説明

コントローラと別個の回路基板上に実装された電力構成要素とを備えた電力変換器

【課題】電力変換器の電力回路構成を冷却し、回路基板設計の変更に対処する。
【解決手段】少なくともいくつかの実施形態において、電力変換器(50)は、第1の回路基板(60)上に実装されるよう構成された制御ロジック(56)と、該制御ロジックに電気的に結合されるよう構成され且つ第2の回路基板(62)上に実装されるよう構成された電力構成要素とを備える。前記第1の回路基板は、前記第2の回路基板に機械的に取り付けられる。他の実施形態において、システムは、システムボードと、該システムボードに取り付けられたモジュールと、電力構成要素に電気的に結合されたコントローラを含む電力変換器(50)とを備える。前記コントローラは、前記モジュール上に実装され、前記電力構成要素は、前記システムボード上に実装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換器に関し、特に、コントローラと、別個の回路基板上に実装された電力構成要素(パワーコンポーネント)とを備えた、電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器は、コンピュータを含む様々な用途に用いられている。一般には、電力変換器は、入力電圧を異なる電圧レベルにおける出力電圧に変換する。例えば、電力変換器は、12ボルトの直流(「VDC」)電圧を、3.3VDCの出力電圧に変換することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電力変換器は典型的には、低電圧制御回路構成と、より高い電力の電力回路構成とを含む。該電力回路構成は、1つか又は複数の構成要素(例えばトランジスタ)を備え、該構成要素を通して、電気的な出力電流の幾らかか又は全てが流れる。結果として、電力回路構成は、制御回路構成よりも高温になり、触れるには熱いほどにもなることから、その生成された熱を除去する熱制御機構からの恩恵を受ける。電子回路からの除熱は、特にいくつかの例において、問題となり得る。例えば、ラップトップコンピュータのような携帯用電子装置は、小さく且つコンパクトな設計であることにより、電子回路全体にわたって空気を動かすための空き空間がほとんどない。更には、ラップトップ内における雑音及びサイズの制約のために、そのファンは、もしもファンが存在するならば、典型的には小さく、一般には、十分な量の空気を動かすことができない。結果として、ラップトップのような携帯用電子装置を温度的に良良好な状態に維持することは、問題となる可能性がある。従って、電力変換器の電力回路構成を冷却することが困難である可能性がある。
【0004】
システム設計者が直面する別の問題は、回路基板設計(例えば「マザー」ボード)の変更に対処することである。このような変更は、回路基板のプロバイダーがある特定の部品(例えばコントローラチップ)のための基板を設計し、該基板が設計されてテストされた後に、該プロバイダーがこの当初の部品用に設計された基板とピン互換性がない(ピンコンパチでない)別の部品に変更する場合に、結果として生じる可能性がある。このようなピン互換性のない部品へと変更する決定は、様々な理由から生じる可能性がある。例えば、元の部品のベンダーが、もはやその部品を供給しない可能性があることによって、基板製造業者は代替部品への切替を余儀なくさせられる。何らかの理由から、ピン互換性のない異なる部品が、既に別の部品用に設計されている回路基板と共に使用されることとなり、この部品における変更は、その回路基板に対するの設計変更を必要とする。例えば、コンピュータ内のマザーボードの場合には、この設計変更は、広範囲で且つコストがかかる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例は、
負荷に電力を提供するよう構成された電力変換器(50)であって、
第1の回路基板(60)上に実装されるよう構成された制御ロジック(56)と、
前記制御ロジック(56)に電気的に結合されるように構成され且つ第2の回路基板(62)上に実装されるよう構成された、電力構成要素であって、前記電力のうちの少なくともいくらかは、前記電力構成要素(L1)を通って前記負荷へ流れることからなる、電力構成要素
とを備え、
前記第1の回路基板(60)は、前記第2の回路基板(62)に機械的に取り付けられることからなる、電力変換器である。
【発明の効果】
【0006】
電力変換器の電力回路構成を冷却することができ、回路基板設計の変更に対処することができる。
【実施例】
【0007】
本発明の例示的な実施形態の詳細な説明のため、添付図面に参照がなされる。
【0008】
表記及び専門用語
