説明

コーティング組成物及びその製造方法、並びにコーティング物品

【課題】大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れたコーティング膜を、クラックなどの欠陥を生じさせることなく容易に形成できるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子2と、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子3とを水性媒体中に分散してなることを特徴とするコーティング組成物であり、前記二次粒子は、高分子凝集剤により凝集させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物及びその製造方法、並びにコーティング物品に関する。詳細には、本発明は、各種物品の表面をコーティングするのに用いられるコーティング組成物及びその製造方法、並びに当該コーティング組成物を用いて形成されたコーティング膜を有するコーティング物品に関する。
【背景技術】
【0002】
室内外で使用される各種物品の表面には、粉塵、埃、油煙や煙草のヤニなどの様々な汚れが付着又は固着する。そのため、これらの汚れを防止する方法がいくつか提案されている。例えば、帯電防止剤や撥油性のフッ素樹脂を物品の表面にコーティングすることによって、親油性の汚れが固着するのを防止及び除去し易くする方法が提案されている。
しかしながら、上記のような方法であっても、形成されたコーティング膜の剥離や劣化によって長期間の防汚性能が維持できないという問題がある。
そこで、親水性部分と疎水性部分とが微小領域で相互に独立して露出する表面を形成させることにより、長期間にわたって防汚性能を維持する方法が試みられている。例えば、15nm以下の平均粒径を有するシリカ超微粒子とフッ素樹脂粒子とを含み、シリカ超微粒子の含有量が0.1〜5質量%、シリカ超微粒子とフッ素樹脂粒子との質量比が70:30〜95:5のコーティング組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
他方、凹凸形状を有するコーティング膜を形成することによって防汚性能を高める方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/087877号公報
【特許文献2】特開2004−2187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコーティング組成物から形成されるコーティング膜は、良好な防汚性能を有するものの、大きな汚れ(例えば、50μm以上の汚れ)に対する防汚性能が十分でないという問題がある。
また、特許文献2の方法は、コーティング膜になだらかな凹凸形状が形成され難く、クラックなどの欠陥がコーティング膜に発生し易いという問題がある。加えて、この方法は、電解エッチングなどを用いる特殊な工程を経る必要があるため、余計な時間やコストがかかるという問題もある。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れたコーティング膜を、クラックなどの欠陥を生じさせることなく容易に形成できるコーティング組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れたコーティング物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、コーティング膜の表面形状が防汚性能と密接に関連しているという知見に基づき、所定の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子と共に、所定の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子を用いることで、クラックなどの欠陥がなく、なだらかな凹凸形状を有するコーティング膜を形成でき、所望の防汚性能が達成され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子と、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子とを水性媒体中に分散してなることを特徴とするコーティング組成物である。
【0006】
また、本発明は、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子の分散液を調製する工程と、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子の分散液を調製する工程と、前記一次粒子の分散液と前記二次粒子の分散液とを混合する工程とを含むことを特徴とするコーティング組成物の製造方法である。
さらに、本発明は、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子と、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子とを含むコーティング膜を有することを特徴とするコーティング物品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れたコーティング膜を、クラックなどの欠陥を生じさせることなく容易に形成できるコーティング組成物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れたコーティング物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1のコーティング組成物の模式図である。
