説明

コンバイン

【課題】穀稈の状況に応じた適切な進路を把握でき、刈取作業が行いやすくなるコンバインを提供する。
【解決手段】走行部2と、前記走行部2の前方に配置される刈取部3と、前記刈取部3の後方で前記走行部2の前部上に配置される運転部8とを備えるコンバイン1であって、前記運転部の前方を撮影する第一撮影手段12と、前記第一撮影手段12により撮影された映像を表示する表示装置85と、前記運転部8の操向操作手段(ハンドル82)の操作量に基づいて予測進路軌跡Bを作成する制御装置97とを備え、前記制御装置97は、前記予測進路軌跡Bを前記第一撮影手段12により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡Bが重畳された映像を前記表示装置85に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインには作業者が穀稈の刈取作業状況を把握し、刈取作業を行いやすくするように様々な工夫がなされてきた。例えば、特許文献1に示すように、運転キャビン内の天井壁に配設された表示装置と、機体の後方を撮影する後方撮像手段と、走行機体の右前を撮影する右前方撮像手段とを備えている。そして、これらの撮像手段(撮影手段)からの撮影情報(撮影映像)を択一的に表示装置に切換表示することで、機体前方の条列の視認性をよくした技術は公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−89号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刈取作業を行う際には、通常、作業者は右端の分草体が条間に位置するか否かを判断するため、刈取部の前方に視線を向ける。しかしながら、特許文献1においては、撮像手段の撮影情報を表示するのみであるため、圃場の穀稈の状態によっては、穀稈の状況に応じた適切な進路を把握できずに、刈取作業が行いにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、穀稈の状況に応じた適切な進路を把握でき、刈取作業が行いやすくなるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、走行部と、前記走行部の前方に配置される刈取部と、前記刈取部の後方で前記走行部の前部上に配置される運転部とを備えるコンバインであって、前記運転部の前方を撮影する第一撮影手段と、前記第一撮影手段により撮影された映像を表示する表示装置と、前記運転部の操向操作手段の操作量に基づいて予測進路軌跡を作成する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記予測進路軌跡を前記第一撮影手段により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡が重畳された映像を前記表示装置に表示させるものである。
【0008】
請求項2においては、前記制御装置は、警報装置と接続され、予測進路軌跡の未刈り穀稈側に、踏み倒し予測領域を作成して、前記予測進路軌跡が前記踏み倒し予測領域と交わるとき、前記警報装置により警報を発生させるものである。
【0009】
請求項3においては、機体の後方を撮影する第二撮影手段と、走行状態を検出する走行状態検出手段とを備え、前記制御装置は、前記走行状態検出手段により走行状態が後進状態であることが検出されたとき、前記運転部の操向操作手段の操作量に基づいて予測進路軌跡を作成して、前記第二撮影手段により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡が重畳された映像を前記表示装置に表示させるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、コンバインが刈取作業時に走行する予測進路軌跡を、前記第一撮影手段により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡が重畳された映像を表示装置に表示させるため、予測進路軌跡と前方の状況とを同時に把握して、前方の穀稈の状況に応じて適切な進路を容易に決め、刈取作業を行うことが可能となる。したがって、進行方向を変更した場合の刈取範囲も容易に認識でき、未熟な作業者であっても、操向操作を適切かつ容易に行うことができ、刈取作業が行いやすくなる。しかも、最大幅で刈り取るように進路を決めたり、刈り残しがなくなるように進路を決めたりすることができ。刈取作業を効率よくを行うことが可能となる。
【0012】
請求項2においては、例えば、曲がった畦際の刈取や圃場端での回り刈り等の作業を行うときに、どの程度の操向操作量で踏み倒し予測領域に進行するかが容易に判断することが可能となり、たとえ踏み倒し予測領域に進行するような操向操作を行っても、警報が発せられることとなる。したがって、適切な操向操作で容易に進路変更ができるようになり、刈取作業が行いやすくなるとともに、穀稈の踏み倒しを未然に防止でき、刈り残しも減少させることができる。
【0013】
請求項3においては、圃場の隅部等で切り返しを行うために後進するとき、後方の映像と予測進路軌跡とが表示されるため、後進方向に未刈り穀稈や畦等がある場合でも、どれくらい後進すると、これらに接触したり、これらを踏みつけたりするかが容易に予測でき、後進走行を安心して行うことが可能となる。したがって、未熟な作業者であっても、操向操作を適切かつ容易に行うことができ、刈取作業が行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体構成を示す左側面図。
【図2】同じく右側面図。
【図3】同じく平面図。
【図4】同じく座席部周辺の平面図。
【図5】別実施形態に係る座席部周辺の平面図。
【図6】制御ブロック図。
【図7】表示装置の表示制御のフローチャート。
【図8】図7における「択一モード」のフローチャート。
【図9】図7における「複数選択モード」のフローチャート。
【図10】図7における「自動モード」のフローチャート。
【図11】表示装置入切手段または予測進路表示入切手段を示す図、(a)は回動タイプ、(b)は押下タイプ。
【図12】表示装置切換手段を示す図。
【図13】コンバイン直進時における主第一撮影手段の映像とその予測進路軌跡および踏み倒し予測領域を表示装置に表示した図。
【図14】コンバイン旋回時における主第一撮影手段の映像とその予測進路軌跡および踏み倒し予測領域を表示装置に表示した図。
