説明

コートされ、平坦化されるポリマーフィルム

ポリマー基板および平坦化コーティング層を含む複合フィルムであって、平坦化された基板の表面のRa値は0.7nm未満、および/またはRq値は0.9nm未満であり、複合フィルムは基板の平坦化された表面にさらに原子層成長法によって堆積されたガス透過バリアを含む複合フィルム、複合フィルムを含む電子デバイス、およびそれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は電子デバイスまたは光電子デバイスの基板および/または封止層として使用に適したポリマーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスおよび光電子デバイスには、エレクトロルミネッセント(EL)ディスプレイデバイス(特に有機発光ディスプレイ(OLED)デバイス)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、光電池および半導体デバイス(一般に、有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路など)が含まれる。本発明は、絶縁および支持基板、および/または、これらのデバイスに使用される封止層であるフレキシブルポリマーフィルムに関する。デバイスの電子的な動作を駆動する電子回路が製造され、および/または基板に実装される。基板および回路を含む要素はしばしばバックプレーンと記述される。封止層はデバイスの外側に、部分的または完全に回路および基板を包み込んで配置されてもよい。
【0003】
基板および封止層は透明、半透明または不透明でもよいが、一般には透明であり、光学的透明性、平坦性および最小の複屈折に対して厳しい仕様を満たさなければならない。一般に、0.7%未満のヘーズとともに、400nm〜800nmにわたって85%の全光線透過度(TLT)がディスプレイ用途では望ましい。表面平滑性および平坦性は、電極導電性コーティングなどの引き続いて塗布されるコーティングの完全性を保証するために必要である。基板および封止層は良好なバリア特性、すなわちガスおよび溶媒浸透に対する高い耐性を有しなければならない。柔軟性、耐衝撃性、質量、硬度および耐引っかき性などの機械的特性もまた重要な考慮すべき事項である。フレキシブルポリマー基板および封止層によって、オープンリール式のプロセスで電子デバイスおよび光電子デバイスを製造できるので、コストが削減される。
【0004】
この技術分野において、基板および/または封止層としてのポリマー材料の不利な点には、光学品質のガラスまたは石英と比較して、化学物質に対する耐性が低いこと、バリア特性が劣ること、寸法安定性が劣ることが含まれる。無機のほかに有機バリアコーティングもこの問題を最小化するために改良されてきており、これらは典型的には高温のスパッタリングプロセスで採用される。米国特許第6,198,217号はバリア層として適切な材料を開示する。国際公開番号03/022575(A)は、ポリマー基板へのバリア層の堆積を含むバックプレーンおよびディスプレイデバイスの製造において遭遇する、高温処理条件において、良好な高温寸法安定性を示すフレキシブルポリマーフィルムを開示する。
【0005】
引き続いて適用される導電層ばかりではなくバリア層の完全性を保証するために、およびそれらの「ピンホール」を防ぐために、ポリマーフィルムの表面は良好な平滑性および平坦性を示さなけらばならない。国際公開番号03/087247(A)号はこの目的を達成する平坦化コーティング組成物を教示する。バリア層のピンホールを防止し、引き続いて適用される層の完全性を保証するための代替方法は、当該技術分野において知られている原子層成長法(ALD)技術の使用である。ALD技術では、反応物質を逐次誘導し、それらの単層自己制御式の表面吸着によって一層ごとに膜が成長し、それらはテクスチャ表面と高適合性があるので、バリア層のピンホールを防ぐ。Caria et al.(Appl. Phys. Lett.89、031915(2006年)および国際公開番号2004/105149(A))はALDによって、ピンホールが無い高性能ガス拡散バリアコーティングを製造できることを教示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、良好なガスバリア特性を示し、特にフレキシブル電子デバイス、好ましくは電子ディスプレイ、光電池または半導体デバイスなどの電子デバイスの製造において、基板および/または封止層としての使用に適切なポリマーフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ポリマー基板および平坦化コーティング層を含む複合フィルムが提供され、平坦化された基板の表面のRa値は0.7nm未満を示し、および/またはRq値は0.9nm未満を示し、並びに、複合フィルムは基板の平坦化された表面に、原子層成長法によって堆積されたガス浸透バリアをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
基板のポリマー材料は好ましくはポリエステルである。本明細書で使用する場合の用語ポリエステルには、最も単純な形態、または、化学的および/または物理的に修飾されたポリエステルホモポリマーが含まれる。特に、
(i)1つまたは複数のジオール、
(ii)1つまたは複数の芳香族ジカルボン酸、および、
(iii)任意選択で、nが2から8である一般式Cn2n(COOH)2の1つまたは複数の脂肪族ジカルボン酸から得られるポリエステルである。ただし芳香族ジカルボン酸は(コ)ポリエステル中のジカルボン酸成分の総量に対して約80モル%から約100モル%の量で、(コ)ポリエステル中に存在する。コポリエステルはランダム、交互またはブロックコポリエステルであってもよい。
【0009】
ポリエステルは該ジカルボン酸またはその低級アルキル(炭素原子6個まで)ジエステルを1つまたは複数のジオールと縮合させることで得ることができる。芳香族ジカルボン酸は好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸から選択され、好ましくはテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸である。ジオールは好ましくは、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族および脂環式グリコールから選択され、好ましくは脂肪族グリコールから選択される。好ましくは、コポリエステルは、たった1つのグリコール、好ましくはエチレングリコールを含有する。脂肪族ジカルボン酸はコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸またはセバシン酸であってもよい。好ましいホモポリエステルはエチレングリコールと2,6−ナフタレンジカルボン酸またはテレフタル酸のポリエステルである。特に好ましいホモポリエステルはポリ(エチレンナフタレート)であり、特にエチレングリコールと2,6−ナフタレンジカルボン酸のポリエステルである。
【0010】
ポリエステルの形成は、一般には約295℃までの温度で、縮合またはエステル交換によって、知られている方法で都合よく達成される。たとえば、好ましいPENポリエステルは2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸、好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸、またはその低級アルキル(炭素原子6個まで)ジエステルをエチレングリコールと縮合させることで合成することができる。一般に、重縮合は、固相重合段階を含む。固相重合は、流動床、例えば窒素を用いて流動化するか、または、真空流動層上で回転真空乾燥機を用いて実施することができる。適切な固相重合技術は、たとえば、その開示が参照により本願明細書に援用される欧州特許出願公開第0,419,400(A)号に開示されている。一実施形態では、PENは、触媒残渣、望ましくない無機沈殿、その他のポリマー製造の副生物のような汚染量を減少したポリマー材料を提供するゲルマニウム触媒を用いて調製される。「より清浄な」ポリマー組成物は、より一層、光学的透明度および表面平滑性を助長させる。好ましくは、PENのPET当量固有粘度(IV)は0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.5、特に0.79〜1.0である。IVが0.5未満では機械的特性などの所望の特性が不足したポリマーフィルムが生じ、IVが1.5を超えると得るのが困難になり、原材料の加工が困難となりやすい。
【0011】
好ましいホモポリエステルPENのTgは、通常120℃であると認識されており、他の好ましいホモポリエステルPETのTgは、通常80℃であると認識されている。コポリエステルのTg値は、取り込まれるコモノマーの性質に依存する親ホモポリマーのTg値未満または超えてもよい。ポリエステルから製造されるフィルムのTg値は、フィルムの結晶度に対応するが、ポリエステル原材料のTg値よりも大きくても良い。このように、フィルムの結晶度が高くなると、フィルムのアモルファス領域のポリエステル鎖はその動きがより制限され、これはガラス転移がより高温で観察されることを意味する。
【0012】
基板は自己支持性を有し、これは支持ベースが無い場合にも独立して存在できることを意味する。基板層の厚さは好ましくは約12μmから約250μmであり、一層好ましくは約12μmから約150μmであり、典型的には約25μmから125μmの厚さである。
基板層の形成は従来の当該技術分野において知られている技術によって達成されてもよい。好都合なことに、基板の形成は下記の手順による押し出し成形によって達成される。一般的にプロセスは、溶融ポリマー層の押し出し、押し出し物の急冷、急冷された押し出し物を少なくとも一方向へ延伸させるステップを含む。
基板は好ましくは二軸延伸される。延伸されたフィルムを製造するための当該技術分野において知られている任意のプロセス、たとえば管状またはフラットフィルムプロセスによって延伸されてもよい。二軸延伸は、満足できる機械的性質と物理的性質との組み合わせを得るために、フィルム面で相互に垂直な二方向に延伸することで達成される。
管状プロセスでは、熱可塑性ポリエステルチューブを押し出し、続いて急冷し、再加熱し、次いで横手方向に延伸させるために内部ガス圧によって拡張させ、長さ方向に延伸させる速度で引き出すことによって同時二軸延伸が達成される。
【0013】
