説明

ゴム材料の混練システム

【課題】粉状配合剤をマスターバッチ化することなく、ロール混練機を用いて効率的に粉状配合剤をゴム材料に分散させて混練できるゴム材料の混練システムを提供する。
【解決手段】1台のロール混練機1に対して配置した複数台の押出機2のそれぞれにゴム用ホッパ3と、粉状配合剤を投入する配合剤供給手段5とを設け、下側練り返しコンベヤ9と上側練り返しコンベヤ10によりロール混練機1を通過したゴム材料Rをロール混練機1に循環させる循環経路を形成し、供給コンベヤ11とホッパ振り分けコンベヤ13により任意の押出機2のゴム用ホッパ3にゴム材料Rを供給する供給経路を形成し、下側練り返しコンベヤ9の先端部の切換えコンベヤ部9aを回動させることにより循環経路にあるゴム材料Rを供給経路に移送できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材料の混練システムに関し、さらに詳しくは、粉状配合剤をマスターバッチ化することなく、ロール混練機を用いて効率的に粉状配合剤をゴム材料に分散させて混練することができるゴム材料の混練システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等のゴム製品に使用するゴム材料は、天然ゴム等の原料ゴム材料に、カーボンや各種配合薬品等の粉状配合剤を混合、混練して、粉状配合剤を分散させるとともに、ゴム材料を一定の粘度に低下させるようにしている。この混練を行なう方法が幾つか知られている。
【0003】
バンバリーミキサと呼ばれる密閉型混練機を用いる混練では、一般に粉状配合剤を均一になるように分散させることが難しい。また、混練過程による摩擦や配合薬品類の発熱等によって、混練ゴムが所定の温度以上に上昇して加硫が進行してしまうので、途中で混練ゴムを取り出して冷却した後に再度混練を実施するなどの必要があり、作業上もエネルギー消費の観点でも効率性が悪くなる。
【0004】
原料ゴム材料を供給するゴム供給ホッパと、薬品(粉状配合剤)の供給装置とを備えたスクリュー型混練機を用いた連続混練方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。この提案の方法では、ゴム供給工程、薬品供給工程、混練工程、圧縮工程を順次連続的に行なうため、原料ゴムの送り量と薬品の供給量とを高精度で制御しなければならないという問題がある。
【0005】
ロール混練機による混練では、粉状配合剤を均一に分散させ易く、また、混練ゴムの温度上昇を抑えるにも優位性があり、利点が多い方法である。しかしながら、ロール混練機を用いる場合には、直接、粉状配合剤を投入すると飛散するという問題がある。そこで、この飛散を防止するために、ミキサ等を用いて予め粉状配合剤を所定割合で原料ゴム材料に混練したマスターバッチを製造し、このマスターバッチをロール混練機で混練するようにしている。マスターバッチは、ロール混練機による混練ラインとは独立したマスターバッチ製造ラインにおいて製造するため、工程全体としては追加的な時間が必要になり、無駄なエネルギーロスも生じる。また、非加硫系配合剤を混練したマスターバッチや加硫系配合剤を混練したマスターバッチなど複数種類のマスターバッチの製造管理や在庫管理等を行なう必要があるため、効率性を向上させるには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−71615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、粉状配合剤をマスターバッチ化することなく、ロール混練機を用いて効率的に粉状配合剤をゴム材料に分散させて混練することができるゴム材料の混練システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のゴム材料の混練システムは、1台のロール混練機に対して複数台の押出機を配置し、それぞれの押出機にゴム材料を投入するゴム用ホッパと、粉状配合剤を投入する配合剤供給手段とを設け、前記ロール混練機を通過したゴム材料をロール混練機に循環させる循環経路と、前記複数台の押出機のゴム用ホッパの内の任意のゴム用ホッパにゴム材料を供給する供給経路とを備え、循環経路にあるゴム材料を供給経路に移送する切換え手段を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、前記複数台の押出機とは別の押出機を前記ロール混練機に対して配置し、この押出機のゴム用ホッパにゴム材料を供給する副供給経路を備えることもできる。前記ゴム用ホッパと配合剤供給手段とを設けた複数台の押出機と、前記循環経路と、前記供給経路と、前記切換え手段とからなるユニットを、前記1台のロール混練機に対して複数ユニット設け、前記ロール混練機の下方に、それぞれのユニットの内の任意のユニットに、ロール混練機を通過したゴム材料を供給するユニット振り分け手段を設けることもできる。