【図2a】実施の形態2のコーティング物品の断面図である
【図2b】実施の形態2のコーティング物品の断面図である
【図3】二次粒子を含有しないコーティング膜を有するコーティング物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明のコーティング組成物は、所定の無機微粒子の一次粒子及び所定の無機微粒子の二次粒子を水性媒体中に分散してなるものである。
以下、本発明のコーティング組成物の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態のコーティング組成物の模式図である。図1において、コーティング組成物は、水性媒体1と、水性媒体1中に分散された無機微粒子の一次粒子2及び無機微粒子の二次粒子3とを含む。
【0010】
一次粒子2及び二次粒子3を構成する無機微粒子としては、特に限定されず、シリカ微粒子、チタニア微粒子、アルミナ微粒子などの公知のものを用いることができる。ここで、「微粒子」とは、粒径が小さな粒子を意味し、具体的には、光散乱法により測定した場合に5nm以上25nm以下の平均粒径を有する粒子を意味する。各種無機微粒子の中でも、以下の理由から、無機微粒子はシリカ微粒子であることが好ましい。
シリカ微粒子は、チタニア微粒子やアルミナ微粒子などの他の無機微粒子に比べて、プラスチックやガラスなどに近い屈折率を有する。そのため、シリカ微粒子から構成されるコーティング膜(シリカ膜)は、下地基板との界面や表面での光反射によって、白濁した状態や、ぎらついた状態になり難い。
【0011】
一次粒子2の平均粒径は、光散乱法により測定した場合、5nm以上25nm以下である。ここで、「一次粒子2」とは、分子間の結合を破壊することなく存在する最小単位の粒子を意味する。一次粒子2の平均粒径が25nmを超えると、所望の強度を有するコーティング膜が得られない。一方、一次粒子2の平均粒径が5nm未満であると、コーティング組成物の安定性が低下したり、所望の強度及び防汚性能を有するコーティング膜が得られない。ここで、防汚性能とは、汚れが付着し難い性能、及び付着した汚れが除去され易い性能を意味する。
【0012】
例えば、無機微粒子の一次粒子2にシリカ微粒子を用いる場合、コーティング組成物中のシリカ微粒子は、シリカ微粒子の重量の約15〜30%の重量に相当する表面部分が水に溶解した状態となっており、形成されるコーティング膜においてベースとしての機能の他にバインダーとしての機能もあわせ持つ。しかし、一次粒子2の平均粒径が25nmを超えると、表面部分が水に溶解した状態のシリカ微粒子がコーティング組成物中に少なくなり、バインダーとしての機能が十分に得られない。その結果、形成されるコーティング膜は、クラックなどの欠陥が生じて強度が低下するため、別のバインダーを添加しなければならなくなる。また、一次粒子2の平均粒径が25nmを超えると、形成されるコーティング膜において光の散乱が多くなり、透明性などの外観特性が低下する。逆に、一次粒子2の平均粒径が5nm未満であると、表面部分が水に溶解した状態のシリカ微粒子がコーティング組成物中に多くなり、コーティング組成物中でシリカ微粒子同士が凝集してしまう結果、コーティング組成物の安定性が低下する。また、形成されるコーティング膜の強度及び防汚性能も低下する。
【0013】
本実施の形態のコーティング組成物は、平均粒径が5nm以上25nm以下の一次粒子2を用いているため、上記のような問題を防止できると共に、微細な空隙を有する緻密なコーティング膜を与える。このコーティング膜は、ゾルゲル法や、別のバインダーを添加したコーティング組成物などを用いる従来の方法から得られるコーティング膜に比べて、薄くすることができると共に、透明性が高いため、被コーティング物品の色調や風合いを損なうこともない。
【0014】
本実施の形態のコーティング組成物における一次粒子2の含有量は、0.05質量%以上40質量%以下であることが好ましい。一次粒子2の含有量が0.05質量%未満であると、コーティング膜のベースとなる成分が少なすぎるため、コーティング膜が過度に薄くなったり、コーティング膜がまばらになることがある。一方、一次粒子2の含有量が40質量%を超えると、コーティング膜のベースとなる成分が多すぎるため、コーティング膜が過度に厚くなり、クラックなどの欠陥が生じることがある。
【0015】
二次粒子3は、上記の一次粒子2が複数個凝集して形成された粒子である。
二次粒子3は、公知の凝集方法を用いて作製することができるが、柔軟で可塑性のある凝集粒子を得る観点から、高分子凝集剤を用いて凝集させたものであることが好ましい。長い鎖状の分子構造を有する高分子凝集剤を用いて凝集させることにより、一次粒子2間の結合力が向上し、粒径が大きな凝集体(二次粒子3)を効率良く作製することができる。このような二次粒子3をコーティング組成物に添加することで、クラックなどの欠陥がなく、なだらかな凹凸形状を有するコーティング膜を形成することができ、大きな汚れを始めとする様々な汚れの引っ掛かりを抑制して防汚性能を高めることができる。
【0016】
高分子凝集剤としては、特に限定されることはなく、添加する分散液のpHなどの各種条件に応じて適切なものを選択すればよい。高分子凝集剤の例としては、ノニオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
ノニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルアセトアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、ノニオン性モノマーの重合体であれば特に限定されない。ノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;スチレン;アクリロニトリル;酢酸ビニル;アルキル(メタ)アクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニルピリジン;ビニルイミダノール;アリルアミンなどが挙げられる。これらのノニオン性モノマーは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
アニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの重合体、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体などが挙げられる。アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。これらのアニオン性モノマーは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
カチオン性高分子凝集剤としては、カチオン性モノマーの重合体や、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体などが挙げられる。カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート又はこれらの中和塩や4級塩などが挙げられる。また、分子内にアミジン単位を含有するものも使用可能である。
両性高分子凝集剤の例としては、アクリルアミド・アクリル酸アルキルアミノ(メタ)アクリレート4級塩共重合物などが挙げられる。
【0020】
なお、ノニオン性高分子凝集剤以外の高分子凝集剤は、ナトリウム塩、カリウム塩、塩化物、硫酸塩などのイオン対を有しているため、コーティング組成物の安定性を低下させる原因となる場合がある。そのため、高分子凝集剤は、ノニオン性高分子凝集剤であることがより好ましい。
なお、上記の各高分子凝集剤は一般に市販されているので、市販品を使用することも可能である。また、高分子凝集剤の形態についても、特に限定されることはなく、粉末、分散液、ペースト、エマルジョン、溶液のいずれの形態であってもよい。
【0021】
本実施の形態のコーティング組成物における二次粒子3の含有量は、0.05質量%以上10質量%以下であることが好ましい。二次粒子3の含有量が0.05質量%未満又は10質量%を超えると、所望の凹凸形状を有するコーティング膜を形成できない場合がある。
【0022】
本実施の形態のコーティング組成物における一次粒子2及び二次粒子3の含有量の合計は、0.5質量%以上45質量%以下であることが好ましい。一次粒子2及び二次粒子3の含有量の合計が0.5質量%未満又は45質量%を超えると、所望の形状及び特性を有するコーティング膜を形成できない場合がある。
【0023】
水性媒体1としては、特に限定されないが、水であることが好ましい。また、水及び水と相溶する極性溶剤の混合物を用いることも可能である。
水としては、特に限定されることはないが、水に含まれるミネラル分の量が多い場合には、無機微粒子の平均粒径が小さかったり、濃度が高い場合に、無機微粒子の凝集が生じることがある。そのため、脱イオン水を用いることが好ましい。しかし、無機微粒子の凝集が生じない場合には、水道水などの使用も可能である。
【0024】
極性溶剤の例としては、エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸セロソルブ、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類が挙げられる。
【0025】
本実施の形態のコーティング組成物における水性媒体1の含有量は、特に限定されることはなく、無機微粒子の種類などにあわせて適宜調整すればよいが、一般に40質量%以上99.5質量%以下である。
【0026】
本実施の形態のコーティング組成物は、コーティング組成物の濡れ性やコーティング膜の密着性を向上させる観点から、界面活性剤や有機溶剤などの添加物をさらに含むことができる。また、本実施の形態のコーティング組成物は、カップリング剤やシラン化合物をさらに含むこともでき、これらを添加した場合には、上記の効果の他に、コーティング膜の透明性向上効果、膜強度向上効果、親水性の調整効果を得ることができる。
【0027】
界面活性剤としては、特に限定されることはないが、各種のアニオン系又はノニオン系の界面活性剤が挙げられる。かかる界面活性剤の中でも、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックポリマーやポリカルボン酸型アニオン系界面活性剤などの起泡性の低い界面活性剤が、使用し易いため好ましい。
有機溶剤としては、特に限定されることはないが、各種のアルコール系、グリコール系、エステル系、エーテル系などのものが挙げられる。
【0028】
