説明

ゴム堰及びゴム堰用帆布

【課題】ゴムとの接着性が高く、高強度であり、かつ浸水後における強度低下の少ないゴム堰用帆布と、このゴム堰用帆布を備えたゴム堰を提供する。
【解決手段】ゴム堰を補強するための帆布において、ポリケトン繊維を含有することを特徴とするゴム堰用帆布。また、このゴム堰用帆布によって補強されたゴム堰。ポリケトン繊維は、その分子構造上、強度が高く、且つゴム中の成分、酸素、水分、油類、薬品類に対しても安定であると共に、ゴムとの接着性にも優れている。このため、ポリケトン繊維又はポリケトンを含む複合繊維よりなる本発明のゴム堰用帆布によれば、ゴムとの接着性が高く、高強度であり、かつ浸水後における強度低下の少ないゴム堰用帆布が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム堰を補強するための帆布に係り、特に、強度が高く、浸水後の強度の低下が少なく、また、ゴムとの接着性に優れたゴム堰用帆布に関する。また、本発明は、かかるゴム堰用帆布を備えたゴム堰に関する。
【背景技術】
【0002】
河川に堰を設ける場合、ゴム製の堰を該河川の河床に設置することがある。第2図及び第3図は従来のゴム堰の一例(特開昭55−39521号公報)を示すものであり、第2図は非膨張時におけるゴム堰の斜視図、第3図は膨張時におけるゴム堰の斜視図である。
【0003】
このゴム堰1は、河川の横断方向に延在する所要長さのものであり、その内部には、河川横断方向にわたって中空部が形成されている。このゴム堰1は、非膨張状態において帯状となっており、このゴム堰1の河川横断方向に延在する縁部1bにアンカーボルトが挿通され、ナットが締め込まれることにより、ゴム堰1が河床(例えばコンクリート製)に河川を横切るように固定設置される。
【0004】
このゴム堰1の内部に水や空気等の流体を流入すると、該ゴム堰1は起立して河川を横切る堰となる。流体を排出するとゴム堰1が倒状し、河川の流れが自由になる。
【0005】
上記特開昭55−39521号公報にあっては、ゴム堰1が帆布2によって補強されている。なお、当該公報には、帆布2の材質に関する記載はない。
【0006】
また、特開平1−48918号公報には、帆布とゴムとの接着性を高めるために、帆布をナイロン繊維の織布とすることが記載されている。
【特許文献1】特開昭55−39521号公報
【特許文献2】特開平1−48918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平1−48918号公報のように、補強帆布がナイロン繊維よりなる場合、ナイロン繊維の強度が低いため、補強帆布を多数層に積層させる必要があった。また、この補強帆布は、浸水後に繊維強度が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、ゴムとの接着性が高く、高強度であり、かつ浸水後における強度低下の少ないゴム堰用帆布と、このゴム堰用帆布を備えたゴム堰を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のゴム堰用帆布は、ゴム堰を補強するための帆布において、ポリケトン繊維を含有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2のゴム堰用帆布は、請求項1において、ポリケトン繊維及び/又はポリケトン繊維コードよりなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3のゴム堰用帆布は、請求項2において、ポリケトン繊維と他の繊維との複合繊維及び/又は複合繊維コードよりなることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4のゴム堰用帆布は、請求項3において、該他の繊維がナイロン繊維及び/又はポリエステル繊維であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5のゴム堰用帆布は、請求項3又は4において、ポリケトン繊維と他の繊維との合計の繊度に対するポリケトン繊維の繊度の割合が30%以上であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6のゴム堰用帆布は、請求項1ないし5のいずれか1項において、ポリケトンが下記一般式(I)で表されることを特徴とするものである。
【0015】
【化2】

((I)式中、Rはエチレン性不飽和化合物由来の連結基であり、各繰り返し単位において、同一であっても異なっていても良い。)
