説明

コート材及びそれを用いた成形品

【課題】 帯電防止性及び結露水抑制による防曇性に優れ、更には塗膜の耐水性にも優れる透明なコート材、及びそれを塗工した成形品(フィルム、シート、成型物及び繊維等、特に生分解性プラスチックの成形品)を提供する。
【解決手段】 カラギーナン 0.01〜10重量%、及びコロイダルシリカをSiO含有量として0.01〜20重量%含有してなるコート材。カラギーナンが、ι−カラギーナン、κ−カラギーナンから選ばれる少なくとも一種以上であると好ましい。また、コロイダルシリカの平均粒子径が、3〜50nmであると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性及び防曇性を有するコート材、及びそれを塗工したフィルム、シート、成型物及び繊維等の成形品に関し、更に詳しくは、塗工、乾燥することによって優れた帯電防止性及び防曇性を付与でき、しかも優れた塗膜耐水性を発現するコート材、及びそれを塗工したフィルム、シート、成型物及び繊維等の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂(プラスチックス)は種々の優れた特性を有していることから、汎用材料として広く用いられているものであるが、一般に、電気絶縁性に優れているため、絶縁体等の電気絶縁性を必要とする分野には極めて有用である反面、摩擦などによりその表面に静電気を発生し、帯電しやすいという好ましくない性質を有する。すなわち、このような帯電が起ると、たとえば、薄い合成樹脂フィルムの剥離が困難となり、その製造工程あるいは包装作業工程の能率を低下させ、極端な場合には火花放電などにより事故を誘発し、また、この帯電により埃などの汚れが製品に吸着して外観を損ねたり、更に印刷や塗装の際に悪影響を与える。また電気分野に用いる場合には半導体デバイスの誤動作、IC素子、半導体プリント基板等の電子部品の破壊等を生ずる恐れがある。
【0003】
この問題に対して、従来は、プラスチック成形品や合成樹脂フィルムの表面に塗装されるコート材に、金属粉末やカーボン粉末などの導電性粉末、界面活性剤、シロキサン系その他の高分子系帯電防止剤などを配合して、帯電防止効果を付与している。しかしながら、金属粉末やカーボン粉末などをプラスチックに練り込み、或いはこれら導電性粉末を含有するコート材を表面塗布したものは、帯電防止効果があるものの、包装材として使用した場合、着色があり透明性に劣るため、包装した内容物を見ることができないという問題点がある。また、導電性を有する酸化スズを主成分とする超微粒子を含有させたフィルムも検討されているが、酸化スズ超微粒子が高価であるためコストが高くなるうえ、密着性が不十分という問題がある。特に、アンチモンをドープした酸化スズ超微粒子は、アンチモンが高価なうえ、製法が複雑であり、コート材の組成物として用いるには性能のわりに高価であるという問題があった。
アルキルアミン系、第四級アンモニウム塩、脂肪酸多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルアリールスルホン酸塩などの種々の界面活性剤を用いる場合は、特許文献1の従来技術の項にも記載されているように、一般に界面活性剤は低分子化合物であり、次第にプラスチック成形品、合成樹脂フィルム及び塗膜などの表面にブリードアウトする傾向があり、また表面の界面活性剤は水、洗剤等で容易に拭きとられて効果が次第に低下するなどの問題があった。
シリカ系その他の従来の高分子型帯電防止剤は、界面活性剤のようなブリードアウトは起こらず、効果が減少することは少ないが、帯電防止効果も十分でないという問題点がある。帯電防止成分としてπ電子共役系導電性高分子を用いる方法も知られている。しかしながら、π電子共役系導電性高分子は、一般に不溶不融であり、単独で絶縁性物質との密着性に優れた帯電防止塗膜を形成することが困難である。
【0004】
また一方、多くの合成樹脂は、その構造上、ほとんどのものが疎水性を示し(水には濡れにくく)、水蒸気があたると小さな水滴が形成され、その表面に曇りを生じるため、例えば生鮮食品用の透明な合成樹脂フィルム包装材料の場合は内容物が透視できず、見栄えが悪くなる、また例えば農業用のビニルハウスフィルムのような太陽光を取り入れる透明フィルムの場合には光透過率が低下して温室としての作用効果が低下するという問題があった。
