説明

ゴム射出成形装置

【課題】エアブローによって成形型から吹き飛ばされたゴムバリが周囲に飛散して設備全体を汚してしまい、その後の掃除が大変になったり、また油圧装置の動作不良の原因になるといった問題を解決することのできるゴム射出成形装置を提供する。
【解決手段】射出装置からゴム製品32の成形型のキャビティ34に流動化したゴム材料を射出してゴム製品32を加硫成形するゴム射出成形装置において、エアブローによって成形型28,30から吹き飛ばされたゴムバリよりも小さな通気孔を多数有するとともに、ゴムバリを内部に受け入れるための開口66を有する捕集袋64と、捕集袋64を開口68を成形型28,30に向けた状態に脱着可能に保持する保持部材62とを備えたゴムバリ捕集装置60を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は射出成形によりゴム製品を成形するゴム射出成形装置に関し、詳しくはゴムバリの捕集装置を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりゴム製品の加硫成形装置として、射出装置から成形型のキャビティに流動化したゴム材料を射出してゴム製品を加硫成形する、ゴム射出成形装置が広く用いられている。
このゴム射出成形装置を用いたゴム製品の加硫成形においては、加硫後に成形型に付着し残留したゴムバリを、作業者がエアブローして成形型から吹き飛ばし除去する作業が行われる。
【0003】
このときエアブローによって成形型から吹き飛ばされたゴムバリは、周辺に飛散し設備全体を汚してしまうとともに、その後の掃除作業が大変になったり、また吹き飛ばされたゴムバリが油圧装置のシリンダ等に付着して油漏れの原因となったり、油の出入口にゴムバリが付着してその出入口を詰らせ動作不良の原因になる恐れがある等の問題が生じていた。
【0004】
尚、下記特許文献1には樹脂成形品の金型成形面に付着した樹脂バリを除去するための樹脂バリ捕捉除去装置が開示されている。
しかしながらこの特許文献1に開示されたものは静電場を発生させ、静電気作用及び空気の吸引作用によって樹脂バリを成形型の成形面から吸引除去するもので、本発明とは解決手段が異なっている。
【0005】
【特許文献1】実開平1−161008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、エアブローによって成形型から吹き飛ばされたゴムバリが周囲に飛散して設備全体を汚してしまい、その後の掃除が大変になったり、また油圧装置の動作不良の原因になるといった問題を解決することのできるゴム射出成形装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して請求項1のものは、射出装置からゴム製品の成形型のキャビティに流動化したゴム材料を射出して該ゴム製品を加硫成形するゴム射出成形装置において、エアブローによって前記成形型から吹き飛ばされたゴムバリよりも小さな通気孔を多数有するとともに、該ゴムバリを内部に受け入れるための開口を有する捕集袋と、該捕集袋を該開口を前記成形型に向けた状態に脱着可能に保持する保持部材とを備えたゴムバリ捕集装置を設けてあることを特徴とする。
【0008】
請求項2のものは、請求項1において、前記保持部材は全体として概略容器状をなしていて、内側に前記捕集袋を収容する収容空間を有するとともに、該捕集袋の前記通気孔より抜け出た空気を外部へと逃す空気抜き用の開口が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記ゴムバリ捕集装置が前記成形型を載せてスライド移動し、該成形型を成形位置と脱型位置との間で移動させるスライド部材上に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0010】
以上のように本発明は、エアブローによって成形型から吹き飛ばされたゴムバリを捕集する捕集袋と、これを成形型に向けた状態に、詳しくはその開口を成形型に向けた状態に脱着可能に保持する保持部材とを備えたゴムバリ捕集装置をゴム射出成形装置に備えたもので、本発明によれば、ゴム製品の加硫成形工程において、加硫後に成形型を型分解してそこに付着したゴムバリをエアブローによって吹き飛ばしたときに、これをゴムバリ捕集装置における捕集袋内に捕集し得て、吹き飛ばされたゴムバリが周辺に飛散し、設備を汚したり或いはその後の掃除が大変となったり、またゴムバリが油圧装置の動作不良の原因になるといった問題を解決することができる。
【0011】
ここで上記保持部材は全体として概略容器状となして、その内側の収容空間内に上記捕集袋を収容するようになし、また捕集袋の通気孔より抜け出た空気を外部へと逃す空気抜き用の開口を設けておくことができる(請求項2)。
このようにしておけば、ゴムバリを伴なって捕集袋内部に入り込んだ空気を、その捕集袋の通気孔及び保持部材における空気抜き用の開口を通じて良好に外部へと逃すことができ、捕集袋内部に良好にゴムバリだけを捕集することができる。
【0012】
本発明においては、上記成形型を載せてスライド移動し、成形型を成形位置と脱型位置との間で移動させるスライド部材上に上記のゴムバリ捕集装置を設けておくことができる(請求項3)。
