説明

ゴム・繊維用接着剤組成物

【課題】本発明は、ゴムと繊維の接着において、耐熱接着力、耐水接着力に優れる接着剤組成物を得ることを課題とする。
【解決手段】共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、およびこれらと共重合可能な他の単量体を乳化重合して得られ、そのトルエン不溶分が82〜100%であるジエン系共重合体ラテックス、ビニルピリジン系共重合体ラテックス、およびレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂を構成材料とすることを特徴とする、接着剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムベルト、タイヤ等のゴム製品の補強用繊維の接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムベルト、タイヤ等のゴム製品の補強剤として、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の補強繊維が広く用いられる。これらの補強繊維は、ゴムとの接着性を改善するために、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂とラテックスを主成分とする水分散液に浸漬処理された後、実用に供されるのが一般的である。ラテックスとしては、主にブタジエン−ビニルピリジン−スチレン共重合体ラテックス(以下、ビニルピリジン系ラテックス)が使われるが、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス等のジエン系共重合体ラテックスが併用されることが多い。
ゴムベルト等のゴム製品は繰り返し屈曲応力を受けるために屈曲疲労を生じて性能が低下し、補強繊維とゴムマトリックスの間に剥離が生じることがあるが、これは熱により促進される。そのため、補強繊維の処理に使用される接着剤には、ゴムと繊維の接着性を改善する効果に加え、高温下で接着性能を低下させない耐熱接着力が要求される。
耐熱接着力を改良するためには種々の方法が提案されているが、共役ジエン系共重合体ラテックスに着目した提案もなされている。
【0003】
特許文献1では、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を共重合したビニルピリジン系共重合体ラテックスと共役ジエン系単量体を多用したジエン系共重合体ラテックスを混合したラテックス組成物を用いることにより、補強用繊維とゴムとの接着性、耐熱接着力が改善されることが開示されている。
特許文献2では、ポリエステル繊維とゴムの接着方法として、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂とゲル分が80%以上の共役ジエン系共重合体ゴムラテックスとから成る組成物で繊維を一次処理する方法が開示されている。
特許文献3では、Tgが0〜35℃であるエチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックスを配合してなるゴム・繊維用接着処理剤を、二次処理の際に用いる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−57829号公報
【特許文献2】特公平7−21066号公報
【特許文献3】特開2008−169504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献は、耐熱接着力改良を主な目的としているが、ゴムベルト等のゴム製品の性能低下は、熱のみならず水分によっても加速される傾向があり、近年、耐熱接着力だけでなく、耐水接着力が良好な接着剤が強く望まれている。本発明の目的は、耐熱接着力に加え、耐水接着力に優れる接着剤組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、共役ジエン系単量体、およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体の共重合比率が特定の範囲であり、かつ特定のトルエン不溶分を有する共役ジエン系共重合体ラテックスを接着剤組成物に使用することにより上記課題が解決されることを見出し、該共役ジエン系共重合体ラテックスを構成材料とする接着剤組成物を発明するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)共役ジエン系単量体25〜50質量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜15質量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体35〜74質量%を乳化重合して得られ、その乾燥皮膜のトルエン不溶分が82〜100%であるジエン系共重合体ラテックス(A)、ビニルピリジン系共重合体ラテックス(B)、およびレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂(C)を構成材料とすることを特徴とする、ゴムと繊維の接着剤組成物、
(2)ジエン系共重合体ラテックス(A)の乾燥皮膜のガラス転移温度が−20〜50℃であることを特徴とする、(1)に記載の接着剤組成物、
(3)ジエン系共重合体ラテックス(A)が、pH調整剤として、少なくとも水酸化カリウム、アンモニアのいずれかを含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の接着剤組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゴムと繊維の接着において、優れた耐熱接着力、および耐水接着力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(単量体組成)
本実施形態において、共重合体ラテックス(A)を構成する単量体の組成は、共役ジエン系単量体25〜50質量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜15質量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体74〜35質量%である。
【0009】
(共役ジエン系単量体)