カップリング剤としては、特に限定されることはないが、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ系、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのメタクリロキシ系やメルカプト系、スルフィド系、ビニル系、ウレイド系などが挙げられる。
【0029】
シラン化合物としては、特に限定されることはないが、トリフルオロプロピルトリメトキシランやメチルトリクロロシランなどのハロゲン含有物、ジメチルジメトキシシランやメチルトリメトキシシランなどのアルキル基含有物、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物、メチルメトキシシロキサンなどのオリゴマーなどが挙げられる。
【0030】
これらの成分の含有量は、コーティング組成物及びこれから形成されるコーティング膜の特性を損なわない範囲であれば特に限定されることはなく、選択した成分にあわせて適宜調整すればよい。
【0031】
上記のような成分を含有する本実施の形態のコーティング組成物は、次のようにして製造することができる。
まず、無機微粒子の一次粒子2の分散液を調製する。一次粒子2の分散液は、一次粒子2が水性媒体1中に分散されたものであればよく、市販のコロイダルシリカや酸化チタンゾルなどを用いてもよい。この分散液における一次粒子2の含有量は、特に限定されないが、一般に0.1質量%以上40質量%以下である。
【0032】
次に、二次粒子3の分散液を調製する。二次粒子3の分散液は、一次粒子2の分散液に高分子凝集剤を配合することによって調製することができる。なお、一次粒子2の分散液は、上記と同じものを使用することができる。一次粒子2の分散液中に高分子凝集剤を配合することで、高分子凝集剤の吸着活性基(例えば、カルボキシル基やアミド基など)の一次粒子2に対する吸着、一次粒子2間の架橋、粒子に吸着した高分子凝集剤同士の吸着などが進行し、凝集体(二次粒子3)が形成される。
【0033】
高分子凝集剤の配合量は、固形分(一次粒子2)100質量部に対して0.005質量部以上0.1質量部以下、好ましくは0.015質量部以上0.5質量部以下である。高分子凝集剤の配合量が0.005質量部未満であると、十分な凝集作用が得られない。一方、高分子凝集剤の配合量が0.1質量部を超えると、一次粒子2の表面にある吸着活性点が全て高分子凝集剤によって占められてしまい、一次粒子2の表面が同一荷電となる結果、高分子凝集剤本来の架橋作用が働かなくなる。また、高分子凝集剤自身は、親水性が強いため、保護コロイドの機能によって一次粒子2を取り囲んで安定化させ、一次粒子2の分散状態が保持されてしまう。また、余分な高分子凝集剤がコーティング組成物中に含まれる結果、形成されるコーティング膜の表面に高分子凝集剤が存在することとなり、所望の防汚性能が得られない。
【0034】
次に、上記で調製された一次粒子2の分散液と二次粒子3の分散液とを混合する。一次粒子2の分散液と二次粒子3の分散液との質量割合は、分散液中の一次粒子2及び二次粒子3の種類にあわせて適宜調整すればよいが、一般に60:40〜99.5:0.5、好ましくは65:35〜99.5:0.5である。二次粒子3の分散液の質量割合が低すぎると、所望の凹凸形状を有するコーティング膜を形成できず、十分な防汚性能が得られない。一方、二次粒子3の分散液の質量割合が高すぎると、形成されるコーティング膜において凸部が占める割合が高くなる。その結果、形成されるコーティング膜は、十分な強度を有さないと共にクラックが入り易くなる。
一次粒子2の分散液と二次粒子3の分散液の混合方法は、特に限定されることはなく、公知の混合手段によって攪拌混合すればよい。
【0035】
上記のようにして製造される本実施の形態のコーティング組成物は、様々な物品を容易にコーティングすることができる。
コーティング方法としては、特に限定されることはなく、コーティング組成物を公知の塗布方法に従って被コーティング物品に塗布した後、乾燥させればよい。公知の塗布方法の中でも、浸漬やかけ塗りなどの方法が好ましく、浸漬が最も好ましい。これらの方法では、様々な物品を欠陥なく均一にコーティングすることができるので有利である。
加えて、ムラが少ないコーティング膜を得るため、気流などを用いて余分なコーティング組成物を除去してもよい。また、浸漬の場合にはコーティング組成物から被コーティング物品をゆっくり引き上げたり、浸漬やかけ塗りの場合には被コーティング物品を回転させるなどして余分なコーティング組成物を振り切ったりすることで、コーティング膜のムラを少なくすることができる。さらに、より確実にコーティング膜のムラをなくしたり、コーティング膜を厚くしたい場合には、上記のコーティングを繰り返してもよい。
【0036】
被コーティング物品に塗布したコーティング組成物の乾燥は、室温、加熱下のいずれで行ってもよい。室温で乾燥させる場合、工程時間を短縮するために、気流などを用いて乾燥を促進させてもよい。また、加熱下で乾燥を行う場合、温風を吹き付けても良いし、乾燥炉中で加温しても良い。
さらに、コーティング膜の成分を硬化及び不溶化させたり、コーティング膜の耐久性を短時間で高めるために、必要に応じて乾燥の後に加熱を行ってもよい。ただし、コーティング膜の成分が室温下で不溶化する場合や、耐久性の向上に長時間かかってもよい場合などには特に加熱を行う必要はない。なお、上記の乾燥と加熱を兼ねて実施してもかまわない。
【0037】
