説明

コンニャク加工食品およびその製造方法

【課題】コンニャク粉と小麦粉などの食品原料素材との混合工程に問題を生じることなく新規物性を有するコンニャク加工食品を製造し提供する。
【解決手段】コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌してそれらが糊化するまでの間に、吸水させた第1の食品原料素材とアルカリを混和してpH値が10〜12を有するゲル化物となす工程、および、生成したゲル化物に第2の食品原料素材を混和する工程を含むコンニャク加工食品の製造方法および製造したコンニャク加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品原料素材を含有するコンニャク加工食品及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌してそれらが糊化するまでの間に、吸水させた第1の食品原料素材とアルカリを混和してpH値が10〜12を有するゲル化物となす工程、および、生成したゲル化物に第2の食品原料素材を混和する工程を含むコンニャク加工食品の製造方法およびコンニャク加工食品に関するものである。
本発明により、コンニャク粉と小麦粉などの粉体および水を混練するにあたり、均一な混合物の生成が可能となり、さらに、食品原料素材と組み合わせることにより密度の高いボディーと従来にない独特な物性を有するコンニャク加工食品を製造し提供することができる。本発明のコンニャク加工食品は、低カロリーでヘルシーな多繊維含有食品であり、従来にない独特の食感を有する新しい食品の開発に有用なコンニャク加工食品である。
【背景技術】
【0002】
通常コンニャクと呼ばれる食品は、グルコマンナンなどを原料とし、96〜97%が水分からなるゲル状物質である。グルコマンナンはグルコースとマンノースが2:3〜1:2の比率で重合した多糖類の一種でコンニャクマンナンとも呼ばれ、ヒトの消化管ではほとんど消化されず腸内微生物により一部脂肪酸に変換されて利用される。このため、カロリーが極めて低い食品の一つとされている。コンニャクの主原料であるグルコマンナンは、サトイモ科コンニャク属に属するコンニャク芋(塊茎)に含まれる天然の食物繊維である。グルコマンナンを3%程度の濃度となるように水に溶解(膨潤)させて、2〜3時間放置し、水酸化カルシウムなどのアルカリを加えて練り合わせ、湯中で加熱すると、独特の弾性のある熱不可逆性のゲルを形成する。しかしながら、アルカリを加えないでグルコマンナンを水に溶解(膨潤)しただけではゲルとならず、デンプン糊状のゾルとなる。
【0003】
近年、グルコマンナンは、コンニャク以外の食品でも、食物繊維補給、固形食品の食感改良、保水性向上などの目的でもって使用されている。特に、摂取カロリーを制限する必要のある場合の食品素材として多く利用される。また、グルコマンナンは代表的な食物繊維で、血糖値や血中コレステロールを下げる効果や免疫増強活性があると言われている。
このように、グルコマンナンなどの水溶性食物繊維は、低カロリーで、かつ、高粘性であり、消化管内での食物の通過時間を遅らせることができるため、食事摂取量の減少、体重増加の抑制、体脂肪の減少などの生理的効果があるとされ、そのため、従来、グルコマンナンを種々の食品に添加した健康食品類が種々提供されている。また、グルコマンナンを含む独特の食感を有する食品が提供されている。
【0004】
グルコマンナンを利用した食品に関しては、例えば、でんぷんを多く含み食感が良く茹で伸びしない、澱粉を含む麺類を製麺する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、澱粉質原料とコンニャク糊を含む原料に加水して生地を調製する際に、でんぷん質原料100質量部に対して、コンニャク糊中の水分を含めた加水量が40〜70質量部となるようにして麺類を製造する。しかしながら、そこに開示されている麺類は、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤が凝固剤として加えられたコンニャク糊を原料としている。さらに、コンニャクを大量の水を含んだ状態で凝固させているため、多量のコンニャクを配合することができないという問題がある。
【0005】
また、コンニャクを含有する麺類の製造に関しては、水または微温湯1リットルに対しコンニャク精粉を20〜35gの割合にかき混ぜながら加えて30分〜2時間放置して出来たコンニャクと、小麦粉1.7〜2.5kgと、デンプン200〜600gとを混合して、160〜200℃の温度の蒸気を照射しながら3〜8分間攪拌することにより生成したコンニャクと小麦粉からなる混合練粉を所定の形状に切断成型する麺類製造方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、そこに開示されている麺類は、麺類中のコンニャク粉の割合が1%程度と極めて少なく、低カロリー食品と言えるほど、カロリーを低減することはできていない。
【0006】
コンニャク成分を含有する他の種類の食品を製造する従来技術としては、例えば、澱粉を主原料とする食品にコンニャク成分を多く含有させ、低カロリーで、食物繊維を多く含む食品とし、かつ、食感も良い、コンニャク含有食品及びその製造方法を提供することを課題として、澱粉とコンニャク粉をあらかじめ混合した配合物100質量部に対して水を5〜35質量部加え、次いでコンニャク凝固剤を配合せずに、これらの配合物を撹拌して混合物を得る工程と、前記混合物を加圧混練してペースト状混練物を調製する工程と、前記ペースト状混練物を加圧押出して所要形状に成形する工程を備え、100質量部中にコンニャク成分を5〜50質量部含むことを特徴とするコンニャク含有食品、例えば、春雨の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、コンニャクペーストを食品に配合する技術が提案されている(特許文献4参照)。この技術は、コンニャク粉を10〜50重量倍量の常温水または温水に浸漬して充分に膨潤させ、アルカリ剤を添加して加熱凝固させて得られた固形のゲルを細かく裁断してコンニャクペーストとするに際し、疎水性の材料(油など)で被覆した酸(クエン酸など)を添加しておき、ペースト状となった後に中和反応が進行するようにして製造した、弱アルカリ性、中性或いは弱酸性のコンニャクペーストを食品に配合したコンニャク系物質配合食品に関する。
