説明

ゴム用水性コーティング剤およびその硬化皮膜で被覆されたゴム物品

【課題】ゴム材料からなる基材との密着性並びに耐摩耗性及び表面平滑性に優れた硬化皮膜を与えるゴム用水性コーティング剤と、該硬化皮膜で被覆されたゴム物品を提供する。
【解決手段】(A)成分:その水溶液又は水分散液からの水の揮発によりレジン状のシリコーン皮膜を形成するオルガノポリシロキサン、(B)成分:その水分散液からの水の揮発によりゴム状のシリコーン皮膜を形成する、(B1)特定のオルガノポリシロキサンと(B2)特定のアルコキシシランとの組み合わせ、(C)成分:融点が100℃以上であるか、もしくは融点を有しない、体積平均粒径1〜40μmの樹脂微粒子もしくはゴム微粒子又はこれらの組み合わせ、及び(D)成分:水、を含む水性組成物からなるゴム用水性コーティング剤;ゴム材料からなる基材と、該基材の表面の少なくとも一部を被覆する上記ゴム用水性コーティング剤の硬化皮膜と、を有するゴム物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材料からなる基材との密着性ならびに耐摩耗性及び表面平滑性に優れた硬化皮膜を与えるゴム用水性コーティング剤と、その硬化皮膜で被覆されたゴム物品とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種ゴムに表面平滑性及び耐摩耗性を付与するために、シリコーン組成物でその表面をコーティングし、硬化させる方法が行われている。このような方法に使用されるシリコーン組成物としては、例えば、ゴム状のシリコーン皮膜を形成するものが挙げられる。しかし、このようなシリコーン組成物から得られる皮膜は、密着性、耐摩耗性及び表面平滑性に乏しい。そこで、前記特性を改良するべく、ゴム状のシリコーン皮膜を形成するシリコーン組成物に微粉末を配合したシリコーン組成物が提案されている。例えば、微粉末としてポリメチルシルセスキオキサンを配合したシリコーン組成物、シリコーンゴム微粉末を配合したシリコーン組成物、有機樹脂微粉末を配合したシリコーン組成物が挙げられる。これらの微粉末を配合したシリコーン組成物から得られる皮膜でも、特に硬度の高いゴム基材に対しては、密着性および耐摩耗性が未だ不十分である。前記のようなゴム状のシリコーン皮膜では、皮膜の強度が不足するため、耐摩耗性が不十分であると考えられる。
【0003】
そこで、レジン状のシリコーン皮膜を形成する組成物に微粉末を配合した組成物が提案されている。例えば、エポキシ基を含有するアルコキシシラン、アミノ基を含有するアルコキシシラン及び有機樹脂微粉末を含む組成物(特許文献1参照)等が挙げられる。また、ゴム状のシリコーン皮膜を形成する組成物に有機樹脂を配合した組成物が提案されている。例えば、分子末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサン、オルガノトリアルコキシシラン、アミド基及びカルボキシル基を含有するオルガノアルコキシシラン、エポキシ基を含有するオルガノアルコキシシラン、アクリル−シリコーングラフト共重合体及び有機樹脂微粉末を含む組成物(特許文献2)、分子末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、塩素化ポリオレフィン及び/又はアクリル変性ポリオレフィン、ならびにシリコーンゴム微粉末を含む組成物(特許文献3)、分子末端に水酸基及びアミノアルキル基を含有するオルガノポリシロキサン、アルコキシシラン、ポリウレタン樹脂、及び有機樹脂微粉末を含む組成物(特許文献4)等が挙げられる。いずれの組成物から得られる皮膜も、密着性に改善がみられるものの、耐摩耗性は未だ不十分であり、更なる改良が求められている。
【特許文献1】特開2005−15502号公報
【特許文献2】特開2004−300374号公報
【特許文献3】特開2006−182936号公報
【特許文献4】特開2006−312713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ゴム材料からなる基材との密着性ならびに耐摩耗性及び表面平滑性に優れた硬化皮膜を与えるゴム用水性コーティング剤と、その硬化皮膜で被覆されたゴム物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は第一に、
(A)成分:その水溶液または水分散液から水を揮発させることによりレジン状のシリコーン皮膜を形成するオルガノポリシロキサン (A)〜(C)成分の合計に対し40〜85質量%、
(B)成分:その水分散液から水を揮発させることによりゴム状のシリコーン皮膜を形成する、(B1)構成単位として式:R32SiO2/2(R3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)で示される単位を含有し、分子末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンと(B2)式:R4aSi(OR5)4-a(R4は非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、R5は独立に炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、aは0又は1である。)で示されるアルコキシシランとの組み合わせ (A)〜(C)成分の合計に対し5〜40質量%、
(C)成分:融点が100℃以上であるか、もしくは融点を有しない、体積平均粒径が1〜40μmである樹脂微粒子もしくはゴム微粒子またはこれらの組み合わせ (A)〜(C)成分の合計に対し10〜50質量%、ならびに
(D)成分:水
を含む水性組成物からなるゴム用水性コーティング剤を提供する。
【0007】
本発明は第二に、
ゴム材料からなる基材と、
該基材の表面の少なくとも一部を被覆する上記ゴム用水性コーティング剤の硬化皮膜と
を有するゴム物品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム用水性コーティング剤は、ゴム材料からなる基材との密着性ならびに耐摩耗性及び表面平滑性に優れた硬化皮膜を与える。よって、この硬化皮膜で被覆されたゴム物品は耐摩耗性及び表面平滑性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について更に詳しく説明する。
【0010】
[(A)成分]
(A)成分は、その水溶液または水分散液から水を揮発させることによりレジン状のシリコーン皮膜を形成するオルガノポリシロキサンである。(A)成分は、1種単独で使用することも2種以上を併用することもできる。ここで、レジン状のシリコーン皮膜とは、JIS K5600-5-4に規定されている鉛筆硬度が6B以上(例えば、6B〜6H)、好ましくはH以上(例えば、H〜6H)のシリコーン皮膜をいう。前記シリコーン皮膜の鉛筆硬度が6Bより低いと、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は密着性および耐摩耗性が乏しくなる場合がある。
【0011】
本発明のゴム用水性コーティング剤を調製するためには、(A)成分は水溶液または水分散液の状態で用いることが好ましい。(A)成分が水溶性のオルガノポリシロキサンである場合、(A)成分の水溶液は、(A)成分を水に溶解させることにより得ることができる。また、(A)成分が水に不溶性のオルガノポリシロキサンである場合、(A)成分の水分散液は、(A)成分を界面活性剤を用いて水に乳化分散させることによって得ることができる。特に、水に不溶性の(A)成分が固体である場合や粘度が高い場合には、(A)成分を有機溶剤溶液の状態で水に乳化分散させてもよい。(A)成分の水溶液または水分散液において、(A)成分の含有量は好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0012】
