説明

コンパクトな変形可能膜を動作させる手段を備える光学デバイス

本発明は、支持体の一方に面する一定の量のリキッド(4)を収容することを補助する支持体(1.5)に係留領域(2.3)と、静止ポジションから可逆的に変形可能な実質的な中央領域(2.1)と、中央領域(2.1)でリキッド(4)を変位させるための、中央領域(2.1)と係留領域(2.3)との間に位置する部分(200)を押圧する作動手段(5)とを備える変形可能な膜(2)を有する光学デバイスに関するものである。作動手段(5.1)は、膜の周縁に分配されたマイクロビームタイプの複数の熱または圧電アクチュエータ(5.1)を備えており、これらのマイクロビームは、支持体に結合された少なくとも一つの固定部と、作動時に中央領域と係留領域との間に位置する領域において膜と接触する少なくとも一つの可動部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変焦点距離リキッドレンズなどの変形可能な膜を備える光学デバイスに関するものであり、リキッドレンズは、適応光学(アダプティブ光学)あるいは膜状可変ミラーにおける光学収差の補正をするものである。
【0002】
すべてのタイプの可変焦点距離リキッドレンズにおいて、その少なくとも一つが変位可能な壁同士の間の一定の空間において動作する光学リキッドの形態のものが存在する。光学リキッドは、その光の反射率に適当な光学特性を有し、かつ1より大きい、代表的には1.4または1.5より大きい指標(index)を有するリキッドを用いるものである。以下ではこれを用語「リキッド」として簡単化して使用する。こうしたタイプのレンズをカメラ付き携帯電話に組み込まれたカメラなどのミニチュアカメラに使用することにおいて、その焦点距離を変更するための機械的構造が複雑であり、そのサイズがレンズのコストおよび信頼性に関して不利に働くため、困難が伴う。
【0003】
目で見えるように動作するこれらのミニチュアカメラは、CCM(コンパクトカメラモジュール)として知られている。当該CCMには、その湿潤性を変化させるために電圧が付与される一つまたは二つのリキッドを含むレンズが備えられる。
【0004】
特にオートフォーカス機能およびズーム機能を含む数多くの開発がなされてきた。これらの機能を導入する際の課題は、可能な限り応答時間を短くすることで実現されてきた。さらに一般的には、その課題として、コスト、サイズおよびエネルギー消費量を低減するためにできる限りこれらのCCMの構成要素を一体化することが挙げられる。
【0005】
他の用途は、赤外線(IR)で作動するカメラに関連するものである。一体化に関する発展は大きくなく、多くの場合において光学素子はカメラから分離されている。いくつかの開発、特に光学素子の一体化(カメラモジュールの作成)、オートフォーカス機能などを兼ね備えることに関する開発が行われている。今のところ、関連する技術的解決は得られておらず、そのためそれを明らかにする必要がある。
【0006】
膜状可変ミラーの使用においてミラーは反射するものである。当該ミラーの焦点距離ならびにその曲率半径を調節することが望まれてもよい。そうしたミラーは眼科学または適応光学に使用されてもよい。
【背景技術】
【0007】
少なくとも一方が変位可能な壁同士の間の一定の間隔における可変焦点距離リキッドレンズなどの可変焦点距離を有する光学デバイスは、いくつかの特許文献、例えば:特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8に記載の発明の対象となっている。
【0008】
上記特許文献のうちで携帯電話機用カメラへの使用を開示するものはなく、その代わりに、望遠鏡、光学的顕微鏡、およびデジタルカメラへの使用を開示している。実際に、膜と連携する機械的構造はすべてにおいて非常に複雑でありかつこのタイプの用途に関しては非常に高価なものとなる。
【0009】
図15A,15Bには、引用文献1に開示される二つの可変焦点距離リキッドレンズの例を示す。これらのレンズは、最も簡単なレンズとして図示されているため、選択された。
【0010】
図15Aのリキッドレンズ1000は、第1の中央透過性弾性フィルム106aと、第2の中央透過性弾性フィルム106bと、周縁弾性フィルム104と、周縁コンテナ105とを備える。第1および第2の中央透過性弾性フィルム106a,106bは、互いに対向するように配置されている。周縁弾性フィルム104は、第1の中央透過性弾性フィルム106aの周囲に固定されており、かつその全体が第1の膜を形成する。第1の膜は、周縁コンテナ105の一つの面に係留(anchor)されている。第2の膜は、第2の弾性フィルムを備えている。それは、周縁コンテナの他方の面に係留されている。すべての要素は、互いに密封状態でシールされておりかつリキッド103を含んでいる。リキッド103に圧力をかける機能を有するレンズ102の作動手段は、周縁弾性フィルム104において作動する。それは、冠形状コンテナ203内に配置された複数のアクチュエータ201を備える。このコンテナは他に比べて厚みがあるものである。この動作は、周縁弾性フィルム104へ移行されるリングを経て膜上で実施される。二つのコンテナ105,203が互いに面するように組み合わせられている。透過性フィルムのみが光学的な役割を有し、かつ周縁弾性フィルムのみが機械的な役割を有する。
【0011】
これらのリキッドレンズ1000は、以下に挙げるような欠点を有している。
【0012】
重要な欠点は、特にコンテナが原因となる、やっかいでありかつ複雑なタイプの作動に関連する。
【0013】
これらのレンズを製造する方法は、多科学的でありかつ不可分なものである。この方法は、レンズを生成し、そしてレンズを形状付けるための処理するプラスチック、コンテナを形成するための射出および機械的工法から始まる。フィルムをコンテナへ密封状態で取り付けるための方法は、シーリング(プラスチック−プラスチック、プラスチック−ガラス、プラスチック-金属)の特性に応じて異なるものである。加えて、実施されるシーリングは同一平面においてすべてが配されるのではなく、それは、使用される方法および必要な道具を著しく複雑にするフィルムまたはプレートのやっかいな操作を要するものである。こうした技術は、マイクロエレクトロメカニカルシステムMEMSまたはマイクロフォトエレクトロメカニカルシステムMOEMSを形成するために使用される従来のバッチ製造方法と互換性がない。ゆえに、そのコストは、そのサイズにしては非常に高いものとなる。
【0014】
さらに、組立中に透過性弾性フィルムを周縁弾性フィルム上に配置すること、およびリングの搬送中にリングを周縁弾性フィルム上に完璧に配置することは難しい。他に、リングに対してアクチュエータを申し分なく配置することも難しい。もし配置が正確なものでない場合には、光学収差は得られるイメージの質を低下させる。
【0015】
加えて、作動手段によって変位されるようになる周縁弾性フィルムが、静止状態または作動状態のいずれにおいても、係留のレベルにおける周縁コンテナの表面に対してできる限り平行となることが必要とされる。そうでない場合、光学収差が生じ、そして光学収差は得られるイメージの質を低下させる。実際に図15において、特許文献1に開示されているリキッドレンズは、作動手段を除く横断方向に存在している。光学収差のいかなる問題も避けるために、膜の一部がシーリングのレベルにおいてコンテナおよび膜を構成するさまざまなフィルムの間のシーリングまで延在する主要平面同士が、実質的に平行となる必要がある。こうした状態を所定の複数のシーリングを伴って形成するのは非常に困難である。
【0016】
さらにまた、パッチワークの様式において、いくつかのフィルムが密封状態で互いに対して、かつリキッドを封入するようコンテナに対してシールされるため、漏出の可能性を無視できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5 917 657号明細書(US-B-5 917 657)
【特許文献2】米国特許第6 344 930号明細書(US-B-6 344 930)
【特許文献3】特開平10−144975号公報(JP-A-10-144975)
【特許文献4】特開平08−114703号公報(JP-A- 08-114 703)
【特許文献5】米国特許出願公開第5 138 494号明細書(US-A-5 138 494)
【特許文献6】国際公開第2003/102636号パンフレット(WO 2003/102636)
【特許文献7】特開2002−243918号公報(JP2002- 243918)
【特許文献8】特開昭60−220301号公報(JP-A-60 220301)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、正確に、上記欠点(すなわち、作動手段およびそのサイズの複雑化、光学収差、高い漏出可能性、マイクロエレクトロニック環境との不和合性、バッチでの製造の不可能性)のないリキッドレンズまたはミラー可変膜を備える光学デバイスを提供するという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、単純でありかつ非常に著しい様式で作動手段のサイズを小さくする、膜の周縁に配されたマイクロビーム(micro-beam)タイプのいくつかの熱または圧電アクチュエータを備える作動手段を提供する。
【0020】
マイクロビームは、そのセクションの固有の寸法(つまり、その厚さおよびその幅)がその長さより小さくなっている物体を意味するよう用いられている。少なくとも二つの、理想的には五つより多い要素が、そのセクションの長さと固有の寸法との間に存在する。長さのオーダーの大きさは、数十マイクロメートルから数ミリメートルである。
【0021】
さらに言えば、本発明は、一定の容積のリキッドを包含するのに役立つ支持体上に係留領域を備える可変膜を備える光学デバイスであり、リキッドは、静止ポジションから可逆的に変形可能なその面のうちの一つ(実質的に中央領域である)と接触し、中央領域におけるリキッドを変位させるための作動手段が、中央領域と係留領域との間に位置する部分で膜を押圧する。作動手段は、膜の周縁に分散されるマイクロビームタイプのいくつかの熱または圧電アクチュエータを備えており、マイクロビームは、支持体に結合される少なくとも一つの固定部と、アクチュエータにおいて、中央領域と係留領域との間に位置する了以に出膜と接触する少なくとも一つの可動部とを有する。
【0022】
可動部は、静止ポジションにおいて膜の押圧部と接触しないものであってもよい。
【0023】
あるいは、可動部は、押圧部と結合することが必要とされる場合には、静止ポジションにおいて膜の押圧部と接触してもよい。
【0024】
マイクロビームタイプのアクチュエータは、係留領域における膜によって支持体に結合されてもよい。
【0025】
あるいは、マイクロビームタイプのアクチュエータは、膜を越えて支持体に結合されてもよい。
【0026】
マイクロビームタイプのアクチュエータは、リキッドと接触しても、もしくは接触しなくてもよい。
【0027】
特にサイズに関して、膜はマイクロビームタイプのアクチュエータと一体化されることは有利である。
【0028】
同様の目的から、マイクロビームタイプのアクチュエータは、膜の二つの層の間に挿入されていてもよい。作動手段のサイズは最小となるように小さくされる。
【0029】
マイクロビームは、矩形状または孤形状になされていてもよく、弧形状に曲げられている場合、マイクロビームの長さを増加させる一方で支持体の表面を小さくすることが可能となる。さらにこれは、サイズの低減にも有利である。
【0030】
静止ポジションにおいて、膜は、凹状、凸状、または実質的に平坦となっていてもよい。
【0031】
膜は、膜の全表面を占める少なくとも一つの連続層を備えており、それによって漏出の可能性が低減される。
【0032】
できる限り一様な膜の作動を生じるように、押圧部は、中央領域と、中央領域を囲む係留領域との間に位置する膜の補強領域に含まれており、補強領域は、中央領域の剛性および係留領域の剛性よりも大きな剛性を有するようにすることもできる。
【0033】
補強領域は、係留領域に侵入することなく係留領域まで延在していても、あるいは係留領域の手前で終端をなしていてもよい。
【0034】
補強領域は、厚手の連続層から形成されていてもよい。
【0035】
あるいは、補強領域は、少なくとも連続層および付加的な層を積み重ねたものから形成されていてもよい。
【0036】
係留領域は、(必要であれば薄くなされた)連続層から少なくとも形成されていてもよい。
【0037】
中間ガード領域が、係留領域と補強領域との間に、かつ/または補強領域と中央領域との間に配置されていてもよく、中間ガード領域は、(必要であれば薄くなされた)連続層から少なくとも形成されていてもよい。
【0038】
補強領域は、単一部分であっても、もしくはいくつかに分割されたものであってもよい。
【0039】
圧縮部の表面積は、補強領域が単一部分からなる場合の表面積、または分割された際の補強部分の表面積よりも小さい。
【0040】
補強部分のそれぞれが中央領域に囲まれていてもよく、あるいは補強部分全体が中央領域に囲まれていてもよい。
【0041】
補強部分は、実質的に、円形、冠形状、多角形、三日月形状、放射状のストリップであってもよい。
【0042】
補強部分が中央領域の周りに非連続的な冠形状を形成する場合、膜は、さらに、中央領域を囲む補強領域を備えており、この補強領域は、補強部分よりも高い剛性を有しており、かつ中央領域と補強部分との間に配置される。
【0043】
補強領域が、冠形状、あるいは中央領域へ向かうかまたは係留領域に向かう放射状指状突出部を備える冠形状の複数の部分のものであってもよい。
【0044】
支持体は、実質的に平坦であるか、あるいはリキッドを収容する皿を有していてもよい。
【0045】
支持体はともに組み合わせられた二つの基部を備えていてもよく、膜がこの基部に結合されており、マイクロビームアクチュエータが他方の基部に結合されている。
【0046】
支持体は、フレームとフレームに係留される第2の膜を備えていてもよい。
【0047】
支持体は、フレームと、リキッドのための皿を形成することに役に立つフレームに固定された透過性プレートとを備えていてもよく、透過性プレートは、実質的に平坦でありかつ平行な面、または実質的に凹状の皿の外側にある面、あるいは実質的に凸状の皿の外側にある面を有している。
【0048】
リキッドの厚さを測定するための容量性手段(capacitive means)が少なくとも一つの押圧部に設けられていてもよい。
【0049】
リキッドの測定された厚さに応じて作動手段を自動的に制御するための手段が設けられている。
【0050】
光学デバイスは、マイクロエレクトロニクスまたはマイクロシステム技術によって形成される。
【0051】
膜は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、パリレン、エポキシ樹脂などの有機物由来の材料またはシリコン、シリコンカーボネート、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物、多結晶シリコン、チタニウム窒化物、ダイアモンドカーボン、スズおよびインジウム酸化物、アルミニウムなどの無機材料から形成されてもよい。