【0005】
この問題を解消する方法として、合成樹脂の表面の性質を疎水性から親水性のものとする防曇剤、流滴剤、霧滴防止剤あるいはくもり防止剤などと呼ばれる添加剤を利用する方法が知られている。そして、このプラスチック表面を親水性化するという添加剤の機能は帯電防止性を有する界面活性剤が備えている性質であることから、上記添加剤として、防曇性と帯電防止性を兼備した界面活性剤を用いる方法も数多く研究されている(特許文献1〜3参照)。
しかしながら、現実には、前述した界面活性剤を用いる帯電防止方法と同様にブリードアウトや水、洗剤等で容易に拭きとられて効果が次第に低下するなどの問題があり、帯電防止剤として効果があり、かつ防曇剤としても機能し、しかも需要家の要望を満たす高度の防曇性を有する帯電防止剤は未だ得られていないのが現状である。
【0006】
また、これらの対策をポリ乳酸やコハク酸系ポリエステル等の生分解性プラスチックのフィルム、シート、成型物、繊維などに施した場合、ベースになる基材は生分解性であっても、前述した帯電防止性、及び防曇性発現材料は生分解性でないという問題もあった。
【0007】
【特許文献1】特開平7−166092号公報
【特許文献2】特開昭62−232482号公報
【特許文献3】特開2004−143443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は帯電防止性及び結露水抑制による防曇性に優れ、更には塗膜の耐水性にも優れる透明なコート材、及びそれを塗工した成形品(フィルム、シート、成型物及び繊維等)を提供することを目的とする。
また、ポリ乳酸系樹脂やコハク酸系ポリエステル樹脂等の生分解性プラスチックの成形品(フィルム、シート、成型物及び繊維等)などの帯電防止性及び防曇性コート材として好適な、天然高分子素材を構成成分とする透明なコート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、この課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、海藻が産生する天然高分子素材カラギーナンとコロイダルシリカを併用することによりこの課題を達成できることを見出した。
本発明は、[1]カラギーナン 0.01〜10重量%、及びコロイダルシリカをSiO含有量として0.01〜20重量%含有してなるコート材である。
また、本発明は、[2]カラギーナンが、ι−カラギーナン、κ−カラギーナンから選ばれる少なくとも一種以上からなる上記[1]に記載のコート材である。
また、本発明は、[3]コロイダルシリカの平均粒子径が、3〜50nmである上記[1]または上記[2]に記載のコート材である。
また、本発明は、[4]上記[1]ないし上記[3]のいずれかに記載のコート材を塗工した成形品である。
また、本発明は、[5]成形品が、フィルム、シート、成型物及び繊維のうちいずれかである上記[4]に記載のコート材を塗工した成形品である。
また、本発明は、[6]成形品が、生分解性プラスチックである上記[4]に記載のコート材を塗工した成形品である。
また、本発明は、[7]成形品が、ポリ乳酸系樹脂及び/又はコハク酸系ポリエステル樹脂からなる上記[6]に記載のコート材を塗工した成形品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の帯電防止性及び防曇性を有するコート材及びそれを塗工した成形品は、帯電防止性及び結露水抑制による防曇性と、塗膜の耐水性とをともに高い水準で発現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いるカラギーナンは、ι(イオタ型)−カラギーナン、κ(カッパ型)−カラギーナン、λ(ラムダ型)−カラギーナン、μ(ミュー型)−カラギーナン、ν(ニュー型)−カラギーナン、ξ(クシー型)−カラギーナン、π(パイ型)−カラギーナンなどが挙げられる。前記カラギーナンは単独、あるいは2種類以上を混合して使用することができる。また、前記カラギーナンの各構成単位の混合化合物であっても良い。
【0012】
さらには、上記のカラギーナンがι(イオタ型)−カラギーナン、κ(カッパ型)−カラギーナンであることがより好ましい。
【0013】