加熱は、温風、赤外線、加熱炉を用いて行うことができる。加熱温度は、特に限定されることはないが、好ましくは40℃以上90℃以下、より好ましくは45℃以上80℃以下である。加熱温度が40℃未満であると、寒冷な環境中において効果はあるが、一般に明確な効果が得られない。一方、90℃を超えると、耐久性の向上効果が得られ難い。また、加熱時間は、特に限定されることはないが、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。加熱時間が10分未満であると、耐久性の向上効果が得られない。
また、余分な高分子凝集剤を除去する観点から、コーティング膜が得られた後に水洗を行ってもよい。
【0038】
実施の形態2.
図2a及び2bは、本実施の形態のコーティング物品の断面図である。図2aにおいて、コーティング物品は、被コーティング物品4と、被コーティング物品4の表面に形成された、一次粒子2及び二次粒子3を含むコーティング膜とを有する。被コーティング物品4に形成されたコーティング膜は、二次粒子3の存在によって、なだらかな凹凸形状を有する。このなだらかな凹凸形状によって、大きな汚れ5の接触面積を少なくすることができ、防汚性能を高めることができる。
これに対して、二次粒子3を含有しないコーティング膜を有するコーティング物品の断面図を図3に示す。このコーティング物品のコーティング膜は、平滑であるため、大きな汚れ5の接触面積が大きいため、大きな汚れ5が付着又は固着し易い。
【0039】
被コーティング物品4に形成されたコーティング膜の凹凸形状において、且つ凸部の幅をa、凸部の高さをb、凹部の幅をcとした場合(図2b参照)、凸部の高さbは、好ましくは0.5μm以上12μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下、最も好ましくは2μm以上8μm以下であり、b/aは、好ましくは0.1以上1.2以下、より好ましくは0.5以上1.0以下、最も好ましくは0.6以上0.8以下である。凸部の高さbが0.5μm未満及びb/aが0.1未満であると、表面が平滑すぎて、所望の防汚性能が得られないことがある。一方、凸部の高さbが12μm超過及びb/aが1.2超過であると、凸部に汚れ5が引っ掛かり易くなると共に、コーティング膜の強度が十分でなく、クラックが生じることもある。
また、a/cは、好ましくは1.5以上6.5以下、より好ましくは2.0以上5.0以下、最も好ましくは2.5以上4.0以下である。a/cが1.5未満であると、コーティング膜中の凸部の占める割合が多くなり、クラック等の欠陥が入り易くなると共に、十分な耐久性が得られない。一方、a/cが6.5超過であると、コーティング膜中の凹部に汚れ5が入り込み易くなる。その結果、コーティング膜の表面に付着する汚れ5によってコーティング膜の空隙が少なくなるため、汚れ5が弾かれ難くなり、防汚性能が低下する。
【0040】
上記のような凹凸形状を有するコーティング膜を有するコーティング物品は、実施の形態1のコーティング組成物を被コーティング物品4にコーティングすることによって製造することができる。コーティング方法は、上述の通りである。
このようにして製造されるコーティング物品は、大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れている。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
脱イオン水及び平均粒径15nmの酸化チタンを含む酸化チタンゾル(昭和電工株式会社製、酸化チタンの含有量:20質量%)を分散液A−1として準備した。この分散液A−1とは別に、同じ組成の酸化チタンゾルを準備し、この酸化チタンゾル100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.01質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−1を得た。次に、分散液A−1と分散液B−1とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0042】
(実施例2)
脱イオン水及び平均粒径10nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:0.1質量%)を分散液A−2として準備した。この分散液A−2とは別に、脱イオン水及び平均粒径10nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:20質量%)を準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.01質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−2を得た。次に、分散液A−2と分散液B−2とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0043】
(実施例3)
脱イオン水及び平均粒径10nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:50質量%)を分散液A−3として準備した。この分散液A−3とは別に、実施例2と同じ方法で分散液B−2を調製した。次に、分散液A−3と分散液B−2とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0044】
(実施例4)
