説明

ゴム組成物のための可塑化系

ジエンゴム組成物を可塑化するための本発明の可塑化系は、MES油又はTDAE油及びC5/ビニル芳香族留分樹脂、特にC5留分とスチレンのコポリマーをベースにしている。該ゴム組成物は、改善された耐摩耗性及び耐カット性を示し、並びに少なくとも1種の型のジエンエラストマー、補強充填剤、網状化系、及び5〜35pceのMES油又はTDAE油及び5〜35pceの該樹脂を含有する可塑化系をベースにしている(pce=エラストマー質量の百分率)。本発明の組成物を作製する方法、自動車の地面保持システムのため、特にタイヤ及びそれらのベルトスレッドのための完成品又は半-完成品を製造するためのそれらの使用も、明らかにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤ又はタイヤの半-完成品の製造に関して企図されたゴム組成物に関する。これはより特定すると、そのような組成物を可塑化するために使用することができる可塑化系に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのためのゴム組成物は、公知の方法で、ある種のジエンエラストマーを調製又は合成するため、生状態での該組成物の加工性、並びに硬化状態でのそれらの使用特性の一部、例えばタイヤトレッドの場合、濡れた路面上のそれらのグリップ又は同じくそれらの耐摩耗性及び耐カット性を改善するために使用される可塑剤を含有する。
非常に長い期間、これは本質的に石油に由来する油であり、及びこの可塑剤の機能を実行するために使用されるDAE(「分留芳香族抽出物(Distillate Aromatic Extracts)」)油の名称で知られている高級芳香族油であった。多くのタイヤ製造業者は、今日環境上の理由から、これらのDAE油を、「非芳香族」型の代替油により、特に非常に低レベルのポリ芳香族(約20〜50倍少ない)により特徴付けられる「MES」(「中抽出溶媒和物(Medium Extracted Solvates)」)又は「TDAE」(「処理された分留芳香族抽出物(Treated DAE)」)として公知の油により、次第に置き換えることを想起している。
【0003】
本出願者らは、タイヤのゴム組成物におけるDAE芳香族油のこれらのMES油又はTDAE油による代替は、予想外に該組成物の耐摩耗性及び耐カット性の低下に反映され、この低下は、ある適用において、特にタイヤトレッドのチッピングの問題に関して、全般的に許容し難いものでさえある可能性があることに気がついた。
【0004】
「チッピング」(又は「スケーリング」)は、ある攻撃的走行条件下での、トレッドの構成成分「ゴム」(又はゴム組成物)から引き剥がされた、鱗形の、薄層状表面小片に相当する、公知の損傷のメカニズムである。この問題点には特に、その一部は石が多く及び比較的攻撃的であるような様々な種類の土地を走行する、オフロード車両又は建築もしくは土木現場において認められる車両のタイヤが直面し;この問題点は、例えば、特許文献EP-A-0 030 579、FR-A-2 080 661(又はGB-A-1 343 487)において、又は同じく特許出願US-A-3927144及びUS-A-4968764において、これを克服するためのいくつかの解決策と共に開示されており、この問題点を克服するために、これらの特許はシクロペンタジエン-ベースの炭化水素樹脂の使用を推奨している。
【0005】
それらの研究を継続する上で、本出願人らは、これらのMES油又はTDAE油の一部の、別の特定の可塑剤による代替は、単に前述の問題点を解決するのみではなく、更に驚くべきことに、従来の芳香族油を可塑剤として使用するゴム組成物の耐摩耗性及び耐カット性を改善もすることを発見した。
【発明の開示】
【0006】
従って本発明の第一の目的は、少なくともジエンエラストマー、補強充填剤、可塑化系及び架橋系をベースにしたゴム組成物であり、該可塑化系が(phr=エラストマー100部当たりの質量部):
−5〜35phrのMES油又はTDAE油;
−5〜35phrのC5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂;を含有することを特徴とする、組成物である。
【0007】
別の本発明の目的は、改善された耐摩耗性及び耐カット性を有するゴム組成物の調製法であり、この組成物は、ジエンエラストマー、補強充填剤、可塑化系及び架橋系をベースにし、該プロセスは:
・第一の「非生産的」段階と称される期間に、少なくとも補強充填剤及び可塑化系を、最高温度110℃〜190℃に到達するまでに、1又は複数回これら全てを熱力学的に混練することにより、ジエンエラストマー中に混入する工程;
・混合物全体を温度100℃未満に冷却する工程;
・第二の「生産的」段階と称される期間に、架橋系を引き続き混入する工程;
・最高温度110℃未満に到達するまで全てを混練する工程;