好ましいフラットフィルムプロセスでは、フィルム形成ポリエステルはスロット金型に通して押し出し、ポリエステルがアモルファス状態に急冷されるようにするために冷却した流延用ドラム上で急冷させる。ポリエステルのガラス転移温度を超える温度で、急冷された押し出し物を少なくとも一方向に引き伸ばすことにより延伸を実施する。連続的延伸はフラットな、急冷された押し出し物をまず一方向、ほとんどの場合は長さ方向、すなわちフィルム延伸機械を通る前方方向に、次いで横方向に引き伸ばすことによって実施できる。押し出し物の前方延伸を、都合よく一組の回転ロールまたは二対のニップロ−ルの間で実施し、次いでステンタ装置内で横方向の延伸を実施する。通常、延伸されたフィルムの寸法が延伸のそれぞれの方向でその元の寸法の2倍から5倍、一層好ましくは2.5倍から4.5倍になるように引き延ばされる。代表的には、ポリエステルのTgよりも高い温度で、好ましくはTgよりも約15℃高い温度で延伸される。一方向の延伸だけが要求される場合には、より大きな延伸比(たとえば、約8倍まで)を使用してもよい。機械方向および横方向に均等に引き伸ばす必要はないが、バランスの取れた特性を有することが望まれる場合にはこれが好ましい。
【0014】
延伸フィルムは、ポリエステルの結晶化を誘導するために、ポリエステルのガラス転移温度を超えるがその溶融温度未満の温度で寸法を拘束しながら、ヒートセットにより寸法を安定化させてもよく、またそれが好ましい。ヒートセット中は、トーインとして知られる手順によって横方向TDに少量の寸法緩和が実施されてもよい。トーインは2%から4%程度の寸法収縮を伴ってもよい。しかし、低ライン張力が要求され、フィルム制御および巻き取りに問題が生じるので、プロセスまたは機械方向MDを類似する寸法緩和させることは困難である。実際のヒートセット温度および時間は、フィルムの組成およびその望ましい最終的な温度収縮率に依存して変化するが、引き裂き抵抗などのフィルムの靱性を実質的に劣化させように選択されるべきではない。これらの制約内では、ヒートセット温度は約180℃から245℃が通常望ましい。
基板は、オンライン緩和段階の使用を通じてさらに安定化させてもよく、実際にそれは好ましい。あるいは、緩和処理をオフラインで実施することもできる。この追加のステップでは、フィルムは、さらに低減させたMDおよびTD張力で、ヒートセット段階の温度よりも低い温度で加熱される。このように処理されたフィルムは、事後ヒートセット緩和をせずに製造された場合よりもより小さい温度収縮率を示す。
【0015】
一実施形態では、二軸延伸フィルムのヒートセットおよび熱安定化は以下のように実施される。延伸ステップが終了した後に、ヒートセットはフィルム幅に対して約19kg/mから約75kg/m(一実施形態ではフィルム幅に対して約45kg/mから約50kg/m)の範囲の張力でフィルムの寸法を拘束することにより実施され、ヒートセット温度は好ましくは約135℃から約250℃、一層好ましくは235℃から240℃であり、加熱時間は典型的には5秒から40秒、好ましくは8秒から30秒である。次にヒートセットフィルムは低張力で加熱されることで熱安定化され、好ましくはフィルムに印加される張力はフィルム幅に対して10kg/m未満であり、一実施形態では5kg/m未満、さらなる実施形態ではフィルム幅に対して1kg/mから約3.5kg/mの範囲であり、典型的にはヒートセットステップで使用される温度よりも低い温度が使用され、約135℃から250℃の範囲に選択され、好ましくは150℃から230℃の範囲であり、加熱時間は典型的には5秒から40秒の範囲であり、一実施形態では20秒から30秒の範囲である。特にPETに適用できる一実施形態では、ヒートセットフィルムは約140℃から190℃の範囲の温度、好ましくは150℃から180℃の範囲の温度を使用して熱安定化される。特にPENに適用できる一実施形態では、ヒートセットフィルムは約170℃から230℃の範囲、好ましくは180℃から210℃の範囲の温度を使用して熱安定化される。
ヒートセットされ、熱安定化させた基板はとても小さい残留収縮率であるので、高い寸法安定性を示す。
【0016】
好ましくは、基板の線熱膨張係数(CLTE)は23℃から基板のガラス転移温度(Tg(℃))まで温度範囲で、機械方向および横方向の寸法のそれぞれで、40×10-6/℃未満、好ましくは30×10-6/℃未満、好ましくは25×10-6/℃未満、好ましくは20×10-6/℃未満、一層好ましくは15×10-6/℃未満である。一実施形態では、PEN基板のCLTEは23℃から+120℃の温度範囲で、40×10-6/℃未満、好ましくは30×10-6/℃未満、好ましくは25×10-6/℃未満、一層好ましくは20×10-6/℃未満、一層好ましくは15×10-6/℃未満である。PET基板では、CLTEは23℃から+80℃の温度範囲で、好ましくは40×10-6/℃未満、好ましくは30×10-6/℃未満、好ましくは25×10-6/℃未満、好ましくは20×10-6/℃未満、一層好ましくは15×10-6/℃未満である。
【0017】
一実施形態では、基板の収縮率は、150℃、30分で、本明細書で規定されるように測定され、機械方向および横方向の寸法のぞれぞれで、0.5%以下、好ましくは0.25%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%以下、一層好ましくは0.03%以下である。好ましくは、基板(特に熱安定化され、ヒートセットされた、二軸延伸PEN基板)の収縮率は200℃、10分で、本明細書で規定されるように測定され、機械方向および横方向の寸法のぞれぞれで、2%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.75%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.25%以下、一層好ましくは0.1%以下である。一実施形態では、基板(特に熱安定化され、ヒートセットされた、二軸延伸PET基板)の収縮率は120℃、30分で、本明細書で規定されるように測定され、機械方向および横方向の寸法のぞれぞれで、0.5%以下、好ましくは0.25%以下、好ましくは0.1%以下、一層好ましくは0.05%以下である。好ましい実施形態では、熱安定化され、ヒートセットされた、二軸延伸PET基板の収縮率は150℃、30分で、本明細書で規定されるように測定され、機械方向および横方向の寸法のぞれぞれで、0.5%以下、好ましくは0.25%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%以下、一層好ましくは0.03%以下である。
特に好ましい実施形態では、基板は、200℃で10分後に前述した収縮率特性を有し、好ましくは前述したCLTE特性を有するポリ(エチレンナフタレート)を含有する熱安定化させた、ヒートセット二軸延伸フィルムである。
【0018】
基板は、ポリエステルフィルムの製造で使用される、フィルムからその表面へ移動しないことが知られている従来の任意の添加物を都合良く含有してもよい。したがって添加物はアニーリング中にフィルムの表面を汚染せず、表面ヘーズの観測結果には寄与しない。このように、固体であるか、またはポリエステルに共有結合している、架橋剤、顔料および空隙剤などの薬剤、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤および燃焼防止剤などの薬剤、そして最後に、安定な、非移動光学増白剤、光沢向上剤、分解促進剤、粘度調節剤および分散安定剤である薬剤を必要に応じて取り込んでもよい。特に、基板は、製造中のハンドリング性および巻線性を改良することができる微粒子充填剤を含有してもよい。微粒子充填剤は、たとえば、微粒子無機充填剤(たとえば、アルミナ、シリカおよびチタニアなどの空隙金属(voiding metal)、非空隙金属(non−voiding metal)または半金属酸化物、焼成チャイナクレー、および、カルシウムおよびバリウムのカーボナートおよびサルファートなどのアルカリ金属塩)、または非相溶性樹脂充填剤(たとえばポリアミドおよびオレフィンポリマー、特に分子中に6個までの炭素原子を含んだモノアルファオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー)または2以上の該充填剤の混合物であってもよい。
【0019】
層の組成物の成分は従来の方法で混合されてもよい。たとえば、フィルム形成ポリエステルを生成するモノマー反応物質と混合させ、または成分はタンブルまたは乾式混合によって、または押出機の中で混合することによってポリエステルと混合されてもよく、続いて冷却されて、ほとんどの場合、顆粒またはチップに粉砕される。マスターバッチング技術が採用されてもよい。
好ましい実施形態では、基板は光学的に透明であり、好ましくは散乱可視光(ヘーズ)%は、規格ASTM D1003に従って測定されて、10%未満、好ましくは6%未満、一層好ましくは3.5%未満、特に1.5%未満である。この実施形態では、充填剤は典型的には少量だけが存在し、通常層の0.5質量%未満、好ましくは0.2質量%未満である。
【0020】
フィルム基板の露出される表面は、必要に応じて、表面と引き続いて適用される層との間の接着性を改善するために、化学的または物理的表面修飾処理が施されてもよい。好ましい処理は、その簡単さおよび有効性から、フィルムの露出される表面をコロナ放電を伴う高電圧の電気ストレスにさらすことである。高周波、高電圧発生器(好ましくは電圧1kVから100kVで1kWから20kWの出力を有する)を使用する従来の設備によって大気圧の空気中で、コロナ放電による好ましい処理が実施されてもよい。好ましくは線速度1.0m/分から500m/分の放電ステーションの誘電性支持ローラの上にフィルムを通過させて、放電が通常実施される。放電電極は移動するフィルム表面から0.1mmから10.0mmに配置されてもよい。
【0021】
平坦化コーティングをする前に、基板の平坦化コーティング組成物への接着性を向上させるために、基板は好ましくはプライマー層でコーティングされる。プライマー層は当該技術分野において知られているポリエステルおよびアクリル樹脂を含む任意の好適な接着性向上ポリマー組成物であってもよい。プライマー組成物はポリエステル樹脂とアクリル樹脂との混合物であってもよい。アクリル樹脂はオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含有してもよい。プライマー組成物のポリマーは、好ましくは水溶性または水分散性である。
【0022】