【0010】
前記供給経路は、例えば、供給コンベヤと、この供給コンベヤの供給先に配置されるホッパ振り分けコンベヤとで構成される。前記ロール混練機の下方から側方側に下側練り返しコンベヤを延設し、その先端部を上下に回動して折り曲げ可能な切換えコンベヤ部に構成し、下側練り返しコンベヤの先端部近傍から前記ロール混練機の上方に上側練り返しコンベヤを延設し、前記切換えコンベヤ部を前記上側練り返しコンベヤに向かって折り曲げた状態の下側練り返しコンベヤと上側練り返しコンベヤとにより前記循環経路を形成し、前記切換えコンベヤ部を延ばして前記供給コンベヤの上方に配置した状態にすることにより、循環経路にあるゴム材料を供給経路に移送する構成にすることもできる。
【0011】
本発明の別のゴム材料の混練システムは、1台のロール混練機に対して1台の押出機を配置し、この押出機にゴム材料を投入するゴム用ホッパと、粉状配合剤を投入する複数の配合剤供給手段とを設け、前記ロール混練機を通過したゴム材料をロール混練機に循環させる循環経路と、前記1台の押出機のゴム用ホッパにゴム材料を供給する供給経路とを備え、循環経路にあるゴム材料を供給経路に移送する切換え手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴム材料の混練システムによれば、押出機にゴム材料を投入するゴム用ホッパと、粉状配合剤を投入する配合剤供給手段とを設けたので、押出機によって粉状配合剤を飛散しない程度にゴム材料に混合することができる。そのため、このゴム材料を押出機からロール混練機に直接投入して循環経路を通じてロール混練機に繰り返し循環させて混練することができる。これにより、粉状配合剤を迅速にゴム材料に分散させつつ粘度を低下させることが可能になる。それ故、押出機において1バッチ分のゴム材料に必要な所定量の粉状配合剤を混合すればよく、厳密な粉状配合剤の供給制御は不要となり、また、従来のようなマスターバッチの製造も不要になる。
【0013】
さらに、循環経路にあるゴム材料を供給経路に移送する切換え手段を設けたので、前者の混練システムでは、供給経路を通じて任意のタイミングで任意の押出機にゴム材料を投入することができ、後者の混練システムでは、供給経路を通じて任意のタイミングで押出機にゴム材料を投入することができる。それ故、複数種類の粉状配合剤を順次、ゴム材料に混合して分散よく混練することができる。或いは、同じ種類の粉状配合剤を徐々に高い濃度になるようにゴム材料に混合して分散よく混練することが可能になる。
【0014】
このように、ゴム材料への粉状配合剤の混合とゴム材料の混練を集約的に行なうことができるので、工程全体の作業効率およびエネルギー効率を向上させるには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のゴム材料の混練システムの第1実施形態を例示する全体概要図である。
【図2】図1のロール混練機の上方部分を例示する平面図である。
【図3】第2実施形態を例示する全体概要図である。
【図4】第3実施形態を例示する全体概要図である。
【図5】図4のロール混練機の上方部分を例示する平面図である。
【図6】第4実施形態を例示する全体概要図である。
【図7】図6の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のゴム材料の混練システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0017】
図1、図2に例示する第1実施形態は、1台のロール混練機1に対して複数台の押出機2(2A、2B、2C)が配置されている。それぞれの押出機2には、ゴム材料Rを投入するゴム用ホッパ3(3A、3B、3C)と、粉状配合剤Pを投入する配合剤供給手段5とが設けられている。それぞれの配合剤供給手段5は、下端部にフィーダ7を備えた配合剤タンク6と、フィーダ7により配合剤タンク6から供給される粉状配合剤Pの重量を測定する計量器8とを有している。
