説明

コーティング装置

【課題】 構造が簡単でありながら、多数個の加工物を満遍なく攪拌する性能を高めることができ、もって加工物の表面にむらなく均一にコーティングすることができるコーティング装置を提供する。
【解決手段】 コーティング装置は、ドラム軸2方向基端の取付孔にボス3が固定され、ドラム軸方向途中に最大径部4があり、ドラム軸方向先端に投入開口5が開けられた、口窄み椀形状をなすドラム1と、ボス3に接続されてドラム1をドラム軸2の回りに回転させる回転駆動部10と、ドラムをドラム軸が上下方向に傾くように揺動させる揺動駆動部20とを備える。ドラム1の内面を、回転方向には8〜14角の多角形状に形成し、且つドラム軸方向には6〜13角の折曲形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状の加工物の表面にコーティング材をコーティングするための、回転ドラム式のコーティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のコーティング装置は、各生産会社にて独自に考案して生産され、又は委託を受けて加工物に適した仕様にて生産され、主に菓子製造会社や薬製造会社にて使用されている。このコーティング装置を用いて、菓子、錠剤等の粒状の加工物の表面に表層材料、香料等のコーティング材をコーティングするには、ドラムの内部に多数個の加工物を投入し、さらにコーティング材を投入して、ドラムを回転させ、不定期に具合を観察しながら段階的に完成品を生産する。ここで重要なのは、加工物の表面にむらなく均一にコーティングすることである。そのためには、ドラムの内部で多数個の加工物が自転して移動したり、深浅方向に動き回ったりして、満遍なく攪拌されることが必要である。しかし、従来のコーティング装置では、次のような問題があった。
【0003】
(a)従来のドラムは、内面が回転方向に滑らかな円形をなすものが主流である。しかし、この円形ドラムを回転しても、多数個の加工物は限りなくドラムの内面を滑るような移動になり、自転して移動したり深浅方向に動き回ったりすることは容易ではない。そこで、時間をかけてコーティングするか、または、ドラムの内面に羽根等の攪拌部材を装着し、これに多数個の加工物がよく混ざり合うようにするなど、工夫を施している。
(b)その他、内面が回転方向に8角形をなすドラム(特許文献1,2)、12角形をなすドラム(特許文献3)等も知られている。これらのドラムによれば、ドラムの内面の複数の平面部がそれらの間の辺部により折れ曲がるように角度をなすことにより、多数個の加工物は自転して移動したり深浅方向に動き回ったりするようになる。
【特許文献1】特開2000−42463号公報
【特許文献2】特開昭62−294461号公報
【特許文献3】特開昭62−155050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記(a)のように、円形ドラムの内面に攪拌部材を装着したものは、構造が複雑になるとか、清掃が面倒になるとかという問題があった。また、上記(b)のように、内面が回転方向に多角形をすドラムは、多数個の加工物を満遍なく攪拌する点において未だ十分でない場合があった。なお、特許文献1〜3については、さらに後述する(段落0024)。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決し、構造が簡単でありながら、多数個の加工物を満遍なく攪拌する性能を高めることができ、もって加工物の表面にむらなく均一にコーティングすることができるコーティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコーティング装置は、次の(1)又は(2)の手段を採ったものである。
(1)ドラムと、前記ドラムをドラム軸の回りに回転させる回転駆動部とを備え、前記ドラムの内面を、回転方向には8〜14角の多角形状に形成し、且つドラム軸方向には6〜13角の折曲形状に形成したことを特徴とするコーティング装置。両多角形状は、仮想の略円弧(楕円、サイクロイド等の円弧に近似したものも含む)に内接する形状が好ましい。
【0007】