【図15】予測進路軌跡が重畳された主第一撮影手段の映像とその第二撮影手段の映像を分割して表示装置に表示した図。
【図16】回り刈り時におけるコンバインの進路方向を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体的な構成について説明する。
【0016】
コンバイン1は穀稈の収穫作業、より詳細には、圃場を走行しつつ圃場から穀稈を刈取り、刈り取った穀稈を脱穀し、選別して穀粒を得ることができるように構成されている。図1に示すように、コンバイン1には、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6、排藁処理部7、エンジン部(図示省略)、ミンッション部(図示省略)、運転部8等が備えられる。
【0017】
走行部2は、機体フレーム9の下部に設けられている。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21等を有する。走行部2は、クローラ式走行装置21が駆動することにより機体を走行させるように構成されている。
【0018】
刈取部3は、機体フレーム9の前端部に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草装置31、引起装置32、切断装置33、搬送装置35、これらの各装置を支持する刈取フレーム34等を有する。
【0019】
刈取部3は、分草装置31により分草した後に、分草装置31後方の引起装置32により未刈取りの穀稈を引き起して、引起装置32の下部後方の切断装置33により穀稈の株元を切断したうえ、搬送装置35により切断後の穀稈を脱穀部4のフィードチェン41へ搬送するように構成されている。
【0020】
刈取部3の各装置のうち分草装置31では、分草体31aが刈取フレーム34から前方に向けて延設された分草フレーム31bの前端に前低後高となるように取り付けられている。分草体31aは、分草装置31の前部を成す先細形状の部材で、各条の引起装置32や搬送装置35の掻込機構に案内するためのものである。分草体31aは、本実施形態においては六本(六条分)設けられ、左右方向に所定間隔ごとに配置される。ここで、最も右側に配置される分草体31aは、機体フレーム9の右端前方に配置される。
【0021】
また、刈取部3の各装置のうち引起装置32では、板状の防塵カバー43が当該引起装置32の上部に取り付けられている。防塵カバー43は、引起装置32の上部から後方へ向けて延出され、搬送装置35の一部を上方から覆うように配置されている。この防塵カバー43によって、塵埃等が搬送装置35で脱穀部4へ向けて搬送される穀稈等から舞い上がることが防止されている。
【0022】
図1に示すように、脱穀部4は、機体フレーム9の左側前部であって、刈取部3の後方に設けられている。脱穀部4は、フィードチェン41と、挟扼杆42と、図示せぬ扱胴等から構成されている。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いでフィードチェン41により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を扱胴等により脱穀し、その脱穀物を選別部5へ落下させるように構成されている。
【0023】
選別部5は、機体フレーム9の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、脱穀部4から落下した脱穀物を揺動選別及び風選別により、一番物(穀粒)、二番物(未脱粒等)、藁くず、塵埃等に選別する。そして、選別部5は、選別した一番物を穀粒貯溜部6へ搬送し、二番物を脱穀部4または揺動選別装置へ搬送し、藁くず及び塵埃等を外部へ排出するように構成されている。
【0024】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム9の右側後部であって、脱穀部4及び選別部5の右側方に設けられている。穀粒貯溜部6は、穀粒タンク61と、穀粒排出装置62等を有する。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送される穀粒を穀粒タンク61に一時的に貯溜するとともに、穀粒タンク61に貯溜される穀粒を穀粒排出装置62により外部へ排出することができるように構成されている。
【0025】
排藁処理部7は、機体フレーム9の後部上であって、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、排藁搬送装置71、排藁切断装置72、結束装置73、立体放出装置74等を有する。本実施形態においては、結束装置73と立体放出装置74を排藁切断装置72の後部に取り付けているが限定するものでなく、コンバイン1の後部に取り付けずに排藁処理部7を排藁搬送装置71と排藁切断装置72のみで構成しても良い。
排藁処理部7は、脱穀部4から搬送されてくる脱穀済みの排藁を前記排藁搬送装置71で受け継いで外部へ排出する、前記排藁切断装置72に搬送して切断した後に外部へ排出する、または結束装置73で結束した後に立体放出装置74で排出することができるように構成されている。
【0026】
排藁搬送装置71は、排藁チェン71a、挟扼杆から構成される。フィードチェン41より搬送された排藁を上方の挟扼杆と下方の排藁チェン71aにより挟み込むことで受継ぎ、後方へと搬送する。
【0027】
排藁切断装置72は、切換カバー72a、排藁カッター72b等から構成される。
切換カバー72aは、排藁を搬送する排藁チェン71aの下方に配置される。切換カバー72aは、排藁切断装置72の上部に配置され、切換カバー72aを回動して切り替えることにより、排藁を排藁カッター72bに搬送するか結束装置73に搬送するかを選択することが可能である。
【0028】
排藁カッター72bは、排藁を所定の長さに切断するものであり、切換カバー72aの下方に配置される。排藁カッター72bは、複数の円盤状の切断刃であり、いずれも機体左右方向に横設された回転軸の中途部に所定の間隔をおいて設けられる。
よって、切換カバー72aが前方に回動された状態の場合、排藁搬送装置71より搬送された排藁は、排藁カッター72bにより切断され機体外へと排出される。一方、切換カバー72aが下方に回動された状態の場合、排藁搬送装置71より搬送された排藁は、切換カバー72aの上部を経て、後述する結束装置73へと搬送される。
【0029】
結束装置73は、排藁を所定量ずつ紐で結束する装置である。
結束装置73は、パッカー73a、株元揃え板73b、結束部73c、ドア73d、放出アーム73e等より構成される。
