説明

コンバイン

【課題】上下ならびに水平方向に位置移動自在な穀粒搬出筒を、水平位置よりも下方側にも操作可能であるようにするとともに、その操作構造の簡素化を図る。
【解決手段】穀粒搬出筒70の上下方向における揺動範囲を、穀粒搬出筒70の筒軸心が水平よりも下向きである姿勢から上向きである姿勢にわたって姿勢変更可能で、かつ、穀粒搬出筒70の水平方向における回動範囲を、自走機体上の領域を含む回動角度範囲に設定してあり、穀粒搬出筒70の上下軸心周りでの水平方向における回動範囲のうち、自走機体1上の領域に相当する回動角度範囲には、穀粒搬出筒70が自走機体1の上方を移動するに伴って下向き姿勢にある穀粒搬出筒70を上方側へ持ち上げ案内するガイド体45を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走機体の後方側における横一側部にグレンタンクを備え、そのグレンタンクの下端側から取り出された穀粒を上方側へ揚送して、かつ上下ならびに水平方向に位置移動自在な穀粒搬出筒の先端から排出するように構成してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようにグレンタンク内の穀粒を穀粒搬出筒の先端から排出する構造のコンバインにおいては、一般に穀粒搬出筒が水平位置よりも上方側で上下動、及び水平回動するように構成されているものが一般的であるが、これでは地面上で籾袋に穀粒を詰め込むような作業を行う場合に不便であるため、下記[1]に示すような構造のコンバインも提案されている。
[1] 穀粒搬出筒が自走機体の上方に位置する状態ではないことを検出する水平位置検出手段を設け、穀粒搬出筒が自走機体に上方から外れた位置に存在する範囲では、穀粒搬出筒の先端側を地面近傍まで下降可能であるように、穀粒搬出筒の昇降用シリンダの作動範囲の下限位置を変更するように構成したもの(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−266683号公報(段落〔0016〕、〔0017〕、図1,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載の従来構造のものでは、穀粒搬出筒の水平方向での回動角度と上下方向での揺動角度とを検出する角度センサーを設けて、かつ、その検出値に基づいて穀粒搬出筒を昇降操作する昇降用シリンダーの作動を制御しているものであるから、運搬車の荷台に穀粒を積み込む場合や、地面上で籾袋に穀粒を詰める場合などの使用状況に応じて、穀粒搬出筒の昇降作動位置を、前記水平位置よりも上方側に制限されることなく変更可能である点で有用なものである。
しかしながらこの従来構造のものでは、前述した穀粒搬出筒の水平方向での回動角度と上下方向での揺動角度とをそれぞれ検出する角度センサーを要し、かつ、その角度センサーの検出値に基づいて穀粒搬出筒を精度良く作動させるためのアクチュエータ、並びに、それらのアクチュエータを前記角度センサーによる検出値に基づいて、作動を制限する状態と制限しない状態とに切り換えて操作するための制御装置や、制限状態を示す表示手段等を必要とするものであり、比較的複雑な構成を有するものであった。
【0005】
本発明の目的は、上下ならびに水平方向に位置移動自在な穀粒搬出筒を、水平位置よりも下方側にも操作可能であるようにするとともに、その操作構造の簡素化を図り得たコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、自走機体の後方側にグレンタンクを備えるとともに、そのグレンタンクの下端側から取り出された穀粒を上方側へ揚送する縦送り筒を設け、この縦送り筒の上端側に、その縦送り筒の上下軸心周りで水平方向に回動自在に、かつ、縦送り筒の上端近くの水平軸心周りで上下方向に揺動自在に構成された穀粒搬出筒を設けたコンバインであって、
前記穀粒搬出筒の前記水平軸心周りでの上下方向における揺動範囲を、穀粒搬出筒の筒軸心が水平よりも下向きである姿勢から上向きである姿勢にわたって姿勢変更可能で、かつ、前記穀粒搬出筒の前記上下軸心周りでの水平方向における回動範囲を、自走機体上の領域を含む回動角度範囲に設定してあり、
さらに、前記穀粒搬出筒の前記上下軸心周りでの水平方向における回動範囲のうち、前記自走機体上の領域に相当する回動角度範囲には、前記穀粒搬出筒が自走機体の上方を移動するに伴って前記下向き姿勢にある穀粒搬出筒を上方側へ持ち上げ案内するガイド体を備えたことを特徴とする。
【0007】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のコンバインでは、水平方向における回動範囲を自走機体上の領域を含む回動角度範囲に設定してある穀粒搬出筒の上下方向における揺動範囲を、穀粒搬出筒の筒軸心が水平よりも下向きである姿勢から上向きである姿勢にわたって姿勢変更可能に構成したものであるから、穀粒搬出筒が水平よりも下向きとなる姿勢にして、地上などの低い位置での袋詰め作業を行い易くし得たものである。
そして、このように穀粒搬出筒を下向きにして低位置での作業を行い易くしたものでありながら、前記自走機体上の領域に相当する回動角度範囲に、穀粒搬出筒が自走機体の上方を移動するに伴って下向き姿勢にある穀粒搬出筒を上方側へ持ち上げ案内するガイド体を備えたものであるから、穀粒搬出筒が自走機体上の領域に達すると、その穀粒搬出筒をガイド体の案内作用によって上方側へ持ち上げ案内し、自走機体との衝突を回避することができる。
また、このように水平回動する穀粒搬出筒を上方側へ持ち上げ操作するための構成を、ガイド体の利用によって機械的に行わせるようにしたので、複雑な位置検出機構や制御装置を要さず、その構成の簡素化を達成できたものである。
【0008】
〔解決手段2〕
本発明のコンバインにおける第2の解決手段は、請求項2の記載のように、自走機体の前部に搭乗運転部を配設してあり、この搭乗運転部が穀粒搬出筒の水平方向における回動範囲内に含まれていることを特徴とする。
