説明

コーティング装置

【課題】回転ドラム内面へのコーティング基材物質の付着を防止し、付着物質の剥落による不良品の発生を防止すると共に、清掃工程を省き生産効率の向上を図る。
【解決手段】回転ドラム3は、コーティング処理に際し、ドラム内外を通気可能な通気部6を有する。通気部6には、冷水が流通する中空パイプ42を多数配したパネルユニット41を取り付ける。中空パイプ42は、ベースプレート44に互いに平行に固定され、隣接するパイプ間には間隙Gが形成される。ベースプレート44には連通孔45が形成されており、中空パイプ42は連通孔45に臨んで配置される。中空パイプ42の両端部には給排集約パイプ46a,46bが固定されている。コーティング処理中は、適宜、給排集約パイプ46aを介して中空パイプ42に冷水を供給して回転ドラム3を冷却し、ドラム内面と被処理物との間に温度差を設け、コーティング基材物質の付着を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム状の回転容器を用いたコーティング装置に関し、特に、錠剤や食品等のコーティング処理に使用される通気式のパンコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や食品等の製造装置として、回転ドラムを用いたコーティング装置が知られている。例えば、特許文献1には、多角形断面(ここでは、八角形)のコーティングパンと呼ばれる回転ドラムを備えた装置が記載されており、図13は、このような従来のコーティング装置100の構成を示す説明図である。図13に示すように、回転ドラム101は、水平軸線Oを中心に回転する。回転ドラム101の内部にはスプレー装置102が設置されている。回転ドラム101内に投入された粉粒体はドラムの回転に伴って転動し、その表面にはスプレー装置102からコーティング液が噴霧される。その際、回転ドラム101内には、給排気ダクト103,104から適宜、熱風や冷風が供給・排気され、コーティング層の形成や乾燥が促進される。
【0003】
コーティング処理中は、被処理物に対し、給排気ダクト103から温風や冷風を適宜送給する。回転ドラム101の主胴部105には、多孔板からなる通気部106が形成されており、被処理物層を抜けたエアはこの通気部106から給排気ダクト104に流出する。従って、給排気ダクト103から回転ドラム101内に供給されたエアは、被処理物層を通り、通気部106を介して、回転ドラム101の外周に配された給排気ダクト104へと排出される。このように、コーティング装置100では、給排気ダクト103,104から給排気される乾燥エアにより、コーティング基材が被処理物表面にて蒸発乾固し、コーティング層が形成される。
【特許文献1】特開平6-63376号公報
【特許文献2】特開平6-23258号公報
【特許文献3】特公昭50-38713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなコーティング装置では、被処理物層を通過した乾燥エアが通気部106を介して排気されるため、コーティング処理中に回転ドラム101の温度が上昇(もしくは降下)し、被処理物と通気部106がほぼ同等の温度となる。このため、回転ドラム101の内面にコーティング基材物質が固化して付着するおそれがあるという問題がある。例えば、糖衣コーティング処理の場合、回転ドラム101が乾燥エアによって暖められ、糖衣液の基材物質(白糖)がドラム内面、特に通気部106の部位に固化・付着し易くなる。また、チョコレートコーティング処理の場合には、給排気ダクト103から冷風が供給されるが、前述同様、被処理物と通気部106がほぼ同等の温度となるため、チョコレートがドラム内面に固化・付着し易くなる。
【0005】
コーティング処理中にこのような固化物質がドラム内面に付着すると、それが剥離して製品に付着した場合、ボッチや突起といった不良品の原因となる。そこで、実際のコーティング処理では、ドラム内面等の付着物が多くなった時点で回転ドラムを止め、付着したカスをドラム外へ排出している。すなわち、従来の装置では、不良品発生防止のため、処理工程中に回転ドラム内部を適宜清掃する必要がある。従って、その分、生産効率が低下し工程時間が長くなると共に、洗浄時においても、付着物が多いため洗浄時間が長くなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、回転ドラム内面へのコーティング基材物質の付着を防止することにある。当該目的を達成することにより、付着物質の剥落による不良品の発生を防止できる。