パッカー73aは、切換カバー72aの上部を経て搬送されてきた排藁を一時的に収容する収容空間に掻き込む。該収容空間に収容された排藁は、その株元端側を機体左に配置された株元揃え板73bによって揃えられる。当該収容空間に収容された排藁が所定量を超えた時点で排藁の束の周囲に紐を巻き付けて結束する結束部73c、当該収容空間に収容された排藁が所定量を超えない間は収容空間の出口を閉塞するとともに結束部73cにより排藁が結束された後は収容空間の出口を開放するドア73d、結束部73cにより結束された排藁の束を収容空間の出口から掻き出して放出する(後述する立体放出装置74に受け渡す)放出アーム73e等を備える。
【0030】
立体放出装置74は、結束装置73の後方に設けられ、結束装置73が穂先部を結束した排藁の株元部を広げて、該排藁を圃場に自立姿勢で放出するものである。
立体放出装置74は、搬送体74aと、ガイド杆74dによって構成される。
搬送体74aは、支持プレート74b、搬送チェン74c、駆動スプロケット(図示省略)、従動スプロケット(図示省略)等より構成される。
【0031】
支持プレート74bは、排藁放出の主たる板状の構造体であり、長手方向を前後とするように後方に配置される。駆動スプロケットと従動スプロケットは、支持プレート74bの前後に所定間隔をおいて回転自在に支持されている。搬送チェン74cは、該駆動スプロケットと従動スプロケットとの間に巻回され、回転可能となっている。
【0032】
ガイド杆74dは、搬送チェン74cの搬送面(左側面)に対向するように配設されている。更に、搬送体74aとガイド杆74dに略平行に支持フレーム74eがガイド杆74dの外側(本実施形態では機体進行方向左側)に配設されている。また、ガイド杆74dの搬送方向の始端(排藁束搬送入口)側は搬送方向後方に向かうに従い徐々に狭くなるように形成され、結束された排藁をガイド杆74dと搬送体74aとの間に容易に受け入れ可能となるべく形成されている。そして、ガイド杆74dの搬送後流側には、搬送体74aと対向する面に平面視三角形状の板体よりなる突起部が所定間隔を空けて配置されている。
【0033】
従って、排藁搬送装置71によって搬送された排藁は、結束装置73にて結束される。結束された排藁は、立体放出装置74に受け継がれ、圃場に所定間隔をおいて放出される。放出された排藁は、結束位置を排藁の上部側として直立姿勢となる。
【0034】
運転部8は、機体フレーム9の右側前部であって、刈取部3の搬送装置35の右側方に設けられている。運転部8は、図1から図5に示すように、座席81、操向操作手段であるハンドル82、キャビン83、主変速レバー84等の操作レバー、操作パネル87、表示装置85等を有する。この運転部8では、箱状のキャビン83によりその他の部材が覆われている。
【0035】
なお、操向操作手段は、本実施形態においてはハンドル82としているが、回動および傾倒により操向操作を行うモノレバー等としてもよく、特に限定するものではない。
【0036】
キャビン83の内部には、作業者のための運転空間が形成されている。この運転空間では、座席81の前方にハンドル82、ハンドル82のステアリング軸を支持するハンドルコラム82aの前方にフロントコラム86、フロントコラム86の右上に表示装置85、座席81の左方に操作パネル87や主変速レバー84等を配置したサイドコラム88が配置されている。また、キャビン83の右壁にはドアが備えられている。
【0037】
このようにして、コンバイン1は、運転部8での操作具類の操作によって、エンジン部のエンジンの動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0038】
以下に、運転部8に配置される表示装置85について説明する。
【0039】
表示装置85は、後述する補助第一撮影手段11、主第一撮影手段12、第二撮影手段13、及び第三撮影手段14により撮影された映像のうち、少なくとも一つの映像を適宜表示するためのものである。表示装置85は、ハンドル82の近傍に配置される。詳細には、図3、図4に示すように、座席81に着座する作業者の頭部Hと、刈取部3で最も右側に配置される分草体31aとを結ぶ直線(図3における二点鎖線)の近傍に配置される。
【0040】
具体的には、本実施形態においては、支持部材85aがフロントコラム86の右上部付近から上方に延出するように設けられ、この支持部材85aの延出端部に表示装置85が取り付けられている。そしてこの状態で、表示装置85が、ハンドル82の右前方に配置されるとともに、座席81に着座する作業者から視て最も右側に配置される分草体31aよりも若干右側に配置されている。
【0041】
なお、支持部材85aをキャビン83の右前支持柱に設け、この支持部材85aに表示装置85を取り付けて適切な位置に配置するようにすることも可能である。
【0042】
このような構成により、座席81に着座する作業者が刈取作業中に最も右側に配置される分草体31aを見ている状態から、視線を少し変えるだけで、即ち頭部Hを大きく動かさずに目を動かす程度で、表示装置85を見てそれに表示される映像から詳細な刈取作業状況を確認できる。よって、視線の変更を頭部Hを大きく動かして行う場合には、視線移動距離が長くなるため、進行方向がズレ易くなるが、本実施形態のように視線の変更を目を動かして行う場合には、視線移動距離が短くて済むため、条合わせを行いながら作業するとき、進行方向がズレることなく正確に刈取作業を行うことができる。
【0043】
また、後述する各種設定手段により、表示装置85は、図13から図15に示すように、コンバイン1の後方の圃場状態を表示させたり、撮影された映像に重畳するように予測進路軌跡Bを表示させたり、複数の映像を同時に表示させたりすることができるように構成されている。加えて、表示装置85は、未刈穀稈側に操向操作することによって機体が進行して未刈穀稈を踏みつけることを防止するために、踏み倒し予測領域Cを表示することができるように構成されている。この踏み倒し予測領域Cは予め設定されている。
【0044】
そして、刈取作業時に、踏み倒し予測領域Cと予測進路軌跡Bとが交差すると、警報が発せられるようになっている。具体的には、刈取作業時に、第一撮影手段により撮影された前方の映像と、ハンドル82の状態と走行速度等に基づいて演算されて作成された予測進路軌跡Bと、踏み倒し予測領域Cとが、表示装置85に重畳されて表示された状態で、ハンドル82が操作されて、予測進路軌跡Bが踏み倒し予測領域Cと重複すると、表示装置85に表示された踏み倒し予測領域Cが点滅して警報が発せられる。つまり、ハンドル82の操作が行われた結果、予測進路軌跡Bが踏み倒し予測領域C内に入ると、踏み倒し予測領域Cが点滅して、そのままでは未刈穀稈が機体によって踏み倒されることが作業者に対して警報が発せられるようになっている。