このようにしておけば、成形型を脱型位置に移動させてそこで脱型し、エアブローする際にゴムバリ捕集装置もまた成形型とともに適切な捕集位置まで移動させることができるため、エアブローにて吹き飛ばしたゴムバリを外部に逃すことなく、即ち飛散させることなく良好にゴムバリ捕集装置にて捕集することができる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本実施形態のゴム射出成形装置の全体構成を示したもので、同図に示しているようにこのゴム射出成形装置は、射出装置10と成形装置12とを有している。
射出装置10は、射出ポット14と、リボン状のゴム材料をスクリューの回転により可塑化し流動化させて射出ポット14内に押し出す押出機16と、射出ポット14内に充填されたゴム材料を図中下向きの前進移動によって射出ポット14から射出するプランジャ18と、その駆動シリンダ20とを有している。
射出装置10は、プランジャ18を下向きに突き出して、射出ポット14内のゴムを下方の成形型24に向けて射出する。
【0014】
成形装置12は、型締装置22と成形型24とを有している。
尚図1において、25は型締装置22における油圧装置である。
成形型24は、上型26と中型28と下型30との上下の分割型として構成されており、図1の部分拡大図に示しているようにゴム製品32を成形するためのキャビティ34を有している。
【0015】
尚中型28は、図2に示しているように同図中左右端部が同方向に突出した形状をなしている。
図2に示しているように、下型30の下側には熱板36が設けられており、更にその下側に断熱板38が設けられ、その下側に第1スライド板40が設けられている。
尚42は、成形位置において上下に移動し、中型28と下型30とを熱板36,断熱板38等とともに上昇させ又は下降させる可動板である。
【0016】
上記第1スライド板40は、図1及び図4に示しているように図中左方に延び出しており、その端部上に熱板36に埋設されたヒータに繋がる配線をまとめて収容する配線ボックス44が設けられ、更にその上側に配線ボックス44の蓋を兼ねた第2スライド板46が設けられている。ここで第2スライド板46は、配線ボックス44から更に図中左方に延び出している。
【0017】
本実施形態において、これら第1スライド板40,配線ボックス44,第2スライド板46全体がスライド部材59(図3参照)を構成している。
これら第1スライド板40,配線ボックス44,第2スライド板46にて構成されたスライド部材59は、進退シリンダ56にて図1中左右方向に前進及び後退運動させられる。
一方成形装置12の前部(図1中右部)にはテーブル48が設けられていて、そのテーブル48に、成形型24における中型28と下型30とを分解するための型分解装置50が設けられている。
【0018】
この型分解装置50は、昇降部材52とこれを昇降駆動する駆動シリンダ54とを有している。
ここで昇降部材52は、図2に示しているように左右一対設けられており、それら昇降部材52の上昇移動により中型28を下から上に持ち上げて、かかる中型28を下型30から上向きに分離させる。
【0019】
図3に示しているように、スライド部材59詳しくは第2スライド板46上には、ゴムバリ捕集装置60が設けられている。
このゴムバリ捕集装置60は、保持部材62と捕集袋64とから成っている。
保持部材62は、金属プレートを容器状に板金加工して構成してあり、その内側には捕集袋64の収容空間を有していて、そこに捕集袋64が脱着可能に収容されている。
【0020】
ここで保持部材62には空気抜き用の大きな開口68が複数設けられている。
またその前部には捕集袋64を掛止するための掛止爪70が、捕集袋64の開口66に沿って複数設けられている。
捕集袋64は可撓性の線材をネットに編んだもので、多数の網目を通気孔として備えている。
またエアブローによって吹き飛ばされたゴムバリを内部に受け入れるための大きな開口66を有している。
【0021】
図3に示しているように、ゴムバリ捕集装置60は捕集袋64の開口66を成形型24に向けて、詳しくは中型28及び下型30に向けて配設されている。
尚この捕集袋64は、保持部材62に対して簡単に脱着可能であって、開口66側の端部を掛止爪70から外すことによって保持部材62から取り外すことができ、また開口66側の端部を掛止爪70に掛止させることで、簡単に保持部材62にセットすることができる。
【0022】
次に本実施形態の射出成形装置の作用を説明する。
この実施形態においては、図1の型締装置22にて成形型24を型締め状態に保持し、その状態でプランジャ18を駆動シリンダ20により図中下向きに突き出すことで、射出ポット14内に充填されている流動状態のゴム材料が成形型24のキャビティ34に注入される。
そしてその状態で所定時間保持されることで、キャビティ34に注入されたゴム材料が加硫されゴム製品32となる。
【0023】
その後成形型24における中型28と下型30とが下降せしめられ、そして図4(I)に示すようにその下降端においてスライド部材59が図1中左から右向きに前進させられて、そのスライド部材59詳しくは第1スライド板40上に載置されている中型28と下型30とが共にテーブル48上に持ち来される。
