説明

ゴム押出機

【課題】ゴム押出機におけるストレーナーの着脱を容易にする。
【解決手段】ゴム押出機はゴム材料を投入する投入部と、投入部に投入されたゴム材料を混練しつつヘッドに移送するスクリューと、スクリューを収容するシリンダと、シリンダのスクリュー端に装着されたヘッドと、前記ヘッドに着脱自在に取り付けられるダイホルダ20とから成る。前記ダイホルダ20は、ヘッドから給送されるゴム材料を成型する口金22と、前記口金22を保持する口金保持部26と、ヘッドから給送されるゴム材料を前記口金22に導くインサート24を備え、前記インサート24はヘッドから給送されるゴム材料の通路24bの回りにストレーナー30を着脱自在に保持するための凹部24aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム押出機に関し、とくにゴム材料中の異物を分離するストレーナーをゴム押出機の口金のインサートに着脱自在にしたゴム押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッド部やサイドウォール部を構成するゴム層を成型する方法として、ゴム押出機を用いて回転駆動される成形ドラム上に所定の断面形状を有する帯状のストリップゴムを供給する方法がある。この方法では、帯状のストリップゴム(又はリボンゴム)を成形ドラムの軸方向に移動して、成形ドラムの外周上にストリップゴムを層状に巻き付けて、所定のコンター(プロファイル)を有するゴム層を形成する。
【0003】
ところで、前記ゴム押出機において、荒ゴム内に石や砂等の異物が混入していると、それらがゴム押出機の口金に引っかかるため、押し出したゴムの耳切れなどによるコンター不良が発生することが知られている。コンター不良が発生すると、ゴムの練り返しを行ったり、ゴム押出機を停止させて異物を除去することが必要になるため、作業中にゴム押出機を停止させておく不活動時間が増大し作業効率が低下する。
【0004】
そこで、ゴム押出機のゴム押出通路にストレーナーを取り付けて、これらの異物をゴム材料と分離するようにしたゴム押出機が用いられている(特許文献1参照)。
このゴム押出機は、概略的に図3に示すように、ゴム押出機100から供給されるゴム材料の異物を除去するために、ストレーナー111がゴム押出機100のスクリュー120とヘッド(ギヤポンプ101)間に取り付けられている。
ストレーナー111により異物を除去されたゴム材料は、ゴム材料を定量送り出すためのギヤポンプ101に供給され、成型用口金102から所定の断面形状に成形されたストリップゴムが連続して押し出される。
【0005】
ここで、ストレーナー111は、図4Aに示すように、支持体111aに金属メッシュ111bがはめ込まれ、この金属メッシュ111bに微小の孔111cが多数形成されて構成されており(図4B参照)、ゴム材料をストレーナー111の孔111cに通過させることにより異物を除去する。
【0006】
また、これとは別に例えば特許文献2に記載されたゴム押出機も知られている。このゴム押出機でも、図5に示すように、ストレーナー130はゴム押出機のスクリュー150とヘッド(可動ヘッド)140間に装着されている。ストレーナー130は、金網134aと複数の貫通孔を備えたブレーカプレート136とセットリング138で構成されている。このゴム押出機においてストレーナー130の着脱は、図中二点鎖線で示すように可動ヘッド140をピン144の周りで回転して行う。
このストレーナー130は、金網134aを本発明の後述する支持手段に相当するブレーカプレート136とセットリング138で挟持する構造であり、固定ヘッド142のゴム押出通路先端部に設けた凹所142a内に収容されている。なお、ストレーナー130の前記凹所142a内での保持はブレーカプレート136の外周に埋め込んだ永久磁石の磁力が用いられている。
【0007】
このように、荒ゴムに含まれる異物はストレーナーにより分離できるが、他方、ストレーナーを使用する場合、ストレーナーによりゴム材料が加熱されるという別の問題が生じる。即ち、特許文献1にも記載されているように、ゴム材料がストレーナー111を通過するときは、ストレーナー111により押出開口が小さくなっているため、その通過抵抗による摩擦熱が生じてゴム材料の温度が上昇する。また、ストレーナー111を通過したゴム材料は、ギヤポンプ101に送られるが、このギヤポンプ101においてもゴム材料が圧縮作用を受けるため、その温度が上昇する。
つまり、ストレーナー111を装着した状態では、装着しない状態に比してゴム材料の温度が一層上昇し、いわゆるゴムやけが生じる虞がある。そこで、ゴム材料を最適な加工温度に維持しておくためには、ストレーナー111を装着したときはギヤポンプ101の回転数、つまりゴム押出機100の吐出能力を落とさざるを得ないことになる。しかし、このことは生産効率の低下という問題を生じる。
【0008】
ところで、ストリップゴムのサイズやゴム種によってはストレーナーが不要な場合があることが知られている。そのような場合は、ゴム押出機にストレーナーを装着しないことで比較的高い吐出能力を維持することができる。