を含み、並びに、該可塑化系が:
−5〜35phrのMES油又はTDAE油;
−5〜35phrのC5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂;を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明はそれ自体、ジエンゴム組成物の可塑化に使用することができる可塑化系であり、この系はMES油又はTDAE油及びC5留分/ビニル芳香族コポリマーから形成された樹脂を組合せて含むもの、並びにジエンゴム組成物を可塑化するためのそのような系の使用にも関する。
好ましい態様において、C5留分/ビニル芳香族コポリマーで形成された樹脂は、30%未満であるシクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエンの質量分率を含み、このことは、湿った地面のグリップと転がり抵抗の妥協(compromise)にタイヤ技術分野の業者が公知の方法で関連づけている低温ヒステリシス/高温ヒステリシスの妥協にとって好ましいことが証明されている。
【0009】
別の本発明の目的は、任意の自動車接地システム、例えばタイヤ、タイヤのための内部安全支持体、ホイール、ゴムばね、弾性継手、他のサスペンション要素及び振動減衰装置などのために企図されたゴムで作製された完成品又は半-完成品の製造のための本発明の組成物の使用である。
本発明の特定の目的は、タイヤ又はこれらのタイヤについて企図されたゴムで作製された半-完成品の製造のための本発明の組成物の使用であり、これらの半-完成品は好ましくは、タイヤの前述の領域の間の結合又は境界面を提供するために企図された、トレッド、クラウン部補強プライ、サイドウォール、カーカス部補強プライ、ビード、プロテクター、下層、ゴムブロック及び他の内部ゴム、特にデカップリングゴムからなる群より選択される。
【0010】
本発明のより特定の目的は、特に改善された耐カット性及び耐チッピング性を示すタイヤトレッドの製造のための本発明の組成物の使用である。
本発明の別の目的は、本発明の弾性組成物を含有する、ゴム自身で製造された完成品及び半-完成品、特にタイヤ及びタイヤ用の半-完成品である。本発明のタイヤは、特に乗用車、例えば二輪自動車(オートバイ、自転車)、バン、大型車両から選択される商用車、すなわち地下鉄、バス、大型道路輸送車両(トラック、トラクター、トレーラー)又はオフロード車両、大型農業車両又は土工機械、飛行機、及び他の輸送用もしくは出荷用(handling)車両について企図されている。
本発明及びその利点は、以下の詳細な説明及び例証としての態様を手掛かりに、より容易に理解されるであろう。
【0011】
I. 測定及び試験
ゴム組成物は、以下に示したように、硬化後に特徴付けられる。
I-1. ショアA硬度
硬化後の組成物のショアA硬度は、標準規格ASTM D 2240-86に従い評価される。
【0012】
I-2. 引張試験
これらの試験は、弾性応力及び破断時の特性を決定することを可能にする。特に記さない限りは、これらは、1988年9月の仏国標準規格NF T 46-002に従い実行される。公称割線弾性率(又は見かけの応力、MPa)は、10%伸び率における(M10として記録)、100%伸び率(M100)及び300%伸び率(M300)における、二次伸び(second elongation)(すなわち、順応(accommodation)サイクル後)において測定される。
【0013】
I-3. 動的特性
動的特性ΔG*及びtan(δ)maxは、標準規格ASTM D 5992-96に従い、粘度計(Metravib VA4000)において測定される。-80℃〜+100℃の温度掃引時の、静止応力0.34MPa下で、周波数10Hzで単純な交互の(simple alternating)正弦波形剪断応力に曝された、加硫された組成物試料(厚さ2mm及び断面積315mm2の円筒状試験片)の反応が記録される:観察されたtanδの最大値が記録される(すなわち、「温度」でのtan(δ)max)。この組成物試料は、温度23℃で、0.1%から50%(外向きサイクル)、その後50%から0.1%(回復サイクル)の歪み振幅掃引にも曝される:使用が生じた結果は、動的複素剪断弾性率(G*)である。0.1%及び50%歪(Payne作用)時の値の間の複素弾性率の差異(ΔG*)は、回復サイクルについて示される。
【0014】
I-4. 耐カット性及び耐チッピング性
ゴム組成物の耐カット性及び耐チッピング性は、そのトレッドが該組成物で構成されているタイヤの走行試験により評価される。
この試験は、下記の2種の連続するサーキットにおいて、中程度の走行速度(60km/h未満)で実行される:
−そのトレッドパターンの構成成分であるゴムスラブに対する切断及び他の表面攻撃の形でトレッドを弱めることが意図された、石の多い(粒子サイズの大きい石)踏み固められた地面で作製されたサーキット上での、第一の走行;
