説明

コーティング装置

【課題】 指輪やメガネフレームの表面に容易且つ均一に薄膜のコーティングを施すことができるコーティング装置を提供する。
【解決手段】 可撓性の二重ノズル104と、該二重ノズル104の外側を囲むように配置されるガイド106とを備え、高圧の気体と液体とを混合して噴射する噴射装置101によって、ブース内に収容された指輪8a等の被コーティング品の表面にコート液を塗付するコーティング装置であって、前記被コーティング品を保持する治具17を自転及び公転可能に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、指輪やメガネフレーム等の表面にコーティングを施すコーティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、大気中の硫化物によって銀メッキを施した指輪等の製品の表面が褐色に変色したり、汗などの塩分が付着することで洋銀製のメガネフレーム等の製品の表面に緑青が発生したりする場合があるため、このような製品の中には、無機質のコート材を表面に塗布して硫化物や塩分の付着を防止するようにしたものがある。
ところが、上述した無機質のコート材を製品に吹きつける際に塗装用噴射ガンを用いるため、コート材の粒子が粗い状態で噴射され、コーティングの塗膜が必要以上に厚く形成されてしまうことがある。そのため、可撓性の扁平部を有したノズルを具備し、液体と圧縮空気とを混合したものを前記ノズルの内周側に通過させることにより該ノズルを扁平部の扁平方向において湾曲させつつ噴出先端側に往復運動を生じさせて、液体を微粒子化して噴射する流体噴射ガンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−154294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した流体噴射ガンを用いてコート材を微粒子化して指輪やメガネフレーム等の表面に塗布したとしても、指輪、メガネフレーム等が複雑な形状を有していると、微粒子化したコート材が製品の表面全体に行き渡らずに塗りむらや塗り残しが発生する場合があるという課題がある。
そして、塗りむらや塗り残しが発生しないようにコーティング作業を実施しようとすると作業工数が増え作業者の負担が増加してしまうという課題がある。
【0004】
そこで、この発明は、指輪やメガネフレームの表面に容易且つ均一に薄膜のコーティングを施すことができるコーティング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、可撓性の噴射ノズル(例えば、実施の形態における二重ノズル104)と、該噴射ノズルの外側を囲むように配置されるガイド(例えば、実施の形態におけるガイド106)とを備え、高圧の気体と液体とを混合して噴射する噴射ガン(例えば、実施の形態における噴射装置101)によって、ブース(例えば、実施の形態におけるコーティングブース6)内に収容された被コーティング品(例えば、実施の形態における指輪8a、メガネフレーム8b)の表面にコート液を塗付するコーティング装置であって、前記被コーティング品を保持する保持手段(例えば、実施の形態における治具17)を自転及び公転可能に設けたことを特徴とする。
このように構成することで、被コーティング品を保持した保持手段をブース内に収容して自転及び公転させながら噴射ノズルでコート材を噴射して被コーティング品の表面に薄膜のコーティングを均一に形成することができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記保持手段は複数の被コーティング品を配列状態で同時に保持可能に設けられ、前記噴射ガンの噴射口が被コーティング品の配列方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする。
このように構成することで、一度のコーティング作業で複数の被コーティング品の表面にコーティング層を均一且つ容易に形成することができる。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記保持手段は指輪(例えば、実施の形態における指輪8a)を保持するものであってシャフト(例えば、実施の形態におけるシャフト40)を挟みこむように両側に配置される一対の板バネ部材(例えば、実施の形態における板バネ部材41)を有することを特徴とする。
このように構成することで、指輪をその内側に保持手段を通すように指しこむと、一つの板バネ部材が指輪の内径に応じて変形し、この変形の不勢力で指輪を保持する。これにより、簡単な構造で複数の指輪を保持することができると共に、一つの保持手段で広範囲の指輪サイズに対応することができる。
