説明

コンベヤクレーン及びコンベヤクレーン装置

【課題】 駆動機構や給電機構のない棚に対しても被搬送物を収納可能なコンベヤクレーンを提供する。
【解決手段】 コンベヤクレーン10は、フリーローラ34を有する外フレーム30と、外フレーム30の内側に配置された内フレーム40と、内フレーム40のガイドローラ44に係合したスライダ60とを備えている。フリーローラ34の上には、被搬送物100を吊り下げ支持したレール状のランナー90が支持されている。スライダ60には、第1スプロケット63と、第2スプロケット64と、両スプロケット63,64に巻き掛けられたチェーン65とが設けられている。チェーン65の上側65aは内フレーム40のフック45に係合し、チェーン65の下側65bはランナー90のフック93に係合している。駆動装置70がスライダ60を移動させると、チェーン65はスライダ60の2倍の速度で走行し、ランナー90はスライダ60よりも遠くまで搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤクレーン及びコンベヤクレーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば工場や自動倉庫等において、被搬送物を上方に持ち上げると共に略水平方向に搬送するコンベヤクレーンが知られている。このようなコンベヤクレーンを用いることにより、重量物や大型物品などを棚に収納し、あるいは棚から容易に取り出すことが可能となる。
【0003】
図11は、従来のコンベヤクレーン装置の一例を示す模式図である。このコンベヤクレーン装置は、コンベヤクレーン(以下、単にクレーンと称する)300と棚301とを備えている。クレーン300には、クレーン300の長手方向に並んだ複数の駆動ローラ302が設けられている。駆動ローラ302の一端側(図11の紙面表裏方向の一端側)にはスプロケットが設けられており、これらスプロケットには駆動チェーン308が架け渡されている。クレーン300には、駆動チェーン308を走行させる駆動モータ303が設けられている。
【0004】
一方、棚301にも、棚301の長手方向に並んだ複数の駆動ローラ302が設けられており、それら駆動ローラ302のスプロケットにも駆動チェーン308が架け渡されている。また、棚301にも、駆動チェーン308を走行させる駆動モータ303が設けられている。なお、符号302aは、駆動チェーン308の垂れ止め用のテンショナーである。
【0005】
クレーン300の駆動ローラ302の上には、レール状のランナー304が支持されている。ランナー304には、ワイヤー306を介して被搬送物305が吊り下げ支持されている。
【0006】
上記コンベヤクレーン装置では、クレーン300がランナー304と共に被搬送物305を吊り上げた後、クレーン300及び棚301の両方の駆動モータ303を起動し、クレーン300及び棚301の駆動ローラ302を回転させる。これにより、ランナー304は駆動ローラ302によって搬送され、クレーン300から棚301に向かって走行する。その結果、ランナー304に吊り下げられた被搬送物305は、棚301に収納される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来のコンベヤクレーン装置では、クレーン300だけでなく棚301にも駆動ローラ302が必要であった。そのため、棚301には、駆動ローラ302を駆動するための駆動機構(すなわち、駆動モータ303及び駆動チェーン308)と、その駆動機構に電力を供給する給電機構とが必要であった。その結果、棚301の構造が複雑となった。また、棚301のコストが高くなり、特に、棚301を多数備えた装置では、装置全体のコストアップが避けられなかった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動機構及び給電機構のない棚に対しても被搬送物を収納可能なコンベヤクレーン及びコンベヤクレーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンベヤクレーンは、被搬送物を吊り下げ支持したレール状のランナーを、略水平の所定方向に並び且つ前記ランナーを支持する複数のフリーローラを有する棚に収納し、または前記棚から前記ランナーを取り出すコンベヤクレーンであって、前記所定方向に並び且つ前記ランナーを支持する複数のフリーローラを有し、前記所定方向に延びる第1フレームと、前記所定方向に延び、前記第1フレームと平行に配置された第2フレームと、前記所定方向に延び、前記第2フレームに取り付けられるとともに前記第2フレームに対して前記所定方向への移動が自在なスライダと、前記スライダを前記所定方向の一方及び他方に移動させるスライダ駆動装置と、前記スライダに回転自在に支持され、前記スライダの長手方向に互いに離隔して配置された第1及び第2の回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体とに巻き掛けられ、前記第1回転体と前記第2回転体との間で互いに平行に且つ前記所定方向に延びる第1及び第2の延伸部を有する無端状の懸架体と、前記第2フレームに設けられ、前記懸架体の前記第1延伸部に係合する係合部材と、前記懸架体の前記第2延伸部を前記ランナーと係合させる係合位置と、前記第2延伸部を前記ランナーから離脱させる離脱位置との間で、前記第2フレームを前記第1フレームに対して移動させる第2フレーム移動装置と、を備えたものである。