しかし、従来のゴム押出機において一度装着(セット)したストレーナーを取り外すには、ゴム押出機のヘッド部分を開放しなければならず、その作業工数は大である。そのため、そのようなストレーナーが不要な場合でもストレーナーを取り付けたままゴム押出機を使用し続けているのが現状である。
そのため、本来であれば吐出能力を落とす必要がない場合でも、一律に吐出能力を下げた状態でゴムの押し出しを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−266518号公報
【特許文献2】実公平5−33314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記従来の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ゴム押出機におけるストレーナーの着脱を容易にして、ゴム種などによりストレーナーが不要である場合にはストレーナーを簡単に外すことができるようにして、ゴム押出機におけるゴムの押出能力の低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ゴム材料を投入する投入部と、投入部に投入されたゴム材料を混練しつつヘッドに移送するスクリューと、スクリューを収容するシリンダと、シリンダのスクリュー端に装着され、混練移送されたゴム材料を定量ずつ給送するヘッドと、前記ヘッドに着脱自在に取り付けられるダイホルダとからなるゴム押出機であって、前記ダイホルダは、ヘッドから給送されるゴム材料を成型する口金と、前記口金を保持する口金保持部と、ヘッドから給送されるゴム材料を前記口金に導くインサートを備え、前記インサートはヘッドから給送されるゴム押出通路にストレーナーを着脱自在に保持する保持部を備えたゴム押出機である。
【0012】
本発明は、前記構成を備えたことにより、従来に比してストレーナーの装着に要する作業を大幅に軽減することができるため、ゴム押出機のヘッドにダイホルダを取り付ける毎に、ダイホルダのインサートの凹部にストレーナーを装着するか否か選択することができる。
したがって、ゴム押出機で成型するゴムのサイズ等によりストレーナーが不要である場合には、これを装着しないことでゴムの吐出量を従来よりも増大させることができ、作業効率を上げることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ストレーナーをゴム押出機に容易に着脱できるため、ストレーナーが不要である場合にはストレーナーを使用しないようにして、ゴム押出機においてストレーナーを装着したことに依るゴムの押出能力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るゴム押出機の正面図である。
【図2】図1に示すゴム押出機のヘッドに取り付けたダイホルダ部分を拡大して示した断面図である。
【図3】従来のストレーナー付きゴム連続押出装置を概略的に示す断面図である。
【図4】従来のゴム押出機に取り付けるストレーナーの構造を説明する図であり、図4Aはその側断面図、図4Bは正面図である。
【図5】従来のゴム押出機のストレーナーの取り付け構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をその実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ゴム押出機の正面図であり、図2はそのヘッドに取り付けたダイホルダ部分を拡大して示した断面図である。
図1に示すゴム押出機10は従来のものと同様であり、シリンダ12と、シリンダ12の一端部に設けられ材料ゴム(荒ゴム)等を投入するホッパ14と、シリンダ12内に収容され、前記ホッパ14から投入された材料ゴム等を混練しながら移送するスクリュー(図示せず)と、混練された材料ゴムを定量で押し出すためのギヤポンプ(図示せず)を内蔵したヘッド16と、ヘッド16に取り付けられ、押し出されたゴム材料を所望の断面形状に成型する成形型(口金)を備えたダイホルダ20とから成っている。
【0016】
ダイホルダ20は、図2にその断面を示すように、例えば複数のゴム押出機10から押し出された複数のゴム材料を合流させて口金22に導くインサート24と、口金22を保持する保持部26とから成っている。なお、図中矢印はゴム材料の吐出方向を示す。
【0017】
ここで、インサート24の前記ヘッド16の先端面のゴム押出通路16aとの対向面には、保持手段、例えば円板状のストレーナー30を収容できるように、前記ストレーナー30の外径より僅かに大きい内径を有する円筒形の凹部24aが形成されている。また、凹部24aの内周面にはストレーナー30を挿入したとき、その支持体を受け止める段部24cが形成されており、ストレーナー30はヘッド16側のゴム押出通路16a内を押し出されてくるゴム材料の強い圧力を下流側が前記段部24cに当接して対抗できるようになっている。
【0018】
凹部24aの深さはストレーナー30を前記凹部24aに収容したとき、インサート24の前記ヘッド16の接合面から突出せず、しかもストレーナー30を通過したゴム材料が口金22に向かうゴム押出通路24bにスムーズに流入できる深さに形成されており、本実施形態ではこの凹部24aに円形のストレーナー30が取り付けられている。なお、ストレーナー30の形状は必ずしも円板状に限らず、そこを通過するゴム材料に混入している異物をせき止めて後面側に溜める機能を有する限り任意である。