【0008】
さらに、長期間にわたり無菌状態で保存可能であり、且つ粘性などの物性が安定したコンニャクゾル製品の製造方法が提案されている(特許文献5参照)。この技術は、水に対しコンニャク粉0.5〜3.0%を添加して作られたコンニャクゾルを包装容器に充填し、101℃以上の温度で常圧又は加圧にて15〜150分間加熱処理することにより殺菌し且つ酵素を失活させることから成るコンニャクゾルの製造方法である。この方法は、通常はゲルの状態で利用されているコンニャクを、ゾルの形で常時利用できるようにするものであるが、ゾル中のコンニャク粉の割合は少なく、コンニャク成分を多量に含有するゲル状食品類を目的とするものではない。
【0009】
【特許文献1】特開2003−167号公報
【特許文献2】特開平9−117261号公報
【特許文献3】特開2008−136484号公報
【特許文献4】特開平5−207854号公報
【特許文献5】特開2001−178380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
食品製造業界では、コンニャクを使用することにより、低カロリー意識やヘルシー感に加え、新しい物性を付与して新鮮な食感を有する若人向きを中心とした商品開発が検討されている。しかし、多くの試みの中で、コンニャク粉をそのまま少量配合したもの以外は実用化には乏しいのが現状である。通常のコンニャクの製法は、水または湯の中にコンニャク粉を2〜4%になるように混合して数分間練ると糊状(ゾル状)となし、これを1〜2時間放置したのち、水酸化カルシウムなどのアルカリと加熱してゲル化(凝固)させる。このときコンニャク粉の種類(特別粉、荒粉など)や濃度によって、従来から物性を変えることも可能であったが、商品としてみるとその変化は小さく限界があった。また、本発明のような、密度が高いボディーを持ち、これまでのコンニャク製品には見られない独特な物性を呈すると共に、コンニャクと食品原料素材を任意の割合で組み合わせることが可能な食品の開発には成功した例はなかった
【0011】
特に、コンニャク粉と他の食品原料素材、例えば、小麦粉、でんぷんと組み合わせて新しいタイプのコンニャク食品を製造する際に、コンニャク粉と食品原料粉の混合物に加水すると均一な混合状態を得ることは困難であり、次いでアルカリ添加を添加してゲル化処理した後の製品は満足する性能を有するものではなかった。本発明はこうした従来未解決の課題を簡便な方法により解決するものであるばかりか、さらに、従来にはない物性を有するコンニャク加工食品を提供するものである。
【0012】
従来のコンニャク粉を利用した食品の製造には、コンニャク粉、小麦粉と水の混合物を得るに当たりアルカリ剤を使用しない技術(例えば、特許文献2、3、5)が見られるが、これらの技術は、作製した生地から直ちに麺類を製造するか、水とコンニャク粉からなる混合物そのものを食品の物性改良剤として、例えば、冷麺の製造に使用することなどが記載され、コンニャクの持つ粘性による食品の物性改善が示唆されているに過ぎない。また、これらの技術は、水とコンニャク粉が完全に糊化している混合物の利用であり、小麦粉などとの均一な混合は容易ではなかった。さらに、これらの従来、コンニャクと小麦粉などとの混合物をアルカリ処理してゲル化させること、およびアルカリ処理することにより従来にない物性を有するコンニャク加工食品が製造できることを示唆するものではない。
【0013】
本発明者らは、コンニャク粉がゾル状態を経由してゲル化するという特性を巧みに利用することにより、コンニャクを様々な食品原料素材や調味料などと組み合わせて新しい性質を有する加工食品の製造すること、および上記の如き従来の混合時の問題点を解消することを可能とする新技術の開発を目標として鋭意研究を積み重ねた結果本発明を完成したものである。
本発明は、コンニャク粉と小麦粉などの食品原料素材との混合工程に問題を生じることのない糊化物およびコンニャク加工食品を提供すること、すなわち、従来のコンニャク粉とそれ以外の食品原料素材を多量に活用したものであって、食品業界にも広く利用され得る新しいコンニャク加工品を提供することを目的とする。また、任意の量の食品原料素材や調味料をその種類を問わずコンニャクと組み合わせた新しい商品を開発すること、従来のコンニャク加工食品では達成することができなかった物性を有する食品を提供することを目的とする。さらに、本発明は、食品原料素材を含有しているコンニャク糊を包装、商品化して関連食品業界にこんにゃく加工食品製造用の糊化物(ゾル)として提供することにより、本発明のコンニャク加工食品の製造方法を広く利用することが容易となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の糊化物を製造する方法は、以下の技術的手段から構成される。
(1)コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌してそれらが糊化するまでの間に、吸水させた第1の食品原料素材とアルカリを混和してpH値が10〜12を有するゲル化物となす工程、および、生成したゲル化物に第2の食品原料素材を混和する工程を含むことを特徴とするコンニャク加工食品の製造方法。
(2)吸水させた第1の食品原料素材が固体状、スラリー状または液状である上記(1)に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(3)コンニャク精粉1重量部から10重量部に対して水または温湯100重量部を配合する上記(1)または(2)に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(4)コンニャク精粉および水または温湯の混合物100重量部に対して、第1と第2の食品原料素材の総和が2重量部から250重量部となるように配合する上記(1)から(3)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(5)コンニャク精粉、水、および吸水させた第1の食品原料素材からなる混合物100重量部に対して、第2の食品原料素材を20重量部から200重量部となるように配合する上記(1)から(4)のいずれかに記載のコンニャク加工食の製造方法。