本発明において用いるコロイダルシリカは、珪酸ソーダ法、ゾルゲル法等公知慣用の方法で製造して得られるものである。水分散性のコロイダルシリカや、エタノール、イソプロパノールまたはエチレングリコールモノn−プロピルエーテルなどの有機溶剤にシリカを分散させたオルガノシリカゾルなどの形態で使用できる。
【0014】
コロイダルシリカの平均粒子径は、3〜50nmであることが好ましく、より好ましくは5〜20nmである。平均粒子径が3nm未満の場合は分散安定性が悪くなる傾向があり、コート材として充分な品質を保つことが難しく、平均粒子径が50nmを超える場合は透明性が悪くなる。
【0015】
本発明において、カラギーナンの含有量は、0.01〜10重量%とする必要がある。0.01重量%未満では、帯電防止及び防曇効果が低下するとともに、塗膜強度が弱くなり、10重量%を超えて多い場合は、透明性が低下し、コート材の粘度が高く、塗工が難しくなる。
【0016】
本発明において用いるコロイダルシリカは、SiO分含有量として0.01〜20重量%とする必要がある。0.01重量%より少ない場合は、帯電防止及び防曇効果が弱くなり、20重量%を超えて多い場合は、コート材の粘度が高く、塗工が難しくなる。
【0017】
本発明において、カラギーナン、コロイダルシリカを溶解ないし分散させる媒体として水、又は、水と有機溶剤の混合溶媒を用いることができる。
溶媒として水に有機溶剤を併用すると、塗工後の乾燥を速くすることできる。また、基材へのぬれを向上することができる。
【0018】
有機溶剤としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤類、エチレングリコールモノn−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤類、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶剤類などが挙げられる。前記有機溶剤は単独、あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0019】
上記の有機溶剤の中、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、グリコールエーテル系溶剤などの親水性の高い有機溶剤が特に好ましい。
【0020】
有機溶剤の配合量はカラギーナン及びコロイダルシリカの溶解性を妨げない範囲が好ましく、50重量%以下が好ましい。さらには、30重量%以下がより好ましい。
【0021】
本発明のコート材は、各種の界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤としては非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤などの公知慣用のものが挙げられる。これらの界面活性剤は塗膜形成を補助する目的で、また、コロイダルシリカ粒子の分散安定性を良好にする目的で使用される。
【0022】
また、必要に応じて、上記以外の各種添加剤、たとえば、抗菌剤、防黴剤、保存料、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの公知慣用のものを添加することもできる。
【0023】
本発明において、コート材の成形品表面への塗工方法としては、均一に塗工できる方法を適宜選択して用いることができる。例えば、スプレー、ロール、バーコーター、刷毛塗り、スポンジ塗り、布、不織布、紙などに含浸させて塗り広げる方法などが挙げられる。粘度が高い場合は加熱して塗工しても良い。
【0024】
これらの方法で適量を塗工した後、乾燥によって塗膜を形成する。乾燥は自然乾燥でも、強制乾燥であっても良い。
【0025】
本発明のコート材を適用できる基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ポリカーボネートなどの汎用プラスチックス及びポリ乳酸系樹脂やコハク酸系ポリエステル樹脂等の生分解性プラスチックの成型品、各種フィルム、各種シート、各種繊維などの成形品が例示できる。特に天然高分子素材のカラギーナンと危険性、有害性の低い無機酸化物であるシリカからなる本発明のコート材をポリ乳酸系樹脂やコハク酸系ポリエステル樹脂等の生分解性プラスチックの成型品、繊維、フィルム、シート等の成形品に用いることは有用である。
