コントロールケーブルの支持構造体
【課題】振動等による接触音の発生を防ぐことが可能なコントロールケーブルの支持構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のコントロールケーブルの支持構造体は、コントロールケーブルと車体との間に介在される第1および第2支持体からなり、該第1支持体がコントロールケーブルを挿通する直管部と該直管部の少なくとも1箇所に設けられた突起部とからなり、該第2支持体が、該第1支持体を抜き差し可能に挿通する第1空間部と、該第1空間部と連通し該第1支持体を抜き差し不能に支持する第2空間部とが設けられた保持部とからなることを特徴とする。
【解決手段】本発明のコントロールケーブルの支持構造体は、コントロールケーブルと車体との間に介在される第1および第2支持体からなり、該第1支持体がコントロールケーブルを挿通する直管部と該直管部の少なくとも1箇所に設けられた突起部とからなり、該第2支持体が、該第1支持体を抜き差し可能に挿通する第1空間部と、該第1空間部と連通し該第1支持体を抜き差し不能に支持する第2空間部とが設けられた保持部とからなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコントロールケーブルの支持構造体、特にパーキングブレーキケーブルの支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の駐車時に車両が移動しないようにするために、車両にはパーキングブレーキ装置が設けられている。当該パーキングブレーキ装置の制御は、車体内に設けられた操作用レバーLと後車輪のブレーキ装置Bとの間に配索され、その配索経路に沿って操作レバーLとブレーキ装置Bの間の少なくとも1箇所を車体へ支持させたパーキングブレーキ装置用のコントロールケーブルC(以下、パーキングブレーキケーブルという)によって行われる(図7(a)参照)。
【0003】
一般の車両において、路面を走行したときには路面上の凹凸により車輪が振動する。この振動は車輪を介して車体に伝わり、乗員の乗り心地を悪くしてしまうため、車輪と車体とはコイルスプリングやリンク等により構成されるサスペンション装置を介して連結し、車輪の振動をサスペンション装置で吸収させることによって車輪の振動が車体へ伝わらないようにしている。
【0004】
パーキングブレーキケーブルは、前述したように一端が車体内の操作用レバーLに連結され、他端が後車輪のブレーキ装置Bに連結されているため、後車輪のブレーキ装置Bに連結された側だけが車輪と共に振動することになる。そのため、パーキングブレーキケーブルはこの振動に耐え得る構造で車体に支持される必要があり、また、その振動による車体とブレーキ装置B間のパーキングブレーキケーブルの配索経路の変化を許容できるように支持される必要がある。
【0005】
特許文献1に記載された考案は、図7(b)に示すように駐車ブレーキケーブルC(パーキングブレーキケーブル)の外周に合成樹脂ベアリングBeを嵌装し、同合成樹脂ベアリングBeをゴムブッシュBuを介して車体に支持してなることを特徴とするものである。
【0006】
特許文献2に記載された考案は、図8に示すように、中央にケーブルC(パーキングブレーキケーブル)を挿通する孔を設けるとともに外周に溝を形成したプーリPを設け、該プーリPの前記孔にパーキングブレーキケーブルCを挿通して前記溝と車体の一部とをコイルスプリングCSで結合したことを特徴とするものである。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された考案では、耐久性は高いが、パーキングブレーキケーブルの配索経路の変化を許容できないという問題があり、特許文献2に記載された考案では、パーキングブレーキケーブルの配索経路の変化は許容できるが、コイルスプリングCSの保持力のみでパーキングブレーキケーブルを支持させているため、耐久性が低いという問題がある。
【0008】
かかる問題に鑑みて、パーキングブレーキケーブルの支持構造体として、図9aに示すように、車体へ固定するためのブラケット102を周りに巻きつけ、長孔101aが形成されたプロテクター101にパーキングブレーキケーブルを挿通して支持する支持構造体100がある。この支持構造体100では、パーキングブレーキケーブルとプロテクター101の摺動による磨耗を防ぐために、図9cに示すようにパーキングブレーキケーブルのアウターケーシング上に金属製のクランプ部材105が設けられ、そのクランプ部材105は、パーキングブレーキケーブルのアウターケーシングを挿通しやすくするため、またプロテクター101が所定位置から移動しにくくするために、中央部105bより外径の大きいフランジ部105aを両端部に備えている。この支持構造体100は、プロテクター101の長孔101aへクランプ部材105のフランジ部105aを挿通しやすくするために、プロテクター101の長孔101aの内壁部101b間の寸法Hをクランプ部材105のフランジ部105aの外径より大きくする必要がある。
【0009】