−弱くなった面に沿って剥がれたゴム片(鱗形で)の結果としてのチッピングを「明らかにする」ことが意図された、非常に入り組んだ(convolute)アスファルト面のサーキット上での、第二の走行。
【0015】
この走行試験の終わりに、トレッドの状態が、一方では等級を割り当てる(1から10までの深刻さの尺度に従う)ことにより視覚的に(写真)、他方では喪失重量の測定により、評価される。耐チッピング性は最終的には、相対的総合的等級(参考製品についての100をベースにする)により評価される。
【0016】
II. 発明の詳細な説明
特にタイヤ又はタイヤトレッドの製造に使用することができる本発明のゴム組成物は、少なくともジエンエラストマー、補強充填剤、架橋系及び特定の可塑化系をベースにしている。
表現「ベースにした」組成物とは、使用される様々な構成成分の混合物及び/又は反応生成物を含む組成物を意味すると理解されるべきであり、これらのベースの構成成分の一部は、組成物の製造の様々な相の期間に、特にその架橋もしくは加硫の期間に、互いに、少なくとも一部が、反応し易いか、又は反応することが意図されている。
本説明において、明確に記されない限りは、示された全ての百分率(%)は、質量%である。
【0017】
II-1. ジエンエラストマー
用語「ジエン」エラストマー又はゴムは、公知の方法で、ジエンモノマー(共役してもよくしなくてもよい2個の炭素-炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも一部生じる(1種又は複数が理解されている)エラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味すると理解されるべきである。
【0018】
これらのジエンエラストマーは、以下のふたつの範疇に分類することができる:「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」。用語「本質的に不飽和」とは、一般に、15%(mol%)よりも大きいジエン由来の単位のレベルを有する共役されたジエンモノマー(共役ジエン)から少なくとも一部生じるジエンエラストマーを意味すると理解されるべきであり;従って、ブチルゴムのようなジエンエラストマー、又はジエンの及びEPDM型のα-オレフィンのコポリマーは、先の定義に含まれず、並びに特に「本質的に飽和」されたジエンエラストマー(ジエン由来の単位の低い又は非常に低いレベル、通常15%未満)として説明することができる。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーの範疇において、用語「高度に不飽和の」ジエンエラストマーは、特に50%よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)のレベルを有するジエンエラストマーを意味すると理解されるべきである。
【0019】
これらの定義を前提とし、より特定すると、本発明の組成物において使用することが可能である用語ジエンエラストマーは、以下のものを意味すると理解される:
(a)−4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合により得られる、任意のホモポリマー;
(b)−1個又は複数の共役ジエンの、互いの又は1個もしくは複数の8〜20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物との共重合により得られる、任意のコポリマー;
(c)−エチレン及び3〜6個の炭素原子を有するα-オレフィンの、6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合により得られる、三元コポリマー、例えば、エチレン及びプロピレンの、特に1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボネン又はジシクロペンタジエンなどの前述の非共役ジエンモノマーから得られたエラストマー;
(d)−イソブテン及びイソプレン(ブチルゴム)のコポリマー、並びにこの種のコポリマーのハロゲン化された型、特に塩素化又は臭素化された型。
【0020】
本発明はあらゆる型のジエンエラストマーに適用されるが、タイヤ技術分野の業者は、本発明は好ましくは、本質的に不飽和のジエンエラストマー、特に先の(a)型又は(b)型と共に使用されることを理解するであろう。
