説明

コンフリクト検出方法、装置及びプログラム

【課題】たとえば飲酒運転を効果的に自粛させうるコンフリクト検出方法、装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】この装置1では、コンピュータ3のコンフリクト検出部31aにより、アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトが、時間差を与えた試行ごとに検出され、ストループ演算部31bにより、この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果がそれぞれ演算され、コントロール評価部31cにより、この演算された試行間でのストループ効果の変化が、被験者の抑制機能を示すコントロール量とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば飲酒運転を自粛させるためのコンフリクト検出方法、装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲酒運転が重大事故の引き金となっているが、なかなか撲滅にまで至らない。その原因は、少量のアルコールを飲用したときには、コミュニケーションを促進させ、危険に対する自覚がないためである。ここで、「アルコール」とは、アルコール成分を含む酒類をいい、「飲用」とは、飲むことをいうものとする。以下、同じ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
少量のアルコールの飲用は、たしかに運動機能を促進し、会話が流暢になるものの、その抑制やコントロールができなくなることが問題である。ここで、本発明者は、長年人間工学、認知心理学の分野で、「ストループ効果」について基礎研究を行ってきた。この現象は、人間の注意機能、特に運動抑制コントロール機能と関連していることを実験によって確かめてきた(たとえば非特許文献1参照)。運動抑制機能を示すものとして、本発明者の知る限り唯一の指標がストループ効果なのであるが、少量のアルコール飲用による飲酒運転への影響を捉えたものは皆無であった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、たとえば飲酒運転を効果的に自粛させうるコンフリクト検出方法、装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンフリクト検出方法は、アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトを、時間差を与えた試行ごとに検出する第一工程と、この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果をそれぞれ演算する第二工程と、この演算された試行間でのストループ効果の変化を、被験者の抑制機能を示すコントロール量とする第三工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明に係るコンフリクト検出装置は、アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトを、時間差を与えた試行ごとに検出する検出手段と、この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果をそれぞれ演算する演算手段と、この演算された試行間でのストループ効果の変化を、被験者の抑制機能を示すコントロール量とする評価手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係るコンフリクト検出プログラムは、アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトを、時間差を与えた試行ごとに検出する第一機能と、この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果をそれぞれ演算する第二機能と、この演算された試行間でのストループ効果の変化を、被験者の抑制機能を示すコントロール量とする第三機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトが、時間差を与えた試行ごとに検出され、この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果がそれぞれ演算され、この演算された試行間でのストループ効果の変化が、被験者の抑制機能を示すコントロール量とされるので、本人がまったく自覚しないような少量のアルコール飲用でさえも、その抑制機能の低下があることがわかる。これにより、飲酒のこわさを、手軽にドライバーに周知させることにより、飲酒運転を効果的に自粛させることができるようになる。
【0009】
請求項2記載の発明のように、複数段階のアルコール量を飲用させた被験者について、段階ごとに第一工程から第三工程を順次繰り返すことにより、アルコール量とコントロール量との関係を求めることが好ましい。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、複数段階のアルコール量を飲用させた被験者について、段階ごとに第一工程から第三工程を順次繰り返すことにより、アルコール量とコントロール量との関係を求めたので、少量のアルコール飲用と抑制機能の低下との因果関係が明確化される。
【0011】
請求項3記載の発明のように、第三工程は、n−1試行が一致の場合の試行nのストループ効果と、n−1試行が不一致の場合の試行nのストループ効果との差に基づいて、コントロール量を求めることが好ましい。ただし、nは2以上の自然数である。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、第三工程は、n−1試行が一致の場合の試行nのストループ効果と、n−1試行が不一致の場合の試行nのストループ効果との差に基づいて、コントロール量を求めるので、前後の試行におけるデータ処理だけでよくなる。したがって、飲酒のこわさを、すばやくドライバーに周知させることにより、飲酒運転をより効果的に自粛させることができるようになる。
