効果装置セットは、前記効果装置と、請求項1から11のいずれかに記載のコントローラとを備えている。
【0018】
請求項13記載の電気弦楽器は、前記弦楽器と、前記効果装置と、請求項1から11のいずれかに記載のコントローラとを備えている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載のコントローラによれば、筐体は、操作子が配設され帯状に延びる操作面、その操作面と対向して前記棹に被覆される被覆面、および、前記操作面の長手方向両縁部から前記被覆面に向かって延びる側面を有し、扁平な棒状に形成されているので、弦と対面する棹の対向面に被覆面が覆われるように筐体を取着することができる。この部分に筐体を取着することで、操作面は弦と棹との間の空間に位置することになり、演奏者は難なく操作子を操作できる上、筐体が演奏者の手に衝突することがないので、演奏に支障をきたすことなく、二胡に代表される弦楽器から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置に対して所定の信号を出力することができるという効果がある。
【0020】
請求項2記載のコントローラによれば、請求項1に記載のコントローラの奏する効果に加え、筐体は、その長手方向の全長が前記共鳴胴の上面から千斤までの間隔よりも小さく、操作面と被覆面との間隔である最大高さが弦と棹との間隔よりも小さく、両側面の間隔である最大幅が棹の最大幅よりも小さく形成されているので、弦と対面する棹の対向面に筐体を取着したとしても、棹に沿って演奏者の手を移動させても、演奏者の手が筐体に衝突することがなく、筐体を取着した状態であっても、演奏に支障をきたすことがないという効果がある。
【0021】
請求項3記載のコントローラによれば、請求項1又は2に記載のコントローラの奏する効果に加え、弦と対向する棹の対向面に被覆面が被覆されるように筐体を弦楽器に取着した場合、被覆面と対向する操作面が弦と対面することになるが、操作面は被覆面に対して傾斜して形成されているので、操作面は弦を避けるように位置することになる。よって、操作子を操作する方向と弦とが干渉しないように操作面上に操作子を配設することができるという効果がある。
【0022】
請求項4記載のコントローラによれば、請求項1から3のいずれかに記載のコントローラの奏する効果に加え、操作面は、被覆面の長手方向に延びる両縁部の一方の縁部側に偏って形成されているので、筐体を棹に取着した場合、操作面は弦を一層避けるように位置することになり、更に、操作子は操作面の長手方向に延びる中心線から一方の縁部側に偏って配設されているので、操作子を操作する方向と弦とが干渉しないように操作面上に操作子を配設することができるという効果がある。
【0023】
請求項5記載のコントローラによれば、請求項1から4のいずれかに記載のコントローラの奏する効果に加え、操作子の操作状況を表示する表示装置は、両側面のうち、操作面の長手方向に延びる縁部から被覆面までの距離が長い方の側面に配設されているので、表示装置を配設し易い上、大きな表示装置を配設することができ、演奏者にとって見易い表示装置を配設することができるという効果がある。
【0024】
請求項6記載のコントローラによれば、請求項5に記載のコントローラの奏する効果に加え、表示装置が配設される側面と、操作面とは鈍角に交差して形成されているので、演奏状態において演奏者にとって見易い角度に表示装置を配設することができるという効果がある。
【0025】
請求項7記載のコントローラによれば、請求項5又は6に記載のコントローラの奏する効果に加え、表示装置が配設されている側面は、所定の信号を効果装置に送信するケーブルの一端が導出する導出口を鉛直方向下方に向けて操作面と対面した場合向かって左側の側面に形成されている。よって、導出口が共鳴胴側に向くように、筐体を弦と対向する棹の対向面に取着した場合には、里弦側(演奏状態において、演奏者側)に表示装置が向くように表示装置を配設することができ、演奏者にとって表示装置の表示を見易くすることができるという効果がある。
【0026】
請求項8記載のコントローラによれば、請求項1から7のいずれかに記載のコントローラの奏する効果に加え、筐体の長手方向における一端側は円弧状に形成されているので、その一端側が千斤側に向くように筐体を棹に取着した場合、千斤付近の演奏、操作を支障なく行うことができるという効果がある。
【0027】
請求項9記載のコントローラによれば、請求項1から8のいずれかに記載のコントローラの奏する効果に加え、連結口に挿入される連結具を介して筐体を棹に取着することができ、連結具を脱着することで、簡単に筐体を棹から着脱することができるという効果がある。
【0028】
請求項10記載のコントローラによれば、請求項1から8のいずれかに記載のコントローラの奏する効果に加え、筐体に連結され棹を巻回した状態で棹を締め付ける締結バンドを備えているので、締結バンドを締め付けることで、棹に何ら加工を施すことなく、筐体を棹に取着することができるという効果がある。
【0029】
請求項11記載のコントローラによれば、請求項1から10のいずれかに記載のコントローラの奏する効果に加え、弦楽器は二胡なので、操作性に優れ、演奏に支障をきたすことなく、二胡から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置に対して所定の信号を出力することができるという効果がある。
【0030】
請求項12記載の効果装置セットによれば、効果装置と、請求項1から11のいずれかに記載のコントローラとを備えているので、請求項1から11のいずれかに記載のコントローラと同様の効果を奏することができる上、効果装置によって二胡から発生する楽音に所定の効果を付与することができるという効果がある。
【0031】
請求項13記載の電気弦楽器によれば、前記弦楽器と、前記効果装置と、請求項1から11のいずれかに記載のコントローラとを備えているので、請求項12と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一つである電気二胡1の外観斜視図である。尚、本発明の一つであるコントローラは電気二胡1に含まれるコントローラ4が該当する。また、本発明の一つである効果装置セットは電気二胡1に含まれる効果装置3とコントローラ4とのセットが該当する。
【0033】
電気二胡1(コントローラ4)は、特に、操作性に優れ、演奏に支障をきたすことなく、二胡2から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置3に対して所定の信号を出力することができるものであり、主に、二胡2と、二胡2に底方に着脱自在に取着される効果装置3と、二胡2の棹23に着脱自在に取着されるコントローラ4とによって構成されている。