【0008】
請求項4に記載した発明は、駆動源としてのモータ(例えば、実施の形態におけるモータ21)が接続されるサンギヤ(例えば、実施の形態におけるサンギヤ23)と、このサンギヤの周囲に複数設けられ前記保持手段を支持するプラネタリギヤ(例えば、実施の形態におけるプラネタリギヤ27)と、前記サンギヤとプラネタリギヤとを軸支するキャリア(例えば、実施の形態におけるキャリア25)と、このキャリアの回転を停止又は許容するキャリア停止手段(例えば、実施の形態におけるアクチュエータ31)とを設けたことを特徴とする。
このように構成することで、キャリア停止手段でキャリアの回転を許容すると、モータの駆動で回転するサンギヤに噛み合うプラネタリギヤがキャリアと共にサンギヤの周囲を旋回し、プラネタリギヤに支持された保持手段が公転する。他方、キャリア停止手段でキャリアの回転を停止させると、モータの駆動で回転するサンギヤに噛み合うプラネタリギヤがサンギヤの周囲で旋回できずに自転する。これにより、単一の駆動源で前記保持手段を自転及び公転させることができると共に、キャリア停止手段によってキャリアの回転を停止させて保持手段を公転状態から自転状態へ移行させることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、被コーティング品を保持した保持手段をブース内に収容した状態で自転及び公転させながら噴射ノズルでコート材を噴射して被コーティング品の表面に薄膜のコーティングを均一に形成することができ、したがって、コーティング完了品の耐食性と外観品質とを向上し商品性の向上を図ることができる効果がある。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1の効果に加え、一度のコーティング作業で複数の被コーティング品の表面にコーティング層を均一且つ容易に形成することができるため、作業者の負担を軽減することができる効果がある。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、請求項2の効果に加え、指輪をその内側に保持手段を通すように指しこむと、一つの板バネ部材が指輪の内径に応じて変形し、この変形の不勢力で指輪を保持する。これにより、簡単な構造で複数の指輪を保持することができると共に、一つの保持手段で広範囲の指輪サイズに対応することができるため、保持手段の部品点数を削減してコストの低減を図ることができる効果がある。
【0012】
請求項4に記載した発明によれば、上述の効果に加え、キャリア停止手段でキャリアの回転を許容すると、モータの駆動で回転するサンギヤに噛み合うプラネタリギヤがキャリアと共にサンギヤの周囲を旋回し、プラネタリギヤに支持された保持手段が公転する。他方、キャリア停止手段でキャリアの回転を停止させると、モータの駆動で回転するサンギヤに噛み合うプラネタリギヤがサンギヤの周囲で旋回できずに自転する。これにより、単一の駆動源で前記保持手段を自転及び公転させることができると共に、キャリア停止手段によってキャリアの回転を停止させて保持手段を公転状態から自転状態へ移行させることができるため、必要に応じて保持手段の自転と公転との切換を容易に行うことができ、したがって、駆動源による消費エネルギーの低減を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、この実施の形態のコーティング装置1は、銀めっきを施した指輪(被コーティング品)8aの表面に無機質系(例えば、シリカ系等)のコート液をコーティングするためのものであり、その下部に配置された装置本体2にはコントロールユニット3、電源回路(図示せず)等が収容され、装置本体2の側面には電源回路の電源スイッチ4、電源ランプ5、コントロールユニット3の入力用操作スイッチ(図示せず)等が配置されている。また、この装置本体2の上方には箱状のコーティングブース(ブース)6と噴射装置収容部7とが隣接して配置されている。
【0014】
コーティングブース6は指輪8aを収容する閉空間を構成するものであり、その上部には指輪8aを出し入れするための開口部9が形成され、ここに開口部9を閉塞する蓋10が取り付けられている。この蓋10はコーティングブース6の正面上部から上面に渡る範囲に形成されており、図示しないヒンジによって開閉自在に設けられている。さらに、蓋10にはこれを開方向に付勢するガスダンパー(図示せず)と蓋10の閉塞状態を維持するロック機構(図示せず)とが取り付けられており、前記ロック機構を解除することで蓋10が跳ね上がり、開放状態が維持されるようになっている。尚、指輪8aの出し入れができる蓋10であれば、例えば、開口部9をコーティングブース6の側壁部分に形成し、ここに蓋10を設けるようにしてもよい。