以下の説明と特許請求の範囲とを通して、特定のシステム構成要素に言及するために特定の用語が用いられる。当業者であれば理解するであろうように、コンピュータ会社によって1つの構成要素を異なる名前で呼ぶ場合がある。本文書は、名前は異なるが機能は異ならない構成要素を区別することを意図していない。以下の説明において及び特許請求の範囲内において、用語「含む」及び「備える」は、拡大解釈可能な様式で用いられ、従って「…を含むが、それらに限定されない」ことを意味するよう解釈されるべきである。同様に、用語「結合する」も、間接的か又は直接的のいずれかの電気的接続を意味するよう意図される。従って、第1の装置が第2の装置に結合する場合には、この接続は、直接的な電気的接続によるものであるか、又は他のデバイス及び接続を介した間接的な電気的接続によるものである可能性がある。用語「システム」は、2つか又は3つ以上の部品の集まりを指す。用語「システム」は、コンピュータシステムの一部分におけるコンピュータシステムを指すように用いられる可能性がある。
【0009】
以下の説明は、本発明の様々な実施形態に向けたものである。これらの実施形態のうち1つか又は複数が好適である可能性があるが、開示された実施形態は、特許請求の範囲を含む開示の範囲を限定するように解釈されるべきでないか、又は別様に用いられるべきではない。更には、以下の説明には広範囲な用途があり、任意の実施形態の説明は、その実施形態の例示となることのみを意図しており、且つ、特許請求の範囲を含む開示の範囲がその実施形態に限定されることをほのめかすことを意図していないことを、当業者であれば理解するであろう。
【0010】
図1は、電力変換器50の例示的な回路の一実施形態を示す。示されるように、電力変換器50は、少なくとも2つの部分、すなわち制御部52と電力部54とを備える。該制御部と電力部とは、示されるように互いに電気的に結合されている。制御部52は、コントローラ56と1つか又は複数のディスクリートな受動構成要素を含む制御ロジックを備える。図1の実施形態の受動構成要素は、コンデンサC1、C2、C3、及びC4と、ダイオードZ1と、抵抗器R1、R2、及びR3とを含む。電力部54は、電力トランジスタQ1及びQ2と、インダクタL1と、コンデンサCOUTと、抵抗器RLOADとを備える。一般には、電力部54は、少なくとも1つの電力構成要素を備え、いくつかの実施形態においては、図1に示されるように、複数の電力構成要素と、必要に応じて他の構成要素とを備える。電力構成要素は、構成要素を通して電流が負荷へと流れる該構成要素を指す。図1に示された電力変換器50を、コンピュータシステムのようなシステム内において使用することができ、従って、電力変換器50は、システム内の1つか又は複数の負荷(具体的には図示せず)に電力を提供する。
【0011】
コントローラ56は、MAXIMによって提供されるMAX1999EEIコントローラのようなパルス幅変調器(「PWM」)制御チップを備える。コントローラ56は、一般には、入力DC電圧(「VIN」)を受けて、少なくともいくつかの実施形態において入力電圧よりも低い出力定電圧レベル(「VOUT」)を生成するように用いられる。例えば、VINは、+12VDCとすることができ、VOUTは、+3.3VDCとすることができる。コントローラ56を、2つのおそらくは異なる出力電圧(例えば+1.5VDCと+3.3VDC)を提供することが可能なデュアルコントローラとして実施することができる。一般には、コントローラ56を、任意の適合可能な数の出力電圧を提供するように実施することができる。
【0012】
図1内に図示されたコントローラ56は、複数の入力及び出力を有する。このコントローラの入力及び出力が、下記の表I内において、各信号の簡単な説明と共に列挙されている。図1内においてコントローラ56に関連して他の信号が示されているが、図1の実施形態においては使用されていない。このような信号が、表I内に含まれる。
【0013】
【表1】

【0014】
図1に示されるように、使用される回路トポロジは、DC入力源(「VIN」)とグランドとの間に直列接続された2つの電力トランジスタQ1及びQ2(それぞれ「アッパー」トランジスタ及び「ロワー」トランジスタとも呼ばれる)が1スイッチングサイクル内において交互にオン及びオフに駆動される同期バック変換器(synchronous-buck converter)である。コントローラ56は、トランジスタQ1及びQ2を互いに位相をずらして交互にターンオン及びオフさせる「ハイ」制御信号及び「ロー」制御信号(「DH」及び「DL」)を生成する。すなわち、Q1がターンオンされる時にはQ2がターンオフされ、Q1がターンオフされる時にはQ2がターンオンされる。トランジスタがターンオン及びオフされるデューティサイクルは、コントローラ56によって、所望のVOUT電圧レベルに達するように実現される。トランジスタQ1及びQ2における振動する且つ協調された動きの結果として、この2つのトランジスタを相互接続するノード(ノード57)における電圧は、スイッチング波形を構成する。従って、ノード57は、「スイッチング」ノードと呼ばれる。該スイッチングノード57は、スイッチング波形を、インダクタL1とコンデンサCOUTとを備えたローパスフィルタに提供する。該ローパスフィルタは、スイッチング電圧を所望のDC出力電圧(VOUT)に平均化する。コントローラ56は、該コントローラのOUT入力端子及びFB入力端子において受けた信号に基づき、トランジスタQ1及びQ2に関連付けられたデューティサイクルを絶えず調整する。電力変換器50の制御部52において示された様々なコンデンサ、抵抗器、及びダイオードによって、コントローラ56が正確に動作することが可能となる。例えば、抵抗器R2及びR3は、FB入力端子についての電圧分圧器ネットワークを形成する。