界面活性剤は、特に限定はされず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン等の非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、N-アシルタウリン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、カルボン酸高分子、スチレンオキシアルキレン酸無水物共重合体等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、トリポリオキシエチレンアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩、カチオン化セルロース等のカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルカルボキシベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用することも2種以上を併用することもできるが、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを併用することはできない。
【0013】
界面活性剤の使用量は、(A)成分をそのまま水に分散させる場合には(A)成分100質量部に対して、(A)成分を有機溶剤溶液の状態で水に分散させる場合には(A)成分の有機溶剤溶液100質量部に対して、1〜20質量部の範囲とするのがよい。該使用量がこの範囲内であると、得られる水性コーティング剤は保存安定性が維持されやすく、また、該水性コーティング剤から得られる硬化皮膜は脆くなりにくく、耐水性が向上しやすい。
【0014】
(A)成分を有機溶剤溶液の状態で水に乳化分散させる場合に使用される有機溶剤としては、例えば、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;低分子シロキサン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、オキソヘキシルアセテート、メチルメトキシブチルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ2−エチルヘキサノエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ2−エチルヘキサノエート等のエステル系有機溶剤;イソトリデカノール、1,3−オクチレングリコール等のアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル系有機溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、1種単独で使用することも2種以上を併用することもできる。
【0015】
(A)成分の有機溶剤溶液において(A)成分の含有率は30〜95質量%の範囲にあることが好ましい。なお、前記有機溶剤溶液の粘度は、25℃において500〜100,000mPa・s、特に1,000〜50,000mPa・sであることが好ましい。なお、粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0016】
(A)成分の水溶液または水分散液は、縮合反応用触媒を含んでいてもよい。(A)成分の水溶液または水分散液を用いて本発明の水性コーティング剤を調製する場合、該水溶液または水分散液に触媒が添加されていると、得られる水性コーティング剤の硬化性を効果的に向上させることができる。触媒としては、例えば、ナトリウム化合物、アルミニウム化合物、カリウム化合物、カルシウム化合物、チタン化合物、バナジウム化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、ビスマス化合物、バリウム化合物等の金属化合物が挙げられる。これらの触媒は、1種単独で使用することも2種以上を併用することもできる。配合量は、触媒としての有効量でよい。触媒の添加は、触媒と(A)成分とを混合して混合物を得、この混合物を水に溶解または分散させることによって行ってもよいし、(A)成分の水溶液または水分散液と触媒とを混合することによって行ってもよい。触媒を(A)成分の水分散液に添加する場合、該触媒は、そのままの状態であっても、該触媒を有機溶剤または界面活性剤に溶解させて得た溶液の状態であっても、該触媒を界面活性剤を用いて水に分散させて得た乳化分散液の状態であってもよい。これらの有機溶剤および界面活性剤としては、上記で例示したものを用いることができる。
【0017】
(A)成分を水に溶解させ、または、(A)成分もしくは(A)成分の有機溶剤溶液を水に乳化分散させるためには、一般的な乳化分散機を用いればよい。乳化分散機としては、例えば、ホモディスパー等の高速回転遠心放射型攪拌機;ホモミキサー等の高速回転剪断型攪拌機;ホモジナイザー等の高圧噴射式乳化分散機;コロイドミル;超音波乳化機等が挙げられる。
【0018】
一般に、シリコーンを構成する単位としては、R3SiO1/2単位、R2SiO2/2単位、RSiO3/2単位およびSiO4/2単位が挙げられるが(これらの式中、Rは1価有機基を示す。以下同じ)、RSiO3/2単位および/またはSiO4/2単位の割合が高い重合体は、重合度が大きくなると、レジン状の硬い固形の形態となる。本発明の(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜が良好な表面平滑性を示すことから、RSiO3/2単位の割合が高い重合体であることが好ましい。
【0019】
(A)成分としては、例えば、構成単位として式:R1SiO3/2(R1は非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)で示される単位および式:R22SiO2/2(R2は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)で示される単位をモル比:R1SiO3/2/R22SiO2/2=100/0〜50/50で含有し、分子末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサン(以下、「オルガノポリシロキサンa」という場合がある。)が挙げられる。
【0020】
上記モル比:R1SiO3/2/R22SiO2/2は100/0〜50/50の範囲であり、好ましくは100/0〜60/40の範囲である。該モル比が50/50より小さいと、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は、硬度が低くなり、耐摩耗性が低下してしまう場合がある。
【0021】
上記R1およびR2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;およびこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子および/またはアミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基が挙げられる。これらの置換基は非置換であっても置換されていてもよい。
【0022】