【0013】
請求項4記載の発明のように、アルコール量は、飲酒運転時の飲酒量よりも小さいことが好ましい。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、アルコール量は、飲酒運転時の飲酒量よりも小さいので、少量の飲酒のこわさを、手軽にドライバーに周知させることにより、飲酒運転をより効果的に自粛させることができるようになる。
【0015】
請求項5記載の発明のように、アルコール量は、被験者の呼気中に含まれるアルコール濃度であることが好ましい。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、アルコール量は、被験者の呼気中に含まれるアルコール濃度であるので、個人差を反映することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アルコールを飲用させた被験者のスループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトが、時間差を与えた試行ごとに検出され、この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果がそれぞれ演算され、この演算された試行間でのストループ効果の変化が、被験者の抑制機能を示すコントロール量とされるので、本人がまったく自覚しないような少量のアルコール飲用でさえも、その抑制機能の低下があることがわかる。これにより、飲酒のこわさを、手軽にドライバーに周知させることにより、飲酒運転を効果的に自粛させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンフリクト検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】コンフリクト検出の手順を示すフローチャートである。
【図3】飲酒量0mg/lでのn―1試行とn試行との関係を示す説明図である。
【図4】飲酒量0.02mg/lでのn―1試行とn試行との関係を示す説明図である。
【図5】飲酒量0.03mg/lでのn―1試行とn試行との関係を示す説明図である。
【図6】飲酒量0.04mg/lでのn―1試行とn試行との関係を示す説明図である。
【図7】コントロール量の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従来、コンフリクトの検出と、そのコントロール機能とを、ストループ効果で捉える方法は知られているが、飲酒運転への適用例はない点については記述のとおりである。
【0020】
ここで、ストループ効果とは、色単語に対して色を命名するときに生じる干渉効果である。本発明では、この効果をただ全体の平均値を捉えるのではなく、試行間の時間的な関係で捉えるものである。具体的には、不一致のときの色命名時間(たとえば、赤色で書かれた青色)から、一致のときの命名時間を引き算して求めることができる。
【0021】
そのとき、n−1試行で色単語が不一致の場合を検出すると、赤色で「青」を検出すると、次の色単語(n試行)に対してコントロールが働き、慎重に対応する結果、ストループ効果が低下する効果が見られた。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るコンフリクト検出方法を適用可能な装置(以下、「本装置」という。)1の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本装置1は、コンフリクト課題を提示するディスプレイ2と、コンピュータ3とを備えている。これらのディスプレイ2及びコンピュータ3のハードウェア自体は、いずれも市販のものを使用することができる。
【0023】
例えばコンピュータ3は、各種演算等を実行するCPU(Central processing unit)31と、各種プログラム等を記憶しておくハードディスク32と、各種データ等を一時的に記憶するメモリ33とを備えたパーソナルコンピュータであり、これにマイク4と、タッチキー5とがそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
そして、前記ハードディスク32に記憶しておいたコンフリクト検出プログラムを含む各種プログラム等を前記CPU31に読み込んで実行することで、コンフリクト検出部(検出手段に相当する。)31aと、ストループ効果演算部(演算手段に相当する。)31bと、コントロール評価部(評価手段に相当する。)31cがそれぞれ構築されるようになっている。換言すると、コンフリクト検出部31aがコンフリクト検出プログラムの第一機能を、ストループ効果演算部31bがコンフリクト検出プログラムの第二機能を、コントロール評価部31cがコンフリクト検出プログラムの第三機能を、コンピュータ3にそれぞれ実現させるものである。
【0025】
コンフリクト検出部31aは、ディスプレイ2に表示されるコンフリクト課題を見た被験者がマイク4又はタッチキー5で応答するまでの時間を、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度やn―1,n試行の一致または不一致であるとの情報と対応付けして読み込むものである。また、アルコール濃度やn―1,n試行の一致または不一致であるとの情報と対応付けした時間をディスプレイ2上に表示するものである(図3〜図6参照)。
【0026】
ストループ効果演算部31bは、n−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果を求めるともに、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を求めるものである。ただし、nは2以上の自然数である。
