説明

コンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置および方法

【課題】本発明の目的は、所望の条件でのループコイルの耐久性を容易に把握できるコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置および方法を提供する。
【解決手段】一対のプーリ3、4にコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル12、15を架け渡し、一方のプーリ3を支柱3aによりスライド可能に支持しつつ、この一方のプーリ3を錘7により一方方向にスライドさせるように付勢し、一対のプーリ3、4の間に配置されて、任意の位置に配置できる支持ローラを少なくとも1つ有する屈曲ユニット6の支持ローラ6a〜6fにループコイル12、15を架け回してセッティングした後、ループコイル12、15を周回させて、その損傷状態を把握する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置および方法に関し、さらに詳しくは、所望の条件でのループコイルの耐久性を容易に把握することができる耐久性評価装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトの走行時に、その縦裂きを検出するために、ベルト本体に埋設するループコイルと、このループコイルの状態を検知するセンサとを備えた検出装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。このような検出装置では、ベルトに埋設されたループコイルが、ベルトの走行によってセンサの設置位置に到達した際、ループコイルが断線していなければ、センサの発信器からの高周波によってループコイルに誘導電流が流れる。この誘導電流をセンサの受信器で受信することにより、縦裂きの有無を検出するようにしている。
【0003】
しかしながら、従来のループコイルは、金属線材の両端部どうしをはんだ溶接等で繋いでループ状にしているものが主流であった。そのため、ループコイルの繋ぎ目の耐久性が低く、コンベヤベルトの走行によってループコイルが繰り返し屈曲変形を受けると、繋ぎ目が早期に破損する。そのため、予めループコイルの耐久性を把握する必要があり、また、耐久性に優れたループコイルを開発する必要がある。ところが、コンベヤベルトの走行時に、実際にループコイルがおかれる状況に則した条件など、所望の条件でのループコイルの耐久性を容易に把握できる評価装置や評価方法がないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−48549号公報
【特許文献2】特開2005−162430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、所望の条件でのループコイルの耐久性を容易に把握することができるコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置は、コンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルが架け渡される一対のプーリと、一方のプーリをスライド可能に支持する支持部と、一方のプーリを一方方向にスライドさせるように付勢する付勢部材と、前記一対のプーリの間に配置される屈曲ユニットとを備え、前記屈曲ユニットは前記ループコイルが架け回される少なくとも1つの支持ローラを有し、この支持ローラを任意の位置に配置できる構成にしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価方法は、一対のプーリにコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルを架け渡し、一方のプーリを支持部によりスライド可能に支持しつつ、この一方のプーリを付勢部材により一方方向にスライドさせるように付勢し、前記一対のプーリの間に配置されて、任意の位置に配置できる支持ローラを少なくとも1つ有する屈曲ユニットの支持ローラに前記ループコイルを架け回してセッティングした後、前記ループコイルを周回させてループコイルの損傷状態を把握することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対のプーリに架け渡されたループコイルに付勢部材によって所定の張力を付与しつつ周回させ、その際に、屈曲ユニットの支持ローラを所望の位置に配置することで、ループコイルを所望の屈曲条件に設定することができる。これにより、コンベヤベルトの走行時に、実際にループコイルがおかれる状況に則した条件など、所望の条件でのループコイルの耐久性を把握し易くなる。
【0009】