また、付着物質除去のための清掃工程を省いて生産効率の向上を図ることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコーティング装置は、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、前記処理容器に設けられ、コーティング処理に際し、該処理容器の内部と外部を通気可能な通気部を備えてなるコーティング装置であって、前記通気部は、温調媒体が流通する温調部と、前記処理容器の内部と外部を連通させる連通部とを備えてなる温度調節手段を有することを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、コーティング装置の処理容器の通気部に、温調媒体が流通する温調部と処理容器の内外を連通させる連通部を備えた温度調節手段を配し、コーティング処理に際し、この温度調節手段によって、通気を行いつつ、処理容器、特に通気部の温度調節を行う。これにより、コーティング処理中、処理容器の温度を適宜調整し、処理容器内面と被処理物との間に温度差を生じさせ、処理容器内面、特に通気部へのコーティング基材物質の付着を抑制する。
【0009】
前記コーティング装置において、前記温調部に、中空状に形成され内部に前記温調媒体が流通可能な温調管を設けても良い。また、前記温調管を、隣接する該温調管の間に前記連通部を形成する間隙を設けつつ、前記連通孔に臨んで複数本配置しても良い。さらに、前記温調管を互いに略平行に配置しても良い。加えて、前記温度調節手段に、平板状に形成され中央に連通孔が設けられたベースプレートを設け、前記温調管を、前記ベースプレートに固定し、前記連通孔に臨んで配置しても良い。また、前記温調管の両端部の少なくとも何れか一方側に、前記各温調管の端部と接続され、前記各温調管のそれぞれと連通する温調媒体給排集約部材を設けても良い。
【0010】
一方、前記コーティング装置において、前記温調媒体として水又は空気を用いた冷媒(例えば、冷水や冷風)を使用し、前記温度調節手段が前記処理容器を冷却する冷却手段であっても良い。また、前記温調媒体として水又は空気を用いた温媒(例えば、温水や温風)を使用し、前記温度調節手段が前記処理容器を加温する加温手段であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング装置によれば、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、処理容器に設けられ、コーティング処理に際し処理容器の内部と外部を通気可能な通気部を備えるコーティング装置にて、この通気部に、温調媒体が流通する温調部と、処理容器の内部と外部を連通させる連通部とを備えてなる温度調節手段を配したので、コーティング処理に際し、この温度調節手段によって、通気を行いつつ、処理容器、特に通気部の温度調節を行うことが可能となる。これにより、コーティング処理中、処理容器内面と被処理物との間に温度差を生じさせることができ、処理容器内面、特に通気部へのコーティング基材物質の付着を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1であるコーティング装置の構成を示す説明図である。図1に示したコーティング装置1は、一般にパンコーティング装置と呼ばれる装置であり、回転ドラムの回転とそれを通過する処理気体及びコーティング用物質により、被処理物の造粒、コーティング、乾燥、混合等の所望の処理を行う。本実施例では、コーティング装置1として、例えば錠剤や菓子等の被処理物2に対して、白糖を水に溶解したシロップを主体に構成した糖衣液等をコーティング処理する装置を例にとって本発明の構成を説明する。
【0014】
コーティング装置1には、被処理物2を収容する横型ドラム状の処理容器である回転ドラム(コーティングパン)3が設けられている。回転ドラム3は、多角筒形または円筒形の横断面形状を有する中空の主胴部4と、この主胴部4の軸方向両端側に設けられた端壁部5とから構成されており、水平軸線Oを中心に回転可能に設置されている。主胴部4の周囲数カ所または全周には、温風や冷風等の処理気体が流通する通気部6が設けられている。主胴部4の外周側には、各通気部6を覆うように、給排気ジャケット室7が各辺ごとに個別に配設されている。各給排気ジャケット室7は、選択通気部8を介して、回転ドラム3の図中右側に設けられた給排気管9に接続されている。
【0015】