【0052】
リキッドは、プロピレンカーボネート、水、指標リキッド、光学オイル、またはイオンリキッドから選択されてもよい。
【0053】
さらに、本発明は、少なくとも一つの光学デバイスを備え、それによって特性付けられるカメラデバイスに関するものである。
【0054】
本発明は、非限定的な例示として与えられる実施形態および図面によってより良く理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1A】補強部が設けられていない状態の本発明の光学デバイスの一例を示す図である。
【図1B】補強部が設けられていない状態の本発明の光学デバイスの一例を示す図である。
【図1C】補強部が設けられていない状態の本発明の光学デバイスの一例を示す図である。
【図1D】補強部が設けられていない状態の本発明の光学デバイスの一例を示す図である。
【図1E】補強部が設けられていない状態の本発明の光学デバイスの一例を示す図である。
【図2A】本発明の光学デバイスの作動手段を概略的に示す図である。
【図2B】本発明の光学デバイスの作動手段を概略的に示す図である。
【図3.1】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.2】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.3】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.4】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.5】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.6】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.7】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.8】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.9】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.10】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.11】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.12】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.13】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.14】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図3.15】本発明の光学デバイスの膜の変形例の断面図である。
【図4A】作動手段を備えていない、本発明の光学デバイスの他の変形例の示す図である。
【図4B】作動手段を備えていない、本発明の光学デバイスの他の変形例の示す図である。
【図4C】作動手段を備えていない、本発明の光学デバイスの他の変形例の示す図である。
【図5A】単一部分の状態の補強部の変形例を示す図である。
【図5B】単一部分の状態の補強部の変形例を示す図である。
【図5C】単一部分の状態の補強部の変形例を示す図である。
【図6A】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6B】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6C】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6D】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6E】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6F】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6G】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6H】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図6I】分割された補強領域の変形例を示す図である。
【図7A】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7B】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7C】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7D】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7E】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7F】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7G】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7H】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7I】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7J】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7K】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7L】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7M】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図7N】作動手段の構造を断面で示す図である。
【図8】作動手段によって分割されるように緊張させられている補強領域を示す図である。
【図9A】異なる数学的なパラメータの例を受けるよう用いられた光学デバイスの例示である。
【図9B】異なる数学的なパラメータの例を受けるよう用いられた光学デバイスの例示である。
【図10A】光学デバイスを形成するための方法のステップを示す図である。
【図10B】光学デバイスを形成するための方法のステップを示す図である。
【図10C】光学デバイスを形成するための方法のステップを示す図である。
【図10D】光学デバイスを形成するための方法のステップを示す図である。
【図10E】光学デバイスを形成するための方法のステップを示す図である。
【図11】互いに組み合わせられた二つの支持体を備える光学デバイスを示す。
【図12】リキッドの厚さを測定するための容量性手段と、リキッドの厚さの機能として作動手段を自動的に制御するための手段とを備える本発明の光学デバイスを示す図である。
【図13A】本発明の光学デバイスの支持体の構造を示す図である。
【図13B】本発明の光学デバイスの支持体の構造を示す図である。
【図13C】本発明の光学デバイスの支持体の構造を示す図である。
【図13D】本発明の光学デバイスの支持体の構造を示す図である。
【図13E】本発明の光学デバイスの支持体の構造を示す図である。
【図14A】本発明の少なくとも一つの光学デバイスを備えるカメラデバイスを示す図である。
【図14B】本発明の少なくとも一つの光学デバイスを備えるカメラデバイスを示す図である。
【図15A】従来のリキッドレンズを示す図である。
【図15B】従来のリキッドレンズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
さまざまな図面に示される同一の部品、同様の部品、または同等の部品は、ある図面から次の図面へより容易に移行できるように、同じ参照番号が付与される。
【0057】
より容易に図面を理解できるようにするために、図面におけるさまざまな部品は、必然的に、一様な寸法では示されていない。
【0058】
ここで図1A、1B、1Cを参照すると、本発明の対象物である、可変膜を備える簡略化された光学デバイスの一例が概略平面図で示される。
【0059】
これらの光学デバイスはリキッドレンズであるが、それに限定されず、膜状可変ミラーであってもよいことが想定される。
【0060】
リキッドレンズ10は、その周縁が支持体1.5に密封状態で係留されている膜2を備える。支持体1.5に係留される膜の領域は、係留領域として知られており、かつ参照番号2.3が付与されている。この例において、係留は支持体1.5のフレーム1においてなされている。
【0061】
フレーム1は、支持体1.5を並べることによって支持体1.5で形成される皿3を規定するのに役立つ。皿3は、一定の量のリキッド4を含むよう意図されている。支持体1.5は、主平面x、yに沿って延在する。皿3は、底部3.1を備える。光学ビーム(図示せず)は、皿3の底部3.1における膜2、リキッド4および支持体1.5を伝播する一方で、リキッドレンズ10を横断するよう意図されている。フレーム1および皿3は必要ではなく、支持体1.5は実質的に平坦な構造のものであってもよい。底部3.1は、使用される光学ビームのために透過性のあるものである。
【0062】
支持体1は、図1bのように一体的な(monolithic)ものであるか、または図13Aのように、皿3の底部3.1にフレーム1を組み合わせることによって形成されたものであってもよい。
【0063】
その量が一定であるリキッド4は、プロピレンカーボネート、水、指標リキッド、光学オイル、またはイオンリキッドであってもよい。特にそれは、リキッドレンズの場合にはその光学的な特性に関連して選択される。
【0064】
光学デバイスが膜状可変ミラーである場合には、そうした膜は入射する光学ビームを反射するよう意図されたものであるから、当該膜は反射性を有する。光学フィールドは透過性のものでなくともよい。
【0065】
膜は、リキッド4と、リキッド4に対してそのバリアの他方の側に配置された流体媒体との間のバリアとして機能するフレキシブルフィルムを意味するよう用いられる。当該流体は、まったく自然な空気または他のガスあるいは他のリキッドであってもよい。少なくとも中央領域2.1における膜2は、一方においてはリキッド4と、かつ他方においては少なくとも光学フィールドとして知られる中央領域2.1における流体と接触しており、これはリキッドレンズの使用においてだけではなく、ミラーの使用においても同様である。それによって、押圧中央領域が(他方においては押圧光学フィールドが)ときどき用いられるようになる。これに関連して、これらの押圧は同様になされる。リキッドレンズの使用において、光学フィールドは光学ビームによって横断されるようになり、かつそれは光学ビームのために透過性を有するものとなる。ミラーの使用においては、膜は、光学ビームが入射されるとき、中央領域に反射性を有するものとなる。中央領域はリキッドと接触する第1の面と、ジオプター(dioptre)を形成する第1の面と対向する第2の面とを備える。膜の材料は、破損することなく、リキッドの膨張、衝撃、重力によるリキッドの重量などの外部応力に耐えうるように選択される。
【0066】
膜は、図1A、1B、1Cにおいて円形で示されているが、他の形状とすることもできる。
【0067】
光学デバイスの焦点距離を変更可能にするために、リキッドは、中央領域における膜の下側に位置するリキッドの厚さが変更されるように一定の容量で変位されるようになる。作動手段5は、それが、静止ポジションから、膜2を変形させる少なくとも一つの作動ポジションまで移動できるよう設けられる。この作動手段は、圧電または熱的作動を伴う複数のマイクロビームタイプのアクチュエータ5.1を備えている。アクチュエータ5.1は、膜2の周縁に分散されている。マイクロビームのそれぞれは、支持体1.5に機械的に結合された少なくとも固定部5.10と、膜2を変形させるように、動作時にかつ作動ポジションで、膜2の一部分200と接触する少なくとも一つの可動部5.20とを備えており、それによって、押圧部200として知られる膜の当該部分200が、光学フィールド2.1と係留領域2.3との間に位置する領域に配置されるようになる。当該ビームの可動部は、図1A、1Bのように、その端部の一方であるか、または図1Cに示されるようにその中央部である。固定部は、マイクロビームの少なくとも一方の端部であってもよい。図1において、押圧部200はアクチュエータ5.1によって覆われているため直接見ることはできない。
【0068】
膜の中央領域2.1は、それがアクチュエータ5.1によって押圧される部分200の変位によって活性化するとき、可逆的な変形が可能なように十分にフレキシブルでありかつ弾性を有するものである。支持体1.5に対する膜の固着は、その係留領域2.3において、動作時の膜の残り部分の変位に十分に耐えるものでなければならない。係留領域2.3は、リキッド4とは接触しない。
【0069】
図1Aにおいて、8つの放射状アクチュエータ5.1が示されている。この数は、非限定的なものであるので、さらに大きくてもよい。これは、変位が実質的に規則的な様式で生じるように、膜2の押圧部200が中央領域2.1の周囲に実質的に規則的に分散されることを目的としている。マイクロビームは直線状のものである。図1Aにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータのそれぞれに接続された電源パッド150および導電トラック151が示されており、これらのトラック151およびパッド150は、マイクロビームタイプのアクチュエータに適切な電圧を供給するようにその作動に使用される。
【0070】
図1Cにおいて、膜の端の弦部(chord)に沿って実質的に四角形状で配置された4つのアクチュエータ5.1が示されており、マイクロビームのそれぞれの端部は支持体1.5に結合されている。マイクロビームは、実質的にブリッジ形状を有しており、端部に位置するその支柱部が支持体に結合されている。マイクロビームの中央部分は膜を押圧するものであり、その部分が橋床に対応する。
【0071】
マイクロビームは図1Dに示されるように直線状のものである必要はない。図1Dではマイクロビームはカーブしている。図1Eにおいてもマイクロビームはカーブしているが、直線状部分で支持体の端部に機械的に連結された部分によって、より長いものとなっている。
【0072】
図2Aには圧電作動手段を示し、かつ図2Bには熱タイプ作動手段を示す。これらの作動手段を形成するために、例えば、圧電アクチュエータとして、センサおよびアクチュエータ A-130-131(2006) 91-98「閉解析形態および実験結果による圧電重層屈曲アクチュエータの構成要素方程式(The constituent equations of piezoelectric multilayer bending actuators in closed analytical form and experimental results)」が、熱アクチュエータとして、「新式ウェハープローブカードのための熱的作動マイクロプローブ(Thermally actuated microprobes for new wafer probe card)」IEEE Journal of microelectromechanical Systems、 vol 8、1999年3月1日が、参照されてもよい。