【0015】
また、コーティングブース6と、これに隣接する噴射装置収容部7との間には仕切り壁11が形成されている。この仕切り壁11には上下方向に沿ってスリット12が形成され、このスリット12を介して前述したコーティングブース6と噴射装置収容部7とが連通するようになっている。
【0016】
さらに、前記仕切り壁11の向かい側に配置された前記コーティングブース6の側壁にはファン14が取り付けられており、このファン14に接続された排気用のダクト15を介してコーティングブース6内の空気が排気可能になっている。このファン14の風量は大小の二段階に切替え可能になっており、ファン14の運転時間はタイマーによって設定できるようになっている。
【0017】
そして、一端が前記ファン14に接続されたダクト15の他端にはエアフィルタ(図示せず)が着脱自在に取り付けられており、排気空気に含まれるコート液などの微粒子が外部に排出されないようになっている。前記ファン14は、この風量と運転時間とが装置本体2のコントロールユニット3を介して制御可能になっている。ここで、ファン14を駆動している状態では、コーティングブース6内部の空気がダクト15を介してコーティングブース6の外部に排出され、一方、前記蓋10と開口部9との隙間等からコーティングブース6内に外気が導入されるようになっている。
【0018】
前記コーティングブース6内にはターンテーブル16が設けられている。このターンテーブル16は指輪8aを保持する治具(保持手段)17を支持すると共にこの治具17を自転及び公転させるためのものであり、この上面には8個の治具ホルダ18が同一円周上に所定間隔で配置されている。この治具ホルダ18は中央に凹部19が形成された有底円筒形状をなしている。
【0019】
図4に示すように、ターンテーブル16は、装置本体2に収容固定されたモータ21を駆動源としており、コントロールユニット3によって駆動制御される。このモータ21の駆動軸22にはサンギヤ23が固定されている。そして、装置本体2の上壁下面の軸受け収容部24と、サンギヤ23の上方に配置されているキャリア25の上面とにはダブルベアリング26が配置されており、このダブルベアリング26によって駆動軸22が軸支されている。
【0020】
サンギヤ23の径方向外側にはサンギヤ23と噛合する8個のプラネタリギヤ27が所定間隔で配置されている。このプラネタリギヤ27はキャリア25の上面に配置されたダブルベアリング26によって軸支されており、このプラネタリギヤ27の回転軸28の上端に前述した治具ホルダ18が取付られている。尚、前記プラネタリギヤ27は8個に限るものではなく6個や10個など適宜設定してもよい。また、上記ダブルベアリング26に限るものではなく駆動軸22、回転軸28を軸支できるものであればよい。
【0021】
キャリア25は、サンギヤ23とプラネタリギヤ27との上方を覆う円板形状に形成され、このプラネタリギヤ27よりも径方向外側が有段成型されている。この有段成型された下段部29にはプラネタリギヤ27と対応した位置に円周外側から内側に向かう切り欠き30が所定間隔で形成されている。また、この切り欠き30の下方には棒状のロッド32を出没自在に備えたアクチュエータ(キャリア停止手段)31が配置されており、このアクチュエータ31が前述したコントロールユニット3に接続され、このコントロールユニット3によってロッド32の出没状態が制御されている。
【0022】
具体的には、前記アクチュエータ31のロッド32を突出状態とした場合、このロッド32が装置本体2の上壁に形成された孔33を貫通しコーティングブース6側に突出するようになっており、この結果、このロッド32と切り欠き30とが噛み合うようになっている。そして、前記切り欠き30は、ロッド32がこの切り欠き30と噛み合った時に、所定の治具ホルダ18が後述する噴射装置101の噴射方向の正面位置に配置されるようになっている。
【0023】
次に、ターンテーブル16の作用を説明する。
まず、モータ21が作動することでサンギヤ23が回転して、このサンギヤ23と噛合するプラネタリギヤ27に駆動力が伝達される。初期状態としてはアクチュエータ31のロッド32が突出してキャリア25の回転が停止状態となっており、プラネタリギヤ27の回転軸28の位置が固定され、プラネタリギヤ27にサンギヤ23の回転が伝達されてその場で自転し、この結果、プラネタリギヤ27の回転軸28上の治具ホルダ18に支持された治具17が自転する。
【0024】