【0009】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、自走機体の前部に配設した搭乗運転部が穀粒搬出筒の水平方向における回動範囲内に含まれているので、自走機体上で比較的高く位置する搭乗運転部を確実に回避して穀粒搬出筒を水平方向に回動操作することができる。
【0010】
〔解決手段3〕
本発明のコンバインにおける第3の解決手段は、請求項3の記載のように、穀粒搬出筒の上下方向での揺動範囲が、その下限側の高さを変更可能に構成されていることである。
【0011】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1又は2にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、解決手段3にかかる本発明のコンバインでは、穀粒搬出筒の上下方向での揺動範囲の下限側の高さを変更可能に構成してあるので、例えば下限側の高さを、穀粒搬出筒の筒軸心が水平よりも下向きである状態で使用できるようにして、地面上で袋詰めする作業とか、下限の高さが水平よりも上方に位置する状態にして、運搬車の荷台上に穀粒を排出する作業など、各種の作業条件に応じて種々の用い方を選択することができるという利点がある。
【0012】
〔解決手段4〕
本発明のコンバインにおける第4の解決手段は、請求項4の記載のように、縦送り筒の上下軸心周りでの穀粒搬出筒の水平方向における回動範囲は、前記搭乗運転部の存在領域を含む自走機体上の位置と、その搭乗運転部が位置する側の自走機体の横外方領域とを含む2/3周程度である点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段2又は3にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、解決手段4にかかる本発明のコンバインでは、自走機体上における穀粒搬出筒の格納位置が搭乗運転部の存在領域を越えて自走機体上に設定されていても、その格納位置から搭乗運転部が位置する側の自走機体の横外方領域にわたって穀粒搬出筒を回動操作することができる。
そして、その穀粒搬出筒の回動範囲が、前記記搭乗運転部の存在領域を含む自走機体上の位置と、その搭乗運転部が位置する側の自走機体の横外方領域とを含む2/3周程度に制限されているので、格納位置から作業位置への穀粒搬出筒の回動は支障なく行えながら、穀粒搬出筒の無制限な回動を抑止して、残りの1/3周程度の範囲に存在する自走機体上の他装置や、他物との接触を阻止する上で有効である。
【0014】
〔解決手段5〕
本発明のコンバインにおける第5の解決手段は、請求項5の記載のように、ガイド体は、穀粒搬出筒の回動中心と吐出口との間で、その穀粒搬出筒の長手方向における回動中心側寄りの位置を案内するように、縦送り筒近くの自走機体上に設けてある点に特徴がある。
【0015】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段5にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜4にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、ガイド体が穀粒搬出筒の長手方向における回動中心側寄りの位置を案内するように縦送り筒近くに設けられているので、ガイド体を穀粒搬出筒の長手方向における吐出口側寄りの位置に設けた場合に比べて、ガイド体を比較的小型に構成することができる利点がある。
【0016】
〔解決手段6〕
本発明のコンバインにおける第6の解決手段は、請求項6の記載のように、ガイド体は、グレンタンクの前部側の天井部よりも低く形成された後部側の天井部に設けてある点に特徴がある。
【0017】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段6にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜5にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、ガイド体が設けられる後部側の天井部は、グレンタンクの前部側の天井部よりも、回動中心に近い位置であり、かつ、穀粒搬出筒がグレンタンクの上側に位置している状態では、穀粒搬出筒が自走機体上に位置しているので、水平よりも下方に向ける必要はない。したがって、低く形成されている後部側の天井部にガイド体を設けても、穀粒搬出筒の上下揺動支点を低くしておけば、後部側の天井部よりも高い前部側の天井部や、さらに前方側の高い部材を、ガイド体の案内によって越えさせることができる。
これによって、ガイド体自体をコンパクトな構造によって構成することができる利点がある。
【0018】
〔解決手段7〕
本発明のコンバインにおける第7の解決手段は、請求項7の記載のように、ガイド体は、グレンタンクの上部に形成されたメンテナンス用開口を閉塞する蓋体の上面側に設けてある点に特徴がある。
【0019】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段7にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜6にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、ガイド体が、グレンタンクの上部に形成されたメンテナンス用開口を閉塞する蓋体の上面側に設けてあるので、このガイド体を取っ手代わりに利用して蓋体の開閉を行うことができる。
したがって、ガイド体と蓋体の取っ手との兼用によって、さらに構造の簡素化を図り得る利点がある。
【0020】
〔解決手段8〕
本発明のコンバインにおける第8の解決手段は、請求項8の記載のように、ガイド体は、穀粒搬出筒の水平方向での回動範囲内における自走機体上の領域に設けられたプレクリーナよりも上方側に穀粒搬出筒を案内するようにガイド範囲を設定してある点に特徴がある。
