説明

コーティングシステム

【課題】各プリント媒体に対して予め想定されている所定のコーティング内容でプリント済みプリント媒体に対してコーティングが施されるコーティングシステムを提供する。
【解決手段】プリント画像を有するプリント媒体Pに対してコーティングを行うために、プリント媒体Pに形成されたプリント画像の特徴からプリント媒体Pに施されるべきコーティング内容を示すコーティングデータを決定するルールが予め設定されているコーティングデータ生成部51と、プリント媒体Pのプリント画像をスキャンするスキャナユニット3と、スキャン画像から求めた画像特徴をコーティングデータ生成部51に与えることによりコーティングデータを受け取るコーティング管理部50と、コーティングデータに基づいて生成されたコーター制御信号によりプリント媒体Pに対するコーティングを行うコーターユニット4とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント画像を有するプリント媒体に対してコーティングを行うコーティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
印画紙、プリント用紙、プラスチックシート、布などの各種のプリント媒体にプリント画像を形成するプリンタは、種々のタイプのものが実用化されている。そのようなプリンタによって画像形成された出力プリント媒体(以下これを単に出力プリントと称する)の多くにおいて、形成されたプリント画像の色材に耐水性や耐候性がなく長期の保存に問題があるばかりか、さらにはプリント媒体自体にも耐水性や堅牢性(自立性)の弱さから使用目的が限られるという問題がある。このような問題を解決するため、プリント画像を形成した出力プリントの表面に液状のコーティング物質を塗布するプリントシート用コーティング装置が、例えば、特許文献1から知られている。このプリントシート用コーティング装置は、複数の噴射部から所定の方向に液滴粒子を噴射することでプリント媒体の表面にコーティング領域を形成するオンディマンドコーティングヘッドと、このオンディマンドコーティングヘッドをプリント媒体の幅方向(主走査方向)にプリント媒体の上方を往復動させる主コーティング走査手段と、オンディマンドコーティングヘッドとプリント媒体とをプリント媒体の長さ方向(副走査方向)に相対移動させる副コーティング走査手段とを備えている。
【0003】
また、コーティング装置としてのニス引き装置とその後方に設置されてニス引きされた印刷対象物を内部で乾燥する乾燥機とを備えた輪転印刷機は、印刷分野においてはよく知られている。そのような印刷機として、印刷装置によって印刷された枚葉紙が、印刷装置に続くニス引き装置によってニス層で覆われ、それに引き続いて枚葉紙が、IR乾燥機、熱風乾燥機、またはUV乾燥機の形式をなす周知の乾燥装置を通過することにより、乾燥機中で、ニス引きされた枚葉紙が、一時保管される前に排紙積み重ね装置の上で乾燥される、枚葉紙輪転オフセット印刷機がある。このニス層の形成によって印刷製品の摩耗抵抗と光沢とが向上する。例えば、特許文献2から、印刷機において処理加工された印刷対象物をコーティングするためのニス引きユニットを有する、印刷機のコーティング形成装置が知られている。このニス引きユニットでは、コーティングモチーフを可変的に形成するため、別個のインクジェットプリンタが液体コーティング材を印刷対象物に列状に噴射するために使用され、印刷対象物がインクジェットヘッドの出口開口部の下を案内される。さらに、印刷対象物上の塗布後の液体コーティング材料を乾燥させるために、乾燥機が印刷対象物の移送方向に関しインクジェットプリンタの直後に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−202984号公報(段落番号〔0002〕−〔0019〕、図8)
【特許文献2】特開2005−199718号公報(段落番号〔0002〕−〔0017〕、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術におけるコーティング装置においても、プリント済みプリント媒体に対して、その部分的な特定領域にコーティングを施すことができる。しかしながら、各プリント済みプリント媒体によってコーティングを施す領域が異なる場合には、各プリント済みプリント媒体に割り当てられたコーティング位置を含むコーティング情報を記憶しておき、その記憶順序とコーティングを施すプリント済みプリント媒体のコーティング装置への投入順序を一致させておく必要がある。このことは、プリント装置とコーティング装置がインライン配置されており、同一のプリント媒体に対して連続的にプリント処理とコーティング処理を施すような構成の場合にはあまり問題とならない。しかしながら、プリント装置とコーティング装置が独立して配置されており、プリント処理とコーティング処理とがバッチ処理的に行われる場合では、プリント処理とコーティング処理との間でプリント済みプリント媒体の順番がずれてしまうと、プリント済みプリント媒体に所定のコーティングが施されないという重大な問題が生じる。
