コンバイン
【課題】排出オーガの旋回位置を検出するポテンショメータのセットアップ作業の簡略化。
【解決手段】オーガ自動スイッチの操作を判断しS12、オーガ自動スイッチが操作されると、オーガ旋回ポテンショの検出値が基準範囲であるか否かを判断しS13、基準値範囲に対するオーガ旋回ポテンショ値の大小を判断しS14、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも小さい場合には、オーガ旋回モータを右方向に駆動させS15、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも大きい場合には、オーガ旋回モータを左方向に駆動させS16、オーガ旋回モータの駆動中は、間隔の長い断続音を電子ブザー50から出音させS17、オーガ旋回モータの駆動に応じてオーガ旋回ポテンショ値が基準範囲に入ったら、オーガ旋回モータの駆動を停止させると共に、間隔の短い断続音を電子ブザー50から出音させS18、オーガ自動セットアップ制御を終了する。
【解決手段】オーガ自動スイッチの操作を判断しS12、オーガ自動スイッチが操作されると、オーガ旋回ポテンショの検出値が基準範囲であるか否かを判断しS13、基準値範囲に対するオーガ旋回ポテンショ値の大小を判断しS14、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも小さい場合には、オーガ旋回モータを右方向に駆動させS15、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも大きい場合には、オーガ旋回モータを左方向に駆動させS16、オーガ旋回モータの駆動中は、間隔の長い断続音を電子ブザー50から出音させS17、オーガ旋回モータの駆動に応じてオーガ旋回ポテンショ値が基準範囲に入ったら、オーガ旋回モータの駆動を停止させると共に、間隔の短い断続音を電子ブザー50から出音させS18、オーガ自動セットアップ制御を終了する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒タンクから穀粒を排出する排出オーガを備えると共に、該排出オーガを電動モータで旋回動作させるコンバインに関し、特に、電動モータに組み付けられたポテンショメータで排出オーガの旋回位置を検出するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
穀粒タンクから穀粒を排出する排出オーガを備えると共に、該排出オーガを電動モータで旋回動作させるコンバインが知られている。例えば、特許文献1に記載されるコンバインは、排出オーガを旋回動作させる電動モータ(オーガ旋回モータ)と、排出オーガの旋回位置を検出するポテンショメータ(オーガ旋回位置センサ)とを備えており、該ポテンショメータの検出及び電動モータの駆動に基づいて排出オーガの旋回位置を制御している。
【0003】
この種のコンバインでは、排出オーガの格納位置及びポテンショメータの基準値を予め定めており、排出オーガが格納位置のとき、ポテンショメータの検出値が基準値となるようにセットアップを行っている。このようなセットアップ作業は、通常、コンバインの製造工程で実施されるが、何らかのトラブルでポテンショメータ値にずれが生じた場合も、適宜実施する必要がある。
【特許文献1】特開2003−79232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、上記のセットアップ作業を行うにあたり、電動モータを排出オーガから切離した状態で、ポテンショメータの検出値(抵抗値)をテスタ等で測定しつつ、電動モータを少しずつ動かすことにより、ポテンショメータの検出値を基準値に合わせていたため、作業に多くの時間が費やされるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、排出オーガを旋回動作させる電動モータに、該電動モータの回転を検出するポテンショメータを組み付け、該ポテンショメータの検出及び前記電動モータの駆動に基づいて前記排出オーガの旋回位置を制御するコンバインにおいて、前記排出オーガの格納位置及び前記ポテンショメータの基準値を予め定めると共に、前記排出オーガが格納位置のとき、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるようにセットアップを行うにあたり、前記電動モータを前記排出オーガから切離した状態で、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるように前記電動モータを駆動させる自動セットアップ制御手段を設けたことを特徴とする。このようにすると、ポテンショメータのセットアップに際し、ポテンショメータの検出値をテスタ等で測定しなくても、自動的に基準値に合わせることが可能になり、その結果、ポテンショメータのセットアップ作業が簡略化され、作業時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図3において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2と、刈取茎稈から穀粒を脱穀し、かつ、脱穀された穀粒を選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯溜する穀粒タンク4と、穀粒タンク4に貯溜された穀粒を機外に排出する排出オーガ5と、脱穀済みの排稈を排出処理する後処理部6と、クローラ式の走行部7と、各種の操作具が設けられる操作部8とを備えて構成されている。
【0007】
排出オーガ5は、穀粒タンク4の後方に立設される縦パイプ9の上端部に、横パイプ10を起倒自在(昇降自在)に連結して構成されている。縦パイプ9は、縦軸周りに回動自在であり、オーガ旋回モータユニット11に設けられるオーガ旋回モータ(電動モータ)12の正逆駆動に応じて回動し、横パイプ10を一体的に旋回動作させる。また、縦パイプ9の上端部と横パイプ10の基端部との間には、オーガ昇降シリンダ13が介設されており、該オーガ昇降シリンダ13の伸縮動作に応じて横パイプ10が昇降される。
【0008】
図4に示すように、オーガ旋回モータユニット11は、ギヤボックス14に、オーガ旋回モータ12、ピニオンギヤ15及びオーガ旋回ポテンショ(ポテンショメータ)16を組み付けて予めユニット化され、該ユニット状態で機体に取り付けられる。オーガ旋回モータ12には、減速機構が内装されており、ここで減速されたモータ動力でピニオンギヤ15が正逆回転される。ピニオンギヤ15は、縦パイプ9の外周部に固設されるリング状ギヤ9aに噛合しており、オーガ旋回モータ12の駆動に応じて縦パイプ9を回動させる。オーガ旋回ポテンショ16は、ピニオンギヤ15(オーガ旋回モータ12)の回転を入力し、当該入力回転に基づいて排出オーガ5の旋回位置検出を行う。