ポリエステルプライマー成分は、以下のジカルボン酸およびジオールから得られる成分が含有される。適切な二酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、および5−スルホイソフタル酸ナトリウムが挙げられる。複数のジカルボン酸成分を用いたコポリエステルが好ましい。ポリエステルは任意で、マレイン酸またはイタコン酸などの少量の不飽和二酸成分またはp−ヒドロキシ安息香酸などの少量のヒドロキシカルボン酸成分を含んでもよい。適切なジオールには、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、およびポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが挙げられる。ポリエステルのガラス転移点は好ましくは40℃から100℃であり、さらに好ましくは60℃から80℃である。適切なポリエステルは、PETまたはPENと、比較的少量の1つまたは複数の他のジカルボン酸コモノマー、特にイソフタル酸およびスルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族二酸、および任意の比較的少量の1つまたは複数のジエチレングリコールなどのエチレングリコール以外のグリコールとのコポリエステルを含有する。
【0023】
一実施形態では、プライマー層は、アクリレートまたはメタクリレートポリマー樹脂を含有する。アクリル樹脂は、1つまたは複数の他のコモノマーを含有してもよい。適切なコモノマーとしては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル(ただし、アルキル基は好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等);アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、およびメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ−を含有するモノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、およびアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を含有するモノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、四級アミン塩等)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジメタクリル酸アルキル(ただしアルキル基は好ましくは上述されたものから選択される)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基は好ましくはメトキシ、エトキシ、ブトキシ、イソブトキシ等である)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、およびN−フェニルメタクリルアミドなどのアミド基を含有するモノマー;無水マレイン酸および無水イタコン酸などの酸無水物;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、イタコン酸モノアルキル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、およびブタジエンが挙げられる。好ましい実施形態では、アクリル樹脂は、オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含有する1つまたは複数のモノマーと共重合される。オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、および2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンが挙げられる。1つまたは複数のコモノマーを使用してもよい。2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。ポリアルキレンオキシド鎖を含有するモノマーには、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル部分にポリアルキレンオキシドを加えることによって得られるモノマーがある。ポリアルキレンオキシド鎖には、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリブチレンオキシドがある。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100個が好ましい。
【0024】
プライマー組成物が、ポリエステルおよびアクリル成分、特にオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含有するアクリル樹脂の混合物を含む場合には、ポリエステルの含有量は5質量%から95質量%、好ましくは50質量%から90質量%であり、アクリル樹脂の含有量は5質量%から90質量%、好ましくは10質量%から50質量%であることが好ましい。
【0025】
他の適切なアクリル樹脂としては、
(i)(a)35モル%から40モル%のアクリル酸アルキル、(b)35%から40%メタクリル酸アルキル、(c)10モル%から15モル%のイタコン酸などの遊離カルボキシル基を含有するコモノマー、および(d)15モル%から20モル%のp−スチレンスルホン酸など芳香族スルホン酸および/またはそれらの塩のコポリマーであって、例としては、その開示が参照により本願明細書に援用される欧州特許出願公開第0429179(A)号に開示されているように、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/イタコン酸/p−スチレンスルホン酸および/またはそれらの塩を37.5/37.5/10/15モル%の比で含有するコポリマーが挙げられる。ならびに、
(ii)アクリル系および/またはメタクリル系ポリマー樹脂であって、例としては、本願明細書に援用される欧州特許出願公開第0408197(A)号に開示されているように、約35モル%から60モル%のアクリル酸エチル、約30モル%から55モル%のメタクリル酸メチル、および約2モル%から20モル%のメタクリルアミドを含有するポリマーが挙げられる。
【0026】
プライマーまたは接着層は、基板への接着性を高め、内部架橋が可能である架橋剤を含んでもよい。適切な架橋剤には、アルコキシ化されていてもよいメラミンとホルムアルデヒドとの縮合生成物が含まれる。プライマーまたは接着層は、架橋剤の架橋を促進するために、硫酸アンモニウムなどの架橋触媒を含んでもよい。他の適切な架橋剤および触媒は、その開示が参照により本願明細書に援用される欧州特許出願公開第0429179(A)号に開示されている。
さらに適切なプライマーが、その開示が参照により本願明細書に援用される米国特許第3,443,950号に開示されている。
【0027】
プライマー層の基板へのコーティングはインラインまたはオフラインで実施されてもよいが、好ましくは「インライン」で実施され、および好ましくは二軸延伸動作の前方と横方向の引き伸ばしとの間に実施される。
平坦化コーティング層は任意にプライマー層が適用された基板の一方または両方の表面に配置されてもよい。一実施形態では、コーティングは任意にプライマー層が適用された基板の両面に存在する。平坦化コーティング層は、大きくは、有機コート、有機/無機混合コートおよび主に無機のコートの3つの分類のなかの1つに分類される。
【0028】
有機平坦化コーティング組成物は一般には、(i)光開始剤、(ii)低分子量反応性希釈剤(たとえばモノマーアクリレート)、(iii)不飽和オリゴマー(たとえばアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレートまたはポリエステルアクリレート)、および(iv)溶媒を含有する。該有機コーティングは光分解経路から開始された遊離基反応によって硬化される、。特定の製剤は所望の最終特性に応じて変化してもよい。一実施形態では、有機平坦化コーティング組成物は、溶媒(メチルエチルケトンなど)中に、モノマーおよびオリゴマーアクリレート(好ましくはメチルメタクリレートおよびエチルアクリレートを含有する)の紫外線硬化可能な混合物を含有し、ただし一般にコーティング組成物は、組成物の総重量の約20重量%から30重量%が固形分のアクリレートを含有し、さらに少量の(たとえば固形分の質量で約1%)光開始剤(たとえばイルガキュア(Irgacure)(登録商標)2959;チバ)を含有する。
本明細書で使用する場合、用語「低分子量」は重合可能なモノマー種を示す。用語「反応性」はモノマー種の重合可能度を意味する。
さらなる実施形態では、有機平坦化コーティング組成物は、架橋性有機ポリマー、たとえばポリエチレンイミン(PEI)、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアミド、ポリチオールまたはポリアクリル酸、および架橋剤(サイメル(Cymel)(登録商標)385または本明細書で参照される架橋剤など)を溶媒(一般に水性溶媒)中に含有する。この実施形態では、コーティング組成物は好ましくは、PEI(好ましくは600,000から900,000の範囲の分子量(Mw))を含有する。
【0029】
有機/無機混合コーティングは、有機ポリマーマトリックス中に分散された無機粒子を含有する。このため、一般に有機成分には、低分子量反応性成分(たとえばモノマーアクリレート)および/または不飽和オリゴマー成分(たとえばアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエステルアクリレート)が含有される。コーティングは熱または光分解経路によって開始された遊離基反応のいずれかによって硬化される。コーティング組成物中の光開始剤の存在はオプションである。溶媒は典型的にはコーティング組成物中に存在する。無機粒子は典型的にはシリカまたは金属酸化物であり、より典型的にはシリカであり、重合可能な有機マトリックス中に分散している。無機粒子の平均粒子直径は好ましくは0.005μmから3μmであり、一実施形態では少なくとも0.01μmであり、一実施形態では1μm以下である。無機粒子は典型的には、基板または複合フィルムの光学特性に実質的に影響を与えないように選択される。一実施形態では、無機粒子はコーティング組成物の固形組成の約5質量%から約60質量%、好ましくは硬化コーティング層の約5質量%から約60質量%の量で存在する。
【0030】