本発明の課題は、プリント処理とコーティング処理とが独立して実行されるような場合でも、各プリント媒体に対して予め想定されている所定のコーティング内容でプリント済みプリント媒体に対してコーティングが施されるコーティングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
プリント画像を有するプリント媒体に対してコーティングを行うコーティングシステムは、上記目的を達成するため、本発明では、前記プリント媒体に形成されたプリント画像の特徴から当該プリント媒体に施されるべきコーティング内容を示すコーティングデータを決定するルールが予め設定されているコーティングデータ生成部と、前記プリント媒体のプリント画像をスキャンするスキャナユニットと、前記スキャナユニットによるスキャン画像から求めた画像特徴データを前記コーティングデータ生成部に与えることにより前記プリント媒体に適合するコーティングデータを前記コーティングデータ生成部から受け取るコーティング管理部と、前記コーティングデータに基づいて生成されたコーター制御信号により当該プリント媒体に対するコーティングを行うコーターユニットを備えている。
【0007】
この構成では、プリント媒体に形成されたプリント画像の特徴から当該プリント媒体に施されるべきコーティング内容を決定するルールが予め設定されており、このルールに基づいて決定されたコーティングデータに応じてコーティングがプリント媒体に施される。つまり、プリント画像の特徴がプリント媒体に施したいコーティング内容のための識別情報の役割となっており、この識別情報としての画像特徴が、任意のプリント媒体とコーティング内容とを結び付けている。例えば、プリント画像サイズ、プリント画像の形状、プリント画像における文字領域と写真領域の区分などの画像特徴によって、全面コーティング処理、写真領域の限定コーティング処理、プリント媒体の強度不足を補うための補強用コーティング処理などが決定される。これにより、プリント処理とコーティング処理とが独立して実行されるような場合でも、各プリント媒体に対して前もって設定された所定のコーティング内容でプリント済みプリント媒体に対してコーティングが施される。
【0008】
特に、文字画像や写真画像といった特定の画像種類に限定された限定コーティング処理や補強用コーティング処理などでは、そのようなコーティングがプリント媒体に正確に施されるようするためには、コーターユニットにプリント媒体におけるコーティングすべき位置を与えなければならない。この目的を達成するために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記コーティングデータには、前記プリント媒体に対して所定の部分領域にコーティングをするためのコーティング領域位置データが含まれている。部分的なコーティングのひとつとしてシート紙などのプリント媒体を補強するための補強用コーティングが挙げられる。その際、そのコーティング領域位置として、アルバムの場合は綴じ部近傍領域、パネル的に使用する大判プリントの場合は枠部領域や筋交い部領域が好適である。
【0009】
プリント画像の特徴からコーティング内容を決定するルールの設定に関して、その決定信頼性を高いものとするには、学習機能を有する知識ベース構築技術を採用することが好適である。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記コーティング管理部は前記画像特徴データとして複数の画像特徴値を算定し、前記コーティングデータ生成部は前記複数の画像特徴値を入力パラメータとして前記コーティングデータを出力する知識ベースを備えており、さらに前記コーティング管理部は前記コーティングデータ及び、前記プリント媒体の寸法または前記画像特徴データあるいはその両方に基づいて前記コーター制御信号を生成するように構成されている。そのような知識ベースとしては、ニューラルネットワークやエキスパートシステムなどの技術を適用して構築することが可能である。
【0010】
コーティングを施されるためにコーティングシステムに投入されたプリント媒体のプリント画像をスキャンし、このスキャン画像から画像特徴を求めるという本発明の特徴構成は、この画像特徴として、付加的に、プリント媒体搬送ラインの基準位置に対する実際のプリント画像の位置が想定される位置とのずれからプリント媒体の搬送ずれ量を求めるとすれば、この搬送ずれ量から、いわゆる搬送蛇行状態を算定することも可能となる。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記スキャン画像から前記プリント媒体の搬送蛇行状態を示す搬送蛇行データを生成する蛇行データ生成部が備えられている。