請求項7のゴム堰用帆布は、請求項1ないし6のいずれか1項において、強力が250〜500kg/cmであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8のゴム堰は、水中に設置され、内部に流体を供給することにより起立し、内部から流体を抜くことにより倒状するゴム袋よりなるゴム堰において、請求項1ないし7のいずれか1項のゴム堰用帆布によって補強されてなるものである。
【発明の効果】
【0017】
ポリケトン繊維は、その分子構造上、強度が高く、且つゴム中の成分、酸素、水分、油類、薬品類に対しても安定であると共に、ゴムとの接着性にも優れている。このため、ポリケトン繊維又はポリケトンを含む複合繊維よりなる本発明のゴム堰用帆布によれば、ゴムとの接着性が高く、高強度であり、かつ浸水後における強度低下の少ないゴム堰用帆布が提供される(請求項1〜3)。
【0018】
また、このゴム堰用帆布によって補強されたゴム堰によれば、ゴム堰用帆布とゴムとの接着性が高く、高強度であり、かつ浸水後における強度低下の少ないゴム堰が提供される(請求項8)。
【0019】
本発明において、ゴム堰用帆布がポリケトン繊維と他の繊維との複合繊維よりなる場合、この他の繊維としては、ナイロン繊維及び/又はポリエステル繊維が好ましい(請求項4)。また、この複合繊維織物及び/又は複合繊維コードにおいて、ポリケトン繊維と他の繊維との合計の繊度に対するポリケトン繊維の割合は30%以上であることが好ましい(請求項5)。
【0020】
本発明において、ポリケトンとしては、下記一般式(I)で表されるポリケトンが好ましい(請求項6)。
【0021】
【化3】

((I)式中、Rはエチレン性不飽和化合物由来の連結基であり、各繰り返し単位において、同一であっても異なっていても良い。)
本発明において、ゴム堰用帆布の強力は250〜500kg/cmであることが好ましい(請求項7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。第1図は実施の形態に係るゴム堰の非膨張時における状態を示す模式的な断面図である。
【0023】
このゴム堰10は、第1図における紙面の表裏方向に延在する帯状となっている。このゴム堰10は、帯状の内層ゴム20と、この内層ゴム20の外周を覆う外層ゴム30とを有している。
【0024】
この内層ゴム20の上下方向(厚み方向)の略中間に、内層ゴム20の左端部近傍から右端部近傍にわたって延在する離型材21が設けられている。この内層ゴム20のうち、該離型材21よりも上側の部分が上半部20aとなっており、離型材21よりも下側の部分が下半部20bとなっている。この離型材21は、内層ゴム20の左端及び右端にまでは達しておらず、該上半部20aと下半部20bの左端部同士及び右端部同士は連なっている。
【0025】
該上半部20a及び/又は下半部20bが離型材21から剥離することにより、該内層ゴム20は袋状(紙面の表裏方向に延在する略円筒状)に変形可能となっている。
【0026】
この内層ゴム20の内部に、補強帆布41が設けられている。この補強帆布41は、該内層ゴム20の上面、左側面、下面及び右側面の近傍に倣って周回するものである。また、この内層ゴム20の外周面(上面、左側面、下面及び右側面)に、補強帆布40が周設されている。
【0027】
この外層ゴム30の内部に、補強帆布42,43が設けられている。補強帆布42は内層ゴム20よりも上側に設けられ、補強帆布43は内層ゴム20よりも下側に設けられている。これら補強帆布42,43の左右方向の両端は、内層ゴム20の両端よりも外側まで延在している。
【0028】
この外層ゴム30の上面31は粗面となっている。このように上面31を粗面とするのは、作業時のすべり防止のためである。
【0029】
かかる構成のゴム堰10は、第1図における内層ゴム20よりも左側の縁部又は右側の縁部にアンカーボルトが挿通され、ナットが締め込まれることにより、河川を横切るようにして河床に固定設置される。
【0030】
このゴム堰10の内層ゴム20内に空気や水等の流体を供給することにより、上半部20a及び/又は下半部20bが剥離材21から剥離して内層ゴム20が略円筒状に変形し、該内層ゴム20の空隙内に流体が封入される。これにより、該ゴム堰10は略円筒状に膨張し、起立する。また、該内層ゴム20から流体を抜き出すと、ゴム堰10は帯状に復元し、河床に倒状する。
【0031】
次に、上記ゴム堰用帆布(補強帆布40〜43)と、内層ゴム20及び外層ゴム30の構成について説明する。
【0032】
まず、ゴム堰用帆布について説明する。本発明のゴム堰用帆布は、ポリケトン繊維織物、又はポリケトンを含む複合繊維織物、例えば、ポリケトン繊維と他の繊維との複合繊維織物よりなる。
【0033】
本発明に係る繊維織物を構成するポリケトン繊維は、好ましくは下記一般式(I)で表されるポリケトンを原料として製造される。