【0010】
上記コンベヤクレーンによれば、懸架体の第1延伸部が係合部材に係合し、第1延伸部の棚側への移動は阻止される。一方、第2フレームが係合位置に移動すると、懸架体の第2延伸部はランナーと係合する。この状態において、スライダ駆動装置がスライダを棚側に移動させると、スライダの移動に伴って、懸架体が第1回転体と第2回転体との間で走行する。その結果、懸架体の第2延伸部は、スライダの移動速度の2倍の速度で棚側に移動する。したがって、懸架体の第2延伸部に係合したランナーも、スライダの2倍の速度で棚側に移動する。
【0011】
このことにより、ランナーは、スライダの移動量の2倍の量だけ棚側に移動することになる。そのため、上記コンベヤクレーンによれば、ランナーをスライダよりも遠くに搬送することができ、十分な長さの搬送距離を確保することができる。したがって、棚に駆動ローラ等を設けなくても、ランナーの全体を棚に収納することができ、また、ランナーの全体を棚から取り出すことができる。よって、駆動機構及び給電機構のない棚に対しても、被搬送物を収納することが可能となる。
【0012】
本発明に係る他のコンベヤクレーンは、略水平の所定方向に並んだ複数のフリーローラを有し且つ被搬送物を吊り下げ支持したランナーを、前記所定方向に延び且つ前記フリーローラを支持するレールを有する棚に収納し、または前記棚から前記ランナーを取り出すコンベヤクレーンであって、前記所定方向に延び且つ前記ランナーのフリーローラを支持するレールを有し、前記所定方向に延びる第1フレームと、前記所定方向に延び、前記第1フレームと平行に配置された第2フレームと、前記所定方向に延び、前記第2フレームに取り付けられるとともに前記第2フレームに対して前記所定方向への移動が自在なスライダと、前記スライダを前記所定方向の一方及び他方に移動させるスライダ駆動装置と、前記スライダに回転自在に支持され、前記スライダの長手方向に互いに離隔して配置された第1及び第2の回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体とに巻き掛けられ、前記第1回転体と前記第2回転体との間で互いに平行に且つ前記所定方向に延びる第1及び第2の延伸部を有する無端状の懸架体と、前記第2フレームに設けられ、前記懸架体の前記第1延伸部に係合する係合部材と、前記懸架体の前記第2延伸部を前記ランナーと係合させる係合位置と、前記第2延伸部を前記ランナーから離脱させる離脱位置との間で、前記第2フレームを前記第1フレームに対して移動させる第2フレーム移動装置と、を備えたものである。
【0013】
上記コンベヤクレーンにおいても、前述のコンベヤクレーンと同様に、懸架体の第2延伸部に係合したランナーは、スライダの2倍の速度で棚側に移動し、スライダの2倍の量だけ棚側に移動する。したがって、被搬送物をスライダよりも遠くに搬送することができ、駆動機構及び給電機構のない棚に対しても被搬送物を収納すること等が可能となる。
【0014】
前記係合部材は、前記第2フレームの長手方向の中間位置から一端側及び他端側の位置にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0015】
このことにより、コンベヤクレーンの長手方向(=第2フレームの長手方向)の両側に棚が設けられていたとしても、被搬送物を両方の棚に収納することができる。すなわち、スライダを第2フレームの一端側に移動させると、懸架体の第1延伸部は、一端側に設けられた係合部材に係合し、一端側への移動が阻止される。その結果、懸架体の第2延伸部に係合したランナーは、一端側に向かってスライダの2倍の量だけ移動する。一方、スライダを第2フレームの他端側に移動させると、懸架体の第1延伸部は、他端側に設けられた係合部材に係合し、他端側への移動が阻止される。その結果、懸架体の第2延伸部に係合したランナーは、他端側に向かってスライダの2倍の量だけ移動する。
【0016】
前記棚は、水平方向及び上下方向に複数設けられ、前記コンベヤクレーンは、前記第1フレームを水平方向及び上下方向に移動させる移動装置を備えていることが好ましい。
【0017】
このことにより、複数の棚において駆動機構及び給電機構が不要となる。そのため、棚全体の低コスト化を促進することができる。
【0018】
前記コンベヤクレーンは、前記第1フレームを鉛直軸回りに回転させる回転装置を備えていることが好ましい。