【0045】
本実施形態では、表示装置85上で踏み倒し予測領域Cを点滅させて、作業者に未刈穀稈を踏み倒すおそれがあることを警報を発するように構成し、この表示装置85を警報装置として利用しているが、警報を発することが必要なときに、例えば、ランプを警報装置として別途運転部8に設けて、制御装置97により点滅または点灯させたり、ブザーを警報装置として別途運転部8に設けて、制御装置97により警報音を発生させたりするように構成することも可能である。
【0046】
なお、運転部8は、本実施形態においてはキャビン83付きの構成としているが、キャビンを有しない構成としてもよく、特に限定するものではない。図5に示すように、運転部8がキャビン83を有しない場合も、座席81に着座する作業者の頭部Hと最も右側に配置される分草体31aとを結ぶ直線の近傍に表示装置85が配置されればよい。具体的には、例えば、表示装置85は、ハンドル82の右前方に設けられたバックミラー89の上方に設けられ、座席81に着座する作業者の分草体31aまたはバックミラー89への視線を妨げない位置に配置される。
【0047】
以下に、表示装置85の表示制御の構成について説明する。
【0048】
図1および図6に示すように、コンバイン1には、表示装置85に加えて、第一撮影手段である補助第一撮影手段11および主第一撮影手段12、第二撮影手段13、第三撮影手段14、操作量検出手段91、走行状態検出手段92、制御装置97が設けられる。
【0049】
補助第一撮影手段11は、刈取部3の前部周辺を撮影する手段であり、CCDカメラ等で構成されている。本実施形態では、図2に示すように、補助第一撮影手段11は、キャビン83右側部の前側下部付近に支持部材を介して設置されている。この補助第一撮影手段11では、レンズの向き(撮影方向)が、刈取部3で最も右側に配置される分草体31aを上側方より撮影できるように調整可能とされている。
【0050】
主第一撮影手段12は、刈取部3の前方を撮影する手段であり、CCDカメラで構成されている。主第一撮影手段12は、機体の前部かつ左右中途に支持部材を介して設置されている。具体的には、キャビン83前上部に備えられたヒサシ部83aの左下部に設置されている。運転部がキャビン仕様でない場合、主第一撮影手段12は、刈取部3の最前部かつ最上部の略左右中央に設置される。
【0051】
第二撮影手段13は、機体の後方を撮影する手段であって、CCDカメラで構成されている。第二撮影手段13は、機体後部の左右中央上側に支持部材を介して設置されている。但し、第二撮影手段13は、排藁処理部7(結束装置73または立体放出装置74)の後上部に配置してもよい。
【0052】
第三撮影手段14は、フィードチェン41の搬送始端部である前部(扱口)付近を撮影する手段であり、CCDカメラで構成される。第三撮影手段14は、防塵カバー43の上部、または脱穀部4の前上部に支持部材を介して設置されている。
【0053】
なお、補助第一撮影手段11、主第一撮影手段12、第二撮影手段13、および第三撮影手段14は、CCDカメラではなく、撮影が可能であればCMOSカメラ等でもよい。また、各撮影手段の設置位置は、撮影方向が前記撮影方向と同一方向となるのであれば、前記設置位置と比べて左右方向や上下方向の位置が異なってもよく、特に限定するものではない。
【0054】
また、本実施形態において第一撮影手段を補助第一撮影手段11、主第一撮影手段12の二つとしているが、設置個数は限定しない。つまり、第一撮影手段の設置個数は、補助第一撮影手段11のように刈取部3の前部周辺を詳細に撮影できかつ主第一撮影手段12のように刈取部3の前方を撮影できる機能を備えていれば一つでもよく、また三つ以上でもよく限定しない。
【0055】
また、補助第一撮影手段11、主第一撮影手段12、第二撮影手段13、および第三撮影手段14の支持部材は各撮影手段の撮影方向を変更することができるように構成されている。
【0056】
図6に示すように、補助第一撮影手段11、主第一撮影手段12、第二撮影手段13、第三撮影手段14は、撮影手段であるとともに制御装置97に接続されている。補助第一撮影手段11、主第一撮影手段12、第二撮影手段13、および第三撮影手段14の映像並びに予測進路は、表示装置入切手段94、表示装置切換手段95、予測進路表示入切手段96の操作により、または、自動で表示装置85に適宜表示される。
【0057】
制御装置97には、各撮影手段11・12・13・14や表示装置85に加えて、操作量検出手段91や走行状態検出手段92や走行速度検出手段93などの検出手段、表示装置入切手段94や表示装置切換手段95や予測進路表示入切手段96などの設定手段も接続されている。
【0058】
制御装置97は、前記各検出手段および前記各設定手段からの出力値に基づいて演算して、分草体31aまたは後進時における機体の予測進路軌跡の作成を行い、その作成された予測進路軌跡Bをいずれかの撮影手段により撮影された映像と重畳させて表示装置85に表示させることができるように構成されている。なお、予測進路軌跡は少なくともハンドル82の操作量に基づいて演算されるが、本実施形態においては、これに走行速度を加えて二つの値に基づいてより正確に演算される。
【0059】
操作量検出手段91は、操向操作手段であるハンドル82の操作量R(回動角度)を検出するセンサである。操作量検出手段91は、ポテンショメータやロータリエンコーダ等を用いて直進走行を基準としたハンドル82の操作量(回動量)Rを検出するように構成されている。ただし、操向操作手段をモノレバー等で構成した場合、モノレバーの傾倒方向および傾倒量を検出するように構成する。
【0060】
走行状態検出手段92は、主変速レバー84の操作位置が前進操作位置であるか後進操作位置であるかを検出するセンサである。
【0061】
走行速度検出手段93は、コンバイン1の走行速度を検出するためのセンサである。走行速度検出手段93は、回転数センサ等を用いて走行部2の車軸の回転数等を検出するように構成されている。この検出された回転数が前記制御装置97に出力されて、制御装置97でその回転数に基づいて走行速度が算出される。
【0062】