(6)吸水させた第1の食品原料素材が、穀物粉、でんぷん類、食物タンパク質、食物多糖類および水溶性または難溶性繊維からなる群から選ばれた1種または2種以上である上記(1)から(5)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(7)第2の食品原料素材が、果実、野菜、魚肉、畜肉、穀物粉の水化物および水を吸収させた穀物粉らなる群から選ばれた1種または2種以上の材料である上記(1)から(6)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(8)コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌してそれらが糊化するまでの間に吸水させた第1の食品原料素材を混和した糊化物を冷凍し貯蔵する工程を含む上記(1)から(7)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(9)吸水させた第1の食品原料素材および/または第2の食品原料素材が調味成分を含有する上記(1)から(8)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(10)脱アルカリ処理工程を含む上記(1)から(9)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(11)酸性成分を含有または含有しない水と50℃〜120℃の温度下で接触させることにより脱アルカリする上記(10)記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(12)脱アルカリ処理の酸性成分が、有機酸、無機酸および/または酸性成分を含む調味料である上記11に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(13)脱アルカリ処理が、容器内で行われる上記(10)から(12)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(14)容器が、密封または開放容器である上記(13)に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(15)脱アルカリによりコンニャク加工食品のpHを3.0〜8.0に調整する上記(10)から(14)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
(16)かまぼこ様、チーズ様、麺様、ハンバーグ様、肉団子様、またはモチ様の物性を有するコンニャク加工食品を製造する上記(1)から(15)のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【0015】
また、本発明は以下の構成からなるコンニャク加工食品類である。
(17)上記(1)から(16)のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするコンニャク加工食品。
(18)上記(17)に記載のコンニャク加工食品を使用したことを特徴とするかまぼこなど練り製品、ハンバーグ、ソーセージ、肉団子、餃子、シュウマイまたはケーキ用生地。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に記載の効果を奏するものである。
(1)コンニャク粉と水を混合した直後の短時間での膨潤途中で吸水させた食品原料素材を混合する工程を設けることにより、任意の割合で食品原料素材をその種類を問わずコンニャクと組み合わせたコンニャク加工食品を製造し提供することができる。
(2)第1の食品原料素材を含有する糊化物をアルカリによりゲル化した後、さらに第2の食品原料素材添加混合することにより食品原料素材を多量に含む新しいコンニャク加工食品を提供することできる。
(3)コンニャク成分と食品原料素材との均一混合を簡便に達成することが可能となる。
(4)従来、実現することができなかった物性と、密度の高いボディーを有するコンニャク加工食品、例えば、コンニャクを利用したかまぼこ様、チーズ様、ハンバーグ様またはモチ様の加工食品を提供することができる。
(5)コンニャク加工食品中に含有されるアルカリ成分を中和するにあたり、有機酸水溶液や調味液を利用することにより、中和と調味付けを同時に行なうことが可能となる。また、中和処理を調味液と共に耐熱性容器中に充填密封した後に加熱処理することによって、調味と加熱滅菌と容器充填を同時に行なった調味コンニャク食品を製造することができる。
(6)第1の食品材料と混合した糊化物は、冷凍保存した後、解凍して第2の食品原料素材と混合してコンニャク加工食品の製造に使用することができる。
(7)新しい物性を達成したコンニャク加工食品が提供されることにより、低カロリー意識やヘルシー感があり、また従来とは異なる食感を有し、若人向きを中心とした商品開発が食品製造業界において促進される。
(8)低カロリー、ヘルシー、多繊維品、老人向きの軟らかいものなどのキャッチフレーズを付すことが可能な食品を開発し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のコンニャク加工食品の製造工程の流れを示す。
【図2】第1の食品原料素材として米粉、でんぷんを使用し、第2の食品原料素材として解凍魚肉すり身を使用した本発明のコンニャク加工食品の製造工程、および比較例の製造工程を示す。