このように、一実施形態では、有機/無機混合コーティング組成物は、低分子量反応性成分(たとえばモノマーアクリレート)および/または不飽和オリゴマー成分(たとえばアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエステルアクリレート)、好ましくはシリカおよび金属酸化物から選択される無機粒子、溶媒、および任意選択の光開始剤を含有する。
さらなる実施形態では、熱硬化性有機/無機混合コーティング組成物は、無機(好ましくはシリカ)粒子と一緒にエポキシ樹脂を含有し、無機粒子は好ましくはコーティング組成物の固形物(好ましくは、アルコール溶液中に5質量%から約20質量%の総固形物を含有する)の少なくとも約10質量%の濃度(好ましくは少なくとも約20%、および好ましくは約75%以下)で存在する。
【0031】
さらなる実施形態では、紫外線硬化可能な有機/無機混合コーティング組成物は、溶媒(メチルエチルケトンなど)中に無機(好ましくはシリカ)粒子とともにモノマーアクリレート(一般に多官能性アクリレート)を含有し、ただし典型的にはコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量の約5重量%から50重量%の固形物としてアクリレートおよびシリカを含有し、典型的にはさらに少量の(たとえば固形物の約1質量%)光開始剤を含有する。多官能性モノマーアクリレートは当該技術分野において知られ、例には、ジペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0032】
主に無機の平坦化コーティング組成物は、ポリシロキサンなどの重合可能な主に無機のマトリックスに含有される無機粒子を含有し、該コーティング組成物は典型的には熱硬化される。一実施形態では、無機コーティングは以下の物質を含有するコーティング組成物から誘導される。
(a)約5重量パーセントから約50重量パーセントの固体であって、該固体は約10重量パーセントから約70重量パーセント(好ましくは約20重量%から60重量%)のシリカおよび約90重量パーセントから約30重量パーセントの部分的に重合された一般式RSi(OH)3の有機シラノールを含有し、ただしRはメチルならびに、約40%までのビニル、フェニル、ガンマグリシドキシプロピル、およびガンマメタクリルオキシプロピルからなる群から選択される基とから選択される、固体と、
(b)約95重量パーセントから約50重量パーセントの溶媒であって、約10重量パーセントから約90重量パーセントの水および約90重量パーセントから約10重量パーセントの低級脂肪族アルコールを含有する溶媒。
特にコーティング組成物のpHは約3.0から約8.0であり、好ましくは約3.0から約6.5であり、好ましくは少なくとも4.0である。
【0033】
この主に無機のコーティング組成物のシリカ成分は、たとえば、ポリけい酸を形成するために、オルトケイ酸テトラエチルの加水分解によって得ても良い。加水分解は、たとえば、脂肪族アルコールおよび酸の添加による従来の手順を使用して実施できる。あるいは、コーティング組成物に使用されるシリカはコロイド状シリカであり得る。コロイド状シリカは通常粒子サイズが約5nmから25nm、好ましくは約7nmから15nmである。使用可能な典型的なコロイド状シリカには、一例として、「LudoxSM」、「LudoxHS−30」および「LudoxLS」分散剤(グレースデビソン社)などの市販されているものが挙げられる。有機シラノール成分は一般式RSi(OH)3を有する。少なくともR基の約60%、好ましくは約80%から100%はメチルである。R基の約40%まではビニル、フェニル、ガンマグリシドキシプロピル、およびガンマメタクリルオキシプロピルから選択される、より高級なアルキル基またはアリール基とすることができる。溶媒成分は通常は、水および1つまたは複数の低級脂肪族アルコールの混合物を含有する。水は通常は、溶媒の約10重量パーセントから90重量パーセントを構成し、他方低級脂肪族アルコールは相補的に、約90重量パーセントから10重量パーセントを構成する。脂肪族アルコールは、通常、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよび第3級ブタノールのような炭素原子1〜4個のものである。
【0034】
平坦化層の他の例は、その開示が参照により本願明細書に援用される、たとえば、米国特許第4198465号、米国特許第3,708,225号、米国特許第4,177,315号、米国特許第4,309,319号、米国特許第4,436,851号、米国特許第4,455,205号、米国特許第0,142,362号、国際公開番号03/087,247(A)および欧州特許第1,418,197号に開示されている。
平坦化コーティング組成物は、連続コーティングのほかにディップコーティング手順を含む従来のコーティング技術を使用して適用されることができる。コーティングは、通常、乾燥厚さで約1マイクロメートルから約20マイクロメートル、好ましくは約2マイクロメートルから10マイクロメートル、特に約3マイクロメートルから約10マイクロメートルの厚さに塗られる。コーティング組成物はフィルム製造とは別のプロセスステップである「オフライン」、またはフィルム製造プロセスと連続した「インライン」のどちらかで適用されることができる。コーティングは好ましくはインラインで実施される。
【0035】
熱硬化性コーティング組成物は、基板に塗布した後に、約20℃から約200℃、好ましくは約20℃から約150℃の温度で硬化できる。一方大気温度20℃では硬化するまでに数日かかり、温度を150℃に上げるとコーティングを数秒で硬化させる。
平坦化されたフィルムの表面のRa値は、本願明細書の測定では、0.7nm未満、好ましくは0.6nm未満、好ましくは0.5nm未満、好ましくは0.4nm未満、好ましくは0.3nm未満、理想的には0.25nm未満であり、および/またはRq値は、本願明細書の測定では、0.9nm未満、好ましくは0.8nm未満、好ましくは0.75nm未満、好ましくは0.65nm未満、好ましくは0.6nm未満、好ましくは0.50nm未満、好ましくは0.45nmまたはそれよりも小さく、好ましくは0.35nm未満、理想的には0.3nm未満である。
ALDによってガス透過バリア層を堆積させる前に、同時係属の出願人による国際公開番号2006/097733(A)により詳細に記載されているように、平坦化された表面にプラズマ前処理が実施されてもよい。一般に、プラズマ前処理はアルゴン/窒素またはアルゴン/酸素の雰囲気下で、約2分から8分の間で、好ましくは約5分実施される。好ましくは、プラズマ前処理はマイクロ波で活性化され、すなわち典型的には別のプラズマ源ではなく、マイクロ波プラズマ源を使用して実施される。
【0036】
ガス透過バリア層は平坦化された基板の表面、すなわち平坦化コーティング層の表面の上に適用される。バリア層は特に水蒸気および/または酸素透過に対するバリア特性を有し、特に水蒸気透過速度が10-3g/m2/日未満および/または酸素透過速度が10-3/mL/m2/日未満である。好ましくは、水蒸気透過速度は10-4g/m2/日未満であり、好ましくは10-5g/m2/日未満、好ましくは10-6g/m2/日未満である。好ましくは、酸素透過速度は10-4g/m2/日未満であり、好ましくは10-5g/m2/日未満である。ガス透過バリア層は原子層成長法(ALD)によって成長させ、普通はクリーン環境において実施される。ALDは基板の上に材料の均一な薄膜を堆積させ、原子スケールの堆積を可能にする自己制御式の、逐次表面化学である。ALDによって成長したフィルムは層単位で形成され、該プロセスによって一層あたり約0.1オングストロームという微細な原子層制御される膜成長を可能にする。堆積されたフィルムの合計厚さは典型的には約1nmから約500nmである。ALDによれば、深いトレンチ、多孔質媒体の内側および粒子の周りに、厚さが完全に均一のコーティングを堆積させることができる。ALD成長フィルムは基板に化学的に結合される。(ALD)プロセスの記述は、たとえば、「Atomic Layer Epitaxy」 by Tuomo Suntola in Thin Solid Films、216巻(1992年)84頁〜89頁に見出すことができる。ALDは、ALD反応がCVD反応を2つの半反応に分けて、前駆体材料をコーティングプロセスおよび反応中に分離して維持することを除いて、化学的に化学気相成長(CVD)に類似する。プロセスでは、層前駆体の気体が真空チャンバ内の基板の上に吸収される。次に気体はチャンバから排気され、基板の上に吸収された前駆体の薄膜を残す。次に反応物質が、吸収された前駆体との反応を促進して望ましい材料の層を形成する温度条件で、チャンバの中に導入される。反応副産物がチャンバから排気される。材料の次の層は再び基板を前駆体気体に曝して、堆積プロセスを繰り返すことによって形成することができる。ALDは、成長が基板表面の有限個の核形成部位で開始されて継続される、従来のCVDおよび物理的気相成長(PVD)方法とは区別される。後者の技術は粒状の微細構造を有する柱状成長となり、柱の間の境界に沿ってガス浸透が容易となる。ALDプロセスは特徴の無い微細構造を達成するために無指向性成長メカニズムを含む。
【0037】
ALDによって形成される材料および本発明のバリア層として適切な材料は無機物であり、周期表のIVB族、VB族、VIB族、IIIA族、IIB族、IVA族、VA族およびVIA族の酸化物、窒化物および硫化物およびこれらの組み合わせを含有する。特に興味深いのは酸化物および窒化物である。特に興味深い材料としては、SiO2、Al23、ZnO、ZnS、HfO2、HfON、AlN、およびSi34が挙げられる。混合酸化物窒化物も関心の対象である。酸化物は光学的透明性を示し、可視光がデバイスを入出力しなければならない電子ディスプレイおよび光電池にとっては魅力的である。SiおよびAlの窒化物も可視スペクトルにおいて透明である。
これらのバリア材料を形成するためにALDプロセスに使用される前駆体はよく知られている(たとえばM.LeskelaおよびM.Ritala、「ALD precursor chemistry:Evolution and future challenges」、Journal de PhysiqueIV,9巻,837頁−852頁(1999年)およびその参考資料)。
【0038】
ALDによるバリアコーティングを合成するための基板温度の好ましい範囲は50℃から250℃である。基板の化学的劣化または基板寸法の変化のためにALDコーティングが破壊される可能性があるので、250℃を超える温度は好ましくない。