一方、ロッド32を没している場合には、キャリア25が回転可能状態となる。そのため、モータ21によってサンギヤ23を回転させると、このサンギヤ23の駆動軸22とキャリア25の上面のダブルベアリング26との両者の摺動抵抗およびサンギヤ23に噛合するプラネタリギヤ27の回転軸28とダブルベアリング26との摺動抵抗によってキャリア25がプラネタリギヤ27を介してサンギヤ23に引き摺られ、サンギヤ23の回転と同方向に、且つ、サンギヤ23と一体に回転し、プラネタリギヤ27の回転軸28上の治具ホルダ18に支持された治具17が駆動軸22を中心に公転することとなる。
【0025】
図5、図6は指輪8aを保持するための治具17を示している。この治具17は端部周縁に面取り加工が施された円柱状のシャフト40と、このシャフト40の長手方向に沿う2枚の板バネ部材41とを備えており、前記シャフト40の一端が前記治具ホルダ18の凹部19に挿入固定可能になっている。各板バネ部材41は、弾性を有したPET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂で形成されており、各板バネ部材41の幅方向中心には前記シャフト40の軸方向に沿う稜線42がそれぞれ形成されている。そして、各板バネ部材41は、各稜線42が前記シャフト40の径方向外側に向かって凸となるように、シャフト40を挟んで対向配置され、さらに、これら板バネ部材41の側縁がお互いに当接して前記シャフト40の周囲を覆うようになっている。尚、図5は指輪8aが4個程度保持可能な治具の一例を示している。
【0026】
各板バネ部材41の幅は保持対象となる指輪8aの最大のものの内径よりも若干広く設定されており、この幅が指輪8aの挿入によって弾性的に変化するようになっている。また、前記板バネ部材41の上端と下端とには、この端部に向かうにつれて板バネ部材41の幅が幅狭になる収束部43が形成されており、この収束部43の先端が熱収縮チューブ44で前記シャフト40の上部と下部とにそれぞれ固定されている。尚、板バネ部材41のシャフト40への固定は、熱収縮チューブ44に限らず、例えば、接着剤等で固定するようにしてもよい。
【0027】
ところで、前記噴射装置収容部7にはコート液を噴射する噴射装置(噴射ガン)101が収容されている。図7に示すように、前記噴射装置101は、可撓性を有する円筒状の外側ノズル102および該外側ノズル102の内側に挿入される可撓性を有する円筒状の内側ノズル103を備えた二重ノズル104と、該二重ノズル104に連結される連結部105と、該連結部105に二重ノズル104の径方向外側に配置されるように取り付けられた断面円形状のガイド106と、連結部105の二重ノズル104の突出側に対し反対側に連結されたガン本体107と、連結部105の下側に取り付けられた液体貯留部108とを有している。なお、二重ノズル104とガイド106とで流体噴出ノズルが構成されている。
【0028】
連結部105は、一端側の取付部110に外側ノズル102の基端部が取り付けられており、またその内側に内側ノズル103を挿通させている。ここで、連結部105の内部には外側ノズル102と内側ノズル103との隙間111に通じる気体流路112が形成されている。
【0029】
連結部105には、取付部110に対し反対側にガン本体107が取り付けられており、該ガン本体107は、連結部105に対し反対側が、この噴射装置101を構成する気体供給源114に連結されるようになっている。このガン本体107はレバー115の操作で気体供給源114からの気体を連結部105の気体流路112に導入する。ここで、前記気体供給源114はコーティング装置1の外部に配置され、ホース等を介して接続されている。なお、気体供給源114は気体を加圧状態で供給するもので、この場合は、圧縮空気を供給するエアコンプレッサ等の圧縮空気供給源が用いられる。
【0030】
連結部105に挿通された内側ノズル103は、一部が気体流路112を越えて液体貯留部108に向け伸びており、その端部側が該液体貯留部108に設けられた挿入管部109に連結されている。連結部105と液体貯留部108との間には内側ノズル103の図示せぬ内部流路をレバー115の操作で開閉させる開閉弁117が設けられている。液体貯留部108は、液体を加圧せずに貯留させるもので、この場合は、洗浄液を貯留する。
【0031】
ここで、外側ノズル102は、全体が例えばナイロン・テフロン(登録商標)・ポリウレタン・ポリプロピレン等の合成樹脂の可撓性材料からなるもので、内側ノズル103も、少なくとも外側ノズル102の内側に配置される部分が、同様の合成樹脂の可撓性材料からなっている。そして、内側ノズル103の先端部は外側ノズル102から若干外側に突出している。
【0032】
外側ノズル102には、外側に合成樹脂製の重量部120が複数固定されており、重量部120と重量部120との間に、回転可能なガイド体121を有している。