【0018】
押出機2は、例えば、1軸或いは2軸のスクリュータイプなど種々のタイプを用いることができる。押出機2はこの実施形態のように3台に限らず、必要な複数台を設置することができる。例えば、押出機2の設置台数をゴム材料Rに混合する粉状配合剤Pの種類と同数にして、粉状配合剤Pの種類毎に専用の押出機2を設置することもできる。
【0019】
粉状配合剤Pとしては、カーボンブラック、シリカ等の非加硫系配合剤、加硫剤、加硫促進剤等の加硫系配合剤等を例示できる。
【0020】
ロール混練機1は、電動モータ等によって回転駆動される左右一対のロール1a、1bを有するオープン構造であり、一方のロール1aがアクチュエータ1cにより他方のロール1bに対して近接離反移動可能に設けられている。一方のロール1aを移動させることにより一対のロール1a、1b間のギャップが変化し、混練条件に応じて適切なギャップに設定される。
【0021】
また、ロール混練機1の下方から側方側に延びる下側練り返しコンベヤ9と、下側練り返しコンベヤ9の先端部近傍からロール混練機1の上方に延びる上側練り返しコンベヤ10が設置されている。下側練り返しコンベヤ9の先端部は、上下に回動して折り曲げ可能な切換えコンベヤ部9aになっている。切換えコンベヤ部9aの搬送面を上側練り返しコンベヤ10の搬送面に向かって折り曲げた状態にすると、下側練り返しコンベヤ9と上側練り返しコンベヤ10とにより、ロール混練機1を通過したゴム材料Rをロール混練機1に循環させる1つの循環経路が形成される。
【0022】
さらに、切換えコンベヤ部9aの近傍から複数台の押出機2の上方に延びる供給コンベヤ11が設置されている。供給コンベヤ11の供給先にはホッパ振り分けコンベヤ13が設けられている。ホッパ振り分けコンベヤ13は、複数台の押出機2のゴム用ホッパ3の上方で自身のコンベヤ幅方向に移動できるようになっている。
【0023】
ホッパ振り分けコンベヤ13を図2の実線で示すようにゴム用ホッパ3Bを覆う位置に待機させておくと、供給コンベヤ11により供給されるゴム材料Rは、ホッパ振り分けコンベヤ13に載置される。載置されたゴム材料Rは、ホッパ振り分けコンベヤ13の回転駆動方向を選択して回転駆動することにより、2つのゴム用ホッパ3A、3Cの内の任意のゴム用ホッパに投入される。或いは、ホッパ振り分けコンベヤ13を予め図2の二点鎖線で示すようにコンベヤ幅方向に移動させてゴム用ホッパ3Bを覆う位置から退避させておけば、供給コンベヤ11により供給されるゴム材料Rは、直接、ゴム用ホッパ3Bに投入される。即ち、供給コンベヤ11とホッパ振り分けコンベヤ13とにより、複数台の押出機2(2A、2B、2C)のゴム用ホッパ3(3A、3B、3C)の内の任意のゴム用ホッパ3にゴム材料Rを供給する1つの供給経路が形成されている。
【0024】
折り曲げた状態の切換えコンベヤ部9aを、図1の二点鎖線で示すように回動させて延ばして(折り曲げない状態にして)供給コンベヤ11の後端部の上方に配置した状態にすると、循環経路にあるゴム材料Rを供給コンベヤ11に移載して供給経路に移行させることができる。即ち、切換えコンベヤ部9aが、循環経路にあるゴム材料Rを供給経路に移送する切換え手段になっている。
【0025】
供給コンベヤ11の後端部は、ゴム材料供給源15aの近傍に配置されている。そして、供給コンベヤ11の後端部とゴム材料供給源15aとの間には、計量コンベヤ16が設置されている。
【0026】
この実施形態の混練システムを用いたゴム材料の混練方法を以下に説明する。
【0027】
ゴム材料供給源15aから供給されたゴム材料Rは計量コンベヤ16を通じて、供給コンベヤ11に搬送される。計量コンベヤ16では、供給される1バッチ分のゴム材料Rの重量が測定される。
【0028】
供給コンベヤ11により搬送された1バッチ分のゴム材料Rは、ホッパ振り分けコンベヤ13の操作により、任意のゴム用ホッパ3に投入され、その押出機2の先端から押出される。その押出し過程では、配合剤タンク6に収容されている粉状配合剤Pがフィーダ7により配合剤用ホッパ4を通じて押出機2の内部に投入される。投入される粉状配合剤Pの量は、1バッチ分のゴム材料Rの重量に応じて設定された所定量である。
【0029】
押出機2の内部では、ゴム材料Rが熱入れされるとともに、投入された粉状配合剤Pがゴム材料Rに混合される。ここでは、粉状配合剤Pが飛散しない程度にゴム材料Rに混合される。
【0030】