【0011】
プリント媒体の搬送蛇行状態を検出する機能が備えられた場合、その搬送蛇行を修正するための具体的な構成として以下の2つが提案される。
(1)前記スキャナユニットと前記コーターユニットとがインライン配置され、さらに前記搬送蛇行データに基づいて前記プリント媒体の蛇行をその搬送過程において修正する蛇行修正ユニットが前記スキャナユニットと前記コーターユニットとの間に介装される。これにより、コーターユニットに入る前にプリント媒体の搬送蛇行は物理的に修正されるので、正確なコーティングが実現する。
(2)前記搬送蛇行データに基づいて前記コーティングデータによって設定されたコーティング位置が調整される。これにより、蛇行状態でコーターユニットに入ったプリント媒体は、その蛇行状態、つまり搬送位置ずれを考慮して、コーターユニットにおけるコーティングポイントがソフトウエア的に修正されるので、やはり正確なコーティングが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるコーティングシステムの基本構想を示す構想図である。
【図2】本発明によるコーティングシステムを写真プリント仕上げシステムに適用した場合での概略構成図である。
【図3】図2の写真プリント仕上げシステムにおけるデータの流れを示すダイアグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明するが、まずは図1を用いて本発明の基本構想を解説する。ここでは、プリント媒体として写真プリント用紙、プリンタとしてインクジェットプリンタを用いて、プリント画像を形成した出力プリント媒体(以下これを単に出力プリントと称する)Pに、油性ニス等のオーバープリント液を塗付してコーティング層を形成するコーティングシステムを例とする。
【0014】
このコーティングシステムでは、前もって、多くの種類の出力プリントPと、その種類ごとの出力プリントPに適用されるコーティング内容との関係が学習され、その学習結果が知識ベース化されている。この知識ベースは、出力プリントPを特徴付けているプリント画像の画像特徴データを入力パラメータとして特定のコーティング内容を示すコーティングデータを出力するように設計されている。知識ベースとしては、単純なルール(条件式)を多数設定しておいて、このルールを入力パラメータに適用してコーティングデータを出力するようなルール型推論やニューラルネットワーク、さらにはエキスパートシステムなどの原理を利用できる。特に簡単な知識ベースは、複数の条件式から予め設定されている結論を導くプログラムで構築可能である。本出願での画像特徴データには、ヒストグラムや平均濃度値といった狭い範囲での画像特徴データのみならず、プリント画像に含まれている人の顔の数、大きさ、位置といった情報や、プリント画像に含まれているテキスト画像や写真画像の形状、サイズ、位置といった情報、さらには出力プリントP自体のサイズや形状なども含めている。また、コーティンデータに含まれるコーティング内容は、プリント媒体におけるコーティングすべき領域の位置、コーティング厚さなどである。
【0015】
このコーティングシステムには、スキャナユニット3とコーターユニット4がインライン配置されている。ここでいうインライン配置とは、搬送ラインによって各処理ユニットが接続されており、連続的な処理が可能となる配置を意味している。例えば、写真プリントである出力プリントPを投入部にセットして、このコーティング処理を開始する。まず、処理されるべき出力プリントPがスキャナユニット3に搬送され、出力プリントPに形成されている画像が読み取られる。
【0016】
スキャナユニット3によって読み取られたプリント画像のスキャン画像から、画像特徴データとして、好ましくは複数種の画像特徴値が求められる。求められた各画像特徴値は、知識ベース(コンピュータプログラム)に入力パラメータとして与えられる。知識ベースが稼動し、入力パラメータに基づいて適正なコーティング内容を示すコーティングデータが出力される。出力されたコーティングデータから読み出されたコーティング内容、及び必要に応じて出力プリントPの材質やサイズなどの情報に基づいて、コーターユニット4を駆動制御するコーター制御信号が生成され、コーターユニット4に与えられる。これにより、コーターユニット4は、出力プリントPの1つ以上の所定の領域に所定の厚さでもってコーティング層を塗付形成する。
【0017】
以上の解説から明らかなように、本発明によるコーティングシステムでは、出力プリントPを出力するプリンタ1と、その出力プリントPにコーティングを施すコーターユニット4とが、インライン配置されておらず、出力された出力プリントPがその順番でコーターユニット4に投入されることが保証されていなくても、予め出力プリントPの種類に応じて設定されているコーティング内容が知識ベースによって、その出力プリントPから求められた画像特徴データを入力パラメータとしてコーティングデータが生成されるので、出力プリントP毎に適正にコーティングを施すことが可能となる。