選択通気部8は、回転ドラム3の端部に設けられた第1ディスクプレート11と、給排気管9が取り付けられた第2ディスクプレート12とから構成されており、回転ドラム3が所定の回転位置に来たときのみ、各給排気ジャケット室7が給排気管9に連通するようになっている。第1ディスクプレート11には給排気ジャケット室7の開口部13が、第2ディスクプレート12には給排気管9の開口部14がそれぞれ設けられている。第1ディスクプレート11は、第2ディスクプレート12と対向・摺接し、回転ドラム3の回転に伴い、開口部14に対向した開口部13の給排気ジャケット室7が給排気管9と連通する。ここでは、図1に示すように、回転ドラム3の最下部に来た給排気ジャケット室7が、給排気管9と連通するようになっている。
【0016】
回転ドラム3の図中左端部は開口部15となっており、開口部15には円筒状の通気管16が取り付けられている。通気管16は固定されており、回転ドラム3は、軸受17によって、通気管16に対して回転自在に支持されている。通気管16の管胴には、給排気管18が取り付けられており、通気管16は給排気管18と連通している。給排気管18より給気を行う場合には、給排気管18から通気管16を介して回転ドラム3内に対し処理気体が供給され、前述の給排気ジャケット室7を介して回転ドラム3外に排出され、給排気管9より排気される。通気管16の管胴にはさらに、スプレー装置19が取り付けられている。このスプレー装置19によって、回転ドラム3内の被処理物に対し糖衣液等が供給される。また、通気管16の前面には、開閉蓋20が取り付けられている。回転ドラム3内への被処理物の投入や、コーティング処理された製品の排出は、この開閉蓋20を開いて行われる。
【0017】
回転ドラム3の図中右端部には駆動シャフト21が取り付けられている。駆動シャフト21は、軸受22によって回転自在に支持されている。駆動シャフト21にはスプロケット23が取り付けられており、チェーン24を介してスプロケット25に接続されている。スプロケット25はモータ26にて駆動され、このモータ26を作動させることにより、駆動シャフト21が回転駆動され、回転ドラム3が水平軸線Oを中心に回転する。駆動シャフト21の端部には、ロータリージョイント27が取り付けられており、ロータリージョイント27は、ポンプや熱交換器等の装置外に設けられた冷温媒の給排系(図示せず)に接続されている。
【0018】
ここで、当該コーティング装置1では、図1に示すように、回転ドラム3の通気部6に対し、ロータリージョイント27と流通孔28及び給排チューブ29を介して、温調媒体として冷水(冷媒)を供給できるようになっている。なお、冷媒としては、冷風も使用可能であるが、ここでは、冷風よりも冷却効果の高い冷水を使用する。流通孔28は、供給孔28aと排出孔28bとからなり、駆動シャフト21中にそれぞれ設けられている。駆動シャフト21には、供給孔28aと排出孔28bの接続口31a,31bが設けられており、各接続口31a,31bには、合成樹脂製の給排チューブ29(供給チューブ29a,排出チューブ29b)が取り付けられている。また、駆動シャフト21には、供給孔28aと排出孔28bの開口32a,32bが形成されており、ロータリージョイント27と接続されている。
【0019】
図2はロータリージョイント27の構成を示す断面図、図3はロータリージョイント27と駆動シャフト21の接続構造を示す説明図である。図2に示すように、ロータリージョイント27の中央には装着孔33が形成されており、この装着孔33には、駆動シャフト21の端部が回転自在に挿入される。装着孔33の周壁には、2本の円周溝34a,34bが凹設されている。円周溝34a,34bは、装着孔33の周壁全周に亘って形成されており、その前後にはパッキン38a,38bが装着され、円周溝34a,34bから冷水が漏れないようになっている。ロータリージョイント27の図2,3において上面部には、2個の接続孔35a,35bが形成されており、接続孔35a,35bはそれぞれ、ロータリージョイント27の内部にて円周溝34a,34bと連通している。接続孔35a,35b内部には、雌ねじが形成されている。接続孔35a,35bには、口金36a,36bが取り付けられている。口金36a,36bには接続チューブ37a,37bが取り付けられており、前述の冷温媒給排系に接続されている。
【0020】
このようなロータリージョイント27に対し、駆動シャフト21の端部21aには、円周溝34a,34bに合わせて、開口32a,32bが形成されている。すなわち、ロータリージョイント27では、駆動シャフト21をロータリージョイント27に装着すると、開口32aと円周溝34a、開口32bと円周溝34bが対向・連通するようになっている。駆動シャフト21が回転すると、開口32a,32bもそれに伴って周方向に移動するが、開口32a,32bは、シャフト回転中も常に円周溝34a,34bに対向する。このため、供給孔28aと排出孔28bは、常に接続チューブ37a,37bと連通状態で維持され、回転ドラム3の作動中も常時温調媒体の供給・排出を行うことができる。