【0019】
このことにより、コンベヤクレーンによる搬送の途中で被搬送物を反転させることができる。したがって、棚内における被搬送物の反転作業が不要となる。その結果、例えば、工場等において、搬送後の各種工程の利便性を向上させることができる。
【0020】
本発明に係るコンベヤクレーン装置は、前記コンベヤクレーンと、前記棚と、前記棚を鉛直軸回りに回転させる回転装置と、を備えたものである。
【0021】
上記コンベヤクレーン装置によれば、被搬送物を棚に収納した状態のまま反転させることができる。そのため、棚内における人手による反転作業が不要となり、利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、ランナーをスライダよりも遠くに移動させることができるので、棚に駆動ローラ等がなくても、被搬送物の全体を棚に送り込むことができ、また、棚から取り出すことができる。したがって、駆動機構及び給電機構のない棚に対しても、被搬送物を収納すること等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1(a)に模式的に示すように、実施形態に係るコンベヤクレーン装置1は、前後方向に延びるクレーン領域2と、クレーン領域2の左右両側に形成された棚領域3とを有する工場に設置されている。棚領域3は、前後方向に複数形成されている。図1(b)に示すように、各棚領域3には、上下方向に並ぶ複数の棚4が設置されている。本実施形態では、被搬送物100(図3参照)は棚4内に保管され、又は棚4内において加工等される。
【0025】
コンベヤクレーン装置1は、クレーン領域2内を前後方向及び上下方向に移動するコンベヤクレーン(以下、単にクレーンと言う)10を備えている。クレーン10は、前後方向及び上下方向に移動することにより、任意の棚4の延長線上の位置、すなわち棚4に揃った位置に移動する。なお、以下では、左右方向、前後方向、上下方向を、それぞれX、Y、Z方向と呼ぶこととする。
【0026】
図2に示すように、クレーン10は、X方向に延びる横行ガーター11を備えている。横行ガーター11の両端は、Y方向に延びる走行レール12に支持されている。横行ガーター11の両端には、走行機構13が設けられている。走行機構13の種類は何ら限定されない。例えば走行機構13として、走行レール12上を走行する駆動輪等を好適に用いることができる。横行ガーター11は、上記走行機構13によって、走行レール12上をY方向に走行する。
【0027】
また、クレーン10は、横行ガーター11から下方に延びる左右一対の昇降用テレスコープガイド14を備えている。テレスコープガイド14の下端には、X方向に延びる昇降フレーム15が固定されている。昇降フレーム15の両端の上側には、滑車16が取り付けられており、これら滑車16にはワイヤロープ17が巻き掛けられている。
【0028】
横行ガーター11の右端部には、昇降モータ18と、昇降モータ18に連結されたロープ巻き取り用のドラム21とが設けられている。また、横行ガーター11の左端部にも、ロープ巻き取り用のドラム19が設けられている。昇降モータ18とドラム21とは接続され、ドラム21とドラム19とは同期軸20によって連結されている。
【0029】
右側のワイヤロープ17の一端は横行ガーター11に固定され、他端はドラム21に巻き掛けられている。左側のワイヤロープ17の一端は横行ガーター11に固定され、他端はドラム19に巻き掛けられている。したがって、昇降モータ18が回転すると、ドラム19及び21が同時に回転し、ワイヤロープ17が巻き上げられ、あるいは巻き降ろされる。その結果、昇降フレーム15は、テレスコープガイド14に案内されることによって水平姿勢を保ちながら、昇降する。
【0030】
昇降フレーム15の中央部には、下方に延びる回転軸22が設けられている。回転軸22の下端には減速ギヤ23が固定され、減速ギヤ23の下端には、X方向に延びる外フレーム30が固定されている。減速ギヤ23には、当該減速ギヤ23よりも直径の小さな減速ギヤ24が噛み合っており、減速ギヤ24には回転モータ25が接続されている。回転モータ25が回転すると、両減速ギヤ23,24を介して外フレーム30に回転駆動力が伝達され、外フレーム30は鉛直軸回りに回転する。
【0031】
走行機構13及び昇降モータ18は、外フレーム30を前後方向及び上下方向に移動させる移動装置を構成している。回転モータ25及び減速ギヤ23,24は、外フレーム30を鉛直軸回りに回転させる回転装置26を構成している。なお、図2においては、後述のランナー90及び被搬送物100等の図示は省略している。
【0032】