しかしながら、この支持構造体100は、クランプ部材105の中央部105bの外径よりもプロテクター101の長孔101aの寸法Hが大きいため、パーキングブレーキケーブルが振動したときにクランプ部材105の中央部105bとプロテクター101の内壁部101bが接触・非接触を繰り返すことによる音が発生する問題がある。
【0010】
【特許文献1】実開昭59−195048号公報
【特許文献2】実開平1−96589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明はかかる事情に鑑み、耐久性があり、コントロールケーブルを確実に保持でき、配索経路の変化を許容でき、振動等による接触音の発生を防ぐことが可能で組み付けが容易なコントロールケーブルの支持構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコントロールケーブルの支持構造体は、コントロールケーブルと車体との間に介在される第1および第2支持体からなり、該第1支持体がコントロールケーブルを挿通する直管部と該直管部の少なくとも1箇所に設けられた突起部とからなり、該第2支持体が、該第1支持体を抜き差し可能に挿通する第1空間部と、該第1空間部と連通し該第1支持体を抜き差し不能に支持する第2空間部とが設けられた保持部とからなることを特徴とする。
【0013】
また、前記第1空間部が前記第2空間部の両側に設けられることが好ましい。
【0014】
また、前記保持部が第2空間部に向かって凸状に設けられた凸部を有してなることが好ましい。
【0015】
また、前記凸部が、第1支持体の挿通方向中心部が高くなるような勾配を有することが好ましい。
【0016】
また、前記凸部が、第2空間部を挟んで第2支持体の両側に設けられていることが好ましい。
【0017】
また、前記保持部の前記第1支持体が挿通される部分に平面部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第2支持体に設けられた保持部により、コントロールケーブルを確実に保持でき、かつ振動等による接触音の発生を防ぐことができる。また、保持部が凸部を有することにより、音の発生を防ぎつつ、コントロールケーブルの配索経路の変化を許容することができる。また、第2支持体に形成された第1空間部により、第1支持体を第2支持体に組み付けることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を説明する。
【0020】
図1(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図であり、図1(b)は図1(a)をU方向から見た図であり、図2(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第2支持体を説明するための図であり、図2(b)は、図2(a)におけるW−W断面図であり、図3(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第1支持体を説明するための図であり、図3(b)は図3(a)におけるX−X断面図であり、図4は第2支持体が左右に振れたときの本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図であり、図5(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図であり、図5(b)は図5(a)におけるY−Y断面図であり、図6は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図であり、図7(a)は、パーキングブレーキ装置全体を示す図であり、(b)は従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図8は従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図9aは、従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図9bは図9aにおけるZ−Z断面図であり、図9cは、従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図9dは図9cをV方向から見た図である。
【0021】
図1〜図3を参照すると、本発明のコントロールケーブルの支持構造体1は、コントロールケーブルCと車体Fとの間に介在される第1支持体であるクランプ部材2および第2支持体であるプロテクター3からなる。
【0022】
図1は本発明のコントロールケーブルの支持構造体1を車体Fへ組み付けた状態であり、後述するプロテクター3の第2空間部32へクランプ部材2の直管部22が斜めに配置されていることを示している。
【0023】