【0034】
二胡2は、主に、底方から胴敷21と、その胴敷21上に設置される共鳴胴22と、その共鳴胴から立設する棹23と、その棹23と並列に延びる弦24とによって構成されている。尚、本実施形態の弦楽器としては二胡2について説明するが、二胡2と同一構造を有する弦楽器であれば、京胡、中胡、高胡、低胡、板胡等であっても良い。
【0035】
胴敷21は、本来(効果装置3が取着されていない場合)、演奏者の太股上に載せられる二胡2のベースであり、その上に共鳴胴22が設置される。その底面には、鈎状の2本テールピース211(図3参照)が突設されており、この各テールピース211に一端がリング状に形成された2本の弦24の各々が引っかけられる。
【0036】
共鳴胴22は、六角柱状であって、横倒しされた状態で胴敷21の上に設置され、その内部は中空に形成されている。また、その琴皮221は、蛇の皮で形成されており、琴皮221の中心部に設置されている駒222を介して弦24の振動が伝達されて共振する。一方、琴皮221の反対面は花窓223と称され、装飾的な彫刻が施されている。この彫刻には、共鳴胴22から楽音がストレートに放音されるのを抑制する役割があり、楽音が花窓に当たることにより、その音量が60%〜70%絞られ、余韻の残る、哀愁のある、美しい音色となる。
【0037】
棹23は、その一端が胴敷21に支持され、共鳴胴22を貫通して立設されている(図3(a)参照)。また、棹23の他端側には側方に突出する2本の糸巻き231,232が上下に設けられており、この2本の糸巻き231,232の各々に、2本の弦24の各々が巻回されて固定される。
【0038】
弦24は、外弦241と、里弦242との2本で構成され、弦24(共鳴胴22の琴皮221)に向かって右方を外弦241、左方を里弦242とされている。尚、演奏する場合には、共鳴胴22の花窓223を演奏者左後側に向け左太股上に効果装置3を設置するので、演奏者側からすると、右方に(演奏者右手に近い方に)里弦242、左方に(演奏者右手から遠い方に)外弦241が位置することになる。
【0039】
弦24は、いずれも金属製であり、その太さは外弦241の方が里弦242よりも細く形成されている。また2本の弦24は、棹23の途中で千斤243によって束ねられており、千斤243から駒222までの区間を発音区と称され、この発音区が音程の出る区間となる。千斤243は、共鳴胴22の上に左肘を当てて腕を棹23に沿わせた状態で、中指の付け根から小指の付け根部分に相当する位置に設置される。そして、この弦24を図示しない弓によって擦るように弾くことで二胡2から振動が発生し、駒222、共鳴胴22の琴皮221、内部を介して花窓223から二胡2の楽音が発生することになる。
【0040】
効果装置3は、二胡2から発生する楽音を電気信号に変換することで、その楽音に音量の変化、音色(リバーブ、ディレイ、オクターブ、コーラス等)の変化の効果を付与する装置である。
【0041】
効果装置3には、二胡2の花窓223と対面するようにコンデンサマイク339(図3(a)参照)が内包されており、このコンデンサマイク339によって、花窓223から放音される二胡2本来の楽音を電気信号に変換することができる。尚、効果装置3の詳細については、図2乃至4を参照しながら後述する。
【0042】
コントローラ4は、図示しないケーブルを介して効果装置3に所定の信号を入出力する効果装置3のリモートコントローラであって、その所定の信号の入出力を指示する各種操作ボタン41乃至45が配設されている。
【0043】
コントローラ4は、扁平な棒状に形成されており、弦24と対面する棹23の対向面であって、その各端部が千斤243と共鳴胴22の上面との間に所定間隔を空けた千斤243と共鳴胴22との間に取着されている。換言すれば、コントローラ4は、その長手方向の全長が千斤243と共鳴胴22との間隔より小さく、更に、棹23と弦24との間隔よりも薄く形成されているので、かかる棹23の部分にコントローラ4を取着することができる。棹23は、奏法上、左手を擦る重要な箇所ではあるが、コントローラ4は、その棹23に対して、演奏上邪魔にならず、且つ、操作ボタン41乃至45が操作し易いように構成されている。
【0044】
また、コントローラ4の一端側には、効果装置3と接続される図示しないケーブルが導出する導出口59が突設されており、コントローラ4は、その導出口59が共鳴胴22側に向くように棹23に取着されるので、導出口59と効果装置3との間隔が近くなり、ケーブルが演奏の邪魔になることも抑制されている。
【0045】
一方、導出口59とは反対側の千斤243付近に位置する一端側は、扁平な円弧状に形成されているので、千斤243付近を操作する場合であってもコントローラ4が邪魔になることがない。尚、コントローラ4の詳細については、図5及び図6を参照しながら後述する。
【0046】
次に、図2乃至図3を参照して、効果装置3について詳細に説明する。図2(a)は効果装置3の外観斜視図であり、図2(b)は効果装置3の平面図である。図3(a)は電気二胡1の底方部分の縦断面図であり、図3(b)は電気二胡1の底面図である。
【0047】
図2(a)に示すように、効果装置3は、主に、ベース筐体31と、そのベース筐体31の前方一端側に連設されている前方筐体32と、その前方筐体32との間にベース筐体31を挟んでベース筐体31の後方一端側に連設されている後方筐体33とによって構成されている。
【0048】
ベース筐体31は、その上面が二胡2(胴敷21)が設置される設置面311とされ、その設置面311には、底面312まで貫通する弦交換口313と、3つの連結口314とが開口されている。設置面311の長手方向の長さは約140mm、最大幅(前方筐体32側の端部の幅)は約84mmの長さで構成されている。
【0049】
弦交換口313は、設置面311の前方筐体32側に矩形状に開口し、更に、図3(a)、(b)に示すように、二胡2を設置面311に取着した場合に、胴敷21のテールピース211を臨み、且つ、弦24が通過可能な隙間が形成される位置に開口されている。よって、この弦交換口313を介して効果装置3を二胡2に取着している状態であっても、テールピース211に引っかけられている弦24を交換することができる。尚、この弦交換口313の底面312側の周縁部は、弦24を交換し易いよう円弧状に形成されている。
【0050】