【0021】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段8にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜7にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、ガイド体による上方側への案内高さが、プレクリーナよりも上方に穀粒搬出筒を案内するように設定されているので、プレクリーナが搭乗運転部近くで運転座席の後方側など、比較的目視し難い位置に存在する場合にも確実に穀粒搬出筒とプレクリーナとの接触を回避することができる。
【0022】
〔解決手段9〕
本発明のコンバインにおける第9の解決手段は、請求項9の記載のように、搭乗運転部の運転座席を、エンジンを覆う原動部カバーの上側に配置し、前記原動部カバー内に供給する外気を導入するための吸気ダクトを前記運転座席よりも機体外端側箇所に設け、その吸気ダクトの上面側に、穀粒搬出筒の水平方向回動ならびに上下方向揺動を行うためのスイッチ操作具を設けてある点に特徴がある。
【0023】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段9にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段2〜8にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、運転座席よりも機体外端側箇所に設けられた吸気ダクトの上面側に、穀粒搬出筒の水平方向回動ならびに上下方向揺動を行うためのスイッチ操作具を設けたので、原動部カバー内に供給する外気を導入するための吸気ダクトをスイッチ操作具の取付手段として利用することができる。これによって、スイッチ操作具取付構造の簡素化を図り得る利点がある。
また、運転座席よりも機体外端側箇所に設けられた吸気ダクトの上面側は、自走機体に搭乗していない地面上の作業者によってもスイッチ操作具の操作が可能な位置であり、したがって、操縦者が地面上に降りて穀粒搬出筒の位置を調節する場合に便利に用いることのできる利点もある。
【0024】
〔解決手段10〕
本発明のコンバインにおける第10の解決手段は、請求項10の記載のように、スイッチ操作具は、穀粒搬出筒の水平方向回動操作を2位置の択一的な揺動切換で行うシーソースイッチと、穀粒搬出筒の上下方向揺動操作を2位置の択一的な揺動切換で行うシーソースイッチとの組み合わせで構成してある点に特徴がある。
【0025】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段10にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段9にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、スイッチ操作具として、穀粒搬出筒の水平方向回動操作も、穀粒搬出筒の上下方向揺動操作も、2位置の択一的な揺動切換で行うシーソースイッチの組み合わせで行うようにしたものであるから、穀粒搬出筒の水平方向回動操作用か上下方向揺動操作用かの何れかを選択して、単純な2位置の択一的な揺動切換によって所期の操作を行うことができ、誤操作を生じる可能性の少ない状態で穀粒搬出作業を行うことができる。
【0026】
〔解決手段11〕
本発明のコンバインにおける第11の解決手段は、請求項11の記載のように、グレンタンク内に貯留されている穀粒を搬出するための穀粒搬出用クラッチの操作具を、運転座席よりも機体外側寄り箇所に設けてある点に特徴がある。
【0027】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段11にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段2〜10にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、穀粒搬出クラッチの操作具を、運転座席よりも機体外側寄り箇所に設けてあるので、自走機体に搭乗しない状態で地面上の作業者が、前記穀粒搬出クラッチの操作具を握って操作し易いものであり、運転座席に搭座した状態でも、地面上に位置した状態でも、操作可能な穀粒搬出クラッチを得られる利点がある。
【0028】
〔解決手段12〕
本発明のコンバインにおける第12の解決手段は、請求項12の記載のように、グレンタンク内に設けた底スクリューと、縦送り筒内に設けた縦スクリューと、穀粒搬出筒内の搬送スクリューとを、それぞれのスクリューを内装するスクリュー筒の外側で連動する連動機構を設けてある点に特徴がある。
【0029】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段12にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜11にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、グレンタンク内の底スクリューと、縦送り筒内の縦スクリューと、穀粒搬出筒内の搬送スクリューとを、それぞれのスクリューを内装する筒部分の外側で連動することにより、各スクリュー同士を連動するための連動機構によって筒部分の内部空間を狭められることがないので、搬送される穀粒の流れを、比較的搬送抵抗の少ないスムースな状態に維持し易いという利点がある。
【0030】
〔解決手段13〕
本発明のコンバインにおける第13の解決手段は、請求項13の記載のように、底スクリューと縦スクリューとを連動する連動機構がベルト伝動機構により構成されている点に特徴がある。