【図3】第1の食品原料素材としてモチ米粉、でんぷんを使用し、第2の食品原料素材として解凍合挽ミンチ肉を使用した本発明のハンバーグ風コンニャク加工食品の製造工程、および比較例の製造工程を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、コンニャク粉と水との混合物を撹拌して糊化物(ゾル状物)とするまでに、第1の吸水した食品原料素材を混合すること、生成した糊化物(ゾル状物)にアルカリを添加してゲル化物とすること、およびこのゲル化物に第2の食品原料素材を混合することに特徴を有するコンニャク加工食品の製造技術に関するものである。従来、コンニャク精粉と食品原料素材の混合物に加水して均一な糊化物(ゾル状)を得ることは困難であり、次の工程でアルカリを添加してゲル化することはさらに不可能であった問題点を本発明により解消することができる。また、本発明は、コンニャク精粉および水または温湯の混合物に対して、吸水させた第1の食品原料素材を混和し、その後にpH10〜12になるまでアルカリを加えゲル化した糊化物が得、このゲル化した糊化物にさらに第2の食品原料素材を組み合わせてコンニャク加工食品を製造する技術に関するものであり、食品原料素材の種類や組み合わせ、ならびに使用量を変えることで、独自の物性を呈し、ヘルシーで低カロリー、低コストの、魚肉水産練製品や畜肉加工製品、モチなどのコンニャク加工食品が提供される。
【0019】
また、製造されたコンニャク加工食品の製造には、成形工程、加熱工程、脱アルカリ工程、包装工程などが適宜適用されてコンニャク加工食品の最終製品が製造され、図1にはそれらの工程の概要が示してある。図2および図3には、さらに具体的な本発明のコンニャク加工食品の製造工程およびアルカリおよび第1の食品原料素材を使用しない比較対象となる製造工程を示す。
【0020】
コンニャク粉は吸水力が強く、また吸水容量も大きいので取り扱いが難しい性質を有している。すなわち、コンニャク粉は水溶性でありながら水への溶解に1時間以上の長い時間がかかり、比重が重いため沈殿しやすく、溶解しきれない粒状の塊を作りやすいため、食品類への利用が広まらないのが現状である。また、コンニャク粉を水溶性の他の粉体などと一体に混合した後に水と混ぜると、コンニャク粉は均一に溶解しにくく、その膨潤が阻害され、コンニャクの特徴的な粘性がでない、生地が均一に混練できないといった問題を生じていた。本発明はこのような従来の問題点を解決し、今までにない物性を有するコンニャク加工食品を製造する技術を提供するものである。
【0021】
[食品原料素材の添加混合]
本発明では、コンニャク精粉を水または温湯で撹拌し、それらが糊化物となるまでの間に、吸水させた第1の食品原料素材を添加、混合して糊化物とする。第1の食品原料素材添加、混合は、コンニャク精粉と水または温湯とを混合した後、それらが完全に糊化物となる以前に行うのが好ましい。完全に糊化した後には、粘性が高くなりすぎて食品原料素材との混合が容易ではなくなることがある。コンニャク精粉と水または温湯を混合した後に食品原料素材などを添加する時期は、コンニャク精粉の含有量、食品原料素材の添加量、混合装置の能力などにより一概には言えないが、コンニャク精粉と水または温湯の混合から、約1〜15分後までの間が好ましく、さらには、2〜10分後までの時期の添加、混合が最適である。
【0022】
本発明における「吸水させた」とは、食品原料素材の吸水によりコンニャク精粉の膨潤が阻害されないように、食品原料素材に適宜分量の水をあらかじめ均一に混合したものであり、その吸水させる水分量は様々な条件に応じて適宜決定されるものであるが、例えば、食品原料素材100重量部に対し、水50〜500重量部が好ましく、食品原料素材の水性のスラリー状であってもよい。さらに好ましい範囲としては、食品原料素材100重量部に対し、水100〜300重量部が挙げられる。その性状は、固体状、スラリー状、または液状の何れであっても良い。
【0023】
本発明においては、コンニャク精粉が通常使用されるが、コンニャクの荒粉でも差し支えない。コンニャク粉の粒径が10μm〜150μmのものを用いると固化させ易くなり、良好な食感が得られる。コンニャク粉と水との重量比は、水100重量部に対し、コンニャク粉1.0から10重量部の範囲が好ましい。コンニャク粉が1.0重量部以下であると生成した糊化物の最終粘性が不足し、10重量部以上となると粘性が大きくなりすぎて食品原料素材との均一な混合が困難となる。上記コンニャク粉の重量を1.0重量部から4重量部の範囲とするとすることによりさらに好ましい糊状物とすることができる。使用する水の水質は特に限定されず、水道水などが使用され、常温または温湯が好ましく用いられる。コンニャク粉と水との混合条件は、コンニャク粉の特性や配合比により適宜決定されるが、混合、撹拌には通常の撹拌装置が使用できる。
【0024】
コンニャク精粉が完全な糊化物となるまでの間に、また、アルカリでゲル化した後に食品原料素材から選ばれた材料が均一に混合される。コンニャク精粉と第1と第2の食品原料素材の総和との配合割合は、コンニャク精粉や食品原料素材の性質、目的とするコンニャク加工食品の特性などに応じて適宜選定されるものであるが、コンニャク精粉および水または温湯の混合物100重量部に対して、第1と第2の食品原料素材の総和が21重量部から250重量部となるように配合することが望ましい。食品原料素材などが下限値より少ないと、コンニャクの特性のみが強く現れ、新しい物性を有する食品を創生することはできないこととなり、また、上限値より大きくなると、上記混合物と食品原料素材などとの均一な混合が困難となるばかりか、食品原料素材の特性のみが強く現れコンニャクを添加した意義が失われることになる。また、さらに好ましい配合割合は全食品原料素材の配合割合が85重量部から135重量部となる範囲である。
【0025】