即ち中型28と下型30とが成形位置から型分解位置へと移動せしめられる(図4(II)参照)。
【0024】
その後型分解装置50が作動して昇降部材52が上昇運動させられると、中型28がその昇降部材52によって上向きに持ち上げられ(図4(III),(IV)参照)、下型30から分離される。
尚ゴム製品32はこの中型28に保持された状態で中型28と一緒に上向きに持ち上げられる。
【0025】
その後ゴム製品32の脱型が行われるとともに併せて中型28或いは下型30に付着しているゴムバリ(中型28と上型26或いは下型30との合わせ目に沿って漏れ出したゴムの薄肉バリ)が図3のエアガン58によるエアブローによって中型28或いは下型30から後方(図1中左方)に吹き飛ばされ除去される。
【0026】
このとき吹き飛ばされたゴムバリは、そのエアブロー先にあるゴムバリ捕集装置60の捕集袋64内にその開口66から入り込み、吹き出されたエアだけが捕集袋64の通気孔、更に保持部材62の開口68を通じて外部に抜き出され、ゴムバリだけが捕集袋64内に捕集される。
即ち吹き飛ばされたゴムバリが、捕集袋64内に集中して1箇所に捕集される。
【0027】
以上のような本実施形態によれば、ゴム製品32の加硫成形工程において加硫後に成形型24を型分解してそこに付着したゴムバリをエアブローによって吹き飛ばしたときに、これをゴムバリ捕集装置60における捕集袋64内に捕集し得て、吹き飛ばされたゴムバリが周辺に飛散し、設備を汚したり或いはその後の掃除が大変となったり、またゴムバリが油圧装置25の動作不良の原因になるといった問題を解決することができる。
【0028】
また本実施形態では保持部材62が全体として概略容器状となしてあって、その内側の収容空間内に捕集袋64を収容するようになし、また捕集袋64の通気孔より抜け出た空気を外部へと逃す空気抜き用の開口68を設けてあることから、ゴムバリを伴なって捕集袋64内部に入り込んだ空気を、その捕集袋64の通気孔及び保持部材62における空気抜き用の開口68を通じて良好に外部へと逃すことができ、捕集袋64内部に良好にゴムバリだけを捕集することができる。
【0029】
更に本実施形態においては、成形型24を載せてスライド移動し、成形型24を成形位置と型分解位置(脱型位置)との間で移動させるスライド部材59上にゴムバリ捕集装置60を設けてあることから、成形型24を脱型位置に移動させてそこで脱型し、エアブローする際にゴムバリ捕集装置60もまた成形型24とともに適切な捕集位置まで移動させることができるため、エアブローにて吹き飛ばしたゴムバリを外部に逃すことなく、即ち飛散させることなく良好にゴムバリ捕集装置60にて捕集することができる利点が得られる。
【0030】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態であるゴム射出成形装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1における型分解装置を周辺部とともに示す図である。
【図3】図1におけるゴムバリ捕集装置を示す図である。
【図4】同実施形態の作用説明図である。
【符号の説明】
【0032】
14 射出ポット
24 成形型
32 ゴム製品
34 キャビティ
59 スライド部材
60 ゴムバリ捕集装置
62 保持部材
64 捕集袋
66 開口
68 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出装置からゴム製品の成形型のキャビティに流動化したゴム材料を射出して該ゴム製品を加硫成形するゴム射出成形装置において
エアブローによって前記成形型から吹き飛ばされたゴムバリよりも小さな通気孔を多数有するとともに、該ゴムバリを内部に受け入れるための開口を有する捕集袋と、該捕集袋を該開口を前記成形型に向けた状態に脱着可能に保持する保持部材とを備えたゴムバリ捕集装置を設けてあることを特徴とするゴム射出成形装置。
【請求項2】
請求項1において、前記保持部材は全体として概略容器状をなしていて、内側に前記捕集袋を収容する収容空間を有するとともに、該捕集袋の前記通気孔より抜け出た空気を外部へと逃す空気抜き用の開口が設けられていることを特徴とするゴム射出成形装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記ゴムバリ捕集装置が前記成形型を載せてスライド移動し、該成形型を成形位置と脱型位置との間で移動させるスライド部材上に設けてあることを特徴とするゴム射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−150867(P2006−150867A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347812(P2004−347812)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000177058)三友工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】