図3(a)に示されるように、クランプ部材2は、円筒形状の直管部22と該直管部22の長手方向の両端に形成された突起部であるフランジ部21とからなる。なお突起部であるフランジ部21は、図3(a)では直管部22の両端に形成されているが、直管部22の少なくとも1箇所に設けられていればよい。直管部22は、図3(a)および(b)では、円筒形状であるが、コントロールケーブルCを挿通することができれば特に形状は限られることはなく、断面楕円形状でも構わないし、角柱でも構わない。フランジ部21は、クランプ部材2が所定の位置範囲から移動しにくくするためのものであり、特にその形状を限定されることはなく、コントロールケーブルCの軸方向の移動を許容するために、フランジ部21同士の間隔D6はプロテクター3の寸法D5よりも大きくしている(D6>D5)。また、本実施の形態では、クランプ部材2へコントロールケーブルCを挿入しやすくするために形成した拡径部と兼用している。クランプ部材2の材質は、強度の観点から、金属製であることが好ましいが、ポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂でも構わないし、特に限定されることはない。
【0024】
当該クランプ部材2の貫通孔には、操作用レバーと後車輪のブレーキ装置間を連結するアウターケーシングC2とアウターケーシングC2内を摺動するインナーケーブルC1とからなるコントロールケーブルCが挿通され、かしめ等の方法によりアウターケーシングC2上に固定される。
【0025】
プロテクター3にはクランプ部材2が挿通される長孔が形成され、この長孔はクランプ部材2を抜き差し可能に挿通する第1空間部31と、該第1空間部31と連通し、クランプ部材2を抜き差し不能に支持する第2空間部32とからなる。図1〜4に示した実施の形態では、長孔の長軸に沿って長い第2空間部32と、長孔の長軸方向の両端に配置された第1空間部31が形成されている。プロテクター3の材質は、接触音の低減の観点から、軟質の合成樹脂であることが好ましいが、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)等のゴムでも構わないし、特に限定されることはない。
【0026】
プロテクター3には、クランプ部材2を抜き差し可能に挿通するための第1空間部31が設けられている。本実施の形態では第1空間部31は、円筒状のクランプ部材2のフランジ部21の形状に合わせて形成されているが、クランプ部材2が抜き差しできる形状であれば、特に限定されることはなく、クランプ部材2の形状に合わせて適宜変更が可能である。たとえば、第1空間部31の幅D1は、クランプ部材2のフランジ部21の外径であるD3より大きくしてもよい(D1>D3)し、プロテクター3を弾性変形が可能な材質で構成する場合は、プロテクター3が弾性変形してクランプ部材2の挿入が可能となるので、D3よりも多少小さくしてもよい(D1<D3)。
【0027】
また、プロテクター3には、クランプ部材2を抜き差し不能に支持する第2空間部32が形成されている。第2空間部32は、第1空間部31と連通しており、第1空間部31よりフランジ部21が挿通されたクランプ部材2は、その直管部22を第1空間部31から第2空間部32へ移動させることによって第2空間部32が設けられた保持部33により保持される。なお、本実施の形態において第1空間部31の幅D1と第2空間部32の幅D2との関係は、D1>D2であり、第2空間部32の幅D2は、クランプ部材2の直管部22の外径D4とほぼ等しくなるように形成されている(D2≒D4)。また、第2空間部32の幅D2はクランプ部材2のフランジ部21の外径であるD3よりも小さく形成されており(D2<D3)、クランプ部材2の直管部22が第2空間部32に配置されているときに、クランプ部材2が軸方向へ移動して第2空間部32から抜け出ることを防止している。このように、第1空間部31と第2空間部32を設けることにより、クランプ部材2をプロテクター3に組み付ける作業および取り外し作業が容易になる。なお、第1空間部31は、図2(a)のように2つ設けることも可能であるし、図5(a)のように1つだけであっても構わない。
【0028】
本実施の形態においてコントロールケーブルCを保持する保持部33は、図2(b)に示すようにプロテクター3に対して凸状に設けられた凸部34を有している。凸部34の形状は、凸状であれば特に限定されないが、第1空間部31から第2空間部32にクランプ部材2の直管部22を移動させる際に、組み付けやすいようにするため、第1空間部31から第2空間部32にかけてなだらかに傾斜していることが好ましい。凸部34は、プロテクター3と一体であっても別体であっても構わない。
【0029】
また、保持部33の凸部34を、クランプ部材2の挿通方向の中心部が高くなるような勾配を形成することもできる。このように勾配を形成することにより、図4に示すようにクランプ部材2が保持されるので、凸部34を支点とするクランプ部材2の左右方向の振れを許容することができるとともに、クランプ部材2がプロテクター3の保持部33との隙間を極力小さくしているため、クランプ部材2とプロテクター3の接触、非接触による接触音の発生を防ぐことができる。さらに、クランプ部材2とプロテクター3の保持部33との隙間を極力小さくしてもクランプ部材2とプロテクター3の保持部33との接触面積を小さくすることができるので、サスペンションの動きに応じたクランプ部材2の動き(左右方向の振れ、クランプ部材2の軸方向や長孔の長軸方向の動き)に支障を来さない。