【0031】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段13にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段12にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、底スクリューや穀粒搬出筒内の搬送スクリューに比べると、比較的搬送抵抗の大きいものである縦スクリュー部分において、詰まり発生などのさらに大きな搬送抵抗が生じた場合には、底スクリューと縦スクリューとの間に設けたベルト伝動機構部分でのスリップが生じることになるので、各スクリュー部分での損傷を回避し得る利点がある。
【0032】
〔解決手段14〕
本発明のコンバインにおける第14の解決手段は、請求項14の記載のように、グレンタンクを上下向き軸心周りで機体外側に回動操作可能に構成してある点に特徴がある。
【0033】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段14にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜13にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、グレンタンクを上下方向軸心周りで機体外側に回動操作することにより、グレンタンク部分によって機体外方側が覆われていた自走機体上の各伝動構造などを外部へ露呈させることができ、その伝動機構等の保守点検を行い易くなる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
【0035】
〔全体構成〕
図1及び図2に、本発明でいうコンバインの一例としての普通型コンバインが示されている。
この普通型コンバインは、機体フレーム10を左右一対のクローラ走行装置11,11上に搭載して自走機体1を構成し、自走機体1上に、運転座席20とその運転座席20の上方を覆うキャノピ21とが装備された搭乗運転部2と、前記運転座席20の下方に位置するエンジン12と、脱穀対象の被処理物を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置13と、脱穀された被処理物を回収するための穀粒回収装置3とを搭載設置してある。
そして、自走機体1の機体前方側には、刈り取り対象茎稈を収穫するための刈取前処理装置14のフィーダ15を、その後端部の横軸心(図外)周りで上下揺動自在に連結してあり、これらの各装置の組み合わせによって、刈り取られた脱穀処理対象物の全稈を脱穀処理する普通型コンバインを構成してある。
【0036】
〔搭乗運転部〕
前記搭乗運転部2では、前記エンジン12の上方側を覆うように箱状に形成された原動部カバー22の上側に前記運転座席20を配備してあり、前記原動部カバー22が座席支持台を兼用するように構成されている。
運転座席20の前方側には、機体フレーム10上の運転部フロアー23の前端部から立設された操縦搭24を備え、その操縦搭24の左側部から後方の原動部カバー22にわたって操縦ボックス25を設けてあり、前記運転座席20の右側部には、前記エンジン12側に機体の横外側部上方から防塵網26aを介して外気を取り込むための吸気ダクト26を、前記原動部カバー22に対して一体に連設してある。
【0037】
前記操縦搭24の上面側には、機体進行方向を制御する操向操作レバー27を設けてあり、前記操縦ボックス25の上面側には機体走行速度を制御する変速レバー28や、刈取前処理装置14の駆動を断続する刈取クラッチレバー29を設けてある。また、その他の各種計器類が前記操搭搭24及び操縦ボックス25の上面側に形成される操作パネル面に装備されている。
【0038】
前記吸気ダクト26の前下がり姿勢の上面側には、図1及び図13に示すように、前記穀粒回収装置3を構成するグレンタンク4と穀粒搬出装置5のうちの穀粒搬出装置5に対して、その穀粒搬出位置を選択操作するためのスイッチ操作具32を設けてある。
また、前記吸気ダクト26の機体内方側の側面と運転座席20との間には、前記穀粒回収装置3のグレンタンク4に貯留されている穀粒を外部へ取り出すための、後述する穀粒搬出装置5を駆動する状態と駆動停止する状態とに切換操作可能な穀粒搬出用クラッチ87の操作具としての穀粒搬出クラッチレバー31を設けてある。
これらのスイッチ操作具32及び穀粒搬出クラッチレバー31の操作については後ほど詳述する。
【0039】
前記運転座席20の後方側には、エンジン12に対する吸気用のエアクリーナ17を設けてあり、そのエアクリーナ17には、上下に長い円筒状の吸気管17aが接続されており、この吸気管17aの上部にプレクリーナ18が接続されている。吸気管17aは、グレンタンク4の内側面に沿って上方に延出されて、その上下方向の中間部がグレンタンク4の内側の面に固定されている。これにより、比較的塵埃の少ない機体上部箇所の外気がプレクリーナ18及びエアクリーナ17を介して浄化されてエンジン12の燃焼用空気として供給される。
【0040】
上記のように構成された運転座席20の上方側には、グレンタンク4の前面側に沿って立設された支柱16を介して、前記運転座席20の上方を覆うキャノピ21を備えている。
【0041】
〔脱穀部〕
前記脱穀装置13は、扱室に供給された刈取り穀稈を走行機体前後向きの軸芯周りに回動する軸流型の扱胴(図外)によって脱穀処理するように構成してあり、その脱穀された被処理物を扱胴の下方に配備された選別処理装置(図外)で脱穀処理物を脱穀粒と藁屑とに選別処理し、脱穀粒を前記穀粒回収装置3のグレンタンク4に供給するように構成してある。前記グレンタンク4に貯留される対象の脱穀処理物(脱穀粒)以外の藁屑などは、自走機体1の後方に落下放出するように構成してある。
【0042】
〔穀粒回収装置の構成〕
前記穀粒回収装置3は、脱穀粒を貯留するためのグレンタンク4と、そのグレンタンク4内に貯留されている穀粒を外部へ取り出すための穀粒搬出装置5とを備えて構成されている。
【0043】
〔グレンタンク関係〕