【0034】
【化4】

((I)式中、Rはエチレン性不飽和化合物由来の連結基であり、各繰り返し単位において、同一であっても異なっていても良い。)
上記ポリケトンは、分子中にCO単位(カルボニル基)とエチレン性不飽和化合物由来の単位とが配列された交互共重合体、即ち、高分子鎖中で各CO単位の隣に、例えばエチレン単位等のオレフィン単位が一つずつ位置する構造である。このポリケトンは、一酸化炭素と特定のエチレン性不飽和化合物の1種との共重合体であってもよく、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物の2種以上との共重合体であってもよい。
【0035】
上記(I)式中のRを形成するエチレン性不飽和化合物としては、エチレン,プロピレン,ブテン,ペンテン,ヘキセン,ヘプテン,オクテン,ノネン,デセン,ドデセン,スチレン等の不飽和炭化水素化合物、メチルアクリレート,メチルメタクリレート,ビニルアセテート,ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸又はその誘導体、更にはウンデセノール,6−クロロヘキセン,N−ビニルピロリドン,及びスルニルホスホン酸のジエチルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、特にポリマーの力学特性や耐熱性等の点から、エチレン性不飽和化合物としてエチレンを主体とするものを用いたポリケトンが好ましい。
【0036】
ポリケトンを構成するエチレン性不飽和化合物として、エチレンと他のエチレン性不飽和化合物とを併用する場合、エチレンは、全エチレン性不飽和化合物に対し、80モル%以上、特に90%以上になるように用いるのが好ましい。この割合が80モル%以上であると、力学的強度が十分高いものとなる。
【0037】
前記のポリケトンは、公知の方法、例えばヨーロッパ特許公開第121965号,同第213671号,同第229408号及び米国特許第3914391号明細書に記載された方法に従って製造することができる。
【0038】
上記ポリケトンの重合度は、m−クレゾール中、60℃で測定した溶液粘度が1.0〜10.0dL/gの範囲にあるのが好ましい。溶液粘度が1.0dL/g未満では、得られるポリケトン繊維の力学強度が不充分となる場合があり、ポリケトン繊維の力学強度の観点から、溶液粘度が1.2dL/g以上であるのが更に好ましい。一方、溶液粘度が10.0dL/gを超えると、繊維化時の溶融粘度や溶液粘度が高くなりすぎて紡糸性が不良となる場合があり、紡糸性の観点から、溶液粘度が5.0dL/g以下であるのが更に好ましい。繊維の力学強度及び紡糸性などを考慮すると、この溶液粘度は1.3〜4.0dL/gの範囲が特に好ましい。
【0039】
上記ポリケトンの繊維化方法は、特に限定されないが、一般的には溶融紡糸法又は溶液紡糸法が採用される。溶融紡糸法を採用する場合には、例えば特開平1−124617号公報に記載の方法に従って、ポリマーを通常、融点より20℃以上高い温度、好ましくは融点より40℃程度高い温度で溶融紡糸し、次いで、通常、融点より10℃以下低い温度、好ましくは融点より40℃程度低い温度において、好ましくは3倍以上の延伸比で、更に好ましくは7倍以上の延伸比で延伸処理することにより、容易に所望の繊維を得ることができる。
【0040】
一方、溶液紡糸法を採用する場合、例えば特開平2−112413号公報に記載の方法に従って、ポリマーを例えばヘキサフルオロイソプロパノール,m−クレゾール等に0.25〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン,エタノール,イソプロパノール,n−ヘキサン,イソオクタン,アセトン,メチルエチルケトン等の非溶剤浴、好ましくはアセトン浴中で溶剤を除去、洗浄して紡糸原糸を得、更に(融点−100℃)〜(融点+10℃)、好ましくは(融点−50℃)〜(融点)の範囲の温度で延伸処理することにより、所望のフィラメントを得ることができる。また、このポリケトンには、熱,酸素等に対して十分な耐久性を付与する目的で酸化防止剤を加えることが好ましく、また必要に応じて艶消し剤,顔料,帯電防止剤等も配合することができる。
【0041】
このようなポリケトン繊維よりなる繊維織物は、ポリケトン繊維のコードにより製造することができる。このポリケトン繊維コードは、ポリケトン繊維の複数本を下撚りし、更に上撚りしたものが好ましく、その上撚り係数は、1500以上、特に1800〜2300の範囲であることが好ましい。上撚り係数が1500未満であると、得られるゴム堰用帆布の耐屈曲疲労性が劣るものとなる。上撚り数が過度に大きいと強度が低下し、伸度、クリープが大きくなるため、2300以下であることが好ましい。