以下のものは、特に共役ジエンとして適している:1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1-C5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン又は2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエンなど、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン又は2,4-ヘキサジエンなど。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン、オルト-、メタ-又はパラ-メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン又はビニルナフタレン。
【0021】
これらのコポリマーは、ジエン単位99〜20質量%、及びビニル芳香族単位1〜80質量%を含むことができる。これらのエラストマーは、使用される重合条件、特に改質剤及び/又はランダム化剤の存在又は非存在、並びに使用される改質剤及び/又はランダム化剤の量に左右される任意の微細構造を有することができる。これらのエラストマーは、例えば、ブロック、ランダムブロック、逐次ブロック又はマイクロ逐次ブロックであることができ、並びに分散液中又は溶液中で調製することができ;これらは、カップリング及び/もしくは星形-分枝されてよいか、又はカップリング剤及び/もしくは星形-分枝剤もしくは官能化剤により官能基化されてもよい。
【0022】
以下のものが適している:ポリブタジエン、特に1,2-単位の含量4%〜80%を有するもの、又は80%よりも大きいcis-1,4-単位の含量を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、及び特にスチレン含量5〜50質量%、より特定すると20%〜40%、ブタジエン部分の1,2-結合の含量4%〜65%、及びtrans-1,4-結合の含量20%〜80%を有するもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、特にイソプレン含量5〜90質量%及びガラス転移点(Tg、ASTM D3418に従い測定)-40℃〜-80℃を有するもの、又はイソプレン/スチレンコポリマー、特にスチレン含量5〜50質量%を有し及びTgが-25℃〜-50℃であるもの。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、スチレン含量5〜50質量%及びより特定すると10%〜40%、イソプレン含量15〜60質量%及びより特定すると20%〜50%、ブタジエン含量5〜50質量%及びより特定すると20%〜40%、ブタジエン部分の1,2-単位の含量4%〜85%、ブタジエン部分のtrans-1,4-単位の含量6%〜80%、イソプレン部分の1,2-と3,4-単位の含量5%〜70%、並びにイソプレン部分のtrans-1,4-単位の含量10%〜50%を有するもの、より一般にはTgが-20℃〜-70℃である任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0023】
まとめると、本発明の組成物のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(略号「BR」)、ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーのブレンドからなるからなる高度に不飽和のジエンエラストマーの群から選択されることが好ましい。このようなコポリマーはより好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)及びイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群より選択される。
【0024】
特定の態様において、ジエンエラストマーは、大多数(すなわち50phrよりも多く)はSBRであり、エマルション中で調製されたSBR(「E-SBR」)又は溶液中で調製されたSBR(「S-SBR」)、又はSBR/BR、SBR/NR(もしくはSBR/IR)又は更にBR/NR(もしくはBR/IR)ブレンドのいずれかである。SBRエラストマーの場合、特にスチレン含量20〜30質量%、ブタジエン部分のビニル結合の含量15%〜65%、trans-1,4-結合の含量15%〜75%を有し、及びTgが-20℃〜-55℃であるSBRが使用され;そのようなSBRは有利なことに、好ましくは90%よりも多いcis-1,4-結合を有するBRとのブレンドとして使用されてもよい。
【0025】
別の具体的態様において、ジエンエラストマーは、大多数(50phrを超える)はイソプレンエラストマーである。これは特に本発明の組成物が、タイヤにおいて、ある種のトレッド(例えば商用車のための)の、クラウン部補強プライ(例えばワーキングプライ、保護プライ又はフーププライ)の、カーカス部補強プライの、サイドウォールの、ビードの、プロテクターの、下層の、タイヤの前述の領域の間の境界を提供するゴムブロック及び他の内部ゴムのゴムマトリックスを構成することが企図される場合である。