本発明の耐久性評価装置では、前記一方のプーリのスライド量を検知する変位センサと、前記ループコイルに生じている張力を検知する張力センサと、前記ループコイルの周回回数を検知する周回回数センサと、前記変位センサ、張力センサおよび周回回数センサによる検知データが入力される演算装置とを備えた仕様にすることもできる。この仕様では、変位センサ、張力センサおよび周回回数センサの検知データに基づいて演算装置によって、ループコイルの耐久性を精度よく把握することが可能になる。
【0010】
また、前記屈曲ユニットが外径の異なる複数の支持ローラを有する仕様にすることもできる。この仕様では、より実使用に近似した条件でのループコイルの耐久性を把握し易くなる。
【0011】
本発明の耐久性評価方法では、例えば、前記一方のプーリのスライド量を変位センサにより検知し、前記ループコイルに生じている張力を張力センサにより検知し、前記ループコイルの周回回数を周回回数センサにより検知して、前記変位センサ、張力センサおよび周回回数センサによる検知データを演算装置に入力し、これら入力したデータに基づいてループコイルの損傷状態を把握する。この場合、変位センサ、張力センサおよび周回回数センサの検知データに基づいて演算装置によって、ループコイルの耐久性を精度よく把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置の実施形態を例示する全体概要図である。
【図2】ループコイルを例示する説明図である。
【図3】図2のループコイルの二重にオーバーラップした部分近傍を例示する斜視図である。
【図4】別のループコイルを例示する説明図である。
【図5】ループコイルが埋設されているコンベヤベルトの一部を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置および方法を図に示した実施形態を参照しながら説明する。
【0014】
図1に例示するように、本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置1(以下、評価装置1という)は、ベース2上に配置された支柱3a、4aによって支持された一対のプーリ3、4を有している。一方は従動プーリ3であり、他方は駆動プーリ4である。一対のプーリ3、4には、後述するコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル12、15が架け渡される。
【0015】
従動プーリ3を支持する支柱3aはスライドレール3bの上に配置されていて、スライドレール3bの上をレール長手方向(図1では左右方向)に自由にスライドできるようになっている。駆動プーリ4はベース2に固定されている。尚、従動プーリ3と駆動プーリ4とを入れ替えて、従動プーリ3を支持する支柱3aをベース2に固定して、駆動プーリ4を支持する支柱4aをスライド可能にしてもよい。
【0016】
さらに、支柱3aには、張力センサ9を介してワイヤが接続されている。このワイヤはガイドローラ5bに架け回されていて、錘7を吊り下げている。この錘7が付勢部材となって、従動プーリ3を一方方向にスライドさせるように付勢している。
【0017】
この錘7によって一対のプーリ3、4に架け回されているループコイル12、15には、所定の張力が付与される。即ち、錘7の質量を調整することにより、ループコイル12、15に付与される張力を調整することができる。
【0018】
ループコイル12、15に付与する張力は、例えば5kN以下が好ましい。付勢部材としては錘7に限らず、バネ等の別の部材を用いることもできる。張力センサ9は、錘7を吊下げているワイヤの張力を検知することにより、ループコイル12、15に生じている張力を間接的に検知する。
【0019】
一対のプーリ3、4の間には屈曲ユニット6が配置されている。屈曲ユニット6は、ループコイル12、15が架け回され、任意の位置に配置できる複数の支持ローラ6a〜6fを有している。したがって、支持ローラ6a〜6fの配置を変えることにより、架け回されるループコイル12、15の屈曲状態を任意に設定することができる。
【0020】
屈曲ユニット6の具体的構造としては、例えば、支持ローラ6a〜6fを任意の位置に移動できるようにして、適宜の位置で固定できる構造にする。或いは、支持ローラ6a〜6fを軸支できる所定数の支持棒を所定位置に設けておき、これら支持棒の中から選択した支持棒に支持ローラ6a〜6fを適宜軸支できる構造にする。
【0021】
支持ローラ6a〜6fの数は特に限定されず、少なくとも1つの支持ローラを有していればよいが、例えば4個以上20個以下がより好ましい。支持ローラ6a〜6fの外径は、例えば、10mm〜100mm程度である。
【0022】
この実施形態では、屈曲ユニット6の支持ローラ6a〜6fの他に、ガイドローラ5aにループコイル12、15を架け回しているが、ガイドローラ5aは適宜設ければよい。また、すべての支持ローラ6a〜6fの外径が同じになっているが、外径の異なる複数の支持ローラを有する仕様にすることもできる。この仕様の場合、ループコイル12、15の屈曲条件のバリエーションが広がるので、より実使用に近似した条件でのループコイル12、15の耐久性を把握し易くなる。