3つの連結口314は、弦交換口313の縁部に2つ、後方筐体33の手前側に1つ穿設されている。各連結口314は、図4(c)に示すように、効果装置3(ベース筐体31)と胴敷21と連結するボルト215を挿入する孔である。このボルト215を介して効果装置3(ベース筐体31)を二胡2(胴敷21)に取着することができ、このボルト215を着脱することで、簡単に効果装置3(ベース筐体31)を二胡2(胴敷21)に着脱することができる。
【0051】
図3(a)に示すように、設置面311の反対面である底面312には、設置面311側に窪み、長手方向に延びる両縁部間に亘って延びる凹部315が形成されている。一方、胴敷21にも、その底面の長手方向に延びる両縁部間に亘って延びる凹部212が凹設されている。即ち、効果装置3を胴敷21に取着すると、胴敷21の凹部212はベース筐体31に覆われるので、胴敷21の凹部212に相当する凹部として、この凹部315がベース筐体31の底面312に形成されている。よって、この凹部315は、効果装置3を二胡2に取着した場合に、胴敷21の凹部212を高さ方向に、ほぼ投影した位置に形成されている。これにより、この凹部315が演奏者の太股にフィットして、効果装置3を取着した状態であっても、違和感なく二胡2を演奏することができる。
【0052】
図2(b)、図3(b)に示すように、ベース筐体31の底面312の長手方向両縁部から立設する両側面316a,316bは、内側に向けて括れて形成されている。換言すれば、ベース筐体31は平面視(底面視)において糸巻き状に形成されている。効果装置3を演奏者の太股上に載せて演奏する場合に、側面316aは、演奏者の外側に位置することになるが、その側面316aが括れていることで、弓を外側に押し出した場合に、弓が側面316aに衝突するのを防止することができる。一方、側面316bは、演奏者の内側(腹部辺り)に位置することになるので、その側面316bが括れていることで、側面316bが演奏者の腹部辺りにフィットし、違和感なく演奏することができる。尚、図2(a)に示すように、側面316aの後方筐体33側には、後方筐体33側から電源入力ジャック317と、外部機器と接続する接続端子318とが並列に配設されている。
【0053】
図2(a)に示すように、上述したベース筐体31の前方側に連設する前方筐体32は、ベース筐体31の設置面311よりも突出して形成されており、その上面には5つのダイヤル式の操作子321乃至325が横一列に配設されている。各操作子321乃至325は、効果装置3によって付与する効果としての、音量、音色(リバーブ、ディレイ、オクターブ、コーラス)の変化量を調節する操作子であり、操作子321がコーラス、操作子322がオクターブ、操作子323がディレイ、操作子324がリバーブ、操作子325が音量の変化量を、各操作子321乃至325を回転させることで調節する。尚、各操作子321乃至325は、後述する基板340に実装されている制御回路に電気的に接続されており、その制御回路によって各操作子321乃至325の設定状況に応じた効果が二胡2から発生する楽音に付与される。
【0054】
この前方筐体32との間にベース筐体31を挟む後方筐体33は、ベース筐体31の設置面311よりも2段階に突出して形成されている。このように、ベース筐体31の設置面311の長手方向は、その設置面311よりも突出する前方筐体32と後方筐体33とに挟まれているので、設置面311に胴敷21を設置する場合に、その設置位置を感覚的に捉えることができる。
【0055】
後方筐体33の最上面よりも低い中段上面には、出力ジャック333と、コントローラ接続ジャック334とが配設されている。出力ジャック333は、効果装置3で効果が付与されたアナログ信号を出力するものであり、例えば、ヘッドフォンと接続されてヘッドフォンに出力される。コントローラ接続ジャック334は、コントローラ4から出力される所定の信号を効果装置3に入力するものであり、コントローラ4と接続されているケーブル(図示せず)と接続され、そのケーブルを介して入力された所定の信号が、後述する基板340に実装されている制御回路に入力され、その制御回路によって所定に信号に応じた処理が実行される。
【0056】
図3(b)に示すように、後方筐体33の底面縁部には、効果装置3に接続されるコード、ケーブルを纏めるコードフック335が取着されている。コードフック335を取着するためのコードフック取付穴336は、効果装置3の底面の縁部に前方後方2つずつ合計4つ穿設されており、コードフック335は、このいずれにもビス337を介して取付けることができる。
【0057】
また、図2(a)に示すように、後方筐体33には、ベース筐体31の設置面311の一端側から立設し、その設置面311側を向く立設面331が形成されており、その立設面331の上方(出力ジャック333、コントローラ接続ジャック334よりも上方)には、二胡2から発生する楽音を集音する集音面338が形成されている。そして、その集音面338の背後(後方筐体33の内部)には、図3(a)に示すように、コンデンサマイク339が基板340に実装されて内包されている。
【0058】
コンデンサマイク339は、集音面338を介して、二胡2から発生する楽音を拾い、その楽音を電気信号に変換するものであり、後方筐体33の底方から立設する基板340に集音面338側を向けて実装されている。
【0059】
具体的には、コンデンサマイク339は、二胡2の花窓223と僅かに間隔を空けて対向配置され、その高さは、効果装置3に二胡2を取着した状態で、二胡2の花窓223の中心Xから僅かに設置面311側の位置に配設されている。換言すれば、コンデンサマイク339は、設置面311からの高さが二胡2の花窓223の中心Xよりも低い位置(設置面311からコンデンサマイク339の中心までの高さが約42mmの位置)に配設されている。この位置にコンデンサマイク339を配設することで、花窓223から放音される二胡2の楽音の音色を損なうことなく、二胡2本来の楽音を電気信号に変換することができる。
【0060】
また、例えば、コンデンサマイク339に代えて、コンタクトマイクを使用する場合には、その固定構造が複雑となり、ピエゾマイクを共鳴胴22に設置した場合には、ハウリングの影響を受け、二胡2本来の音色を電気信号に変換することができない。一方、コンデンサマイク339によれば、簡単な固定構造で、且つ、二胡2本来の楽音を電気信号に変換することができる。
【0061】
更に、コンデンサマイク339の周囲にはスポンジ341a、コンデンサマイク339が実装されている基板340の反対面にはスポンジ341bが配設されており、コンデンサマイク339が雑音を電気信号に変換するのが抑制され、より確実に二胡2本来の楽音を電気信号に変換することができる。
【0062】