【0009】
コンバイン1では、排出オーガ5の格納位置及びオーガ旋回ポテンショ16の基準値を予め定めており、排出オーガ5が格納位置のとき、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにセットアップが行われる。このようなセットアップ作業は、通常、コンバイン1の製造工程で実施されるが、何らかのトラブルでオーガ旋回ポテンショ16の検出値にずれが生じた場合も、適宜実施される。例えば、オーガ旋回モータ12からピニオンギヤ15に至る伝動経路に、過負荷に応じた破壊により動力伝動を断つフェイルセーフ手段が介設される場合、フェイルセーフ手段の破壊に応じてオーガ旋回ポテンショ16の検出値にずれが生じるので、フェイルセーフ手段の復旧後、上記のセットアップ作業を行う必要がある。また、図5に示すように、排出オーガ5の旋回動作範囲が相違する複数機種において、オーガ旋回モータユニット11を共通化する場合も、上記のセットアップ作業を行う必要がある。
【0010】
操作部8の下方には、コンバイン1の各部に動力を供給するエンジンが搭載されている。エンジンが発生する動力は、ミッションケースを介して走行部7に伝動されると共に、脱穀クラッチを介して脱穀部3及び搬送HST17に伝動される。搬送HST17は、閉回路を介して可変容量油圧ポンプと固定容量油圧モータを接続した静油圧式無段変速装置であり、前処理部2及び脱穀フィードチェン18の動力を車速に応じて無段変速する。これにより、前処理部2及び脱穀フィードチェン18の茎稈搬送速度が同期され、引継ぎ部における搬送乱れが防止される。また、搬送HST17から前処理部2に至る動力伝動経路には、刈取クラッチが介設されており、該刈取クラッチの操作により前処理部2への動力伝動が入切される。
【0011】
図6及び図7に示すように、搬送HST17の一側面には、搬送HST17のトラニオン軸(斜板操作軸)19を回動させる搬送HSTモータユニット20が取り付けられている。搬送HSTモータユニット20は、ブラケット21に、搬送HSTモータ22、ピニオンギヤ23、セクタギヤ24及び搬送HSTポテンショ25を組み付けて予めユニット化されている。搬送HSTモータ22には、減速機構が内装されており、ここで減速されたモータ動力でピニオンギヤ23が正逆駆動される。セクタギヤ24は、ピニオンギヤ23に噛合しており、搬送HSTモータ22の駆動に応じて回動する。セクタギヤ24の回動範囲は、ブラケット21に形成される円弧状の長孔21aで規定される。この長孔21aには、セクタギヤ24に突設されるピン24aが係合しており、このピン24aが長孔21aの両端に当接することにより、それを越えるセクタギヤ24の回動が規制される。セクタギヤ24の支軸24bは、トラニオン軸19と嵌合する嵌合孔24cを備えると共に、径方向から螺入するネジ24dによってトラニオン軸19と一体的に連結される。これにより、セクタギヤ24とトラニオン軸19が一体的に連結され、搬送HSTモータ22の駆動に応じてトラニオン軸19を回動させることが可能になる。搬送HSTポテンショ25は、検出軸にアーム25aを備えており、該アーム25aがセクタギヤ24のピン24aに一側方から弾圧的に当接することにより、セクタギヤ24の回動位置検出を行う。
【0012】
上記の搬送HSTモータユニット20を用いて搬送HST17を変速制御する場合、セクタギヤ24の機械的な回動許容範囲を認識し、その範囲内でセクタギヤ24を回動制御することが好ましい。これは、制御上の回動許容範囲が機械的な回動許容範囲を越えると、搬送HSTモータ22のロックが生じるからである。従って、増速側の機械的なリミット位置における搬送HSTポテンショ25の検出値と、減速側の機械的なリミット位置における搬送HSTポテンショ25の検出値とを予め記憶し、両検出値に基づいて有効制御範囲を定めるセットアップ作業が必要となる。
【0013】
図8に示すように、コンバイン1には、作業系クラッチを構成する二つのテンションアーム26、27が回動自在に設けられている。第一テンションアーム26は、刈取クラッチを構成するためのもので、前処理伝動ベルト(図示せず)を緊張、弛緩させることにより、前処理部2に対する動力伝動を入切する。また、第二テンションアーム27は、脱穀クラッチを構成するためのもので、脱穀伝動ベルト(図示せず)を緊張、弛緩させることにより、脱穀部3に対する動力伝動を入切する。
【0014】
図8〜図11に示すように、第一テンションアーム26の基端部は、ワイヤ28を介して刈脱クラッチモータユニット29に連繋され、また、第二テンションアーム27の基端部は、ワイヤ30を介して刈脱クラッチモータユニット29に連繋されている。刈脱クラッチモータユニット29は、ブラケット31に、刈脱クラッチモータ32、ピニオンギヤ33、セクタギヤ34及び刈脱クラッチポテンショ35を組み付けてユニット化されている。刈脱クラッチモータ32には、減速機構が内装されており、ここで減速されたモータ動力でピニオンギヤ33が正逆駆動される。セクタギヤ34は、ピニオンギヤ33に噛合しており、刈脱クラッチモータ32の駆動に応じて回動する。セクタギヤ34の回動範囲は、ブラケット31に形成される円弧状の長孔31aで規定される。この長孔31aには、セクタギヤ34に突設されるピン34aが係合しており、このピン34aが長孔31aの両端に当接することにより、それを越えるセクタギヤ34の回動が規制される。セクタギヤ34には、位置を変えてワイヤ28、30が連結されており、刈脱クラッチモータ32の駆動に応じたセクタギヤ34の回動によりワイヤ28、30の引き込み及び繰り出しが行われる。刈脱クラッチポテンショ35は、検出軸にセクタギヤ35aを備えており、該セクタギヤ35aがセクタギヤ34の支軸34bに形成されるギヤ部を噛合することにより、セクタギヤ34の回動位置検出を行う。
【0015】
セクタギヤ34は、刈脱クラッチモータ32の正逆駆動により、図9に示す初期位置と、図10に示す中間位置と、図11に示す終端位置とに回動制御される。刈取りクラッチ用のワイヤ28は、セクタギヤ34の初期位置及び中間位置において繰り出し状態(クラッチOFF状態)であり、セクタギヤ34が終端位置のとき引き込み状態(クラッチON状態)となるように、セクタギヤ34に対する連結方向及び連結位置が設定されている。具体的に説明すると、セクタギヤ34が初期位置から中間位置に回動するときは、ワイヤ28がセクタギヤ34の回動中心を支点越えすることにより、ワイヤ28の繰り出し状態が維持され、セクタギヤ34が中間位置から終端位置に回動するとき、ワイヤ28が引き込まれる。
【0016】