【0026】
用語「イソプレンエラストマー」は、公知の方法で、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、別の言い方では天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、イソプレンの様々なコポリマー及びこれらのエラストマーのブレンドからなる群より選択されるジエンエラストマーを意味すると理解される。特に言及されるのは、イソプレンコポリマーの中でも、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム-IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)又はイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)である。このイソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴム又は合成cis-1,4-ポリイソプレンであり;好ましくは、これらの合成ポリイソプレンの中でも、90%よりも多い、より好ましくは更に98%よりも多いcis-1,4-結合のレベル(mol%)を有するポリイソプレンが使用される。
【0027】
別の特定の態様では、特にタイヤのサイドウォール又はチューブレスタイヤの気密性のある内部ゴム(又は他の空気-不透過性成分)について企図される場合、本発明の組成物は、少なくとも1種の本質的に飽和されたジエンエラストマー、特に少なくとも1種のEPDMコポリマー又は1種のブチルゴム(任意に塩素化又は臭素化された)を含むことができ、これらのコポリマーは、単独で、又は前述のように高度に不飽和のジエンエラストマー、特にNR又はIR、BR又はSBRとのブレンドのいずれかで使用される。
【0028】
別の本発明の好ましい態様において、ゴム組成物は、-65℃〜-10℃のTgを示す(1種又は複数)の「高Tg」ジエンエラストマー及び-110℃〜-80℃、より好ましくは-105℃〜-90℃のTgを示す(1種又は複数)の「低Tg」ジエンエラストマーのブレンドを含む。高Tgエラストマーは好ましくは、S-SBR、E-SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%よりも多いcis-1,4-構造のレベルを示す)、BIR、SIR、SBIR及びこれらのエラストマーのブレンドからなる群より選択される。低Tgエラストマーは好ましくは、少なくとも70%に等しいレベルのブタジエン単位を含み;これは好ましくは、90%よりも多いcis-1,4-構造のレベルを示すポリブタジエン(BR)からなる。
【0029】
本発明の特定の態様において、ゴム組成物は、例えば40〜100phr、特に50〜100phrの高Tgエラストマーを、0〜60phr、特に0〜50phrの低Tgエラストマーとのブレンドとして、例えば溶液中に調製されたスチレン及びブタジエンの1種又は複数のコポリマー100phrを含有する。
別の本発明の特定の態様において、本発明の組成物のジエンエラストマーは、90%よりも多いcis-1,4-構造のレベルを示すBR(低Tgエラストマーとして)の、S-SBR又はE-SBR(高Tgエラストマーとして)とのブレンドを含有する。
【0030】
本発明の組成物は、単独のジエンエラストマー、又はいくつかのジエンエラストマーのブレンドを含むことができ、これは、ジエンエラストマー、又はジエンエラストマー以外の任意の型の合成エラストマーと、もしくはエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーとさえ組合せて使用されるエラストマーであることが可能である。
【0031】
II-2. 補強充填剤
タイヤの製造に使用することができるゴム組成物を補強するその能力について公知である補強充填剤のいずれかの種類、例えばカーボンブラックのような有機充填剤、又はカップリング剤と会合されるシリカのような補強用無機充填剤を使用することができる。
全てのカーボンブラック、特にタイヤにおいて常用されるHAF、ISAF又はSAF型のブラック(「タイヤ-等級」ブラック)が、カーボンブラックとして適している。これらの中でも、より詳細に言及されるのは、補強用カーボンブラック100、200もしくは300シリーズ(ASTM等級)、例えばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347もしくはN375ブラックなどであるか、又は更に目標とされた用途に応じて、より高級シリーズのブラック(例えばN660、N683又はN772)でもある。
【0032】