【0027】
コントロール評価部31cは、ストループ効果演算部31bで求めた試行間のストループ効果の差をコントロール量とするものである。すなわち、ストループ効果演算部31bで求めたn−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果から、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を差し引いて、コントロール量としたものである。また、被験者の呼気中のアルコール濃度が異なるデータの有無を判断するものである。そして、アルコール濃度が異なるデータがあると判断すると、コンフリクト検出部31aによるデータの読み込みに戻るが、アルコール濃度が異なるデータがないと判断すると、アルコール濃度とコントロール量との関係をディスプレイ2上に表示するものである(図7参照)。
【0028】
被験者4名の呼気中のアルコール濃度は以下のようになった。すなわち、被験者3については、飲酒量が0ccのときの呼気中のアルコール濃度は0mg/l(ミリグラム/リットル:以下、同じ。)であり、飲酒量が125ccのときの呼気中のアルコール濃度は0.03mg/lであり、飲酒量が250ccのときの呼気中のアルコール濃度は0.06mg/lであった。
【0029】
被験者5については、飲酒量が0ccのときの呼気中のアルコール濃度は0mg/lであり、飲酒量が125ccのときの呼気中のアルコール濃度は0mg/lであり、飲酒量が250ccのときの呼気中のアルコール濃度は0.04mg/lであった。
【0030】
被験者6については、飲酒量が0ccのときの呼気中のアルコール濃度は0mg/lであり、飲酒量が125ccのときの呼気中のアルコール濃度は0mg/lであり、飲酒量が250ccのときの呼気中のアルコール濃度は0.02mg/lであった。
【0031】
被験者7については、飲酒量が0ccのときの呼気中のアルコール濃度は0mg/lであり、飲酒量が125ccのときの呼気中のアルコール濃度は0.02mg/lであり、飲酒量が250ccのときの呼気中のアルコール濃度は0.06mg/lであった。
【0032】
このように、飲酒量と呼気中のアルコール濃度との関係では、個人差が見られた。これにより、以下では、飲酒量ではなく、呼気中のアルコール濃度をパラメータとしてコンフリクト検出を行うこととした。
【0033】
以下、本装置1の動作について説明する。図2は本装置1の動作を示すフローチャート、図3〜図6は各ストループ効果の演算結果を示す説明図である。
【0034】
図2において、まず、コンフリクト検出部31aにより、呼気中のアルコール濃度が0mg/lの場合のときのデータを読み取る(ステップS1)。具体的には、ディスプレイ2に表示されるコンフリクト課題を見た被験者がマイク4又はタッチキー5で応答するまでの時間を、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度やn―1,n試行の一致または不一致であるとの情報と対応付けして読み込む。
【0035】
この読み取ったデータを整理した結果である、アルコール濃度やn―1,n試行の一致または不一致であるとの情報と対応付けした時間をディスプレイ2上に表示する(ステップS2)。この表示内容は、たとえば図3に示すように、n−1試行が一致し、n試行が一致するときは、571ms(ミリ秒、以下同じ。)であり、n−1試行が一致し、n試行が不一致のときは、665msである。n−1試行が不一致で、n試行が一致するときは、589msであり、n−1試行が不一致で、n試行が不一致のときは、660msである。
【0036】
次いで、ストループ効果演算部31bにより、n−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS3)、ストループ効果=665ms−571ms=94msであった。
【0037】
また、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS4)、ストループ効果=660ms−589ms=71msであった。
【0038】
次いで、コントロール評価部31cにより、ストループ効果演算部31bで求めたn−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果から、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を引き算すると(ステップS5)、コントロール量=94ms−71ms=23msとなる。
【0039】
引き続いて、ステップS6で、被験者の呼気中のアルコール濃度が異なるデータの有無を判断する。そして、アルコール濃度が異なるデータがあると判断すると、ステップS1に戻り、アルコール濃度が異なるデータがないと判断するとステップS7に進む。ここでは、アルコール濃度が異なるデータがあると判断するから、ステップS1に戻り、コンフリクト検出部31aにより、呼気中のアルコール濃度が0.02mg/lのときのデータを読み取る。
【0040】
この読み取ったデータを整理した結果である、アルコール濃度やn―1,n試行の一致または不一致であるとの情報と対応付けした時間をディスプレイ2上に表示する(ステップS2)。この表示内容は、たとえば図4に示すように、n−1試行が一致し、n試行が一致するときは、575msであり、n−1試行が一致し、n試行が不一致のときは、709msであり、n−1試行が不一致で、n試行が一致するときは、580msであり、n−1試行が不一致で、n試行が不一致のときは、696msであった。
【0041】
次いで、ストループ効果演算部31bにより、n−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS3)、ストループ効果=709ms−575ms=134msであった。
【0042】
また、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS4)、ストループ効果=696ms−580ms=116msであった。