【0042】
なお、上撚り係数とは、当該コードを構成する繊維の合計の繊度D(デシテックス:dtex)と上撚り数G(回/10cm)とから次のようにして算出される。
【0043】
【数1】

このポリケトン繊維コードの下撚り数は上撚り数と同程度で良いが必ずしも同じである必要はない。
【0044】
また、ポリケトン繊維コードを構成するポリケトン繊維の合計の繊度はコードもしくは織物の必要強力により決められるが2200〜30060デシテックスであることが好ましい。
【0045】
ポリケトン繊維と他の繊維とを含む複合繊維織物は、ポリケトン繊維と他の繊維とで構成された複合繊維コード(以下「ポリケトン/他繊維複合繊維コード」と称す。)よりなることが好ましい。
【0046】
このポリケトン/他繊維複合繊維コードとしては、コードを構成するポリケトン繊維と他の繊維の合計の繊度に対するポリケトン繊維の合計繊度の割合が30%、特に30〜80%であるものが好ましい。この範囲よりもポリケトン繊維の繊度が少な過ぎるとポリケトン繊維による、高強度特性や耐熱性等が損なわれる。逆に、多過ぎると他の繊維を複合したことに効果を十分に得ることができない。
【0047】
このようなポリケトン/他繊維複合繊維コードの上撚り係数は、前述のポリケトン繊維コードと同様の理由から、1500以上、特に1800〜2300の範囲であることが好ましい。上撚り係数が1500未満であると、得られるゴム堰の耐屈曲疲労性が劣るものとなる。上撚り係数が過度に大きいと強度が低下し、伸度、クリープが大きくなるため、2300以下であることが好ましい。
【0048】
このポリケトン/他繊維複合繊維コードの下撚り数は必ずしも上撚り数と同じでなくても良く、下撚り数は上撚り数の0.5〜1.0倍の範囲であることが好ましい。
【0049】
また、ポリケトン/他繊維複合繊維コードを構成するポリケトン繊維と他の繊維との合計の繊度はコードもしくは織物の必要強力により決められるが2000〜30000デシテックスであることが好ましい。
【0050】
複合繊維織物を構成する他の繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維等が挙げられる。ナイロン繊維を併用することにより、耐疲労性の改良という効果が奏され、また、PET繊維等のポリエステル繊維を併用することによりナイロンとの併用に比べ伸びを小さくしつつ更に吸湿性を増大させずに耐疲労性を改良できるという効果が奏される。これらの他の繊維は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。他の繊維としては、特にナイロン繊維を用いることが好ましい。
【0051】
本発明において、ナイロン繊維を構成するナイロンとしては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、4,6−ナイロン、MXD6ナイロン等を用いることができる。好ましくは6,6−ナイロンである。
【0052】
PETとしては、1トン(t)当たりの末端カルボキシル基の数が少ないものが耐熱性の面で好ましい傾向にあるが、20当量以上でもよい。
【0053】
本発明で用いる複合繊維織物は、前述のポリケトン/他繊維複合繊維コードのみで構成されるものであっても良く、ポリケトン/他繊維複合繊維コードとポリケトン繊維コードを含むものであっても良い。
【0054】
この繊維織物の織方には特に制限はなく、平織、ハーフマット織、ストレートワープ織、綾織、すだれ織等のいずれでも良い。また、繊維織物を構成するコードの打ち込み本数等にも特に制限はなく、得られるゴム堰用帆布の要求特性に応じて適宜決定される。
【0055】
上述のような繊維織物と、このような繊維コードとを併用して、ゴム堰用帆布として用いても良い。
【0056】
通常の場合、繊維織物はゴム堰の長さ方向に対し所定の角度で縦糸としてのポリケトン繊維コード又はポリケトン/他繊維複合繊維コードを並列配置して横糸で束ねたすだれ織とされ、この場合の横糸としては、一般に綿、レーヨン、PET、PET/綿混紡糸が用いられる。また、縦糸としてのポリケトン繊維コード又はポリケトン/他繊維複合繊維コードの打ち込み本数は、その繊度や得られるゴム堰用帆布の要求特性等に応じて適宜決定されるが、通常、縦糸40〜100本/5cm程度、横糸15〜50本/5cm程度である。
【0057】
次に、内層ゴム20及び外層ゴム30について説明する。内層ゴム20及び外層ゴム30はゴム組成物よりなる。ゴム組成物としては特に制限はなく、主成分となるゴム成分に、加硫剤、促進剤(加硫促進剤)、補強剤としてのカーボン、酸化亜鉛(亜鉛華)等、可塑剤としてのアロマティック系オイル、更に必要に応じて、老化防止剤、離型剤、分散剤、硬化剤、粘着性調整剤等の加工助剤や増量材、着色材といった通常の添加剤が配合された通常のゴム組成物を用いることができる。