【0021】
駆動シャフト21の接続口31a,31bに取り付けられた給排チューブ29は、通気部6に取り付けられたパネルユニット41に接続されている。図4,5は、通気部6の構成を示す説明図であり、図4は回転ドラム3内部側の面、図5は回転ドラム3外部側(給排気ジャケット室7側)の面の状態をそれぞれ示している。また、図6はパネルユニット41の平面図、図7はパネルユニット41の側面図(図6の左側面)である。図4,5に示すように、通気部6には、温調媒体が流通する中空パイプ(温調部;温調管)42を備えたパネルユニット(温度調節手段)41が取り付けられている。パネルユニット41は、回転ドラム3の主胴部4に設けられた取付孔43に、図示しないクリップにて固定される。
【0022】
図6,7に示すように、パネルユニット41は、平板状のステンレス製ベースプレート44(例えば、483〜487mm×349mm×3mm)に中空パイプ42を多数(ここでは47本)取り付けた構成となっている。ベースプレート44の長手方向(ドラム回転方向)両端部にはそれぞれブラケット48が立設されており、各ブラケット48には前述の固定用クリップが2個ずつ取り付けられる。回転ドラム3の主胴部4には、固定用クリップを止める係止部(図示せず)が設けられており、両者を結合することにより、パネルユニット41は回転ドラム3に固定される。この際、パネルユニット41は回転ドラム3の外側から取り付けられ、ベースプレート44が取付孔43を覆う形でパネルユニット41は取付孔43に装着される。
【0023】
中空パイプ42は、ステンレス製の中空丸棒(例えば、φ6,肉厚1mm)にて形成されており、ベースプレート44の幅よりも短く形成されている。ベースプレート44の中央には長方形の連通孔45が形成されており、中空パイプ42はこの連通孔45に臨んで配置されている。隣接する中空パイプ42の間には、所定寸法の間隙(連通部)G(ここでは2mm)が設けられており、各中空パイプ42は、連通孔45に臨んで互いに略平行となるようにベースプレート44に溶接固定されている。なお、中空パイプ42は、その頂点がベースプレート44のドラム内部側の面と面一となるように取り付けられている。
【0024】
中空パイプ42の両端には、ステンレス製の角パイプ(例えば、25mm角)にて形成された、給排集約パイプ(温調媒体給排集約部材)46a,46bが溶接固定されている。なお、図6では、中空パイプ42の構成を明確に示すため、図中右側の給排集約パイプ46bは破線にて示している。給排集約パイプ46aには供給口47aが3個、給排集約パイプ46bには排出口47bが3個それぞれ溶接固定されている。当該コーティング装置1では、供給口47aには供給チューブ29aが、排出口47bには排出チューブ29bがそれぞれ接続されており、コーティング処理中には、常時又は適宜、中空パイプ42に温調媒体(当該実施例では冷水)が供給される。なお、供給チューブ29a,排出チューブ29bは、図示しない取付孔を介して、給排気ジャケット室7の外部から内部に気密状態で引き回されている。
【0025】
このように、当該コーティング装置1では、中空パイプ42を一定間隔で配置したパネルユニット41を用いて通気部6を形成する。通気部6では、中空パイプ42が回転ドラム3の内部に露出した状態で配置され、各中空パイプ42の間には、ドラム内部と給排気ジャケット室7との間を連通する間隙Gが形成されている。また、中空パイプ42には冷水が供給され、これにより、通気部6自体が直接冷却される。すなわち、通気部6は、自己冷却機能を備えつつ、処理気体が通気可能な構成となっており、コーティング処理中に、処理気体によって通気部6が暖められるのを抑えることができる。なお、主胴部4のうち通気部6のない部位が存在するコーティング装置でも、かかる部位の熱が通気部6に伝導し、放熱されるため、回転ドラム3の温度上昇を抑えることが可能である。
【0026】
次に、コーティング装置1におけるコーティング処理について、糖衣錠の製造を例にとって説明する。ここではまず、回転ドラム3内に被処理物2として乳糖錠などの錠剤(例えば、直径8mm,200mg/T)を投入し、モータ26を駆動して回転ドラム3を回転させる(例えば、8rpm程度)。回転ドラム3の回転に伴い、錠剤は主胴部4や端壁部5に沿って回転方向に持ち上げられて内側に落下し、回転ドラム3内にて転動運動を行う。被処理物2に対しては、回転ドラム3を回転させつつ、スプレー装置19から糖衣液(例えば、糖衣錠の処理量が100L程度の場合、60°C,340〜900mL/回)を噴霧する。この際、給排気管18から適宜温風を送給し(例えば、70°C,12m/min)、錠剤上に糖衣被膜を固化形成する。