ここで、(A)成分中の全R1と全R2の合計の好ましくは2〜100モル%、より好ましくは5〜100モル%が非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基である。アミノ基は酸で中和されていてもよい。非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基の含有量が前記範囲内であると、(A)成分が水に溶解してその水溶液を調製することができる場合があり、また、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜で被覆されたゴム物品が変形したときに該硬化皮膜がゴム物品から脱落しにくくなる。
【0023】
非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基の含有量が前記範囲内である限り、(A)成分は、非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンのみからなるものであっても、該1価炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンと該1価炭化水素基を有さないオルガノポリシロキサンとの混合物であってもよい。
【0024】
置換のアミノ基としては、例えば、非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基で置換されたアミノ基が挙げられる。ここで、非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基等の非置換の1価炭化水素基;非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基が挙げられる。このうち、非置換の1価炭化水素基の具体例としては、前記R1またはR2について具体的に例示した非置換の1価炭化水素基が挙げられ、非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基の具体例としては、下記に示す基が挙げられる。
−C24NH2、 −C24NHC24NH2
−C24NHC24NHC24NH2、 −C24NHCH3
【0025】
R1またはR2が非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基である場合、その具体例としては下記のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
−CH2NH2、 −C36NH2、 −C36NHC24NH2
−C36(NHC242NH2、 −C36(NHC243NH2
−C36NHCH3、 −C36NHC24NHCH3
−C36NHC65、 −C36NHCH265
【0026】
オルガノポリシロキサンaにおいて、分子末端は、水酸基のほかにアルコキシ基を含有してもよく、例えば、式:R12XSiO1/2、式:R1X2SiO1/2または式:X3SiO1/2(R1は前記のとおりであり、Xは独立に水酸基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。)で表される末端構造を有する。Xが炭素原子数1〜6のアルコキシ基である場合、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0027】
得られる水性コーティング剤の硬化性の点から、オルガノポリシロキサンa中に存在する全ての分子末端が水酸基を有することが好ましいが、分子末端に存在する水酸基の安定性が悪い場合、得られる水性コーティング剤の硬化性を損なわない範囲で、分子末端の一部が水酸基を含まない末端構造、例えば、式:X'3SiO1/2(X'は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、前記R1またはR2と同様の具体例を有する。)で表される末端構造を有してもよい。
【0028】
なお、オルガノポリシロキサンaは、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜の硬さを向上させる目的でSiO4/2単位を少量含んでもよい。この場合、SiO4/2単位の含有量は、オルガノポリシロキサンa中の全シロキサン単位に対して10モル%以下であることが好ましく、特に5モル%以下であることが好ましい。
【0029】
オルガノポリシロキサンaは、公知の方法で製造することが可能である。例えば、オルガノポリシロキサンa中の構成単位に対応するクロロシランやアルコキシシランを加水分解・縮合反応に供することにより得ることができる。オルガノポリシロキサンaが液状であっても、その水溶液または水分散液からの水の揮発、さらに熱および/または触媒の作用により、オルガノポリシロキサンa中の水酸基が脱水縮合したり、場合により存在するアルコキシ基が脱アルコール縮合したりして、重合度の高い硬化物が生ずることにより、レジン状の硬いシリコーン硬化皮膜が形成される。
【0030】
(A)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の合計に対し、通常、40〜85質量%であり、好ましくは50〜75質量%である。該配合量が40質量%未満であると、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は硬度が低下し、耐摩耗性が低下する場合がある。該配合量が85質量%を超えると、得られる硬化皮膜は脆いものとなり、耐摩耗性が低下する場合がある。
【0031】
・鉛筆硬度測定用シリコーン皮膜
上記鉛筆硬度測定用のシリコーン皮膜は、(A)成分の水溶液または水分散液を磨き鋼板に硬化後の膜厚が20μmになるように塗工し、150℃で乾燥させることにより得たものである。乾燥時間は1〜10分程度でよい。上記シリコーン皮膜を形成させるために用いる(A)成分の水溶液および水分散液は上記と同様にして調製することができる。
【0032】
[(B)成分]
(B)成分は、その水分散液から水を揮発させることによりゴム状のシリコーン皮膜を形成する、(B1)構成単位として式:R32SiO2/2(R3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)で示される単位を含有し、分子末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンと(B2)式:R4aSi(OR5)4-a(R4は非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、R5は独立に炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、aは0又は1である。)で示されるアルコキシシランとの組み合わせである。(B1)および(B2)成分のおのおのは、1種単独で使用することも2種以上を併用することもできる。ここで、ゴム状のシリコーン皮膜とは、JIS K6253に規定されているタイプAデュロメーター硬さが5〜90、好ましくは5〜50のシリコーン皮膜をいう。前記シリコーン皮膜の硬さが90より大きいと、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は脆いものとなりやすく耐摩耗性が低下しやすい。また、該硬さが5より小さいと、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は耐摩耗性が乏しくなりやすい。
【0033】