一方、脱穀クラッチ用のワイヤ30は、セクタギヤ34が初期位置のとき繰り出し状態(クラッチOFF状態)であり、セクタギヤ34の中間位置及び終端位置において引き込み状態(クラッチON状態)となるように、セクタギヤ34に対する連結方向及び連結位置が設定されている。具体的に説明すると、セクタギヤ34が初期位置から中間位置に回動するときは、ワイヤ30が引き込まれるが、セクタギヤ34が中間位置から終端位置に回動するときは、ワイヤ30がセクタギヤ34の回動中心を支点越えすることにより、それ以上の引込みが行われないようにしてある。
【0017】
上記の刈脱クラッチモータユニット29を用いて刈取クラッチ及び脱穀クラッチを入切制御する場合、セクタギヤ34の機械的な回動許容範囲を認識し、その範囲内でセクタギヤ34を回動制御することが好ましい。これは、制御上の回動許容範囲が機械的な回動許容範囲を越えると、刈脱クラッチモータ32のロックが生じるからである。従って、始端側の機械的なリミット位置における刈脱クラッチポテンショ35の検出値と、終端側の機械的なリミット位置における刈脱クラッチポテンショ35の検出値とを予め記憶し、両検出値に基づいて有効制御範囲を定めるセットアップ作業が必要となる。
【0018】
図12に示すように、操作部8には、刈取クラッチ及び脱穀クラッチの入切操作に兼用される刈脱クラッチレバー36が設けられている。刈脱クラッチレバー36は、支軸37を支点として前後に回動操作可能に支持されると共に、基端部にカム部36aを備える。カム部36aの対向位置には、脱穀スイッチ38及び刈取スイッチ39が設けられ、これらのスイッチ38、39で刈脱クラッチレバー36の操作位置が検出される。つまり、両クラッチを切りとする第一の操作位置では、両スイッチ38、39がOFFであるが、脱穀クラッチのみを入りとする第二の操作位置では、カム部36aによって脱穀スイッチ38のみがONとなる。また、両クラッチを入りとする第三の操作位置では、カム部36aによって両スイッチ38、39がONとなる。これにより、刈脱クラッチレバー36の位置を電気的に検出し、刈脱クラッチモータユニット29を動作させることが可能になる。
【0019】
図13に示すように、コンバイン1には、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含む)を用いて構成される制御部Sが設けられている。制御部Sの入力側には、前述したオーガ旋回ポテンショ16、搬送HSTポテンショ25、刈脱クラッチポテンショ35、脱穀スイッチ38、刈取スイッチ39の他に、オーガ手動レバー40の上昇操作を検出する上昇スイッチ41と、排出オーガ5の手動昇降操作具及び手動旋回操作具に兼用されるオーガ手動レバー40の下降操作を検出する下降スイッチ42と、オーガ手動レバー40の左旋回操作を検出する左旋回スイッチ43と、オーガ手動レバー40の右旋回操作を検出する右旋回スイッチ44と、排出オーガ5の自動旋回操作(自動排出操作、自動格納操作)を行うオーガ自動スイッチ45と、キー操作されるキースイッチ46と、主変速レバー47の操作位置を検出する主変速ポテンショ48とが接続されている。また、制御部Sの出力側には、前述したオーガ旋回モータ12、搬送HSTモータ22、刈脱クラッチモータ32の他に、オーガ昇降シリンダ13を動作させるオーガ昇降バルブ49と、報知音を出音する電子ブザー50とが接続されている。
【0020】
制御部Sは、ROMに書き込まれたプログラムに従い、オーガ手動レバー40の操作に応じて排出オーガ5の旋回制御及び昇降制御を行うオーガ手動制御と、オーガ自動スイッチ45の操作に応じて排出オーガ5を所定の排出位置又は格納位置まで自動的に旋回制御するオーガ自動制御と、車速(例えば、主変速ポテンショ値)に応じて搬送HST17を変速制御する搬送HST制御と、刈脱クラッチレバー36の操作に応じて刈取クラッチ及び脱穀クラッチの入切制御を行う刈脱クラッチ制御と、オーガ旋回ポテンショ16のセットアップを自動的に行うオーガ自動セットアップ制御(自動セットアップ制御手段)と、搬送HSTポテンショ25及び刈脱クラッチポテンショ35のリミット値を自動的に取り込んで記憶するメモリバックアップ制御とを実行する。
【0021】
次に、本発明の要部であるオーガ自動セットアップ制御とメモリバックアップ制御の制御内容について、図14〜図17に示すフローチャートを参照して説明する。オーガ自動セットアップ制御は、オーガ旋回モータユニット11を排出オーガ5から切離した状態で、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値(格納検出値)となるようにセットアップを行う際に実行されるものであり、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにオーガ旋回モータ12を自動的に駆動させる。ただし、オーガ自動セットアップ制御による自動セットアップは、所定のモード切換操作に応じて、制御部40の制御モードを自動セットアップモードに切換えた状態においてのみ実行が許容される。モード切換操作は、任意に規定することが可能であり、例えば、所定のスイッチを操作しながらキースイッチ46をON操作したとき、自動セットアップモードに突入させる。
【0022】
具体的に説明すると、オーガ自動セットアップ制御では、まず、自動セットアップモードであるか否かを判断し(S11)、該判断結果がYESの場合は、オーガ自動スイッチ45の操作を判断する(S12)。ここで、オーガ自動スイッチ45が操作されると、オーガ旋回ポテンショ16の検出値(以下、オーガ旋回ポテンショ値という)が基準範囲(基準値±α)であるか否かを判断し(S13)、これが基準範囲外である場合は、さらに、基準値範囲に対するオーガ旋回ポテンショ値の大小を判断する(S14)。ここで、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも小さい場合には、オーガ旋回モータ12を右方向に駆動させる一方(S15)、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも大きい場合には、オーガ旋回モータ12を左方向に駆動させる(S16)。また、オーガ旋回モータ12の駆動中は、セットアップ実行音(例えば、間隔の長い断続音)を電子ブザー50から出音させる(S17)。そして、オーガ旋回モータ12の駆動に応じてオーガ旋回ポテンショ値が基準範囲に入ったら、オーガ旋回モータ12の駆動を停止させると共に、セットアップ完了音(例えば、間隔の短い断続音)を電子ブザー50から出音させ(S18)、オーガ自動セットアップ制御を終了とする。
【0023】