本発明における食品原料素材としては、小麦、大麦、米、とうもろこし、粟、ひえ、蕎麦、豆などの穀粉、くず粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、穀物澱粉などの澱粉類、増粘多糖類、魚肉、畜肉、果実、野菜、海藻類などの粉状物や液状物またはスラリー状物などを挙げることができる。これらの材料以外に、水溶性食物繊維あるいは不溶性食物繊維を配合してもよい。このうち水溶性食物繊維の配合が好ましく、例えば、難消化性デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、グアーガム分解物、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、トラガントガム、ジェランガム、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びカードランから選択される水溶性食物繊維が挙げられる。コンニャク成分のほかに、前記水溶性食物繊維を含有させることによって、さらに低カロリーで、食物繊維を多く含む食品とすることができ、配合する水溶性食物繊維に由来する生理的効果を得ることがでる。
【0026】
[食品原料素材]
第1の食品原料素材と第2の食品原料素材は、同一または異なる種類の素材の何れであってもよい。しかし、第1の食品原料素材は、穀物粉、でんぷん類、食物タンパク質、食物と糖類、食物多糖類および水溶性または難溶性繊維、からなる群から選ばれた1種または2種以上であることが好ましく、特に、コンニャク加工食品の基本となる物性を担うこととなる。第2の食品原料素材は、果実、野菜、魚肉、畜肉、穀粉の水化物および水を吸収させた穀物粉らなる群から選ばれた1種または2種以上であることが好ましく、特に、コンニャク加工食品の風味や栄養要素を担うこととなる。第1および第2の食品原料素材は吸水させて使用することができるが、特にコンニャク精粉と混合一体化する第1の原料素材は、吸水させることが必要である。
食品原料素材には調味料を組み合わせることができる、例えば、醤油、味噌などの醗酵調味料、塩、砂糖、グルタミン酸ソーダ・核酸系調味料、ステビア、胡椒などを挙げることができ、例えば、魚肉すり身を使用する際には食塩を添加したものが好ましい。
【0027】
[第1の食品原料素材]
第1の食品原料素材は、水または温湯とコンニャク精粉との混合物100重量部に対して、1重量部から50重量部配合することが好ましい。下限値をより少ないと食品原料素材の存在意義がなく、上限値よりも多いとコンニャクの特性が現れにくくなり好ましくない。特に好ましくは、5重量部から15重量部の範囲である。
【0028】
コンニャク精粉、水および第1の食品原料素材が均一に混合された糊状物は冷凍で保存することができる。この糊状物は、アルカリ処理することにより含まれているコンニャク成分をゲル化(固化)されてpH値が10〜12に調整される。糊化物全体をゲル化して、その後に第2の食品原料素材を混練するという方法により、魚肉や畜肉、穀粉のタンパク質高次構造に与えるいろいろの損傷を最小限に保ち、タンパク質の性質変化を防いでいる。アルカリ処理に使用するアルカリとしては、水酸化カルシウムが好ましいが、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩基性アミノ酸など公知のアルカリ剤から適宜選択される。アルカリ剤の種類に応じて生成したゲル化物の特性を調整することができる。アルカリ処理工程には、従来のコンニャク製造と同様の処理が採用される。
【0029】
[第2の食品原料素材]
アルカリ添加によりゲル化された後、第2の食品原料素材が添加混合される。コンニャク精粉、水および吸水させた第1の食品原料素材からなる混合物100重量部に対して、第2の食品原料素材を20重量部から200(請求項5では200)重量部となるように配合するが、80重量部から120重量部の範囲とするとさらに好ましい。第2の食品原料素材は、コンニャク加工食品の風味や栄養源となるものであるが、上記範囲を外れると目的とする風味、栄養源の含有および物性を保持することが困難となる。
製造された本発明のコンニャク加工食品は、密度の高いボディーを持ち、従来にない物性を有する食品として将来性のあるものである。ここで、密度の高いボディーとは、コンニャク粉以外の食品原料素材を多量に含有し、固形物含量が高く重量感のある状態にある食品のことである。
第1及び第2の食品原料素材を添加混合した後には、型への注入、押出しなどの従来の成形技術を使用して適宜形状に成形することが好ましい。成形後は包装、加熱、脱アルカリ処理などを経て最終製品とすることができる。
【0030】
[アルカリによる中和処理]
コンニャク粉をアルカリによりゲル化すると、使用したアルカリの残存が原因で、悪臭成分のトリメチルアミンの生成を増幅し、苦味があり、またpH値が高いため食品としては好ましくないので、脱アルカリ処理(中和処理)することを行うことが好ましい。中和には、ゲル化物を水中に浸漬し加熱することが最も簡便な方法であるが、有機酸の水溶液との接触によっても良い。有機酸としては、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸など、また、無機酸類としては、例えば、リン酸塩などの食品添加物としての酸類が使用される。脱アルカリ処理温度としては、50から120℃の範囲が好ましい。また、脱アルカリ処理には、酸性分を含む調味液を使用することができる。調味液は、煮物、炒め物、和え物などに使用するもので、洋風、和風、中華風などのいずれの調味料をも用いることができる。例えば、酢酸、グルタミン酸ソーダ、ソルビトール、乳酸カルシウムを含有するサラダタイプ調味料や、ビーフエキス、醤油、グルタミン酸ソーダ、食塩、砂糖を含有するステーキタイプ調味料が挙げられる。
【0031】
脱アルカリ処理の加熱処理条件によっては、脱アルカリしたコンニャク加工食品が軟化したり、ゴム質化を起こすことがあるが、この現象はコンニャクゲルのpHと関連している。食感と保存性を考慮した最適加熱条件は、pH3.5〜6.0の時は50〜95℃、pH6.0〜9.0では100〜120℃の関係にあり、処理時間は数10分間の処理である。脱アルカリ処理において中和剤として調味液を使用すると、この加熱処理の終了時には、コンニャクの形状にもよるが、調味液成分がコンニャクへ充分に浸透し調味した状態となる。例えば、脱アルカリ処理する前のコンニャク加工食品を調味液と共に密封耐熱容器内に収納し加熱することにより、脱アルカリ処理、調味処理および加熱殺菌処理を同時に行うことが可能となる。
【0032】