図3及び図4に示すように、前記グレンタンク4は、タンク本体40の下部に貯留した穀粒を後方に向けて送り出す底スクリュー41を備えて構成されている。
前記タンク本体40は、前後方向視で、その下部が下窄まり状に形成され、この下窄まり部40aの下端内部には、前記底スクリュー41が前後水平に支架されている。グレンタンク4における下窄まり部40aは、貯留した穀粒を残すことなく底スクリュー41に導くよう、穀粒の流下安息角以上の傾斜角度が与えられるとともに、下窄まり部40aの下端部がタンク横幅中心よりも大きく横外方に偏って配置されている。
また、図2及び図5,6に示すように、前記グレンタンク4の下部後端には、前記底スクリュー41における支軸41aの後端部を支承する搬出ケース42が連結されるとともに、機体フレーム10から機体横外方に突設された支持部10aに、前記搬出ケース42の下端ボス部42aが回動可能に嵌合支持されて、機体フレーム10に対してグレンタンク4が上下向き軸心y回りで旋回可能に支持されている。
【0044】
前記タンク本体40の天井部43は、自走機体1上に位置しているタンク本体40の前部側の天井部43aよりも後部側の天井部43bが低くなるように形成されている。そして、低く形成された後部側の天井部43bに設けたメンテナンス用開口43cを蓋体44で閉塞するように構成してあるとともに、その蓋体44に、穀粒搬出装置5の穀粒搬出筒70を案内するためのガイド体45を設け、このガイド体45を手で持つことによりメンテナンス用開口43cの開閉操作が行い易くなるように構成してある。
【0045】
前記ガイド体45は、前記穀粒搬出装置5の穀粒搬出筒70が自走機体1の上方を移動するに伴って、水平よりも下向き姿勢にある穀粒搬出筒70を上方側へ持ち上げ案内するように機能させるためのものであり、後述する上下向き軸心y回りで旋回する穀粒搬出筒70が、自走機体1上を移動する際に、後述する横向き軸心x回りで上下揺動して、比較的機体上の高さが高い搭乗運転部2のキャノピ21やプレクリーナ18を交わして、機体上の格納用支持台30に載置させるようにするためのものである。
このガイド体45による案内作用は、穀粒搬出筒70の前記上下向き軸心y回りの回動範囲で、前記格納用支持台30が存在する位置から、搭乗運転部2が存在する側の機体横端部との間で機能するものであり、これ以外の範囲では、ガイド体45による案内作用は生じない。
【0046】
〔穀粒搬出装置関係〕
前記グレンタンク4の後方には、底スクリュー41によって送出された穀粒を揚送した後に、横搬送して機外に搬出するスクリュー式の穀粒搬出装置5が装備されている。この穀粒搬出装置5は、グレンタンク4の後面下端に連通接続されたスクリュー式の縦搬送機構6と、この縦搬送機構6の上端に連通接続されたスクリュー式の横搬送機構7とから構成されており、穀粒搬出装置5全体が、縦搬送機構6のスクリュー軸心と同芯で、かつ、前記搬出ケース42の下端ボス部42aの軸心である前記上下向き軸心yを中心にして、前記搬出ケース42に対して旋回可能となっている。
【0047】
前記縦搬送機構6は、前記上下向き軸心yと同心位置に設けられる縦スクリュー61と、その縦スクリュー61を内装する縦送り筒60との組み合わせで構成してある。
前記縦送り筒60は、その下端側が前記搬出ケース42の上端側に接続されているとともに、その接続箇所の少し上部の外周にギヤ部60aを備え、そのギヤ部60aに咬合するピニオン62を備えた旋回用電動モータ63によって前記上下向き軸心y回りで旋回駆動されるように構成してある。前記旋回用電動モータ63は、前記搬出ケース42側に固定されている。
【0048】
前記縦スクリュー61の下端側は、前記搬出ケース42の下端側の軸受け部42bで回動自在に支持されており、その軸受け部42bよりも下方側に突出する部位の軸部に入力用ベベルギヤ61aを装着している。
そして、前記入力用ベベルギヤ61aに対しては、その入力用ベベルギヤ61aを介して前記底スクリュー41の動力を縦スクリュー61に伝達するための連動機構50が連係されている。この連動機構50は、前記入力用ベベルギヤ61aと咬合するベベルギヤ部51aを一端側に備えるとともに、他端側に入力プーリ51bが装着されている伝動軸51と、その伝動軸51の前記入力プーリ51bと前記底スクリュー41の軸端に設けられた出力プーリー41bとの間に掛張した伝動ベルト52とで構成してあり、この連動機構50は、前記底スクリュー41及び縦スクリュー61が設けられた穀粒搬送用空間sの外側に配設されている。
つまり、連動機構50を構成する前記入力プーリ51bと出力プーリー41b、及び伝動ベルト52は搬出ケース42の外側に露出した状態に配設してあり、前記伝動軸51は搬出ケース42の内部ではあるが、前記底スクリュー41及び縦スクリュー61が設けられた穀粒搬送用空間sに対しては外側に配設されている。したがって、穀粒を通過させる穀粒搬送用空間sが連動機構50の存在によって狭められることはない。
【0049】
図4乃至図6に示すように、前記伝動ベルト52は、揺動アーム53の先端側に装着されたテンションプーリ54と、前記揺動アーム53を前記テンションプーリ54がベルト押圧方向に向かうように引っ張り付勢する付勢バネ55とによって、常時張り側に付勢してある。
【0050】
前記縦送り筒60の上端側には、図4及び図7乃至図9に示すように、上端ケース67が設けられ、この上端ケース67内に、縦スクリュー61の上端側にスプライン嵌合する上端スプロケット61bのボス部がベアリング60bで軸支されているとともに、その上端スプロケット61bと平行な軸心を有した縦向き中間軸64と、その縦向き中間軸64に対してベベルギヤ機構によって連動連結される横向き中間軸65とが装備されている。
前記縦スクリュー61の上端側にスプライン嵌合する上端スプロット61bと、前記縦向き中間軸64の上端側に設けられたスプロケット64aとは伝動チェーン66で連結してあり、前記横向き中間軸65の前記ベベルギヤ機構が設けられた側とは反対側の端部は、縦送り筒60から横外方へ突出した状態で設けられ、その突出端に出力用スプロケット65aが装着されており、この出力用スプロケット65aを介して、縦搬送機構6の動力が横搬送機構7に伝達されるように構成されている。