尚、前述したオーガ自動制御の制御内容は、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値(格納位置検出値)となるようにオーガ旋回モータ12を駆動させる点においてオーガ自動セットアップ制御の制御内容と類似するが、オーガ自動制御では、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が有効制御範囲内で、かつ、他の旋回禁止条件に該当しない場合にのみオーガ旋回モータ12を駆動させるのに対し、オーガ自動セットアップ制御では、上記の有効制御範囲や旋回禁止条件に拘わらずオーガ旋回モータ12を駆動させる点に大きな違いがある。
【0024】
図15に示すように、メモリバックアップ制御では、まず、メモリバックアップモードであるか否かを判断する(S21)。メモリバックアップモードへのモード切換操作は、任意に規定することが可能であり、例えば、所定のスイッチを操作しながらキースイッチ46をON操作したとき、メモリバックアップモードに突入させる。ここで、メモリバックアップモードであると判断した場合は、続いて刈脱クラッチレバー36の操作を判断する(S22〜S25)。そして、脱穀スイッチ38がONからOFFに切換り、その後、OFFからONに切換った場合には、刈脱クラッチポテンショ35のリミット値を自動的に取り込む刈脱クラッチポテンショ制御(S26)を実行する一方、刈取スイッチ39がOFFからONに切換り、その後、ONからOFFに切換った場合には、搬送HSTポテンショ25のリミット値を自動的に取り込む搬送HSTポテンショ制御(S27)を実行する。
【0025】
図16に示すように、刈脱クラッチポテンショ制御では、まず、刈脱クラッチフラグ値(初期値は「0」)を判断し(S31)、該判断結果が「0」の場合は、刈脱クラッチモータ32を入側に駆動させつつ(S32)、刈脱クラッチポテンショ値の変化を判断する(S33)。また、刈脱クラッチモータ32の駆動中は、セットアップ実行音(例えば、間隔の長い断続音)を電子ブザー50から出音させる(S34)。そして、刈脱クラッチポテンショ値が変化しなくなったら、入側リミット位置であると判断し、入側リミット値に現在の刈脱クラッチポテンショ値をセットすると共に、刈脱クラッチフラグに「1」をセットする(S35)。刈脱クラッチフラグに「1」がセットされたら、刈脱クラッチモータ32を切側に駆動させつつ(S36)、刈脱クラッチポテンショ値の変化を判断する(S37)。そして、刈脱クラッチポテンショ値が変化しなくなったら、切側リミット位置であると判断し、切側リミット値に現在の刈脱クラッチポテンショ値をセットすると共に、セットアップ完了音(例えば、間隔の短い断続音)を電子ブザー50から出音させ、その後、刈脱クラッチフラグに「0」をセットし、刈脱クラッチポテンショ制御が終了する(S38)。
【0026】
図17に示すように、搬送HSTポテンショ制御では、まず、搬送HSTフラグ値(初期値は「0」)を判断し(S41)、該判断結果が「0」の場合は、搬送HSTモータ22を増速側に駆動させつつ(S42)、搬送HSTポテンショ値の変化を判断する(S43)。また、搬送HSTモータ22の駆動中は、セットアップ実行音(例えば、間隔の長い断続音)を電子ブザー50から出音させる(S44)。そして、搬送HSTポテンショ値が変化しなくなったら、増速側リミット位置であると判断し、増速側リミット値に現在の搬送HSTポテンショ値をセットすると共に、搬送HSTフラグに「1」をセットする(S45)。搬送HSTフラグに「1」がセットされたら、さらに、搬送HSTモータ22を減速側に駆動させつつ(S46)、搬送HSTポテンショ値の変化を判断する(S47)。そして、搬送HSTポテンショ値が変化しなくなったら、減速側リミット位置であると判断し、減速側リミット値に現在の搬送HSTポテンショ値をセットすると共に、セットアップ完了音(例えば、間隔の短い断続音)を電子ブザー50から出音させ、その後、搬送HSTフラグに「0」をセットし、搬送HSTポテンショ制御が終了する(S48)。
【0027】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、排出オーガ5を旋回動作させるオーガ旋回モータ12に、該オーガ旋回モータ12の回転を検出するオーガ旋回ポテンショ16を組み付け、該オーガ旋回ポテンショ16の検出及びオーガ旋回モータ12の駆動に基づいて排出オーガ5の旋回位置を制御するコンバイン1において、排出オーガ5の格納位置及びオーガ旋回ポテンショ16の基準値を予め定めると共に、排出オーガ5が格納位置のとき、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにセットアップを行うにあたり、オーガ旋回モータ12を排出オーガ5から切離した状態で、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにオーガ旋回モータ12を駆動させるオーガ自動セットアップ制御が実行されるので、オーガ旋回ポテンショ16のセットアップに際し、オーガ旋回ポテンショ値をテスタ等で測定しなくても、自動的に基準値に合わせることが可能になり、その結果、オーガ旋回ポテンショ16のセットアップ作業が簡略化され、作業時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】オーガ旋回モータユニットを示す要部平面図である。
【図5】二種類のオーガ旋回パターンを示すコンバインの平面図である。
【図6】搬送HST及び搬送HSTモータユニットの斜視図である。
【図7】搬送HSTモータユニットの斜視図である。
【図8】刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図9】セクタギヤを初期位置とした刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図10】セクタギヤを中間位置とした刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図11】セクタギヤを終端位置とした刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図12】(A)〜(C)は刈脱クラッチレバーの操作位置を示す説明図である。
【図13】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図14】オーガ自動セットアップ制御のフローチャートである。
【図15】メモリバックアップ制御のフローチャートである。
【図16】刈脱クラッチポテンショ制御のフローチャートである。
【図17】搬送HSTポテンショ制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 コンバイン
5 排出オーガ
9 縦パイプ
9a リング状ギヤ
10 横パイプ
11 オーガ旋回モータユニット
12 オーガ旋回モータ
15 ピニオンギヤ
16 オーガ旋回ポテンショ
45 オーガ自動スイッチ