図4に示すように、外フレーム30は、水平に延びる天板31と、天板31のY方向の両端から下方に延びる側板32とを備えている。したがって、外フレーム30の断面形状は、下向きに開いた略コ字状に形成されている。各側板32の下端には、他方の側板32に向かって延びる水平軸33が設けられている。水平軸33の先端には、フリーローラ34が回転自在に支持されている。なお、「フリーローラ」とは、いわゆる駆動ローラと異なり、自らは回転しないローラ(従動ローラ)のことであり、搬送駆動力を発生しないローラである。図3に示すように、フリーローラ34は、外フレーム30の長手方向(X方向)に沿って所定間隔毎に設けられている。
【0033】
図4に示すように、フリーローラ34の上には、X方向に延びるレール状のランナー90が支持されている。ランナー90は、略I型の断面形状を有しており、ランナー90の上側の平板部分92がフリーローラ34に走行自在に支持されている。
【0034】
ランナー90の平板部分92の上面には、上方に突出するフック93が設けられている。図3に示すように(図3では、フック93の位置のみを図示している)、フック93は、ランナー90の長手方向の中間位置から一端側及び他端側の位置にそれぞれ設けられている。詳しくは、フック93は、ランナー90の右端及び左端の近傍にそれぞれ設けられている。
【0035】
ランナー90の下側部分には、固定具91を介してワイヤロープ101が取り付けられている。ワイヤロープ101には、被搬送物100が吊り下げられている(図3参照)。すなわち、ランナー90は、固定具91及びワイヤロープ101を介して被搬送物100を吊り下げ支持している。
【0036】
外フレーム30の内側には、内フレーム40が設けられている。内フレーム40は、外フレーム30と同様にX方向に延び、外フレーム30と平行に配置されている。本実施形態では、内フレーム40の長さは外フレーム30の長さとほぼ等しい。外フレーム30と同様に、内フレーム40はX方向に移動不能である。
【0037】
内フレーム40は、水平方向に延びる天板41と、天板41のY方向の両端から下方に延びる側板42とを備えている。側板42の内側には、水平軸回りに回転自在なガイドローラ44が支持されている。図3に示すように、ガイドローラ44は、内フレーム40の長手方向に沿って複数設けられている。
【0038】
図4に示すように、天板41の下面には、下向きに突出するフック45が設けられている。図3に示すように、フック45は、内フレーム40の長手方向の中間位置から一端側及び他端側にそれぞれ設けられている。詳しくは、内フレーム40の右端から中央側に向かって全長の約1/4の位置と、左端から中央側に向かって全長の約1/4の位置とに、それぞれフック45が形成されている。なお、図3では、フック45の位置のみを図示している。フック45は、後述する第1スプロケット63と第2スプロケット64との間に設けられていればよく、フック45の位置及び個数は特に限定されるものではない。ただし、フック45は、第1スプロケット63及び第2スプロケット64の近傍に設けられていることが好ましい。
【0039】
図3に示すように、外フレーム30の上方には、内フレーム40を昇降させる昇降モータ50が設けられている。昇降モータ50は、内フレーム40の一端側及び他端側にそれぞれ設けられている。図4に示すように、昇降モータ50の昇降軸51は、内フレーム40の天板41に固定されている。したがって、昇降モータ50の駆動に伴って昇降軸51が縮むと、内フレーム40は上昇する(図5参照)。逆に、昇降軸51が下方に向かって伸びると、内フレーム40は下降する(図4参照)。
【0040】
図4に示すように、内フレーム40の内側には、スライダ60が配置されている。スライダ60は、X方向に延びる一対のブロック体60aからなっている。これらブロック体60aは、所定間隔を存してY方向に並んでいる。各ブロック体60aには、X方向に延びる溝61が形成されている。この溝61には、内フレーム40のガイドローラ44が係合している。そして、スライダ60は、後述の駆動装置70からX方向の駆動力を受けることにより、ガイドローラ44に案内されてX方向にスライドする。
【0041】
スライダ60の長手方向の中央部と右端部との間には、両ブロック体60aをつなぐY方向に延びる軸62が設けられている。この軸62には、軸受66を介して第1スプロケット63が回転自在に支持されている。同様に、スライダ60の長手方向の中央部と左端部との間にも、両ブロック体60aをつなぐY方向に延びる軸(図示せず)が設けられ、この軸には、軸受(図示せず)を介して第2スプロケット64が回転自在に支持されている。図3に示すように、第1スプロケット63は、右側の昇降モータ50の右側に配置され、第2スプロケット64は、左側の昇降モータ50の左側に配置されている。
【0042】