【0051】
前記横搬送機構7は、縦送り筒60内を揚送された穀粒を受け取って外部へ搬出するための穀粒搬出筒70と、その穀粒搬出筒70内に設けられた搬送スクリュー71との組み合わせで構成してある。
前記穀粒搬出筒70は、前記縦送り筒60の上端側に取り付けられる中継ケース部72と、その中継ケース部72に対して穀粒搬出方向の下手側に接続された横送り筒部73とを備えて構成してあり、その穀粒搬出筒70内部に搬送スクリュー71を装備してある。
【0052】
中継ケース部72では、前記縦送り筒60から横外方へ突出した状態で設けられた出力用スプロケット65aから伝達される動力を受ける中継用スプロケット74aを備える中継軸74と、これらの出力用スプロケット65aと中継用スプロケット74aとの間に掛張される伝動チェーン75と、前記中継軸74の前記中継用スプロケット74aが設けられた側とは反対側の端部に設けられた中継用ベベルギヤ74bと、その中継用ベベルギヤ74bと咬合する入力用ベベルギヤ71aを軸端に備えた搬送スクリュー71の始端側を収容するように構成されている。
【0053】
そして、前記縦送り筒60の上端部に上端ケース67を備え、この上端ケース67に、前記横向き中間軸65を回動自在に支承するボールベアリング67aを備えた横支持筒部67aを備えるとともに、前記縦送り筒60を挟んで前記横支持筒部67aが設けられた側とは反対側箇所に、縦送り筒60の上端側から穀粒を送り出すための連通口を備えた連通用筒部67bを備えている。
前記中継ケース部72では、前記横支持筒部67aに対して外嵌する支持部76及び前記連通用筒部67bに対して外嵌する導入口筒部77を形成してある。この導入口筒部77と前記支持筒部76とは、縦スクリュー61の上下向き軸心yと直交する前記横向き中間軸65の軸心と同心である横向き軸心xを筒中心線とするものであり、前記横向き軸心xが穀粒搬出筒70の上下揺動軸心となるように構成されている。
【0054】
図7及び図9に示すように、前記中継ケース部72では、前記支持筒部76と導入口筒部77とのそれぞれの外周側の一部から穀粒搬出筒70の延出方向に沿ってアーム部材78,78が突設してあり、そのアーム部材78,78の突出端同士を接続する状態に棒材79を設けてある。
そして、前記縦送り筒60の上端部で前記アーム部材78,78の存在箇所よりも下方位置に、シリンダ取付用ブラケット68を突設してあり、そのシリンダ取付用ブラケット68の先端側に設けた支持ピン69と前記アーム部材78,78の先端側の棒材79とにわたって前記横搬送機構7の上下位置調節用の油圧シリンダ56が装着されている。
【0055】
前記穀粒搬出筒70の横送り筒部73は、中継ケース部72の筒端部に設けられたフランジ部72aに対して接続されるフランジ部73aを一端側に備え、他端側に穀粒を吐出するための吐出口部73bを備え、かつ、その横送り筒部73の内部には、前記中継ケース部72の内部から一連に設けられている搬送スクリュー71が装備されている。
【0056】
〔動力伝達系の構成〕
図10は、エンジン12の動力伝達系統を示す線図であり、横向きに搭載配備された前記エンジン12には、機体内方に向けて突出する主出力軸12Aと、機体外方に向けて突出する補機駆動用の副出力軸12Bとが備えられており、主出力軸12Aから取り出された動力でクローラ走行装置11、刈取前処理装置14、および、脱穀装置13が駆動される。
【0057】
外向きの副出力軸12Bには、2本掛けの出力プーリ80が備えられており、この出力プーリ80に巻回された伝動ベルト81で、エンジン冷却用のウオーターポンプ82、ラジエータ冷却ファン83、発電機84が駆動されるとともに、前記出力プーリ80に巻回された別の伝動ベルト85が入力プーリ86に巻回されて底スクリュー41および穀粒搬出装置5への動力伝達系が構成されている。
【0058】
底スクリュー41へのベルト式の動力伝達系には穀粒搬出用クラッチ87が備えられている。この穀粒搬出用クラッチ87は、図1及び図13に示すように、テンションローラ88を前記伝動ベルト85に押圧作用させるテンションクラッチに構成されており、後述するよう、前記搭乗運転部2からの穀粒搬出用クラッチ87を、クラッチ操作具の一例である穀粒搬出用レバー31の操作で入り切り操作が行われる。
【0059】
上記のようしてエンジン動力を受ける前記入力プーリ86の中心には中間伝動軸89が軸心方向にスライド可能にスプライン内嵌されている。中間伝動軸89は、前記入力ケース46に支架された前記入力軸47と同芯に突合せ配置されるとともに、外嵌装着したバネ89aによって中間伝動軸89が入力軸47に向けてスライド付勢されている。中間伝動軸89と入力軸47とは、その突合せ対向部位において噛み合い式の断続クラッチ48を介して連動連結されている。
【0060】
前記穀粒搬出装置5では、底スクリュー41の後端部で、底スクリュー41のグレンタンク4の外側に備えた出力プーリ41bから、伝動軸51の後端部に備えた入力プーリ51bに対して伝動ベルト52を介して駆動力を伝達するように構成してあり、その伝動軸51から縦スクリュー61に対してベベルギヤ機構による動力伝達が行われるように構成してある。
【0061】
前記縦スクリュー61と穀粒搬出筒70内の搬送スクリュー71とは、次のようにして連動連結されている。
すなわち、縦スクリュー61の上端部に設けた上端スプロケット61bと、縦向き中間軸64の上部に設けたスプロケット64aとを伝動チェーン66で連結してあり、前記縦向き中間軸64の下端のベベルギヤ64bと横向き中間軸65の一端に備えたベベルギヤ65bとを咬合させ、その横向き中間軸65の他端に形成したスプロケット65aと、中継軸74の一端に備えた中継用スプロケット74aとにわたって伝動チェーン75を掛張し、前記中継軸74の他端に設けた中継用ベベルギヤ74bと、前記搬送スクリュー71の穀粒搬出筒70の外側に設けた入力用ベベルギヤ71aとを咬合させて、エンジン動力が穀粒搬出筒70内の搬送スクリュー71に伝えられるように構成してある。