S 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒タンクから穀粒を排出する排出オーガを備えると共に、該排出オーガを電動モータで旋回動作させるコンバインに関し、特に、電動モータに組み付けられたポテンショメータで排出オーガの旋回位置を検出するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
穀粒タンクから穀粒を排出する排出オーガを備えると共に、該排出オーガを電動モータで旋回動作させるコンバインが知られている。例えば、特許文献1に記載されるコンバインは、排出オーガを旋回動作させる電動モータ(オーガ旋回モータ)と、排出オーガの旋回位置を検出するポテンショメータ(オーガ旋回位置センサ)とを備えており、該ポテンショメータの検出及び電動モータの駆動に基づいて排出オーガの旋回位置を制御している。
【0003】
この種のコンバインでは、排出オーガの格納位置及びポテンショメータの基準値を予め定めており、排出オーガが格納位置のとき、ポテンショメータの検出値が基準値となるようにセットアップを行っている。このようなセットアップ作業は、通常、コンバインの製造工程で実施されるが、何らかのトラブルでポテンショメータ値にずれが生じた場合も、適宜実施する必要がある。
【特許文献1】特開2003−79232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、上記のセットアップ作業を行うにあたり、電動モータを排出オーガから切離した状態で、ポテンショメータの検出値(抵抗値)をテスタ等で測定しつつ、電動モータを少しずつ動かすことにより、ポテンショメータの検出値を基準値に合わせていたため、作業に多くの時間が費やされるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、排出オーガを旋回動作させる電動モータに、該電動モータの回転を検出するポテンショメータを組み付け、該ポテンショメータの検出及び前記電動モータの駆動に基づいて前記排出オーガの旋回位置を制御するコンバインにおいて、前記排出オーガの格納位置及び前記ポテンショメータの基準値を予め定めると共に、前記排出オーガが格納位置のとき、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるようにセットアップを行うにあたり、前記電動モータを前記排出オーガから切離した状態で、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるように前記電動モータを駆動させる自動セットアップ制御手段を設けたことを特徴とする。このようにすると、ポテンショメータのセットアップに際し、ポテンショメータの検出値をテスタ等で測定しなくても、自動的に基準値に合わせることが可能になり、その結果、ポテンショメータのセットアップ作業が簡略化され、作業時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図3において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2と、刈取茎稈から穀粒を脱穀し、かつ、脱穀された穀粒を選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯溜する穀粒タンク4と、穀粒タンク4に貯溜された穀粒を機外に排出する排出オーガ5と、脱穀済みの排稈を排出処理する後処理部6と、クローラ式の走行部7と、各種の操作具が設けられる操作部8とを備えて構成されている。
【0007】
排出オーガ5は、穀粒タンク4の後方に立設される縦パイプ9の上端部に、横パイプ10を起倒自在(昇降自在)に連結して構成されている。縦パイプ9は、縦軸周りに回動自在であり、オーガ旋回モータユニット11に設けられるオーガ旋回モータ(電動モータ)12の正逆駆動に応じて回動し、横パイプ10を一体的に旋回動作させる。また、縦パイプ9の上端部と横パイプ10の基端部との間には、オーガ昇降シリンダ13が介設されており、該オーガ昇降シリンダ13の伸縮動作に応じて横パイプ10が昇降される。
【0008】
図4に示すように、オーガ旋回モータユニット11は、ギヤボックス14に、オーガ旋回モータ12、ピニオンギヤ15及びオーガ旋回ポテンショ(ポテンショメータ)16を組み付けて予めユニット化され、該ユニット状態で機体に取り付けられる。オーガ旋回モータ12には、減速機構が内装されており、ここで減速されたモータ動力でピニオンギヤ15が正逆回転される。ピニオンギヤ15は、縦パイプ9の外周部に固設されるリング状ギヤ9aに噛合しており、オーガ旋回モータ12の駆動に応じて縦パイプ9を回動させる。オーガ旋回ポテンショ16は、ピニオンギヤ15(オーガ旋回モータ12)の回転を入力し、当該入力回転に基づいて排出オーガ5の旋回位置検出を行う。
【0009】
コンバイン1では、排出オーガ5の格納位置及びオーガ旋回ポテンショ16の基準値を予め定めており、排出オーガ5が格納位置のとき、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにセットアップが行われる。このようなセットアップ作業は、通常、コンバイン1の製造工程で実施されるが、何らかのトラブルでオーガ旋回ポテンショ16の検出値にずれが生じた場合も、適宜実施される。例えば、オーガ旋回モータ12からピニオンギヤ15に至る伝動経路に、過負荷に応じた破壊により動力伝動を断つフェイルセーフ手段が介設される場合、フェイルセーフ手段の破壊に応じてオーガ旋回ポテンショ16の検出値にずれが生じるので、フェイルセーフ手段の復旧後、上記のセットアップ作業を行う必要がある。また、図5に示すように、排出オーガ5の旋回動作範囲が相違する複数機種において、オーガ旋回モータユニット11を共通化する場合も、上記のセットアップ作業を行う必要がある。
【0010】
操作部8の下方には、コンバイン1の各部に動力を供給するエンジンが搭載されている。エンジンが発生する動力は、ミッションケースを介して走行部7に伝動されると共に、脱穀クラッチを介して脱穀部3及び搬送HST17に伝動される。搬送HST17は、閉回路を介して可変容量油圧ポンプと固定容量油圧モータを接続した静油圧式無段変速装置であり、前処理部2及び脱穀フィードチェン18の動力を車速に応じて無段変速する。これにより、前処理部2及び脱穀フィードチェン18の茎稈搬送速度が同期され、引継ぎ部における搬送乱れが防止される。また、搬送HST17から前処理部2に至る動力伝動経路には、刈取クラッチが介設されており、該刈取クラッチの操作により前処理部2への動力伝動が入切される。
【0011】