押出機2から押出されたゴム材料Rは、ブレンダコンベヤ14を通じてロール混練機1に投入される。ブレンダコンベヤ14は、一対のロール1a、1bの上方でロール軸方向に移動するともに回転駆動する。したがって、ブレンダコンベヤ14に載置されたゴム材料Rは、ブレンダコンベヤ14の位置決めとブレンダコンベヤ14の回転駆動方向を選択して回転駆動することで、一対のロール1a、1bの軸方向任意の位置に投入することができる。これにより、粉状配合剤Pの分散が促進できる。ブレンダコンベヤ14は必要に応じて設ければよい。
【0031】
ロール混練機1に投入されたゴム材料Rは、一対のロール1a、1bを通過することにより混練されて、粘度低下されつつ粉状配合剤Pが分散される。ロール混練機1を通過したゴム材料Rは、下側練り返しコンベヤ9の後端部に載置される。
【0032】
ここで、切換えコンベヤ部9aの搬送面を上側練り返しコンベヤ10の搬送面に向かって折り曲げた状態にすることで、ゴム材料Rは、下側練り返しコンベヤ9から上側練り返しコンベヤ10に搬送され、上側練り返しコンベヤ10によりロール混練機1の上方に搬送されて、ロール混練機1に投入される。このように循環経路を形成すると、ゴム材料Rは繰り返しロール混練機1により混練され、所定の粘度でかつ粉状配合剤Pが均一になるように分散したゴム材料Rが得られる。
【0033】
ロール混練機1を通過したゴム材料Rが、下側練り返しコンベヤ9の後端部に載置された際に、切換えコンベヤ部9aを回動させて延ばし、供給コンベヤ11の後端部の上方に配置した状態にすると、ゴム材料Rは下側練り返しコンベヤ9から供給コンベヤ11に搬送される。そして、ゴム材料Rは供給コンベヤ11によりホッパ振り分けコンベヤ13に移送される。
【0034】
例えば、押出機2に一度ゴム材料Rを通しただけでは、所定量の粉状配合剤Pを混合できない、或いは、混合させ難い場合は、同じ押出機2(同じ粉状配合剤Pが供給される押出機2)にゴム材料Rを投入し、所定量の粉状配合剤Pがゴム材料Rに混合するまで、その押出機2への投入を繰り返す。所定量の粉状配合剤Pを混合した後は、循環経路を形成してゴム材料Rをロール混練機1により混練することで、所定の粘度でかつ粉状配合剤Pが均一になるように分散したゴム材料Rを得ることができる。
【0035】
このように供給経路を利用して、同じ押出機2(同じ粉状配合剤Pが供給される押出機2)にゴム材料Rを繰り返し投入することにより、同じ種類の粉状配合剤Pを徐々に高い濃度になるようにゴム材料Rに混合して分散よく混練することが可能になる。
【0036】
また、ゴム材料Rに種類の異なる複数種類の粉状配合剤Pを混合する場合は、供給コンベヤ11によりゴム材料Rがホッパ振り分けコンベヤ13に搬送された際に、ホッパ振り分けコンベヤ13の操作により、所望の粉状配合剤Pが供給される押出機2のゴム用ホッパ3にゴム材料Rを投入して、その粉状配合剤Pをゴム材料Rに混合する。このようにして必要なすべての粉状配合剤Pをゴム材料Rに混合した後は、循環経路を形成してゴム材料Rをロール混練機1により繰り返し混練する。或いは、個々の粉状配合剤Pを混合する毎に循環経路を形成してゴム材料Rをロール混練機1により繰り返し混練する。これにより、複数種類の粉状配合剤Pを順次、ゴム材料Rに混合して、所定の粘度でかつ粉状配合剤Pが均一になるように分散したゴム材料Rを得ることができる。
【0037】
切換えコンベヤ部9aの回動を操作することにより、供給経路を通じて任意のタイミングで任意の押出機2にゴム材料Rを投入することができる。即ち、本発明では任意のタイミングで任意の粉状配合剤Pをゴム材料Rに混合することができる。
【0038】
したがって、最初にゴム材料Rとして素練りの原料ゴムをゴム材料供給源15aから供給し、非加硫系配合剤を混合して混練された、いわゆるノンプロゴムを得ることができる。次いで、このノンプロゴムをゴム材料供給源15aから供給し、加硫系配合剤を混合して混練された、いわゆるファイナルゴムを得ることができる。
【0039】
既述したように、押出機2では粉状配合剤Pを飛散しない程度にゴム材料Rに混合することができるので、ゴム材料Rを押出機2からロール混練機1に直接投入して混練することが可能となる。これにより、粉状配合剤Pを迅速にゴム材料Rに分散させつつ粘度を低下させることが可能になる。それ故、押出機2においては、1バッチ分のゴム材料Rに必要な所定量の粉状配合剤Pを適宜混合すればよく、厳密な粉状配合剤Pの供給制御は不要となる。
【0040】