コンニャク加工食品に含まれるアルカリを中和するのに必要な酸量の決定は、所定重量の中和処理すべきコンニャクをホモジナイザーで磨砕し、これに有機酸を添加して、pH3.0〜8.0になるまでに要する酸量を測定して行われる。容器中で脱アルカリ処理を調味液により実施するに当たり使用される充填容器としては、ガラス製のビンや金属性容器が使用できるが、耐熱性のプラスチック製の硬質容器やフレキシブルなラミネート袋、さらにレトルトパウチが作業性において効率が良い。これは包装後の加熱処理はコンニャクのアルカリを迅速に中和・除去することと、コンニャク内への調味成分の浸透を早めることが主目的であるが、有害菌の殺菌効果も期待でき、また市販される製品が簡便に製造できる。
【0033】
[すり身を利用したコンニャク加工食品の製造]
本発明により製造されたコンニャク加工食品は、従来の類似製品と比較して高密度のボディーを持ち、独特な物性を呈する食品類である。コンニャク精粉および第1の食品原料素材の配合割合に応じてその物性を変化させることが可能である。例えば、約3.3〜3.5重量%のコンニャク精粉に約14重量%の小麦粉を添加した本発明のコンニャク加工食品は、魚肉すり身を添加しなくてもかまぼこ様の物性を示し、約25重量%の小麦粉を添加したものはチーズ様の物性を示す。また、タピオカ澱粉50重量%と、もち米を約20重量%添加すると、少量のもち米(約20重量%)を含有するに過ぎないにもかかわらず、モチ様の物性を示す。こうした生成物の物性の違いに応じて、つみれ、かまぼこ、ちくわ、ケーキ、和菓子、おでんの種、ぜんざい中のもち類など幅広い食品に利用することが可能となる。さらに、第2の食品原材料素材を組み合わせることにより、発現した新しい物性に適したコンニャク加工食品を製造することが可能となる。
【0034】
以下に、本発明による魚肉練り製品の製造を説明する。魚肉練製品の基本的な製造工程は、(ア)魚を調理して精肉を採取し、(イ)食塩、調味料、副原料を加えて擂潰し、(ウ)所定の形に成形してから、(エ)加熱してゲル化させるという4工程からなるが、現在は上記の(ア)と(イ)の工程の間に採取した肉を水晒しする工程が、また最終工程の後に冷却して包装する工程が加わるのが普通である。上記の(イ)の工程で、必要に応じて氷を加えたり、冷却環境下で行うようにして、摺り上がり温度を10℃以下にする。また、塩ズリ工程中に調味料、澱粉、水等の副原料を食塩と同時に添加してもよいし、塩ズリ工程後にそれら副原料を添加混合してもよい。
魚肉すり身を塩摺りして混合するのが有利である。ゲル化した糊化物に混合した後は通常の方法で加工することができる。
【0035】
従来の魚肉練製品の製造工程においては、成形後に所定の加熱工程に入って行く。その後は、常法通りの蒸煮、焼き、湯煮、油で揚げるなどの加熱をする。成形後加熱工程前にある坐りのときには25〜40℃に昇温させ、ダレが生じないようにして坐りを行う。通常の坐りは25〜40℃の保温室に保持させる。 例えば、かに蒲鉾などの魚肉練製品の製造方法としては、一般に魚肉すり身に調味料等を添加して調整、混練した後、これを帯状に成形し、得られた帯状中間製品の段階で蒸し機により高温水蒸気によって加熱し、その後、帯状中間製品に多数の切れ目(スリット)を入れるのが通常である。また、成形前に、すり身ポンプにて調味すり身を連続的にジュール加熱部に送り込み、2秒から5秒程度の時間で約30℃程度の温度まで加熱を行う方法があった。
しかしながら、本発明のコンニャク加工食品の製造方法では、上記のような複雑な加工工程を必要とせず簡便な工程で、従来技術と同等の、または従来技術で達成することができなかった物性や食感を有するすり身製品を製造することができる。
【0036】
本発明では、第2の食品原料素材として魚肉すり身を添加混合した後、適宜形状に成形して目的とするコンニャク加工食品の種類、形状により適宜選択することができる。
すなわち、本発明のコンニャク加工食品は、従来公知の各種成形機を用いることにより、麺状、パイ生地状、ケーキ生地状、粒状、大小ブロック状などの種々の形状に成形することができる。
【0037】
[本発明で製造したコンニャク加工食品の特徴]
本発明の工程で生成するコンニャク精粉と食品原料素材からなる糊化物は、使用対象となる食品材料の物性と酷似の品質に合致するような組成で製造した後、包装後、冷凍して保管しておき、必要時に解凍して、本発明のコンニャク加工食品の製造方法のアルカリ添加工程で使用することができる。この糊化物は、出荷に当り、ゲル化に必要な水酸化カルシウムおよび第2の食品原料素材の添加を明示するという形態で商品化し、関連食品業界に業務用コンニャク糊化物として販売することができる。
本発明のコンニャク加工食品の製造方法を利用して商品化すると、低カロリー、ヘルシー、特に低コストに留意したもの、また老人食として柔らかくて食物繊維が多く、おいしい食品が提供される。具体的には、グルコマンナンが1〜2%含有した製品、例えば、かまぼこなど水産練製品のすり身として、ハンバーグ、ソーセージ、肉ダンゴ、ギョウザ、シューマイなどのミンチ肉として、さらには和洋ケーキの生地に使用できる。
【0038】
コンニャクの物性は硬くて、プリンとした弾力性と適度の歯切れに特性があるが、その他に、コンニャクとして食品中に分散することでタンパク質が加熱凝固して起こすドリップを生じなくなる。このことは、こんにゃく精粉と食品原料素材を使用した糊化物を真空包装してレトルト殺菌するとき、調味や歩留まりの向上に寄与する。また、コンニャク精粉と食品原料素材の糊化物を使用した食品は油揚げ時に使用する植物油の節減に役立つ効果がある。これはコンニャク精粉の主成分であるグルコマンナンが水と結合する性質が強くあるために油の吸収を妨げ、食用油の使用料を減ずるという結果になる。
【0039】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
[魚肉のすり身と小麦粉を含有するかまぼこ風食品の製造]