図6及び図7に示すように、搬送HST17の一側面には、搬送HST17のトラニオン軸(斜板操作軸)19を回動させる搬送HSTモータユニット20が取り付けられている。搬送HSTモータユニット20は、ブラケット21に、搬送HSTモータ22、ピニオンギヤ23、セクタギヤ24及び搬送HSTポテンショ25を組み付けて予めユニット化されている。搬送HSTモータ22には、減速機構が内装されており、ここで減速されたモータ動力でピニオンギヤ23が正逆駆動される。セクタギヤ24は、ピニオンギヤ23に噛合しており、搬送HSTモータ22の駆動に応じて回動する。セクタギヤ24の回動範囲は、ブラケット21に形成される円弧状の長孔21aで規定される。この長孔21aには、セクタギヤ24に突設されるピン24aが係合しており、このピン24aが長孔21aの両端に当接することにより、それを越えるセクタギヤ24の回動が規制される。セクタギヤ24の支軸24bは、トラニオン軸19と嵌合する嵌合孔24cを備えると共に、径方向から螺入するネジ24dによってトラニオン軸19と一体的に連結される。これにより、セクタギヤ24とトラニオン軸19が一体的に連結され、搬送HSTモータ22の駆動に応じてトラニオン軸19を回動させることが可能になる。搬送HSTポテンショ25は、検出軸にアーム25aを備えており、該アーム25aがセクタギヤ24のピン24aに一側方から弾圧的に当接することにより、セクタギヤ24の回動位置検出を行う。
【0012】
上記の搬送HSTモータユニット20を用いて搬送HST17を変速制御する場合、セクタギヤ24の機械的な回動許容範囲を認識し、その範囲内でセクタギヤ24を回動制御することが好ましい。これは、制御上の回動許容範囲が機械的な回動許容範囲を越えると、搬送HSTモータ22のロックが生じるからである。従って、増速側の機械的なリミット位置における搬送HSTポテンショ25の検出値と、減速側の機械的なリミット位置における搬送HSTポテンショ25の検出値とを予め記憶し、両検出値に基づいて有効制御範囲を定めるセットアップ作業が必要となる。
【0013】
図8に示すように、コンバイン1には、作業系クラッチを構成する二つのテンションアーム26、27が回動自在に設けられている。第一テンションアーム26は、刈取クラッチを構成するためのもので、前処理伝動ベルト(図示せず)を緊張、弛緩させることにより、前処理部2に対する動力伝動を入切する。また、第二テンションアーム27は、脱穀クラッチを構成するためのもので、脱穀伝動ベルト(図示せず)を緊張、弛緩させることにより、脱穀部3に対する動力伝動を入切する。
【0014】
図8〜図11に示すように、第一テンションアーム26の基端部は、ワイヤ28を介して刈脱クラッチモータユニット29に連繋され、また、第二テンションアーム27の基端部は、ワイヤ30を介して刈脱クラッチモータユニット29に連繋されている。刈脱クラッチモータユニット29は、ブラケット31に、刈脱クラッチモータ32、ピニオンギヤ33、セクタギヤ34及び刈脱クラッチポテンショ35を組み付けてユニット化されている。刈脱クラッチモータ32には、減速機構が内装されており、ここで減速されたモータ動力でピニオンギヤ33が正逆駆動される。セクタギヤ34は、ピニオンギヤ33に噛合しており、刈脱クラッチモータ32の駆動に応じて回動する。セクタギヤ34の回動範囲は、ブラケット31に形成される円弧状の長孔31aで規定される。この長孔31aには、セクタギヤ34に突設されるピン34aが係合しており、このピン34aが長孔31aの両端に当接することにより、それを越えるセクタギヤ34の回動が規制される。セクタギヤ34には、位置を変えてワイヤ28、30が連結されており、刈脱クラッチモータ32の駆動に応じたセクタギヤ34の回動によりワイヤ28、30の引き込み及び繰り出しが行われる。刈脱クラッチポテンショ35は、検出軸にセクタギヤ35aを備えており、該セクタギヤ35aがセクタギヤ34の支軸34bに形成されるギヤ部を噛合することにより、セクタギヤ34の回動位置検出を行う。
【0015】
セクタギヤ34は、刈脱クラッチモータ32の正逆駆動により、図9に示す初期位置と、図10に示す中間位置と、図11に示す終端位置とに回動制御される。刈取りクラッチ用のワイヤ28は、セクタギヤ34の初期位置及び中間位置において繰り出し状態(クラッチOFF状態)であり、セクタギヤ34が終端位置のとき引き込み状態(クラッチON状態)となるように、セクタギヤ34に対する連結方向及び連結位置が設定されている。具体的に説明すると、セクタギヤ34が初期位置から中間位置に回動するときは、ワイヤ28がセクタギヤ34の回動中心を支点越えすることにより、ワイヤ28の繰り出し状態が維持され、セクタギヤ34が中間位置から終端位置に回動するとき、ワイヤ28が引き込まれる。
【0016】
一方、脱穀クラッチ用のワイヤ30は、セクタギヤ34が初期位置のとき繰り出し状態(クラッチOFF状態)であり、セクタギヤ34の中間位置及び終端位置において引き込み状態(クラッチON状態)となるように、セクタギヤ34に対する連結方向及び連結位置が設定されている。具体的に説明すると、セクタギヤ34が初期位置から中間位置に回動するときは、ワイヤ30が引き込まれるが、セクタギヤ34が中間位置から終端位置に回動するときは、ワイヤ30がセクタギヤ34の回動中心を支点越えすることにより、それ以上の引込みが行われないようにしてある。
【0017】
上記の刈脱クラッチモータユニット29を用いて刈取クラッチ及び脱穀クラッチを入切制御する場合、セクタギヤ34の機械的な回動許容範囲を認識し、その範囲内でセクタギヤ34を回動制御することが好ましい。これは、制御上の回動許容範囲が機械的な回動許容範囲を越えると、刈脱クラッチモータ32のロックが生じるからである。従って、始端側の機械的なリミット位置における刈脱クラッチポテンショ35の検出値と、終端側の機械的なリミット位置における刈脱クラッチポテンショ35の検出値とを予め記憶し、両検出値に基づいて有効制御範囲を定めるセットアップ作業が必要となる。
【0018】
図12に示すように、操作部8には、刈取クラッチ及び脱穀クラッチの入切操作に兼用される刈脱クラッチレバー36が設けられている。刈脱クラッチレバー36は、支軸37を支点として前後に回動操作可能に支持されると共に、基端部にカム部36aを備える。カム部36aの対向位置には、脱穀スイッチ38及び刈取スイッチ39が設けられ、これらのスイッチ38、39で刈脱クラッチレバー36の操作位置が検出される。つまり、両クラッチを切りとする第一の操作位置では、両スイッチ38、39がOFFであるが、脱穀クラッチのみを入りとする第二の操作位置では、カム部36aによって脱穀スイッチ38のみがONとなる。また、両クラッチを入りとする第三の操作位置では、カム部36aによって両スイッチ38、39がONとなる。これにより、刈脱クラッチレバー36の位置を電気的に検出し、刈脱クラッチモータユニット29を動作させることが可能になる。
【0019】