【0015】
本発明の例示的な一実施形態によれば、制御ロジックを含む制御部52と、少なくとも1つの電力構成要素を含む電力部54とが、2枚の別個の回路基板上か又はモジュール上に製造される。例えば、コンピュータシステムの状況において、電力部54は、コンピュータのマザーボード上に設けられ、制御部52は、マザーボードに対して機械的に且つ電気的に取り付け可能な「ドーター(daughter)」ボード上に設けられる。図2及び図3は、電力変換器50を構成する図1の構成要素の、例示的なレイアウト分割を示す。図2は、第1の回路基板60を示し、該第1の回路基板60の上に、制御部52の構成要素が実装される。導電端子65が設けられることにより、制御部52の制御ロジックと、電力部54の1つか又は複数の電力構成要素との間の接続が可能となる。図3は、第2の回路基板62の少なくとも一部を示し、該第2の回路基板62の上に、電力部の構成要素が実装される。端子67は、電力部54の構成要素と、制御部52の1つか又は複数の構成要素との間の電気的な接続を可能にするために設けられる。
【0016】
上記のように、いくつかの実施形態において、第2の回路基板62は、コンピュータのマザーボードを含むことができる。コンピュータのマザーボード上に電力部54を設けることによって、コンピュータ内の様々な他の構成要素(例えば制御部52内の構成要素)よりも高温になりやすいそのような構成要素を、コンピュータの熱調節機構(例えばファン)を用いてより効率的に冷却することが頻繁に可能となる。ドーターボードのような別個の基板上に制御部52を設けることによって、制御部の回路構成内における変更(例えば異なるコントローラ56への変更)により必要とされる任意の基板設計変更は、ドーターボード内における変更のみを必要とし、マザーボード内における変更を必要としない。ドーターボードに対する設計変更は、一般には、コンピュータのマザーボードに対する変更よりも複雑でなく、コストが低い。
【0017】
図4Aは、電力変換器の制御部52の上面配置図を示す。示されるように、制御部は、コントローラ56と、第1の回路基板60上に実装された様々な受動構成要素64とを備える。該受動構成要素64は、図1及び図2に示された制御部52の抵抗器、コンデンサ、及びダイオードの任意のものか又は全てを含む。第1の回路基板60は、1つか又は複数の導電性の銅フィンガ(copper finger)72によって、マザーボード62(図4B)上に実装されたドーターボードを含むことができる。銅フィンガ72は、基板60の縁(エッジ)を包み込み、該基板60は、導電性パッド65と電気的に接触している。半田74を使用することにより、銅フィンガ72が、従って導電性パッド65が、マザーボード62上の対応する導電性パッド67に電気的に接続される。図4B内に具体的には示されていないが、電力部の構成要素は、マザーボード62上に実装される。
【0018】
図5A及び図5Bは、制御部52を含むドーターボード60が、導電性ヘッダピン82によって電力部54を含むマザーボード62に取り付けられる代替の構成を示す。ドーターボード60は、その中に形成された複数のスルーホール80を含み、該スルーホール80を介してヘッダピン82が挿入されて半田付けされ、これにより、制御部52の1つか又は複数の構成要素が、電力部54の1つか又は複数の構成要素に電気的に接続される。第1の回路基板60(ドーターボード)を第2の回路基板(マザーボード62)にはめ込むことによって、第1の回路基板60を第2の回路基板の表面63から持ち上げて離すことができる。このようにして、制御関連の構成要素のような電気的な構成要素69を、示されるように第1の回路基板60の底面61に実装することができる。該電気的な構成要素69は、図1内に示された構成要素のうちの1つか又は複数を、制御部52を構成するように含むことができる。制御部の構成要素をドーターボード60の両面上に実装することによって、ドーターボードの表面積を、構成要素が片面のみに実装されたドーターボードの表面積よりも小さくすることができる。
【0019】
図6A及び図6Bは、ドーターボード60が半田付リード線(solder-on-lead)83によってマザーボード62上に実装された更に別の実施形態を示す。リード線83は、ドーターボード60の導電性パッドと、マザーボード62の、対応する導電性パッド67とに半田付けされる。
【0020】