【0030】
また、保持部33のクランプ部材2が挿通される部分に平面部を形成することもできる。この平面部は長孔の長軸に沿って形成され、凸部34が形成されている場合は凸部34の頂上部分に形成される。また、平面部は、凸部34と同様に保持部33の両側に互いに平行となるように形成されている。このように平面部を形成することにより、操作レバー、ブレーキ装置、コントロールケーブル等の構成部品の寸法のばらつきによるプロテクター3に対するクランプ部材2の位置が変わっても、平面部のいずれかの位置でクランプ部材2を確実に保持させることができる。
【0031】
つぎに本発明の他の実施の形態を説明する。図6に示すように本発明の他の実施の形態は、プロテクター3に形成された保持部33が凹所Rを有し、当該凹所Rに設けられた付勢手段Sにより、保持部33が押圧されることによりクランプ部材2が保持されている。凹所Rに設けられる付勢手段Sは、たとえば板バネ、コイルバネ、ゴム等の公知の弾性体を用いることができる。
【0032】
また、凹所R内にクランプ部材2に当接する当接体4が設けられ、付勢手段Sによりクランプ部材2を押圧する方向に付勢された当接体4を介してクランプ部材2を押圧してもよい。また、当接体4に溝Gを設けることにより、クランプ部材2が溝Gに沿って支持され、クランプ部材2をより強固に保持することができる。当接体4の材質は、金属、樹脂等、特に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図であり、(b)は図1(a)をU方向から見た図である。
【図2】(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第2支持体を説明するための図であり、(b)は図2(a)におけるW−W断面図である。
【図3】(a)は本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第1支持体を説明するための図であり、(b)は図3(a)におけるX−X断面図である。
【図4】第2支持体が左右に振れたときの本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図である。
【図5】(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図であり、(b)は図5(a)におけるY−Y断面図である。
【図6】本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図である。
【図7】(a)はパーキングブレーキ装置全体を示す図であり、(b)は従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図8】従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図9a】従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図9b】図9(a)におけるZ−Z断面図である。
【図9c】従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図9d】図9cをV方向から見た図である。
【符号の説明】
【0034】
1 コントロールケーブルの支持構造体
2 第1支持体(クランプ部材)
21 フランジ部
22 直管部
3 第2支持体(プロテクター)
31 第1空間部
32 第2空間部
33 保持部
34 凸部
4 当接体
B ブレーキ装置
Be 合成樹脂ベアリング
Bu ゴムブッシュ
C コントロールケーブル
C1 アウターケーシング
C2 インナーケーブル
CS コイルスプリング
F 車体
G 溝
L 操作レバー
P プーリ
R 凹所
S 付勢部材
【技術分野】
【0001】
本発明はコントロールケーブルの支持構造体、特にパーキングブレーキケーブルの支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の駐車時に車両が移動しないようにするために、車両にはパーキングブレーキ装置が設けられている。当該パーキングブレーキ装置の制御は、車体内に設けられた操作用レバーLと後車輪のブレーキ装置Bとの間に配索され、その配索経路に沿って操作レバーLとブレーキ装置Bの間の少なくとも1箇所を車体へ支持させたパーキングブレーキ装置用のコントロールケーブルC(以下、パーキングブレーキケーブルという)によって行われる(図7(a)参照)。
【0003】
一般の車両において、路面を走行したときには路面上の凹凸により車輪が振動する。この振動は車輪を介して車体に伝わり、乗員の乗り心地を悪くしてしまうため、車輪と車体とはコイルスプリングやリンク等により構成されるサスペンション装置を介して連結し、車輪の振動をサスペンション装置で吸収させることによって車輪の振動が車体へ伝わらないようにしている。
【0004】