【0018】
次に、本発明による、具体的な実施の形態について、図2と図3を用いて説明する。図2は、本発明によるコーティングシステムを写真プリント仕上げシステムに適用した場合での概略構成図である。図3は、その写真プリント仕上げシステムにおけるデータの流れを示すダイアグラム図である。
【0019】
この写真プリント仕上げシステムは、顧客から受け取った撮影画像データと、プリントサイズやプリント枚数などを含む写真プリントサービスのプリント注文とに基づいて、写真プリントFPを作製するものである。その際、必要に応じて、美観、保護、補強などの目的で出力プリントPの全領域を含む任意の領域にコーティングが施される。このシステムでは、付加的に複数の写真プリントを小冊子に綴じて写真アルバムする機能も有する。通常、写真プリントショップに設置されるこの写真プリント仕上げシステムは、店頭に配置されて顧客によって操作される写真プリント受付機100と、店内に配置されるプリントステーションと、コーターステーションから構成されている。プリントステーションは、プリンタ本体1Aとこのプリンタ本体1Aを操作するコントロールユニット1Bとからなる。図示した例では、プリンタ本体1Aは、インクジェット方式のプリンタであるが、その他の形式、例えばミニラボと呼ばれている銀塩式のレーザープリンタなどを採用することも可能であり、出力プリントとしての写真プリントPを連続的に出力することができる。コントロールユニット1Bは、データ通信機能を有する汎用パソコンによって構築可能である。
【0020】
コーターステーションは、コーター本体部60とこのコーター本体部60の各ユニットを制御するコントローラ5とを備えている。
コーター本体部60には、スキャナユニット3、蛇行修正ユニット61、コーターユニット4、ドライユニット62、スイッチバック(SB)ユニット63、パンチユニット64が含まれている。各ユニットは搬送ローラ群からなる搬送機構65によってつながれており、投入された写真プリントPは各ユニットにわたって連続的に処理され、例えば、1セットのコーティング済み写真プリントFPが綴じリングによって綴じられ、最終的には写真アルバムが作製される。なお、図示されていないが、搬送機構65の適所に搬送途中の写真プリントPを検出可能なシート検出センサが設けられており、その検出信号は写真プリントPの搬送位置確認のためコントローラ5に送られる。
【0021】
スキャナユニット3は、読み取り光学系が主走査方向(写真プリントPの搬送方向に直交する方向)に延びたライン走査式で、副走査方向(写真プリントPの搬送方向)の読み取り走査は搬送機構65に兼用されているシート搬送ローラ装置によって行われる。もちろん、一時停止させた写真プリントP上をスキャナヘッドが副走査方向に走査移動する方式を採用してもよい。いずれにせよ、写真プリントPに形成されているプリント画像から読み取ったスキャン画像はコントローラ5に送られる。蛇行修正ユニットは、ミニラボなどで利用されているペーパー搬送技術ではよく知られているが、搬送開始から、あるいは搬送途中での写真プリントPの位置ずれを、左右ローラの回転差、搬送ローラの横移動、チャック搬送機構による横動きなどによって修正するものである。このような写真プリントPの位置ずれが、所定の範囲に収めることができる場合、スキャン画像に基づいて算定された位置ずれ分だけ、後処理のユニットでの処理位置をずらすことで、当該位置ずれを補償することが可能となる。そのような場合では、蛇行修正ユニットを省くことができる。
【0022】
コーターユニット4は、インクジェットプリントヘッドに類似したスプレーヘッドを有し、このスプレーヘッドからコーティング液、例えば油性ニスを写真プリントPの表面または裏面あるいは両面に噴射して、写真プリントPをコーティングする。スプレーヘッドの噴射には、圧縮空気と共にコーティング液を飛散させる方式や音波振動子でミストを発生させる方式などが用いられる。ガイドレールと送りねじ機構とを用いたスプレーヘッドの主走査方向の移動毎に写真プリントPが搬送機構65に兼用されているシート搬送ローラ装置によって副走査方向に搬送される。これにより、このコーターユニット4は、実質的に写真プリントPの任意の領域に対してコーティングを施すことができる。そのようなコーターユニット4の動作は、後で詳しく説明するが、前もって、顧客によって指定されたコーティング処理内容に基づいてコントローラ5が生成したコーター制御信号によって実行される。
【0023】
ドライユニット62は、コーターユニット4によって写真プリントP上に形成されたコーティング層を乾燥させるものであり、ドライユニット62で使用されているコーティング剤の種類によってその構成が決定されるが、最近では、熱源として、赤外線LEDや紫外線LEDが用いられている。