ガス透過バリア層の厚さは好ましくは2nmから100nmの範囲であり、一層好ましくは2nmから50nmの範囲である。より薄い層は、フィルムにひび割れを生じることなく折り曲げできる耐性があり、これは、ひび割れによってバリア特性が損なわれるので、電子デバイスのフレキシブル基板にとって重要な特性である。より薄いバリアフィルムはより透明であり、これも光電子デバイスに使用される場合には重要な特性である。バリア層の最小の厚さは連続フィルム被膜に要求される厚さである。
一実施形態では、接着性向上層はALDプロセスの直前に基板の上に提供されるが、特に好ましい平坦化コーティング組成物を利用する場合には、該層は通常本発明には要求されない。オプションの接着性向上層の厚さは好ましくは1nmから100nmの範囲である。接着性向上層として適切な材料は典型的には上述されたバリア材料の群から選択される。酸化アルミニウムおよび酸化シリコンは接着性向上層として好ましく、ALDによって堆積されてもよいが、CVDまたはPVDなどの他の方法も適切である場合がある。
【0039】
一旦バリア層が堆積されれば、たとえば導電性共役ポリマー層などの電極を含む次の層が、当該技術分野において知られている従来の製造技術によって形成されてもよい。
このように、一実施形態では、本発明の複合フィルムはさらに電極層を含む。電極層は、当該技術分野において知られている適切な導電性材料、たとえば金、またはインジウムすず酸化物などの導電性金属酸化物(当該技術分野において知られているように他の金属がドープされていてもよい)の層またはパターン層であってもよい。電極層として適切な他の材料は当業者に知られており、たとえば、銀、アルミニウム、白金、パラジウム、ニッケルが挙げられる。電極層は透明または半透明であってもよい。好ましい実施形態では、電極層は、金を含有する。一実施形態では、電極層を堆積する前にコートフィルムに連結層が堆積される。該連結層は、典型的にはコートフィルムの表面に従来の技術を使用して堆積される金属層を含有し、ただし金属層は電極層の導電性材料とは異なる。
【0040】
本発明の複合フィルムは、電子デバイス、特に、電子、フォトニックおよび光学的組立品または構造を含むフレキシブル電子デバイス、および、好ましくは電子ディスプレイデバイス(巻くことが可能な電子ディスプレイを含む)、光電池および半導体デバイスの製造、特に上述したバックプレーンの製造のための基板および/または封止フィルムとしての使用に適切である。一実施形態では、本明細書で使用する場合の用語「電子デバイス」とは、本質的な特徴として少なくともポリマー基板および電子回路を含むデバイスを指す。電子デバイスおよび光電子デバイスは、導電性ポリマーを含む。好ましくは、該デバイスは電子ディスプレイデバイスであり、たとえば、エレクトロルミネッセント(EL)デバイス(特に有機発光ディスプレイ(OLED))、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、液晶ディスプレイデバイスまたはエレクトロウェッティング方式ディスプレイデバイス、光電池、または半導体デバイス(一般に、有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路など)が挙げられる。一実施形態では、本明細書で使用する場合の用語「エレクトロルミネッセントディスプレイデバイス」、および特に用語「有機発光ディスプレイ(OLED)デバイス」とは、電極を含む2つの層の間に配置される光放出エレクトロルミネッセント材料(特に導電性ポリマー材料)の層を含むディスプレイデバイスを指し、ただし得られた複合構造は2つの基板(すなわち支持またはカバー)層の間に配置される。一実施形態では、本明細書で使用する場合の用語「光電池」とは、電極を含む2つの層の間に配置される導電性ポリマー材料の層を含むデバイスを指し、ただし得られた複合構造は2つの基板(すなわち支持またはカバー)層の間に配置される。一実施形態では、本明細書で使用する場合の用語「トランジスタ」とは、少なくとも1つ導電性ポリマーの層、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極、および1つまたは複数の基板層を含むデバイスを指す。
【0041】
このように、本発明のさらなる態様によれば、電子デバイス、特に、本明細書に規定される複合フィルムを含むフレキシブル電子デバイスが提供される。デバイスは典型的にはさらには、エレクトロルミネッセント材料の1つまたは複数の層、2以上の電極、および1つまたは複数の基板層を含む。
本発明のさらなる態様によれば、複合フィルムの製造プロセスが提供され、このプロセスには、平坦化されてコートされたポリマー基板の平坦化された表面の一方または両方に、原子層成長法によってガス透過バリア層を堆積するステップを含み、平坦化されたコート表面のRa値は0.7nm未満、および/またはRq値は0.9nm未満である。好ましくは、ポリマー基板は以下のステップ、(a)ポリマー基板層を形成し、(b)少なくとも一方向に基板層を延伸し、(c)基板層のポリマーのガラス転移温度を超えるがその溶融温度未満の温度で、寸法を拘束してフィルム幅方向に約19kg/mから約75kg/mの範囲の張力をかけるヒートセット、および(d)基板層のポリマーのガラス転移温度を超えるがその溶融温度未満の温度でフィルムを熱安定化することを含むプロセスによって提供される。好ましくは、平坦化されたコートポリマー基板は、ポリマー基板の平坦化されたコート表面のRa値が0.7nm未満であり、および/またはRq値が0.9nm未満であるように、ポリマー基板の表面の一方または両方に平坦化コーティング組成物を配置することによって提供される。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、電子デバイス、特にフレキシブル電子デバイスを製造するプロセスが提供され、該プロセスは電子デバイスの基板および/または封止層として複合フィルムを提供するステップを含み、ただし複合フィルムは、平坦化されたコートポリマー基板、およびその平坦化された表面の一方または両方に原子層堆積法により堆積されるガス透過バリア層を含む。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、複合フィルムの製造プロセスが提供され、該プロセスは、
(i)ポリマー基板を提供するステップであって好ましくは以下の工程(a)〜(d)を含むステップと、
(a)ポリマー基板層を形成する工程と、
(b)少なくとも一方向に基板層を延伸する工程と、
(c)基板層のポリマーのガラス転移温度を超えるがその溶融温度未満の温度で、寸法を拘束してフィルム幅方向に約19kg/mから約75kg/mの範囲の張力をかけるヒートセット工程と、
(d)基板層のポリマーのガラス転移温度を超えるがその溶融温度未満の温度でフィルムを熱安定化する工程と、
(ii)平坦化されたコート基板の表面のRa値が0.7nm未満であり、および/またはRq値が0.9nm未満であるように、プライマーが適用されていてもよい基板の表面の一方または両方に平坦化コーティング組成物を配置するステップと、
(iii)ガス透過バリア層を原子層成長法で基板の平坦化された表面の一方または両方に提供するステップとを含む。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、電子デバイス、特にフレキシブル電子デバイスを製造するプロセスが提供され、プロセスは前述の段落に記述されているプロセスステップ(i)から(iii)を含み、さらに、(iv)平坦化されたポリマー基板層および電子デバイスの基板および/または封止層としてガス透過バリア層を含む複合フィルムを提供するステップを含む。
本明細書に記載の複合フィルムおよび電子デバイスの製造方法は、導電性材料を含む電極層を提供するステップをさらに含んでもよく、それは当該技術分野において知られている従来の製造技術によって、少なくともバリア層の一部の上に導電性材料が適用されることによって一般に実施される。本明細書に記載の製造方法のさらなるステップは、エレクトロルミネッセント材料(たとえば導電性ポリマー)の層を提供することである。
【0045】
ALDによるガスバリア層の堆積の前に、平坦化コーティングによって基板を前処理することには多くの有利な点がある。従来技術の教示内容(たとえば、上記のCarcia et al.参照)は、ALDがテクスチャ表面にわたって適合性のあるピンホールの無いバリア層を提供することであり、実際に従来技術はALDだけでこの目的を達成することを教示している。しかしながら、本発明者らはこれを観察しなかった。代わりに、本発明者らはALD層の堆積前の平坦化コーティング、特に本明細書に記載の好ましい平坦化コーティングの追加使用によって、基板のガスバリア性能を予想以上にさらに改良することを見出し、これは従来技術の開示からすると非常に驚くべきことである。このように、本発明によれば、ALDコート基板に高バリア特性を与えるため、特に10-3g/m2/日未満の水蒸気透過速度および/または10-3/mL/m2/日未満の酸素透過速度を達成するためには、一定レベルの表面平滑性(本明細書に規定されているように)が要求されるという認識を示す。好ましいコーティング、特に本明細書に記載の好ましい平坦化コーティングは、特にALD層が酸化アルミニニウムの場合に、ALD堆積層の成長に特に適切な表面環境を提供し、国際公開番号2004/105149(A)に教示されているような追加の接着性向上無機層の必要性を減らしまたは取り除くと考えられる。表面の汚染を取り除くことによって、平坦化コーティングの存在は、単なる平滑表面というよりも、基板の表面にわたって一貫した化学的性質を提供する。
【0046】
(特性測定)
フィルム特性を特徴付けるために以下のアプローチが使用されてもよい。
(i) 温度収縮率は、フィルムの機械方向および横方向に対して特定の方向に切断され、視覚測定のために印が付けられた、200mm×10mm寸法のフィルム試料によって評価される。試料の長手寸法(すなわち200mm寸法)は、収縮率が試験されるフィルム方向に対応し、すなわち機械方向の収縮率評価のために、試験試料の200mm寸法はフィルムの機械方向に沿って延伸されている。試験片を所定の温度に加熱し(その温度に加熱されたオーブンに置くことによって)、予め定められた時間間隔で保持した後に、それを室温に冷却し、その寸法を手作業で再測定した。温度収縮率が演算され、元の長さの百分率で表現された。
【0047】
(ii) 本質的に透明であるフィルム試料に対して(それを不透明にする添加物、顔料、空隙または他の物体を充分に低レベルで含有する)、フィルム透明度が評価された。これはASTM D−1003−61にしたがってGardnerXL211ヘーズメータを用いてフィルム全体の厚さを通過した全光線透過度(TLT)およびヘーズ(透過可視光の散乱した%)を測定することにより評価された。