脱イオン水及び平均粒径10nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:20質量%)を分散液A−4として準備した。この分散液A−4とは別に、同じ組成のコロイダルシリカを準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.1質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−3を得た。次に、分散液A−4と分散液B−3とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0045】
(実施例5)
実施例4と同じ方法で分散液A−4を調製した。この分散液A−4とは別に、同じ組成のコロイダルシリカを準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.003質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−4を得た。次に、分散液A−4と分散液B−4とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0046】
(実施例6)
実施例4と同じ方法で分散液A−4を調製した。この分散液A−4とは別に、同じ組成のコロイダルシリカを準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.008質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−5を得た。次に、分散液A−4と分散液B−5とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0047】
(実施例7)
実施例4と同じ方法で分散液A−4を調製した。この分散液A−4とは別に、同じ組成のコロイダルシリカを準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.005質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−6を得た。次に、分散液A−4と分散液B−6とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0048】
(実施例8)
実施例4と同じ方法で分散液A−4を調製した。この分散液A−4とは別に、同じ組成のコロイダルシリカを準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.007質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−7を得た。次に、分散液A−4と分散液B−7とを65:35の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0049】
(実施例9)
実施例8と同じ方法で分散液A−4及び分散液B−7を調製した。次に、分散液A−4と分散液B−7とを99.5:0.5の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0050】
(実施例10)
実施例4と同じ方法で分散液A−4を調製した。この分散液A−4とは別に、同じ組成のコロイダルシリカを準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してポリ塩化アルミニム(セントラル硝子株式会社製)0.01質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−8を得た。次に、分散液A−4と分散液B−8とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0051】
(比較例1)
脱イオン水及び平均粒径35nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:20質量%)を分散液A−5として準備した。この分散液A−5とは別に、脱イオン水及び平均粒径10nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:30質量%)を準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.01質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−9を得た。次に、分散液A−5と分散液B−9とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0052】
(比較例2)
実施例4と同じ方法で分散液A−4を調製し、これをコーティング組成物として準備した。
【0053】
(比較例3)
比較例1と同じ方法で分散液A−5を調製し、これをコーティング組成物として準備した。
【0054】
(比較例4)
脱イオン水及び平均粒径30nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:20質量%)を分散液A−6として準備した。この分散液A−6とは別に、脱イオン水及び平均粒径50nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:20質量%)を準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.1質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−10を得た。次に、分散液A−6と分散液B−10とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0055】