【0027】
一方、コーティング装置1では、コーティング処理中に、中空パイプ42に冷水を適宜供給し、通気部6を冷却する。中空パイプ42には、ロータリージョイント27、流通孔28及び給排チューブ29を介して冷水が供給・排出される。すなわち、冷温媒給排系から供給された冷水は、接続チューブ37a→口金36a→接続孔35a→円周溝34aと流れて開口32aに至り、供給孔28aから接続口31aを介して供給チューブ29aに流れ、供給口47aから給排集約パイプ46a内に流入し、中空パイプ42に流れ込む。一方、中空パイプ42にて暖められて排出された冷水は、給排集約パイプ46b内に流入し、排出口47bから排出チューブ29bを介して接続口31bに至る。その後、冷却排水は、接続口31b→排出孔28b→開口32bと流れ、ロータリージョイント27内に入り、円周溝34b→接続孔35b→口金36b→接続チューブ37bと流れて冷温媒給排系に戻る。
【0028】
このように、当該コーティング装置1では、通気部6に中空パイプ42を一定間隔で配したことにより、通気を行いつつ、回転ドラム3、特に通気部6を直接冷却することができる。このため、コーティング処理中、回転ドラム3の温度を低く維持し、ドラム内面と被処理物2との間に温度差を生じさせることができるので、ドラム内面、特に通気部6への糖衣液の付着が抑えられる。従って、付着物の剥離によるボッチや突起の発生も抑えられ、不良品の発生率を低減させることが可能となる。また、ドラム内面の付着物が少ないことから、回転ドラム3の清掃回数や清掃工数、洗浄時間等を減らすことができ、その分、効率良くコーティング処理を実施することが可能となり、工程時間の短縮も図られる。
【0029】
さらに、コーティング装置1では、通気部6に供給する冷水の温度や量を制御することにより、通気部6の温度を適宜調整することができる。このため、処理条件に応じて最適なドラム温度を維持することができ、より効率の良いコーティング処理が実現できる。加えて、パネルユニット41は、既設装置の改造により容易に付加可能であり、多大なコストをかけることなく、既存の装置にも本発明の構成は適用できる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の実施例2であるコーティング装置について説明する。図8は、実施例2であるコーティング装置にて使用されるパネルユニット(温度調節手段)51の構成を示す説明図である。パネルユニット51も実施例1のパネルユニット41と同様に、回転ドラム3の主胴部4に設けられた取付孔43に取り付けられ、通気部6を構成する。なお、パネルユニット以外の構成は、実施例1のコーティング装置1と同様である。また、以下の実施例では、実施例1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0031】
パネルユニット51では、箱形のパネルボックス(温調部)52内に冷水(温調媒体)が供給される。パネルボックス52内は中空状に形成されており、パネルボックス52の両隅部には、内部空間と連通した供給口53aと排出口53bが設けられている。また、パネルボックス52には、表面側と裏面側を連通する通気孔(連通部)54が多数設けられている。通気孔54は、パネルボックス52に中空パイプ55を配置する形で形成されており、通気孔54とパネルボックス52の内部空間とは非連通状態となっている。
【0032】
このようなパネルユニット51を有するコーティング装置では、コーティング処理に際し、前述同様、パネルボックス52内に冷水を適宜供給し、通気部6を冷却する。パネルボックス52には、ロータリージョイント27、流通孔28及び給排チューブ29を介して冷水が供給・排出される。これにより、通気を行いつつ、回転ドラム3、特に通気部6を直接冷却することができ、コーティング処理中、回転ドラム3の温度を低く維持することが可能となる。従って、ドラム内面と被処理物2との間に温度差を生じさせることができ、ドラム内面、特に通気部6への糖衣液の付着を抑えることが可能となる。
【実施例3】
【0033】
図9は、本発明の実施例3であるコーティング装置にて使用されるパネルユニット(温度調節手段)61の構成を示す説明図である。パネルユニット61も実施例1のパネルユニット41と同様に、回転ドラム3の主胴部4に設けられた取付孔43に取り付けられ、通気部6を構成する。この場合も、パネルユニット以外の構成は、実施例1のコーティング装置1と同様である。パネルユニット61では、ベースプレート62上(回転ドラム3の外側面)に中空パイプ(温調部;温調管)63を配した構成となっている。ベースプレート62は、多孔板にて形成され、表面側と裏面側を連通する通気孔(連通部)64が多数設けられている。中空パイプ63の開口は、一方が供給口65a、他方が排出口65bとなり、前述同様、給排チューブ29を介して冷水が供給・排出される。