また、従来のように別ラインでマスターバッチを製造する必要がなくなるので、ゴム材料Rに対する無駄な加熱、冷却も不要になる。さらに、マスターバッチの製造管理や在庫管理等も不要になる。
【0041】
このように本発明によれば、ゴム材料Rへの粉状配合剤Pの混合とゴム材料Rの混練を集約的に行なうことができるので、従来に比して工程全体の作業効率およびエネルギー効率を向上させるには有利になる。
【0042】
図3に例示する第2実施形態は、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と相違して、ロール混練機1に対して、複数台の押出機2(2A、2B、2C)とは別の押出機2Dが配置され、この押出機2Dのゴム用ホッパ3Dにゴム材料R2を供給する1つの副供給経路を備えた構造になっている。副供給経路は、ゴム材料供給源15bの近傍からゴム用ホッパ3Dの上方に配置された供給コンベヤ12により構成されている。供給コンベヤ12の後端部とゴム材料供給源15bとの間には、計量コンベヤ16が設置されている。
【0043】
この実施形態では、押出機2Dが配合剤供給手段5Dを有しているが省略することも可能である。また、この実施形態では1つの副供給経路に対して1台の押出機2Dを設置しているので、ホッパ振り分けコンベヤ13は不要になっている。1つの副供給経路に対して複数台の押出機2Dを設ける場合は、その内の任意の押出機2Dのゴム用ホッパ3Dにゴム材料R1を供給するホッパ振り分けコンベヤ13を設ければよい。複数台の押出機2Dを設け、それぞれ押出機2D毎に専用の副供給経路を備えることもできる。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0044】
この実施形態の混練システムを用いたゴム材料の混練方法を以下に説明する。
【0045】
天然ゴムと合成ゴム等の異なる複数種類のゴム材料R1、R2を混練する場合には、ゴム種と粉状配合剤Pの種類によって混合し易さの違い(分散の偏り)等が生じることがある。粉状配合剤Pの分散の偏り等はゴム物性に影響する。そこで、例えば、混練したゴム材料での粉状配合剤Pの分散の偏りを制御したい場合にこの実施形態を用いる。
【0046】
このような場合、1つのゴム材料R1については、第1実施形態と同様に供給経路と循環経路とを利用して、所望の粉状配合剤Pを1バッチ分のゴム材料R1に必要な所定量だけ混合して混練される。次いで、別のゴム材料供給源15bから供給された別のゴム材料R2は計量コンベヤ16を通じて、供給コンベヤ12に搬送される。計量コンベヤ16では、供給される1バッチ分のゴム材料R2の重量が測定される。
【0047】
供給コンベヤ12により搬送された1バッチ分のゴム材料R2は、押出機2Dのゴム用ホッパ3Dに投入され、その押出機2Dの先端から押出される。押出されたゴム材料R2は、粉状配合剤Pを混合して混練されたゴム材料R1とともにロール混練機1に投入され、循環経路を通じてロール混練機1によって所定の粘度になるまで混練される。押出されたゴム材料R2は押出機2Dにより熱入れされているので、ゴム材料R1と混ざり易い状態であり、混練時間を短縮するには有利になる。
【0048】
このようにして、粉状配合剤Pを所望の分散状態に制御して、ゴム材料R1とR2ととが混練されたゴム材料を得ることができる。押出機2Dでは必要に応じて、ゴム材料R2に所望の粉状配合剤Pを混合することもできる。
【0049】
図4、図5に例示する第3実施形態は、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態を構成するゴム用ホッパ3と配合剤供給手段5とを設けた複数台の押出機2と、循環経路と、供給経路と、切換え手段とからなるユニットU1を、1台のロール混練機1に対してもう1つ設ける(ユニットU1と同じユニットU2を設ける)とともに、ロール混練機1の下方にユニット振り分けコンベヤ17が設けられたものである。
【0050】
ユニット振り分けコンベヤ17には、ロール混練機1を通過したゴム材料Rが載置される。そして、載置されたゴム材料Rは、ユニット振り分けコンベヤ17の回転駆動方向を選択して回転駆動させることにより、ユニットU1、U2の内の任意のユニット(下側練り返しコンベヤ9)に供給される。このようにユニット振り分けコンベヤ17は、それぞれのユニットU1、U2の内の任意のユニットにゴム材料Rを供給するユニット振り分け手段として機能する。
【0051】
