説明

ゴム押出機

【課題】ケーシング内に投入されたゴム材料をスクリューの回転により混練しながら所定の形状に押し出す際、ゴム材料の劣化やゴムの練り不足を引き起こすこと無く、ゴムの吐出量を大幅に増加させる、新規なゴム押出機を提供する。
【解決手段】本発明のゴム押出機のスクリュー2は、シャフト2aと、シャフト2aの外表面に設けられるフライト2bを備え、フライト2bは、シャフトの先端部分に位置するフライト先端領域と、フライト先端領域からシャフト2aの尾端にかけて位置するフライト尾端領域からなり、シャフトの外径d及びフライトのDが式(I)d/D=0.5±0.1を満たし、フライト先端領域におけるフライトの隣接間隔L1及びフライト尾端領域におけるフライトの隣接間隔L2が式(II)L1=0.5×L2を満たし、フライト先端領域の寸法Aが式(III)A=0.5×L1〜2×L1を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に投入されたゴム材料をスクリューの回転により混練しながら送り出し、送り出されたゴム材料を所定の形状に押し出すゴムの押出機に関するものであり、混練、搬送の際に生じるゴム材料の劣化やゴムの練り不足を引き起こすこと無く、ゴムの吐出量を大幅に増加させようとするものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造するにあたっては、ゴム押出機によって押し出されるリボン状のゴムを、一部を重ね合わせながら螺旋状に巻きつけて所定のタイヤ形状とする方法が採用されているが、高精度なタイヤを製造するには、押し出されるゴムの量が変動することなく一定であることが必要であって、このような押出機としては、例えば特許文献1に開示されるようにゴム材料を送り出すスクリューの前方にギヤポンプを備えるギヤポンプ付き押出機が知られている。ところで上記従来のギヤポンプ付き押出機においては、特に大型のタイヤを製造する場合について、生産効率の改善を図るべくゴムの吐出量を大幅に増やすことが検討されているが、例えばスクリューの回転数を上げて単位時間当たりの送り出し量を増やそうとすると、ゴム材料の温度が上昇して許容温度を超えてしまうおそれがあり、所期のゴム特性を確保したまま吐出量を増やすことは困難であった。また特許文献2のように、スクリューに補助フライトを設けて、シリンダー内のゴムが吐出口前方から押し戻されるバックフロー現象を防止してゴムの吐出量を増やそうとするものもあるが、吐出口に十分な圧力をかけるためにケーシング及びスクリューの形状がゴムの投入口から吐出口にかけて先細りとなるテーパー形状となっており、吐出口に向かうにつれゴムの搬送量が減ってしまい、大幅に吐出量を増加させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−116200号公報
【特許文献2】特開平6−270230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ケーシング内に投入されたゴム材料をスクリューの回転により混練、搬送し、搬送されたゴム材料を所定の形状に押し出すゴムの押出機につき、特にスクリューの形状を最適化することで、ゴムの劣化やゴム材料の練り不足を防止するとともに、押し出されるゴムの吐出量を大幅に増加することを可能とする、新規なゴム押出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一端にゴム材料の投入口を有し、他端に該ゴム材料の排出口を有するケーシングと、前記ケーシングの内側に回転可能に配置されるとともに、前記投入口から排出口に向けて前記ゴム材料を送り出すスクリューと、前記ケーシングの排出口につながり、前記排出口から送り出されるゴム材料を吐出口から外部へ押し出す押出ヘッドを備えたゴム押出機において、
前記スクリューは、前記ケーシングの投入口から排出口にかけて延び、該投入口側の端を尾端とし、該排出口側の端を先端とするシャフトと、前記シャフトの外表面に設けられ、該シャフトの先端から尾端まで一定の外径でもって螺旋状に延在するフライトとを備え、前記フライトは、前記シャフトの先端部分に位置するフライト先端領域と、該フライト先端領域から該シャフトの尾端に至るまでの間に位置するフライト尾端領域からなり、
前記シャフトの外径をdとし、前記フライトの外径をDとする際に、該外径d及びDが下記式(I)を満たし、
前記フライト先端領域におけるフライトの隣接間隔をL1とし、前記フライト尾端領域におけるフライトの隣接間隔をL2とする際に、該隣接間隔L1及びL2が下記式(II)を満たし、
前記フライト先端領域の寸法をAとする際に、該寸法Aが下記式(III)を満たすことを特徴とするものである。