本発明のゴム用水性コーティング剤を調製するためには、(B)成分は水分散液の状態で用いることが好ましい。(B)成分の水分散液は、例えば、(B1)成分のオルガノポリシロキサンと(B2)成分のアルコキシシランとを混合して(B)成分を得、得られた(B)成分を界面活性剤を用いて水に乳化分散させることによって得ることができる。また、(B1)成分のオルガノポリシロキサンを乳化分散液として調製した場合には、例えば、この乳化分散液に(B2)成分のアルコキシシランを攪拌下添加することによって(B)成分の水分散液を調製することもできる。(B2)成分は有機溶剤または界面活性剤に溶解させた状態で(B1)成分の乳化分散液に添加してもよい。このときの攪拌は、錨型翼、プロペラ羽根、パドル翼などの攪拌機を用いて行うことができる。また、有機溶剤および界面活性剤としては、前記(A)成分の説明中で例示したものを用いることができる。アルコキシシランは、水溶解性に乏しいため、(B1)成分の乳化分散液に添加した当初は大きな液滴の状態で分散しているが、乳化分散している(B1)成分中に徐々に溶解し、取り込まれていく。(B)成分の水分散液において、(B)成分の含有量は好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0034】
界面活性剤の使用量は、(B)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲とするのがよい。該使用量がこの範囲内であると、得られる水性コーティング剤は保存安定性が維持されやすく、また、該水性コーティング剤から得られる硬化皮膜は脆くなりにくく、耐水性が向上しやすい。
【0035】
(B)成分の水分散液は、触媒を含んでいてもよい。(B)成分の水分散液を用いて本発明の水性コーティング剤を調製する場合、該水分散液に触媒が添加されていると、得られる水性コーティング剤の硬化性を効果的に向上させることができる。触媒としては、例えば、前記(A)成分の説明中で例示したものが挙げられる。これらの触媒は、1種単独で使用することも2種以上を併用することもできる。配合量は、触媒としての有効量でよい。触媒の添加は、触媒と(B)成分とを混合して混合物を得、この混合物を水に分散させることによって行ってもよいし、(B)成分の水分散液と触媒とを混合することによって行ってもよい。触媒は、そのままの状態で添加しても、該触媒を有機溶剤または界面活性剤に溶解させて得た溶液の状態で添加しても、該触媒を界面活性剤を用いて水に分散させて得た乳化分散液の状態で添加してもよい。これらの有機溶剤および界面活性剤としては、前記(A)成分の説明中で例示したものを用いることができる。
【0036】
上記の乳化分散は、前記(A)成分の説明中で例示したのと同様の乳化分散機を用いて行うことができる。
【0037】
上記R3で表される非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;およびこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子および/またはアミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した1価の炭化水素基が挙げられる。これらの置換基は非置換であっても置換されていてもよい。置換炭化水素基としては、例えば、N-(β-アミノエチル)- γ-アミノプロピル基、γ-アミノプロピル基、γ-アクリロイルオキシプロピル基、γ-メタクリロイルオキシプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等が挙げられる。オルガノポリシロキサン(B1)中に存在する全R3のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0038】
上記R4としては、例えば、R3について例示した非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基が挙げられる。R4が置換基で置換されている場合、該置換基は非置換であっても置換されていてもよい。
【0039】
上記R5としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が好ましい。
【0040】
オルガノポリシロキサン(B1)の重合度(1分子中の全シロキサン単位数、近似的にはR32SiO2/2単位の数)は、300以上が好ましい。該重合度が300以上であると、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は脆くなりにくく、耐摩耗性が優れたものとなりやすい。
【0041】
オルガノポリシロキサン(B1)の分子末端は、例えば、式:R32(HO)SiO1/2、式:R3(HO)2SiO1/2または式:(HO)3SiO1/2(R3は前記のとおりである。)で表される末端構造を有する。
【0042】
オルガノポリシロキサン(B1)は、得られる水性コーティング剤の硬化性を向上させ、該水性コーティング剤の硬化皮膜の強度を向上させる目的でR6SiO3/2単位(R6は非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素であり、前記R3と同様の具体例を有する。)およびSiO4/2単位の一方または両方を微量含んでもよい。この場合、R6SiO3/2単位およびSiO4/2単位の合計の含有量は、オルガノポリシロキサン(B1)中の全シロキサン単位に対して1モル%以下であることが好ましい。
【0043】
オルガノポリシロキサン(B1)は、公知の方法で製造することが可能である。例えば酸性触媒またはアルカリ性触媒の存在下で、式:[R32SiO]m(R3は前記のとおりであり、mは3〜7の整数である。)で示されるシクロポリシロキサンと、必要に応じて式:R6aSi(OR7)4-a(R6は前記のとおりであり、R7は独立に炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、前記R5と同様の具体例を有し、aは0又は1である。)で示されるアルコキシシランと、水とを平衡化反応に供することにより合成することができる。
【0044】
このようにして得たオルガノポリシロキサン(B1)が高い粘度を有しているか、ゲル状体である場合には、上記のとおりにして合成する代わりに、公知の乳化重合法により乳化分散液として調製することが好ましい。すなわち、式:[R32SiO](R3およびmは前記のとおりである。)で示されるシクロポリシロキサン、および/または式:R8O[R32SiO]nR8(R3は前記のとおりであり、R8は水素原子または炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である場合には前記R5と同様の具体例を有し、nは1〜300の整数である。)で示されるオルガノポリシロキサンと、必要に応じて式:R6aSi(OR7)4-a(R6、R7およびaは前記のとおりである。)で示されるアルコキシシランとを、界面活性剤を用いて水に乳化分散させ、酸性触媒またはアルカリ性触媒の存在下で平衡化反応により重合反応を進行させ、重合後に中和等の操作により触媒を不活性化させることにより、オルガノポリシロキサン(B1)の水分散液を容易に得ることができる。界面活性剤としては、前記(A)成分の説明中で例示したものを用いることができる。酸性触媒としては、例えば、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸等の酸型界面活性剤;塩酸;硫酸;メタンスルホン酸;トリフロロメタンスルホン酸が挙げられる。アルカリ性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。酸性触媒のうち、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸等の酸型界面活性剤は、酸性触媒能に加えて界面活性能も発揮する。