【0062】
〔穀粒搬出装置の作動に関する構成〕
穀粒搬出装置5の前記上下向き軸心y回りでの旋回動作、及び横向き軸心x回りでの上下揺動は次のようにして行われる。
【0063】
前記吸気ダクト26の前下がり姿勢の上面側に設けたスイッチ操作具32は、図13に示すように、上方側に設けた第1操作スイッチ32aと、下方側に設けた第2操作スイッチ32bとの組み合わせで構成され、第1操作スイッチ32aが、穀粒搬出筒70の水平方向における旋回方向の左右何れかを選択操作するシーソースイッチであり、第2操作スイッチ32bが、穀粒搬出筒70の揺動方向を上下何れかに選択するシーソースイッチである。
【0064】
前記第1操作スイッチ32aは、中立復帰された正逆押し込み操作型に構成されて横向き姿勢で配備されており、左右いずれかの押し込み部を押し込み操作している間だけ押し込んだ方向に横搬送機構7を旋回作動させ、押し込みを解除すると旋回が停止されるようになっている。前記第2操作スイッチ32bは、中立復帰された正逆押し込み操作型に構成されて縦向き姿勢で配備されており、上下いずれかの押し込み部を押し込み操作している間だけ押し込んだ方向に横搬送機構7を上下揺動作動させ、押し込みを解除すると上下動が停止されるようになっている。
【0065】
前記第1操作スイッチ32a及び第2操作スイッチ32bの配線は、吸気ダクト26の内部を通して図示されていない制御装置に接続され、前記第1操作スイッチ32aの操作に基づいて制御装置が旋回用電動モータ63に作動指令を出力し、前記第2操作スイッチ32bの操作に基づいて前記油圧シリンダ56を伸縮操作する指令を制御用の電磁弁(図外)に対して出力するように構成されている。
これらの第1操作スイッチ32a及び第2操作スイッチ32bは、運転座席20よりも機体外側に位置するように配置されているので、運転座席20に着座して操作できるとともに、自走機体1から降りて地上からでも操作可能となっている。
【0066】
前記第1操作スイッチ32aによる穀粒搬出筒の前記横向き軸心x回りでの上下揺動範囲は、油圧シリンダ56の伸縮長さによって決定され、かつ、その上下揺動範囲の下限位置及び上限位置は、縦向き筒60に設けたシリンダ取付用ブラケット68との連結点の位置を変更することによって変更可能に構成されている。
このブラケット68には、上下2箇所の連結孔68a,68bが形成してあり、上側の連結孔68aに油圧シリンダ56の下端側を連結した状態では、図11に実線で示すように、前記上下揺動範囲の下限位置が、ほぼ水平位置であり、穀粒搬出筒70は水平位置とそれよりも上方の範囲で揺動操作可能である。
前記油圧シリンダ56の下端が下側の連結孔68bに連結されると、図12に実線で示すように、前記上下揺動範囲の下限位置が、横向き軸心xよりも下向きに設定され、穀粒搬出筒70は横向き軸心xから下向きに延出された姿勢と、それよりも上方の範囲で揺動操作可能であり、この状態では、地面上において袋詰め作業を行う場合などに便利に用いることができる。
【0067】
前記第2操作スイッチ32bによる穀粒搬出筒70の前記上下向き軸心y回りでの旋回範囲は、旋回用電動モータ63で駆動されるピニオン62の回転角を検出するポテンショメータなどの検出器(図外)を備え、縦送り筒60が所定角度旋回したら、旋回用電動モータ63による旋回駆動を断つように構成してあり、その縦送り筒60の旋回範囲は、前記穀粒搬出筒70が格納用支持台30に支持された格納位置から、搭乗運転部2が存在する側の機体横側外方で、前記格納位置から上下向き軸心y回りでの約240度に設定されている。
【0068】
前記ガイド体45が穀粒搬出筒70に対して持ち上げ案内作用を行うのは、穀粒搬出筒70が下向き姿勢のままで格納位置側操作された場合に、その穀粒搬出筒70の前記上下向き軸心y近くの箇所に接触して、穀粒搬出筒70持ち上げることにより、キャノピ21などとの接触を回避するためのものであり、前記第1操作スイッチ32a及び第2操作スイッチ32bを操作して、穀粒搬出筒70がキャノピ21などと接触する状態を回避するように移動させれば、ガイド体45による案内作用は必要ないので行なわれない。
【0069】
前記吸気ダクト26の機体内方側の側面と運転座席20との間に設けられた穀粒搬出クラッチレバー31は、前記底スクリュー41へのベルト式の動力伝達系に設けられた穀粒搬出用クラッチ87と操作ワイヤ81を介して連動連結されているので、穀粒搬出クラッチレバー31を前方下方側へ押し下げ操作して、テンションローラ78を伝動ベルト85から離間させると底スクリュー41への動力伝達が断たれて、穀粒の排出が停止される。逆に、前記穀粒搬出クラッチレバー31を後方上方側へ引き上げ操作して、テンションローラ78を伝動ベルト85に押しつけ付勢すると底スクリュー41が駆動されて、穀粒の排出が開始される。
この穀粒搬出クラッチレバー31の操作も、運転座席20に着座して操作できるとともに、地上からでも操作可能となっている。
【0070】
〔別実施形態の1〕
上述の最良の実施形態では、穀粒搬出筒70の上下揺動範囲の全体を位置変更するように構成したものを示したが、穀粒搬出筒70の上下揺動範囲の変更は、これに限らず、上下揺動範囲の下限側のみを位置変更するようにしたもの、または、上端側のみを位置変更するようにしたもの、あるいは、上下揺動範囲の幅を変更して上限及び下限の両方を位置変更するようにしてもよい。
【0071】
〔別実施形態の2〕
また最良の実施形態では、搭乗運転部2にキャノピ21を備えた構造のコンバインを示したが、キャノピ21を備えていない構造のものでもよい。この場合、搭乗運転部2及びその近辺のプレフィルタ18などを迂回するようにガイド体45を構成しておくのが望ましい。
【0072】
〔別実施形態の3〕