【0058】
ゴム成分としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム(CR)、ハイパロン(CSM)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)等の1種又は2種以上のブレンドゴムを用いることができる。
【0059】
高温加硫を行って加硫時間を短縮するためには、ゴム成分としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)、水素添加ニトリルゴム(HNBR)等の耐熱ゴムの1種又は2種以上を主成分とするものが好ましく用いられる。
【0060】
ただし、これらの耐熱ゴムの1種又は2種以上と、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の汎用のジエン系ゴムの1種又は2種以上とのブレンドゴムであっても良く、また、加硫方法によっては、上記汎用ジエン系ゴムを主成分とするものであっても良い。
【0061】
前述の耐熱ゴムを主成分とする場合にあっては、加硫剤として、有機過酸化物、樹脂、アミン類を用いて加硫することが好ましい。この有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。また、樹脂としては、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。また、アミン類としては、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト等のジアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0062】
これらの硫黄以外の加硫剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0063】
加硫剤の使用量は、多過ぎると脆性的傾向が強くなりゴムがもろくなり、少な過ぎると架橋効果が減り塑性的物性となり適切なゴム物性が得られないことから、ゴム成分100重量部に対して0.5〜4.0重量部とすることが好ましい。
【0064】
また、ゴム成分として、前述の汎用ジエン系ゴムを用いる場合には、チウラム系加硫促進剤などの含硫黄化合物により有効加硫するか、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン等の有機加硫剤を用いた加硫を行うことが好ましい。
【0065】
本発明のゴム堰は、このようなゴム組成物よりなる未加硫ゴム間に前述の本発明に係る繊維織物及び/又は繊維コードを介在させ、常法に従って成形加硫することにより、容易に製造することができる。そして、この加硫に当たっては、加硫時の補強繊維織物及び/又は繊維コードの熱劣化が防止されるため、加硫条件に特に制約を受けることはなく、汎用ジエン系ゴムを用いた場合では、120〜150℃、300〜1000分、耐熱ゴムを用いた場合は、140〜180℃、特に150〜180℃、60〜500分といった幅広い条件範囲から加硫条件を設定することができ、特に500〜1000分といった長時間加硫であっても、補強繊維織物及び/又は繊維コードの熱劣化及びそれによる接着性の低下が問題となることはなく、良好なゴム堰を製造することができる。
【0066】
本発明のゴム堰にあっては、その層構成や製造時の加硫条件等について特に制限はなく、本発明に係る繊維織物及び/又は繊維コード以外の補強層を有していても良い。
【0067】
なお、前述の本発明に係る繊維織物及び/又は繊維コードを未加硫ゴム間に介在させて加硫成形を行う際には、必要に応じて、繊維織物及び/又は繊維コードに接着剤を含浸させても良い。この接着剤としては、通常のRFL液(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)等を用いることができ、その含浸量は繊維織物及び/又は繊維コードに対して3.0〜8.0%程度であることが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0069】
なお、以下においては、ポリケトン繊維としては、前記一般式(I)において、Rがエチレンのポリケトンを繊維化してなるものを用いる。また、ナイロンとしては6,6−ナイロンを用いる。
【0070】
<ゴム堰用帆布の作成>
表1に示す材質及び繊度の縦糸及び横糸を、表1に示す織方、打込数及び撚数にて織ることにより、実施例1〜2及び比較例1のゴム堰用帆布を得た。