後方筐体33の内部には、更に、基板340をベース筐体31との間に挟む基板340の背後に電池342を収納する電池収容空間343が確保されており、その上方の後方筐体33の一部は、電池交換キャップ344として、後方筐体33から着脱自在に構成されている。この位置に電池収容空間343を配置することで、二胡2が設置されるベース筐体31を扁平に形成でき、演奏する場合、演奏者に高さ方向における違和感を感じさせるのを抑制することができる。また、電池342は縦置きに収容されるので、長手方向において効果装置3が大型化するのも抑制することができる。
【0063】
次に、図4を参照して、上述した効果装置3を二胡2(胴敷21)に取着する方法について説明する。図4(a)は胴敷21の外観斜視図であり、(b)は胴敷21に鬼目ナット213が嵌合されている部分の拡大断面図であり、(c)は胴敷21に効果装置3を取着する状態を示す図である。
【0064】
効果装置3を二胡2(胴敷21)に取着する場合には、図4(a)、(b)に示すように、3つの孔214を穿設する。この3つの孔214は、効果装置3(ベース筐体31)に穿設されている3つの連結口314と対応する位置に穿設する。そして、その3つの孔214に鬼目ナット213を嵌め込む。鬼目ナット213は外周部に複数の突起が突設され、その内部にはネジ孔が貫通形成されている。
【0065】
こうした加工された胴敷21を、図4(c)に示すように、効果装置3に穿設されている連結口314と、胴敷21に穿設されている3つの孔214とが合致するよう胴敷21を効果装置3の設置面311上に設置し、効果装置3の底面側から連結口314にボルト215を挿入し、そのボルト215を鬼目ナット213のねじ孔に螺合させることで、効果装置3を二胡(胴敷21)に取着することができる。
【0066】
次に、図5を参照して、コントローラ4について詳細に説明する。図5(a)はコントローラ4の外観斜視図であり、(b)は(a)とは反対側からみたコントローラ4の外観斜図であり、(c)は図1に示すVc−Vc断面図である。
【0067】
コントローラ4は、5つの操作ボタン41乃至45が一列に配設されている帯状の操作面46と、その操作面46と対向し棹23に重ねられ棹23に被覆される被覆面47と、操作面46の長手方向両縁部から被覆面47側に延びる2つの側面48a,48bとによって、扁平な棒状に形成されている。
【0068】
また、操作ボタン41乃至45を挟む両側には、コントローラ4を棹23に取着するための連結口57,58が穿設されており、更に、長手方向一端側は扁平な円弧状に形成されており、その反対の他端側からは図示しないケーブルの導出口59が突設されている。
【0069】
コントローラ4は、図1に示すように、扁平な円弧状に形成された一端側を上方(千斤243側)、導出口59を下方(共鳴胴22側)に向け、弦24と対向する棹23の対向面に取着される。そのため、図5(a)に示すように、その長手方向の全長Lは千斤243と共鳴胴22の上面との間の間隔より小さく、図5(c)に示すように、操作面46と被覆面47側との最大高さHは、棹23と弦24(241,242)との間隔より小さく、2つの側面48a,48bの最大幅W1は、棹23の最大幅W2よりも小さく構成されている。
【0070】
より具体的には、コントローラ4は、導出口59を除く長手方向の長さが約279.5mm、最大幅W1が14.5mm、最大高さHが10.4mmの大きさで構成されている。尚、このコントローラ4の大きさは、一例にすぎず、コントローラ4の大きさは、この大きさに限定されるものではない。
【0071】
これにより、コントローラ4を、棹23の弦24と対向する対向面に被覆面47が被覆されるように取着した場合、操作面46は弦24(241,242)と対向する位置に配置されるので、操作面46に配設されている各操作ボタン41乃至45を操作し易い。また、両側面48a,48bが棹23からはみ出すことがないので、コントローラ4が取着されている棹23の反対面側から棹23を握り、棹23に沿って擦るように演奏者が手を移動させたとしても、演奏者の手がコントローラ4に衝突することがないので、コントローラ4を取着した状態であっても、演奏に支障をきたすことなく、二胡2を演奏することができる。
【0072】
操作面46に配設されている5つの操作ボタン41乃至45は、演奏者によって操作され、押下されたボタンに応じた所定の信号が、効果装置3に対して図示しないケーブルを介して出力される。各操作ボタン41乃至45のうち、操作ボタン41はリバーブ、操作ボタン42はディレイ、操作ボタン43はオクターブ、操作ボタン44はコーラスの各効果を二胡2から発生する楽音に付与することを指示し、操作ボタン45はチューニング機能の実行を指示するボタンである。
【0073】
また、操作面46は、図5(c)に示すように、被覆面47に対して、被覆面47の長手方向の縁部側(外弦241側)に偏り、且つ、その偏っている方向(外弦側)に向かって角度θ(例えば、約12度)で下降傾斜して形成されている。また、その操作面46に配設されている各操作ボタン41乃至45は、操作面46の長手方向における中心線Cから操作面46が偏っている方(外弦241側)に偏って配設されている。
【0074】
このように操作面46が形成されているので、コントローラ4を上述したように棹23に取着した場合、操作面46は、図5(c)に示すように、外弦241側に偏った状態となり、弦241,242から外れたスペースを確保することができる。そして、そのスペースに操作ボタン45等を配設することで、操作ボタン45を押下する矢印P方向の操作を弦241,242と干渉することなく行うことができる。
【0075】
2つの側面48a,48bのうち、側面48bは、図5(c)に示すように、操作面46の長手方向縁部と鈍角に交わり、対向する側面48aよりも操作面46の長手方向の縁部から被覆面47までの距離が長く形成されている。また、この側面48bには、図5(a)に示すように、表示装置としてのLED50乃至56が長手方向に一列に並んで配設されている。
【0076】
LED50乃至54のうち、LED50は操作ボタン41、LED51は操作ボタン42、LED52は操作ボタン43、LED53は操作ボタン44、LED54は操作ボタン45と対応付けられており、各操作ボタン41乃至45の操作状況を表示するものである。例えば、操作ボタン41が押下されると、その押下された操作ボタン41に対応するLED50が点灯する。これにより、そのLED50の表示状態によって操作ボタン41を押下したことを一見して確認することができる。
【0077】