【0033】
上記の重量部120は、二重ノズル104がガイド106に沿って旋回する際(後述する)の旋回を効率良く行わせるために先端部に重みを持たせるものであり、ガイド体121は、二重ノズル104がガイド106に沿って旋回する際にガイド106に主に接触して二重ノズル104の摩耗を防止するためのものである。
【0034】
ガイド106は、合成樹脂からなるとともに連結部105の取付部110に螺合されるもので、該取付部110から離れるほど拡径する円筒形状(いわゆるラッパ型)をなしている。ガイド106には、穴部122が形成されている。
【0035】
液体貯留部108は、開閉弁117に連結されるとともに挿入管部109を突出させる蓋体123と、該蓋体123に着脱可能に連結される容器体124とを有しており、容器体124内に液体を貯留させる。なお、蓋体123が容器体124に取り付けられた状態で挿入管部109は端部が容器体124の液体内に挿入される。
【0036】
ところで、噴射装置101のガイド106の拡径した先端部分は前述したスリット12からコーティングブース6内を臨むように配置されている。また、このガイド106は、スリット12に沿って、例えば、モータ等で駆動するアクチュエータによって上下方向に移動可能に設けられている。このアクチュエータを駆動するモータ等の駆動源は、前述した装置本体2内のコントロールユニット3からの制御信号に基づいてガイド106の位置を所定時間(可変)かけて所定回数(可変)往復させた後に停止させ所定時間後(可変)に再び上下動を開始させるという動作を繰り返し行うように設定されている。ここで、ガイド106の上下動のストローク量はコントロールユニット3によって可変となっており、前述した指輪8aの保持位置の上端、下端に基づいて予め設定できるようになっている。尚、この実施の形態ではガイド106だけを上下動させているが、噴射装置101を一体に形成してこれを上下動可能に構成してもよい。
【0037】
以上の構成の噴射装置101の作用について説明する。
作業者が、レバー116により開閉弁117を開状態としてガン本体107のレバー115を操作すると、気体供給源114からの気体すなわち圧縮空気が連結部105の気体流路112を介して外側ノズル102と内側ノズル103との隙間111を通過して二重ノズル104から外に噴出することになり、このとき、二重ノズル104は、断面円形状をなすガイド106に案内されて先端側が外側に傾斜しつつ円形状の軌跡を描くように旋回させられることになる。
【0038】
その一方で、外側ノズル102と内側ノズル103との隙間111を通過して二重ノズル104から空気が外に噴出すると、該空気の噴出で内側ノズル103の開口部付近が負圧となり、挿入管部109および内側ノズル103の内側流路を介して液体貯留部108から液体すなわち洗浄液を吸い上げ、空気と混合状態で噴出させることになる。以上の結果、二重ノズル104の先端から、空気と洗浄液とが混合されたミスト状態で、拡径する円筒形状に噴出することになる。しかも、二重ノズル104の旋回により勢いが増幅され波動流となって空気と洗浄液とがミスト状態で噴出する。なお、このとき穴部122は、該穴部122からガイド106内に入り該ガイド106の先端部に抜ける空気の誘導流を発生させる。
【0039】
一方、作業者が、レバー116により開閉弁117を閉状態としてガン本体107のレバー115を操作すると、気体供給源114からの気体すなわち圧縮空気が連結部105の気体流路112を介して外側ノズル102と内側ノズル103との隙間111を通過して二重ノズル104から外に噴出することになり、このとき、二重ノズル104は、断面円形状をなすガイド106に案内されて先端側が外側に傾斜しつつ円形状の軌跡を描くように旋回させられることになり、その結果、二重ノズル104の先端から、空気のみを、拡径する円筒形状に噴出させることになる。
【0040】
以上述べたように、この実施の形態によれば、複数の指輪8aをそれぞれの治具17に保持し、この保持状態となった8個の治具17を開口部9からコーティングブース6内に導入し、これら治具17の下端をターンテーブル16上の治具ホルダ18の凹部19に差し込み、開口部9の蓋10を閉塞してコーティングブース6を閉空間にすることができる。これによって、一度のコーティング作業で多数の指輪8aの表面にコーティングを行うことができると共に、閉空間を形成することで、コート液を周囲に飛散させずに作業を行うことができる。
【0041】
さらに、噴射装置101において、ミスト状態となったコート液が指輪8aの隅々まで回りこんで付着すると共に、薄膜のコーティング層を形成することができるため、少量のコート液で広範囲のコーティングを行うことができ、この結果、余分なコート液の消費を防止してコストの低減を図ることができる。