【0026】
生分解性プラスチックとして、酢酸セルロース、カプロラクトン−ブチレンサクシレート、カプロラクトン−ブチレンサクシレート、ポリブチレンアジペート・テレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート変性、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートカーボネート変性、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール等が挙げられ、ポリ乳酸系樹脂やコハク酸系ポリエステル樹脂が好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を具体的に挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下「部」、「%」とは、特に断りのない限り「重量部」、「重量%」のことである。
【0028】
〔実施例1〕
撹拌機、温度計及び還流冷却器を装備したフラスコにイオン交換水78.0重量部を入れ、攪拌しながらι−カラギーナン(三晶株式会社製、商品名;GENUVISCO typeJ−J)2.0重量部を投入し、ι−カラギーナンを分散させる。その後40℃で30分攪拌して溶解させた。溶解後、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックスOS、SiO含有量20%、粒子径10nm)10.0重量部及びイソプロパノール10.0重量部を加えて均一に混合してコート材を調製した。
【0029】
〔実施例2〜4、比較例1〜5〕
表1に示した配合により、実施例1と同様にしてコート材を調製した。
実施例2〜4、比較例1〜5のその他水溶性多糖類もしくは水溶性高分子、界面活性剤、コロイダルシリカの詳細は次の通りである。
【0030】
(水溶性高分子)
κ−カラギーナン:和光純薬工業株式会社製、商品名;κ−カラジーナン
λ−カラギーナン:和光純薬工業株式会社製、商品名;λ−カラジーナン
キサンタンガム:CPケルコ社製、商品名;ケルゲン
ヒドロキシエチルセルロース:ダイセル化学工業株式会社製、商品名;SE400
カルボキシメチルセルロースナトリウム:ダイセル化学工業株式会社製、商品名;CMC1205
(界面活性剤)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩:ライオン株式会社製、商品名;サンノールLMT−1430
モノアルキルトリメチルアンモニウムクロライド:ライオン株式会社製、商品名;アーカードC−50
(コロイダルシリカ)
スノーテックスOSX:日産化学工業株式会社製、SiO含有量10%、粒子径約5nm
スノーテックスOS:日産化学工業株式会社製、SiO含有量20%、粒子径約10nm
スノーテックスO:日産化学工業株式会社製、SiO含有量20%、粒子径約15nm
スノーテックスO−40:日産化学工業株式会社製、SiO含有量40%、粒子径約25nm
【0031】
【表1】

【0032】
表1の記載の配合に基づいて得られた実施例1〜4、比較例1〜5のコート材について、以下の評価試験を行った。その塗膜外観、接触角、防曇効果の持続性、及び帯電防止性試験結果を表2に纏めて示した。
【0033】
各種試験の方法を下記に示す。
(1)塗膜外観
実施例1〜4及び、比較例1〜5のコート材を約50℃に加温して、ポリ乳酸フィルム(日生工業株式会社製、膜厚40μm)にバーコーターNo.20で塗工し、60℃、30分間乾燥させ、試験片を作製した。その後、塗膜の外観を目視で観察し、以下のように評価した。
○:透明な塗膜
△:やや白濁
××:白濁又は造膜しない
(2)接触角
塗膜外観試験と同様に作製した試験片を接触角計(CA−X型、協和界面科学株式会社製)を用い、マイクロシリンジから塗膜表面に水滴を適下した後、30秒後に測定した。
(3)防曇効果の持続性試験
温度20℃、湿度70%RHの恒温室内に、恒温水槽を設置し、恒温水槽外側壁面のガラス窓に、塗膜外観試験と同様の方法で作製した試験片の塗工面を外側にして密着させて取り付けた。