LED55は里弦242、LED56は外弦241のチューニング状況を表示するものであり、LED55と、LED56とには、各々2つのLEDが配設されており、入力した音高の基準音高に対する偏差に応じて2つのLEDのいずれかが点滅し、入力した音高と基準音高とが一致することで2つのLEDが点灯する。これにより、各弦241,242のチューニング状況を一見して確認することができる。
【0078】
このように、表示装置としてのLED50乃至56を側面48bに配設することで、コントローラ4を上述したように棹23に取着した場合、側面48bは、演奏状態において、演奏者から右側の側面(弦241,242に向かって左側の側面)に位置することになるので、演奏者にLED50乃至56の表示を見易くすることができる。
【0079】
次に、図6を参照して、上述したコントローラ4を二胡2(棹23)に取着する方法について説明する。図6(a)は、棹23上部の外観斜視図であり、図6(b)は図6(a)に示す領域A内の拡大図である。
【0080】
コントローラ4を二胡2(棹23)に取着する場合には、図6(b)に示すように、ネジ61を介して凸状の固定部材60を、弦24と対向する棹23の対向面に取り付ける。そして、固定部材60に穿設されているネジ孔と、コントローラ4に穿設されている連結口57とを重ねてビス62を介してコントローラ4と固定部材60とを連結する。尚、連結口58についても同様に行う。これにより、固定部材60を介してコントローラ4を棹23に取着することができ、ビス62を着脱することで、コントローラ4を棹23から簡単に着脱することができる。
【0081】
このように、上述した電気二胡1によれば、二胡2に効果装置3を取着した場合、効果装置3の後方筐体33にはコンデンサマイク339が、二胡2の花窓223と僅かに間隔を空けて対向して、且つ、設置面311からの高さが二胡2の花窓223の中心Xよりも低い位置に配設されているので、花窓223から放音される二胡2の楽音の音色を損なうことなく、二胡2本来の楽音を電気信号に変換することができる。
【0082】
また、コントローラ4の筐体は、操作面46、その操作面46と対向して棹23に被覆される被覆面47、および、操作面46の長手方向両縁部から被覆面47に向かって延びる側面48a,48bを有し、扁平な棒状に形成されている。よって、コントローラ4を二胡2に張設されている弦241,242と対向する棹23の対向面に、被覆面47が覆われるように取着することができる。この部分にコントローラ4を取着することで、操作面46は弦241,242と棹23との間に位置することになり、演奏者は難なく操作ボタン41乃至45を操作できる上、筐体に演奏者が衝突することがなく、演奏に支障をきたすこともない。
【0083】
次に、図7乃至図9を参照して、上述した実施形態を第1実施形態として、効果装置3を二胡(胴敷21)に取着する第2乃至第4実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、図4で説明した通り、胴敷21に孔214を穿設する場合について説明した。この第2乃至第4実施形態では、二胡2(胴敷21)自体には、何ら加工を施すことなく、二胡2に効果装置3を取着する方法について説明する。尚、上述した第1実施形態と、同一の構成については、同一の符合を付し、その説明は省略する。
【0084】
まず、図7を参照して、第2実施形態について説明する。図7(a)はアタッチメント101を示す外観斜視図であり、図7(b)は第2実施形態の電気二胡100の底方部分を示す外観斜視図である。第2実施形態の電気二胡100(効果装置3)には、図7(a)に示すアタッチメント101が設けられている。
【0085】
アタッチメント101は、ベース筐体31の設置面上に固定され、二胡2(胴敷21)自体には、何ら加工を施すことなく、二胡2に効果装置3を取着させるためのものであり、主に、板状のベースプレート102と、前方介入爪106と、後方固定部材110とによって構成されている。
【0086】
ベースプレート102は、ベース筐体31の設置面311上に設置されるものであり、その長手方向の前方一端側に切欠き103と、その反対である後方一端側から立設する立壁108と、底面から延びるボルト115とが設けられている。切欠き103は、ベースプレート102をベース筐体31の設置面311上に設置した状態で弦交換口313と重なる位置に切欠かれており、この切欠き103によってベースプレート102をベース筐体31の設置面311上に設置することで弦交換口313がベースプレート102によって塞がれるのが防止されている。立壁108は、後方固定部材110を支持する壁であり、その上端の両端には、ベースプレート102側とは反対に突出する突出片109が突設されている。ボルト115は、ベース筐体31の設置面311に穿設されている連結口314に挿入され、アタッチメント101とベース筐体31とを連結するものである。
【0087】
前方介入爪106は、その先端が共鳴胴22の前方と胴敷21との間に形成される隙間に介入するものである。前方介入爪106は、ベースプレート102の長手方向の両縁部から外方に突出するブラケット104上において、長手方向に互いに所定間隔を空けて連結されている2つの筒状の挿通部材105に、その一端側が回転自在に挿入されている。また、その2つの挿通部材105の間から露出する部分にはストッパ106aが固定されており、前方介入爪106は、このストッパ106aが前後の挿通部材105の端面に衝突する範囲で長手方向にスライド可能に構成されている。また、一対の前方介入爪106のうちの一方には、先端がフック状に形成されている固定フック107の他端側が連結されている。この固定フック107の先端をベースプレート102を跨いで他方の前方介入爪106に引っかけることで、一対の前方介入爪106が回転するのが防止されている。
【0088】
後方固定部材110は、その一部が共鳴胴22の後方と胴敷21との間に形成される隙間に介入するものである。後方固定部材110は、立壁108のベースプレート102側の内面に沿った本体112と、その本体112の端部からベースプレート102側に突出する介入片111と、その反対側の両縁部から、立壁108を跨いで立壁108に連設されている突出片109と対向するように突出する突出片113とによって構成されている。互いに対向する突出片109と、突出片113とには、ボルト114が貫通されており、このボルト114によって、後方固定部材110は、上下方向にスライド可能に構成されている。
【0089】
上述したアタッチメント101に、二胡2を取着する方法について説明する。まず、前方介入爪106を立壁108とは反対側にスライドさせ、後方固定部材110を上方にスライドさせておく。そして、二胡2の後方に形成されている共鳴胴22と胴敷21との間の隙間に、後方固定部材110の介入片111が介入するように二胡2をベースプレート102上に設置する。