表示装置入切手段94は、表示装置85に各撮影手段11・12・13・14からの映像、または、その映像とそれに対応する予測進路軌跡Bを表示するか否かを選択するための手段である。表示装置入切手段94は、図11の(a)に示すような回動可能なスイッチ、または図11の(b)に示すような押下可能なスイッチ等で構成され、表示装置85近傍のキャビン83の前壁に設けられている。
【0063】
表示装置切換手段95は、表示装置85に表示される映像を選択するための手段である。表示装置切換手段95は、図12に示すように、押下可能なスイッチ群で構成され、表示装置85近傍のキャビン83の前壁に設けられている。各スイッチは、その項目として「前方詳細」、「前方」、「後方」「扱口」「自動」のいずれかが設定され、押下されたスイッチの項目に応じた映像が選択されるように構成されている。これらのスイッチのうち、前方詳細スイッチ95a、前方スイッチ95b、後方スイッチ95c、扱口スイッチ95dは、複数同時選択可能とされている。
【0064】
ここでのスイッチの項目のうち、「前方詳細」は補助第一撮影手段11により撮影された映像、「前方」は主第一撮影手段12により撮影された映像、「後方」は第二撮影手段13により撮影された映像、「扱口」は第三撮影手段14により撮影された映像を表示装置85に表示するためのものである。また、「自動」は予め制御装置97に記憶された表示規則に則って選択される各撮影手段により撮影された映像を表示装置85に表示するためのものである。
【0065】
予測進路表示入切手段96は、制御装置97が各検出手段の検出値に基づいて演算する分草体31a(図5参照)または機体位置の予測進路軌跡Bを作成するか否かを選択するための手段である。予測進路表示入切手段96は、図11の(a)に示すような回動可能なスイッチ、または図11の(b)に示すような押下可能なスイッチ等で構成され、表示装置85近傍のキャビン83の前壁に配置されている。この予測進路表示入切手段96が「切」に設定された場合、制御装置97で予測進路軌跡Bは作成されず、表示装置85には予測進路軌跡Bが表示されない。
【0066】
なお、表示装置入切手段94、表示装置切換手段95、および、予測進路表示入切手段96の構成は限定するものではなく、その他にも押しボタンスイッチやタッチパネル等で構成することもできる。
【0067】
以下、各設定手段の設定変更に伴う表示装置85の表示方法について図6から図10を参照して説明する。
【0068】
図7に示すように、まず、制御装置97は表示装置入切手段94の設定が「入」であるか否か、つまり表示装置85に映像を表示するか否かを判断する(S1)。
【0069】
ステップS1において、表示装置入切手段94が「切」に設定された、つまり表示装置85に映像を表示しないと判断した場合、制御装置97は表示装置85には何も表示させない。
【0070】
ステップS1において、表示装置入切手段94が「入」であると判断した場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目を取得する(S2)。
【0071】
制御装置97は、この取得したスイッチの項目が「自動」であるか否かを判断する(S3)。この取得したスイッチの項目が「自動」である場合、制御装置97はそれに記憶された表示規則に則って選択される各撮影手段により撮影された映像を表示させるように、ステップを「自動モード」に移行させる。
【0072】
制御装置97は、この取得したスイッチの項目が複数であるか否かを判断する(S4)。この取得したスイッチの項目が複数である場合、それらの二つ以上の項目に対応した撮影手段からの映像を表示させるように、ステップを「複数選択モード」に移行させる。
【0073】
制御装置97は、この取得したスイッチの項目が複数でない場合、この取得したスイッチの項目が一つであると判断する。この場合、制御装置97はその項目に対応した撮影手段からの映像を表示させるように、ステップを「択一モード」に移行させる。
【0074】
以下、ステップS4において、制御装置97がステップを「択一モード」に移行させる場合について説明する。
【0075】
図6、図8に示すように、制御装置97は、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「扱口」であるか否かを判断する(S11)。
【0076】
ステップS11において、「扱口」に選択されていないと判断された場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」であるか否かを判断する(S12)。
【0077】
ステップS12において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」でないと判断した場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」であるか否かを判断する(S13)。
【0078】
ステップS13において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」でないと判断した場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方」であるか否かを判断する(S14)。
【0079】
ステップS14において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方」でないと判断した場合、制御装置97は表示装置85を「切」とし(S20)、各撮影手段により撮影された映像を表示装置85に表示させない。または、制御装置97は各撮影手段により撮影された映像以外の映像(テレビ映像等)を表示させる。
【0080】
制御装置97は、ステップS11において表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「扱口」であると判断した場合、ステップS12において表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」であると判断した場合、または、ステップS13において表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」であると判断した場合、それぞれに対応した各撮影手段11・12・13・14により撮影された映像を表示装置85に表示させる(S19)。
【0081】
ステップS14において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方」である判断した場合、制御装置97は予測進路表示入切手段96が「入」であるか否か、つまり表示装置85に予測進路軌跡Bを表示するか否かを判断する(S15)。