【0073】
図2Aにおいて、圧電アクチュエータ5.1は、二つの電極51,52の間に挟まれた圧電材料53からなる少なくとも一つの層を備える第1の部分50を有している。この第1の部分50は、受動部54を越えるようになっており、受動層はニッケルからなる層状のグラスファイバーを備える複合材の二重層であってもよい。当該受動層54は膜2の上に位置しており、かつ膜2と第1の部分50との間に挿入されている。電極51,52は、作動時にエネルギーが供給されるように意図されている。続いて、ビームの屈曲が行われ、それは膜2を変位させる。屈曲は、一方向または使用される圧電材料のタイプに応じて他の方向になされる。
【0074】
図2Bにおいて、アクチュエータ.1は、熱バイモルフ作用アクチュエータ(thermal bimorph effect actuator)である。その原理を次に示す:非常に差のある熱膨張率を有する二つの材料のスタックを使用する。バイモルフスタックからなる二つの構成要素が加熱手段5.5を挟んでいる。作動時に加熱手段に電流を流すことによって、ジュール効果(スタックの構成要素の一方が他方よりも膨張するという作用を有する)により加熱が行われる。最も膨張する構成要素は、加熱手段に関して膜2に対向しており、かつ最も膨張が小さい構成要素は、膜2の側方に配置される。記載する非限定的な例においては、バイモルフスタックの構成要素のうちの一つが膜2であるため、アクチュエータ5.1は膜2に組み込まれている。それはシリコン酸化膜であってもよい。スタックの他の構成要素(参照番号5.6)は、例えばアルミニウムから形成されてもよい。次に、作動手段のさまざまな実施形態について説明する。そうしたマイクロビームタイプのアクチュエータは、明らかに、従来のものに比べてその厚さがほとんど嵩張らないものであり、かつこれらは、支持体内のコイルの調整を行う必要があるため、磁性を帯びたものである。
【0075】
ここで膜2について説明する。図1において、膜2は円形状で示されているが、他の実施形態では楕円形、長方形、または四辺形あるいは他の形状であってもよい。図4A、4Bを参照されたい。
【0076】
膜2は、図2Aのように単層あるいは重層のものであってもよいが、膜の少なくとも一つの層がその表面全体にわたって延在している。並んで配置された複数の部分が従来におけるパッチワークの様式で組み込まれていないため、漏出の可能性が低減される。図2Aにおいて、膜2の単層が膜の表面全体を占めている。
【0077】
膜2は、図2Aのように一様であってもよく、ここで「一様」とは、その表面全体にわたっていずれも一定でありかつ同じ物理的特性を有することを意味するよう用いられている。
【0078】
膜2が不均一でありかつ膜2の押圧部200が補強領域2.2(補強領域2.2は中央領域2.1に囲まれている)に含まれているリキッド4の変位に関連して、作動手段5の効率が向上されることは有利である。補強領域2.2は、中央領域2.1の剛性および係留領域2.3の剛性に比べてより大きな剛性を有することを意味している。補強領域2.2は、図4A、4B、4Cに示されるように中央領域2.1を取り囲むように延在している。図4Aでは押圧部200のみが見えるようになっている。
【0079】
補強領域2.2は、単一部分から形成されていてもよい。それは中央領域2.1を取り囲んでいる。それは、図4Aのように中央領域2.1の周囲に実質的に冠形状の形成することができる。代替例において、補強領域2.2は、複数の補強部2.2aにさらに細分化されてもよい。いくつかの補強部2.2aが設けられる場合、その形状は後述するように変形可能である。それらは、中央領域の周囲に延在する実質的に矩形状連続部を形成しても、あるいは、そのそれぞれが、光学収差を避けるために中央領域を取り囲んでもよい。各押圧部200は、補強領域2.2が単一部分に存在する場合に、またはそれがさらに分割された補強部2.2aの各々に存在する場合に、補強領域2.2の表面積より小さな表面積を有している。
【0080】
図3.1ないし3.15を参照すると、膜2が不均質な場合の、膜2に適したさまざまな形態が示されている。これらの形態において、膜2の少なくとも一つの連続層2.12がその表面全体を占めていることが重要である。
【0081】
膜2のさまざまな部分の正確な寸法を求めるには、二つのパラメータを知る必要がある。それらは目標とする用途に依存する。それらは中央領域2.1の表面積である(それが、レンズまたはミラーに望ましい光学フィールド、および焦点距離に関して必要な変化を実現するために必要な中央領域2.1の最大たわみ(maximum deflection)に対応するためである)。
【0082】
中央領域2.1は、(図3.1、3.2、3.4〜3.6、3.10〜3.12に示すように)単層、あるいは(図3.3、3.7〜3.9、3.13、3.14、3.15に示すように)重層のものであってもよい。単層である場合、この層2.11は、その表面全体にわたって連続するものであり、重層である場合には、その層2.11または2.12の少なくとも一つがその表面全体にわたって連続しかつ延在している。図3.3、3.7〜3.9、3.13、3.14の例において、重層中央領域2.1は、二つの重ね合わせられた層2.12および2.11を備えており、かつこれらの二つの層2.12および2.11は、膜の表面全体にわたって延在している。これは限定的なものではなく、そのうちの一つが連続性を確実なものとするのに十分であればよい。図3.15において、中央領域2.1は二層であり、かつ層2.12の一つのみが表面全他にわたって連続しており、参照番号2.13の外側層が中央領域で終端をなしている。
【0083】
複層中央領域2.1は、製造方法の要求に適うように、もしくはリキッドレンズまたはミラーが特定のパフォーマンスを達成するように選択される。したがって、中央領域2.1は、単層であるか、または複層であるかに応じて、一つの材料または複数の材料から構成されてもよい。中央領域2.1の弾性限度は、弾性領域における変形を、ひいては変形の可逆性(つまり、一度、作動手段が中断されると、初期位置へ復帰すること)を確実なものとするのに十分なものである。数多くの材料が、(例えば可視性における)透過率の光学特性および必要とされる弾力性の両方を有している。一例として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの有機材料が挙げられるが、そのヤング率が数100MPaから数ギガパスカルである、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、パリレン、エポキシ樹脂なども挙げられる。あるいは、そのヤング率が数百GPaである、シリコン酸化物、シリコン窒化物などの無機材料が挙げられる。
【0084】
中央領域2.1は、図3.1、3.3ないし3.14に示されるように、無機材料または有機材料に関して約数マイクロメートルの一定の厚さを有していてもよく、反対に、図3.2に示すように一様でない厚さを有するものでもよい。一定でない厚さの断面は、膜側において、リキッドレンズの視度(dioptre)を調節可能なように選択することができる。
【0085】
補強領域2.2は、作動手段5によってもたらされる圧力がリキッド4上へ伝わり、それによってリキッド4の所望の変位が生じるように十分に剛性のあるものでなければならない。補強領域2.2は、中央領域2.1による層2.12を備えるが、中央領域2.1に存在するようになっている当該層2.12は、十分に剛性のあるものではない。中央領域2.1における当該層または層2.11の剛性を高めるために、少なくとも一つの付加的な層2.20が、これらの層に付加されてもよく、その層は、中央領域2.1における層2.12,2.11の材料のヤング率より高いヤング率を有する材料からなるものであり、それは、透過度の光学特性がもはや必要とされず、補強領域2.2が、光学フィールドから離れるので放射光線(radiation)の透過を必要としないため、より広い選択肢が存在する。あるいは、接着特性が、付加的な層2.20の選択の必要条件となる。この代替形態は、図3.1〜3.4、3.7〜3.9、3.11、3.12および3.14に示されている。付加的な層2.20は、補強領域2.2の一方の面、あるいは他方の面に、つまり、リキッド4の側または他方の側のいずれに配置されていてもよい。付加的な層は、図3.12および3.14ではリキッド4の側に配置されており、3.1〜3.3、3.7〜3.9、3.11および3.15では、その反対側に配置されている。付加的な層2.20の材料および厚さは、実験的でありかつ反復性のある様式で選択される。
【0086】
以下に、付加的な層2.20のためのいくつかの材料を挙げる。それは、その厚さが数マイクロメートルのオーダーのものでありかつ数十GPaから数百GPaのヤング率を有する、チタニウム、チタン窒化物、アルミニウムなどの金属材料であってもよい。それは、その厚さが数マイクロメートルのオーダーのものでありかつ数十GPaから数百GPaのヤング率を有する、シリコン酸化物、シリコン窒化物、などの材料であってもよい。最後にそれは、その厚さが数十マイクロメートルのオーダーのものでありかつ数GPaのヤング率を有する、感光性ポリマーなどの有機材料、特に、ヘンゾシクロブテン(BCB)であってもよい。
【0087】
作動手段5が、バイモルフスタックから形成される熱作動手段でありかつ膜2がバイモルフからなる構成体である場合、その構成体は、膜の表面全体にわたって延在する層、または付加的な層であってもよい。
【0088】
代替的なまたは組み合わせにおいて、補強領域2.2に要求される剛性を得るために、中央領域2.1における層2.12を厚くすることができる。図3.5、3.6、3.10、3.1、3.12、3.13、3.14、3.15には、厚くなされたものが示されている。中央領域2.1による複数の層2.11,2.12が設けられる場合、それらの層の一つ以上の層を厚くすることができる。層2.11が厚手になされたものが、図3.14に示される。これは、さらなる層の付加に比べると効率性が低減されるが、ある特定の用途においては十分なものとなる。この場合においては、作動手段5の構想は、第2の周縁領域2.2における中央領域2.1における層2.12の厚さへの影響を有しており、かつこの厚さは、中央領域2.1における層2.12の厚さと比べて2倍になる。
【0089】
係留領域2.3は、中央領域2.1が単一材料から形成される場合においては、中央領域2.1と同じ材料から形成されてもよい。この代替形態が図3.1、3.2、3.4、3.5、3.6に示される。
【0090】
中央領域2.1が複層でありかつさまざまな材料から形成される場合、係留領域2.3は、図3.3のように中央領域2.1のすべての材料から形成することができるか、もしくは、図3.7に示されるようにそれらのうちの一つまたは複数に限定されてもよい。
【0091】
係留領域2.3の厚さは、中央領域2.1の厚さと同じである、つまり、無機材料に関しては数マイクロメートルのオーダーの、天然材料に関しては数十マイクロメートルもしくはそれ以上のオーダーのものであることが好ましい。係留領域2.3の厚さが、同じオーダーの範囲内にあるときに、中央領域2.1の厚さと異なっていてもよいことは明らかである。図3.2および3.8を参照されたい。フレーム1における係留領域2.3の接着を最適化するために、固定する前に、フレームに事前の処置を行うことができる。例えば、酸素を用いるプラズマを使用して表面処理を行うこと、あるいは接着プライマ材料の層の堆積を実施することができる。
【0092】
中央領域2.1の機械的振る舞いは補強領域2.2の表面および作動手段5の力に左右される。中央領域2.1の寸法決めは、後述する研究「The(アクサンテギュ)orie des plaques et des coques(プレートとシェルの原理)」S. Timoshenko著、Librairie Polytechnique編集、Ch Be(アクサンテギュ)ranger、1951年に基づいて行われる。
【0093】
この研究において、不均等に負荷がかけられた円形プレートに関していくつかの近似する公式が示されている。中央領域2.1およびその厚さに関する要求された最大たわみωの関数として、さまざまなモデルがこの研究には開示されており、補強領域2.2の寸法を正確に決めることができる。
【0094】
ここで、図5Aないし5Eを参照して、補強領域2.2に関するさまざまな適用可能な構成について説明する。補強領域2.2は、すべての場合において、光学フィールドに侵入せずに、光学フィールド2.1の手前で終端をなしている。それは、係留領域2.3まで延在していてもよいが、係留領域2.3においてはリキッドが存在せずかつ膜が変位できないため、いずれにしても、係留領域2.3には侵入していない。一方で、作動手段5は、さらに係留領域2.3に沿って膜2と接触している。この態様は以下で説明する。
【0095】
図5Aないし5Eにおいて、作動手段と同様に押圧部も示されていない。図5Aないし5Cにおいて、補強領域2.2は単一部分に存在しており、それは、光学フィールド2.1を取り囲む冠形状をしている。補強領域2.2分割された場合に適切となるものについては後述する。図5Bに示すように、補強領域2.2は光学フィールド2.1の終端から始まることも可能である。光学フィールド2.1の端部は点線によって示されている。
【0096】
図5Aおよび図5Cに示すように、光学フィールド2.1と補強領域2.2との間に中間ガード領域2.4を配置することができることは明らかである。これによって、光学フィールド2.1の光学パフォーマンスの低下を避けることができる。
【0097】
中間ガード領域2.5は、図5Aに示されるように、補強領域2.2と係留領域2.3との間に介在している。それはリキッドの上に配置されるが、図5Aないし図5Cではリキッドは認識できない。補強領域2.2は、図5Bおよび図5Cに示すように、係留領域2.3に侵入することなく、係留領域2.3まで到達していてもよい。むしろ、中間ガード領域はそこには存在しない。さらに、中間ガード領域2.4,2.5は、図3のいくつかに示されている。それらは、(必要ならば薄くなされた)少なくとも連続層2.11および/または2.12を備えている。中央領域2.1と補強領域との間に位置する中間ガード領域2.5は、強化領域2.6とは異なるものであってもよい。
【0098】
図4B、4Cには、四辺形または長円形の膜構造体を示すが、この場合、楕円形形状となっている。これらの二つの構造体において、光学フィールド2.1は円形状となっている。補強領域2.2は、円形によってその内側が規定されており、かつ四辺形または楕円形のそれぞれによってその外側が規定されている。
【0099】
図5Dにおいて、膜2は円形であり、単一補強領域2.2は、光学フィールド2.1へ向かって突出する放射状指状部を備える冠形状を呈している。これらの指状部は、冠部分を形成するが、他の形状も可能であり、上記形状に限定されない。ガード領域2.5が、押圧部2.2と係留領域2.3との間に設けられている。マイクロビームタイプのアクチュエータは、放射状指状部のそれぞれに配置可能である。図5においてはそれらは図示されていない。
