説明

コンバイン

【課題】供給搬送装置を着脱する際に、この供給搬送装置の吊り上げ姿勢を安定させて、この供給搬送装置の着脱作業を容易に行えるものとする。
【解決手段】走行車台(2)の下側に走行装置(3)を設け、走行車台(2)の前方に刈取装置(4)を設け、走行車台(2)の上部左側に脱穀装置(5)を設け、前記刈取装置(4)と脱穀装置(5)の間に着脱自在の供給搬送装置(33)を設け、走行車台(2)の上部右側に穀粒貯留タンク(7)を設け、該穀粒貯留タンク(7)の後側に縦軸回動自在な縦移送筒(9)を設け、該縦移送筒(9)の上端部に横移送筒(10)の基部を横軸回動自在に接続する。そして、横移送筒(10)に長さの異なる吊り上げ用の複数のフック(14a,14b)を取り付け、該複数のフック(14a,14b)によって前記供給搬送装置(33)を吊り上げ可能な構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、下記特許文献1に例示するように、脱穀装置に設ける扱胴を、穀粒貯留タンクに備えた排出装置によって吊り上げて着脱しようとするものがある。
この排出装置は、穀粒貯留タンクの後側に縦移送筒を縦軸回動自在に設け、該縦移送筒の上端部に横移送筒の基部を横軸回動自在に接続し、該横移送筒に吊り上げ用のフックを設けた構成である。
【特許文献1】特開平10−276559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来の技術では、吊り上げ用のフックによって扱胴等の移動対象物を吊り上げようとした場合に、この移動対象物の姿勢が不安定となる。即ち、扱胴を吊り上げて脱穀装置に組み付けようとする場合に、この吊り上げられた扱胴の姿勢が安定しないために脱穀装置への位置決めが困難となり、この扱胴の組み付け作業の能率が低下する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述のような課題を解決するために、この発明は、次のような技術手段を講じる。
このために、請求項1記載の発明においては、走行車台(2)の下側に走行装置(3)を設け、走行車台(2)の前方に刈取装置(4)を設け、走行車台(2)の上部左側に脱穀装置(5)を設け、前記刈取装置(4)と脱穀装置(5)の間に刈取穀稈を引継搬送する着脱自在の供給搬送装置(33)を設け、走行車台(2)の上部右側に穀粒貯留タンク(7)を設け、該穀粒貯留タンク(7)の後側に縦軸回動自在な縦移送筒(9)を設け、該縦移送筒(9)の上端部に横移送筒(10)の基部を横軸回動自在に接続し、該横移送筒(10)に長さの異なる吊り上げ用の複数のフック(14a,14b)を取り付け、該複数のフック(14a,14b)によって前記供給搬送装置(33)を吊り上げ可能な構成としたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0005】
請求項2記載の発明は、前記吊り上げ用の複数のフック(14a,14b)を、第1フック(14a)と該第1フック(14a)よりも短い第2フック(14b)とから構成し、該第1フック(14a)と第2フック(14b)とを収納自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0006】
請求項3記載の発明は、前記第1フック(14a)及び第2フック(14b)を、横移送筒(10)の側面視のシルエット内に収納可能な構成としたことを特徴とする請求項2記載のコンバインとしたものである。
【0007】
請求項4記載の発明は、前記第1フック(14a)及び第2フック(14b)を、横移送筒(10)の左右両側部に夫々取り付けたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のコンバインとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によると、横移送筒10に取り付けた長さの異なる複数のフック14a,14bによって供給搬送装置33を吊り上げるため、供給搬送装置33の複数の高さの異なる部位を吊り上げ支持することとなり、供給搬送装置33の姿勢が安定する。これによって、離脱した供給搬送装置33を安定した姿勢のまま上下移動および横移動させることができ、この供給搬送装置33をコンバインの機体側に装着する作業を能率良く行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、第1フック14aと第2フック14bとを収納することによって、横移送筒10を穀粒排出作業位置まで移動させる際に、この横移送筒10が障害物に衝突して破損する不具合を少なくすることができ、穀粒排出作業の能率を高めることができる。
【0010】