【0090】
そして、二胡2の前方に形成されている共鳴胴22と胴敷21との間の隙間に、両方の前方介入爪106の先端が介入するように、各前方介入爪106を回転させつつ、立壁108側にスライドさせ、両方の前方介入爪106が介入すると、固定フック107によって両方の前方介入爪106を固定する。そして、後方固定部材110の介入片111が胴敷21の上面に到達するまでボルト114を締め付け、後方固定部材110をベースプレート102側にスライドさせる。
【0091】
こうして、アタッチメント101に、二胡2を取着すると、ベースプレート102の底面から突出するボルト115が、効果装置3の連結口314に挿入するように、二胡2が取着されたアタッチメント101をベース筐体31上に設置し、効果装置3の底面側から連結口314を通過しているボルト115にナットを螺合させることで、図7(b)に示すように、二胡2(胴敷21)自体には、何ら加工を施すことなく、二胡2に効果装置3を取着させることができる。
【0092】
次に、図8を参照して、第3実施形態について説明する。図8(a)はアタッチメント201を示す外観斜視図であり、図8(b)は第3実施形態の電気二胡200の底方部分を示す外観斜視図である。第3実施形態の電気二胡300(効果装置3)には、図8(a)に示すアタッチメント201が設けられている。尚、図8(a)に示すアタッチメント201については、図7(a)に示すアタッチメント101と共通する構成については、同一符合を付し、その説明は省略する。
【0093】
図8(a)に示すアタッチメント201は、図7(a)に示すアタッチメント101の前方介入爪106に代えて、前方固定部材202の介入爪202bを共鳴胴22と胴敷21との間に介入させるものである。
【0094】
アタッチメント201には、切欠き103の両サイドのベースプレート102に長手方向に延びる長孔204が穿設されおり、その各長孔204には2本のボルト203が貫通しており、その2本のボルト203に前方固定部材202が固着されている。
【0095】
前方固定部材202は、2本のボルト203に固定されている本体202aと、その本体202aの上端両縁からベースプレート102側に延びる介入爪202bとによって構成されている。尚、各ボルト203には、ベースプレート102を挟んで図示しないナットが螺着されており、この螺着を緩めることで、長孔204に沿って前方固定部材202を長手方向にスライドさせることができる。
【0096】
このように構成されているアタッチメント201を備えた電気二胡200によれば、前方固定部材202の介入爪202bを二胡2の前方における胴敷21と共鳴胴22との間の隙間に介入させることで、図8(b)に示すように、二胡2(胴敷21)自体には、何ら加工を施すことなく、二胡2に効果装置3を取着させることができる。
【0097】
次に、図9を参照して、第4実施形態について説明する。図9(a)はアタッチメント301を示す外観斜視図であり、図9(b)は第4実施形態の電気二胡300の底方部分を示す外観斜視図である。第4実施形態の電気二胡300(効果装置3)には、図9(a)に示すアタッチメント301が設けられている。
【0098】
尚、この第4実施形態において効果装置3を取着する二胡20は、その胴敷210の形状が、上述した二胡2の胴敷21の形状と異なるものである。具体的には、上述した二胡2の胴敷21は、共鳴胴22を設置するベースと、そのベースの長手方向縁部から湾曲して立設する側壁とによって凹状に形成されているものである。一方、二胡20の胴敷210は、図9(b)に示すように、かまぼこ状に形成され、その上面に共鳴胴22が設置されている。
【0099】
アタッチメント301は、ベース筐体31の設置面上に設置され、二胡20(胴敷210)自体には、何ら加工を施すことなく、二胡20に効果装置3を取着させるためのものであり、主に、板状のベースプレート302と、板状のベースプレート302の前方縁部から立設する前方固定壁303と、板状のベースプレート302の長手方向の両縁部から立設する一対の側方挟持壁304とによって構成されている。
【0100】
ベースプレート302は、図7(a)、図8(a)で説明したアタッチメント101,201と同様に、ベース筐体31の設置面311上に設置されるものであり、その長手方向の前方一端側に切欠き(図示せず)、底面から延びるボルト115とが設けられている。前方固定壁303は、胴敷210の前面を固定するものである。
【0101】
側方挟持壁304は、胴敷210を長手方向に固定するものであり、その上方の途中からは、胴敷210の長手方向の側面に沿うようにベースプレート302側に傾斜して形成されている。これにより、胴敷210を長手方向に確実に挟むことができる。また、その上端縁部には、凹状に形成されている固定部材305が挟まれている。この固定部材305は、ボルト306によりベースプレート302側にスライドし、直接、胴敷210を押圧、固定するものである。
【0102】
上述したアタッチメント301に、二胡2を取着する方法について説明する。まず、ボルト306を緩めた状態にしておき、次に、二胡2を前方固定壁303とは反対側の縁部から一対の側方挟持壁304の間に、二胡20の琴皮221側を先頭に挿入し、胴敷210の前面が前方固定壁303の内面に当接するまで、二胡20をベースプレート302上でスライドさせる。そして、固定部材305のボルト306を締め、固定部材305の一端面を胴敷210の傾斜面に当接させ、固定する。
【0103】
こうして、アタッチメント301に、二胡20を取着すると、後は、上述したのと同様に、二胡20が取着されたアタッチメント301を、ベース筐体31の設置面上に取着することで、図9(b)に示すように、かまぼこ状の胴敷210を有する二胡20であっても、二胡20(胴敷210)自体には、何ら加工を施すことなく、二胡20に効果装置3を取着することができる。
【0104】
次に、図10を参照して、上述した実施形態のコントローラ4を第1実施形態として、第2乃至第4実施形態のコントローラ400,500,600について説明する。上述した第1実施形態のコントローラ4は、図6で説明した通り、棹23に固定部材60を取付けた上で、その固定部材60を介してコントローラ4を棹23に取着する方法について説明した。
【0105】
この第2乃至第4実施形態では、二胡2(棹23)自体には、何ら加工を施すことなく、棹23にコントローラ400,500,600を取着できる方法について説明する。尚、上述した第1実施形態のコントローラ4と、同一の構成については、同一の符合を付し、その説明は省略する。
【0106】