【0100】
図5Eにおいて、膜2は円形であり、補強領域2.2は一つであり、それは光学フィールド2.1の側に冠形状を呈しており、かつ冠形状は係留領域2.3の方へ突出する放射状指状部を備えている。指状部はストリップ形状を有しているが、他の形状も可能である。補強領域2.2の冠形状と、放射状指状部同士の間の係留領域2.3との間に、中間分割ガード領域2.5が設けられている。マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は概略的に示されており、これらは、放射状指状部を覆っているが、冠形状に侵入せずかつ支持体1.5における放射状指状部を越えては延在していない。放射状指状部において、結果的に、ハッチングが重なっている部分が見られる。押圧部分は、放射状指状部に対応するが、冠形状ではない。
【0101】
ここまで図5において単一部分の状態の補強領域2.2を備える構造のみを説明してきた。ここで、補強領域2.2が複数の補強部2.2aに分割されている膜2の構造について説明する。少なくとも一つのアクチュエータ5.1が、補強部2.2aのそれぞれと協働する。マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は図6Aのみに概略的に示されている。
【0102】
図6Aにおいて、補強部2.2aは冠部分であるが、これは非限定的なものであり、冠は円形状となっている。図6Aにおいては8つの補強部が、図6Bにおいては24の補強部が示されている。補強部2.2aはさまざまな数にできることが明らかである。図6Cにおいて、補強部2.2aは、三日月形状の部分であるが、その外側縁部は、膜2の縁部と同心円の部分となっている。四つの実質的に同一の補強部2.2aが設けられている。補強部が同一のものでなくてもよいことに留意されたい。図6Dにおいて、補強部2.2aは、同心の冠形状のものである。二つの補強部2.2aが設けられている。補強部2.2aの少なくとも一つに、図5D、5Eと同様の様式で放射状指状部が設けられてもよいことに留意されたい。この代替例は、不必要な指状部の数を増やさないために、図示されていない。図6C、6Dにおいて、係留領域2.3と補強領域2.2との間に中間ガード領域2.5が設けられている。
【0103】
図6Eにおいて、補強領域2.2aは角ばった部分であり、この部分は、光学フィールド2.1(この例においては円形状)によってその内側が規定されており、かつ係留領域2.3を受容する支持体1.5(この例においては四角形状)の縁部によってその外側が規定されている。角ばった部分は、頂点において実質的に同じ角度を有しているが、これに限定されない。
【0104】
図6Fでは、同じ視覚性に関して、補強領域2.2aは角ばった部分であり、この部分は、光学フィールドに対応する円形状によってその内側が規定されており、かつ係留領域2.3を受容する支持体1.5の縁部に対応する四角形状によってその外側が規定されている。これらの二つの例において、異なる補強部2.2aはまったく同じものではない。
【0105】
図6Gにおいて、補強部2.2aは、係留領域2.3のすぐ手前で終端をなす放射状帯片である。この補強部2.2aは実質的に多角形状のものである。
【0106】
図6Hにおいて、補強部2.2aは、放射状指状部を備え冠形状の部分である。この構成は、補強領域が分離されていることを除いて、図5Eのものに類似している。この例において、放射状指状部は係留領域2.3の方へ突出しているが、それは光学フィールド2.1へ向かって突出することも可能である。この代替形態は、不必要に指状部の数を増加させないために図示されない。
【0107】
複数の隣接する補強部2.2aのが設けられかつ複数の補強部2.2aが光学フィールド2.1の周囲に断続的な冠形状を形成する場合、光学フィールド2.1よりも高い合成を有する強化領域2.6が、補強領域2.2と光学フィールド2.1との間にも受けられることが好ましい。強化領域2.6は連続しかつ光学フィールド2.1を取り囲むものである。作動手段(図示せず)は、それを強化領域2.6を直接的に押圧しない。強化領域2.6の機能は、作動手段の作動時の光学フィールド2.1における膜2の変形を均一にすることである。強化領域2.6は、z軸の周囲の作動手段の作動により引き起こされる、たわみの周期的変化による不変性(invariance by rotation the deflection)を呈するものであり、それは軸対称である。図6Iを参照されたい。補強部2.2aは実質的に円形である。
【0108】
図7Aから7Eには、作動手段5のためのさまざまな構成が示されている。
【0109】
作動時に、各マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、少なくとも押圧部200において膜2と接触するようになる。しかしながら、それは、係留領域2.3における膜の全体または一部分と接触することもできる。それは、係留領域2.3における膜によってまたは支持体に固定された部分によって、支持体1.5と直接的にあるいは間接的に結合されている。
【0110】
静止状態において、アクチュエータ5.1は、押圧部200におけるあるいは係留領域2.3における膜2と接触しないものであってもよい。
【0111】
代替形態において、静止状態にあるときに、アクチュエータ5.1は、押圧部220と接触してもよく、さらに押圧部200に結合されていてもよい。同様に、アクチュエータ5.1は、係留領域2.3の全体またはその一部と接触してもよく、さらに係留領域2.3に結合されていてもよい。
【0112】
図7Aにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、静止状態において、押圧部200における膜2と接触しているが、係留領域2.3における膜2とは接触していない。この図は、支持体1.5との直接的なまたは間接的な接触状態を示すものではない。図7Bにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、静止状態において、係留領域2.3の、押圧部200における膜と接触しており、かつ支持体1.5に結合されている。図7Cにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、静止状態において、押圧部200および係留領域2.3における膜と接触している。
【0113】
図7Dにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、静止状態において、膜2とは接触していない。マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1を、係留領域2.3の上に設けかつ支持体1.5に結合することも考えられるが、これは、この図には示されていない。
【0114】
図7Eにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、静止状態において、押圧部200および係留領域2.3に接触していないが、支持体1.5には直接的に結合されている。図7Fにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、静止状態で、押圧部分200および係留領域2.3と接触していない。その支持体1.5への固定法は示されていない。
【0115】
図7Gにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、静止状態において、押圧部200および係留領域2.3と接触しているが、押圧部200と係留領域2.3との間の膜2とは接触していない。7A、7B、7Cのように接触している他の図においては、押圧部200は係留領域2.3と並置されている。そのようになされていない図7Gにおいて、押圧部200と係留領域2.3とは、分離されている。図7において、補強領域は示されていない。補強領域は分割されるかまたはされない状態で設けることができる。
【0116】
膜2は、作動手段5が図7Aから7Gに示されるように静止状態にあるときは、平坦となっている。皿3は、リキッド4を収容するために必要である。これは、無限半径の曲率と対応する。作動手段5が静止状態のときに、膜2が一方向または他の方向に隆起可能であることは明らかである。その際、それは無限半径の曲率を有し、したがってより小さなものとなる。図7HおよびIには、ドーム状(凸状)の膜4と皿状(凹状)の膜2とのそれぞれを備える構成を示す。図7H、7Iにおいては、膜は反射しており、かつ光学デバイスがミラーであるように示されている。少なくとも中央領域2.1における、膜2の少なくとも前面において、反射コーティングRRが設けられており、それは例えば薄手のアルミニウムからなるものでもよい。
【0117】
図5Aないし5Iに示される例は、膜2の前面(つまり、それはリキッド4と接触するよう対向する)と協働する作動手段5を示すものである。作動手段5が、膜2のリキッド4と接触する面において、膜2と協働可能であることも明らかである。
【0118】
図7Jにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、膜2と接触しているが、リキッド4とも接触していてもよい。それは、膜2の裏面においてなされる。
【0119】
それが静止状態から作動状態になされたときに、アクチュエータ5.1は、押圧部200が皿3の底部3.1に近接するように、または光学フィールドにおけるリキッド4の厚さがおおむね低減されるように、膜2を引く必要がある。図7Jにおいて、膜2は均一であり、それは光学フィールド2.1押圧部200の間において同様の厚さおよび同様の剛性を有している。
【0120】
図7Kにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、膜2に結合されておりかつ膜2内に組み込まれている。さらにこれはリキッド4と接触している。アクチュエータ5.1によって押圧される押圧部200における膜2の厚さは、光学フィールド2.1における厚さよりも小さい。アクチュエータ5.1の厚さを兼ね備える押圧部200の厚さは、実質的に、光学フィールド2.1の厚さとなっている。図7Kにおいて、アクチュエータ5.1は、支持体1.5とも接触しており、膜2はアクチュエータ5.1上に配置されかつ支持体1.5と接触している。
【0121】
皿3は上述したように必要なものではない。リキッド4は、実質的に平坦な支持体1.5上に配置されかつ膜2はそれを含むことができる。欧州特許出願公開第1 672 394号明細書には、そうしたリキッド含有膜構造体が開示されている。この代替例は、図7Lから7Mに示されており、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は膜2に結合されており、それは膜2の前面にあるいはその裏面に配置されている。こうした構造において、膜2は、作動手段5.1が静止状態のときには膨らんでいる。膜2は、リキッド4の液滴の上に直接的にパリレンなどの天然フィルムの堆積によってあるいは犠牲層を使用する方法によって形成されてもよい。支持体1.5は、必要であれば、その領域に応じて親水性または疎水性を有するように局所的に処理されてもよい。
【0122】
図7Nにおいて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、膜2に埋め込まれており、それは、膜2の二つの副次的層20.1,20.2の間にサンドイッチされている。それは膜2に組み込まれたものである。
【0123】
図8を参照すると、膜2の補強部分2.2aに対してマイクロビームタイプのアクチュエータによってもたらされた歪み(strain)が図示されている。アクチュエータは図示されていないが、押圧部200は図示されており、押圧部200の配置される面は補強部2.2aが配置される面よりも小さい。歪みは、好ましくは、z軸に沿って方向付けられた力となることが好ましい。明らかなことに、補強領域が単一部分であるとき、押圧部分は補強領域の面積よりも小さな面積を有するようになる。いくつかの押圧部が補強領域と協働する。いくつかの押圧部200が補強部と協働することも考えられる。
【0124】
焦点距離または光学デバイスの曲率に関連する変更が光学フィールドの変位に直接的に影響されるため、膜2の寸法決めは、光学フィールド2.1におけるその振る舞いによって導かれる。膜2の、特に膜2の表面全体を占める層の材料は、その弾性限度が弾性領域において機能しかつ変形の可逆性を有することを確実なものにするのに十分なように選択される。アクチュエータ5の作動によって膜2が一度変形された後、アクチュエータ5が静止ポジションに戻る場合に、膜2はその初期ポジションに戻るものでなければならない。数多くの有機または無機材料が膜2の構成に使用可能である。それらは、リキッド4を含有するための密封を、特に係留領域において、確実なものとすることができなければならない。その用途および構造に応じて、それらは、透過状態で機能する場合に使用される波長に関して透明なものである必要があるか、または、反射状態で機能する場合には反射するものである必要がある。それらは、誘導体であるか、それに対して後述するように導電性のものであってもよい。
【0125】
有機材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、パリレン、エポキシ樹脂などから選択されるものであってもよく、そのヤング率が数100MPaから数ギガパスカルである。無機材料は、シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物、多結晶シリコン、チタニウム窒化物、ダイアモンドカーボンなどから選択されるものであってもよい。導体材料は、インジウム、可視状態において透過性を有する酸化スズITO、またはその一部が反射性を有するようになっているアルミニウムなどから選択されてもよい。本発明の光学デバイスの構造については後述するが、このものにおいて、膜は、電気的な誘導性を有するものであり、かつ透過性または反射性のいずれかを有するものである。
【0126】
本発明の光学デバイスの正確な作動に関して、その光学パフォーマンスがその配向性(orientation)が独立的に確実なものとされることが望ましい。
【0127】
このようにするために、光学フィールド2.1における膜2のリキッド4の重量によって(その重さが原因となって)引き起こされる押圧が、その光学パフォーマンスを低下させる変形も生じないようにすることが必要である。
【0128】
膜2の断面形状は、光学フィールドのジオプトリー(視度)の形状に大きな影響を有する。平らな断面形状、つまり膜2の表面全体にわたって実質的に一定の厚さを有する形状において、ジオプトリーの形状は、文献「The(アクサンテギュ)orie des plaques et des coques」S. Timoshenko著、Librairie Polytechnique編集、Ch Be(アクサンテギュ)ranger、1951年に基づいて適切になされる。これから以下の式が得られる。
【0129】
【数1】