【0034】
このようなパネルユニット61を有するコーティング装置においても、前述同様、コーティング処理中に中空パイプ63に冷水を適宜供給し、通気部6を冷却する。中空パイプ63には、ロータリージョイント27、流通孔28及び給排チューブ29を介して冷水が供給・排出される。これにより、当該コーティング装置においても、通気を行いつつ、回転ドラム3、特に通気部6を直接冷却することができ、コーティング処理中、回転ドラム3の温度を低く維持することが可能となる。従って、ドラム内面と被処理物2との間に温度差を生じさせることができ、ドラム内面、特に通気部6への糖衣液の付着を抑えることが可能となる。
【実施例4】
【0035】
図10は、本発明の実施例4であるコーティング装置71の構成を示す説明図である。図10のコーティング装置71は、図1のコーティング装置1と異なり、回転ドラム3の図中右端側に円筒軸72が設けられている。円筒軸72にはスプロケット73が取り付けられており、チェーン74を介して、モータ75によって駆動される。回転ドラム3は軸受76a,76bによって回転自在に支持されている。円筒軸72には、装置外部から給排気ジャケット室77が回転ドラム3内に延設されている。回転ドラム3の主胴部4の外周には、給排気ジャケット室78が配設されており、各給排気ジャケット室7は、選択通気部79を介して、回転ドラム3の図中左側に設けられたスライドディスク81に接続されている。スライドディスク81は図中左右方向に移動可能設置されており、選択通気部79にて給排気ジャケット室7と摺接している。スライドディスク81はさらに給排気管82に接続されている。
【0036】
円筒軸72の図中右端部には、ロータリージョイント83が設けられている。ロータリージョイント83は、給排チューブ29を介して、パネルユニット41と接続されている。コーティング処理に際しては、実施例1と同様に、冷温媒給排系から、ロータリージョイント83と供給チューブ29aを介して、パネルユニット41に冷水を供給する。パネルユニット41にて加温された冷水は、排出チューブ29bとロータリージョイント83を介して、冷温媒給排系に排出される。このように、本発明は、構成を異にするコーティング装置にも適用可能であり、図10のようなコーティング装置71においても、通気を行いつつ、回転ドラム3を冷却し、コーティング処理中における回転ドラム3の温度を低く維持することが可能である。
【実施例5】
【0037】
図11は、本発明の実施例5であるコーティング装置91の構成を示す説明図である。図11のコーティング装置91では、通気部6に、ベースプレート44のないパネルユニット(温度調節手段)92が取り付けられている。図12は、パネルユニット92の構成を示す説明図である。図12に示すように、パネルユニット92は、給排集約パイプ93a,93b(温調媒体給排集約部材)と中空パイプ(温調部,温調管)94とから構成されている。中空パイプ94は互いに略平行となるように複数本配置されており、中空パイプ94の両端に給排集約パイプ93a,93bが溶接固定されている。隣接する中空パイプ94の間には、所定寸法の間隙Gが形成されている。
【0038】
図11のコーティング装置91では、主胴部4の外周側にジャケット95が取り付けられており、ジャケット95内は給排気ジャケット室96となっている。給排気ジャケット室96の図中右端側は選択通気部8(図示せず)に接続されている。パネルユニット92は、給排気ジャケット室96と回転ドラム3との境界部に配置され通気部6を形成する。パネルユニット92は、回転ドラム3の主胴部4に着脱可能となっており、被処理物の種類や処理条件等に応じて、適宜、主胴部4の周囲数カ所または全周に配置する。なお、給排集約パイプ93a,93bを回転ドラム3に溶接等によって固定し、パネルユニット92と回転ドラム3を一体の構成とすることも可能である。