【0043】
次いで、コントロール評価部31cにより、ストループ効果演算部31bで求めたn−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果から、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を引き算すると(ステップS5)、コントロール量=134ms−116ms=18msとなる。
【0044】
引き続き、ステップS6で、被験者の呼気中のアルコール濃度が異なるデータの有無を判断する。そして、アルコール濃度が異なるデータがあると判断すると、ステップS1に戻り、アルコール濃度が異なるデータがないと判断するとステップS7に進む。ここでは、アルコール濃度が異なるデータがあると判断するから、ステップS1に戻り、コンフリクト検出部31aにより、呼気中のアルコール濃度が0.03mg/lのときのデータを読み取る。
【0045】
この読み取ったデータを整理した結果である、アルコール濃度やn―1,n試行の一致または不一致であるとの情報と対応付けした時間をディスプレイ2上に表示する(ステップS2)。この表示内容は、たとえば図5に示すように、n−1試行が一致し、n試行が一致するときは、552msであり、n−1試行が一致し、n試行が不一致のときは、698msであり、n−1試行が不一致で、n試行が一致するときは、566msであり、n−1試行が不一致で、n試行が不一致のときは、696msであった。
【0046】
次いで、ストループ効果演算部31bにより、n−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS3)、ストループ効果=698ms−552ms=146msであった。
【0047】
また、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS4)、ストループ効果=696ms−566ms=130msであった。
【0048】
次いで、コントロール評価部31cにより、ストループ効果演算部31bで求めたn−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果から、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を引き算すると(ステップS5)、コントロール量=146ms−130ms=16msとなる。
【0049】
引き続いて、ステップS6で、被験者の呼気中のアルコール濃度が異なるデータの有無を判断する。そして、アルコール濃度が異なるデータがあると判断すると、ステップS1に戻り、アルコール濃度が異なるデータがないと判断するとステップS7に進む。ここでは、アルコール濃度が異なるデータがあると判断するから、ステップS1に戻り、コンフリクト検出部31aにより、呼気中のアルコール濃度が0.04mg/lのときのデータを読み取る。
【0050】
この読み取ったデータを整理した結果である、アルコール濃度やn―1,n試行の一致または不一致であるとの情報と対応付けした時間をディスプレイ2上に表示する(ステップS2)。この表示内容は、たとえば図6に示すように、n−1試行が一致し、n試行が一致するときは、509msであり、n−1試行が一致し、n試行が不一致のときは、543msであり、n−1試行が不一致で、n試行が一致するときは、484msであり、n−1試行が不一致で、n試行が不一致のときは、529msであった。
【0051】
次いで、ストループ効果演算部31bにより、n−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS3)、ストループ効果=543ms−509ms=34msであった。
【0052】
また、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を求めると(ステップS4)、ストループ効果=529ms−484ms=45msであった。
【0053】
次いで、コントロール評価部31cにより、ストループ効果演算部31bで求めたn−1試行が一致のときの、試行nのストループ効果から、n−1試行が不一致のときの、試行nのストループ効果を引き算すると(ステップS5)、コントロール量=34ms−45ms=−11msとなる。
【0054】
引き続いて、ステップS6で、被験者の呼気中のアルコール濃度が異なるデータの有無を判断する。そして、アルコール濃度が異なるデータがあると判断すると、ステップS1に戻り、アルコール濃度が異なるデータがないと判断するとステップS7に進む。ここでは、アルコール濃度が異なるデータがないと判断するから、ステップS7に進む。
【0055】
そして、コントロール評価部31cは、以上の演算結果を、まとめてディスプレイ2上に表示する(ステップS7)。この表示内容は、横軸が被験者の呼気中のアルコール濃度、縦軸がコントロール量であり、たとえば図7に示すようなものである。同図より、被験者の呼気中のアルコール濃度が増大するにつれて、コントロール量が徐々に減っているのがわかる。
【0056】
本実施形態によれば、コンピュータ3のコンフリクト検出部31aにより、アルコールを飲用させた被験者のスループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトが、時間差を与えた試行ごとに検出され(第一工程)、ストループ演算部31bにより、この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果がそれぞれ演算され(第二工程)、コントロール評価部31cにより、この演算された試行間でのストループ効果の変化が、被験者の抑制機能を示すコントロール量とされる(第三工程)。したがって、本人がまったく自覚しないような少量のアルコール飲用でさえも、その抑制機能の低下があることがわかる。これにより、飲酒のこわさを、手軽にドライバーに周知させることにより、飲酒運転を効果的に自粛させることができるようになる。