d/D=0.5±0.1・・・(I)
1=0.5×L2・・・(II)
A=0.5×L1〜2×L1(ただし寸法Aの起点は前記シャフトの先端とする)・・(III)
【0006】
前記フライトの外径Dと前記フライト尾端領域におけるフライトの隣接間隔L2が、下記式(IV)を満たすことが望ましい。

0.75<D/L2<0.95・・・(IV)
【発明の効果】
【0007】
スクリューのフライトが、シャフトの先頭部分に位置するフライト先端領域と、このフライト先端領域からシャフトの尾端に至るフライト尾端領域からなるものとし、その際にシャフトの外径とフライトの外径が上記式(I)を満たし、フライト先端領域におけるフライトの隣接間隔とフライト尾端領域におけるフライトの隣接間隔が上記式(II)を満たし、フライト先端領域の寸法Aが上記式(III)を満たすようにしたため、温度上昇によるゴムの劣化や、ゴム材料の練り不足を引き起こすことなく、より多くのゴムを吐出させることができる。
【0008】
フライトの外径Dと前記フライト尾端領域におけるフライトの隣接間隔L2が、上記式(IV)を満たすようにしたため、所望のゴム特性を確保したまま、ゴムの吐出量を大幅に増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にしたがうゴム押出機の実施の形態につき、投入口から排出口に向かう一部を省略して破断線で示すとともに、ケーシングと押出ヘッドを断面で示した側面図である。
【図2】本発明にしたがうゴム押出機の実施の形態につき、スクリューの一部を省略して示した図である。
【0010】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
【0011】
図1は本発明にしたがうゴム押出機の全体を模式的に示した図であり、図1に示す1は、筒状のケーシングである。このケーシング1の一端にはケーシング1内にゴム材料を投入する投入口1aが形成されており、他端にはゴム材料を排出する排出口1bが開口している。
【0012】
2は、ケーシング1の内側に回転可能に配置され、ケーシング1に投入されたゴム材料を、混練しながら送り出すスクリューである。スクリュー2は、ケーシング1の投入口1a側に位置するシャフト端を尾端2a1とし、排出口1b側に位置するシャフト端を先端2a2とする際に、尾端2a1から先端2a2にかけて延びる円筒状のシャフト2aと、このシャフト2aの外表面に一体的に設けられ、このシャフト2aの先端2a2から尾端2a1まで螺旋状に延在するフライト2bとを備えている。フライト2bの外径(図2の記号D参照)は全域に亘って一定であり、ケーシング1の内面とフライト2bはわずかの隙間をもって配置されている。シャフト2aは、図示しない駆動源とつながってスクリュー2を回転させる駆動軸2a3と、尾端2a1において一体となって結合している。図1においてはシャフト2aと駆動軸2a3は段差をもって結合しているが、同一外径であっても良い。
【0013】
3は、ケーシング1を内側に収めて固定保持するケースである。ケース3は、投入口1aと連通する投入孔3aを有するとともに、ケーシング1の排出口1bを前方に突き出した状態で保持している。
【0014】
4は、ケーシング1の排出口1bとつながり、ケース3に固定される押出ヘッドである。押出ヘッド4は、ケース3から突出するケーシング1の外壁を保持するとともに排出口1bからゴム材料を導入するベースブロック4aと、このベースブロック4aの内部で回転可能に保持された一対のギヤ4bと、ギヤ4bによって送り出されるゴム材料を、所定の断面となるリボン形状にて外部へ吐出する吐出口4cを備えている。押出ヘッド4は、ギヤ4bを図1で示す矢印方向に回転させて精密な量でもってゴム材料を押し出すことが可能であり、このようなものとして通常のギヤポンプを適用することができる。なお吐出口4cを含む先端部をベースブロック4aとは別の部材で形成し、押し出すゴム材料の断面形状に応じて適宜交換できるようにしても良い。
【0015】
図2はスクリュー2の詳細図である。スクリュー2のシャフト2aの外径dと、フライト2bの外径Dは、互いの外径の差が大きいほうがゴム材料を多く送り出すことができるが、シャフト2aの外径dが小さすぎるとスクリュー2の強度も低下し、スクリュー2が回転した際の振れも大きくなる。本発明の場合、シャフト2aの外径dは15mm〜60mm程度であり、全長は200mm〜1000mm程度である。またフライト2bの外径Dが大きすぎるとスクリュー2の重量が増加するとともに、装置全体の大きさも大きくなる。本発明においては、シャフト2aの外径dとフライト2bの外径Dの関係を下記式(I)に適合させることで、装置の不具合を抑制して吐出量を増加させることが可能となる。