第1スプロケット63と第2スプロケット64とには、無端状のチェーン65が巻き掛けられている。図4に示すように、チェーン65は、スライダ60の中央部(詳しくは、第1スプロケット63と第2スプロケット64との間の部分)の周囲を囲むように上下にわたって配置されている。言い換えると、チェーン65は、スライダ60を上下及び左右から挟み込むように架け渡されている。これにより、チェーン65は、スライダ60の上側に位置する第1延伸部65aと、スライダ60の下側に位置する第2延伸部65bとを有している。第1延伸部65aと第2延伸部65bとは、第1スプロケット63と第2スプロケット64との間において、互いに平行に且つX方向に延びている。
【0043】
チェーン65には、チェーン65の長手方向と直交する方向(Y方向)に延びるアタッチメント68が取り付けられている。アタッチメント68は、チェーン65の長手方向に沿って所定間隔毎に取り付けられている。ただし、アタッチメント68の間隔や個数等は何ら限定されるものではない。本実施形態では、アタッチメント68は、スライダ60が内フレーム40の中央に位置している状態(図3に示す状態)において、少なくともフック45及びフック93に係合する位置に設けられている。
【0044】
スライダ60の上面には、X方向に延びるチェーン67が固定されている。ただし、チェーン67の代わりに、X方向に延びるラック等が設けられていてもよい。
【0045】
図3に示すように、内フレーム40の長手方向の中央部には、スライダ60を駆動する駆動装置70が設けられている。駆動装置70は、駆動用スプロケット75が接続された駆動モータ71と、従動スプロケット76と、駆動ピニオン72,73と、これらスプロケット75,76及び駆動ピニオン72,73に巻き掛けられた無端状の駆動チェーン74とを備えている。
【0046】
図6及び図7に示すように、駆動ピニオン72は、スライダ60のチェーン67と噛み合っている。図示は省略するが、他方の駆動ピニオン73も、スライダ60のチェーン67と噛み合っている。したがって、駆動モータ71が回転すると、駆動チェーン74が走行して駆動ピニオン72,73が回転し、スライダ60は、駆動ピニオン72,73によってX方向の駆動力を受けて移動する。
【0047】
なお、駆動モータ71は双方向に回転自在である。したがって、スライダ60は、X方向の一方及び他方に向かって移動自在である。図3に示すように、本実施形態では、内フレーム40の長手方向の中間位置から右側及び左側に、それぞれ駆動ピニオン72,73が配置されている。そのため、スライダ60の移動可能範囲が広くなっている。すなわち、スライダ60は、スライダ60の左端が内フレーム40の中間位置よりも右側に位置するまで右方向に移動することができる。また、スライダ60は、スライダ60の右端が内フレーム40の中間位置よりも左側に位置するまで左方向に移動することができる。
【0048】
図8に示すように、棚4には、X方向に延びるフレーム80が設けられている。フレーム80は、天板81と、天板81のY方向の両端から下方に延びる側板82とを備えている。したがって、フレーム80の断面形状は、下向きに開いた略コ字状に形成されている。各側板82の下端には、内向きに延びる軸83が設けられている。軸83には、フリーローラ84が回転自在に支持されている。フリーローラ84は、X方向に沿って所定間隔毎に複数設けられている(図9参照)。
【0049】
次に、コンベヤクレーン10の搬送動作について説明する。ここでは、地面に置かれた被搬送物100を所定の棚4に収納する動作について説明する。なお、以下に説明する動作は、すべて自動化されていてもよく、その一部又は全部を手動による操作で行ってもよい。
【0050】
まず、外フレーム30のフリーローラ34の上にランナー90を載せ、固定具91及びワイヤロープ101を介して、被搬送物100をランナー90に吊り下げる。次に、昇降モータ50を駆動して内フレーム40を下降させ、スライダ60とランナー90とを係合させる。ただし、スライダ60とランナー90とを係合させなくてもランナー90の上下方向及び前後方向の移動は可能であるので、上記係合動作は必ずしも必要ではない。
【0051】
次に、昇降モータ18(図2参照)を駆動し、外フレーム30を所定の高さにまで吊り上げる。なお、内フレーム40等は外フレーム30に固定されているので、外フレーム30の上昇に伴って内フレーム40等も上昇する。
【0052】
次に、走行機構13を駆動し、横行ガーター11をY方向に走行させる。そして、外フレーム30が目的の棚4の前後位置に到達すると、走行機構13を停止させる。ここで、外フレーム30と目的の棚4との上下位置が異なる場合には、昇降モータ18を駆動し、外フレーム30が目的の棚4の延長線上の位置に到達するまで外フレーム30を上下移動する。外フレーム30が目的の棚4に揃った位置に到達すると、昇降モータ18を停止し、以下のX方向の搬送動作を開始する。
【0053】
スライダ60とランナー90とが係合していない場合には、まず、昇降モータ50を駆動し、内フレーム40を下降させる。その結果、図4及び図6に示すように、内フレーム40が係合位置まで下降し、スライダ60の下側のチェーン(すなわち、第2延伸部)65bのアタッチメント68が、ランナー90のフック93と係合する。