1台のロール混練機1に対して設置する上記ユニットの数は2つに限らず、必要な複数にすることができる。この場合にも、それぞれのユニットの内の任意のユニットにゴム材料Rを供給するユニット振り分け手段を設ける。
【0052】
この実施形態の混練システムを用いたゴム材料の混練方法を以下に説明する。
【0053】
1つのユニットU1において、ゴム材料供給源15aから供給されたゴム材料R1は、第1実施形態と同様に供給経路と循環経路とを利用して、所望の粉状配合剤Pを混合して混練される。この際に、ユニット振り分けコンベヤ17の回転駆動方向は、ロール混練機1を通過したゴム材料R1が一方のユニットU1(下側練り返しコンベヤ9)に供給されるように設定されている。
【0054】
ゴム材料R1を所定仕様に混練した後は、ユニットU1の下側練り返しコンベヤ9と上側練り返しコンベヤ10を稼働させたまま、ロール混練機1(一対のロール1a、1b)を停止させる。これによって循環経路でループ状につながって循環していたゴム材料R1が途中で切断される。
【0055】
次いで、ロール混練機1(一対のロール1a、1b)を稼働させるとともに、ユニット振り分けコンベヤ17の回転駆動方向を反対方向にして、ゴム材料R1が他方のユニットU2(下側練り返しコンベヤ9)に供給されるように設定する。これによりゴム材料R1は、他方のユニットU2の下側練り返しコンベヤ9に載置されて搬送される。
【0056】
このユニットU2では、ユニットU1と同様に供給経路と循環経路とを利用して自由にゴム材料R1を混練することができる。例えば、供給経路を通じて押出機2のゴム用ホッパ3にゴム材料R1を投入して新たな粉状配合剤Pを混合し、循環経路で繰り返し混練することができる。
【0057】
例えば、1つのユニットU1においては、ゴム材料R1としてゴム材料供給源15aから供給された素練りの原料ゴムに非加硫系配合剤を混合して混練することによりノンプロゴムを得ることができる。そして、そのノンプロゴムをユニット振り分けコンベヤ17によって他方のユニットU2に移送して、U2においてノンプロゴムに加硫系配合剤を混合して混練することによりファイナルゴムを得ることができる。
【0058】
また、第3実施形態では、第2実施形態と同様の混練も行なうことができる。
【0059】
図6、図7に例示する第4実施形態は、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と相違して、1台のロール混練機1に対して1台の押出機2が配置され、この押出機2にゴム材料Rを投入する1つのゴム用ホッパ3と、粉状配合剤Pを投入する複数の配合剤供給手段5(5A、5B、5C)とが設けられている。
【0060】
配合剤供給手段5はこの実施形態のように3台に限らず、必要な複数台を設置することができる。例えば、配合剤供給手段5の設置台数をゴム材料Rに混合する粉状配合剤Pの種類と同数にして、粉状配合剤Pの種類毎に専用の配合剤供給手段5を設置することもできる。
【0061】
また、この混練システムには第1実施形態と同様に、ロール混練機1の下方から側方側に延びる下側練り返しコンベヤ9と、下側練り返しコンベヤ9の先端部近傍からロール混練機1の上方に延びる上側練り返しコンベヤ10が設置されている。下側練り返しコンベヤ9の先端部は、上下に回動して折り曲げ可能な切換えコンベヤ部9aになっている。切換えコンベヤ部9aの搬送面を上側練り返しコンベヤ10の搬送面に向かって折り曲げた状態にすると、下側練り返しコンベヤ9と上側練り返しコンベヤ10とにより、ロール混練機1を通過したゴム材料Rをロール混練機1に循環させる1つの循環経路が形成される。
【0062】
さらに、切換えコンベヤ部9aの近傍から1台の押出機2の上方に延びる供給コンベヤ11が設置されている。供給コンベヤ11の供給先は、1台の押出機2のゴム用ホッパ3の上方に設定されている。この供給コンベヤ1により、1台の押出機2のゴム用ホッパ3にゴム材料Rを供給する1つの供給経路が形成されている。
【0063】
折り曲げた状態の切換えコンベヤ部9aを、図6の二点鎖線で示すように回動させて延ばして(折り曲げない状態にして)供給コンベヤ11の後端部の上方に配置した状態にすると、循環経路にあるゴム材料Rを供給コンベヤ11に移載して供給経路に移行させることができる。即ち、切換えコンベヤ部9aが、循環経路にあるゴム材料Rを供給経路に移送する切換え手段になっている。
【0064】
この実施形態の混練システムを用いたゴム材料の混練方法を以下に説明する。
【0065】