【0039】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、糖衣コーティング処理を例にとって、パネルユニット41を冷却手段として使用した場合について説明したが、コーティング処理の形態は糖衣コーティング処理には限定されず、種々の処理形態が採用可能である。例えば、チョコレートコーティング処理等にも本発明は適用可能であり、その場合には、温調媒体として、温水などの加熱液や温風(温媒)を中空パイプ42に供給する。すなわち、この場合には、パネルユニット41を加温手段として使用し、ドラム内面、特に通気部6を直接加温する。これにより、コーティング処理中、ドラム内面と被処理物2との間に温度差が生じ、ドラム内面(特に通気部6)へのチョコレートの付着が抑えられる。従って、付着物の剥離による不良品発生が抑えられ、回転ドラム3の清掃回数や清掃工数、洗浄時間等も削減でき、その分、効率良くコーティング処理を実施することが可能となり、工程時間の短縮も図られる。なお、本発明は、油脂コーティング(ワックス)処理等の油脂類処理にも適用可能であり、油脂コーティング処理の徐放目的にも使用可能である。
【0040】
また、前述の実施例における各種寸法や中空パイプ42の本数、配置方向(ドラム回転方向のみならず、水平軸方向でも良い)、各部材の材質等や、温度・時間・量等の処理条件はあくまでも例示であり、本発明は前述の数値には限定されない。被処理物も前述の乳糖錠等の錠剤には限られず、菓子やガム等の食品や他の医薬品なども適用可能である。糖衣液も糖を水に溶解したシロップ以外に、それに各種薬効成分や風味、色素等を添加したものなど、種々の仕様の糖衣液が適用可能である。
【0041】
さらに、実施例1では、パネルユニット41に給排集約パイプ46a,46bを用いた構成を示したが、給排集約パイプは必ずしも使用しなくとも良く、各中空パイプ42に給排チューブ29を直接接続しても良い。また、給排集約パイプ46a,46bのうち、一方のみを使用し、他方は各中空パイプ42に給排チューブ29を直接接続する方式としても良い。但し、給排集約パイプを用いた方が配管を集約することができ実用的である。なお、給排集約パイプ46a,46bの供給口47a、排出口47bの数は3個には限定されず、1個でも、また、3個以外の複数個でも良い。
【0042】
加えて、実施例1,3では、中空パイプ42,63として断面が円形の丸管を用いた例を示したが、断面が三角形や四角形などの多角形の管を用いても良い。加えて、前述の実施例では、通気部6に中空パイプ42を配した構成を示したが、通気部6のない主胴部4が存在するコーティング装置にあっては、かかる主胴部に中空パイプ42を適宜配し、回転ドラム3の温度調節機能を高めても良い。
【0043】
一方、前述の実施例では、回転ドラム3が水平軸線を中心に回転する水平回転ドラム型のコーティング装置について説明したが、コーティング装置は前述の形態には限られず、回転軸線が接地面と傾斜した傾斜回転ドラムを有するタイプであっても良い。また、前述の実施例では、回転ドラム3の外周に給排気ジャケット室7,78を配した、いわゆるジャケットタイプのコーティング装置に本発明を適用した例を示したが、回転ドラム3の外周に給排気ジャケット室7,78を有しないジャケットレスタイプのコーティング装置にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1であるコーティング装置の構成を示す説明図である。
【図2】ロータリージョイントの構成を示す断面図である。
【図3】ロータリージョイントと駆動シャフトの接続構造を示す説明図である。
【図4】通気部の構成を示す説明図であり、回転ドラム内部側の面の状態を示している。
【図5】通気部の構成を示す説明図であり、回転ドラム外部側の面の状態を示している。
【図6】パネルユニットの平面図である。
【図7】パネルユニットの側面図である。
【図8】本発明の実施例2であるコーティング装置にて使用されるパネルユニットの構成を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例3であるコーティング装置にて使用されるパネルユニットの構成を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例4であるコーティング装置の構成を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例5であるコーティング装置の構成を示す説明図である。
【図12】図11のコーティング装置にて使用されているパネルユニットの構成を示す説明図である。
【図13】従来のコーティング装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 コーティング装置
2 被処理物
3 回転ドラム(処理容器)
4 主胴部
5 端壁部
6 通気部
7 給排気ジャケット室
8 選択通気部
9 給排気管
11 第1ディスクプレート
12 第2ディスクプレート
13 開口部
14 開口部
15 開口部
16 通気管
17 軸受
18 給排気管
19 スプレー装置
20 開閉蓋