(2)ドラム軸方向基端の取付孔にボスが固定され、ドラム軸方向途中に最大径部があり、ドラム軸方向先端に投入開口が開けられた、口窄み椀形状をなすドラムと、前記ボスに接続されて前記ドラムをドラム軸の回りに回転させる回転駆動部とを備え、前記ドラムの内面を、回転方向には8〜14角の多角形状に形成し、且つドラム軸方向には6〜13角の折曲形状に形成したことを特徴とするコーティング装置。多角形状は、仮想の円に内接する正多角形状が好ましい。折曲形状は、仮想の略円弧(楕円、サイクロイド等の円弧に近似したものも含む)に内接する形状が好ましい。
【0008】
(1)(2)において、ドラムの内面が、回転方向に7角以下の多角形状になると、角が少ないため加工物Sの攪拌が不均一になり、15角以上の多角形状になると、円に近付くため多角による攪拌効果が弱くなる。また、ドラムの内面が、ドラム軸方向に5角以下の折曲形状になると、角が少ないため加工物Sの攪拌が不均一になり、13角以上の折曲形状になると、円弧に近付くため折曲による攪拌効果が弱くなる。
さらに、(1)又は(2)のコーティング装置は、前記ドラムをドラム軸が上下方向に傾くように揺動(スイング)させる揺動駆動部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコーティング装置によれば、構造が簡単でありながら、多数個の加工物を満遍なく攪拌する性能を高めることができ、もって加工物の表面にむらなく均一にコーティングすることができる優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
コーティング装置は、ドラム軸2方向基端の取付孔にボス3が固定され、ドラム軸方向途中に最大径部4があり、ドラム軸方向先端に投入開口5が開けられた、口窄み椀形状をなすドラム1と、前記ボス3に接続されて前記ドラム1をドラム軸2の回りに回転させる回転駆動部10と、前記ドラムをドラム軸が上下方向に傾くように揺動させる揺動駆動部20とを備える。前記ドラム1の内面を、回転方向には8〜14角の多角形状に形成し、且つドラム軸方向には6〜13角の折曲形状(折曲の角の数が6〜13角であり、面の数は7〜14面)に形成する。
【実施例】
【0011】
本発明の実施例を図1〜図9に基づいて説明する。本実施例のコーティング装置は、ドラム1と、ドラム1をドラム軸2の回りに回転させる回転駆動部10と、ドラム1をドラム軸2が上下方向に傾くように揺動させる揺動駆動部20と、回転駆動部10及び揺動駆動部20を制御する制御装置40とを備えている。
【0012】
ドラム1は、ステンレス合金、銅等よりなる板金により口窄み椀形状に形成されている。詳しくは、ドラム軸2方向基端側に設けられたドラム1の取付孔(図示略)に厚肉状のボス3が固定され、ドラム軸2方向途中にドラム1の最大径部4があり、ドラム軸2方向先端側にドラム1の投入開口5が開けられて口金6が固定されている。本例のドラム1は、前記基端側のボス3との境界から最大径部4までの部分が略半球殻状をなし、前記先端側の口金6との境界から最大径部4までの部分が、略半球をドラム軸2方向に2〜4割ほど圧縮した略半楕円球殻状をなしている。このドラム形状は適宜変更でき、例えば、略球状やドラム軸方向に長い略楕円球状に、口窄みの投入開口を設けた形状(これらも口窄み椀形状といえる)としてもよい。
【0013】
そして、本例のドラム1の内外面は、回転方向には12角の多角形状(図示例では仮想の円に内接する正12角形であり、面の数は12面)に形成され、且つ、ドラム2軸方向には10角の折曲膨出形状(図示例では前記半球殻と略半楕円球殻とがつくる仮想の略円弧に内接する折曲形状であり、面の数は11面)に形成されている。従って、本例のドラム1の内外面は、132面の四角形の平面部7と、それらが回転方向に折れ曲がった間の辺部8と、ドラム軸2方向に折れ曲がった間の辺部9とから構成されている。なお、ドラム1の製造方法は、特に限定されないが、回転方向に12に分割した板金片を相互に溶接して製造する方法が、製造のしやすさやコストの点で好ましい。
【0014】
回転駆動部10は、回転支持機構も含むものであり、ボス3に固定されてドラム軸2の延長方向に延びる支軸11と、支軸11の2箇所を回動可能に軸着する軸受12と、軸受12を固定して支持する揺動台13と、揺動台13の後部に取り付けられて支軸11の端部に接続された変速機14と、変速機14に接続された回転用モータ15とから構成されている。
【0015】
回転用モータ15を回転させると、その回転が変速機14により減速されて支軸11に伝わり、支軸11と共にドラム1を回転させるようになっている。回転用モータ15には正逆回転可能なものが用いられているため、ドラム1の回転方向は手動により又は制御装置40による自動制御により切り換え可能である。