【0024】
スイッチバック(SB)ユニット63は、ミニラボなどではよく用いられている、写真プリントPの表裏を反転するものであり、オプションとして搬送機構65に組み込まれて使用される。写真プリントPがこのSBユニット63の反転経路を利用することで表裏反転した状態となり、その状態でコーターユニット4を越えて逆搬送され、再びコーターユニット4に進入することで他方の面がコーティングされる。
同様にオプションとして搬送機構65に組み込まれるパンチユニット64は、コーティングを施され仕上げられた写真プリントFPの一端縁に列状の孔を形成するものである。この孔を用いて所定枚数の写真プリントFPをリングなどの冊子綴じ具で綴じることで写真アルバムが作製される。
【0025】
コーターステーションのコントローラ5は、実質的にはコンピュータによって構成され、プログラムやハードウエアによって種々の機能が作り出される。本発明に特に関係するものとしては、コーティング管理部50、上述したような知識ベースを有するコーティングデータ生成部51、蛇行データ生成部52、蛇行修正データ生成部53、コーター制御データ生成部54、コーターステーションの各ユニットとの間のデータ伝送を中継するI/Oインターフェース55などが挙げられる。
【0026】
コーティング管理部50は、コーターステーションの各ユニットに対する制御を管理するが、本発明に関する重要な機能として、スキャナユニット3から送られてきたスキャン画像である画像データからスキャン対象となった写真プリントPに関する複数種の画像特徴値を算定して、画像特徴データを生成し、これをコーティングデータ生成部51の入力パラメータとして与えるという機能を有する。コーティングデータ生成部51は、与えられた画像特徴データに含まれる複数の画像特徴値を入力パラメータとしてコーターユニット4で実施されるべきコーティング内容を示すコーティングデータを出力し、コーティング管理部50に与える。
【0027】
蛇行データ生成部52は、スキャナユニット3から送られてきたスキャン画像にエッジ検出フィルタをかけて写真プリントPの輪郭を検出し、適正な搬送姿勢での写真プリントPの輪郭と比較して、写真プリントPの搬送蛇行状態を示す搬送蛇行データを生成する。蛇行修正データ生成部53は、蛇行データ生成部52で生成された搬送蛇行データに基づいて、搬送中の写真プリントPの蛇行 (姿勢ずれ)を評価し、その蛇行を修正するために蛇行修正ユニット61に出力する制御信号を作り出す蛇行修正データを生成する。
【0028】
コーター制御データ生成部54は、コーティング管理部5から転送されたコーティングデータに基づいて、コーターユニット4に出力するコーター制御信号を生成する。このコーター制御信号がコーティング管理部5を通じて適切なタイミングでコーターユニット4に出力されることで、コーターステーション内を搬送されているコーティング処理対象となっている写真プリントPに予め設定されているコーティングが施される。
【0029】
上述のように構成された写真プリント仕上げシステムのコーターステーションにおけるデータの流れを、処理順序に従って、以下に説明する。図3はそのようなデータの流れを図解しているダイアグラム図である。
【0030】
プリントステーションにおいて注文単位で出力された写真プリントPは、バッチ処理の形で、コーターステーションに投入される。コーターステーションに投入された写真プリントPは、順次、スキャナユニット3によってスキャニングされ、スキャン画像が生成される。生成されたコーティング管理部50に送られ、このスキャン画像から画像特徴データが生成される。画像特徴データに含まれている複数の画像特徴値が入力パラメータとしてコーティングデータ生成部51に与えられる。
【0031】
同時に、スキャン画像に基づいて、写真プリントPの蛇行(姿勢ずれ)が検出された場合、その蛇行(姿勢ずれ)を表す蛇行データが蛇行データ生成部52によって生成され、蛇行修正データ生成部53に転送される。蛇行修正データ生成部53は蛇行データの内容に基づいて蛇行修正ユニット61の蛇行修正動作制御のための蛇行修正データを生成し、蛇行修正ユニット61に制御信号の形で与える。
【0032】
入力パラメータとして複数の画像特徴値が入力されたコーティングデータ生成部51は知識ベースを駆動させて、これらの画像特徴値によって導かれるコーティングデータを出力する。このコーティングデータは、処理対象となっている写真プリントPのためのコーティング内容を示しており、このコーティングデータに基づいてコーター制御データ生成部54が生成したコーター制御信号がコーターユニット4に送り出される。これにより、コーターユニット4は、搬送されてきた写真プリントPに対して前もって設定されているコーティング内容のコーティングを施すことができる。
【0033】