【0042】
また、電源スイッチ4をONにしてモータ21を駆動させると、各治具17が自転を開始する。この時、ガイド106の開口正面に配置する治具17に保持された指輪8aがコーティング対象物となり、噴射装置101のガイド106が上下方向への移動を開始して微粒子化したコート液が自転している指輪8aの表面に均一に塗布される。よって、単一の治具17に保持された複数の指輪8aの表面に均一で薄膜のコーティング層を形成することができるため、コーティングが完了した指輪8aの耐食性と外観品質とを向上することができる。
【0043】
そして、ガイド106の往復回数が所定回数に達した時点で、ガイド106の上下動とコート液の噴射とを停止し、同時にアクチュエータ31のロッド32を没して前記ターンテーブル16のキャリア25をモータ21の回転方向に回転させることで、治具17が公転する。そして、コーティングが完了した指輪8aを保持している治具17の隣に配置された治具17が前記ガイド106の正面位置になったところで前記ロッド32が再び突出して治具17の公転が禁止され、治具17の自転が再開する。よって、コーティングブース6内に収容された治具17が公転によって噴射装置101の噴射方向正面に順次配置されることとなるため、複数の指輪8aを自動的に処理することができ、この結果、作業者の負担を軽減することができる。
【0044】
また、コーティングブース6内に収容された全ての指輪8aのコーティング処理が終了した時点でモータ21と噴射装置101によるコート液の噴射を停止させ、ファン14によってコーティングブース6内の排気を行うことができる。よって、コーティングが完了した指輪8aを前記コーティングブース6から取り出す際に蓋10を開放しても微粒子化されたコート液がコーティング装置1の外部に漏れることはなくコーティング作業終了後すぐにコーティングが完了した指輪8aを取り出すことができるため、コーティング作業のサイクルを短くすることができ、作業効率を向上させることができる。
【0045】
さらに、微粒子化されたコート液の噴射を終了した状態であっても、例えば、前記治具17を自転及び公転させて、コーティングブース6内に充満したコート液を指輪8aの表面に付着させることができるため、更なるコーティング層の均一化を図ることが可能になる。また、噴射装置101からの噴射の有無に関わらず前記治具17を自転、公転させることで、コート液が垂れるのを防止することができ、均一にコーティングを施すことができる。
【0046】
そして、指輪8aを保持する治具17に樹脂製の板バネ部材41を設けこの板バネ部材41の端部に収束部43を形成しているため、指輪8aをスムーズに着脱することができ、さらに、指輪8aを装着する際に、シャフト40に接していた稜線42付近の板バネ部材41がシャフト40から剥離する方向に変移するため、広範囲のサイズの指輪8aを同じ治具17を用いて複数保持することができる。そして、板バネ部材41の側縁のみが、前記指輪8aの内周に接することとなるため、コート液の塗り残しを最小限にすることができる。
【0047】
また、コントロールユニット3によってガイド106の往復回数や移動速度、治具17の自転及び公転の速度、ファン14の回転等が制御されているため、コーティング作業を一元的に管理することができ、この結果、作業者の負担を軽減すると共に作業時間を短縮し、さらに、製品毎のコーティングのばらつきを抑制することができる。
【0048】
次に、図8に基づいて上述した実施の形態の他の態様を説明する。尚、この他の態様では、前述した実施の形態の指輪8aを保持する治具17をメガネフレームを保持する治具に置き換えたものであるため同一部分に同一符号を付して説明する。
図8に示すように、洋銀製等のメガネフレーム(被コーティング品)8bを保持するための治具17は円柱状のシャフト40に前記メガネフレーム8bを係止する金具45を所定間隔で配置したものである。この金具45は針金状のばね材で形成され、その中央部には下方に延出する被固定部46が形成されている。この被固定部46は、シャフト40の幅と同等の幅を有した略Uの字状に屈曲形成されたものであり、この被固定部46がシャフト40に熱収縮チューブ44などで固定されている。
【0049】
また、金具45の被固定部46の両側には前方に延びるアーム47、47がそれぞれ屈曲形成されている。これらのアーム47、47の前端部分の間隔が鼻当てを支持する2つのクリングスアーム48の間隔よりも広い幅に設定されている。また、これらアーム47,47の前端部分には左右外側に向かって屈曲形成された爪49が設けられ、この爪49が、クリングスアーム48の鼻当て取付け用の孔に挿入可能になっている。