上記の説明は、本発明の原理と様々な実施形態とを例示することを意図したものである。上記開示が完全に理解されると、当業者であれば、多数の変形形態及び修正が明らかとなるであろう。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような変形形態及び修正を包含するように解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電力変換器の例示的な回路の一実施形態を示す図である。
【図2】電力変換器回路の様々な部分が分離して実装されることが可能な例示的な手法を示す図である。
【図3】電力変換器回路の様々な部分が分離して実装されることが可能な例示的な手法を示す図である。
【図4A】電力変換器の制御部の上面図である。
【図4B】電力変換器の電力部上に実装された、図4Aの電力変換器の断面図である。
【図5A】電力変換器の制御部の代替の上面図である。
【図5B】電力変換器の電力部上に実装された、図5Aの電力変換器の断面図である。
【図6A】電力変換器の制御部の更に別の代替の上面図である。
【図6B】電力変換器の電力部上に実装された、図6Aの電力変換器の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
50 電力変換器
56 制御ロジック
60 第1の回路基板
62 第2の回路基板
72 導電性フィンガ
82 導電性ヘッダピン
83 半田付リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を提供するよう構成された電力変換器(50)であって、
第1の回路基板(60)上に実装されるよう構成された制御ロジック(56)と、
前記制御ロジック(56)に電気的に結合されるように構成され且つ第2の回路基板(62)上に実装されるよう構成された、電力構成要素であって、前記電力のうちの少なくともいくらかは、前記電力構成要素(L1)を通って前記負荷へ流れることからなる、電力構成要素
とを備え、
前記第1の回路基板(60)は、前記第2の回路基板(62)に機械的に取り付けられることからなる、電力変換器。
【請求項2】
前記制御ロジック(56)は、パルス幅変調器(「PWM」)コントローラと、該PWMコントローラに結合された複数の受動構成要素(C1、C2、C4、R1、R2)とを備える、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項3】
前記制御ロジック(56)に電気的に結合されるよう構成され且つ前記第2の回路基板(62)上に実装されるよう構成される複数の電力構成要素を、更に備える、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項4】
前記電力構成要素は、電力トランジスタ、インダクタ(L1)、及び電力コンデンサから成るグループから選択された構成要素を含む、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項5】
前記電力構成要素は、前記第1の回路基板(60)によって少なくとも部分的に覆われるよう構成される、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項6】
前記第2の回路基板(62)は、コンピュータシステム内において使用されるためのマザーボードを含み、前記第1の回路基板(60)は、ドーターボードを含むことからなる、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項7】
前記第1の回路基板(60)は、導電性ヘッダピン(82)によって前記第2の回路基板(62)に機械的に且つ電気的に取り付けられる、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項8】
前記第1の回路基板(60)は、該第1の回路基板(60)の縁を包み込む導電性フィンガ(72)によって前記第2の回路基板(62)に機械的に且つ電気的に取り付けられる、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記第1の回路基板(60)は、該第1の回路基板(60)と前記第2の回路基板(62)との両方の導電性パッドに半田付けされた半田付リード線(83)によって前記第2の回路基板(62)に機械的に且つ電気的に取り付けられる、請求項1に記載の電力変換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate


【公開番号】特開2007−124889(P2007−124889A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287398(P2006−287398)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】