図13に示すように、コンバイン1には、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含む)を用いて構成される制御部Sが設けられている。制御部Sの入力側には、前述したオーガ旋回ポテンショ16、搬送HSTポテンショ25、刈脱クラッチポテンショ35、脱穀スイッチ38、刈取スイッチ39の他に、オーガ手動レバー40の上昇操作を検出する上昇スイッチ41と、排出オーガ5の手動昇降操作具及び手動旋回操作具に兼用されるオーガ手動レバー40の下降操作を検出する下降スイッチ42と、オーガ手動レバー40の左旋回操作を検出する左旋回スイッチ43と、オーガ手動レバー40の右旋回操作を検出する右旋回スイッチ44と、排出オーガ5の自動旋回操作(自動排出操作、自動格納操作)を行うオーガ自動スイッチ45と、キー操作されるキースイッチ46と、主変速レバー47の操作位置を検出する主変速ポテンショ48とが接続されている。また、制御部Sの出力側には、前述したオーガ旋回モータ12、搬送HSTモータ22、刈脱クラッチモータ32の他に、オーガ昇降シリンダ13を動作させるオーガ昇降バルブ49と、報知音を出音する電子ブザー50とが接続されている。
【0020】
制御部Sは、ROMに書き込まれたプログラムに従い、オーガ手動レバー40の操作に応じて排出オーガ5の旋回制御及び昇降制御を行うオーガ手動制御と、オーガ自動スイッチ45の操作に応じて排出オーガ5を所定の排出位置又は格納位置まで自動的に旋回制御するオーガ自動制御と、車速(例えば、主変速ポテンショ値)に応じて搬送HST17を変速制御する搬送HST制御と、刈脱クラッチレバー36の操作に応じて刈取クラッチ及び脱穀クラッチの入切制御を行う刈脱クラッチ制御と、オーガ旋回ポテンショ16のセットアップを自動的に行うオーガ自動セットアップ制御(自動セットアップ制御手段)と、搬送HSTポテンショ25及び刈脱クラッチポテンショ35のリミット値を自動的に取り込んで記憶するメモリバックアップ制御とを実行する。
【0021】
次に、本発明の要部であるオーガ自動セットアップ制御とメモリバックアップ制御の制御内容について、図14〜図17に示すフローチャートを参照して説明する。オーガ自動セットアップ制御は、オーガ旋回モータユニット11を排出オーガ5から切離した状態で、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値(格納検出値)となるようにセットアップを行う際に実行されるものであり、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにオーガ旋回モータ12を自動的に駆動させる。ただし、オーガ自動セットアップ制御による自動セットアップは、所定のモード切換操作に応じて、制御部40の制御モードを自動セットアップモードに切換えた状態においてのみ実行が許容される。モード切換操作は、任意に規定することが可能であり、例えば、所定のスイッチを操作しながらキースイッチ46をON操作したとき、自動セットアップモードに突入させる。
【0022】
具体的に説明すると、オーガ自動セットアップ制御では、まず、自動セットアップモードであるか否かを判断し(S11)、該判断結果がYESの場合は、オーガ自動スイッチ45の操作を判断する(S12)。ここで、オーガ自動スイッチ45が操作されると、オーガ旋回ポテンショ16の検出値(以下、オーガ旋回ポテンショ値という)が基準範囲(基準値±α)であるか否かを判断し(S13)、これが基準範囲外である場合は、さらに、基準値範囲に対するオーガ旋回ポテンショ値の大小を判断する(S14)。ここで、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも小さい場合には、オーガ旋回モータ12を右方向に駆動させる一方(S15)、オーガ旋回ポテンショ値が基準範囲よりも大きい場合には、オーガ旋回モータ12を左方向に駆動させる(S16)。また、オーガ旋回モータ12の駆動中は、セットアップ実行音(例えば、間隔の長い断続音)を電子ブザー50から出音させる(S17)。そして、オーガ旋回モータ12の駆動に応じてオーガ旋回ポテンショ値が基準範囲に入ったら、オーガ旋回モータ12の駆動を停止させると共に、セットアップ完了音(例えば、間隔の短い断続音)を電子ブザー50から出音させ(S18)、オーガ自動セットアップ制御を終了とする。
【0023】
尚、前述したオーガ自動制御の制御内容は、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値(格納位置検出値)となるようにオーガ旋回モータ12を駆動させる点においてオーガ自動セットアップ制御の制御内容と類似するが、オーガ自動制御では、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が有効制御範囲内で、かつ、他の旋回禁止条件に該当しない場合にのみオーガ旋回モータ12を駆動させるのに対し、オーガ自動セットアップ制御では、上記の有効制御範囲や旋回禁止条件に拘わらずオーガ旋回モータ12を駆動させる点に大きな違いがある。
【0024】
図15に示すように、メモリバックアップ制御では、まず、メモリバックアップモードであるか否かを判断する(S21)。メモリバックアップモードへのモード切換操作は、任意に規定することが可能であり、例えば、所定のスイッチを操作しながらキースイッチ46をON操作したとき、メモリバックアップモードに突入させる。ここで、メモリバックアップモードであると判断した場合は、続いて刈脱クラッチレバー36の操作を判断する(S22〜S25)。そして、脱穀スイッチ38がONからOFFに切換り、その後、OFFからONに切換った場合には、刈脱クラッチポテンショ35のリミット値を自動的に取り込む刈脱クラッチポテンショ制御(S26)を実行する一方、刈取スイッチ39がOFFからONに切換り、その後、ONからOFFに切換った場合には、搬送HSTポテンショ25のリミット値を自動的に取り込む搬送HSTポテンショ制御(S27)を実行する。
【0025】
図16に示すように、刈脱クラッチポテンショ制御では、まず、刈脱クラッチフラグ値(初期値は「0」)を判断し(S31)、該判断結果が「0」の場合は、刈脱クラッチモータ32を入側に駆動させつつ(S32)、刈脱クラッチポテンショ値の変化を判断する(S33)。また、刈脱クラッチモータ32の駆動中は、セットアップ実行音(例えば、間隔の長い断続音)を電子ブザー50から出音させる(S34)。そして、刈脱クラッチポテンショ値が変化しなくなったら、入側リミット位置であると判断し、入側リミット値に現在の刈脱クラッチポテンショ値をセットすると共に、刈脱クラッチフラグに「1」をセットする(S35)。刈脱クラッチフラグに「1」がセットされたら、刈脱クラッチモータ32を切側に駆動させつつ(S36)、刈脱クラッチポテンショ値の変化を判断する(S37)。そして、刈脱クラッチポテンショ値が変化しなくなったら、切側リミット位置であると判断し、切側リミット値に現在の刈脱クラッチポテンショ値をセットすると共に、セットアップ完了音(例えば、間隔の短い断続音)を電子ブザー50から出音させ、その後、刈脱クラッチフラグに「0」をセットし、刈脱クラッチポテンショ制御が終了する(S38)。