【0054】
次に、駆動装置70の駆動モータ71を起動し、スライダ60を棚4に向かって移動させる(図9(a)及び(b)参照)。この際、スライダ60の上側のチェーン(第1延伸部)65aは、内フレーム40のフック45と係合しているので、棚4側への移動が阻止される。一方、チェーン65はスライダ60の第1スプロケット63及び第2スプロケット64に巻き掛けられているので、チェーン65の第2延伸部65bは、スライダ60の移動速度の2倍の速度で棚4側に移動する。
【0055】
前述したように、第2延伸部65bのアタッチメント68は、ランナー90のフック93と係合している。したがって、第2延伸部65bが棚4側に移動すると、ランナー90は第2延伸部65bから駆動力を受け、棚4に向かって走行する。これにより、ランナー90は棚4に搬送される。
【0056】
この際、チェーン65(第2延伸部65bも同様)はスライダ60の2倍の速度で走行するので、ランナー90はスライダ60の2倍の速度で移動する。また、ランナー90は、スライダ60の2倍の量だけ移動する。その結果、ランナー90はスライダ60よりも遠くまで搬送されることになる。また、ランナー90は外フレーム30のフリーローラ34及び棚4のフレーム80のフリーローラ84に支持されるので、安定して搬送される。
【0057】
図9(c)に示すように、ランナー90の全体が棚4のフレーム80内に移動し、ランナー90が所定位置に達すると、駆動モータ71を停止し、スライダ60の移動を停止させる。そして、昇降モータ50を起動し、内フレーム40を上昇させる。これにより、内フレーム40が離脱位置まで上昇し、チェーン65の第2延伸部65bのアタッチメント68がランナー90のフック93から外れ、スライダ60がランナー90から離脱する(図5及び図7参照)。
【0058】
その後、駆動装置70の駆動モータ71を逆方向に回転させ、駆動ピニオン72,73を逆回転させることによって、スライダ60を内フレーム40側に移動させる。すなわち、スライダ60を元の位置に復帰させる。そして、スライダ60が元の位置に復帰すると、駆動モータ71を停止させる。
【0059】
以上により、被搬送物100を所定の棚4に収納することができる。なお、棚4内の被搬送物100を取り出す際には、上述と逆の動作が行われる。
【0060】
上記の動作例では、スライダ60を右側に移動させることにより、被搬送物100を右側の棚4に収納していた。しかしながら、本実施形態に係るコンベヤクレーン10は、スライダ60を左側に移動させることによって、被搬送物100を左側の棚4に収納することも可能である。上述の動作とほぼ同様の動作により、被搬送物100を左側の棚4に収納することができ、また、被搬送物100を左側の棚4から取り出すこともできる。
【0061】
ところで、被搬送物100によっては、ある棚4から他の棚4に搬送する場合等において、左右の位置を逆転させることが好ましい場合がある。本コンベヤクレーン装置1では、そのような場合には、被搬送物100のX方向の搬送動作に先立って、回転モータ25(図2参照)を駆動し、外フレーム30を回転させる。これにより、外フレーム30に吊り下げられた被搬送物100は、棚4に収納される前に反転することになる。このように、本コンベヤクレーン10によれば、搬送の途中で被搬送物100を反転させることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、ランナー90をスライダ60よりも遠くまで移動させることができる。そのため、棚4に駆動ローラ等の駆動機構を設けなくても、ランナー90の全体を棚4に収納することが可能となる。したがって、棚4における駆動機構及び給電機構が不要となり、棚4の構造の簡単化や低コスト化を図ることができる。
【0063】
本実施形態によれば、X方向に関して十分な長さの搬送距離を確保することができるので、たとえ被搬送物100が長尺物であったとしても、棚4内に確実に収納することができ、また、棚4から確実に取り出すことができる。
【0064】
また、ランナー90をスライダ60の2倍の速度で移動させることができるので、搬送に要する時間を短縮することができ、搬送効率を向上させることができる。
【0065】
本コンベヤクレーン装置1によれば、ランナー90は、外フレーム30のフリーローラ34と棚4のフレーム80のフリーローラ84とに支持された状態で搬送される。そのため、ランナー90を安定して移動させることができる。したがって、被搬送物100を安定して搬送することができる。
【0066】
さらに、本コンベヤクレーン10によれば、ランナー90を左右両方の棚4に搬送することが可能である。したがって、利便性を向上させることができる。
【0067】