【0130】
ここで、ω(r)は、膜2の中央(それはレンズの光学的中心と同様である)から距離rに応じた膜の変形度(または変形)を示し、aがその半径を示し、かつωがその中央における最大たわみを示す。その近似値は、膜がその周縁において係留されかつ一定の圧力を受けるように考慮ために算出される。変形に関連して、ジオプトリーの実際の形状は、例えばANSYSなどの機械的シミュレーションソフトウェアを用いてより正確に決定されることを必要とする。実際の変形は、たいがい近似的変形と球状的変形との間に位置するようになる。膜の厚さおよび作動手段によって与えられる歪みの性質を変形することによって、上記変形を変化させ、それによって、それがミラーである場合にジオプトリーの形状、焦点距離またはカーブを変化させることができる。
【0131】
膜の機械的挙動は、特に、補強部2.2aが存在する場合、補強部2.2aの表面に影響される。光学フィールド2.1における膜2の剛性(つまり、パラメータe、ν、およびh)は、補強領域2.2の表面と作動手段5の力とが保持された状態で、発展するように構成される。実際に、リキッド4に接触する膜の全表面により増加される光学フィールド2.1におけるリキッド4によって生じる圧力は、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1によって増大される力に対して、非圧縮状態のリキッドを考慮することで第1の近似値と等しくなる。
【0132】
したがって、光学フィールドにおける膜の機械的挙動は、膜の最大たわみ、作動手段5によってもたらされる力、その運動および補強領域2.2の表面積に左右される。数回の反復が、上記大きさの光学フィールドの機械的挙動を適合させるために、必要とされてもよい。
【0133】
価値のある妥協点(compromise)に到達するように、まず、光学フィールドの焦点距離および形状に関する望ましい変化、膜および作動手段を形成する方法、膜の厚さに応じて、膜に関して一つ以上の材料を選択する必要があり、さまざまな厚さが検討されてもよい。したがって、光学フィールドにおける最大圧力を求める必要がある。補強領域の表面は、すべてのサイズ(低減されることが目的とされている)を考慮して、保持される動作の技術と対応可能な焦点距離に関する所望の変化を得るために作動に必要なひずみと運動とを比較することによって、補強領域が連続しかつ光学フィールドの周囲で均一となる、最も有利な事例をとるように最適化される。最後まで到達したとき、反復は膜のための材料を偏向することによって再度始められる。
【0134】
材料のための候補がいくつかあるため、膜の厚さは著しく変更でき、所望の最大圧力は、好適に選ばれた様式で調整されてもよい。
【0135】
補強部がいくつか設けられる場合、補強部のいくつかは、本発明の課題に関する、光学デバイスの構成のための重要なパラメータとなる。これらの補強部のそれぞれが、少なくともひとつのマイクロビームタイプのアクチュエータによって制御される。
【0136】
複数の補強部2.2aが設けられる場合、二つのパラメータ、すなわち、中央領域2.1の周囲に連続するものである二つの連続した補強部2.2aを分離する距離dと、補強部2.2aと支持体1.5に対する係留領域2.3との間の距離dancrとを考慮に入れる必要がある。距離dおよびdancrは、図9A、9Bに示す。
【0137】
これらの距離dおよびdancrはあまり大きくないか、または膜の非常に弾性を有する部分には適用されないことを目標としており、それは、こうした部分が隣接する補強部2.2aにおける作動手段5によって生じる圧力に耐える必要があるからである。これらの部分は、隣接する補強部2.2aの変位を妨げないように、あまり剛性があるものでなくともよい。それは、補強部2.2aにできるかぎり近接する様式で動くものであることを目標とする。
【0138】
本発明のそうした光学デバイスは、マイクロエレクトロクスおよびマイクロシステムに使用される技術を用いて製造されてもよい。膜および作動手段技術は、化学蒸着(CVD)によって、熱酸化によって、電気蒸着によって、平行成長(epitaxy)によって、物理蒸着によって、あるいは蒸着によって薄手のフィルムを堆積することで使用可能となる。フィルムの積層の技術は、有機または溶液ゲル材料に関して、スピンコーター堆積モールディング、ホットエンボス、ナノプリンティング、直接結合による二つの基部の結合、共晶結合、陽極結合、天然結合が使用されてもよい。
【0139】
本発明の可変焦点距離を備える光学デバイスを形成するための方法の一例を以下に説明する。犠牲層が使用される。図10Aないし10Eを参照されたい。
【0140】
まず、基部100がもたらされ、このものにおいて、皿3がエッチングされる。基部100は、例えば、ガラスから形成されてもよい。犠牲材料101が皿3に堆積される(図10B)。犠牲材料101は、例えば感光性樹脂などの天然材料であるか、またはシリコン酸化物などの無機材料であってもよい。
【0141】
膜2が犠牲材料101の上に形成され、それによって、膜2は、皿3の縁部にわたって飛び出た状態となりかつそこに係留される(図10C)。上で挙げた材料から選択された材料が、膜のために堆積されてもよい。堆積は、スピンコーターまたは化学蒸着によって実施されてもよい。続いて、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1が、そのそれぞれが膜2の押圧部200の上に配置されるように、形成される。また、アクチュエータは、リキッドによって湿ってはいけない領域において基部100と直接的にまたは間接的に接触している(図10C)。膜2は、次に、犠牲材料101を取り除くことによって、解放された状態となる。このために、光学フィールドの外側に、少なくとも一つの孔107が、犠牲材料101に到達するよう基部100に穿孔されていてもよい。孔107は、貫通されたものでありかつ皿3へと開口されている(図10D)。犠牲材料101の除去は、化学的または熱的に、あるいは酸素プラズマによってなされる。続いて、皿3は、リキッド4によって満たされる(図10E)。この充填は、リキッド4の浸透がもたらされるように、かつバブルの形成を避けるために、皿3を真空状態にすることによって実施できる。最後に、孔107は、リキッド4が漏出しないように、孔詰めされる(図10E)。有機材料が使用されてもよい。これらのステップの順序は限定的なものではない。
【0142】
マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、膜2が解放された後に、例えば充填の前または後に、形成することもできる。さらに、リキッド4の側方にアクチュエータ5.1が配置される場合には、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、膜2の形成前に犠牲材料101および基部100の上に形成可能である。そうした構成において、膜2は完全にまたは部分的にマイクロビームタイプのアクチュエータ5.1の上に配置される。
【0143】
図10において、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、基部100と接触した状態で示されているが、これに限定されず、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1は、膜2から離れて固定できず、かつ係留領域2.3に制限されない。
【0144】
膜2が静止状態において凸状にまたは凹状に膨らんでおり、犠牲材料101が膜2のためのモールドそして機能するため、適切な曲率が犠牲材料101に与えられることが好ましい。膜2の膨らみを得るための他の解決策として、膜2が解放された後に膜2をゆがませることが挙げられる。ゆがませることには熱を用いることができる。続いて、パラメータを決定することは、膜と基部との間の熱膨張率、ならびに膜の堆積温度における差異に関連する。
【0145】
膜2を保護するために、本発明の光学デバイスは、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1を支持する第1の支持体110と、膜2とリキッド4とを支持する第2の支持体100の二つの支持体の組み合わせから形成することができる。第1の支持体110は、本発明の光学デバイスの機械的な保護部材として機能する。接着剤のジョイントJが二つの支持体100,110の組み立てに使用される。第1の支持体110は、その中央部分において中空となっており、中空部分115は、一度支持体100,110が組み立てられると、膜2の光学フィールド2.1に対して少なくとも対応するようになっている。図11を参照されたい。押圧部200において、マイクロビームタイプのアクチュエータは、静止状態で、膜と接触しているか、または接触していなくてもよい。アクチュエータは、第1の支持体に結合されていてもよく、かつ必要であれば第2の支持体に結合されていてもよい。そうした構成において、膜を製造するための方法は、作動手段を製造するためのもから分離されており、それは、全体的に、すべての工程を簡略化させることができる。この方法によって、より良い製造歩留りが考えられる。
【0146】
ここで、本発明の光学デバイスの可変焦点距離に関する膜の形状に関連する有利な構成について説明する。リキッド4は、平坦な底部上に配置された状態で示されている。図9Aを再度参照されたい。膜は円形であり、その光学フィールド2.1は円形であり、かつ補強領域2.2および係留領域2.3は同心円の冠形状である。
【0147】
不均等に荷重がかけられる円形プレートモデル(その周縁に係留されかつプレートの厚さに関して考えられるたわみに影響する)は、膜の特性を計算するのに使用され、このモデルは、上記S. Timoshenkoの研究おいて示される。
【0148】
光学フィールドの最大たわみωは、以下の式によって与えられる。
【0149】
【数2】