用語「補強用無機充填剤」とは本願明細書において、定義により、「白色」充填剤、「透明」充填剤又は更に「非-黒色充填剤」としても知られる、その色及びその起源(天然又は合成)を問わず、任意の無機充填剤又は鉱物性充填剤を意味すると理解されるべきであり、これはカーボンブラックとは対照的に、それ単独により、中間カップリング剤以外の手段を使用せずに、タイヤ製造が意図されたゴム組成物を補強することが可能であり、別の表現をすると、その補強の役割において、従来のタイヤ-等級カーボンブラックと置き換わることが可能であり;そのような充填剤は一般に、公知の方法で、その表面のヒドロキシル(-OH)基の存在により特徴付けられる。
【0033】
補強用無機充填剤が提供される物理的状態は重要ではなく、これは、粉末形、マイクロビーズ形、顆粒形、ボール形、又は他の適宜緻密化された形のいずれかである。当然、用語補強用無機充填剤は、特に以下に説明されたような高分散性シリカ及び/又はアルミニウムを含む充填剤である、様々な補強用無機充填剤の混合物を意味することも理解される。
【0034】
ケイ素を含む鉱物充填剤、特にシリカ(SiO2)、又はアルミニウムを含む型の鉱物充填剤、特にアルミナ(Al2O3)が、補強用無機充填剤として特に適している。使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強用シリカ、特にBET表面及びCTAB比表面が両方とも450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gを示す任意の沈降シリカ又は熱分解法シリカであることができる。高分散性(「HD」)沈降シリカ、例えばDegussaから入手されるUltrasil 7000及びUltrasil 7005シリカ、Rhodiaから入手されるZeosil 1165MP、1135MP及び1115MPシリカ、PPGから入手されるHi-Sil EZ150Gシリカ、Huberから入手されるZeopol 8715、8745及び8755シリカ、又は国際公開公報第03/16387号(もしくはUS2005/0004297)に開示された大きい比表面を有するシリカなどが言及されている。例えば補強用アルミナであるBaikowskiから入手される「Baikalox」、「A125」又は「CR125」アルミナ、Condeaから入手される「APA-100RDX」アルミナ、Degussaから入手される「Aluminoxid C」アルミナ、又はSumitomo Chemicalsから入手される「AKP-G015」アルミナが言及されている。
【0035】
同じく、使用することが可能である他の無機充填剤の例として、補強用(酸化)水酸化アルミニウム、酸化チタン又はシリコンカーバイドが言及されている(例えば国際公開公報第02/053634号又はUS2004/0030017参照のこと)。
本発明の組成物が、低い転がり抵抗性を持つタイヤトレッドのために企図された場合、使用される補強用無機充填剤は、特にそれがシリカである場合、好ましくはBET表面45〜400m2/gを有し、より好ましくは60〜300m2/gを有する。
【0036】
好ましくは、補強充填剤(カーボンブラック及び/又は補強用無機充填剤)の総レベルは、20〜200phr、より好ましくは30〜150phrであり、最適な値は、公知の方法で、目標の具体的用途に応じて異なり;自転車のタイヤに関して予想される補強剤のレベルは、例えば、オートバイのタイヤ、乗用車のタイヤ又は大型車のような商業車のタイヤなどの、持続様式で高速走行することが可能であるタイヤに関して必要とされるレベルよりも低い。
【0037】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーとカップリングすることに関して、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマー、特に二官能性オルガノシラン又はポリオルガノシロキサンの間に、化学的及び/又は物理的性質の十分な連結を提供することが意図された、少なくとも二官能性カップリング剤(又は結合剤)が、公知の方法で、使用される。
例えば国際公開公報第03/002648号(又はUS2005/0016651)及び国際公開公報第03/002649号(又はUS2005/0016650)に開示されたような、それらの特異的構造に応じて「対称性」又は「非対称性」と称される特にシランポリスルフィドが使用される。
【0038】
特に適しているのは、以下の定義に限定されない、下記一般式(I)を有する、いわゆる「対称性」ポリ硫化されたシランである:
(I) Z-A-Sn-A-Z
(式中:-nは、2〜8(好ましくは2〜5)の整数であり;
-Aは、二価の炭化水素ラジカル(好ましくは、C1-C18アルキレン基又はC6-C12アリーレン基であり、より特定するとC1-C10、特にC1-C4、アルキレン、特にプロピレンである。)であり;
-Zは、下記式のひとつに対応し;
【0039】
【化1】

【0040】