【0045】
アルコキシシラン(B2)としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)- γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)- γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。本発明の水性コーティング剤の硬化性の点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)- γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)- γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0046】
アルコキシシラン(B2)の配合量は、オルガノポリシロキサン(B1)中の水酸基1.0モルに対してアルコキシシラン(B2)中のアルコキシ基の量が、好ましくは0.8モル以上(例えば、0.8〜100モル)、より好ましくは1.0モル以上(例えば、1.0〜100モル)となる量である。前記配合量がこの範囲内であると、得られる水性コーティング剤は硬化性が十分なものになりやすい。これに加え、アルコキシシラン(B2)の配合量は、オルガノポリシロキサン(B1) 100質量部に対して30質量部以下(例えば、0.1〜30質量部)であることが好ましい。前記配合量がこの範囲内であると、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は脆いものとなりにくい。
【0047】
(B)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の合計に対し、通常、5〜40質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。該配合量が5質量%未満であると、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は脆いものとなり、耐摩耗性が低下する場合がある。該配合量が40質量%を超えると、得られる硬化皮膜は硬度が低下し、耐摩耗性が低下する場合がある。
【0048】
・タイプAデュロメーター硬さ測定用シリコーン皮膜
上記タイプAデュロメーター硬さ測定用のシリコーン皮膜は、(B)成分の水分散液をテフロン(登録商標)製トレイに硬化後の膜厚が1mmになるように注ぎ、25℃で風乾し、さらに105℃で乾燥させることにより得たものである。風乾時間は20〜50時間程度でよく、乾燥時間は10〜30分程度でよい。上記シリコーン皮膜を形成させるために用いる(B)成分の水分散液は上記と同様にして調製することができる。
【0049】
[(C)成分]
(C)成分は、本発明の水性コーティング剤から得られる硬化皮膜の表面平滑性を向上させる成分であり、融点が100℃以上であるか、もしくは融点を有しない、体積平均粒径が1〜40μmである樹脂微粒子もしくはゴム微粒子またはこれらの組み合わせである。(C)成分は、1種単独で使用することも2種以上を併用することもできる。
【0050】
本発明のゴム用水性コーティング剤は、基材となるゴム材料に塗布された後、加温により硬化してコーティング膜を形成するものであるが、(C)成分の微粒子の融点が低いと加温時に(C)成分の粒子形状が変形して、得られる硬化皮膜の表面平滑性が低下する場合がある。また、前記硬化皮膜でコーティングされたゴム物品が暑い環境下で使用されると、同様に(C)成分の粒子形状が変形して、該硬化皮膜の表面平滑性が低下する場合がある。よって、(C)成分は、融点が通常100℃以上、好ましくは150℃以上であるか、または融点を有しないものである。
【0051】
(C)成分の硬度が高いと、得られる硬化皮膜が擦れ合う相手の材料表面を傷つけてしまう恐れがあるため、(C)成分は硬度が比較的低い樹脂またはゴムで構成されていることが好ましい。(C)成分の硬度を直接測定することはできないが、その目安としては、(C)成分の原料を硬化させて得た硬化物の硬度を用いることができる。具体的には、この硬化物のJIS K6253に規定されているタイプAデュロメーター硬さが10〜90であることが好ましい。(C)成分の原料としては、(C)成分がシリコーンゴム微粒子である場合は、例えば、該シリコーンゴム微粒子の原料として用いられる硬化性液状シリコーンが挙げられる。
【0052】
(C)成分の微粒子の体積平均粒径は、通常、1〜40μm、好ましくは2〜20μmである。該体積平均粒径が1μm未満では、得られる硬化皮膜の表面平滑性が悪くなる場合があり、該体積平均粒径が40μmより大きいと、得られる硬化皮膜は強度が低下し耐摩耗性が悪くなる場合がある。微粒子の形状は、得られる硬化皮膜の耐摩耗性がよくなることから、球状であることが好ましい。
【0053】
上記条件を満たす微粒子であれば、(C)成分の材質は特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;アクリル樹脂;アクリルウレタン樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエチレン樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂;アクリルゴム;ウレタンゴム;シリコーンゴム等が挙げられるが、得られる硬化皮膜の耐摩耗性が良好なことから、シリコーンゴムが好ましい。
【0054】
(C)成分がシリコーンゴム微粒子である場合、該シリコーンゴム微粒子は、式:R2SiO2/2で示される単位を有する線状の重合体が架橋された構造の架橋物を含み、ゴム弾性を有するものであれば、ケイ素原子に結合している有機基、該架橋物の分子構造などは特に限定されない。
【0055】
(C)成分は公知の方法によって水分散液として製造することができる。特に、球状シリコーンゴム微粒子の水性乳濁液は、例えば、硬化性液状シリコーンを界面活性剤を用いて水に乳化分散させた後、硬化させることにより得ることができる。(C)成分の水分散液において、(C)成分の含有量は好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0056】
前記硬化性液状シリコーンの硬化機構は、≡SiOH基どうしの縮合反応、≡SiOH基と≡SiOR基との縮合反応、≡SiOHと≡SiHとの縮合反応などの≡SiOH基と他の反応性基との縮合反応による硬化;≡SiCH=CH2基と≡SiH基との付加反応による硬化;アミノ基とエポキシ基との反応による硬化;紫外線硬化などのいずれの反応機構でもよいが、水分散液として得られる(C)成分の保存安定性や得られる水性コーティング剤の硬化性などの点から、≡SiCH=CH2基と≡SiH基との付加反応による硬化が適している。
【0057】
前記硬化機構が≡SiCH=CH2基と≡SiH基との付加反応による硬化である場合、原料の硬化性液状シリコーンは、1分子中にケイ素原子に結合しているアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと1分子中にケイ素原子に結合している水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物であればよく、その付加反応には白金触媒を用いればよい。
【0058】