本実施形態において用いられる共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、シクロブタジエンなどを挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも1,3−ブタジエンが好適に使用できる。
共役ジエン系単量体が全単量体の合計量に占める割合としては、好ましくは25〜50質量%、さらに好ましくは28〜45質量%である。共役ジエン系単量体の割合を25質量%以上にすることによりゴムと繊維の接着強度を高めることができ、50質量%以下にすることで耐水接着力、耐熱接着力を高く維持することができる。
【0010】
(エチレン系不飽和カルボン酸単量体)
本実施形態において使用されるエチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用割合は、通常1〜15質量%、好ましくは2〜12質量%であり、さらに好ましくは3〜10質量%である。エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量を上記範囲に設定することにより、ゴムと繊維の接着力、特に耐水接着力が良好となる。エチレン系不飽和カルボン酸としては、耐水接着強度の改良効果の点から、一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸が好ましく、特に好ましいのはアクリル酸である。
【0011】
(他の共重合可能な単量体)
共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体の好ましい例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、p−スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩などがあげられ、これらは1種または2種以上が組み合わせて用いればよい。
【0012】
(トルエン不溶分)
本実施形態において、ジエン系共重合体ラテックス(A)の乾燥皮膜のトルエン不溶分は、通常82%〜100%、好ましくは83%〜99%である。さらに好ましくは85%〜98%である。トルエン不溶分をこの範囲に調整することにより、繊維とゴムと接着強度が良好となり、優れた耐熱接着力と耐水接着力を実現することができる。
トルエン不溶分は、ジエン系単量体の使用割合、ラテックスの粒子径設定、重合温度、モノマーフィード条件等、種々の重合因子の影響を受けるが、通常は連鎖移動剤の添加量により調整するのが容易であり、好ましい。
【0013】
(連鎖移動剤)
本実施形態において使用される連鎖移動剤としては、例えばα−メチルスチレンダイマーなどの核置換α−メチルスチレンの二量体、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、及びt−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラムジスルフィド、及びテトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、シクロペンテン、シクロヘキセンなど公知の全てのものを単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でもメルカプタン類が好適に使用できる。
【0014】
(ガラス転移温度)
本実施形態において、ジエン系共重合体ラテックス(A)のガラス転移温度は、好ましくは−20〜50℃、より好ましくは−10〜45℃、さらに好ましくは−5〜40℃である。ガラス転移温度をこの範囲に設定することにより、繊維とゴムの接着性が優れるとともに、耐熱接着力、耐水接着力の優れた接着剤を得ることができる。
【0015】
(pH調整剤)
本実施形態におけるジエン系共重合体ラテックス(A)のpH調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等、通常用いられるものを使用することができるが、水酸化カリウム、またはアンモニアのいずれか一方、または両方を含むことが好ましい。例えば、乳化重合終了後、水酸化カリウムでpH5〜8に調整してスチームストリッピングを行い、スチームストリッピング終了後、アンモニアを用いて所定の範囲(例えばpH6〜10)に調整する、という方法を採用することができる。または、水酸化カリウムだけを使ってpH調整をすることもできるし、またはアンモニアのみでpH調整することもできる。水酸化カリウム、またはアンモニアのいずれか一方、または両方を使用することにより、耐水接着力をより一層改良することができる。こうしたより一層の耐水接着力改良効果を得るには、中和剤として、水酸化カリウム、アンモニア以外のもの、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを併用する際に、それらの使用量を中和剤全体の50%以下にすることが好ましい。
【0016】
(粒子径)
本実施形態において、ジエン系共重合体ラテックス(A)の平均粒子径は、好ましくは80〜500nm、より好ましくは100〜400nm、さらに好ましくは150〜300nmである。平均粒子径がこの範囲を外れて小さいと、共重合体ラテックスの粘度が高くなり、扱いにくくなることがある。また、粒子径がこの範囲を外れて大きいと、ラテックス製造時の生産性が低下することがある。平均粒子径は、乳化重合により製造する際の、乳化剤の使用量を調節する方法や公知のシード重合法を用いることで調整することが可能である。シード用ラテックスの組成は特に限定されず、共重合体ラテックスの組成と同じであっても異なってもよい。また、シード用ラテックスは、同一反応容器で製造したものを用いても、異なる他の反応容器で製造したものを用いてもよく、その粒子径や粒子径分布、及びその使用量も特に限定されない。
【0017】
(製造法)
本実施形態において、ジエン系共重合体ラテックスの製造法については、例えば、水性媒体中で乳化剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行う等の方法を採用することができる。
【0018】
(乳化剤)