(式中、-R1ラジカルは、非置換又は置換の、互いに同じ又は異なる、C1-C18アルキル、C5-C18シクロアルキル又はC6-C18アリール基を表し(好ましくは、C1-C6アルキル、シクロヘキシル又はフェニル基、特にC1-C4アルキル基、より特定するとメチル及び/又はエチルを表す)、
-R2ラジカルは、非置換又は置換の、互いに同じ又は異なる、C1-C18 アルコキシル又はC5-C18シクロアルコキシル基を表す(好ましくはC1-C8アルコキシル及びC5-C8シクロアルコキシルから選択された基、より好ましくは更に、C1-C4アルコキシルから選択された基、特にメトキシル及びエトキシルを表す)。)。
【0041】
前記式(I)に相当するアルコキシシランポリスルフィドの混合物、特に市販されている有用な混合物の場合、指標「n」の平均値は、好ましくは2〜5の、より好ましくは4近傍の分数である。しかし本発明は有利なことに、例えばアルコキシシランジスルフィド(n=2)により実行することもできる。
【0042】
より特定すると、ビス((C1-C4)アルコキシル-(C1-C4)アルキル-シリル-(C1-C4)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)のシランポリスルフィド、例えばビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどの例も言及されている。これらの化合物の中で、TESPTと略される、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、又はTESPDと略される、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが、特に使用されている。好ましい例として、特許出願国際公開公報第02/083782号(又はUS2004/0132880)に開示されたような、ビス(モノ(C1-C4)アルコキシルジ(C1-C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、より特定するとビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも言及されている。
【0043】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤として、特許出願国際公開公報第02/30939号(又は米国特許第6774255号)及び国際公開公報第02/31041号(又はUS2004/0051210)に開示されたような、二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)又はヒドロキシシランポリスルフィド(前記式IにおいてR2=OH)が、特に言及される。
【0044】
本発明のゴム組成物において、カップリング剤の含量は、好ましくは4〜12phr、より好ましくは3〜8phrである。
カップリング剤は、ジエンエラストマーへ、又は補強用無機充填剤へ予めグラフト重合することができる。しかし、特に生状態の組成物のより良い処理のために、補強用無機充填剤にグラフト重合されたか又は遊離の状態(すなわち非グラフト重合)のいずれかでカップリング剤を使用することは好ましい。
【0045】
II-3. 可塑化系
本発明のゴム組成物は、少なくとも以下を含む可塑化系を使用する本質的特徴を有する:
−5〜35phrのMES油又はTDAE油;
−5〜35phrの留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂。
【0046】
MES油及びTDAE油は、当業者に周知であり;例えば、最新の刊行物KGK (Kautschuk Gummi Kunstoffe)(52nd year、No.12/99、pp.799-805)の「Safe Process Oils for Tyres with Low Enviromental Impact」が参照される。従来の芳香族油の代わりとして、このような油の使用を開示している特許出願は、例えばEP-A-1 179 560(又はUS2002/0045697)又はEP-A-1 270 657である。
MES油(これらは「抽出された」又は「水素処理された」型のいずれかである)又はTDAE油の例として、例えばExxonMobilにより「Flexon 683」、又はH&R Europeにより「Vivatec 200」又は「Vivatec 500」、Totalにより「Plaxolene MS」、又はShellにより「Catenex SNR」の名称で販売されている製品に言及することができる。
【0047】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー、特にC5留分/スチレン又はC5留分/C9留分コポリマーで形成された樹脂(用語「樹脂」は、固形化合物についての定義により制限されていることは覚えておかなければならない)は、周知であり;これらは、今日まで、接着剤及び塗料のための増粘剤としての用途において、本質的に使用されているが、タイヤゴム組成物における加工助剤としても使用されている。