硬化性液状シリコーンを水に乳化分散させるのに用いる界面活性剤は、特に限定はされず、前記(A)成分の説明中で例示したものが挙げられる。界面活性剤の使用量は、硬化性液状シリコーン100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲とするのがよい。該使用量がこの範囲内であると、適切な粒径の微粒子を得ることが容易であり、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は脆くなりにくく、耐水性が向上しやすい。乳化分散は、前記(A)成分の説明中で例示したのと同様の乳化分散機を用いて行うことができる。
【0059】
硬化性液状シリコーンを水に乳化分散させた後、ヒドロシリル化触媒として公知の白金化合物またはその溶液を加えて該シリコーンを硬化させることにより、上記のシリコーンゴム微粒子を調製することができる。白金化合物またはその溶液は、前記該シリコーンの乳化分散液に対して良好な分散性を示さない場合には、界面活性剤に溶解して添加すればよい。
【0060】
シリコーンオイル、シラン、有機系粉末、無機系微粉末などを予め原料の硬化性液状シリコーンに配合しておくことにより、これらをシリコーンゴム微粒子中に含有させることもできる。
【0061】
(C)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の合計に対し、通常、10〜50質量%であり、好ましくは15〜40質量%である。該配合量が10質量%未満であると、得られる水性コーティング剤の硬化皮膜は表面平滑性が低下する場合がある。該配合量が50質量%を超えると、得られる硬化皮膜は強度が低下し、耐摩耗性が低下する場合がある。
【0062】
[(D)成分]
(D)成分は水であり、上記(A)〜(C)成分を溶解しまたは分散させる媒体である。(D)成分の水は、(A)〜(C)成分おのおのを水溶液または水分散液として調製した場合には、それぞれこの水溶液または水分散液の媒体として導入されるが、部分的に追加配合してもよい。また、(D)成分の水は(A)〜(C)成分とは別に単独で配合してもよい。(D)成分の配合量は、(A)〜(C)成分が溶解しまたは分散することができる量であれば特に限定されないが、本発明のゴム用水性コーティング剤を構成する水性組成物における(A)〜(C)成分の合計の濃度が、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜50質量%となる量である。
【0063】
[その他の成分]
本発明のゴム用水性コーティング剤を構成する水性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じ前記(A)〜(C)成分に加えて、カーボンブラック、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、各種有機あるいは無機顔料、濡れ向上剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等の任意成分を配合してもよい。
【0064】
[ゴム用水性コーティング剤]
本発明のゴム用水性コーティング剤は、上記(A)〜(D)成分を含む水性組成物からなり、上記(A)〜(D)成分および場合によりその他の成分を混合することによって得ることができる。該コーティング剤は、通常、(A)の水溶液または水分散液、(B)成分の水分散液、および(C)成分の水分散液のそれぞれを上述したとおりに調製した後に混合し、更に水が必要な場合には水、および場合によりその他の成分を混合することによって調製される。混合は、従来公知のパドル型、錨型等の撹拌翼を備えた混合撹拌機を用いて行うことができる。
【0065】
[ゴム物品]
本発明のゴム物品は、
ゴム材料からなる基材と、
該基材の表面の少なくとも一部(即ち、一部または全部)を被覆する上記ゴム用水性コーティング剤の硬化皮膜と
を有するゴム物品である。
【0066】
上記ゴム材料としては、例えば、天然ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。上記基材の形態は特に限定されず、多孔質体、硬質体等のいずれの形態であってもよい。
【0067】
本発明のゴム物品は、ゴム材料からなる基材の表面の少なくとも一部に本発明のゴム用水性コーティング剤を塗布した後、加熱により該水性コーティング剤を乾燥、硬化させて該水性コーティング剤の硬化皮膜を形成させることにより得ることができる。本発明のゴム用水性コーティング剤を基材に塗布する方法としては、例えば、ハケ塗り、スプレーコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、ナイフコート等の方法が挙げられる。硬化皮膜は、膜厚が1〜40μm、特に2〜20μmの範囲となるように形成させることが好ましい。
【0068】
本発明のゴム用水性コーティング剤から得られる硬化皮膜は、ゴム材料からなる基材との密着性、ならびに耐摩耗性および表面平滑性に優れたものである。よって、本発明のゴム物品は、その表面の少なくとも一部が耐摩耗性および表面平滑性に優れたものとなることから、自動車用ウェザーストリップ材料、自動車用グラスラン材料、Oリング、ガスケット、各種パッキン等のシール材料、ゴムホース材料等として有用である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、濃度および含有率を表す「%」は「質量%」を示す。また、特に断りがない限り、操作は室温にて行った。
【0070】
[評価方法]
1.表面平滑性
図1は、実施例および比較例において硬化皮膜の表面平滑性を評価するために使用される試験体1を示す斜視図である。図1に示すとおり、片面が水性コーティング剤でコーティングされた2枚のEPDM製シート2,2'(10mm×50mm、厚さ2mm)のコーティングがされていない面に両面テープを貼り、正方形の鉄板3(50mm×50mm)の対向する辺に沿ってそれぞれ貼り付けて試験体1を作成した。この鉄板3の残る辺の一方に近い位置には穴4が開けられており、穴4には試験片1を引っ張ることができるようにひも5が通されている。
図2は、図1に示す試験体1を用いて動摩擦係数を測定する方法を示す図である。図2に示すとおり、この試験体1をEPDM製シート2,2'面が下側となるようにガラス板6の上に載せ、更に該試験体1の上側の面におもり7を載せて荷重1kg重(9.8N)をかけて、引っ張り速度100mm/分の条件で、ガラス板6の上をひも5により図中矢印8の方向へ水平に引っ張った。このときのEPDM製シート2,2'のコーティング面とガラス板6との間の動摩擦係数を測定した。
【0071】
2.密着性
水性コーティング剤でコーティングされたEPDM製シート(20mm×50mm、厚さ2mm)のコーティング面を軍手をはめた人差し指で直線的に往復させて強く擦り、コーティング膜が脱落するか否か、10往復毎に(最大30往復まで)観察した。結果は、脱落が観察されなかったときは「脱落せず」と表記し、脱落が観察されたときはそのときの往復回数として表記する。
【0072】
3.耐摩耗性
図3は、実施例および比較例において硬化皮膜の耐摩耗性を測定する方法を示す図である。図3に示すように、半方半円形状で図示の寸法を有し、紙ヤスリAA80番で表面研磨したガラスセル9の円形側端面を、水性コーティング剤でコーティングされたEPDM製シート10(15mm×150mm、厚さ2mm)のコーティング面の上に線幅5mmで線接触させて載せた。このガラスセル9にスラスト荷重350g重(3.4N)をかけながら、摩擦速度60往復/分,摩擦ストローク70mmの条件で前記コーティング面との往復摩擦を行い、EPDM製シートのコーティング面に削れが生じているか否か、1000往復までは100往復毎に、1000往復よりも後は500往復毎に観察した。結果は、削れが観察されたときの往復回数として表記する。
【0073】
[(A)成分]