【0082】
ステップS15において、予測進路表示入切手段96が「入」でないと判断した場合、制御装置97は主第一撮影手段12からの映像のみを表示装置85に表示させる(S19)。
【0083】
ステップS15において、予測進路表示入切手段96が「入」であると判断した場合、制御装置97は、操作量検出手段91により検出された操作量Rを取得するとともに、走行速度検出手段93により検出された走行速度Vを取得して、その記憶部に記憶する(S16)。
【0084】
次に、ステップS16において、制御装置97は、主第一撮影手段12により撮影された映像に対応する予測進路軌跡Bを取得した操作量Rおよび走行速度Vに基づいて作成する(S17)。
【0085】
次に、制御装置97は、主第一撮影手段12により撮影された映像、即ち刈取部3の前方の映像を表示装置85に表示させ、更に、ステップS17において作成された予測進路軌跡Bを当該映像に重畳させる(S18)。
【0086】
なお、制御装置97を、ステップS13において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」であると判断した場合(以下の説明の「後方」選択時も同様)にも、後進方向の予測進路軌跡Bを演算し、第二撮影手段13により撮影された映像に重畳させて表示装置85に表示させるように構成することも可能である。
【0087】
以下、ステップS5において、制御装置97がステップを「複数選択モード」に移行させる場合について説明する。
【0088】
なお、本実施形態においては説明を簡単とするために、二画面表示について説明するが、三画面以上の場合も同様にして表示することが可能である。二画面表示の場合には、表示装置85の画面を左右に均等に分割して表示したり、画面を一方が大きくなり他方が小さくなるるように分割して表示したりすることも可能である。
【0089】
図9に示すように、制御装置97は、予測進路表示入切手段96が「入」であるか否か、つまり表示装置85に予測進路軌跡Bを表示するか否かを判断する(S221)。
【0090】
ステップS221において、予測進路表示入切手段96が「切」であると判断された場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方」と選択されているとき、その主第一撮影手段12の映像のみを表示装置85に表示させる。(S222)。
ステップS221において、予測進路表示入切手段96が「入」であると判断された場合、制御装置97は、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方」であるときに、前述した予測進路軌跡Bを主第一撮影手段12の映像に重畳して表示装置85に表示させる。(S223)。
【0091】
次に、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が、「扱口」であるか否かを判断する(S224)。
【0092】
ステップS224において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「扱口」であると判断した場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」であるか否かを判断する(S225)。
【0093】
ステップS225において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」であると判断した場合、制御装置97は、第三撮影手段14(「扱口」)と補助第一撮影手段11(「前方詳細」)の映像を表示装置85に分割して表示させる(S226)。
ステップS225において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」でないと判断した場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」であるか否か判断する(S227)。
【0094】
ステップS227において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」であると判断した場合、制御装置97は表示装置85に第三撮影手段14(「扱口」)と第二撮影手段13(「後方」)の映像を表示させる(S228)。
ステップS227において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」でないと判断した場合、制御装置97は表示装置85に第三撮影手段14(「扱口」)と主第一撮影手段12(「前方」)の映像を表示させる(S229)。
【0095】
一方、前記ステップS224において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「扱口」でないと判断した場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」であるか否かを判断する(S230)。
【0096】
ステップS230において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」でない場合、制御装置97は表示装置85に第二撮影手段13(「後方」)と主第一撮影手段12(「前方」)の映像を表示させる(S234)。
ステップS230において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「前方詳細」である場合、制御装置97は表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」であるか否かを判断する(S231)。
【0097】
ステップS231において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」である場合、制御装置97は表示装置85に補助第一撮影手段11(「前方詳細」)と第二撮影手段13(「後方」)の映像を表示させる(S232)。
ステップS231において、表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目が「後方」でないと判断した場合、制御装置97は表示装置85に補助第一撮影手段11(「前方詳細」)と主第一撮影手段12(「前方」)の映像を表示させる(S233)。