また、本コンベヤクレーン装置1によれば、前後方向及び上下方向に複数の棚4を備え、いずれの棚4にも被搬送物100を搬送することができる。したがって、効率的な収納等が可能となる。なお、棚4の個数が多いほど、棚4の構造の簡単化及び低コスト化の効果を顕著に発揮させることができる。
【0068】
さらに、本コンベヤクレーン10によれば、被搬送物100を搬送途中で反転させることができる。そのため、棚4に搬入した後に加工や組立等を行う場合、被搬送物100を予め加工や組立等に適した向きで搬入することが可能となる。したがって、工場等におけるその後の工程の利便性を向上させることができる。
【0069】
なお、上記実施形態では、ランナー90をレール状に形成し、外フレーム30及び棚4のフレーム80に、ランナー90を支持するフリーローラ34,84を設けていた。しかしながら、ランナー90にフリーローラを設け、外フレーム30及び棚4のフレーム80に、上記ランナー90のフリーローラを支持するレールを設けるようにしてもよい。すなわち、上記実施形態において、ランナー90のレールと外フレーム30及びフレーム80のフリーローラ34,84とを入れ替えるようにしてもよい。
【0070】
図2に示すように、上記実施形態では、コンベヤクレーン10に外フレーム30を反転させる回転装置26を設けていた。しかしながら、回転装置26は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。その場合、昇降フレーム15を省略し、昇降フレーム15の位置に外フレーム30を配置すればよい。
【0071】
上記実施形態では、無端状の懸架体として、チェーン65,74が用いられていた。しかしながら、懸架体は、チェーンに限らずベルト等であってもよい。懸架体としてベルトを用いる場合には、スプロケット63,64,75,76の代わりにローラを用いることができる。
【0072】
上記実施形態では、棚4の駆動機構及び給電機構を不要とし、棚4の構造の簡単化及び低コスト化を図っていた。しかしながら、工場等における便宜のため、棚4に駆動機構等を設けてもよいことは勿論である。
【0073】
例えば、図10に示すように、棚4に、フレーム80を鉛直軸回りに回転させる回転装置26を設けてもよい。例えば、上記実施形態の回転装置26と同様に、フレーム80に固定された減速ギヤ23と、減速ギヤ23と噛み合う減速ギヤ24と、減速ギヤ24に連結された回転モータ25とを備えていてもよい。このことにより、被搬送物100を棚4の内部において反転させることが可能となる。
【0074】
また、図10に示すように、棚4に、ランナー90をX方向に搬送する搬送機構を設けてもよい。例えば、搬送機構として、フレーム80の長手方向に並んだ複数の駆動ローラ(図示せず)と、駆動ローラの一端に設けられたスプロケット86と、これらスプロケット86に巻き掛けられたチェーン87と、チェーン87の垂れを防止するテンショナー86aと、チェーン87を走行させる駆動モータ85とを備えていてもよい。この場合、棚4の構造が複雑になるが、当該棚4から他の棚等への直接的な搬送が可能となり、工場等における利便性が更に向上する。
【0075】
上記実施形態では、チェーン65の第1延伸部65aと内フレーム40とは、アタッチメント68及びフック45によって係合されていた。しかしながら、第1延伸部65aと内フレーム40とを、他の部材によって係合してもよい。また、係合とは、必ずしも機械的な係合に限られず、電磁力等を利用した係合であってもよい。例えば、内フレーム40に電磁石を設け、第1延伸部65aと内フレーム40とを磁力によって係合するようにしてもよい。同様に、チェーン65の第2延伸部65b及びランナー90も、他の係合部材によって係合してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、内フレーム40を昇降させる装置は、昇降モータ50によって構成されていた。しかしながら、内フレーム40を昇降させる装置は昇降モータ50に限らず、他の駆動装置であってもよい。内フレーム40を昇降させる他の装置として、例えばエアシリンダ等を好適に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、コンベヤクレーン及びコンベヤクレーン装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態に係るコンベヤクレーン装置を概念的に示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】コンベヤクレーンの斜視図である。
【図3】コンベヤクレーンの縦断面図である。
【図4】係合状態における図3のIV−IV線断面図である。
【図5】離脱状態における図3のIV−IV線断面図である。
【図6】係合状態における図3のVI−VI線断面図である。
【図7】離脱状態における図3のVI−VI線断面図である。
【図8】棚のフレームの横断面図である。
【図9】(a)〜(c)はコンベヤクレーンの搬送動作を示す図である。