パーキングブレーキケーブルは、前述したように一端が車体内の操作用レバーLに連結され、他端が後車輪のブレーキ装置Bに連結されているため、後車輪のブレーキ装置Bに連結された側だけが車輪と共に振動することになる。そのため、パーキングブレーキケーブルはこの振動に耐え得る構造で車体に支持される必要があり、また、その振動による車体とブレーキ装置B間のパーキングブレーキケーブルの配索経路の変化を許容できるように支持される必要がある。
【0005】
特許文献1に記載された考案は、図7(b)に示すように駐車ブレーキケーブルC(パーキングブレーキケーブル)の外周に合成樹脂ベアリングBeを嵌装し、同合成樹脂ベアリングBeをゴムブッシュBuを介して車体に支持してなることを特徴とするものである。
【0006】
特許文献2に記載された考案は、図8に示すように、中央にケーブルC(パーキングブレーキケーブル)を挿通する孔を設けるとともに外周に溝を形成したプーリPを設け、該プーリPの前記孔にパーキングブレーキケーブルCを挿通して前記溝と車体の一部とをコイルスプリングCSで結合したことを特徴とするものである。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された考案では、耐久性は高いが、パーキングブレーキケーブルの配索経路の変化を許容できないという問題があり、特許文献2に記載された考案では、パーキングブレーキケーブルの配索経路の変化は許容できるが、コイルスプリングCSの保持力のみでパーキングブレーキケーブルを支持させているため、耐久性が低いという問題がある。
【0008】
かかる問題に鑑みて、パーキングブレーキケーブルの支持構造体として、図9aに示すように、車体へ固定するためのブラケット102を周りに巻きつけ、長孔101aが形成されたプロテクター101にパーキングブレーキケーブルを挿通して支持する支持構造体100がある。この支持構造体100では、パーキングブレーキケーブルとプロテクター101の摺動による磨耗を防ぐために、図9cに示すようにパーキングブレーキケーブルのアウターケーシング上に金属製のクランプ部材105が設けられ、そのクランプ部材105は、パーキングブレーキケーブルのアウターケーシングを挿通しやすくするため、またプロテクター101が所定位置から移動しにくくするために、中央部105bより外径の大きいフランジ部105aを両端部に備えている。この支持構造体100は、プロテクター101の長孔101aへクランプ部材105のフランジ部105aを挿通しやすくするために、プロテクター101の長孔101aの内壁部101b間の寸法Hをクランプ部材105のフランジ部105aの外径より大きくする必要がある。
【0009】
しかしながら、この支持構造体100は、クランプ部材105の中央部105bの外径よりもプロテクター101の長孔101aの寸法Hが大きいため、パーキングブレーキケーブルが振動したときにクランプ部材105の中央部105bとプロテクター101の内壁部101bが接触・非接触を繰り返すことによる音が発生する問題がある。
【0010】
【特許文献1】実開昭59−195048号公報
【特許文献2】実開平1−96589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明はかかる事情に鑑み、耐久性があり、コントロールケーブルを確実に保持でき、配索経路の変化を許容でき、振動等による接触音の発生を防ぐことが可能で組み付けが容易なコントロールケーブルの支持構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコントロールケーブルの支持構造体は、コントロールケーブルと車体との間に介在される第1および第2支持体からなり、該第1支持体がコントロールケーブルを挿通する直管部と該直管部の少なくとも1箇所に設けられた突起部とからなり、該第2支持体が、該第1支持体を抜き差し可能に挿通する第1空間部と、該第1空間部と連通し該第1支持体を抜き差し不能に支持する第2空間部とが設けられた保持部とからなることを特徴とする。
【0013】
また、前記第1空間部が前記第2空間部の両側に設けられることが好ましい。
【0014】
また、前記保持部が第2空間部に向かって凸状に設けられた凸部を有してなることが好ましい。
【0015】
また、前記凸部が、第1支持体の挿通方向中心部が高くなるような勾配を有することが好ましい。
【0016】
また、前記凸部が、第2空間部を挟んで第2支持体の両側に設けられていることが好ましい。
【0017】
また、前記保持部の前記第1支持体が挿通される部分に平面部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第2支持体に設けられた保持部により、コントロールケーブルを確実に保持でき、かつ振動等による接触音の発生を防ぐことができる。また、保持部が凸部を有することにより、音の発生を防ぎつつ、コントロールケーブルの配索経路の変化を許容することができる。また、第2支持体に形成された第1空間部により、第1支持体を第2支持体に組み付けることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を説明する。
【0020】