【0048】
(iii) ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)技術を使用して測定された。測定はTA Instruments Q100DSCシステムを使用して実施され、インジウム標準を使用して較正した。試料のフィルムを大気温度未満(約−20℃)から300℃に加熱し、最終的な温度値は20°K/分の加熱速度で記録された。
【0049】
(iv) 線熱膨張係数(CLTE)によって測定されるフィルム試料の寸法安定性は以下のように測定される。熱機械分析計PE−TMA−7(パーキンエルマー(Perkin Elmer))が、温度、変位、力、固有歪、基準線および炉温度調整に関して知られている手順にしたがって、較正され、点検される。フィルムは伸び分析クランプを使用して試験される。伸びクランプに必要な基準線は非常に小さい膨張係数の試験片(石英)を用いて求め、CLTEの精度および正確さ(走査後の基準線の減算に依存する)は、CLTE値がよく知られている標準材料、例えば純粋なアルミニウム箔を使用して評価された。元のフィルム試料の延伸軸が知られているものから選択された試験片を約12mmのクランプ間隙でシステムに取り付け、5mm幅にわたって75mNの力を印加した。印加される力はフィルム厚さの変化によって調整され、すなわち一貫した張力が保証されて、フィルムは分析軸に沿って曲がらない。試験片の長さを温度23℃で測定された長さで正規化した。試験片は8℃に冷却され、安定化され、次いで5℃/分で8℃から+240℃まで加熱された。CLTE値(α)を下式から誘導した。
α=ΔL/(L×(T2−T1))
ただしΔLは温度範囲(T2−T1)にわたる試験片の測定された長さの変化であり、およびLは23℃での元の試験片の長さである。CLTE値はTg温度までは信頼できるとみなされるので、引用される温度範囲の上限は試験サンプルのTgの直下である。データは、23℃に正規化した温度に対する試験片の長さの%変化の関数としてプロットすることができる。
【0050】
(v) 固有粘度(IV)を以下の溶融粘度測定法によって測定した。既知の温度および圧力で較正された金型を通過する、あらかじめ乾燥した押し出し物の流速を、コンピュータに接続されたトランスデューサによって測定する。コンピュータプログラムは実験的に決定された回帰方程式から溶融粘度値(log10粘度)および等価IVを演算する。分単位の時間に対するIVのプロットがコンピュータによって作成され、低下速度が演算される。グラフを0時間に外挿すると最初のIVおよび等価溶融粘度が得られる。金型のオリフィス直径は0.020インチ(0.51mm)であり、IVが0.80までは溶融温度は284℃であり、IV>0.80では溶融温度は295℃である。
【0051】
(vi) 複合フィルムの透過性、特にその水蒸気透過速度(g/m2/日)は国際公開番号2006/097733(特に図1および図2参照)および国際公開番号02/079757(A)(およびさらにSociety For Information DisplayのG. Nisato、M Kuilder、P. Bouten、L. Moro、O. PhilipsおよびN. Rutherfordが記述した,技術論文の要約,2003年,550頁から553頁,開示された測定方法は本願明細書に援用する)に記載されているようにカルシウム劣化試験を使用して測定された。試験基板を約10cm×10cm平方に切断し、1時間120℃で加熱し、残留水分を除去した。カルシウムの薄膜(典型的に100nm)を酸素および水のない環境の試験基板の上に4個の28mm円板のパターンで堆積させる。ガラスシートまたはガラス蓋はその端に沿って基板に相互に接続され、実質的な密封封止によって密閉箱を形成する。密封はたとえば接着剤または金属はんだでもよい。カルシウム層は、最初は高反射性の金属鏡面である。エージング条件を加速するために、構造体は次に60℃相対湿度90%の加湿槽に置かれる。試験中、箱を透過した水はカルシウムと反応し、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを形成する。カルシウム金属の初期層は次第にカルシウム塩の透明層へと劣化する。層の透明性または透過度は箱の中に拡散した水の量の指標である。試験セルの写真が定期的な間隔で撮られ、試料の状態変化およびセルの劣化の解明が続く。写真の自動化された画像解析(この場合にはImage J(登録商標)ソフトウェアを使用して、平均グレー値を測定した)によってカルシウム層の光学透過率の分布が生じる。カルシウム−カルシウム塩積層体の透過の光学モデリングによって、セル内の酸化カルシウム/水酸化カルシウム厚さの分布を決定することができる。試験中の時間tにおける劣化したカルシウム層の厚さ(Z)は、層の初期平均グレー値(G0)、試験中の時刻tにおける層の平均グレー値(Gt)、およびカルシウムが100%劣化した場合の層の平均グレー値(G)の測定によって、平均グレー値から導かれてもよい。実際に、Gはカルシウム円板間のカルシウムの無い領域中の試験基板の平均グレー値として測定され、本発明で例示されたフィルムではGの値は約223である。時間tにおけるカルシウム層の厚さ(Z)は以下の関係式によるGt/Gの比から演算される。
t/G=e-αz
ただしαは[−ln(G0/G)]/Z0に等しい定数である。
次に厚さは時間の関数として水分吸収量に関連付けることができ、封止の実効浸透速度となる。WVTRの演算例は以下の通りであり、最初のカルシウム厚さ(Z0)は100nmであり、768時間後には厚さ(Z1)が82nmに減少した。
カルシウム堆積の直径=2.8×10-2
カルシウム堆積の領域(A)=π(d/2)2=6.158×10-42
開始厚さ(Z0)=100nm=1.0×10-7
堆積カルシウムの密度(ρCa)=1550kg/m3
カルシウムの分子量(MrCa)=40.08g/mol
768時間後の厚さ(Z1)=82nm
Caの損失=18%
の場合に
体積(VCa)=AZ0=6.158×10-113
質量(mCa)=VCaρCa=1550kg/m3×6.158×10-113=9.545×10-5
モル(molCa)=mCa/MrCa=9.545×10-5g/40.08g/mol=2.381μmol
Ca反応=2.381μmol×0.18=0.429μmol。
【0052】
Caと反応するために拡散した水分量は以下の反応化学量論を使用して演算される。
Ca+2H2O→Ca(OH)2+H2
したがって、反応に必要な水のモル数、およびバリア層を通過した水の量は、
モル(H2O)=2×0.429μmol=0.857μmol
質量(H2O)=0.857×10-6mol×18g/mol=1.54×10-5gである。
したがって実験のフルエンスは、6.158×10-42の領域で768時間において1.54×10-5gのカルシウムである。
実験のフルエンスをg/m2/日(WVTR)に変換すると、1.54×10-5g/6.158×10-42×24/768=7.82×10-4g/m2/日である。
本発明の目的のために、本明細書に記載の複合フィルムのWVTRが168時間から768時間の間にわたって測定された。バリア特性はカルシウム厚さがその元の値の50%に減るまでの時間という観点から表現することもできる(本明細書では半減期として参照する)。好ましくは、本発明のフィルムの半減期(時間)は少なくとも250、好ましくは少なくとも500、好ましくは少なくとも750、一層好ましくは少なくとも1000を示し、特に10-3g/m2/日未満の水蒸気透過速度(WVTR)と組み合わされる。
【0053】
(vii) 酸素透過速度はASTM D3985を使用して測定される。
(viii) 表面平滑性は、波長604nmの光源を使用するWyko NT3300表面プロファイラを使用して、当該技術分野において知られている従来の非接触、白色、位相シフト干渉法を使用して測定される。ここで参照するものとして挙げられているWYKO Surface Profiler Technical Reference Manual(Veeco Process Metrology,アリゾナ州,米国,1998年6月;その開示は参照により本願明細書に援用される)によれば、その技術を用いて得られるデータには以下のものがある。
【0054】
平均パラメータ、平均粗さ(Ra):平均表面から測定された、評価領域内の測定高さ偏差の絶対値の算術平均。
平均パラメータ、二乗平均平方根粗さ(Rq):平均表面から測定された、評価領域内の測定高さ偏差の二乗平均平方根の平均。
極値パラメータ、最大輪郭ピーク高さ(Rp):平均表面から測定された、評価領域内の最大ピークの高さ。
平均極値パラメータ、平均最大輪郭ピーク高さ(Rpm):評価領域内の10個の最大ピークの算術平均値。
極ピーク高さの分布:200nmを超える高さのRp値の数の分布。
表面積指数:表面の比平面度の測度。
【0055】
粗さパラメータおよびピーク高さは、試料表面領域の平均レベル、すなわち「平均表面」と比較して従来の技術に従って測定される。(ポリマーフィルム表面は完全に平面では無い場合があり、表面を横切ってしばしば緩やかな起伏がある。平均表面とは、起伏および表面高さの始まり(surface height departures)の中心を通り、平均表面の上と下とで等体積になるように輪郭を分割する面である。)
表面輪郭分析は、表面輪郭測定器の「視野」(一回の測定で走査される領域である)内のフィルム表面の個別の領域を走査することによって実施される。フィルム試料は個別の視野を使用して、または配列を形成する連続する視野を走査して分析されてもよい。本明細書で実施される分析はWykoNT3300表面輪郭測定器の全分解能を利用し、それぞれの視野は480×736画素を含む。
RaおよびRqの測定には、倍率50倍の対物レンズを使用して分解能を高めた。得られた視野は90μm×120μmの寸法を有し、画素サイズは0.163μmである。
RpおよびRpmの測定には、「0.5倍の視野の倍率器(multiplier)」と倍率10倍の対物レンズとを組み合わせて使用して都合よく視野を拡大し、5倍の総合倍率を得た。得られた視野は0.9mm×1.2mmの寸法を有し、画素サイズは1.63μmである。Rpは好ましくは100nm未満であり、一層好ましくは60nm未満、一層好ましくは50nm未満、一層好ましくは40nm未満、一層好ましくは30nm未満、一層好ましくは20nm未満である。
本明細書のRaおよびRqの測定は、表面領域の同じ部分の5回の連続走査結果を合わせた平均値である。Rpに関する以下に示されるデータは100回の測定の平均値である。測定は10%の変調限界値(信号:ノイズ比)を使用して実施され、すなわち限界値未満のデータは不適等なデータとして認識される。