【0023】
さらに、この実施形態では、ループコイル12、15に生じている張力を検知する上述した張力センサ9と、従動プーリ3のスライド量を検知する変位センサ3cと、ループコイル12、15の周回回数を検知する周回回数センサ8と、張力センサ9、変位センサ3cおよび周回回数センサ8による検知データが入力される演算装置10とを備えている。演算装置10としては、パーソナルコンピュータ等が用いられる。
【0024】
一対のプーリ3、4には、例えば、図2、図3に例示するようなコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル12が架け渡される。このループコイル12は、少なくとも1本の金属線材14aを含む複数本の線材14a(14b)を編組して構成された筒状体13を備えている。尚、図2では、ループコイル12の全体概要を理解し易くするため、ループコイル12の全長の一部分のみで、編組された線材14a(14b)を図示している。
【0025】
筒状体13を構成する線材は、すべてが金属線材14aであってもよく、金属線材14aおよび繊維線材14bの2種類であってもよい。線材の本数は、例えば4本〜16本程度にする。筒状体13の外径は例えば、0.1mm〜2.5mmが好ましい。
【0026】
金属線材14aは、単線でも複数の素線を撚ったストランドでもよく、例えば、ピアノ線、亜鉛メッキ鋼線、ブラスメッキ鋼線等が使用でき、また、銅線、アルミニウム線等も使用可能である。繊維線材14bは、単線でも複数の素線を撚ったストランドでもよく、種々の化学繊維線材、例えば、ナイロン繊維線材、ポリエステル繊維線材等が使用でき、綿やレーヨン等の天然繊維や再生繊維を線材としても良い。
【0027】
筒状体13の長手方向一端は、他端側から内部に挿入されて筒状体13が二重にオーバーラップした部分Lを有している。二重にオーバーラップした部分Lは互いが係合することにより繋ぎ目となって、紐状の筒状体13がループ状に形成されている。二重にオーバーラップした部分Lの長さは、例えば150mm以上、好ましくは300mm以上、更に、ループコイル12の全長がオーバーラップしている状態(L=ループコイル12の周長の100%)が最も好ましい。
【0028】
図4に例示するようなループコイル15もある。このループコイル15は、金属線材14aの両端部がはんだ溶接されて、はんだ溶接部16によって接合されている。
【0029】
これらのループコイル12、15は、図5に例示するように、コンベヤベルト11の内部に埋設される。したがって、コンベヤベルト11の走行時(矢印Fの走行方向)に、埋設されたループコイル12、15には、繰り返し屈曲変形が生じる。
【0030】
次いで、本発明の耐久性評価方法の一例を説明する。
【0031】
図1に例示するように、一対のプーリ3、4にループコイル12、15を架け渡し、従動プーリ3を支柱3aによってスライド可能に支持しつつ、従動プーリ3を錘7によって一方方向にスライドさせるように付勢する。そして、屈曲ユニット6の支持ローラ6a〜6fにループコイル12、15を架け回す。このようにして、ループコイル12、15に所定の張力を付与した状態にセッティングした後、駆動プーリ4を回転駆動して、ループコイル12、15を周回させる。ループコイル12、15を周回させる速度は、例えば10m/分〜300m/分程度である。
【0032】
ループコイル12、15を所定回数、周回させた時点で、その損傷状態を観察して把握する。そして、把握したループコイル12、15の損傷状態(損傷の有無、大きさ、程度)を耐久性の良否の判断指標とする。或いは、ループコイル12、15の繋ぎ目が破損する等の故障が生じるまでの周回回数を把握する。そして、この故障発生周回回数を耐久性の良否の判断指標とする。
【0033】
本発明では、ループコイル12、15に所定の張力を付与しつつ周回させ、その際に、屈曲ユニット6の支持ローラ6a〜6fを所望の位置に配置しているので、ループコイル12、15を所望の屈曲条件に設定することができる。例えば、コンベヤベルト11の走行時に実際にループコイル12、15がおかれる状況に則した条件に設定することができる。このように任意の所望の条件下に対して、ループコイル12、15の耐久性を容易に把握することが可能になる。
【0034】
また、この実施形態では、ループコイル12、15を周回させている間、変位センサ3c、張力センサ9および周回回数センサ8の検知データが演算装置10に入力される。したがって、これら入力されたデータに基づいて演算装置10によって、ループコイル12、15の耐久性を精度よく把握することが可能になる。
【0035】