【図10】変形例に係る棚の正面図である。
【図11】従来のコンベヤクレーン装置の正面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 コンベヤクレーン装置
4 棚
10 コンベヤクレーン
30 外フレーム(第1フレーム)
34 フリーローラ
40 内フレーム(第2フレーム)
45 フック(係合部材)
50 昇降モータ(第2フレーム移動装置)
60 スライダ
63 第1スプロケット(第1回転体)
64 第2スプロケット(第2回転体)
65 チェーン(懸架体)
65a 第1延伸部
65b 第2延伸部
70 駆動装置(スライダ駆動装置)
90 ランナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を吊り下げ支持したレール状のランナーを、略水平の所定方向に並び且つ前記ランナーを支持する複数のフリーローラを有する棚に収納し、または前記棚から前記ランナーを取り出すコンベヤクレーンであって、
前記所定方向に並び且つ前記ランナーを支持する複数のフリーローラを有し、前記所定方向に延びる第1フレームと、
前記所定方向に延び、前記第1フレームと平行に配置された第2フレームと、
前記所定方向に延び、前記第2フレームに取り付けられるとともに前記第2フレームに対して前記所定方向への移動が自在なスライダと、
前記スライダを前記所定方向の一方及び他方に移動させるスライダ駆動装置と、
前記スライダに回転自在に支持され、前記スライダの長手方向に互いに離隔して配置された第1及び第2の回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とに巻き掛けられ、前記第1回転体と前記第2回転体との間で互いに平行に且つ前記所定方向に延びる第1及び第2の延伸部を有する無端状の懸架体と、
前記第2フレームに設けられ、前記懸架体の前記第1延伸部に係合する係合部材と、
前記懸架体の前記第2延伸部を前記ランナーと係合させる係合位置と、前記第2延伸部を前記ランナーから離脱させる離脱位置との間で、前記第2フレームを前記第1フレームに対して移動させる第2フレーム移動装置と、
を備えたコンベヤクレーン。
【請求項2】
略水平の所定方向に並んだ複数のフリーローラを有し且つ被搬送物を吊り下げ支持したランナーを、前記所定方向に延び且つ前記フリーローラを支持するレールを有する棚に収納し、または前記棚から前記ランナーを取り出すコンベヤクレーンであって、
前記所定方向に延び且つ前記ランナーのフリーローラを支持するレールを有し、前記所定方向に延びる第1フレームと、
前記所定方向に延び、前記第1フレームと平行に配置された第2フレームと、
前記所定方向に延び、前記第2フレームに取り付けられるとともに前記第2フレームに対して前記所定方向への移動が自在なスライダと、
前記スライダを前記所定方向の一方及び他方に移動させるスライダ駆動装置と、
前記スライダに回転自在に支持され、前記スライダの長手方向に互いに離隔して配置された第1及び第2の回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とに巻き掛けられ、前記第1回転体と前記第2回転体との間で互いに平行に且つ前記所定方向に延びる第1及び第2の延伸部を有する無端状の懸架体と、
前記第2フレームに設けられ、前記懸架体の前記第1延伸部に係合する係合部材と、
前記懸架体の前記第2延伸部を前記ランナーと係合させる係合位置と、前記第2延伸部を前記ランナーから離脱させる離脱位置との間で、前記第2フレームを前記第1フレームに対して移動させる第2フレーム移動装置と、
を備えたコンベヤクレーン。
【請求項3】
前記係合部材は、前記第2フレームの長手方向の中間位置から一端側及び他端側の位置にそれぞれ設けられている、請求項1又は2に記載のコンベヤクレーン。
【請求項4】
前記棚は、水平方向及び上下方向に複数設けられ、
前記第1フレームを水平方向及び上下方向に移動させる移動装置を備えている、請求項1〜3のいずれか一つに記載のコンベヤクレーン。
【請求項5】
前記第1フレームを鉛直軸回りに回転させる回転装置を備えている、請求項1〜4のいずれか一つに記載のコンベヤクレーン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のコンベヤクレーンと、
前記棚と、
前記棚を鉛直軸回りに回転させる回転装置と、
を備えたコンベヤクレーン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−193271(P2006−193271A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6284(P2005−6284)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】