(比較例5)
比較例4と同じ方法で分散液A−6を調製した。この分散液A−6とは別に、脱イオン水及び平均粒径10nmのシリカを含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、シリカの含有量:20質量%)を準備し、このコロイダルシリカ100質量部に対してノニオン性高分子凝集剤(MTアクアポリマー株式会社製)0.001質量部を添加した後、攪拌混合することによって分散液B−11を得た。次に、分散液A−6と分散液B−11とを80:20の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0056】
(比較例6)
比較例4と同じ方法で分散液A−6を調製した。この分散液A−6とは別に、実施例2と同じ方法で分散液B−2を調製した。次に、分散液A−6と分散液B−2とを99.9:0.1の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0057】
(比較例7)
比較例4と同じ方法で分散液A−6を調製した。この分散液A−6とは別に、実施例2と同じ方法で分散液B−2を調製した。次に、分散液A−6と分散液B−2とを40:60の質量割合で攪拌混合し、コーティング組成物を得た。
【0058】
上記のようにして調製した実施例1〜10及び比較例1〜7のコーティング組成物の組成を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
100mm×30mm×1mmのステンレス基材に、実施例1〜10及び比較例1〜7のコーティング組成物を塗布した後、エアブローによって余分なコーティング組成物を吹き飛ばし、乾燥させることでコーティング膜を形成させた。
形成されたコーティング膜について、凹凸形状、初期接触角θ、防汚性能及び耐久性を評価した。
【0061】
(1)凹凸形状の評価
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ株式会社製S−3000N)を用いて、凸部の幅a、凹部の幅cを測定した。
また、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製サーフコーダSE4000)を用いて、凸部の高さbを測定した。
(2)初期接触角θの評価
接触角計(協和界面化学株式会社製DM100)を用いて、接触角θを測定した。なお、液体としては、純水を用いた。
【0062】
(3)防汚性能の評価
防汚性能は、コーティング膜に対するカーボン粉塵及びナイロンパイル(50μm)の付着性を評価した。
カーボン粉塵(カーボンブラック)の付着性は、エアーを用いてカーボン粉塵をコーティング膜に吹き付けた後、黒色のカーボン粉塵によるコーティング膜の着色を目視観察にて五段階評価した。この評価において、カーボン粉塵の付着がほとんどなかったものを1とし、カーボンブラックの付着が多かったものを5と表記する。
ナイロンパイルの付着性は、エアーを用いてナイロンパイルをコーティング膜に吹き付けた後、コーティング膜上のナイロンパイルの付着の程度を目視観察にて五段階評価した。この評価において、ナイロンパイルの付着がほとんどなかったものを1とし、ナイロンパイルの付着が多かったものを5と表記する。
【0063】
(4)耐久性の評価
折り畳んで水で湿らせたガーゼを、5cm角の押し付け面でコーティング膜に押し付け、100g重/cmの加重をかけながら10cmの往復運動を行った。この評価において、コーティング膜が剥離し始めるまでの往復回数を耐久性の強さの指標とした。
【0064】
凹凸形状の評価結果を表2、初期接触角θ、防汚性能及び耐久性の評価結果を表3に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
表3に示されているように、実施例1〜10のコーティング組成物から得られたコーティング膜はいずれも、カーボン粉塵及びナイロンパイルの付着が少なく、防汚性能が高いことがわかった。また、これらのコーティング膜は、親水性のシリカ膜がベースとなっているために接触角も低く、耐久性も良好であった。特に、実施例6のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、カーボン粉塵及びナイロンパイルの付着がほとんどなく、最も防汚性能が高かった。
これに対して比較例1〜7のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、カーボン粉塵及び/又はナイロンパイルの付着の付着が多く、防汚性能が十分でなかった。また、比較例4及び7のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、耐久性も十分ではなかった。
【0068】
以上の結果について、表2の凹凸形状の評価結果を基に考察すると、実施例1〜10のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、凸部の幅a、凸部の高さb及び凹部の幅cが適切な範囲に制御されたなだらかな凹凸形状を有しているために、防汚性能や耐久性が向上したものと考えられる。