例えば、ループコイル12、15の周回回数と伸びとの関係(伸びの時系列変化)、ループコイル12、15の周回回数と張力との関係(張力の時系列変化)、ループコイル12、15の伸びと張力との関係等を把握することができる。これにより、ループコイル12、15の繋ぎ目が破損する等の故障が生じるまでの状態を把握することができる。
【0036】
例えば、図2に例示したタイプのループコイル12を、二重にオーバーラップした部分L(繋ぎ目部分)の長さのみを異ならせて、本発明の評価装置1で評価した場合、Lの長さが大きい程、損傷が生じ難いことが把握できた。また、図4に例示したタイプのループコイル15を、本発明の評価装置1で評価した場合、はんだ溶接部16で損傷が生じることが確認できた。また、同じ条件であれば、図4のタイプのループコイル15に比して、図2に例示したタイプのループコイル12は損傷が生じ難く、耐久性に優れていることが把握できた。これらの評価結果は、コンベヤベルト11を実際に使用した場合のループコイル12、15の耐久性と同じ傾向であり、本発明によって、実使用に則した耐久性の評価が可能あることが確認できた。
【符号の説明】
【0037】
1 評価装置
2 ベース
3 従動プーリ
3a 支柱(支持部)
3b スライドレール
3c 変位センサ
4 駆動プーリ
4a 支柱(支持部)
5a、5b ガイドローラ
6 屈曲ユニット
6a、6b、6c、6d、6e、6f 支持ローラ
7 錘(付勢部材)
8 周回回数センサ
9 張力センサ
10 演算装置
11 コンベヤベルト
12 ループコイル
13 筒状体
14a 金属線材
14b 繊維線材
15 ループコイル
16 はんだ溶接部
L 二重にオーバーラップした部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルが架け渡される一対のプーリと、一方のプーリをスライド可能に支持する支持部と、一方のプーリを一方方向にスライドさせるように付勢する付勢部材と、前記一対のプーリの間に配置される屈曲ユニットとを備え、前記屈曲ユニットは前記ループコイルが架け回される少なくとも1つの支持ローラを有し、この支持ローラを任意の位置に配置できる構成にしたことを特徴とするコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置。
【請求項2】
前記一方のプーリのスライド量を検知する変位センサと、前記ループコイルに生じている張力を検知する張力センサと、前記ループコイルの周回回数を検知する周回回数センサと、前記変位センサ、張力センサおよび周回回数センサによる検知データが入力される演算装置とを備えた請求項1に記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置。
【請求項3】
前記屈曲ユニットが外径の異なる複数の支持ローラを有する請求項1または2に記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価装置。
【請求項4】
一対のプーリにコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルを架け渡し、一方のプーリを支持部によりスライド可能に支持しつつ、この一方のプーリを付勢部材により一方方向にスライドさせるように付勢し、前記一対のプーリの間に配置されて、任意の位置に配置できる支持ローラを少なくとも1つ有する屈曲ユニットの支持ローラに前記ループコイルを架け回してセッティングした後、前記ループコイルを周回させてループコイルの損傷状態を把握することを特徴とするコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価方法。
【請求項5】
前記一方のプーリのスライド量を変位センサにより検知し、前記ループコイルに生じている張力を張力センサにより検知し、前記ループコイルの周回回数を周回回数センサにより検知して、前記変位センサ、張力センサおよび周回回数センサによる検知データを演算装置に入力し、これら入力したデータに基づいてループコイルの損傷状態を把握する請求項4に記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの耐久性評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−236678(P2012−236678A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106384(P2011−106384)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月18日 一般社団法人日本機械学会 関西支部発行の「関西学生会 学生員卒業研究発表講演会講演前刷集」に発表
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】