コンニャク精粉3.0重量部と水100重量部を練り、練り始めて約2分間の間で完全に糊化物となる前に、10.0重量部の米粉と5.0重量部のでんぷんをからなる粉体を水20重量部で加水して吸水させた粉体材料を混和するとともに、3%の水酸化カルシウム液を80重量部添加し混合してゲル化させることにより製造したpH値11.90のゲル化物(A)を100重量部用意した。これとは別に、解凍魚肉すり身(スケソウダラ)100重量部に対し食塩6.0重量部を混合してpH値6.80の魚肉すり身(B)を100重量部用意した。
このゲル化物(A)100重量部と魚肉すり身(B)100重量部を混合し5分間擂潰して食品原料素材を含有するpH値が8.06のコンニャク加工食品原材料(C)を得た。この食品原材料を板状に成形した後、80℃で50分間加熱することにより、コンニャクを利用したかまぼこ風の食品を製造した。白色でかまぼこ風の物性を有し、流出液汁(ドリップ)が皆無の食品を得た。この食品のpH値は7.78であった。
【実施例2】
【0041】
実施例1で製造した、pH値が8.06の食品原料素材を含有するコンニャク加工食品原材料(C)をクエン酸水溶液の入ったレトルト用の袋に収納して、85℃で40分間加熱した。得られたかまぼこ風の食品は、pH値が5.0であり、品質、香味ともに良好であるとの評定を得た。
【0042】
[比較例1]
コンニャク精粉3.0重量部と水100重量部を2分間練り糊化物としたコンニャク糊を100重量部用意し、これに実施例1で用意した魚肉すり身(B)100重量部を5分間混合、擂潰することにより、pH値が6.54の食品原材料を得た。これを板状に成形した後レトルト用の袋に収納した後、85℃で40分間加熱処理した。得られたコンニャク加工食品はpH値が6.20で、柔らかくベトベトした白色のものであった。
【実施例3】
【0043】
[ミンチ肉ともち米粉を含有するハンバーグ風食品の製造]
コンニャク精粉2.50重量部と水100重量部を練り、練り始めて約2分間の間で完全に糊化物となる前に、7.0重量部のもち米粉と5.0重量部のでんぷんをからなる粉体を水20重量部で加水して吸水させた粉体材料を混和するとともに、3%の水酸化カルシウム液を80重量部添加し良く混合してゲル化させることにより製造したpH値11.96のゲル化物(A)を100重量部用意した。これとは別に、解凍合挽ミンチ肉(牛、豚)100重量部に対し食塩4.0重量部を混合してpH値6.30の合挽ミンチ肉(B)を100重量部用意した。
このゲル化物(A)100重量部と合挽ミンチ肉(B)100重量部を混合し、5分間擂潰してpH値が8.06で食品原料素材を含有するコンニャク加工食品原材料(C)を得た。この食品原材料を板状に成形した後、85℃で40分間加熱することにより、コンニャクを利用したハンバーグ風の食品を製造した。次いで、薄い乳酸水溶液中に浸漬し、pH値が6となるように脱アルカリ処理を施した。獲られた食品の品質、香味ともに良好であるとの評定を得た。
【実施例4】
【0044】
実施例1で製造した、pH値が8.06の食品原料素材を含有するコンニャク加工食品原材料(C)をレトルト用の袋に収納して、85℃で40分間加熱した白褐色でハンバーグ風または肉団子風の物性を有し、流出液汁(ドリップ)が皆無の食品を得た。この食品のpH値は6.58あった。
【0045】
[比較例2]
コンニャク精粉3.0重量部と水100重量部を2分間練り糊化物としたコンニャク糊を100重量部用意し、これに実施例1で用意した合挽ミンチ肉(B)100重量部を5分間混合、擂潰することにより、pH値が6.30の食品原材料を得た。これを板状に成形した後レトルト用の袋に収納した後、85℃で40分間加熱処理した。得られたコンニャク加工食品は、pH値が5.96で、赤褐色を呈し、柔らかくつぶれてしまった。流出液汁は多量発生した。
【実施例5】
【0046】
[調味料によるアルカリ中和]
実施例1と同様にしてかまぼこ風食品(pH10.5)200gを製造した。
このかまぼこ風物中に残存するアルカリをpH5.0に中和・除去するのに必要な0.5mLの酢酸と、サラダタイプ調味液(酢酸0.2%、食塩3%、グルタミン酸ソーダ0.3%、ソルビトール17%を含有)100mLと、かまぼこ風食品200gを耐熱性プラスチック袋に充填、シールした後、85℃、40分の加熱処理を行った。内容物は、アルカリが中和されるだけでなく、調味液による味付けが十分なされていた。
【実施例6】
【0047】
[凍結による保存した糊化物の使用]
コンニャク精粉3.0重量部と水100重量部を練り、練り始めて約2分間の間で完全に糊化物となる前に、10.0重量部の米粉と5.0重量部のでんぷんをからなる粉体を水20重量部で加水して吸水させた粉体材料を混和して糊化物とした。これを、2ヶ月間凍結保存した後解凍し、3%の水酸化カルシウム液を80重量部添加し良く混合してゲル化させることにより製造したpH値11.90のゲル化物(A)を100重量部とした。これとは別に、解凍魚肉すり身(スケソウダラ)100重量部に対し食塩6.0重量部を混合してpH値6.80の魚肉すり身(B)を100重量部用意した。
このゲル化物(A)100重量部と魚肉すり身(B)100重量部を混合し、5分間擂潰してpH値が8.06の食品原料素材を含有するコンニャク加工食品原材料(C)を得た。この この食品原材料を板状に成形した後、80℃で50分間加熱することにより、コンニャクを利用したかまぼこ風の食品を製造した。次いで、薄い乳酸水溶液中に浸漬し、かまぼこのpH値が5となるように脱アルカリ処理を施した。獲られたかまぼこ食品の品質、香味ともに良好であるとの評定を得た。このことにより、コンニャク加工食品の製造工程で糊化物を冷凍保存、解凍が悪影響を与えないことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上述したように、本発明は コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌してそれらが糊化するまでの間に、吸水させた第1の食品原料素材とアルカリを混和してpH値が10〜12を有するゲル化物となす工程、および、生成したゲル化物に第2の食品原料素材を混和する工程を含むコンニャク加工食品の製造方法に係るものである。