【0150】
ここで、Pは光学フィールドに生じる圧力を、aは光学フィールドの半径を、Eは光学フィールドにおける膜を構成する材料のヤング率を、νは光学フィールドにおける膜を構成する材料のポワソン比を、hは光学フィールドにおける膜の厚さである。中央領域2.1のたわみωを得るには、所望の焦点距離の変更を実施することが必要であり、中央領域2.1にけるリキッド4によって生じる最大圧力Pはこれから推論される。
【0151】
反復様式において、中央領域2.1を構成する材料を変更することによって、リキッドレンズまたはミラーの正確な作動のために要求される最大圧力Pが変更できる。上述したように中央領域2.1に関して適用可能な材料が複数あり、かつ中央領域2.1の厚さが著しい様式で変更可能であるため、所望の最大圧力Pは好適な様式で調整されてもよく、それによって、それは、補強領域2.2の表面積および作動手段の力Pを保持するようになる。中央領域2.1における膜の機械的挙動は、膜の最大たわみ、作動手段によって生じる力、その動き、および補強領域の表面積に影響される。
【0152】
光学フィールド2.1は、2.5mmの直径を有していてもよく、光学フィールド2.1と補強領域2.2の間にはガード領域が設けられないが、光学フィールド2.1と係留領域2.3との間には中間ガード領域2.5が設けられる。係留領域2.3の幅は、200マイクロメートルに等しい。補強領域2.2は、1.25mmの内径R’と1.35から2.05mmの外径Rを有している。膜はパリレンから形成され、その厚さは1マイクロメートルでありかつ光学フィールドの中央領域における所望の最大たわみは、20マイクロメートルとなるように示されている。z軸に沿って作動手段によって生じるすべての力は、0.2から0.4mNの間で変化する。この力に基づいて、マイクロビームタイプのアクチュエータに供給されるエネルギーを決定することは当業者には困難ではない。
【0153】
補強領域2.2の移動は、8.3mmの表面積に関して3マイクロメートルから、0.8mmの表面積に関して7マイクロメートルの間で変化する。中間ガード領域2.5の幅dancrは例えば0.2mmまで及ぶ。
【0154】
近似値のすべてをとることによってかつ寸法決めを改良することによって、あるいは実験的に機械的かつ光学的なシミュレーションにおいて、その力および運動が低減され、それが作動手段の寸法決めをより簡単にし、かつよりコンパクトな光学デバイスを提供すると考えられる。
【0155】
他の数値的な例を説明する。図9Bを参照されたい。図9Aとの唯一の違いは、補強部2.2aに分割された補強領域2.2が設けられていることであり、それは、実際に、中央領域2.1の周囲に配置された8つの円形冠形状の部分である。円形冠形状のさまざまな部分は、数十から数百マイクロメートルの距離dによって分離されている。補強領域2.2の表面積は以下のように表現される。
【0156】
【数3】