21 駆動シャフト
21a 端部
22 軸受
23 スプロケット
24 チェーン
25 スプロケット
26 モータ
27 ロータリージョイント
28 流通孔
28a 供給孔
28b 排出孔
29 給排チューブ
29a 供給チューブ
29b 排出チューブ
31a,31b 接続口
32a,32b 開口
33 装着孔
34a,34b 円周溝
35a,35b 接続孔
36a,36b 口金
37a,37b 接続チューブ
38a,38b パッキン
41 パネルユニット(温度調節手段)
42 中空パイプ(温調部,温調管)
43 取付孔
44 ベースプレート
45 連通孔
46a,46b 給排集約パイプ(温調媒体給排集約部材)
47a 供給口
47b 排出口
48 ブラケット
51 パネルユニット(温度調節手段)
52 パネルボックス
53a 供給口
53b 排出口
54 通気孔(連通部)
55 中空パイプ
61 パネルユニット(温度調節手段)
62 ベースプレート
63 中空パイプ(温調部,温調管)
64 通気孔(連通部)
65a 供給口
65b 排出口
71 コーティング装置
72 円筒軸
73 スプロケット
74 チェーン
75 モータ
76a,76b 軸受
77 給排気ダクト
78 給排気ジャケット室
79 選択通気部
81 スライドディスク
82 給排気管
83 ロータリージョイント
91 コーティング装置
92 パネルユニット(温度調節手段)
93a,93b 給排集約パイプ(温調媒体給排集約部材)
94 中空パイプ(温調部,温調管)
95 ジャケット
96 給排気ジャケット室
100 コーティング装置
101 回転ドラム
102 スプレー装置
103 給排気ダクト
104 給排気ダクト
105 主胴部
106 通気部
G 間隙(連通部)
O 水平軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、前記処理容器に設けられ、コーティング処理に際し、該処理容器の内部と外部を通気可能な通気部を備えてなるコーティング装置であって、
前記通気部は、温調媒体が流通する温調部と、前記処理容器の内部と外部を連通させる連通部とを備えてなる温度調節手段を有することを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
請求項1記載のコーティング装置において、前記温調部は、中空状に形成され内部に前記温調媒体が流通可能な温調管を有することを特徴とするコーティング装置。
【請求項3】
請求項2記載のコーティング装置において、前記温調管は、隣接する該温調管の間に前記連通部を形成する間隙を設けつつ、前記連通孔に臨んで複数本配置されることを特徴とするコーティング装置。
【請求項4】
請求項3記載のコーティング装置において、前記温調管は、互いに略平行に配置されることを特徴とするコーティング装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか1項に記載のコーティング装置において、前記温度調節手段は、平板状に形成され中央に連通孔が設けられたベースプレートを有し、前記温調管は、前記ベースプレートに固定され、前記連通孔に臨んで配置されることを特徴とするコーティング装置。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか1項に記載のコーティング装置において、前記温度調節手段はさらに、前記温調管の両端部の少なくとも何れか一方側に設けられ、前記各温調管の端部と接続され前記各温調管のそれぞれと連通する温調媒体給排集約部材を有することを特徴とするコーティング装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のコーティング装置において、前記温調媒体が水又は空気を用いた冷媒であり、前記温度調節手段は前記処理容器を冷却する冷却手段であることを特徴とするコーティング装置。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載のコーティング装置において、前記温調媒体が水又は空気を用いた温媒であり、前記温度調節手段は前記処理容器を加温する加温手段であることを特徴とするコーティング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−237130(P2007−237130A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66558(P2006−66558)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】