図1(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図であり、図1(b)は図1(a)をU方向から見た図であり、図2(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第2支持体を説明するための図であり、図2(b)は、図2(a)におけるW−W断面図であり、図3(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第1支持体を説明するための図であり、図3(b)は図3(a)におけるX−X断面図であり、図4は第2支持体が左右に振れたときの本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図であり、図5(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図であり、図5(b)は図5(a)におけるY−Y断面図であり、図6は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図であり、図7(a)は、パーキングブレーキ装置全体を示す図であり、(b)は従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図8は従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図9aは、従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図9bは図9aにおけるZ−Z断面図であり、図9cは、従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図であり、図9dは図9cをV方向から見た図である。
【0021】
図1〜図3を参照すると、本発明のコントロールケーブルの支持構造体1は、コントロールケーブルCと車体Fとの間に介在される第1支持体であるクランプ部材2および第2支持体であるプロテクター3からなる。
【0022】
図1は本発明のコントロールケーブルの支持構造体1を車体Fへ組み付けた状態であり、後述するプロテクター3の第2空間部32へクランプ部材2の直管部22が斜めに配置されていることを示している。
【0023】
図3(a)に示されるように、クランプ部材2は、円筒形状の直管部22と該直管部22の長手方向の両端に形成された突起部であるフランジ部21とからなる。なお突起部であるフランジ部21は、図3(a)では直管部22の両端に形成されているが、直管部22の少なくとも1箇所に設けられていればよい。直管部22は、図3(a)および(b)では、円筒形状であるが、コントロールケーブルCを挿通することができれば特に形状は限られることはなく、断面楕円形状でも構わないし、角柱でも構わない。フランジ部21は、クランプ部材2が所定の位置範囲から移動しにくくするためのものであり、特にその形状を限定されることはなく、コントロールケーブルCの軸方向の移動を許容するために、フランジ部21同士の間隔D6はプロテクター3の寸法D5よりも大きくしている(D6>D5)。また、本実施の形態では、クランプ部材2へコントロールケーブルCを挿入しやすくするために形成した拡径部と兼用している。クランプ部材2の材質は、強度の観点から、金属製であることが好ましいが、ポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂でも構わないし、特に限定されることはない。
【0024】
当該クランプ部材2の貫通孔には、操作用レバーと後車輪のブレーキ装置間を連結するアウターケーシングC2とアウターケーシングC2内を摺動するインナーケーブルC1とからなるコントロールケーブルCが挿通され、かしめ等の方法によりアウターケーシングC2上に固定される。
【0025】
プロテクター3にはクランプ部材2が挿通される長孔が形成され、この長孔はクランプ部材2を抜き差し可能に挿通する第1空間部31と、該第1空間部31と連通し、クランプ部材2を抜き差し不能に支持する第2空間部32とからなる。図1〜4に示した実施の形態では、長孔の長軸に沿って長い第2空間部32と、長孔の長軸方向の両端に配置された第1空間部31が形成されている。プロテクター3の材質は、接触音の低減の観点から、軟質の合成樹脂であることが好ましいが、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)等のゴムでも構わないし、特に限定されることはない。
【0026】
プロテクター3には、クランプ部材2を抜き差し可能に挿通するための第1空間部31が設けられている。本実施の形態では第1空間部31は、円筒状のクランプ部材2のフランジ部21の形状に合わせて形成されているが、クランプ部材2が抜き差しできる形状であれば、特に限定されることはなく、クランプ部材2の形状に合わせて適宜変更が可能である。たとえば、第1空間部31の幅D1は、クランプ部材2のフランジ部21の外径であるD3より大きくしてもよい(D1>D3)し、プロテクター3を弾性変形が可能な材質で構成する場合は、プロテクター3が弾性変形してクランプ部材2の挿入が可能となるので、D3よりも多少小さくしてもよい(D1<D3)。