【0157】
距離dは、焦点距離における変化の正確な作動を妨げてはならない。
【0158】
妥協点が複数の補強部2.2aとその表面積との、したがって複数の補強部2.2aとマイクロビームタイプのアクチュエータとの間になされる必要がある。複数の補強部2.2aの選択は、実質的に同一の様式において補強部2.2aのそれぞれを作動するための作動手段のキャパシティならびに作動手段によってもたらされる歪みの特性にも影響される。
【0159】
光学収差が本発明の光学デバイスとともに現れるようになってもよい。それらは、変形した膜2と係留状態の支持体1.5との間の平行度の不足に関連する。これらは、特に、本発明の光学デバイスが図11に関して説明したように組み合わせられた二つの基部から形成される場合に見られる。これらは最大たわみωを生じ、そして最大たわみωは光学フィールド2.1の中央には存在しない。光学デバイスの光学軸は、光学フィールド2.1の中央を通る。イメージの質が低下する。
【0160】
そうした従来のリキッドレンズにおける事象を制限するために、支持体に対する膜の組立を最適化することを目的とし、この組み立ては、静止状態で所望の平行度が得られるようする密封技術に基づくものである。しかしながら、レンズが作動しているとき、作動手段5を作動させるために使用される電圧V0の供給によって、その焦点距離が変化する。作動手段5によって生じる変位がリキッドレンズの周縁全体にわたって均一でない場合、上記事象が現れ、かつイメージの質が低下する。皿3の底部と膜2の押圧部200との間の空間dは、膜の周縁全体にわたって一定ではない。これは、作動手段5の指示(コマンド)中に何もない場合、変則的に、本発明の光学デバイスにおいても生じうる。実際に、異なるマイクロビームタイプのアクチュエータ5.1が同じ電圧V0を正確に供給しないこともある。特定のアクチュエータ5の方向にドリフトが生じことがある。リキッド4の圧力は、膜の周縁全体にわたっては完全に均一ではないこともあり、これは、デバイスがわずかに一方に傾いて使用されている場合に起こり得る。この動作において、上記事象は制御を困難にし、そしてこのタイプの光学デバイスは非常に不利となる。こうした作用を解消するために、作動手段5のコマンドの制御の提供を可能にする。
【0161】
図12を参照されたい。光学デバイスの焦点距離の変更は、マイクロビームの機械的な変形を生じるのに役立つ供給電圧V0の付加によって、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1が作動されたときに、マイクロビームタイプのアクチュエータ5.1の作動によって常に実現される。加えて、作動手段5に供給される電圧を自動的に制御するための手段8が押圧部200におけるリキッドの厚さdに関連して設けられる。自動制御手段8は、リキッドの厚さを測定するための容量性手段8.1と協働し、容量性手段8.1は、好ましくは押圧部200におけるいくつかの部分に配置されている。この測定手段8.1は、押圧部2.2に分配された一対の電極を複数、備えていてもよい。一対の電極のうちの第1の電極E1は、リキッド4の側において膜2と接触して配置されており、かつ第2の電極E2は、一対の電極の第1の電極E1に面する皿の底部に配置されている。電位差V1が一対の電極の二つの電極E1、E2のそれぞれに(電極E1、E2の間に一定のリキッド4が配置されている)付加されることによって、一対の電極E1、E2のそれぞれに取得され、それによって、膜2と皿3の底部3.1との間のリキッドの厚さが測定される。
【0162】
図12において、自動制御手段8が示されているが、加えて、それらは、過度な負担とならないように、二つの一対の電極E1、E2および二つのアクチュエータ5.1のみが図示されたものである。
【0163】
本発明の対象物である光学デバイスの作動中において、容量測定がある場所から他方への(例えばd、d+ε)差異が得られた場合、自動制御手段8は、測定手段8.1から容量測定値を受け取り、それらを、他の方法で測定した空間dに対応する基準値と比較し、そして補足的な補正値ΔV0、さらには基準電圧V0であるコマンドが、容量測定が基準値と異なる場所において、対応するアクチュエータ5.1に供給される。したがって、アクチュエータ5.1の供給電圧を調整することによって、容量測定値のすべてが、ひいては膜2と皿3の底部3.1との間のすべての距離が基準値と等しくされる。
【0164】
これによって、レンズまたはミラーの正確な作動のために必要な平行度は、自動変位制御によって確実なものとなる。こうした自動制御は、当該技術分野のものに関していかなる問題ももたらさないものである。
【0165】
光学デバイスの焦点距離を変更することが望まれた場合には、電圧V0が、測定手段8.1によって、図12に示されている作動手段であるアクチュエータ5.1のすべてに供給され、膜2と皿3の底部3.1との間の距離が測定され、その測定値が自動制御手段8に提供される。一つ以上の一対の電極E1,E2が寄生的なずれεを検出した場合、自動制御手段8は、検出された寄生的なずれεを有する一対の電極に最も近接する一つ以上のアクチュエータ5に対して、付加的な正しい電圧V0の供給の指示を出す。一つ以上のアクチュエータ5に供給される付加的な正確な電圧V0は、そのずれεが相殺されるように、それらが膜2を局所的に変位させる。
【0166】
複数の一対の電極E1,E2は、複数のアクチュエータ5.1、および補強領域が存在する場合には補強領域の表面積および剛性に関連する。一対の電極E1,E2の位置は、アクチュエータ5.1によって押圧された押圧部200に応じて最適化される必要がある。この目的が一対の電極によって気付かされる上記ずれを補償可能にすることであるため、それは、各アクチュエータにおける、したがって各押圧部における一対の電極の適切な配置を示す。一対の電極を押圧部200の間に配置するが、その形成に関して自動制御がより難しくなることは明らかである。
【0167】
電極E1,E2の表面積は、静止状態でのリキッド4の厚さに直接的に関連し、かつそれはリキッド4の厚さよりも高く、それは電極E1,E2の表面積より大きい。
【0168】
その寸法決めに関連して、光学デバイスの正確な作動のために必要な制度を組み込むことが必要である。実際に、対向する電極E1,E2によって形成される平坦なキャパシタのキャパシティCは、C=ε’S’/eによって示され、ここで、Sは電極の表面積であり、eはリキッドの厚さであり、ε’はリキッドの誘電率である。キャパシタQの変化はQ=CV’によって示され、ここでV’はキャパシタの電極に付加される電位差である。それは結果としてQ=ε’S’V’/eを導く。与えられたV’およびε’に関して、より大きいものがS’であり、より小さいものがeであり、より大きなものがQであり、したがって、より感度の高いものがE1,E2である。光学デバイスに関して目標とする所定のパフォーマンスは、電極間の最大ずれεmaxが、イメージの質における影響を有することなく許容されてもよい。一対の電極の精度の測定はεmaxより小さくなければならない。
【0169】
オートフォーカスおよびズームを目的とした使用に関して、光学デバイスの焦点距離は、非常に素早く、つまりできる限り短い応答時間を確実なものとするために高い周波数で、変更される必要がある。さらにカメラまたはフィルムカメラの使用において、光学デバイスが焦点距離における変化中にとるさまざまな距離に関して、所望の焦点距離までイメージテストを行うように使用するために設けられるイメージセンサが備えられる。そうした動的動作において、容量測定は、所定の焦点距離に関して数回にわたって行われる。実際に、基準値を比較し、データを処理し、そしてアクチュエータに指示を出すという容量測定値の取得の数サイクルが、所望の光学特性を確実なものとするために各焦点距離の値に関して必要となる。したがって、容量測定値の取得振動数が焦点距離における変化の振動数に比べて著しく大きいことが必要となる。
【0170】
容量測定値によって変位の制御と関連する信号のすべての処理が、光学パフォーマンスに関して適用可能な範囲内でリキッドレンズの応答時間を低減すると同時に変位の均一性を確実なものとするために、最適化されることが必要である。これは当該技術分野のものに関していかなる問題ももたらさないものである。
【0171】
焦点距離の変化は、作動手段5からもたらされる力によって制御されるが、自動制御手段8を用いて変位に関して制御されてもよい。そうした変位の、したがって膜2の変形の制御は、光学デバイスの光学特性を著しく向上させることができる。
【0172】
本発明の光学デバイスの使用の方向性の望ましくない効果は、二つの要因:第一に、リキッド4の量を制限すること、それによってリキッド4の重量を最小化することであり、第二に、容量測定によって膜2の変位を制御することである:によって解決される。
【0173】
ここで、本発明の対象であるリキッドレンズタイプの光学デバイスの他の実施形態について説明する。図13Aないし13Eを参照されたい。
【0174】
図13Aにおいて、膜2の支持体1.5は、皿3を形成するようプレート1.1に結合されたフレーム1.1から形成されている。プレート1.1は透過性を有する皿3の底部を実現する。上述したように比較される膜2とリキッド4との変形は生じない。作動手段は明瞭にするために図示されていない。
【0175】
透過性プレート1.1は、図13Aに示されるように実質的に平行な平坦な面を備える、実質的に一定の厚さのものであってもよい。少なくとも一つの面が、外面が凸状または凹状を呈するように、図13B,13C、13Dのように構成できる。所望の光学パフォーマンスに応じてその選択がなされる。それは、レンズを透過する光学的放射線を通過させる。フレーム1はシリコンなどの半導体材料から形成されてもよく、それは、特に自動制御が用いられる場合に、作動手段のコマンドの処理と関連する回路に組み込まれていてもよい。回路は複雑にしないために図示していない。透過性プレート1.1はガラスまたはプラスチック材料から形成されてもよい。
【0176】
図13B,13Cにおいて、透過性プレート1.1は凸状構造のものであり、かつ図13Dにおいては透過性プレート1.1は凹状構造のものである。透過性プレート1.1の構造は、例えばマシニングまたはモールディングによって得ることができる。
【0177】
図13Eにおいて、支持体1.5はフレーム1によって実現されており、かつ透過性フレーム1.1は第2の膜20に置き換えられている。第2の膜は、膜の表面全体にわたって延在する層を備えている。二つの膜2,20は、その主面の一方において、それぞれ、フレーム1に係留されている。それらはリキッド4を含有するためのハウジングの形成に役立つ。これによって、膜の光学パフォーマンスを向上させることができる。作動手段5は膜2の一方のみに設けられている。膜2の三つの領域に作動手段5が設けられている。膜20は動作させられていないが、作動手段5が作動されると膜20は変形する。
【0178】
そうした変形可能な焦点距離の光学デバイスは、特にデバイスが単一の膜を備える場合に、従来のものよりも非常に簡略化される。それによって、このような簡略化、製造法の簡単化およびコストに関する利点に加えて、漏出の可能性が低減されたために全体的な信頼性が向上される。本発明の対象である光学デバイスの形成において、そのスケールは、従来のリキッドレンズが形成される際のスケールよりも、非常に小さなものとされてもよい。ウェハー技術による製造が正確化しかつ繰り返し可能であるため、数百mmから数mmまでのオーダーとなるようにリキッドの量は低減されてもよい。こうした利点によって、従来の二つの問題点(温度における変化のおよび光学デバイスの作動時の圧力作用ならびにその耐衝撃性)が回避可能となる。実際に、一定の量のレンズにおいて、リキッドの量を最低限にするために、温度および圧力に関する変化の作用によるリキッドの膨張という事象が制限される。
【0179】
さらに、リキッドの量の低下は、光学デバイスの耐衝撃性に良好に働く。実際に、リキッドの量が小さくされると、衝撃時の膜の応力も小さくなる。
【0180】
そうした変形可能な焦点距離を伴う光学デバイスは、カメラデバイスに、特に携帯電話スチールカメラに使用されてもよい。図14Aを参照されたい。そうしたカメラデバイスは、縦方向に、本発明のリキッドレンズタイプの可変焦点距離Lを伴う少なくとも一つの光学デバイスを含む対物レンズ80と、基部82によって支えられた例えばCCDまたはCMOSタイプのイメージセンサ81とを備える。この例において、対物レンズ80は、固定された焦点距離を備える少なくとも一つのレンズ83と、本発明のリキッドレンズLとを有する。そして、固定された焦点距離を伴うこのレンズ83は、公知の光学セットとして知られるようになる。リキッドレンズLは、従来の光学セット83とイメージセンサ81との間に配置される。代替的には、従来の光学セット83は、リキッドレンズLとイメージセンサ81との間に配置されてもよい。従来の光学セット83は、固定されている。上述したように、その製造方法の効果によって、リキッドレンズLはMOEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)と比較されてもよい。可変焦点距離を伴うリキッドレンズLは、一定の距離をおいて配置されており、それは対物レンズ80およびイメージセンサ81の特性に左右されるものであるが、この距離が小さいときには、リキッドレンズLおよびイメージセンサ81はAIC(上型集積回路)技術によって、あるいはWLCSP(ウェハー レベル チップ スケール パッケージ)技術によって形成できる。リキッドレンズLの焦点距離に加えて、静止状態の膜の曲率およびリキッドの屈折率に関しても、静止状態のリキッドの圧力を最適化することによって対処される。
【0181】
カメラデバイスが図14Bのようにズーム機能を備える場合でも、光学セット83は。固定された焦点距離を伴う少なくとも二つのレンズ83.1,83.2、ならびに二つのリキッドレンズLおよびL’とともに使用され、リキッドレンズLおよびL’のうちの一方が、光学セット83の二つのレンズ83.1,83.2の間に配置され、かつもう一方が図14Bに示されるようにイメージセンサ81に近接して配置される。
【0182】
本発明のさまざまな実施形態について詳細に説明してきたが、本発明の範囲を超えることなく、さまざまな変更および改変が可能であることを理解されたい。特に多くの他の方法が膜および作動手段の形成に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0183】