一方、比較例4のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、凸部の高さbが大きすぎ、適切な凹凸形状を有していない。そのため、このコーティング膜では、クラックなどの欠陥が発生して耐久性が低下すると共に、欠陥の発生によって防汚性能が低下したものと考えられる。また、このコーティング膜は微白濁色であり、透明性も十分でなかった。また、比較例5のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、b/aの値が低すぎ、適切な凹凸形状を有していない。そのため、このコーティング膜では、防汚性能が十分でなかったものと考えられる。また、比較例6のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、凹部の幅が大きすぎるため、a/cの値が高くなり、適切な凹凸形状を有していない。そのため、このコーティング膜では、隙間にナイロンパイルが付着し、防汚性能が十分でなかったものと考えられる。比較例7のコーティング組成物から得られたコーティング膜は、二次粒子の割合が多すぎるため、a/cの値が低くなり、適切な凹凸形状を有していない。そのため、このコーティング膜では、クラックなどの欠陥が発生して耐久性が低下すると共に、欠陥の発生によって防汚性能が低下したものと考えられる。
【0069】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れたコーティング膜を、クラックなどの欠陥を生じさせることなく容易に形成できるコーティング組成物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、大きな汚れを始めとする様々な汚れに対する防汚性能に優れたコーティング物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 水性媒体、2 一次粒子、3 二次粒子、4 被コーティング物品、5 汚れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子と、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子とを水性媒体中に分散してなることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記二次粒子は、高分子凝集剤により凝集させていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記高分子凝集剤は、陽イオン性高分子凝集剤、陰イオン性高分子凝集剤、非イオン性高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記無機微粒子はシリカ微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記一次粒子及び前記二次粒子の含有量の合計は、0.5質量%以上45質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子の分散液を調製する工程と、
5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子の分散液を調製する工程と、
前記一次粒子の分散液と前記二次粒子の分散液とを混合する工程と
を含むことを特徴とするコーティング組成物の製造方法。
【請求項7】
前記二次粒子の分散液は、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子の分散液に高分子凝集剤を配合することによって調製されることを特徴とする請求項6に記載のコーティング組成物の製造方法。
【請求項8】
前記高分子凝集剤は、陽イオン性高分子凝集剤、陰イオン性高分子凝集剤、非イオン性高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項7に記載のコーティング組成物の製造方法。
【請求項9】
前記無機微粒子はシリカ微粒子であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物の製造方法。
【請求項10】
5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子と、5nm以上25nm以下の平均粒径を有する無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子とを含むコーティング膜を有することを特徴とするコーティング物品。
【請求項11】
前記コーティング膜は凹凸形状を有し、且つ凸部の幅をa、凸部の高さをbとした場合に、bが0.5μm以上12μm以下、b/aが0.1以上1.2以下であることを特徴とする請求項10に記載のコーティング物品。
【請求項12】
凹部の幅をcとした場合に、a/cが1.5以上6.5以下であることを特徴とする請求項11に記載のコーティング物品。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−122095(P2011−122095A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281995(P2009−281995)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】