【0056】
表面トポグラフィーも200nmを超える高さを有する極ピークの存在に対して分析できる。この分析では、合計面積が5cm2に渡って、一連のRpの測定が1.63μmの画素サイズで行われる。結果は、データポイントが所定の範囲のピーク高さに割り当てられたヒストグラムの形態で示されてもよく、たとえばヒストグラムは25nm幅のチャネルでx軸に沿って等間隔のチャネルを有する。ヒストグラムはピーク度数(y軸)対ピーク高さ(x軸)のグラフの形態で示されてもよい。面積5cm2当たりの300nmから600nmの範囲の表面ピーク数は、Rp値から決定されて、演算され、N(300−600)として示してもよい。本発明のコーティングを使用すると、好ましくは、コーティング有りと無しのN(300−600)の比である減少Fが、少なくとも5、好ましくは少なくとも15、一層好ましくは少なくとも30となるようにフィルム中のN(300−600)が減少する。好ましくは、コートフィルムのN(300−600)値は、面積5cm2当たりのピーク数が50未満、好ましくは35未満、好ましくは20未満、好ましくは10未満、好ましくは5未満である。
【0057】
表面積指数は「3次元表面積」および「横方向表面積」から以下のように演算される。試料領域の「3次元(3D)表面積」はピークと谷を含めた全ての露出した3D表面積である。「横方向表面積」は、横方向に測定された表面積である。3D表面積を演算するためには、表面高さを有する4個の画素が、X、Y、Z寸法を有し中心に位置する画素を生成するために使用される。得られた4個の三角形の面積を使用して近似的な体積を生成する。この四画素ウィンドウは全データセットの中を移動する。横方向表面積は各画素のXY寸法と視野の画素の数を掛け合わせることにより演算する。表面積指数は3D表面積を横方向表面積で除算することにより演算され、表面の相対平坦性の尺度である。指数が1に非常に近いと非常に平坦な表面を示し、横方向面積(XY)は全3D面積(XYZ)に非常に近い。
本明細書ではピークから谷の値を「PV95」と呼び、平均表面の面を基準とした表面高さを関数とする正負表面高さの周波数分布から得られる。PV95の値は、データポイントの最高および最低の2.5%を除くことで、分布曲線の95%のピークから谷の表面高さデータを包含するピークから谷の高さの差である。PV95パラメータは表面高さのピークから谷の広がり全体にとって統計的に重要な尺度である。
【0058】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。実施例は上記の本発明を制限するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく細部の変更をすることができる。
【実施例】
【0059】
I:平坦化された基板の準備
PENを含有するポリマー組成物を押し出し、熱回転鏡面ドラムの上に流延した。フィルムは前方延伸ユニットに供給され、一連の温度制御されたローラの上で押し出し方向にその元の寸法の約3.3倍に延伸された。延伸温度はほぼ130℃であった。次にフィルムの両側の表面上を接着性向上プライマーコーティングで処理した。フィルムを次に温度135℃のテンタオーブンの中に送り、そこでフィルムは横方向にその元の寸法の約3.4倍に延伸された。二軸延伸フィルムは通常の手段で235℃までの温度でヒートセットされ、冷却されてリールに巻き取られる前に、ウェブの横方向の寸法を4%小さくした。合計厚さは125μmであった。ヒートセット二軸延伸フィルムを次に巻き戻し、さらにフィルムを最高温度が190℃の追加のオーブンセットに通過させ、ロールツーロールプロセスで熱安定化させた。フィルムはその端で支持されずに、低いライン張力のもとでオーブンを通過させ、緩和させ、さらに安定化させた。二軸延伸され、ヒートセットされ、表面がプライマー処理され、オフラインで安定化されたフィルムを本明細書では対照例1と呼ぶ。次にフィルムを巻き戻し、片面をさらに平坦化コーティング組成物を用いたコーティングで修正した。以下の実施例1から実施例7で詳述する。
【0060】
(実施例1)
コーティング組成物は本明細書に記載および前述した国際公開番号03/087247(A)に開示された無機類であり、以下のステップによって適用される前に調製される。
(i)737グラムのメチルトリメトキシシラン(OSiSpecialities社)を80グラムの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Aldrich Chemical社から入手)に添加し、室温で5分攪拌した。
(ii)250グラムのプロパン−2−オール(Aldrich Chemical社)を1000グラムのLudox(登録商標)LSコロイド状シリカ(Grace Davison Company)および75グラムの10%酢酸水溶液(Aldrich Chemical社)と15分混合した。
(iii)次に(i)のメトキシシラン混合物を(ii)の酸性Ludoxおよびプロパン−2−オール混合物に添加し、5時間攪拌した。
(iv)次に溶液を1262グラムのプロパン−2−オールと756グラムの水とを含有する溶媒混合物で希釈し、40時間攪拌し、これによってコーティングの準備ができた。 組成物の最終的なpHは6.4であった。
コーティングをポリエステルフィルムの1つの表面に適用し、次に加熱し、冷却し、巻き戻した。最終的な平坦化コーティングの乾燥厚さは2μmであった。
【0061】
(実施例2)
モノマーおよびポリマーアクリレート(メチルメタクリレートおよびエチルアクリレートを含有)の混合物と、光開始剤(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)2959;Ciba社)とをメチルエチルケトン(2−ブタノン)の溶媒中に含有する有機コーティング組成物を、固形分26.5重量%(これらの固形分の約1%は光開始剤である)で、粘度約1.22cP(センチポアズ)に調製した。コーティングを基板に適用し、80℃で乾燥させ、次に紫外線照射によって硬化させた。
【0062】
(実施例3)
MEK溶媒中にアクリレートモノマーとシリカ粒子とを含有する有機/無機混合コーティング組成物を、固形分10%、粘度約1.7cPに調製した。コーティングを適用し、次に直ちに紫外線照射によって硬化した。
【0063】
(実施例4)
ポリエチレンイミン(Sigma Aldrich コード181978−8;平均分子量Mwは約750,000である)と架橋剤(サイメル(Cymel)(登録商標)385)とを、PEI固形分約5質量%で水中に含有するコーティングを基板に塗布し、180℃で熱硬化させた。
【0064】
(実施例5)
シリカ粒子と組み合わされたエポキシ樹脂を含有する熱硬化性コーティング組成物は、該コーティング組成物に対して固形分が約41質量%の濃度を示し、またアルコール溶液(イソプロパノール、n−ブタノール、エタノールおよびシクロヘキサノンの混合溶媒系)の中に合計約10質量%の固形分を含有する。組成物を室温で6時間攪拌し、基板の上にコートし、次に180℃で熱硬化させた。
【0065】
(実施例6)
ポリエステル(TPE62C;Takemoto Oil and Fat Company、日本)、架橋剤(サイメル(Cymel)(登録商標)385;Cytec)を水性溶媒中に含有する熱硬化性コーティング(合計固形分8%、その86%はポリエステルである)をPEN基板の上にコートし、180℃で熱硬化させた。
【0066】
(実施例7)
コーティング組成物に対してPVOH(Airvol(登録商標)24−203;Air Products)を24質量%、コーティング組成物に対して界面活性剤(Caflon(登録商標)NP10;Uniqema)10質量%、およびさまざまな量(組成物の中に存在するPVOHの9質量%、17質量%、24質量%および29質量%)の架橋剤(サイメル(Cymel)(登録商標)350;American Cyanamid)を水性溶媒中に含有する、コーティング組成物をPEN基板の上にコートして、180℃で熱硬化させた。
【0067】
(実施例8から実施例14)
実施例1から7のコーティング組成物は厚さが125μmであるPET基板(Melinex(登録商標)ST506;Dupont Teijin Films)にコートされた。
実施例の平坦化された表面のRa値は、本明細書に記載の方法で測定して、0.7nm未満を示し、Rq値は0.9nm未満を示した。対照例1の(平坦化されていない)表面のRaは1.86nmを示し、Rqは2.96nmを示した。
【0068】
II:ALDによるガスバリア層の堆積
上述された平坦化されていない、および平坦化された基板は、アルミニウムの前駆体としてトリメチルアルミニウム、および酸化剤としてオゾンを使用した、原子層成長法によって堆積されたAl23バリア層で片面がコートされる。クリーンルームの中のクリーンエアステーションにおいて手術用メスを使用してポリマーフィルムのロールから100mm×100mm区画に切り出して試料が調製された。試料を(片面だけがコートされるように)アルミニウムキャリア板に取り付け、Oxford Instruments FlexAL(登録商標)器具の中にロードし、チャンバを真空にした。トリメチルアルミニウム前駆体を圧力100ミリトールで約2秒間チャンバの中に入れる。次にチャンバをアルゴンで約2秒間パージする。次に酸化剤を圧力100ミリトールで約2秒間チャンバの中に入れる。最後に、酸化剤をアルゴンで約2秒間パージする。堆積中の基板温度はPEN基板およびPET基板の両方に対して120℃である。堆積層のそれぞれの厚さは約0.1nmであり、堆積プロセスは合計コーティング厚さが約40nmになるまで繰り返される。
【0069】
得られた複合フィルムは透明であり、高ガスバリア特性を示す。それぞれALDがコートされた実施例フィルムまたは対照例フィルムの8つの試料は本明細書に記載の試験方法を使用して分析された。実施例1および実施例3および対照例1の結果を以下の表1に示す。半減期は、本明細書に記載のカルシウム試験における、連続カルシウム層を横切る厚さが50%に減少する時間の寿命である。本明細書に記載のカルシウム試験における連続カルシウム層を所定の期間に透過した水の量(累積)に基づいてWVTR値が演算されてもよい。
【表1】

【0070】