まず、図10(a1)、図10(a2)を参照して、第2実施形態のコントローラ400について説明する。図10(a1)は第2実施形態のコントローラ400の上方部分を示す外観斜視図であり、図10(a2)は図10(a1)に示す矢印Xa2方向視における平面図である。
【0107】
図10(a1)、図10(a2)に示すように、第2実施形態のコントローラ400には、長手方向の一端側に、板状のプレート401が延設されており、そのプレート401の一端側には、帯状のバンド402の一端だけが連結されており、その他端側はボルト403を介してプレート401と連結可能に構成されている。
【0108】
第2実施形態のコントローラ400を棹23に取着する場合には、ボルト403を矢印K方向に引き抜いた状態で、一端だけがプレート401に取着されている状態のバンド401を棹23に巻回させる。そして、ボルト403を介してバンド401の他端側とプレート401とを連結し、ボルト403を締め付ける。
【0109】
これにより、棹23は巻回されているバンド402によって締め付けられるので、コントローラ400の上方部分がバンド402を介して棹23に取着される。そして、同様に、コントローラ400の下方部分を棹23に取着することで(図示せず)、二胡2(棹23)自体には、何ら加工を施すことなく、コントローラ400を棹23に取着することができる。
【0110】
次に、図10(b1)、図10(b2)を参照して、第3実施形態のコントローラ500について説明する。図10(b1)は第3実施形態のコントローラ500の上方部分を示す外観斜視図であり、図10(b2)は図10(b1)に示す矢印Xb2方向視における平面図である。
【0111】
図10(b1)、図10(b2)に示すように、第3実施形態のコントローラ500には、長手方向の一端側に、プレート501が延設されており、そのプレート501の一端側に対してボルト505を介して着脱可能な取付部材Tが取着されている。
【0112】
取付部材Tは、帯状のバンド502と、そのバンド502の一端側に連結され屈曲して形成されている第1固定プレート503と、バンド502の他端側に連結され屈曲して形成されている第2固定プレート504とによって構成されている。また、第2固定プレート504には、第1固定プレート503の一端側が挿通可能な筒部材504aと、ナット504bとが連結されている。
【0113】
第3実施形態のコントローラ500を棹23に取着する場合には、ボルト505を矢印K方向に引き抜き、第1固定プレート503の一端を筒部材504aから引き抜いた状態とした上で、バンド502を棹23に巻回させる。そして、第1固定プレート503の一端を筒部材504a内に挿入させ、第1固定プレート503と、第2固定プレート504とに穿設されているネジ孔を合わせる。そして、その合わせたネジ孔に、ボルト505を差し込み、締め付ける。
【0114】
これにより、棹23は巻回されているバンド502によって締め付けられるので、コントローラ500の上方部分がバンド502を介して棹23に取着される。そして、同様に、コントローラ500の下方部分を棹23に取着することで(図示せず)、二胡2(棹23)自体には、何ら加工を施すことなく、コントローラ500を棹23に取着することができる。
【0115】
次に、図10(c1)、図10(c2)を参照して、第4実施形態のコントローラ600について説明する。図10(c1)は第4実施形態のコントローラ600の上方部分を示す外観斜視図であり、図10(c2)は図10(c1)に示す矢印Xc2方向視における平面図である。
【0116】
図10(c1)、図10(c2)に示すように、第4実施形態のコントローラ600には、長手方向の一端側に、プレート601が延設されており、そのプレート601の一端側には、ボルト601aと、そのボルト601aに螺着するナット601bとが連結されている。また、ボルト601aを介してプレート601の一端側に対して着脱可能な取付部材Tが取着されている。
【0117】
この取付部材Tは、凹状に形成されている固定プレート603と、帯状のバンド602とによって構成されている。固定プレート603には、ボルト601aが挿入されるネジ孔と、そのネジ孔が形成されている面から屈曲した両面にキノコ型の連結部材603aとが設けられている。バンド602には、その両端にキノコ型の連結部材603aの頭部が通過可能な大きさの孔と、通過不可能な大きさの孔とが並列に連続する孔602aが穿設されている。
【0118】
第4実施形態のコントローラ600を棹23に取着する場合には、バンド602の少なくとも一方の端部をキノコ型の連結部材603aから引き抜いた状態とした上で、固定プレート603のネジ孔をボルト601aに差し込みつつ、バンド602を棹23に巻回させる。そして自由端となっているバンドの一端側に穿設されている孔602aに、キノコ型の連結部材603aを嵌め込み、ナット601bをボルト601aの先端側に向けて回転させる。
【0119】
これにより、棹23は巻回されているバンド602によって締め付けられるので、コントローラ600の上方部分がバンド602を介して棹23に取着される。そして、同様に、コントローラ600の下方部分を棹23に取着することで(図示せず)、二胡2(棹23)自体には、何ら加工を施すことなく、コントローラ600を棹23に取着することができる。
【0120】
以上、上述した実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0121】
本実施形態では、コンデンサマイク339を、花窓223と対向するように花窓223の中心Xよりも若干設置面311側に配設する場合について説明したが、コンデンサマイク339を配置する位置としては、かかる位置に限定されるものではない。例えば、コンデンサマイク339を花窓223の近傍(花窓223の中心Xの周辺、または、後方筐体33を設置面311側に突出させずに、ベース筐体をそのまま後方に延設させた筐体内)に配置しても良い。かかる位置に配置したとしても、コンデンサマイク339によって二胡2本来の楽音を電気信号に変換することができる。但し、上述した実施形態の位置に配設するのが最も好ましい。
【0122】
また、本実施形態では、コントローラ4を図5(c)に示す断面形状に形成する場合について説明したが、コントローラ4の断面形状としては、かかる断面形状に限定されるものではない。例えば、コントローラ4を上述した実施形態と棹23の位置に取着することができる形状であれば、かかる断面形状が、かまぼこ型、矩形状、台形状、平行四辺形状になるようにコントローラ4を形成しても良い。また、本実施形態では、効果装置3とコントローラ4とをケーブル(有線)で接続する場合について説明したが、効果装置3とコントローラ4との間で信号を伝達する手段としては、無線通信であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】電気二胡の外観斜視図である。