1 フレーム
1.5 支持体
2 膜
2.1 中央領域(光学フィールド)
2.11,2.12 連続層
2.2 補強領域
2.2a 補強部
2.3 係留領域
2.4,2.5 中間ガード領域
2.6 強化領域
3 皿
3.1 底部
4 リキッド
5 作動手段
5.1 アクチュエータ
5.10 固定部
5.20 可動部
5.5加熱手段
5.6 スタックの他の構成要素
8.1 容量性手段(測定手段)
10 リキッドレンズ
20.1,20.2 副次的層
50 第1の部分
51,52 電極
53 圧電材料
54 受動層
80 対物レンズ
81 イメージセンサ
82 基部
83 固定焦点距離レンズ(光学セット)
83.1,83.2 固定焦点距離レンズ
100 基部(支持体)
101 犠牲材料
107 孔
110 支持体
115 中空部分
150 電源パッド
151 導電トラック
200 押圧部
E1,E2 電極
L, L’ リキッドレンズ
RR 反射コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能な膜(2)を備える光学デバイスであって:
一定の量のリキッド(4)を収容することを補助する支持体(1.5)であって、前記リキッド(4)が前記支持体(1.5)の一方の面と接するようになっている前記支持体(1.5)における係留領域(2.3)と、静止ポジションから可逆的に変形可能な実質的な中央領域(2.1)と、前記中央領域(2.1)における前記リキッド(4)を変位させるための作動手段(5)であって、前記中央領域(2.1)と前記係留領域(2.3)との間に位置する部分(200)における前記膜を押圧するようになっている作動手段(5)と、を具備してなり、
前記作動手段(5)は、前記膜の周縁に分配された複数のマイクロビームタイプの熱または圧電アクチュエータ(5.1)を具備してなり、前記マイクロビームは、作動時に固定される前記支持体に結合された少なくとも一つの部分と、作動時に前記中央領域と前記係留領域との間に位置する領域における膜と接触する少なくとも一つの可動部と、を有していることを特徴とする光学デバイス。
【請求項2】
前記可動部は、静止ポジションにおいて、前記膜(2)の押圧部(200)と接触するものではないことを特徴とする請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記可動部は、前記膜(2)の押圧部(200)と接触しており、かつ必要であれば、前記膜(2)の押圧部(200)に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記マイクロビームタイプのアクチュエータ(5.1)は、間接的な様式で前記支持体に結合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記マイクロビームタイプのアクチュエータ(5.1)は、前記係留領域(2.3)における前記膜(2)によって前記支持体(1.5)に結合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記マイクロビームタイプのアクチュエータ(5.1)は、前記膜(2)を越えて前記支持体(1.5)に結合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記マイクロビームタイプのアクチュエータ(5.1)は、前記リキッド(4)と接触するか、あるいは前記リキッド(4)と接触しないものであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記膜は、前記マイクロビームタイプのアクチュエータ(5.1)と一体化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記マイクロビームタイプのアクチュエータ(5.1)は、前記膜(2)の二つの層(20.1,20.2)の間に挿入されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記マイクロビームタイプのアクチュエータ(5.1)は屈曲状態で作動するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記膜(2)は、前記膜(2)の表面全体を占める少なくとも一つの連続層(2.12)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記押圧部(200)が、前記中央領域(2.1)と前記中央領域(2.1)を取り囲む前記係留領域(2.3)との間に位置する前記膜の補強領域(2.2)に含まれており、前記補強領域(2.2)が、前記中央領域(2.1)の剛性および前記係留領域(2.3)の剛性より大きな剛性を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項13】
前記補強領域(2.2)は、前記中央領域(2.1)に侵入することなく前記中央領域(2.1)まで延在しているか、あるいは前記中央領域の手前で終端をなしていることを特徴とする請求項12に記載の光学デバイス。
【請求項14】
前記補強領域(2.2)は、前記係留領域(2.3)に侵入することなく前記係留領域(2.3)まで延在しているか、あるいは前記係留領域の手前で終端をなしていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の光学デバイス。
【請求項15】
前記補強領域(2.2)は、厚手の連続層(2.12)を具備してなることを特徴とする請求項12ないし14のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項16】
前記補強領域(2.2)は、少なくとも前記連続層(2.12)と付加的な層(2.20)とからなるスタックを具備してなることを特徴とする請求項12ないし請求項16のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項17】
前記係留領域(2.3)は、必要であれば薄くなされた、前記連続層(2.12)を少なくとも具備してなることを特徴とする請求項12ないし請求項16のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項18】
中間ガード領域(2.4,2.5)が、前記係留領域(2.3)と前記補強領域(2.2)との間、および/または前記補強領域(2.2)と前記中央領域(2.1)との間に配置されており、前記中間ガード領域(2.4,2.5)は、必要であれば薄くなされた、前記連続層(2.12)を少なくとも具備してなることを特徴とする請求項12ないし請求項17のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項19】
前記補強領域(2.2)は、単一部分からなるか、または複数の部分(2.2a)に分割されていることを特徴とする請求項12ないし請求項18のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項20】
前記押圧部(200)の表面積は、補強領域(2.2)が単一部分から形成された場合には補強領域(2.2)の表面積より、あるいは補強領域(2.2)が分割された場合には補強部(2.2a)の表面積より小さいことを特徴とする請求項19に記載の光学デバイス。
【請求項21】
前記補強部(2.2a)のそれぞれが、前記中央領域(2.1)を取り囲むか、あるいは前記補強部(2.2a)のすべてが前記中央領域(2.1)を取り囲んでいることを特徴とする請求項19または請求項20に記載の光学デバイス。
【請求項22】
前記補強部(2.2a)は、前記中央領域(2.1)の周囲に非連続的な冠形状を形成しており、
前記膜(2)は、
前記中央領域(2.1)と前記補強部(2.2a)との間に位置し、前記補強部(2.2a)よりも大きな剛性を有し、前記中央領域(2.1)を取り囲む連続強化領域(2.6)を、
さらに具備してなることを特徴とする請求項19ないし請求項21のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項23】
前記補強領域(22)は、冠形状のもの、あるいは、前記中央領域(2.1)へ向かって、または前記係留領域(2.3)へ向かって突出する放射状指状部が設けられた複数の部分からなる冠形状のものであることを特徴とする請求項12ないし請求項19のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項24】
前記支持体(1.5)は、実質的に平坦なものであるか、または前記リキッド(4)を収容するための皿(3)を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項23のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項25】
前記支持体(1.5)は、ともに組み合わせられた二つの基部(100,110)を具備してなり、前記膜(20)は、前記基部(100)の一つに結合されており、前記マイクロビームタイプのアクチュエータはもう一方の基部(110)に連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項24のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項26】
前記支持体(1.7)は、フレーム(1)と前記フレームに係留された第2の膜(20)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項25のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項27】
前記支持体(1.5)は、フレーム(1)と、前記リキッド(4)のための皿(3)を形成することを補助する前記フレームに固定された透過性プレート(1.1)と、を具備してなり、前記透過性プレートは、実質的に平坦でありかつ平行な面、もしくは実質的に凸形状の、前記皿に対して外側となる一面、あるいは実質的に凹形状の、前記皿に対して外側となる一面、を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項26のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項28】
少なくとも一つの押圧部(200)に、前記リキッド(4)の厚さを測定するための容量性手段(8.1)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項27のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項29】
リキッド(4)の測定された厚さに応じて、前記作動手段(5)を自動的に制御するための手段(8)が設けられていることを特徴とする請求項28に記載の光学デバイス。
【請求項30】
前記膜(2)は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、パリレン、エポキシ樹脂などの有機物由来の材料、またはシリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物、多結晶シリコン、チタニウム窒化物、ダイアモンドカーボン、スズおよびインジウム酸化物、アルミニウムなどの無機材料から形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項29のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項31】
前記リキッド(4)は、プロピレンカーボネート、水、指標リキッド、光学オイル、またはイオンリキッドであることを特徴とする請求項1ないし請求項30のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項32】
リキッドレンズまたはミラーであることを特徴とする請求項1ないし請求項31のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項33】
請求項1ないし請求項32のいずれか一項に記載の少なくとも一つの光学デバイス(L,L’)を具備してなることを特徴とするカメラデバイス。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3.1−3.8】
image rotate

【図3.9−3.15】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図6E】
image rotate

【図6F】
image rotate

【図6G】
image rotate

【図6H】
image rotate

【図6I】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図7E】
image rotate

【図7F】
image rotate

【図7G】
image rotate

【図7H】
image rotate

【図7I】
image rotate

【図7J】
image rotate

【図7K】
image rotate

【図7L】
image rotate

【図7M】
image rotate

【図7N】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate

【図10E】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図13D】
image rotate

【図13E】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate


【公表番号】特表2010−533886(P2010−533886A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516507(P2010−516507)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059385
【国際公開番号】WO2009/010559
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】