ゴム材料供給源15aから供給されたゴム材料Rは計量コンベヤ16を通じて、供給コンベヤ11に搬送される。計量コンベヤ16では、供給される1バッチ分のゴム材料Rの重量が測定される。
【0066】
供給コンベヤ11により搬送された1バッチ分のゴム材料Rは、1台の押出機2のゴム用ホッパ3に投入され、その押出機2の先端から押出される。その押出し過程では、複数の配合剤供給手段5A、5B、5Cのそれぞれの配合剤タンク6の内のいずれか1つの配合剤タンク6に収容されている粉状配合剤Pがフィーダ7により配合剤用ホッパ4を通じて押出機2の内部に投入される。投入される粉状配合剤Pの量は、1バッチ分のゴム材料Rの重量に応じて設定された所定量である。
【0067】
押出機2の内部では、ゴム材料Rが熱入れされるとともに、投入された粉状配合剤Pがゴム材料Rに混合される。ここでは、粉状配合剤Pが飛散しない程度にゴム材料Rに混合される。
【0068】
押出機2から押出されたゴム材料Rは、ブレンダコンベヤ14を通じてロール混練機1に投入され、一対のロール1a、1bを通過することにより混練されて、粘度低下されつつ粉状配合剤Pが分散される。ロール混練機1を通過したゴム材料Rは、下側練り返しコンベヤ9の後端部に載置される。
【0069】
ここで、切換えコンベヤ部9aの搬送面を上側練り返しコンベヤ10の搬送面に向かって折り曲げた状態にすることで、ゴム材料Rは、下側練り返しコンベヤ9から上側練り返しコンベヤ10に搬送され、上側練り返しコンベヤ10によりロール混練機1の上方に搬送されて、ロール混練機1に投入される。このように循環経路を形成すると、ゴム材料Rは繰り返しロール混練機1により混練され、所定の粘度でかつ粉状配合剤Pが均一になるように分散したゴム材料Rが得られる。
【0070】
ロール混練機1を通過したゴム材料Rが、下側練り返しコンベヤ9の後端部に載置された際に、切換えコンベヤ部9aを回動させて延ばし、供給コンベヤ11の後端部の上方に配置した状態にすると、ゴム材料Rは下側練り返しコンベヤ9から供給コンベヤ11に搬送される。そして、ゴム材料Rは供給コンベヤ11により、再び、押出機2のゴム用ホッパ3に投入される。
【0071】
例えば、複数種類の粉状配合剤Pを混合して混練する際には、先に投入した粉状配合剤Pとは異なる粉状配合剤Pを収容している配合剤タンク6を備えた配合剤供給手段5のフィーダ7により、配合剤用ホッパ4を通じて押出機2の内部に別の粉状配合剤Pを投入して同様に混練を行なう。このようにして必要なすべての粉状配合剤Pをゴム材料Rに混合した後は、循環経路を形成してゴム材料Rをロール混練機1により繰り返し混練する。或いは、個々の粉状配合剤Pを混合する毎に循環経路を形成してゴム材料Rをロール混練機1により繰り返し混練する。これにより、複数種類の粉状配合剤Pを順次、ゴム材料Rに混合して、所定の粘度でかつ粉状配合剤Pが均一になるように分散したゴム材料Rを得ることができる。
【0072】
切換えコンベヤ部9aの回動を操作することにより、供給経路を通じて任意のタイミングで1台の押出機2にゴム材料Rを投入し、複数の配合剤供給手段5A、5B、5Cの内の任意の配合剤供給手段5によって任意の粉状配合剤Pをゴム材料Rに混合することができる。
【0073】
したがって、最初にゴム材料Rとして素練りの原料ゴムをゴム材料供給源15aから供給し、非加硫系配合剤を混合して混練されたノンプロゴムを得ることができる。次いで、このノンプロゴムをゴム材料供給源15aから供給し、加硫系配合剤を混合して混練されたファイナルゴムを得ることができる。
【0074】
この実施形態においても、押出機2では粉状配合剤Pを飛散しない程度にゴム材料Rに混合してゴム材料Rを押出機2からロール混練機1に直接投入して混練することができるので、粉状配合剤Pを迅速にゴム材料Rに分散させつつ粘度を低下させることが可能になる。それ故、押出機2においては、1バッチ分のゴム材料Rに必要な所定量の粉状配合剤Pを適宜混合すればよく、厳密な粉状配合剤Pの供給制御は不要となる。
【0075】
また、従来のように別ラインでマスターバッチを製造する必要がなくなるので、ゴム材料Rに対する無駄な加熱、冷却も不要になる。さらに、マスターバッチの製造管理や在庫管理等も不要になる。
【0076】
このように本発明によれば、ゴム材料Rへの粉状配合剤Pの混合とゴム材料Rの混練を集約的に行なうことができるので、従来に比して工程全体の作業効率およびエネルギー効率を向上させるには有利になる。
【0077】