・A−1の水溶液
式:H2NC3H6SiO3/2で示される単位からなり、分子末端が水酸基であるオルガノポリシロキサンA−1および触媒成分として酢酸ナトリウムを水に溶解させ水溶液を得た。105℃で3時間加熱して該水溶液から水を揮発させることにより測定した不揮発分の含有率は34%(不揮発性シリコーン分33.8%、酢酸ナトリウム0.2%)であった。
【0074】
A−1の水溶液を表面が清浄な磨き鋼板に硬化後の膜厚が20μmになるように塗工し、150℃で10分乾燥させた。得られた硬化皮膜について、JIS K5400に準ずる鉛筆硬度を測定したところ、6Hであった。
【0075】
・A−2の水分散液
式:CH3SiO3/2で示される単位と式:(CH32SiO2/2で示される単位とからなり、モル比:CH3SiO3/2/(CH32SiO2/2が65/35であり、分子末端が水酸基であるオルガノポリシロキサンA−2のエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート溶液(質量比:A−2/エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート=83/17)530g、乳化剤として「ノイゲンXL-40」(商品名、第一工業製薬(株)製、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB=10.5)25g、「ノイゲンXL-400」(商品名、第一工業製薬(株)製、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB=18.4)25g、及び「ニューコール291M」(商品名、日本乳化剤(株)製、アルキルスルホコハク酸ソーダ75%溶液)5gならびに脱イオン水40gを、1リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモディスパーを用いて5分間攪拌し、次いで脱イオン水375gを添加し、ホモミキサーを用いて均一になるまで攪拌し、青白色なエマルジョンを得た。
【0076】
次に、得られたエマルジョンに、触媒として「ネオスタンU-830」(商品名、日東化成(株)製、ジオクチル錫ジバーサテート)3gと、その分散剤として「エマルゲン109P」(商品名、花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB=13.6)3gとの混合物を添加し、錨型攪拌翼にて30分攪拌した後、24時間静置し、A−2の水分散液を得た。105℃で3時間加熱して該水分散液から水を揮発させることにより測定した不揮発分の含有率は49%(不揮発性シリコーン分44%、その他の不揮発分5%)であった。
【0077】
A−2の水分散液を表面が清浄な磨き鋼板に硬化後の膜厚が20μmになるように塗工し、150℃で10分乾燥した。得られた硬化皮膜について、JIS K5400に準ずる鉛筆硬度を測定したところ、6Hであった。
【0078】
・A−3の水分散液
A−2の代わりに、式:CH3SiO3/2で示される単位からなり、分子末端が水酸基であるオルガノポリシロキサンA−3を用いた以外は、A−2の水分散液の調製方法と同様にしてA−3の水分散液を得た。105℃で3時間加熱して該水分散液から水を揮発させることにより測定した不揮発分の含有率は49%(不揮発性シリコーン分44%、その他の不揮発分5%)であった。
【0079】
A−3の水分散液を表面が清浄な磨き鋼板に硬化後の膜厚が20μmになるように塗工し、150℃で10分乾燥した。得られた硬化皮膜について、JIS K5400に準ずる鉛筆硬度を測定したところ、6Hであった。
【0080】
[(B)成分]
・B-1の水分散液
オクタメチルシクロテトラシロキサン500g、乳化剤兼重合触媒として「ネオペレックスGS-P」(商品名、花王(株)製、ドデシルベンゼンスルホン酸)10g、および脱イオン水100gを1リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて10分間攪拌し、次いで脱イオン水390gを追加し、均一になるまで攪拌した。その後、圧力30MPaで高圧ホモジナイザーに2回通すことにより、白色のエマルジョンを得た。このエマルジョンを撹拌装置、温度計および還流冷却器を備えた容量1リットルのガラスフラスコに移し、70℃で6時間反応させ、15℃で12時間熟成した後に、10質量%炭酸ナトリウム水溶液18gを添加し、pH=6.8に中和した。
【0081】
次に、これに、ビニルトリエトキシシラン15gを添加し、錨型攪拌翼で1時間攪拌し、さらに触媒として「ネオスタンU-830」3gと、その分散剤として「エマルゲン109P」3gとの混合物を添加し、錨型攪拌翼にて30分攪拌した後、24時間静置し、オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとの組み合わせであるB−1の水分散液を得た。105℃で3時間加熱して該水分散液から水を揮発させることにより測定した不揮発分の含有率は47%(不揮発性シリコーン分45%、その他の不揮発分2%)であった。
【0082】
テフロン(登録商標)製トレイに、B−1の水分散液を硬化後の厚みが1mmになる量だけ注ぎ、25℃で24時間風乾し、さらに105℃で30分乾燥させた。得られたシートについて、JIS K6253に規定されているタイプAデュロメーター硬さを測定したところ、12であった。
【0083】
・B-2の水分散液
1リットルのガラスビーカーに仕込んだ原料として更にフェニルトリエトキシシラン2gを用い、追加で添加した脱イオン水の量を390gから388gに変更し、ビニルトリエトキシシラン15g単独の代わりにN-(β-アミノエチル)- γ-アミノプロピルトリメトキシシラン10gおよびビニルトリエトキシシラン15gを用いた以外は、B-1の水分散液の調製方法と同様にしてB−2の水分散液を得た。105℃で3時間加熱して該水分散液から水を揮発させることにより測定した不揮発分の含有率は48%(不揮発性シリコーン分46%、その他の不揮発分2%)であった。
【0084】
テフロン(登録商標)製トレイに、B−2の水分散液を硬化後の厚みが1mmになる量だけ注ぎ、25℃で24時間風乾し、さらに105℃で30分乾燥させた。得られたシートについて、JIS K6253に規定されているタイプAデュロメーター硬さを測定したところ、12であった。
【0085】
[(C)成分]
・C−1の水分散液
下記式(1)で示される、粘度が10mPa・sのメチルビニルポリシロキサン420gと下記式(2)で示される、粘度が200mPa・sのメチルハイドロジェンポリシロキサン113gとを容量1リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて5分撹拌し混合した。得られた混合物に「エマルゲン109P」2gと脱イオン水40gとを加え、ホモミキサーを用いて15分間撹拌し、次いで、脱イオン水423gを追加し、均一になるまで攪拌したところ、均一な白色エマルジョンが得られた。このエマルジョンを錨型撹拌装置の付いた容量1リットルのガラスフラスコに移し、触媒として塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)1.5gと、その分散剤として「エマルゲン109P」1gとの混合物を添加し、室温で24時間撹拌し、シリコーンゴム微粒子C−1の水分散液を得た。105℃で3時間加熱して該水分散液から水を揮発させることにより測定した不揮発分の含有率は53%(不揮発性シリコーン分53%)であった。
【0086】