【0016】
揺動駆動部20は、基台機能も含むものであり、脚21を有する基枠22と、基枠22に固定され立設された一対の支持板23と、両支持板23間に配された前記揺動台13に固定部材24にて固定されて横方向に延びるとともに両側方へ突出し、両支持板23に軸受25にて回動可能に軸着された支軸26と、一方の支持板23に取り付けられるとともに支軸26の一端部に接続された変速機27と、変速機27に接続された揺動用モータ28と、他方の支持板23に取り付けられるとともに支軸26の他端部に接続された電磁ブレーキ29とから構成されている。電磁ブレーキ29には、無励磁時にブレーキがかかり、励磁時にブレーキが解除されるものが使用されている。また、電磁ブレーキ29は、無励磁時に必要に応じて手動でブレーキを解除するためのハンドル29aを備えている。揺動台13には、支軸26の回転角度を一対のギヤ30を介して検出するエンコーダ31が取り付けられており、該エンコーダ31が検出した回転角度に基づいて、制御装置40がドラム1の揺動角度を後述するように制御する。
【0017】
揺動用モータ28を回転させると、電磁ブレーキ29が解除され、揺動用モータ28の回転が変速機27により大きく減速されて支軸26に伝わり、揺動台13が支軸26を中心に傾動する。揺動用モータ28には正逆回転可能なものが用いられているため、前記揺動台13の傾動は前下がり方向にも前上がり方向にも可能である。制御装置40が、この正逆回転を自動制御により切り換えるとともに揺動角度を制御することで、支軸11と共にドラム1が揺動されるようになっている。また、揺動用モータ28の回転が止まると、電磁ブレーキ29がかかるようになっている。
【0018】
ドラム1は、図4(a)に示すように、ドラム軸2が水平に対して約22°前上がりとなる角度姿勢を基本姿勢としており、揺動させない場合にはこの基本姿勢で運転するのを基本としている。但し、次に述べる最大角度範囲のうちの任意の角度姿勢で、揺動させずに運転してもよい。
【0019】
ドラム1の揺動範囲は、図4(b)に示すように、ドラム軸2が水平となる下限から、図4(c)に示すように、ドラム軸2が水平に対して55°前上がりとなる上限までの最大範囲のうちから、任意の角度範囲を制御装置により設定することができる。勿論、前記基本姿勢を中心として上下に任意の角度範囲を決めることもできる。
【0020】
制御装置40は、次の項目をそれぞれ単独で又はコンビネーションでプログラミングできるように、マイクロコンピュータを用いて構成されている。
・回転駆動部10に関して、回転速度(回転数/分)、回転時間、正逆回転とそのインターバル、間歇回転とそのインターバル
・揺動駆動部20に関して、揺動速度(往復回数/分)、揺動時間、揺動角度範囲、自動スタート、自動停止
これにより、数十パターン又はそれ以上の運転態様を項目別に記憶し呼び出すことが自在にできるようになっている。また、手動と自動の切替え等、必要不可欠な項目を事前にパターン化し、且つ任意に挿入・変更できるようになっている。
制御装置40の入力デバイスは、特に限定されず、タッチパネル、押しボタンスイッチ、マウス等を例示できるが、タッチパネルが好ましい。
【0021】
次に、以上のように構成されたコーティング装置により、粒状の加工物Sの表面にコーティング材をコーティングする方法を説明する。粒状の加工物Sとしては、菓子、錠剤等を例示することができる。コーティング材としては、菓子の表層材料(砂糖、チョコレート等)、錠剤の表層材料(糖衣、フィルム材等)、香料等を例示することができる。
【0022】
[揺動させずに運転する場合]
図4(a)に示すように、ドラム1を例えば前記基本姿勢とし、投入開口5からドラム1の内部に多数個の粒状の加工物Sを投入し、さらにコーティング材を投入する。電磁ブレーキ29が解除され、制御装置40により前記回転数等を設定した回転用モータ15を始動して、ドラム1を回転させるが、揺動用モータ28は停止のままにする。
ドラム1の内面において、複数の平面部7がそれらの間の辺部8により回転方向に12角に折れ曲がるように角度をなすことにより、多数個の加工物Sは、ドラム1の内面を回転方向に滑るだけでなく、自転して移動したり、はねて深浅方向に動き回ったりする。