【0057】
ここで、第三工程では、n−1試行が一致の場合の試行nのストループ効果と、n−1試行が不一致の場合の試行nのストループ効果との差に基づいて、コントロール量を求めるので、前後の試行におけるデータ処理だけでよくなる。したがって、飲酒のこわさを、すばやくドライバーに周知させることにより、飲酒運転をより効果的に自粛させることができるようになる。
【0058】
なお、上記実施形態では、呼気のアルコール量を測定したところ、個人差はあるものの、飲酒運転時の検出に比べてはるかに少ないアルコール量を検出している。すなわち、125ccの時には、0〜0.03mg/l、250ccの時には、0.02〜0.07mg/lであるのに対し、飲酒運転の基準は0.16mg/lである。ところが、コントロール量は明らかに低下しており、被験者の自覚はみられない。
【0059】
また、上記実施形態では、複数段階の既知のアルコール量を飲用させた被験者について、段階ごとに第一工程から第三工程を順次繰り返すことにより、アルコール量とコントロール量との関係を求めたが、本方法を、初期段階では、たとえばゲーム感覚で利用することが好ましい。
【0060】
そして、実用化段階では、このアルコール量とコントロール量との関係を予め求めておき、未知量のアルコールを飲用させた被験者について、第一工程から第三工程を順次繰り返すことにより求めたコントロール量を、前記予め求めておいたアルコール量とコントロール量との関係に適用することにより、前記未知量を求めることが好ましい。
【0061】
また、上記実施形態では、コンフリクト検出プログラムをハードディスク32に記憶しておくこととしているが、このコンフリクト検出プログラムをCDまたはDVDなどの記録媒体に記録しておいて、この記録媒体を図示しないCD/DVDドライブなどで読み込むことで、当該コンフリクト検出プログラムをコンピュータ3にインストールすることとしてもよい。或いは、インターネットなどを通じてコンピュータ3に当該コンフリクト検出プログラムを直接取り込むこととしてもよい。これらにより、初期設定やバージョンアップなどが簡単に行えるようになる。
【符号の説明】
【0062】
1 コンフリクト検出装置
2 ディスプレイ
3 コンピュータ
31 CPU
31a コンフリクト検出部(検出手段に相当する。)
31b ストループ効果演算部(演算手段に相当する。)
31c コントロール評価部(評価手段に相当する。)
32 ハードディスク
33 メモリ
4 マイク
5 タッチキー
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0063】
【非特許文献1】Cue based switching between color−naming and word−reading responses to Stroop stimuli.,Hiroyuki SHIMADA, Preceedings of the 23rd Annual Meeting of the International Society for Psychophysics, Vol.23.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトを、時間差を与えた試行ごとに検出する第一工程と、
この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果をそれぞれ演算する第二工程と、
この演算された試行間でのストループ効果の変化を、被験者の抑制機能を示すコントロール量とする第三工程とを備えたことを特徴とするコンフリクト検出方法。
【請求項2】
複数段階のアルコール量を飲用させた被験者について、段階ごとに第一工程から第三工程を順次繰り返すことにより、アルコール量とコントロール量との関係を求めることを特徴とする請求項1記載のコンフリクト検出方法。
【請求項3】
第三工程は、n−1試行が一致の場合の試行nのストループ効果と、n−1試行が不一致の場合の試行nのストループ効果との差に基づいて、コントロール量を求めることを特徴とする請求項1又は2記載のコンフリクト検出方法。ただし、nは2以上の自然数である。
【請求項4】
アルコール量は、飲酒運転時の飲酒量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンフリクト検出方法。
【請求項5】
アルコール量は、被験者の呼気中に含まれるアルコール濃度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンフリクト検出方法。
【請求項6】
アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトを、時間差を与えた試行ごとに検出する検出手段と、
この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果をそれぞれ演算する演算手段と、
この演算された試行間でのストループ効果の変化を、被験者の抑制機能を示すコントロール量とする評価手段と
を備えたことを特徴とするコンフリクト検出装置。
【請求項7】
アルコールを飲用させた被験者のストループ課題に対する反応時間で示すコンフリクトを、時間差を与えた試行ごとに検出する第一機能と、
この試行ごとに検出されたコンフリクトから、ストループ効果をそれぞれ演算する第二機能と、
この演算された試行間でのストループ効果の変化を、被験者の抑制機能を示すコントロール量とする第三機能と
をコンピュータに実現させることを特徴とするコンフリクト検出プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−218104(P2011−218104A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93578(P2010−93578)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】