ここで使用する乳化剤としては、従来公知のアニオン、カチオン、両性および非イオン性の乳化剤を用いることができる。好ましい乳化剤の例としては、例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性乳化剤が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。使用される乳化剤の量としては、単量体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜2.0質量部である。
また、分子中にビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることも何ら差し支えない。
【0019】
(開始剤)
ラジカル開始剤としては、熱又は還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい開始剤の例としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを挙げることができる。
このような開始剤としてより具体的には、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンヒドロペルオキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を上述の重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
【0020】
(単量体の添加方法)
ジエン系共重合体ラテックス(A)を得るための乳化重合において、単量体混合物を反応器へ添加する方法は、公知の方法を使うことができ、一括添加、連続添加、分割添加のいずれでも構わない。一定組成の単量体混合物を連続的に反応器に添加する方法が一般的だが、組成が異なる数種の単量体混合物を多段階に分けて添加する方法も用いることができる。単量体混合物を多段階に分けて添加する方法としては、例えば、2段重合法、3段重合法等があるが、いずれの方法も使うことができる。
【0021】
(連鎖移動剤の添加方法)
連鎖移動剤の添加方法としては、例えば単量体と混合して添加する方法、連鎖移動剤を単独で添加する方法、連鎖移動剤を連続的又は断続的に添加する方法、連鎖移動剤を一括添加する方法などが挙げられるが、その添加方法に制限はない。
【0022】
(重合温度)
共重合体ラテックスを製造する場合の重合温度としては、例えば、40〜100℃であるが、好ましくは50〜90℃である。重合温度がこの範囲より低い場合、ラテックス製造の生産性が低下することがある。またこの範囲を越えて高い場合、ラテックス製造の際に反応機の内圧制御がむずかしくなることがある。
また、全単量体を重合系内に添加終了後に、各単量体の重合転化率を引き上げるために重合温度を上げる方法(いわゆるクッキング工程)を採用することも可能である。このような工程における重合温度は、通常80〜100℃である。
【0023】
(重合固形分)
共重合体ラテックスを製造する場合の重合固形分濃度(重合が完結した際の固形分濃度。乾燥により得られた固形分質量の、元の共重合体ラテックス(水等を含む)質量に対する割合を言う。)としては、生産効率と、生産時の重合温度制御の容易性の点から、好ましくは35〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0024】
(重合調整剤)
共重合体ラテックスの製造に際しては、必要に応じて公知の各種重合調整剤を乳化重合時又は乳化重合終了時に用いることができる。例えばpH調整剤、キレート化剤などを使用することができる。
【0025】
(各種添加剤)
本実施形態のジエン系共重合体ラテックスには、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、増粘剤、保水剤、架橋剤などを添加することができる。
【0026】
(接着剤組成物)
本実施形態におけるゴムと繊維の接着剤組成物は、上記のジエン系共重合体ラテックス(A)、ビニルピリジン系ラテックス(B)、およびレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂(C)を構成材料とするものである。本発明で使用するレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂(C)は、従来使用のもの(例えば特開昭55−142635号公報開示)が使用でき、特に制限されない。
ビニルピリジン系ラテックス(B)は、一般的に使用されているものを使うことができる。例えば、ビニルピリジン/スチレン/ブタジエン比率が15/15/70質量%ものを使用することができる。
ジエン系共重合体ラテックス(A)とビニルピリジン系ラテックス(B)の使用比率は、固形分比で、10/90〜90/10、好ましくは30/70〜70/30である。
なお、本実施形態における接着剤組成物は、その効果を損ねない限り、本発明とは異なるジエン系共重合体ラテックスや、天然ゴムラテックス、ウレタン樹脂ラテックス、アクリル樹脂ラテックスなどを併用して配合材料とすることができる。
【0027】
本実施形態において、接着剤組成物の使用方法については特に制限は無く、既知のレゾルシノール−ホルムアルデヒド−重合体ラテックス系接着剤と同様にして適用することができる。通常、本実施形態の接着剤組成物を10〜30質量%の水溶液として、ゴム製品の製造時に、所望の形態の繊維を浸漬処理し、乾燥、熱処理した後、未加硫ゴム配合物と共に成形し、加硫することによって繊維とゴムを接着することができる。また予め本実施形態の接着剤組成物を塗布した所望形態の繊維を用いてゴムと接着することもできる。
本実施形態の接着剤組成物が適用できる繊維も特に制限はなく、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等に使用することができる。これらの繊維は織物、コード、糸等いずれの形態であっても良い。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
[製造例1]
