説明

コンニャクマンナン起泡剤

【課題】食品に使用できる起泡力およびその持続性にすぐれた起泡剤を提供する。
【解決手段】コンニャクマンナンとメチルセルロースを重量基準で90:10〜10〜90の比で混合してなる起泡剤。メチルセルロースは水溶性のセルロースエーテルであり、それ自体には、起泡力はないが、これをコンニャクマンナンと混合することにより持続性の泡を生成する起泡剤が得られる。また該起泡剤は、コンニャクマンナンが他の増粘剤に比較して低濃度で高粘度のため、泡が長時間持続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンニャクマンナンとメチルセルロースの混合物よりなる起泡剤、特に食品用の起泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を泡立てるための起泡剤およびホイッピング剤としては、卵白、卵白アルブミン、カゼイン、カゼインナトリウム、グルテン分解物、大豆リン脂質などの天然物、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤があり、各種食品に使用されている。
【0003】
コンニャクマンナンは、コンニャクイモの塊茎に存在する多糖類であり、このもののゾルをアルカリで処理して得られる不可逆ゲルがコンニャクである。コンニャクマンナンは水に溶け、高粘度の溶液を与えるので増粘剤として食品に使用される。
【0004】
特許文献1は、グルコマンナンを気泡入り氷菓の製造に使用することを記載する。具体的にはグルコマンナンを水に加え、これに水酸化カルシウムの懸濁液を加え、加熱してマンナン水和物のゲルをつくり、このゲルと卵白をミキサーで泡立て、型に入れて冷凍して泡雪状の氷菓を得ている。
【0005】
特許文献2は、コンニャク粉と水と卵との混合物を攪拌して泡立てた後に、凝固剤(水酸化カルシウム)を加えて予め定められた形状に固化させることよりなる、気泡混入コンニャクの製造方法を記載する。
【0006】
特許文献3は、コンニャク粉を水で膨潤させたゾルに、炭酸アルカリまたは重炭酸アルカリを加え、これに有機酸を加えて発泡させ、その状態で加熱凝固させることよりなる気泡入りコンニャクの製造法を記載する。
【0007】
これらの先行技術はいずれもコンニャクマンナンを起泡剤として使用するものではなく、起泡は卵または卵白、および化学反応によって発生する炭酸ガスを使用している。
【0008】
【特許文献1】特開平8−84561公報
【特許文献2】特開平9−9888公報
【特許文献3】特開平9−215474公報
【0009】
一般に起泡剤には起泡力と、その泡の持続性とが求められる。しかしながらコンニャクマンナン(グルコマンナン)自体は起泡力が殆どなく、あるのは強い増粘作用である。
【発明の開示】
【0010】
本発明者らは、それ自体は起泡力を持たないコンニャクマンナンとメチルセルロースとの混合物が持続性を有する起泡剤として有用であることを見出した。この知見に基づいて、本発明は、コンニャクマンナンとメチルセルロースを90:10〜10:90の比(重量基準以下同じ)で混合してなる起泡剤を提供する。生成した泡の持続性を高めるためにはコンニャクマンナンリッチな混合物、例えば混合比90:10〜50:50が好ましい。
【0011】
メチルセルロースは水溶性のセルロースエーテルであり、水溶性ガムとして食品にも使用されているが、起泡力はないので、これをコンニャクマンナンと混合することにより持続性の泡を生成する起泡剤が得られることは意外であった。
【0012】
本発明の起泡剤の特徴は、泡の長時間持続性にある。これはコンニャクマンナンが他の増粘剤に比較して低濃度で高粘度の水溶液を与えることに関係しているものと推測される。すなわち泡が高粘性のため長時間破壊されないためであると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先に述べたとおり、コンニャクマンナンはコンニャクイモの塊茎に存在する。コンニャクイモを水洗後、スライスして乾燥して粉砕し、さらに澱粉質など不純物を分離したものがコンニャク精粉と呼ばれる。このコンニャク精粉にはコンニャクマンナンが約75〜85%程度含まれている。
【0014】
コンニャク精粉からさらに不純物を除去した高純度のコンニャクマンナンも市販されている。例えば本出願人から「プロポールA」,「レオレックスRS」,「レオレックスLM」の商品名のもとに提供されている高純度コンニャクマンナンがある。コンニャク精粉を使用することもできるが、これからさらに不純物を取り除いた高純度コンニャクマンナンを使用するのが好ましい。
【0015】
他方の原料のメチルセルロースは食品添加物として市販されている。このものは一般にメトキシ基含量が26〜33%の範囲内であり、グルコース単位あたりのメトキシ基のモル数(置換度)は1.65〜2.2の範囲内にある。メトキシ基含量29%、置換度約1.8のものが市販されているのでこのものを使用すれば良い。
【0016】
コンニャクマンナンとメチルセルロースの混合比は、90:10〜10:90の範囲で変動し得るが、一般にコンニャクマンナンリッチの混合比、すなわち90:10〜50:50の範囲にあることが好ましい。特定の混合比は、対象とする製品の起泡度に依存し、高発泡を求める場合は60:40の混合比が適している。本発明の起泡剤はコンニャクマンナンを含んでいるので、アルカリ(水酸化カルシウム)を使って起泡した混合物のゾルを発泡状態で不可逆的にゲル化することができる。
【0017】
混合物の添加量は食品の種類によって0.1%から10%まで大きく変動する。一般に水分が多く含まれている食品には添加量が少なくてすみ、脂肪分が多く含まれている食品には添加量を多くする必要がある。これまで起泡を必要とする食品には先に述べたような起泡剤(卵白、非イオン界面活性剤など)が使用されているので、これら起泡剤の添加量を基準にして決めればよい。
【0018】
添加方法は、混合物を90℃までの温度に加温した水に溶解して水溶液とし、これを食品原料へ添加してミキサーで攪拌して泡立てるのが良い。
【0019】
本発明の起泡剤は、例えばソフトクリーム、ムースデザートソース、ケーキ生地、ホイップトップなどの起泡または発泡させた食品の製造に使用することができる。また通常は気泡を含まない食品を起泡させ、体積の膨張による膨満感を与えるダイエット食品や、気泡を含むことでソフトな食感を与える食品の製造にも応用することができる。さらに噴射剤を使って使用直前に発泡させる化粧品、例えばひげそりクリーム、整髪用ムースや、一般の工業的用途にも使用することができる。
【実施例】
【0020】
以下に限定を意図しない実施例によって本発明を例証する。実施例中「部」および「%」は特記しない限り重量基準による。また使用した原料は、商品名プロポールAの高純度コンニャクマンナンと、市販の食品添加物規格のメチルセルロースである。
【0021】
実施例1
コントロール群に卵白を用いて気泡の残存状態を比較した。
卵白60部に対して、砂糖を40部入れハンドミキサー(TOSHIBA製・HM−20S)を用いて2分間攪拌した。
試験群は、コンニャクマンナンとメチルセルロースを6:4の割合で添加し、その1%溶液を用い、コントロールと同様にこの溶液60部と砂糖40部を加えてハンドミキサーで2分間攪拌した。
得られた検体について、気泡残存率(起泡し静置した後の体積/全体積)の変化を調べた。結果を表1および図1のグラフに示す。
【0022】
【表1】