なお、制御装置97は、三画面表示の場合も前記と同様に表示装置切換手段95にて選択されたスイッチの項目を判断してそれぞれ対応した映像を表示装置85に表示させる。また、画面の表示を入れ替えるスイッチ等を設けることも可能である。
【0098】
以下、ステップS3において、制御装置97がステップを「自動モード」に移行させる場合について説明する。
【0099】
図10に示すように、制御装置97は、走行状態検出手段92の検出情報に基づいて、主変速レバー84の操作位置Pが「後進操作位置」であるか否かを判断する(S331)。
【0100】
ステップS331において、操作位置Pが「後進操作位置」であると判断した場合、制御装置97は表示装置85に第三撮影手段(「後方」)の映像を表示する(S332)。
ステップS331において、操作位置Pが「後進操作位置」でないと判断した場合、制御装置97は作業クラッチが「入」であるか否かを判断する(S333)。
【0101】
ステップS333において、作業クラッチが「入」でない場合には、表示装置85を見る必要がないため、つまり、走行する方向である前方を見るため、制御装置97は表示装置85を「切」(S334)、各撮影手段により撮影された映像を表示装置85に表示させない。
ステップS333において、作業クラッチが「入」である場合、制御装置97は穀稈量が設定値以上であるか否か判断する(S335)。
この穀稈量は、刈取部3、または、フィードチェン41で穀稈量を図示しない検出手段により検出される。
【0102】
ステップS335において、穀稈量が設定値以上であると判断した場合、詰まったり、滞留したりしている可能性があるため、制御装置97は表示装置85に第三撮影手段14(「扱口」)の映像を表示させる(S336)。このとき、作業者は通常よりも穀稈量が多いか否かを把握して、その状況にあわせて走行速度を落としたりすることができる。こうして、作業性の向上が図られている。
ステップS335において、穀稈量が設定値未満であると判断した場合、制御装置97はハンドル82の操作量Rが設定値以上であるか否かを判断する。つまり、制御装置97はコンバインが直進走行であるか否かの判断をする(S337)。
【0103】
ステップS337において、ハンドル82の操作量Rが設定値未満であると判断した場合、コンバイン1が直進走行であるため、制御装置97は表示装置85に補助第一撮影手段11(「前方詳細」)の映像を表示させる(S338)。
ステップS337において、ハンドル操作量が設定値以上であると判断した場合、制御装置97は予測進路表示入切手段96が「入」か否かを判断する(S339)。
【0104】
ステップS339において、予測進路表示入切手段96が「入」であると判断した場合、制御装置97は主第一撮影手段12(「前方」)の映像に予測進路軌跡Bを重畳させて表示装置85に表示させる(S340)。これにより、作業者が旋回方向の刈取予測、つまり分草体31aの予測進路を把握することができる。
ステップS339において、予測進路表示入切手段96が「切」であると判断した場合、制御装置97は主第一撮影手段12(「前方」)の映像のみを表示装置85に表示させる(S341)。
【0105】
以下、表示装置切換手段95により「自動」が選択された状態(「自動モード」)において、制御装置97により撮影手段により撮影された映像に予測進路軌跡Bを演算して重畳させ、表示装置85に表示させる具体例について説明する。
【0106】
図13〜図16において、バツ印は圃場の穀稈が刈り取られた箇所を示し、丸印は圃場の穀稈が刈り取られていない箇所を示す。
例えば、回り刈りの際、図16に示す前進方向V1に前進走行しながら行う刈取作業中では、主変速レバー84の操作位置Pが「前進走行位置」であり、前述のようにその他の条件が満たされれば、制御装置97により操作量Rと走行速度Vに基づいて予測進路軌跡Bが作成されて、主第一撮影手段12により撮影された映像、即ち刈取部3の前方の映像に重畳され、その映像が表示装置85に表示される。
【0107】
そして、コンバイン1が圃場端に至り、隅刈りを行う場合には、図16に示すように、作業者はコンバイン1を後進V2方向に一旦所定距離後進させる。このとき、主変速レバー84を「後進走行位置」に操作すると、走行状態検出手段92により主変速レバー84の操作位置Pが「後進操作位置」であると検出され、制御装置97により予測進路軌跡が作成されて、第二撮影手段13により撮影された映像、即ち機体後方の映像に重畳され、その映像が表示装置85に表示される。そのため、作業者が機体後方の圃場端を容易に確認することができ、走行部2にて未刈穀稈を踏んで後進することを防止することが可能となる。
【0108】
所定距離後進したあと、作業者は主変速レバー84を「前進走行位置」に操作してハンドル82をV3方向に切る。そして前記同様に、制御装置97により操作量Rと走行速度Vに基づいて予測進路軌跡Bが作成されて、主第一撮影手段12により撮影された映像、即ち刈取部3の前方の映像に重畳され、その映像が表示装置85に表示される(図14参照)。そのため、刈取部3の刈り幅いっぱいになるまで旋回しながら刈取作業を行うことが可能となる。
【0109】
つづいて圃場端に至ると、このような作業を繰り返し行い、コンバインが横向き(図16に示すV4方向)になれる面積分だけ穀稈を刈り取る。そして、コンバインがV4方向を向いた状態で、走行状態検出手段92により主変速レバー84の操作位置Pが「前進進路位置」であると検出されると、制御装置97により予測進路軌跡が作成されて、第二撮影手段13の映像、即ち機体後方の映像に重畳され、その映像が表示装置85に表示される。
【0110】
また、このように行う刈取作業中において、コンバイン1における条件が図10のように変われば、制御装置97により表示装置85に表示される映像が確認の必要な箇所の映像に自動で変更される。そのため、作業者は、表示装置85を適宜確認しながら回り刈りや隅刈り等の煩雑な操向操作を行うことができ、コンバイン1を圃場上で円滑に動かすことが可能となる。
【0111】
直進走行しながらの刈取作業中に、分草体31aがその右後方から補助第一撮影手段11により撮影されるため、最も右側の分草体31aを未刈穀稈よりも常に右側に位置させて、右端の穀稈を条列として認識することが容易となる。よって刈取作業が向上する。
また、畦が曲がっているような変形圃場の場合にも、適切な進行方向が示されるため、前記同様に容易に刈取作業を行うことができる。
【0112】