【図2】(a)は効果装置の外観斜視図であり、(b)は効果装置の平面図である。
【図3】(a)は電気二胡の底方部分の縦断面図であり、(b)は電気二胡の底面図である。
【図4】(a)は胴敷の外観斜視図であり、(b)は胴敷に鬼目ナットが嵌合されている部分の拡大断面図であり、(c)は胴敷に効果装置を取着する状態を示す図である。
【図5】(a)はコントローラの外観斜視図であり、(b)は図5(a)とは反対側からみたコントローラの外観斜図であり、(c)は図1に示すVc−Vc断面図である。
【図6】(a)は棹上部の外観斜視図であり、(b)は図6(a)に示す領域A内の拡大図である。
【図7】(a)はアタッチメントを示す外観斜視図であり、(b)は第2実施形態の電気二胡の底方部分を示す外観斜視図である。
【図8】(a)はアタッチメントを示す外観斜視図であり、(b)は第3実施形態の電気二胡の底方部分を示す外観斜視図である。
【図9】(a)はアタッチメントを示す外観斜視図であり、(b)は第4実施形態の電気二胡の底方部分を示す外観斜視図である。
【図10】(a1)は第2実施形態のコントローラの上方部分を示す外観斜視図であり、(a2)は図10(a1)に示す矢印Xa2方向視における平面図である。(b1)は第3実施形態のコントローラの上方部分を示す外観斜視図であり、(b2)は図10(b1)に示す矢印Xb2方向視における平面図である。(c1)は第3実施形態のコントローラの上方部分を示す外観斜視図であり、(c2)は図10(c1)に示す矢印Xc2方向視における平面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 電気二胡(電気楽器)
2 二胡(弦楽器)
3 効果装置
4 コントローラ
21,210 胴敷
22 共鳴胴
23 棹
24 弦
41乃至45 操作ボタン(操作子)
46 操作面
47 被覆面
48a,48b 側面
50乃至56 LED(表示装置)
57,58 連結口
221 琴皮(共鳴胴の前面)
222 駒
241 外弦(弦の一部)
242 里弦(弦の一部)
402,502,602 締結バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴敷と、その胴敷上に設置される中空状の共鳴胴と、その共鳴胴から立設する棹と、その棹の一端側と前記胴敷の底面に設置されているテールピースとの間で前記共鳴胴の前面に設置されている駒を介して張設される弦と、その弦を前記棹の途中で束ねる千斤とを備えた弦楽器から発生する楽音に所定の効果を付与する効果装置とは別体に前記弦楽器の棹に着脱可能に取着され、前記効果装置に対して所定の信号を出力するコントローラであって、
演奏者によって操作され前記所定の信号を出力することを指示する操作子と、
その操作子が配設され帯状に延びる操作面、その操作面と対向して前記棹に被覆される被覆面、および、前記操作面の長手方向両縁部から前記被覆面に向かって延びる側面を有し、扁平な棒状に形成されている筐体とを備えていることを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
前記筐体は、その長手方向の全長が前記共鳴胴の上面から前記千斤までの間隔よりも小さく、前記操作面と前記被覆面との間隔である最大高さが前記弦と前記棹との間隔よりも小さく、前記両側面の間隔である最大幅が前記棹の最大幅よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記操作面は、前記被覆面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記操作面は、前記被覆面の長手方向に延びる両縁部の一方の縁部側に偏って形成されており、
前記操作子は、前記操作面の長手方向に延びる中心線から前記一方の縁部側に偏って配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項5】
前記両側面のうち、前記操作面の長手方向に延びる縁部から前記被覆面までの距離が長い方の側面に配設され、前記操作子の操作状況を表示する表示装置を備えていることを特徴とする請求項1から4に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記表示装置が配設される側面と、前記操作面とは鈍角に交差して形成されていることを特徴とする請求項5に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記所定の信号を前記効果装置に送信するケーブルの一端が導出する導出口を備え、
その導出口を鉛直方向下方に向けて前記操作面と対面した場合、前記表示装置が配設される側面は、向かって左側の側面に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記筐体の長手方向における一端側は円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項9】
前記筐体と前記棹とを連結する連結具が挿入され、前記筐体の長手方向において前記操作子を挟む位置に穿設されている連結口を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項10】
前記筐体に連結され、前記棹を巻回した状態で前記棹を締め付ける締結バンドを備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項11】
前記弦楽器は、二胡であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項12】
前記効果装置と、
請求項1から11のいずれかに記載のコントローラとを備えていることを特徴とする効果装置セット。
【請求項13】
前記弦楽器と、
前記効果装置と、
請求項1から11のいずれかに記載のコントローラとを備えていることを特徴とする電気弦楽器。

























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−288318(P2009−288318A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138173(P2008−138173)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】