コンバインの形態としては普通型コンバインに限らす、自脱型コンバインに適用しても良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】普通型コンバイン全体の右側面図
【図2】普通型コンバイン全体の平面図
【図3】穀粒回収装置を示す側面図
【図4】穀粒回収装置を示す背面図
【図5】底スクリューと縦スクリューとの連動機構部分を示す前後方向断面図
【図6】底スクリューと縦スクリューとの連動機構部分を示す左右方向断面図
【図7】縦スクリューと搬送スクリューとの連動機構部分を示す水平方向断面図
【図8】図7におけるVIII-VIII線断面図
【図9】縦送り筒と穀粒搬出筒との接続部を示す側面図
【図10】伝動系統を示す線図
【図11】穀粒搬出筒の上下揺動範囲を示す背面図
【図12】穀粒搬出筒の上下揺動範囲を示す背面図
【図13】穀粒回収装置の操作部を示す斜視図
【符号の説明】
【0074】
1 自走機体
2 搭乗運転部
3 穀粒回収装置
4 グレンタンク
5 穀粒搬出装置
6 縦搬送機構
7 横搬送機構
20 運転座席
21 キャノピ
26 吸気ダクト
31 穀粒搬出クラッチレバー
32 スイッチ操作具
32a 第1操作スイッチ
32b 第2操作スイッチ
41 底スクリュー
43 天井部
44 蓋体
45 ガイド体
50 連動機構
60 縦送り筒
61 縦スクリュー
70 穀粒搬出筒
71 搬送スクリュー
x 横向き軸心
y 上下向き軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走機体の後方側にグレンタンクを備えるとともに、そのグレンタンクの下端側から取り出された穀粒を上方側へ揚送する縦送り筒を設け、この縦送り筒の上端側に、その縦送り筒の上下軸心周りで水平方向に回動自在に、かつ、縦送り筒の上端近くの水平軸心周りで上下方向に揺動自在に構成された穀粒搬出筒を設けたコンバインであって、
前記穀粒搬出筒の前記水平軸心周りでの上下方向における揺動範囲を、穀粒搬出筒の筒軸心が水平よりも下向きである姿勢から上向きである姿勢にわたって姿勢変更可能で、かつ、前記穀粒搬出筒の前記上下軸心周りでの水平方向における回動範囲を、自走機体上の領域を含む回動角度範囲に設定してあり、
さらに、前記穀粒搬出筒の前記上下軸心周りでの水平方向における回動範囲のうち、前記自走機体上の領域に相当する回動角度範囲には、前記穀粒搬出筒が自走機体の上方を移動するに伴って前記下向き姿勢にある穀粒搬出筒を上方側へ持ち上げ案内するガイド体を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
自走機体の前部に搭乗運転部を配設してあり、この搭乗運転部が穀粒搬出筒の水平方向における回動範囲内に含まれている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
穀粒搬出筒の上下方向での揺動範囲は、その下限側の高さを変更可能に構成されている請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
縦送り筒の上下軸心周りでの穀粒搬出筒の水平方向における回動範囲は、前記搭乗運転部の存在領域を含む自走機体上の位置と、その搭乗運転部が位置する側の自走機体の横外方領域とを含む2/3周程度である請求項2又は3記載のコンバイン。
【請求項5】
ガイド体は、穀粒搬出筒の回動中心と吐出口部との間で、その穀粒搬出筒の長手方向における回動中心側寄りの位置を案内するように、縦送り筒近くの自走機体上に設けてある請求項1〜4の何れか1項記載のコンバイン。
【請求項6】
ガイド体は、グレンタンクの前部側の天井部よりも低く形成された後部側の天井部に設けてある請求項1〜5の何れか1項記載のコンバイン。
【請求項7】
ガイド体は、グレンタンクの上部に形成されたメンテナンス用開口を閉塞する蓋体の上面側に設けてある請求項1〜6の何れか1項記載のコンバイン。
【請求項8】
ガイド体は、穀粒搬出筒の水平方向での回動範囲内における自走機体上の領域に設けられたプレクリーナよりも上方側に穀粒搬出筒を案内するようにガイド範囲を設定してある請求項1〜7の何れか1項記載のコンバイン。
【請求項9】
搭乗運転部の運転座席を、エンジンを覆う原動部カバーの上側に配置し、前記原動部カバー内に供給する外気を導入するための吸気ダクトを前記運転座席よりも機体外端側箇所に設け、その吸気ダクトの上面側に、穀粒搬出筒の水平方向回動ならびに上下方向揺動を行うためのスイッチ操作具を設けてある請求項2〜8の何れか1項記載のコンバイン。
【請求項10】
スイッチ操作具は、穀粒搬出筒の水平方向回動操作を2位置の択一的な揺動切換で行うシーソースイッチと、穀粒搬出筒の上下方向揺動操作を2位置の択一的な揺動切換で行うシーソースイッチとの組み合わせで構成してある請求項9記載のコンバイン。
【請求項11】
グレンタンク内に貯留されている穀粒を搬出するための穀粒搬出用クラッチの操作具を、運転座席よりも機体外側寄り箇所に設けてある請求項2〜10の何れか1項記載のコンバイン。
【請求項12】
グレンタンク内に設けた底スクリューと、縦送り筒内に設けた縦スクリューと、穀粒搬出筒内の搬送スクリューとを、それぞれのスクリューを内装するスクリュー筒の外側で連動する連動機構を設けてある請求項1〜11の何れか1項記載のコンバイン。
【請求項13】
底スクリューと縦スクリューとを連動する連動機構はベルト伝動機構により構成されている請求項12記載のコンバイン。
【請求項14】
グレンタンクを上下向き軸心周りで機体外側に回動操作可能に構成してある請求項1〜13の何れか1項記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−51287(P2010−51287A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222473(P2008−222473)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】