加えて、結束装置73および立体放出装置74を備えるコンバイン1を用いて、水路際等で刈取作業を行う場合、表示装置切換手段95により第二撮影手段13により撮影された映像、即ち機体後方の映像が表示装置85に表示されるように設定する。そのうえで、第二撮影手段13の支持部材によって、この第二撮影手段13の撮影方向を前記装置から放出される排藁が撮影されるように調整する。これにより、立体放出装置74から圃場へと放出された排藁の束が、水路等に入り込んでいないか、適切に圃場に放出されているかを容易に確認することが可能となる(図15の左側画面参照)。
【0113】
以上の如く、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、走行部2と、前記走行部2の前方に配置する刈取部3と、前記刈取部3の後方で前記走行部2の前部上に配置する運転部8とを備えるコンバイン1であって、前記運転部8の前方を撮影する第一撮影手段(補助第一撮影手段11、主第一撮影手段12)と、前記第一撮影手段により撮影された映像を表示する表示装置85とを備え、前記表示装置85は、前記運転部8の操向操作手段としてのハンドル82の近傍、かつ前記運転部8の座席に着座する作業者の頭部Hと前記刈取部3で最も右側に配置される分草体31aとを結ぶ直線の近傍に配置するものである。
【0114】
このように構成することにより、コンバイン1が刈取作業時に走行する予測進路軌跡Bを、前記第一撮影手段12により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡Bが重畳された映像を表示装置85に表示させるため、予測進路軌跡Bと前方の状況とを同時に把握して、前方の穀稈の状況に応じて適切な進路を容易に決め、刈取作業を行うことが可能となる。したがって、進行方向を変更した場合の刈取範囲も容易に認識でき、未熟な作業者であっても、操向操作を適切かつ容易に行うことができ、刈取作業が行いやすくなる。しかも、最大幅で刈り取るように進路を決めたり、刈り残しがなくなるように進路を決めたりすることができ。刈取作業を効率よくを行うことが可能となる。
【0115】
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、前記運転部8のハンドル82の操作量Rに基づいて予測進路軌跡Bを作成する制御装置97とを備え、前記制御装置97は、前記予測進路軌跡Bを前記第一撮影手段により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡Bが重畳された映像を前記表示装置85に表示させるものである。
【0116】
このように構成することにより、例えば、曲がった畦際の刈取や圃場端での回り刈り等の作業を行うときに、どの程度の操向操作量で踏み倒し予測領域Cに進行するかが容易に判断することが可能となり、たとえ踏み倒し予測領域Cに進行するような操向操作を行っても、警報が発せられることとなる。したがって、適切な操向操作で容易に進路変更ができるようになり、刈取作業が行いやすくなるとともに、穀稈の踏み倒しを未然に防止でき、刈り残しも減少させることができる。
【0117】
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、機体の後方を撮影する第二撮影手段13と、走行状態を検出する走行状態検出手段92とを備え、前記制御装置97は、前記走行状態検出手段92により走行状態が後進状態であることが検出されたとき、前記運転部8のハンドル82の操作量Rに基づいて予測進路軌跡Bを作成して、前記第二撮影手段13により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡Bが重畳された映像を前記表示装置85に表示させるものである。
【0118】
このように構成することにより、圃場の隅部等で切り返しを行うために後進するとき、後方の映像と予測進路軌跡Bとが表示されるため、後進方向に未刈り穀稈や畦等がある場合でも、どれくらい後進すると、これらに接触したり、これらを踏みつけたりするかが容易に予測でき、後進走行を安心して行うことが可能となる。したがって、未熟な作業者であっても、操向操作を適切かつ容易に行うことができ、刈取作業が行いやすくなる。
【符号の説明】
【0119】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
8 運転部
11 補助第一撮影手段
12 主第一撮影手段
13 第二撮影手段
31a 分草体
82 ハンドル
85 表示装置
92 走行状態検出手段
97 制御装置
B 予測進路軌跡
H 頭部
R 操作量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部と、前記走行部の前方に配置される刈取部と、前記刈取部の後方で前記走行部の前部上に配置される運転部とを備えるコンバインであって、
前記運転部の前方を撮影する第一撮影手段と、
前記第一撮影手段により撮影された映像を表示する表示装置と、
前記運転部の操向操作手段の操作量に基づいて予測進路軌跡を作成する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記予測進路軌跡を前記第一撮影手段により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡が重畳された映像を前記表示装置に表示させることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御装置は、警報装置と接続され、予測進路軌跡の未刈り穀稈側に、踏み倒し予測領域を作成して、前記予測進路軌跡が前記踏み倒し予測領域と交わるとき、前記警報装置により警報を発生させることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
機体の後方を撮影する第二撮影手段と、
走行状態を検出する走行状態検出手段とを備え、
前記制御装置は、前記走行状態検出手段により走行状態が後進状態であることが検出されたとき、前記運転部の操向操作手段の操作量に基づいて予測進路軌跡を作成して、前記第二撮影手段により撮影された映像に重畳させ、この予測進路軌跡が重畳された映像を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−41504(P2011−41504A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191331(P2009−191331)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】