C−1の水分散液の2gをアルミシャーレに取り、105℃で30分間乾燥させたところ、得られた乾燥物は粉末状であった。C−1の体積平均粒径をマルチサイザー3(商品名、コールター社製)を用いて測定したところ4μmであった。
【0087】
C−1の調製で用いたメチルビニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、および塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液を前記の配合割合で混合し、アルミシャーレに高さが8mmになる量だけ注ぎ25℃で24時間静置して乾燥させた。得られた硬化物について、JIS K6253に規定されているタイプAデュロメーター硬さを測定したところ、72であった。
【0088】
【化1】

【0089】
【化2】

【0090】
・C−2の水分散液
下記式(3)で示される、粘度が600mPa・sのメチルビニルポリシロキサン500gと下記式(4)で示される、粘度が30mPa・sのメチルハイドロジェンポリシロキサン20gとを容量1リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて5分撹拌し混合した。得られた混合物に「エマルゲン109P」3gと脱イオン水55gとを加え、ホモミキサーを用いて15分間撹拌し、次いで、脱イオン水480gを追加し、均一になるまで攪拌したところ、均一な白色エマルジョンが得られた。このエマルジョンを錨型撹拌装置の付いた容量1リットルのガラスフラスコに移し、触媒として塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)0.8gと、その分散剤として「エマルゲン109P」1.5gとの混合物を添加し、室温で12時間撹拌し、シリコーンゴム微粒子C−2の水分散液を得た。105℃で3時間加熱して該水分散液から水を揮発させることにより測定した不揮発分の含有率は52%(不揮発性シリコーン分52%)であった。
【0091】
C−2の水分散液の2gをアルミシャーレに取り、105℃で30分乾燥させたところ、得られた乾燥物は粉末状であった。C−2の体積平均粒径をマルチサイザー3(商品名、コールター社製)を用いて測定したところ5μmであった。
【0092】
C−2の調製で用いたメチルビニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、および塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液を前記の配合割合で混合し、アルミシャーレに高さが8mmになる量だけ注ぎ25℃で24時間静置して乾燥させた。得られた硬化物について、JIS K6253に規定されているタイプAデュロメーター硬さを測定したところ、30であった。
【0093】
【化3】

【0094】
【化4】

【0095】
[実施例1〜6、比較例1〜6]
上記の(A)成分の水溶液又は水分散液、(B)成分の水分散液、(C)成分の水分散液、および脱イオン水を、表1または表2に示した配合量で混合して水性コーティング剤を調製した。得られた水性コーティング剤をEPDM製シート(厚さ2mm)の片面または両面に刷毛で塗布し、150℃に調節した熱風循環式恒温槽内に10分間放置して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜について、上記の評価方法にしたがって表面平滑性、密着性および耐摩耗性を評価した。その結果を表1または表2に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
比較例から明らかなとおり、(A)〜(C)成分の少なくとも1種の質量比が、本発明の範囲外である場合には、表面平滑性、密着性および耐摩耗性のいずれかが乏しいものになり、特に(A)成分の質量比が小さい場合には、密着性の低下が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施例および比較例において硬化皮膜の表面平滑性を評価するために使用される試験体を示す斜視図である。
【図2】図1に示す試験体を用いて動摩擦係数を測定する方法を示す図である。
【図3】実施例および比較例において硬化皮膜の耐摩耗性を測定する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 試験体
2,2' EPDM製シート
3 鉄板
4 穴
5 ひも
6 ガラス板
7 おもり
8 矢印
9 ガラスセル
10 EPDM製シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:その水溶液または水分散液から水を揮発させることによりレジン状のシリコーン皮膜を形成するオルガノポリシロキサン (A)〜(C)成分の合計に対し40〜85質量%、
(B)成分:その水分散液から水を揮発させることによりゴム状のシリコーン皮膜を形成する、(B1)構成単位として式:R32SiO2/2(R3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)で示される単位を含有し、分子末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンと(B2)式:R4aSi(OR5)4-a(R4は非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、R5は独立に炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、aは0又は1である。)で示されるアルコキシシランとの組み合わせ (A)〜(C)成分の合計に対し5〜40質量%、
(C)成分:融点が100℃以上であるか、もしくは融点を有しない、体積平均粒径が1〜40μmである樹脂微粒子もしくはゴム微粒子またはこれらの組み合わせ (A)〜(C)成分の合計に対し10〜50質量%、ならびに
(D)成分:水
を含む水性組成物からなるゴム用水性コーティング剤。
【請求項2】
(A)成分が、構成単位として式:R1SiO3/2(R1は非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)で示される単位および式:R22SiO2/2(R2は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)で示される単位をモル比:R1SiO3/2/R22SiO2/2=100/0〜50/50で含有し、分子末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンである請求項1に係るゴム用水性コーティング剤。
【請求項3】
(A)成分中の全R1と全R2の合計の2〜100モル%が非置換または置換のアミノ基で置換された1価炭化水素基である請求項2に係るゴム用水性コーティング剤。
【請求項4】
(C)成分が球状シリコーンゴム微粒子である請求項1〜3のいずれか一項に係るゴム用水性コーティング剤。
【請求項5】
ゴム材料からなる基材と、
該基材の表面の少なくとも一部を被覆する請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム用水性コーティング剤の硬化皮膜と
を有するゴム物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−292954(P2009−292954A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148594(P2008−148594)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】