一般に結露は冬場の夜間に発生しやすい。そこで、以下のようにして冬場の夜間と昼間のサイクルを模した状況を設定して、防曇効果の持続性を評価した。恒温室を20℃に保ったまま恒温水槽の水を2時間の間、5℃(水槽の5℃の水を冬場夜間の温室外として想定)に保ち恒温水槽のガラス窓に貼り付けた試験片(温室の室内側として想定)に結露を生じさせ、その後恒温水槽の水を1時間の間、恒温室と同じ20℃に戻して試験片表面の結露を乾燥させる(冬場昼間の、温室外と室内が同程度の温度となる状況を想定)ことを1サイクルとして1日分の加速試験とした。このサイクルを繰り返して、防曇効果の持続性を目視にて評価した。
○:塗膜表面に結露水が生じず曇らなかった。
△:塗膜表面に部分的に結露水が生じ、曇った。
×:塗膜表面に多量に結露水が生じ、曇った。
(4)帯電防止性試験
塗膜外観試験と同様に作製した試験片(100mm角)を温度25℃、湿度65%の恒温恒湿室内で乾燥したガーゼで50回塗工面を擦る。擦り終えてから30秒後に電位度を集電式電位測定器(型式KS−525、春日電機株式会社製、試験片と測定器の高さ100mm)で測定した。尚、塗工なしのポリ乳酸フィルムでは300Vであった。
(5)耐水性試験
塗膜外観試験と同様に作製した試験片をイオン交換水に6時間浸漬し、25℃で24時間乾燥後、前記した接触角測定、防曇効果の持続性試験、及び帯電防止性試験を行った。
【0034】
【表2】

【0035】
耐水性試験後の接触角、防曇効果の持続性、及び帯電防止性試験結果を表3に示した。
【0036】
【表3】

【0037】
表2に示したように、比較例1のカラギーナンを用い、コロイダルシリカを用いない場合、接触角の値が大きく、濡れ性が不十分で、防曇効果の持続性、帯電防止性にも劣る。また、比較例2のカラギーナンを用いないで、コロイダルシリカを用いた場合、塗膜外観が悪くなった。さらに、比較例3〜5のカラギーナンの代わりに水溶性高分子であるキサンタンガム(水溶性増粘多糖類、比較例3)、ヒドロキシエチルセルロース(比較例4)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(比較例5)を用い、さらに、コロイダルシリカを併用し、さらに界面活性剤を配合した場合(比較例3、4)、比較例5のカルボキシメチルセルロースナトリウムでは、塗膜外観が悪く、界面活性剤を配合した比較例3、4のキサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウムでは、接触角が低いが、防曇効果の持続性にやや劣る。さらに、耐水試験後では、接触角の値が高くなり、また、防曇効果の持続性に劣る。
これらに対し、実施例1〜4で示した本発明では、カラギーナン、及びコロイダルシリカからなるコート材は、塗膜外観が良好で、接触角の値が低く、また、初期から長期にわたり優れた防曇効果の持続性を示し、更に帯電防止性に優れる。また、耐水試験後においても接触角、の値が低く、防曇効果の持続性、帯電防止性に優れる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラギーナン 0.01〜10重量%、及びコロイダルシリカをSiO含有量として0.01〜20重量%含有してなるコート材。
【請求項2】
カラギーナンが、ι−カラギーナン、κ−カラギーナンから選ばれる少なくとも一種以上からなる請求項1に記載のコート材。
【請求項3】
コロイダルシリカの平均粒子径が、3〜50nmである請求項1または請求項2に記載のコート材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコート材を塗工した成形品。
【請求項5】
成形品が、フィルム、シート、成型物及び繊維のうちいずれかである請求項4に記載のコート材を塗工した成形品。
【請求項6】
成形品が、生分解性プラスチックである請求項4に記載のコート材を塗工した成形品。
【請求項7】
生分解性プラスチックがポリ乳酸系樹脂及び/又はコハク酸系ポリエステル樹脂からなる請求項6に記載のコート材を塗工した成形品。



【公開番号】特開2006−328186(P2006−328186A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152588(P2005−152588)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】