d/D=0.5±0.1・・・(I)
【0016】
フライト2bは、隣り合うフライト2b同士の隣接間隔が、シャフト2aの先端部に延在する部位と、この先端部を除く部分に延在する部位とで異なっている。具体的には、シャフト2aの先端を基点として寸法Aで示されるフライト先端領域2b1においては、フライト2bの隣接間隔が狭く、このフライト先端領域2b1からシャフト2aの尾端2a1に至るフライト尾端領域2b2では広くなっている。図2の例では、シャフトの先端2a2から尾端2a1まで一定の隣接間隔で延在する一つのフライトと、このフライトの隣り合う中間に位置し、フライト先端領域2b1のみ延在するもう一つのフライトでフライト2bを構成する場合を示したが、フライト先端領域2bのみ隣接間隔を狭め、そこからシャフト2aの尾端2a1かけて隣接間隔を広げて連続してつながるフライトを採用しても良い。なおフライト2bの隣接間隔とは、隣り合うフライト2bの頂点間の寸法である。
【0017】
フライト先端領域2b1の寸法Aが大きくなると、隣り合うフライト2bの隣接間隔が狭い領域が増えていき、ケーシング1に投入されたゴム材料がより混練されて温度が上昇して、ゴム材料の許容温度を超えてゴムの劣化につながるおそれがある。また寸法Aが小さくなると、フライト2bの隣接間隔が広い領域が増えていき、ゴム材料が十分に混練されずに外部に押し出される懸念がある。本発明においては、フライト先端領域2b1の隣接間隔L2が下記式(II)を満たすとともに、フライト先端領域の寸法Aが下記式(III)を満たすことで、温度上昇によるゴムの劣化や、ゴム材料の練り不足を引き起こすことなく、より多くのゴムを吐出させることが可能となる。なお寸法Aが0.5×L1〜1×L1の範囲である場合にはさらに多くのゴムを吐出させることが可能となる。

1=0.5×L2・・・(II)
A=0.5×L1〜2×L1(ただし寸法Aの起点はシャフト2aの先端とする)・・(III)
【0018】
螺旋状のフライト2の傾きα(シャフト2aの軸線とフライト2が延びる向きとの角度)が小さくなると、フライト2bの隣接間隔L1、L2が広がるので、スクリュー2の1回転あたりの送り出し量を増やす事が可能となるが、ゴム材料が十分に混練されずに押し出されるおそれがある。またフライト2の傾きαが大きくなると、フライト2bの隣接間隔L1、L2が狭くなり、ゴム材料の温度が上昇してゴムの劣化を引き起こすおそれがある。本発明においては、フライトの外径Dとフライト尾端領域2b2におけるフライト2bの隣接間隔L2が、下記式(IV)を満たすことで、ゴム特性を損なうことなく、ゴムの吐出量を大幅に増加させることが可能となる。

0.75<D/L2<0.95・・・(IV)
【0019】
本発明にしたがうゴム押出機においては、上記の形状となるスクリュー2を、回転数10〜1000rpm程度で回転させることが望ましい。
【実施例】
【0020】
表1に示す組み合わせとなるスクリューを試作し、このスクリュー以外は共通とするゴム押出機においてゴムを押し出し、ゴムの特性及びゴムの吐出量について調査を行った。吐出量を比較するために、フライトの外径は同一とした。その結果を表1に併せて示す。
【0021】
【表1】