本発明により、コンニャク精粉と小麦粉などの粉体と水との三成分を混練する際に不均一化の問題が生じることがなく、さらに、多量の他の食品原料素材との一体化を簡便に行なうことができる。また、本発明により、従来にない独特の物性を有する食品を簡便に製造し提供することができるため、低カロリーでヘルシーな食品、多繊維含有食品や、従来にない独特の食感を有する新しいコンニャク製品の開発に有用な技術を提供することができる。したがって、本発明の糊化物は、様々なコンニャク加工食品の製造に使用できる素材として食品業界に提供される。
【0049】
また、本発明は容器に充填したコンニャクのアルカリ中和と調味液成分の浸透を加熱処理で早めると同時に高品質で保存性のある調味コンニャク加工食品を提供することができる。また、使用する食品原料素材や調味液の種類に応じて多品目のコンニャク加工品の開発が可能である。さらに、ボディーのタイプに応じて、惣菜、漬物、麺類、魚肉加工品類、食肉加工品類、菓子類、佃煮、冷凍食品などの業界に広く利用される素材として期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌してそれらが糊化するまでの間に、吸水させた第1の食品原料素材とアルカリを混和してpH値が10〜12を有するゲル化物となす工程、および、生成したゲル化物に第2の食品原料素材を混和する工程を含むことを特徴とするコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項2】
吸水させた第1の食品原料素材が固体状、スラリー状または液状である請求項1に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項3】
コンニャク精粉1重量部から10重量部に対して水または温湯100重量部を配合する請求項1または2に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項4】
コンニャク精粉および水または温湯の混合物100重量部に対して、第1と第2の食品原料素材の総和が2重量部から250重量部となるように配合する請求項1から3のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項5】
コンニャク精粉、水、および吸水させた第1の食品原料素材からなる混合物100重量部に対して、第2の食品原料素材を20重量部から200重量部となるように配合する請求項1から4のいずれかに記載のコンニャク加工食の製造方法。
【請求項6】
吸水させた第1の食品原料素材が、穀物粉、でんぷん類、食物タンパク質、食物多糖類および水溶性または難溶性繊維からなる群から選ばれた1種または2種以上である請求項1から5のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項7】
第2の食品原料素材が、果実、野菜、魚肉、畜肉、穀物粉の水化物および水を吸収させた穀物粉らなる群から選ばれた1種または2種以上の材料である請求項1から6のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項8】
コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌してそれらが糊化するまでの間に吸水させた第1の食品原料素材を混和した糊化物を冷凍し貯蔵する工程を含む請求項1から7のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項9】
吸水させた第1の食品原料素材および/または第2の食品原料素材が調味成分を含有する請求項1から8のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項10】
脱アルカリ処理工程を含む請求項1から9のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項11】
酸性成分を含有または含有しない水と50℃〜120℃の温度下で接触させることにより脱アルカリする請求項10に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項12】
脱アルカリ処理の酸性成分が、有機酸、無機酸および/または酸性成分を含む調味料である請求項11に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項13】
脱アルカリ処理が、容器内で行われる請求項10から12のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項14】
容器が、密封または開放容器である請求項13に記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項15】
脱アルカリによりコンニャク加工食品のpHを3.0〜8.0に調整する請求項10から14のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項16】
かまぼこ様、チーズ様、麺様、ハンバーグ様、肉団子様、またはモチ様の物性を有するコンニャク加工食品を製造する請求項1から15のいずれかに記載のコンニャク加工食品の製造方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするコンニャク加工食品。
【請求項18】
請求項17に記載のコンニャク加工食品を使用したことを特徴とするかまぼこなど練り製品、ハンバーグ、ソーセージ、肉団子、餃子、シュウマイまたはケーキ用生地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−87487(P2011−87487A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242089(P2009−242089)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(501426736)ハイスキー食品工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】