また、複数の平面部7がそれらの間の辺部9によりドラム軸2方向にも10角に折れ曲がるように角度をなすことにより、多数個の加工物Sは、ドラム1の内面をドラム軸2方向に滑るだけでなく、自転して移動したり、はねて深浅方向に動き回ったりし、図4(a)に太線矢印で示すようにドラム軸2方向両側で折り返し運動も生じる。この加工物Sの回転方向とドラム軸2方向の動きの相乗効果により、ドラム1の内面に羽根等の攪拌部材を装着しなくても、多数の加工物Sが満遍なく攪拌されて、加工物Sの表面にむらなく均一なコーティングを行うことができる。
【0023】
[揺動させて運転する場合]
前項の運転に対し、回転用モータ15を始動してドラム1を回転させるだけでなく、図4(b)(c)に示すように、制御装置40により前記揺動速度等を設定した揺動用モータ28を始動して、ドラム1を前記回転中に揺動させる点において相違する。揺動角度範囲は、例えば、前記基本姿勢に対して下向きのみに35°と設定したり、前記基本姿勢に対して上向き及び下向きにそれぞれ20°と設定したりする等、適宜設定することができる。この運転によれば、ドラム1の揺動により、多数個の加工物Sがドラム1の内面をドラム軸2方向に強制的に移動するので(図4参照)、前述した複数の平面部7が角度をなすことによる加工物Sの同方向の自転やはねがより多く生じるため、より満遍なく攪拌される効果がある。
【0024】
なお、従来の特許文献1のバレルや特許文献3のドラムはその軸方向に2角(3面)の折曲形状に形成されているが、この場合、加工物はその中央の面に溜まってしまい、軸方向にはむしろ移動しにくくなるため、本発明による上記作用効果は得られない。また、特許文献2のバレルは油圧シリンダにより傾動可能であるが、回転中に揺動させるものではない。
【0025】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)ドラムを、ドラム軸方向の両端が閉鎖した形状を有し、その側面部に開閉可能な投入開口を設けたものとすること。
(2)揺動駆動部を、モータ以外の、例えば流体圧シリンダ(油圧シリンダ、エアシリンダ)を用いて構成すること。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るコーティング装置の実施例を示す側面図である。
【図2】同コーティング装置を図1の矢印方向から見た平面図である。
【図3】(a)は同コーティング装置のドラムを投入開口から見た正面図、(b)は同コーティング装置の(ドラムを省略した)背面図である。
【図4】同コーティング装置の揺動作用を示す側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ドラム
2 ドラム軸
3 ボス
4 最大径部
5 投入開口
6 口金
7 平面部
8 辺部
9 辺部
10 回転駆動部
20 揺動駆動部
40 制御装置
S 加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムと、前記ドラムをドラム軸の回りに回転させる回転駆動部とを備え、前記ドラムの内面を、回転方向には8〜14角の多角形状に形成し、且つドラム軸方向には6〜13角の折曲形状に形成したことを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
ドラム軸方向基端の取付孔にボスが固定され、ドラム軸方向途中に最大径部があり、ドラム軸方向先端に投入開口が開けられた、口窄み椀形状をなすドラムと、前記ボスに接続されて前記ドラムをドラム軸の回りに回転させる回転駆動部とを備え、前記ドラムの内面を、回転方向には8〜14角の多角形状に形成し、且つドラム軸方向には6〜13角の折曲形状に形成したことを特徴とするコーティング装置。
【請求項3】
前記ドラムをドラム軸が上下方向に傾くように揺動させる揺動駆動部を備えた請求項1又は2記載のコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−78232(P2009−78232A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250140(P2007−250140)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(503335227)株式会社オムニバス (5)
【Fターム(参考)】