【0026】
図17に示すように、搬送HSTポテンショ制御では、まず、搬送HSTフラグ値(初期値は「0」)を判断し(S41)、該判断結果が「0」の場合は、搬送HSTモータ22を増速側に駆動させつつ(S42)、搬送HSTポテンショ値の変化を判断する(S43)。また、搬送HSTモータ22の駆動中は、セットアップ実行音(例えば、間隔の長い断続音)を電子ブザー50から出音させる(S44)。そして、搬送HSTポテンショ値が変化しなくなったら、増速側リミット位置であると判断し、増速側リミット値に現在の搬送HSTポテンショ値をセットすると共に、搬送HSTフラグに「1」をセットする(S45)。搬送HSTフラグに「1」がセットされたら、さらに、搬送HSTモータ22を減速側に駆動させつつ(S46)、搬送HSTポテンショ値の変化を判断する(S47)。そして、搬送HSTポテンショ値が変化しなくなったら、減速側リミット位置であると判断し、減速側リミット値に現在の搬送HSTポテンショ値をセットすると共に、セットアップ完了音(例えば、間隔の短い断続音)を電子ブザー50から出音させ、その後、搬送HSTフラグに「0」をセットし、搬送HSTポテンショ制御が終了する(S48)。
【0027】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、排出オーガ5を旋回動作させるオーガ旋回モータ12に、該オーガ旋回モータ12の回転を検出するオーガ旋回ポテンショ16を組み付け、該オーガ旋回ポテンショ16の検出及びオーガ旋回モータ12の駆動に基づいて排出オーガ5の旋回位置を制御するコンバイン1において、排出オーガ5の格納位置及びオーガ旋回ポテンショ16の基準値を予め定めると共に、排出オーガ5が格納位置のとき、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにセットアップを行うにあたり、オーガ旋回モータ12を排出オーガ5から切離した状態で、オーガ旋回ポテンショ16の検出値が基準値となるようにオーガ旋回モータ12を駆動させるオーガ自動セットアップ制御が実行されるので、オーガ旋回ポテンショ16のセットアップに際し、オーガ旋回ポテンショ値をテスタ等で測定しなくても、自動的に基準値に合わせることが可能になり、その結果、オーガ旋回ポテンショ16のセットアップ作業が簡略化され、作業時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】オーガ旋回モータユニットを示す要部平面図である。
【図5】二種類のオーガ旋回パターンを示すコンバインの平面図である。
【図6】搬送HST及び搬送HSTモータユニットの斜視図である。
【図7】搬送HSTモータユニットの斜視図である。
【図8】刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図9】セクタギヤを初期位置とした刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図10】セクタギヤを中間位置とした刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図11】セクタギヤを終端位置とした刈脱クラッチモータユニットの正面図である。
【図12】(A)〜(C)は刈脱クラッチレバーの操作位置を示す説明図である。
【図13】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図14】オーガ自動セットアップ制御のフローチャートである。
【図15】メモリバックアップ制御のフローチャートである。
【図16】刈脱クラッチポテンショ制御のフローチャートである。
【図17】搬送HSTポテンショ制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 コンバイン
5 排出オーガ
9 縦パイプ
9a リング状ギヤ
10 横パイプ
11 オーガ旋回モータユニット
12 オーガ旋回モータ
15 ピニオンギヤ
16 オーガ旋回ポテンショ
45 オーガ自動スイッチ
S 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出オーガを旋回動作させる電動モータに、該電動モータの回転を検出するポテンショメータを組み付け、該ポテンショメータの検出及び前記電動モータの駆動に基づいて前記排出オーガの旋回位置を制御するコンバインにおいて、
前記排出オーガの格納位置及び前記ポテンショメータの基準値を予め定めると共に、前記排出オーガが格納位置のとき、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるようにセットアップを行うにあたり、前記電動モータを前記排出オーガから切離した状態で、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるように前記電動モータを駆動させる自動セットアップ制御手段を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
排出オーガを旋回動作させる電動モータに、該電動モータの回転を検出するポテンショメータを組み付け、該ポテンショメータの検出及び前記電動モータの駆動に基づいて前記排出オーガの旋回位置を制御するコンバインにおいて、
前記排出オーガの格納位置及び前記ポテンショメータの基準値を予め定めると共に、前記排出オーガが格納位置のとき、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるようにセットアップを行うにあたり、前記電動モータを前記排出オーガから切離した状態で、前記ポテンショメータの検出値が基準値となるように前記電動モータを駆動させる自動セットアップ制御手段を設けたことを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−159519(P2007−159519A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362687(P2005−362687)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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