【0071】
なお、カラミ糸は用いなかった。
【0072】
【表1】

【0073】
<ゴム堰用帆布の特性>
実施例1〜2及び比較例1のゴム堰用帆布について、以下の通り、帆布強力及び伸びの測定を行った。
【0074】
(1) 帆布強力
JIS L1096に準拠して帆布強力の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
この結果から明らかな通り、縦糸及び/又は横糸にポリケトン繊維を用いると、帆布強力が強くなる。
【0076】
(2) 伸び
JIS L1096に準拠して伸びの測定を行った。その結果を表1に示す。
【0077】
この結果から明らかな通り、縦糸及び/又は横糸にポリケトン繊維を用いると、伸び量が小さくなる。
【0078】
<ゴム堰特性評価用試料の作成>
未加硫ゴム材料として表2に示すものを用い、上記の実施例1〜2及び比較例1のゴム堰用帆布1枚を2枚の未加硫ゴム材料のシート(厚さ0.8mm)の間に介在させて積層し、この積層シートを2枚更に積層した。これを金型内に配置し、温度160℃、圧力5MPa、加硫時間20分間の条件で、加圧下加熱加硫成形を行うことにより、ゴム堰特性評価用試料を得た。
【0079】
【表2】

【0080】
<ゴム堰特性>
当該ゴム堰特性評価用試料について、下記(1)〜(3)の方法による評価を行った。
【0081】
(1) 本体強度
JIS K6322に準拠して本体強度の測定を行った。その結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
(2) 浸水後強度保持率
上記のゴム堰特性評価用試料を70℃の温水に4日間浸水させた後、JIS K6322に準拠して浸水後強度保持率の測定を行った。その結果を表3に示す。
【0084】
(3) 接着性
JIS K6256に準拠して接着性の測定を行った。その結果を表3に示す。
【0085】
以上の結果より、本発明によれば、ゴム堰用帆布とゴムとの接着性が高く、高強度であり、かつ浸水後における強度低下の少ないゴム堰が得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施の形態に係るゴム堰の非膨張時における状態を示す模式的な断面図である。
【図2】従来のゴム堰の非膨張時における状態を示す斜視図である。
【図3】図3のゴム堰の膨張時における状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
10 ゴム堰
20 内層ゴム
20a 上半部
20b 下半部
30 外層ゴム
31 上面
40〜43 補強帆布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム堰を補強するための帆布において、ポリケトン繊維を含有することを特徴とするゴム堰用帆布。
【請求項2】
請求項1において、ポリケトン繊維及び/又はポリケトン繊維コードよりなることを特徴とするゴム堰用帆布。
【請求項3】
請求項2において、ポリケトン繊維と他の繊維との複合繊維及び/又は複合繊維コードよりなることを特徴とするゴム堰用帆布。
【請求項4】
請求項3において、該他の繊維がナイロン繊維及び/又はポリエステル繊維であることを特徴とするゴム堰用帆布。
【請求項5】
請求項3又は4において、ポリケトン繊維と他の繊維との合計の繊度に対するポリケトン繊維の繊度の割合が30%以上であることを特徴とするゴム堰用帆布。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、ポリケトンが下記一般式(I)で表されることを特徴とするゴム堰用帆布。
【化1】

((I)式中、Rはエチレン性不飽和化合物由来の連結基であり、各繰り返し単位において、同一であっても異なっていても良い。)
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、強力が250〜500kg/cmであることを特徴とするゴム堰用帆布。
【請求項8】
水中に設置され、内部に流体を供給することにより起立し、内部から流体を抜くことにより倒状するゴム袋よりなるゴム堰において、請求項1ないし7のいずれか1項のゴム堰用帆布によって補強されてなるゴム堰。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−275121(P2007−275121A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102057(P2006−102057)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】