【0023】
試験直後及び1時間後では気泡残存に差はなかったが、5時間後では試験群に対してコントロール群では13%の減少となり、3日後では約23%の減少となった。
【0024】
実施例2
豆乳を用いたマヨネーズ様食品として、次の処方で原料を配合し、ハンドミキサー(TOSHIBA製・HM−20S)を使用して攪拌し、泡立てた。
【0025】
【表2】

【0026】
コントロール群と比較して試験群は約10%体積が増えたことが確認された。
【表3】

【0027】
実施例3
コンニャクマンナンとメチルセルロースの混合物を用いて気泡入りコンニャクマンナンゲルを製造した。
その1.コンニャクマンナン3%とメチルセルロース1%を含む水溶液を泡立て、これにコンニャクマンナンに対して5%の水酸化カルシウムを添加し、型に入れ、加熱し、冷却後冷凍(−35℃)した。
その2.コンニャクマンナン5%とメチルセルロース2%を含む水溶液を用いるほかは、その1の操作をくり返した。
メチルセルロースを含まないコンニャクマンナン3%の水溶液を泡立てることなく同じ操作で作ったコンニャクマンナンゲルをコントロールとし、その1およびその2で得たゲルのコントロールゲルに対する体積膨張率(パーセント)を算出した。
その結果、コントロールに対し、その1で得た気泡入りゲルの体積は151%へ膨張し、その2のゲルは139%へ膨張した。
また気泡入りゲルの断面の拡大写真において、微細な空胴が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コントロール群と比較した実施例1の気泡の経時的残存率のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンニャクマンナンとメチルセルロースを重量基準で90:10〜10〜90の比で混合してなる起泡剤。
【請求項2】
コンニャクマンナンとメチルセルロースの混合比が重量基準で90:10〜50:50である請求項1の起泡剤。
【請求項3】
請求項1または2の起泡剤をあらかじめ加温した水に溶解し、この溶液を食品原料へ添加し、ミキサーを使用して泡立てることよりなる、気泡入り食品の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2の起泡剤のヒドロゾルへ水酸化カルシウムを添加し、型に入れて加熱し、冷却することよりなる気泡入りコンニャクの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−124980(P2009−124980A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302439(P2007−302439)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(591050822)清水化学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】