図3に例示した第2実施形態のように、この実施形態の1台の押出機2とは別の押出機をロール混練機1に対して配置し、この別の押出機のゴム用ホッパにゴム材料Rを供給する副供給経路を備えた構造にすることもできる。
【0078】
また、図4に例示した第3実施形態のように、この実施形態を構成するゴム用ホッパ3と複数の配合剤供給手段5A、5B、5Cとを設けた1台の押出機2と、循環経路と、供給経路と、切換え手段とからなるユニットを、1台のロール混練機1に対して複数ユニット設け、ロール混練機1の下方に、それぞれのユニットの内の任意のユニットに、ロール混練機1を通過したゴム材料Rを供給するユニット振り分け手段を設けた構造にすることもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 ロール混練機
1a、1b ロール
1c アクチュエータ
2、2A、2B、2C、2D 押出機
3、3A、3B、3C、3D ゴム用ホッパ
4、4A、4B、4C、4D 配合剤用ホッパ
5、5A、5B、5C 配合剤供給手段
6 配合剤タンク
7 フィーダ
8 計量器
9 下側練り返しコンベヤ
9a 切換えコンベヤ部
10 上側練り返しコンベヤ
11 供給コンベヤ
12 供給コンベヤ
13 ホッパ振り分けコンベヤ
14 ブレンダコンベヤ
15a、15b ゴム材料供給源
16 計量コンベヤ
17 ユニット振り分けコンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台のロール混練機に対して複数台の押出機を配置し、それぞれの押出機にゴム材料を投入するゴム用ホッパと、粉状配合剤を投入する配合剤供給手段とを設け、前記ロール混練機を通過したゴム材料をロール混練機に循環させる循環経路と、前記複数台の押出機のゴム用ホッパの内の任意のゴム用ホッパにゴム材料を供給する供給経路とを備え、循環経路にあるゴム材料を供給経路に移送する切換え手段を設けたゴム材料の混練システム。
【請求項2】
前記複数台の押出機とは別の押出機を前記ロール混練機に対して配置し、この押出機のゴム用ホッパにゴム材料を供給する副供給経路を備えた請求項1に記載のゴム材料の混練システム。
【請求項3】
前記ゴム用ホッパと配合剤供給手段とを設けた複数台の押出機と、前記循環経路と、前記供給経路と、前記切換え手段とからなるユニットを、前記1台のロール混練機に対して複数ユニット設け、前記ロール混練機の下方に、それぞれのユニットの内の任意のユニットに、ロール混練機を通過したゴム材料を供給するユニット振り分け手段を設けた請求項1に記載のゴム材料の混練システム。
【請求項4】
前記供給経路は、供給コンベヤと、この供給コンベヤの供給先に配置されるホッパ振り分けコンベヤとで構成される請求項1〜3のいずれかに記載のゴム材料の混練システム。
【請求項5】
前記ロール混練機の下方から側方側に下側練り返しコンベヤを延設し、その先端部を上下に回動して折り曲げ可能な切換えコンベヤ部に構成し、下側練り返しコンベヤの先端部近傍から前記ロール混練機の上方に上側練り返しコンベヤを延設し、前記切換えコンベヤ部を前記上側練り返しコンベヤに向かって折り曲げた状態の下側練り返しコンベヤと上側練り返しコンベヤとにより前記循環経路を形成し、前記切換えコンベヤ部を延ばして前記供給コンベヤの上方に配置した状態にすることにより、循環経路にあるゴム材料を供給経路に移送する構成にした請求項4に記載のゴム材料の混練システム。
【請求項6】
1台のロール混練機に対して1台の押出機を配置し、この押出機にゴム材料を投入するゴム用ホッパと、粉状配合剤を投入する複数の配合剤供給手段とを設け、前記ロール混練機を通過したゴム材料をロール混練機に循環させる循環経路と、前記1台の押出機のゴム用ホッパにゴム材料を供給する供給経路とを備え、循環経路にあるゴム材料を供給経路に移送する切換え手段を設けたゴム材料の混練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−140146(P2011−140146A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1081(P2010−1081)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000236355)浜ゴムエンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】