請求項3記載の発明によると、上記請求項2記載の発明の効果を奏するうえに、横移送筒10を穀粒排出作業位置まで移動させる際に、この横移送筒10が障害物に衝突して破損する不具合を更に少なくすることができ、穀粒排出作業の能率を高めることができる。
【0011】
請求項4記載の発明によると、上記請求項2または請求項3記載の発明の効果を奏するうえに、第1フック14aと第2フック14bに供給搬送装置33を吊り下げた場合に、横移送筒10を捻じる(回転させる)方向の力が作用しにくくなり、供給搬送装置33の姿勢を更に安定させることができる。これによって、離脱した供給搬送装置33を安定した姿勢のまま上下移動および横移動させることができ、この供給搬送装置33をコンバインの機体側に装着する作業を更に能率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台2の下側には、走行クローラ3aを有する走行装置3を、該走行車台2の左右両側に設けている。該走行車台2の前方部には、立毛穀稈を刈取り移送する刈取装置4を設けている。該刈取装置4で刈取りした刈取り穀稈は、この刈取装置4で後方上部へ移送して、この刈取装置4の後側で該走行車台2の上側へ載置した脱穀装置5へ供給され、この脱穀装置5のフィードチェン6aと、挟持杆6bとで挟持移送されて、この脱穀装置5内で脱穀、及び風選別され、該脱穀装置5の横側に設けた穀粒貯蓄タンク7内へ選別済み脱穀は、供給されて一時貯留される。
【0013】
前記穀粒貯留タンク7内へ一時貯留された穀粒は、この穀粒貯留タンク7に設けて上部へ移送する移送排出筒装置8を設けている。この移送排出筒装置8を構成する、左右方向に回動自在な縦移送筒9の上端部には、上下回動自在に移送終端部側を接続した横移送筒10を設け、この横移送筒10の先端部には、排出筒13を設けて、穀粒を機外へ排出させている。該横移送筒10の移送始端部を回動中心として、上下方向の吊り下げ用の長い第1フック14aと短い第2フック14bを適宜位置に設けている。これら移送排出筒装置8を主に図示して説明する。
【0014】
前記コンバイン1の走行車台2の下側には、図1、及び図2で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3aを張設した走行装置3を配設し、該走行車台2の上側面に脱穀装置5を載置している。該走行車台2の前方部の刈取装置4で立毛穀稈を刈取りして、後方上部に移送し、該脱穀装置5のフィードチェン6aと、挟持杆6bとで引継いで挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済みの穀粒は、該脱穀装置5の右横側へ配設した穀粒貯留タンク7内へ供給され、一時貯留される。
【0015】
前記走行車台2の前方部には、図1、及び図2で示すように、立毛穀稈を分離するナローガイド15、及び各分草体16と、立毛穀稈を引起す各引起装置17と、引起された穀稈を掻込みする穀稈掻込移送装置18の各掻込装置19と、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置20と、刈取りされた穀稈を挟持移送して脱穀装置5のフィードチェン6aと、挟持杆6bとへ受渡しする該穀稈掻込移送装置18の根元・穂先移送装置21・22等からなる刈取装置4を設けている。該刈取装置4は、油圧駆動による伸縮シリンダ23により、土壌面に対して昇降する。
【0016】
前記刈取装置4の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆24の上端部に設ける支持パイプ杆25を、走行車台2の上側面に設けた支持装置26で回動自在に支持させている。伸縮シリンダ23を作動させると支持杆24と共に、刈取装置4が上下回動する。
【0017】
前記刈取装置4の穀稈掻込移送装置18によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送する穀稈に接触作用することにより、脱穀装置5への穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサ5aを設けている。
【0018】
前記穀粒貯留タンク7側の前部には、図1、及び図2で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う制御装置27と、操縦席28とを設け、この操縦席28の下側にエンジン29を載置している。
【0019】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用のミッションケース30内の伝動機構30aの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ30bを設けている。