なお、コーティングデータレコードには、コーティングすべき領域の基準位置座標を示すコーティング基準位置座標とコーティングすべき領域の基準位置からの主走査方向距離と副走査方向距離を示すコーティングサイズとからなるデータセットが複数(図3に例示されたものでは、2組)含むことができる。つまり、このデータセットで複数のコーティングすべき領域が決定されることになる。図3では、2組のデータセットと2つのコーティングすべき領域の関係が示されている。
【0034】
図3から明らかなように、ここでは、説明を簡単にするため、コーティング領域は矩形と仮定している。従って、搬送方向で先端側の一端(例えば右コーナ部)を処理すべき写真プリントの基準点として、この基準点から最も近いコーティング領域の位置座標をコーティング基準座標:P1(X1,Y1)とし、その基準位置からの主走査方向距離:M1がコーティング領域の幅を示し、その基準位置からの副走査方向距離:L1がコーティング領域の長さを示している。これにより、第1のコーティング領域が規定される。さらに、コーティング基準座標:P2(X2,Y2)と、コーティングサイズを表す(M2,L2)とによって第2のコーティング領域が規定される。
なお、コーティング領域が円形を含む多角形の場合、その多角形を規定する必要な数の頂点位置座標を登録することになる。
【0035】
〔別実施の形態〕
図2で模式的に図示されているコーターアッセンブリ60は、直線的な搬送ラインで構成されていたが、この搬送ラインは曲線的であってもよい。さらに、この搬送ラインを円周線とすれば、ドラム式のコーターアッセンブリとなり、装置のコンパクト化に好都合となる。
【符号の説明】
【0036】
1A:プリンタ本体
1B:コントロールユニット
3:スキャナユニット
4:コーターユニット
5:コントローラ
50:コーティング管理部
51:コーティングデータ生成部
52:蛇行データ生成部
53:蛇行修正データ生成部
54:コーター制御信号生成部
55:I/Oインターフェース
60:コーター本体部
61:蛇行修正ユニット
62:ドライユニット
63:スイッチバック(SB)ユニット
64:パンチユニット
65:搬送機構
100:写真プリント受付機
P:写真プリント(出力プリント;プリント媒体)
FP:コーティング済み写真プリント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント画像を有するプリント媒体に対してコーティングを行うコーティングシステムであって、
プリント媒体に形成されたプリント画像の特徴から当該プリント媒体に施されるべきコーティング内容を示すコーティングデータを決定するルールが予め設定されているコーティングデータ生成部と、
前記プリント媒体のプリント画像をスキャンするスキャナユニットと、
前記スキャナユニットによるスキャン画像から求めた画像特徴データを前記コーティングデータ生成部に与えることにより前記プリント媒体に適合するコーティングデータを前記コーティングデータ生成部から受け取るコーティング管理部と、
前記コーティングデータに基づいて生成されたコーター制御信号により当該プリント媒体に対するコーティングを行うコーターユニットと、
を備えたコーティングシステム。
【請求項2】
前記コーティングデータには、前記プリント媒体に対して所定の部分領域にコーティングをするためのコーティング領域位置データが含まれている請求項1のコーティングシステム。
【請求項3】
前記コーティング管理部は前記画像特徴データとして複数の画像特徴値を算定し、前記コーティングデータ生成部は前記複数の画像特徴値を入力パラメータとして前記コーティングデータを出力する知識ベースを備えており、さらに前記コーティング管理部は前記コーティングデータ及び、前記プリント媒体の寸法または前記画像特徴データあるいはその両方に基づいて前記コーター制御信号を生成する請求項1又は2に記載のコーティングシステム。
【請求項4】
前記スキャン画像から前記プリント媒体の搬送蛇行状態を示す搬送蛇行データを生成する蛇行データ生成部が備えられている請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
【請求項5】
前記スキャナユニットと前記コーターユニットとがインライン配置されており、さらに前記搬送蛇行データに基づいて前記プリント媒体の蛇行をその搬送過程において修正する蛇行修正ユニットが前記スキャナユニットと前記コーターユニットとの間に介装されている請求項4のコーティングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−73166(P2011−73166A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224315(P2009−224315)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】