【0027】
また、プロテクター3には、クランプ部材2を抜き差し不能に支持する第2空間部32が形成されている。第2空間部32は、第1空間部31と連通しており、第1空間部31よりフランジ部21が挿通されたクランプ部材2は、その直管部22を第1空間部31から第2空間部32へ移動させることによって第2空間部32が設けられた保持部33により保持される。なお、本実施の形態において第1空間部31の幅D1と第2空間部32の幅D2との関係は、D1>D2であり、第2空間部32の幅D2は、クランプ部材2の直管部22の外径D4とほぼ等しくなるように形成されている(D2≒D4)。また、第2空間部32の幅D2はクランプ部材2のフランジ部21の外径であるD3よりも小さく形成されており(D2<D3)、クランプ部材2の直管部22が第2空間部32に配置されているときに、クランプ部材2が軸方向へ移動して第2空間部32から抜け出ることを防止している。このように、第1空間部31と第2空間部32を設けることにより、クランプ部材2をプロテクター3に組み付ける作業および取り外し作業が容易になる。なお、第1空間部31は、図2(a)のように2つ設けることも可能であるし、図5(a)のように1つだけであっても構わない。
【0028】
本実施の形態においてコントロールケーブルCを保持する保持部33は、図2(b)に示すようにプロテクター3に対して凸状に設けられた凸部34を有している。凸部34の形状は、凸状であれば特に限定されないが、第1空間部31から第2空間部32にクランプ部材2の直管部22を移動させる際に、組み付けやすいようにするため、第1空間部31から第2空間部32にかけてなだらかに傾斜していることが好ましい。凸部34は、プロテクター3と一体であっても別体であっても構わない。
【0029】
また、保持部33の凸部34を、クランプ部材2の挿通方向の中心部が高くなるような勾配を形成することもできる。このように勾配を形成することにより、図4に示すようにクランプ部材2が保持されるので、凸部34を支点とするクランプ部材2の左右方向の振れを許容することができるとともに、クランプ部材2がプロテクター3の保持部33との隙間を極力小さくしているため、クランプ部材2とプロテクター3の接触、非接触による接触音の発生を防ぐことができる。さらに、クランプ部材2とプロテクター3の保持部33との隙間を極力小さくしてもクランプ部材2とプロテクター3の保持部33との接触面積を小さくすることができるので、サスペンションの動きに応じたクランプ部材2の動き(左右方向の振れ、クランプ部材2の軸方向や長孔の長軸方向の動き)に支障を来さない。
【0030】
また、保持部33のクランプ部材2が挿通される部分に平面部を形成することもできる。この平面部は長孔の長軸に沿って形成され、凸部34が形成されている場合は凸部34の頂上部分に形成される。また、平面部は、凸部34と同様に保持部33の両側に互いに平行となるように形成されている。このように平面部を形成することにより、操作レバー、ブレーキ装置、コントロールケーブル等の構成部品の寸法のばらつきによるプロテクター3に対するクランプ部材2の位置が変わっても、平面部のいずれかの位置でクランプ部材2を確実に保持させることができる。
【0031】
つぎに本発明の他の実施の形態を説明する。図6に示すように本発明の他の実施の形態は、プロテクター3に形成された保持部33が凹所Rを有し、当該凹所Rに設けられた付勢手段Sにより、保持部33が押圧されることによりクランプ部材2が保持されている。凹所Rに設けられる付勢手段Sは、たとえば板バネ、コイルバネ、ゴム等の公知の弾性体を用いることができる。
【0032】
また、凹所R内にクランプ部材2に当接する当接体4が設けられ、付勢手段Sによりクランプ部材2を押圧する方向に付勢された当接体4を介してクランプ部材2を押圧してもよい。また、当接体4に溝Gを設けることにより、クランプ部材2が溝Gに沿って支持され、クランプ部材2をより強固に保持することができる。当接体4の材質は、金属、樹脂等、特に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図であり、(b)は図1(a)をU方向から見た図である。
【図2】(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第2支持体を説明するための図であり、(b)は図2(a)におけるW−W断面図である。
【図3】(a)は本発明のコントロールケーブルの支持構造体に用いられる第1支持体を説明するための図であり、(b)は図3(a)におけるX−X断面図である。
【図4】第2支持体が左右に振れたときの本発明のコントロールケーブルの支持構造体を説明するための図である。
【図5】(a)は、本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図であり、(b)は図5(a)におけるY−Y断面図である。
【図6】本発明のコントロールケーブルの支持構造体の一実施の形態を示す図である。