【0050】
したがって、メガネフレーム8bを前述した治具17に固定する場合には、孔に鼻当てが装着されていない状態で、金具45のアーム47,47を内側に圧縮変形させ、爪49をクリングスアーム48の孔に内側から挿入することでこの爪49が孔に係止される。そして、この爪49がバネ材である各アーム47,47によって外側に付勢されるため爪49が孔から脱落することなくメガネフレーム8bの保持状態が維持される。
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、治具の板バネ部材は樹脂製に限られるものではなく、例えば、金属製のものを用いてもよい。
また、上記実施の形態ではシリカ系のコート液を用いた場合について説明したが、他のコーティング材や塗料を用いてもよい。
さらに、モータを手動で制御するための操作部を設けて作業者が噴射ノズルの上下動を適宜制御するようにしてもよい。
また、被コーティング品としては銀めっきを施した指輪と洋銀製のメガネフレームに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態におけるコーティング装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における図1のA−A線に沿う部分断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるコーティングブースの説明図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるターンテーブルの縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における指輪用の治具の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における図5のB−B線に沿う断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における噴射装置の構成図である。
【図8】本発明の実施の形態における他の態様のメガネフレーム用の治具の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
6 コーティングブース(ブース)
8a 指輪(被コーティング品)
8b メガネフレーム(被コーティング品)
17 治具(保持手段)
21 モータ
23 サンギヤ
25 キャリア
27 プラネタリギヤ
31 アクチュエータ(キャリア停止手段)
40 シャフト
41 板バネ部材
101 噴射装置(噴射ガン)
104 二重ノズル(噴射ノズル)
106 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の噴射ノズルと、該噴射ノズルの外側を囲むように配置されるガイドとを備え、高圧の気体と液体とを混合して噴射する噴射ガンによって、ブース内に収容された被コーティング品の表面にコート液を塗付するコーティング装置であって、
前記被コーティング品を保持する保持手段を自転及び公転可能に設けたことを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記保持手段は複数の被コーティング品を配列状態で同時に保持可能に設けられ、前記噴射ガンの噴射口が被コーティング品の配列方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記保持手段は指輪を保持するものであってシャフトを挟みこむように両側に配置される一対の板バネ部材を有することを特徴とする請求項2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
駆動源としてのモータが接続されるサンギヤと、このサンギヤの周囲に複数設けられ前記保持手段を支持するプラネタリギヤと、前記サンギヤとプラネタリギヤとを軸支するキャリアと、このキャリアの回転を停止又は許容するキャリア停止手段とを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−255648(P2006−255648A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79663(P2005−79663)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(503332466)有限会社ガリュー (6)
【出願人】(505101695)有限会社ジェムス (1)
【出願人】(505101927)有限会社京インターナショナル (1)
【Fターム(参考)】