攪拌装置と温度調節用のジャケットを備える耐圧反応容器にイオン交換水70重量部、粒子径0.0215μmのシードラテックス0.50重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部を仕込み、内温を80℃に昇温した。次いで、ブタジエン40質量部、スチレン50質量部、アクリル酸5質量部、およびメタクリル酸メチル5重量部からなる単量体混合物100質量部を5時間で、また水20重量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1重量部、水酸化カリウム0.2重量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部からなる開始剤系水溶液を5.5時間で、それぞれ一定の流速で添加した。単量体混合物および開始剤系水溶液の添加が終了した後、90℃で1.5時間反応を継続させ、重合転化率95%以上のジエン系共重合体ラテックスを得た。該共重合体ラテックスは、水酸化カリウムでpH6.0に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去した。室温に冷却後、アンモニア水でpH8.0に調整し、固形分50重量%となるように調整して、最終的にジエン系共重合体ラテックスa得た。共重合体ラテックスaについて、以下の方法で、粒子径、ガラス転移温度、トルエン不溶分を測定した。その結果を表1に示した。
【0029】
(粒子径)
光散乱法粒度分析計(シーエヌウッド社製モデル6000)により、粒子径を求めた。
(ガラス転移温度)
得られた共重合体ラテックスを130℃で30分乾燥させて皮膜を作成し、この皮膜について、セイコー電子社製示差熱量計(DSC−220C)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定した。
(トルエン不溶分)
得られたラテックスを130℃で30分間乾燥させて皮膜を形成させ、得られた皮膜から測定用試量0.5gを精秤し、トルエン30g中に浸漬して3時間振とう後、300メッシュのステンレスメッシュでろ過した。このときのメッシュに残った未溶解物を乾燥し、その重量を試料重量で除してトルエン不溶分率とした。
【0030】
[製造例2〜10]
用いた単量体混合物の組成を表1に記載の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、ジエン系共重合体ラテックスb〜jを得た。なお、シードラテックスは、実施例1と同じものを使用したが、共重合体ラテックスが所定の粒子径となるように、使用量を適宜調整した。得られたジエン系共重合体ラテックスの粒子径、トルエン不溶分、ガラス転移温度は、表1に示した。
【0031】
[製造例11]
重合終了後、およびスチームストリッピング終了後のpH調整を水酸化ナトリウムを用いて行ったほかは、製造例1と同じ条件で、共重合体ラテックスkを得た。
【0032】
[実施例1]
レゾルシノール16.6部、ホルマリン水溶液(37%濃度)14.6部及び水酸化ナトリウム1.3部を水333.5部に溶解し、撹拌下に25℃で2時間反応させた。次いでこの中へ市販のビニルピリジン−ブタジエン−スチレン系共重合体ラテックス(ビニルピリジン/スチレン/ブタジエン=15/15/70質量%)50質量部(固形分)、および上記製造例1で作製した共重合体ラテックスaを50質量部(固形分)添加し、25℃で20時間攪拌した。次いでバルカボンドE(Vulnax社製品 VulcabondE)を30部添加した。この水溶液を固形分濃度20%に調整した後、試験用シングルコードディッピングマシンを用いてポリエステルタイヤコード(1500D/2)を浸漬処理した。浸漬処理後240℃で1分間熱処理を行った。この処理されたポリエステルタイヤコードを表2の配合処理により製造した天然ゴム配合物ではさみ、所定の条件でプレス加硫した。該タイヤコードとゴムとの接着力をT接着力試験法により評価した(測定温度20℃、相対湿度65%、24本の引き抜き試験)。接着力の評価は、以下の3条件で実施した。
(1)初期接着力評価:150℃、30分間加硫したものを評価。
(2)耐熱接着力評価:170℃、90分間加硫したものを評価。
(3)耐水接着力評価:(1)の条件で加硫して得た試験片を、水中で60分煮沸した後の接着力を評価。
結果を表3に示す。
【0033】
[実施例2〜6]
ジエン系共重合体ラテックスとして、表1に記載のb〜e、およびkを使うこと以外は実施例1と同じ条件で接着剤組成物を製造し、実施例1と同様に接着力の測定をおこなった。得られた結果を表3に示す。
【0034】
[比較例1〜5]
ジエン系共重合体ラテックスとして、表1に記載のf〜jを使うこと以外は、実施例1同じ条件で水性接着剤組成物を製造し、接着力の測定を行った。得られた結果を表3に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の接着剤は、ゴムとポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維等を接着して優れた耐熱接着力、耐水接着力を発現するものであり、ゴムベルト、タイヤ等のゴム製品を用いる用途に利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体25〜50質量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜15質量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体35〜74質量%を乳化重合して得られ、その乾燥皮膜のトルエン不溶分が82〜100%であるジエン系共重合体ラテックス(A)、ビニルピリジン系共重合体ラテックス(B)、およびレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂(C)を構成材料とすることを特徴とする、ゴムと繊維の接着剤組成物。
【請求項2】
ジエン系共重合体ラテックス(A)の乾燥皮膜のガラス転移温度が−20〜50℃であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
ジエン系共重合体ラテックス(A)が、pH調整剤として、少なくとも水酸化カリウム、アンモニアのいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2011−231434(P2011−231434A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104404(P2010−104404)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】