【図7】(a)はパーキングブレーキ装置全体を示す図であり、(b)は従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図8】従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図9a】従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図9b】図9(a)におけるZ−Z断面図である。
【図9c】従来のコントロールケーブルの支持構造体を示す図である。
【図9d】図9cをV方向から見た図である。
【符号の説明】
【0034】
1 コントロールケーブルの支持構造体
2 第1支持体(クランプ部材)
21 フランジ部
22 直管部
3 第2支持体(プロテクター)
31 第1空間部
32 第2空間部
33 保持部
34 凸部
4 当接体
B ブレーキ装置
Be 合成樹脂ベアリング
Bu ゴムブッシュ
C コントロールケーブル
C1 アウターケーシング
C2 インナーケーブル
CS コイルスプリング
F 車体
G 溝
L 操作レバー
P プーリ
R 凹所
S 付勢部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロールケーブルと車体との間に介在される第1および第2支持体からなり、
該第1支持体がコントロールケーブルを挿通する直管部と該直管部の少なくとも1箇所に設けられた突起部とからなり、
該第2支持体が、該第1支持体を抜き差し可能に挿通する第1空間部と、該第1空間部と連通し該第1支持体を抜き差し不能に支持する第2空間部とが設けられた保持部とからなる
ことを特徴とするコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項2】
前記第1空間部が前記第2空間部の両側に設けられることを特徴とする請求項1記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項3】
前記保持部が第2空間部に向かって凸状に設けられた凸部を有してなることを特徴とする請求項1または2記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項4】
前記凸部が、第1支持体の挿通方向中心部が高くなるような勾配を有することを特徴とする請求項3記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項5】
前記凸部が、第2空間部を挟んで第2支持体の両側に設けられていることを特徴とする請求項3または4記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項6】
前記保持部の前記第1支持体が挿通される部分に平面部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項1】
コントロールケーブルと車体との間に介在される第1および第2支持体からなり、
該第1支持体がコントロールケーブルを挿通する直管部と該直管部の少なくとも1箇所に設けられた突起部とからなり、
該第2支持体が、該第1支持体を抜き差し可能に挿通する第1空間部と、該第1空間部と連通し該第1支持体を抜き差し不能に支持する第2空間部とが設けられた保持部とからなる
ことを特徴とするコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項2】
前記第1空間部が前記第2空間部の両側に設けられることを特徴とする請求項1記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項3】
前記保持部が第2空間部に向かって凸状に設けられた凸部を有してなることを特徴とする請求項1または2記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項4】
前記凸部が、第1支持体の挿通方向中心部が高くなるような勾配を有することを特徴とする請求項3記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項5】
前記凸部が、第2空間部を挟んで第2支持体の両側に設けられていることを特徴とする請求項3または4記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【請求項6】
前記保持部の前記第1支持体が挿通される部分に平面部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコントロールケーブルの支持構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【公開番号】特開2009−236197(P2009−236197A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81724(P2008−81724)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】
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