【0019】
ストレーナー30は、例えば既に述べた従来のものを用いることができ、いずれにしても支持体で保持された金網を有し、この金網は全体形状が交差位置におけるヘッド16側のゴム押出通路16a、及びインサート24側のゴム押出通路24bの開口形状より大きな形状に形成されている。
【0020】
本実施形態のストレーナー30は、インサート24の前記凹部24aに嵌め込み、その支持体の下流側面を前記段部24cに当接させるだけでよく、そのためインサート24の凹部24aへの着脱が容易である。なお、特許文献2に示されているように、前記凹部24a又はストレーナー30の支持体32に永久磁石を埋め込んでおき、磁力で軽く吸着保持するように構成してもよい。
【0021】
本実施形態によれば、ストレーナー30はインサート24の凹部24aに単に出し入れして着脱する構造としたため、従来のようにストレーナー30の着脱のためにゴム押出機10のヘッド16部分を開く必要がない。また、ゴムのサイズやゴム種が変更になったときは、それに応じてインサート24も変更するため、ストレーナー30が不要である場合で、既にインサート24の凹部24aにストレーナー30が収納されているときは、これを外してダイホルダ20を取り付ければよい。勿論、凹部を設けていないインサートを用いてもよい。
【0022】
ストレーナー30をインサート24の前記凹部24aに装着した前記構成において、ヘッド16内に内蔵したギヤポンプによりヘッド16のゴム押出通路16aから図2の矢印に沿って定量ずつ押し出されてくるゴム材料は、前記凹部24aに装着されたストレーナー30により異物と分離され、その後は矢印に沿ってゴム押出通路24b内を流動して口金22に至り、ここで、所定の断面形状のストリップゴムに成型されて押し出されていく。
【0023】
実験例
本発明のストレーナーの着脱構造を備えたゴム押出機と、従来品である、ゴム押出機のスクリューとヘッドとの間にストレーナーを装着するストレーナーの着脱構造を備えたゴム押出機において、それぞれ同一人がストレーナーの着脱を行い、その実施に要する時間を計測した。
その着脱時間は、例えば特許文献2に記載された従来装置としては比較的着脱し易い場合であっても、ヘッドを開くためストレーナーを着脱するのに約20分要していたところを、本発明に係るゴム押出機では、その作業を約2分にまで短縮することができた。
このように、本発明によるときは、ストレーナーの着脱作業における工数又は作業負担をあまり意識することなく、ストリップゴムのサイズに応じて容易にストレーナーの要否を選択できることが実証された。
その結果として、ストレーナーを装着しない場合には、過熱によるゴム焼けなどの不都合を最小にして押出速度を上げることができ、ゴム押出機全体としての作業効率が向上することが証明された。
【符号の説明】
【0024】
10・・・ゴム押出機、12・・・シリンダ、14・・・ホッパ、16・・・ヘッド、16a・・・ゴム押出通路、20・・・ダイホルダ、22・・・口金、24・・・インサート、24a・・・凹部、24b・・・ゴム押出通路、24c・・・段部、30・・・ストレーナー、32・・・支持体、100・・・ゴム押出機、101・・・ギヤポンプ、102・・・成型用口金、111・・・ストレーナー、111a・・・支持体、111b・・・金属メッシュ、111c・・・孔、134a・・・金網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料を投入する投入部と、投入部に投入されたゴム材料を混練しつつヘッドに移送するスクリューと、スクリューを収容するシリンダと、シリンダのスクリュー端に装着され、混練移送されたゴム材料を定量ずつ給送するヘッドと、前記ヘッドに着脱自在に取り付けられるダイホルダとからなるゴム押出機であって、
前記ダイホルダは、ヘッドから給送されるゴム材料を成型する口金と、前記口金を保持する口金保持手段と、ヘッドから給送されるゴム材料を前記口金に導くインサートを備え、
前記インサートはヘッドから給送されるゴム押出通路にストレーナーを着脱自在に保持する保持部を備えたゴム押出機。
【請求項2】
請求項1に記載されたゴム押出機において、
前記保持部は、インサートの前記ヘッドのゴム押出通路に対向する位置に設けた凹部であるゴム押出機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたゴム押出機において
前記ストレーナーはそのゴム流動方向下流側となる面側に複数のゴム流通孔を備えた支持体を備えているゴム押出機。
【請求項4】
請求項3に記載されたゴム押出機において、
前記凹部の前記ストレーナーの下流側内周面には前記支持体を受け止める段部が形成されているゴム押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152914(P2012−152914A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11389(P2011−11389)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】