ALD技術だけでもテクスチャ表面にわたって適合性のあるピンホールの無いバリア層を提供するという従来技術の教示内容にもかかわらず、思いのほか、対照例1のALDがコートされているが平坦化されていないフィルムでは性能が著しく劣ることが示された。代わりに、本発明者らはALD層の堆積の前に平坦化コーティングを追加使用することで、予想以上に基板のガスバリア性能をさらに改良することを見出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基板および平坦化コーティング層を含む複合フィルムであって、
平坦化された基板の表面のRa値は0.7nm未満を示し、および/またはRq値は0.9nm未満を示し、前記複合フィルムは、前記基板の平坦化された表面に、原子層成長法によって堆積されたガス透過バリアをさらに含む複合フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板は二軸に延伸されている複合フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板は熱安定化され、ヒートセットされ、二軸延伸された基板である複合フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板はポリエステル基板である複合フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリエステルはポリ(エチレンテレフタレート)またはポリ(エチレンナフタレート)である複合フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板の線熱膨張係数(CLTE)が23℃から前記基板のガラス転移温度の温度範囲内で40×10-6/℃未満を示す複合フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板の収縮率が120℃30分で0.05%以下を示す複合フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板の収縮率が150℃30分で0.05%以下を示す複合フィルム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板の収縮率が200℃10分で2%未満を示す複合フィルム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ポリマー基板は光学的に透明である複合フィルム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記平坦化コーティング層は、
(i)低分子量反応性希釈剤、不飽和オリゴマー、溶媒、および光開始剤を含有する有機コーティング組成物と、
(ii)低分子量反応性成分および/または不飽和オリゴマー成分、並びに無機粒子を含有し、さらに溶媒および/または光開始剤を含有してもよい有機/無機混合コーティング組成物と、
(iii)重合可能な主に無機のマトリックスに含有される無機粒子を含有する主に無機のコーティング組成物と、
(iv)ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアミド、ポリチオールおよびポリアクリル酸から選択される架橋性有機ポリマー、および架橋剤を含有する組成物と、
から選択される組成物から生成される複合フィルム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記平坦化コーティング層は、低分子量反応性成分および/または不飽和オリゴマー成分、溶媒、並びに無機粒子を含有し、さらに光開始剤を含有してもよいコーティング組成物から生成される有機/無機混合コーティングから選択される組成物から生成される複合フィルム。
【請求項13】
請求項12に記載の複合フィルムにおいて、
前記無機粒子の平均粒子直径は約0.005μmから約3μmである複合フィルム。
【請求項14】
請求項12または13に記載の複合フィルムにおいて、
前記無機粒子は前記コーティング組成物の固形分の約5質量%から約60質量%の量で存在する複合フィルム。
【請求項15】
請求項12、13、14のいずれかに記載の複合フィルムにおいて、
前記無機粒子はシリカおよび金属酸化物から選択される複合フィルム。
【請求項16】
請求項12乃至15のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記組成物は紫外線硬化が可能である複合フィルム。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記低分子量反応性成分がモノマーアクリレートから選択され、並びに/または、前記不飽和オリゴマー成分がアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエステルアクリレートから選択される複合フィルム。
【請求項18】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記平坦化コーティングは、モノマーアクリレート、シリカ粒子および光開始剤を含有する紫外線硬化可能な組成物から生成される複合フィルム。
【請求項19】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記平坦化コーティング層は、ポリシロキサンマトリックス中に無機粒子を含有する複合フィルム。
【請求項20】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記平坦化コーティング層はコーティング組成物から生成され、前記コーティング組成物は、
(a)約5重量パーセントから約50重量パーセントの固形分であって、前記固形分は約10重量パーセントから約70重量パーセントのシリカおよび約90重量パーセントから約30重量パーセントの部分的に重合された一般式RSi(OH)3の有機シラノールを含有し、ただしRはメチルならびに、ビニル、フェニル、ガンマグリシドキシプロピル、およびガンマメタクリルオキシプロピルからなる群から選択される約40%までの基から選択される固形分と、
(b)約95重量パーセントから約50重量パーセントの溶媒であって、約10重量パーセントから約90重量パーセントの水と約90重量パーセントから約10重量パーセントの低級脂肪族アルコールとを含有する溶媒とを含有し、
特に前記コーティング組成物のpHは約3.0から約8.0である複合フィルム。
【請求項21】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記平坦化コーティング層は溶媒中にモノマーアクリレートおよびオリゴマーアクリレートの紫外線硬化可能な混合物を含有し、さらに光開始剤を含有する組成物から生成される複合フィルム。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記平坦化コーティング層の乾燥厚さが1マイクロメートルから20マイクロメートルである複合フィルム。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記複合フィルムは水蒸気透過速度が10-3g/m2/日未満を示し、および/または、酸素透過速度が10-3/mL/m2/日未満を示す複合フィルム。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記複合フィルムのカルシウム試験における半減期が少なくとも250時間である複合フィルム。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ガス透過バリア層は、SiO2、Al23、ZnO、ZnS、HfO2、HfON、AlN、およびSi34から選択される材料を含有する複合フィルム。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ガス透過バリア層は、Al23を含有する複合フィルム。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ガス透過バリア層の厚さは2nmから100nmである複合フィルム。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか一項に記載の複合フィルムにおいて、
前記ガス透過バリア層の表面に配置される電極層をさらに含む複合フィルム。
【請求項29】
電子デバイスであって、請求項1から28のいずれか一項に記載の複合フィルムと、さらに電子回路とを含む電子デバイス。
【請求項30】
請求項29に記載の電子デバイスにおいて、
前記電子デバイスは電子ディスプレイデバイス、光電池または半導体デバイスである電子デバイス。
【請求項31】
請求項29または30に記載の電子デバイスにおいて、
前記電子デバイスはフレキシブルである電子デバイス。
【請求項32】
複合フィルムを製造するプロセスであって、
平坦化されたコートポリマー基板の平坦化された表面の一方または両方にガス透過バリア層を原子層成長法で堆積させる工程を含み、前記平坦化されたコート表面のRa値は0.7nm未満であり、および/またはRq値は0.9nm未満であるプロセス。
【請求項33】
請求項32に記載のプロセスにおいて、
前記ポリマー基板が以下の工程で供給されるプロセス:
(a)ポリマー基板層を形成する工程、
(b)少なくとも一方向に前記基板層を延伸する工程、
(c)前記基板層のポリマーのガラス転移温度を超えるがその溶融温度未満の温度で、寸法を拘束してフィルム幅方向に約19kg/mから約75kg/mの範囲の張力をかけるヒートセット工程、
(d)前記基板層の前記ポリマーの前記ガラス転移温度を超えるがその溶融温度未満の温度で、前記フィルムを熱安定化する工程。
【請求項34】
請求項32または33に記載のプロセスにおいて、
前記平坦化されたコートポリマー基板は、ポリマー基板の表面の一方または両方に平坦化コーティング組成物を堆積させ、前記ポリマー基板の平坦化されたコート表面のRa値が0.7nm未満を示し、および/またはRq値が0.9nm未満を示すように供給されるプロセス。
【請求項35】
請求項32、33または34に記載のプロセスにおいて、
前記複合フィルムは1から28のいずれか一項に記載の複合フィルムであるプロセス。

【公表番号】特表2011−518055(P2011−518055A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504533(P2011−504533)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001003
【国際公開番号】WO2009/127842
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】