【0022】
ゴムの特性は、押し出されたゴムを目視で検査し、異常がないか確認を行った。表中の○は、ゴム特性に異常が見られなかったことを示す。
【0023】
ゴムの吐出量は、押し出されたゴムの体積を測定し、単位時間当たりの量で比較を行った。
【0024】
その結果、フライトの隣接間隔をスクリュー全域にわたって同一とし、かつ狭めたスクリュー(比較例1)では吐出量が不足し、単位時間当たりの回転数を比較例1に対して増加させ、かつ比較例1と同一形状としたスクリュー(比較例2)ではゴムの温度上昇によるゴム焼けが発生し、フライトの隣接間隔をスクリュー全域にわたって同一とし、かつ広げたスクリュー(比較例3)ではゴム練りの不足が発生し、シャフトの外径を大きくし、かつフライトの傾きαを大きくしてフライトの隣接間隔を狭めたスクリュー(比較例4)では、ゴム焼けが発生し、シャフトの外径を小さくし、かつフライトの傾きαを小さくしてフライトの隣接間隔を広げたスクリュー(比較例5)では、ゴム練りの不足が発生して、いずれもゴムの特性とゴムの吐出量の増加の両方を満足することができない。
【0025】
一方、シャフトとフライトが前記式(I)〜(III)を満たすスクリュー(適合例1〜4)では、ゴムの特性を損なうことなく、ゴムの吐出量を大幅に増やすことが可能であり、前記式(I)〜(IV)全てを満たすスクリュー(適合例1〜3)では、より吐出量を増加させることが可能であることが確認された。特にフライト先端領域の寸法Aを1×L1よりも小さくしたスクリュー(適合例2)は吐出量をさらに増加することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、温度上昇によるゴムの劣化やゴム材料の練り不足を引き起こすことなしに、ゴムの吐出量を大幅に増加させ得るゴム押出機を安定的に供給できる。
【符号の説明】
【0027】
1 ケーシング
1a 投入口
1b 排出口
2 スクリュー
2a シャフト
2b フライト
3 ケース
4 押し出しヘッド
4a ベースブロック
4b ギヤ
4c 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にゴム材料の投入口を有し、他端に該ゴム材料の排出口を有するケーシングと、前記ケーシングの内側に回転可能に配置されるとともに、前記投入口から排出口に向けて前記ゴム材料を送り出すスクリューと、前記ケーシングの排出口につながり、前記排出口から送り出されるゴム材料を吐出口から外部へ押し出す押出ヘッドを備えたゴム押出機において、
前記スクリューは、前記ケーシングの投入口から排出口にかけて延び、該投入口側の端を尾端とし、該排出口側の端を先端とするシャフトと、前記シャフトの外表面に設けられ、該シャフトの先端から尾端まで一定の外径でもって螺旋状に延在するフライトとを備え、前記フライトは、前記シャフトの先端部分に位置するフライト先端領域と、該フライト先端領域から該シャフトの尾端に至るまでの間に位置するフライト尾端領域からなり、
前記シャフトの外径をdとし、前記フライトの外径をDとする際に、該外径d及びDが下記式(I)を満たし、
前記フライト先端領域におけるフライトの隣接間隔をL1とし、前記フライト尾端領域におけるフライトの隣接間隔をL2とする際に、該隣接間隔L1及びL2が下記式(II)を満たし、
前記フライト先端領域の寸法をAとする際に、該寸法Aが下記式(III)を満たすことを特徴とする、ゴム押出機。

d/D=0.5±0.1・・・(I)
1=0.5×L2・・・(II)
A=0.5×L1〜2×L1(ただし寸法Aの起点は前記シャフトの先端とする)・・(III)
【請求項2】
前記フライトの外径Dと前記フライト尾端領域におけるフライトの隣接間隔L2が、下記式(IV)を満たすことを特徴とする、請求項1記載のゴム押出機。

0.75<D/L2<0.95・・・(IV)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−183647(P2012−183647A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46425(P2011−46425)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】