【0020】
前記穀粒貯留タンク7内へ貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク7の後側には、図1、及び図2で示すように、縦移送螺旋31aを内装した、左右回動自在な縦移送筒9を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この排出筒9の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋32aを伸縮自在に内装した横移送筒10を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設している。
【0021】
前記脱穀装置5で脱穀済みの粉粒体である穀粒を上部へ移送する移送排出筒装置8を構成する左右方向に回動自在な縦移送筒9の上部には、図1、及び図2で示すように、上下方向に回動自在に移動始端部側を接続させて横移送筒10の横固定移送筒11と、横移動移送筒12とを設け、該横移送筒10の移送先端部側の該横移動移送筒12の移送先端部には、粉粒体等を排出する排出筒13を設けると共に、該横移送筒10は移送始端部を回動中心として、上下方向に吊り下げ用フック14を設けて、作業状態及び収納状態等に切換可能に設けている。これにより作業状態及び収納状態への切換えを容易にして作業工程の向上を図っている。
【0022】
前記吊り下げ用の第1フック14a、第2フック14bの収納時のオーガ固定用スプリング14cは、図3〜図5で示すように、該第1フック14a、第2フック14bの回動部に設けて、該第1フック14a、第2フック14bの収納固定範囲と、自由回動範囲とを設けている。
【0023】
これにより前記第1フック14a、第2フック14bとの固定支点部に、図3〜図5で示すように、該各フック14a、14bを固定する該スプリング14cを設け、刈取り作業時など該各フック14a、14bの非作用時には、該移送排出筒装置8に設けた左右受板14d、14eを固定できる。又、該スプリング14aの作用範囲に収納固定時に限定する範囲とし、下方に該各フック14a、14bを下げた時にフリーに動くようにすることで、該フック14a、14bの操作性が良く、又該フック14a、14bの固定が容易になる。
【0024】
前記横移送筒10の外径(D)部のシルエット内に、図3で示すように、フック14a、14bが収納できる。これにより、刈取作業時、又、排出作業時に、引掛けて思わぬ障害が発生することがなくなる。又、外観性能でも良好である。
【0025】
前記第1フック14a、第2フック14bは、図4で示すように、該横移送筒10の外径(D)部内の左右両側部に設けたことにより、吊り上げ物を安定して吊り上げることができる。又、吊り上げ姿勢が安定する。1本当たりの該フック14a、14bへの荷重が減少する。
【0026】
前記横移送筒10の該外径(D)の左右両側に設ける該第1フック14a、第2フック14bの長さを左右で異にして設けたことにより、吊り上げ物に各該フック14a、14bを掛ける時に、片方づつ掛けることにより、便利である。又、バランスを取りよくなる。
【0027】
前記短い方の第2フック14bは、図1、及び図2で示すように、刈取装置4と脱穀装置5との間に設けた穀稈移送部(供給搬送装置)33のUパイプ33aに引掛ける構成である。又、長い方の第1フック14aは、該穀稈移送部33の下部の受板33bに引掛ける構成である。
【0028】
これにより、バランスよく吊り上げすることができる。
前記供給搬送部(A)の吊り下げ部は、図6で示すように、供給搬送部(A)の重心位置をまたいで設けた構成である。又、前記受板33bは、該穀稈移送部33の終端部の該受板33bの下方に設けている。
【0029】
これにより、前記供給搬送部(A)の重心位置を、前記Uパイプ33aの頂点の下方に位置して設けていることにより、重心をまたいで吊り下げることで吊り上げ後の姿勢が変わることなく安定できる。又、前記第1フック14a、第2フック14bの吊り下げを容易にしている。
【0030】
前記移送排出筒装置8は、該穀稈移送部33に各第1フック14a、第2フック14bを掛ける時には、図1で示すように、前方部が水平より下がるように構成している。
これにより、前方部を水平より、下り傾斜するように設けたことにより、前記穀稈移送部33に第2フック14bを掛ける際に、該第2フック14bを短くできるので、強度的に優利であり、又、全長を短くコンパクトにできる。
【0031】
前記移送排出筒装置8の前後方向略中間部には、図2で示すように、オーガ受34を設けている。又、本体1aの左側部に左オーガ上下スイッチ36aを設けると共に、操縦席28の左側後方部には、右オーガ上下スイッチ36bを設けた構成であり、該移送排出筒装置8を回動自在であると共に、装着を容易にした構成である。
【0032】
又、前記移送排出筒装置8の横固定移送筒11の後端部には、ズームモータ11aを設けると共に、右横側には、オーガ回動支点(メタル)11bを設け、このオーガ回動支点(メタル)の前側には、オーガ上下シリンダ11cを設け、該移送排出筒装置8を上下回動自在、及び左右回動自在に設けている。35は引継ぎガイドステーである。
【0033】
これにより、前記移送排出筒装置8を収納位置で左右に動かすことなく、フック部を供給部に掛けることができて、省力化を図ることができる。又、操作が容易である。
図2で示すように、前記上下シリンダ11cは、電動油圧シリング11cを使用し、エンジン29を始動しない状態で、前記移送排出筒装置8を上下動可能に構成している。
【0034】
これにより、前記エンジン29の始動を必要としないことにより、走行部のトラブルなどでも使用でき、供給搬送部の着脱でメンテナンスが容易になる。
図2で示すように、前記移送排出筒装置8の旋回方向は、この移送排出筒装置8が吊り上げ状態では、収納位置から右側、又は左側へ回動移動可能とする。
【0035】
前記移送排出筒8の排出時の旋回方向は右方向旋回とし、供給吊り上げ時は、収納位置より、左方向に所定角度のみ旋回可能とする。
又、排出時は右方向旋回のみに規制する。更に供給吊り上げ時には、収納位置から左方向へ所定角度のみ旋回できるように規制する。
【0036】
これにより、前記穀粒貯留タンク7から穀粒排出時の該移送排出筒装置8の穀粒排出時の旋回方向は、右方向とし、排出までの旋回時間を短縮している。又、供給部吊り上げ時には、収納位置から左方向に所定角度旋回可能とし、供給吊り上げ時旋回した際に、操縦部28部干渉の恐れがない。該横移送筒10はズーム可能とし、供給搬送部のフック部はズーム側筒部に設け、供給部も前後移動可能としている。
【0037】
これにより、他の場所に供給部をおろすのにも便利である。これにより、供給部を前後に移動でき、機体1から遠ざけるような操作も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】コンバインと移送排出筒装置部との全体側面図
【図2】コンバインと移送排出筒装置部との全体平面図
【図3】横移送筒の吊り下げ用フック短部の側面図
【図4】横移送筒の吊り下げ用フック短・長部の平面図
【図5】横移送筒の吊り下げ用フック短・長部の正面図
【図6】穀稈移送部の拡大正面図
【符号の説明】
【0039】
2 走行車台
3 走行装置
4 刈取装置
5 脱穀装置
7 穀粒貯留タンク
9 縦移送筒
10 横移送筒
14a 第1フック
14b 第2フック
33 穀稈移送部(供給搬送装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車台(2)の下側に走行装置(3)を設け、走行車台(2)の前方に刈取装置(4)を設け、走行車台(2)の上部左側に脱穀装置(5)を設け、前記刈取装置(4)と脱穀装置(5)の間に刈取穀稈を引継搬送する着脱自在の供給搬送装置(33)を設け、走行車台(2)の上部右側に穀粒貯留タンク(7)を設け、該穀粒貯留タンク(7)の後側に縦軸回動自在な縦移送筒(9)を設け、該縦移送筒(9)の上端部に横移送筒(10)の基部を横軸回動自在に接続し、該横移送筒(10)に長さの異なる吊り上げ用の複数のフック(14a,14b)を取り付け、該複数のフック(14a,14b)によって前記供給搬送装置(33)を吊り上げ可能な構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記吊り上げ用の複数のフック(14a,14b)を、第1フック(14a)と該第1フック(14a)よりも短い第2フック(14b)とから構成し、該第1フック(14a)と第2フック(14b)とを収納自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1フック(14a)及び第2フック(14b)を、横移送筒(10)の側面視のシルエット内に収納可能な構成としたことを特徴とする請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第1フック(14a)及び第2フック(14b)を、横移送筒(10)の左右両側部に夫々取り付けたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−106198(P2009−106198A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281967(P2007−281967)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】