C5留分/ビニル芳香族コポリマーは、定義及び公知の方法で、ビニル芳香族モノマーとC5留分のコポリマーである。
例えばスチレン、α-メチルスチレン、又はオルト-、メタ-もしくはパラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、及びC9留分から(又はより一般にC8〜C10留分から)生じる任意のビニル芳香族モノマーが、ビニル芳香族モノマーとして適している。好ましくはビニル芳香族化合物は、スチレン又はC9留分から(もしくはより一般にはC8〜C10留分から)生じるビニル芳香族モノマーである。
【0048】
公知の方法で、用語C5留分(又は例えば各々C9留分)は、石油化学から得られるプロセスから又は石油精製から生じる、5個(又はC9留分の場合は各々9個)の炭素原子を有する化合物を主に含有する任意の蒸留留分を意味すると理解され;例えばC5留分は、限定を伴わない例証として、以下の化合物を含み、その相対的割合は、例えばナフサの起源及びスチームクラッキング法など、それらが得られるプロセスに従い変動し得る:1,3-ブタジエン、1-ブテン、2-ブテン、1,2-ブタジエン、3-メチル-1-ブテン、1,4-ペンタジエン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-ペンテン、イソプレン、そのジシクロペンタジエン二量体の形で存在し得るシクロペンタジエン、ピペリレン、シクロペンテン、1-メチルシクロペンテン、1-ヘキセン、メチルシクロペンタジエン又はシクロヘキセンである。これらの留分は、石油産業及び石油化学において公知の任意の化学的プロセスにより得ることができる。非限定的例として、ナフサのスチームクラッキング法又はガソリンの液体触媒クラッキング法が言及され、これらの方法は、水素化及び脱水素化などの、当業者に公知のこれらの留分の転換のためのいずれか可能な化学処理と組合せることが可能である。
【0049】
好ましくは、該C5留分/ビニル芳香族コポリマー(特にC5留分/スチレン又はC5留分/C9留分コポリマー)において、ビニル芳香族化合物(特にスチレン又はC9留分)は、モル留分として表された少量のモノマーである。従ってより好ましくは、NMR分析により公知の方法で決定された芳香族プロトンの割合(コポリマーのプロトンの総数に関して)は、50%未満であり、より好ましくは1%〜25%(mol%)である。
【0050】
C5留分/ビニル芳香族コポリマーで形成された樹脂のレベルは、5〜35phrである。示された最低値以下で、目標とされた技術作用は不適切であるが、35phrを上回ると、生状態でのこの組成物の粘着性は、混合装置に関して、産業上の観点から全体的に受け入れ難くなり始める。この理由で、この樹脂のレベルは、好ましくは5〜25phr、より好ましくは5〜20phrである。
MES油又はTDAE油のレベルは、好ましくは10〜30phrであり、より好ましくは10〜25phrであるが、MES油及び/又はTDAE油並びに樹脂を含む本発明の総可塑化系のレベルは、好ましくは15〜45phr、より好ましくは20〜40phrである。
【0051】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー、特にC5留分/スチレン又はC5留分/C9留分コポリマーで形成された樹脂は、以下の好ましい特徴の少なくとも1種(より好ましくは全て)を示す:
−20℃と等しいか又はそれよりも高い(より特定すると25℃よりも高い)Tg;
−400〜2000g/molである、数平均分子量(Mn);
−4.5未満の多分散度(Ip)(注記:Ip=Mw/Mn、Mwは質量平均分子量)。
より好ましくは依然、この樹脂は、以下の好ましい特徴の少なくとも1種(より好ましくは全て)を示す:
−30℃〜80℃の(より特定すると35℃〜60℃)のTg;
−600〜1500g/molである、数平均分子量(Mn);
−3.0未満の多分散度(Ip)(特に2.5未満)。
ガラス転移点Tgは、標準規格ASTM D3418(1999)に従い、DSC(示差走査熱量計)により公知の方法で、測定される。
【0052】
C5留分/ビニル芳香族コポリマーのマクロ構造(Mw、Mn及びIp)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)により決定される:溶媒テトラヒドロフラン;温度35℃;濃度1g/l;流量1ml/分;注入前に多孔度0.45μmのフィルターを通して濾過された溶液;ポリスチレン標準によるMooreキャリブレーション;連続する3本の「Waters」カラムの設定(「Styragel」HR4E、HR1及びHR0.5);示差的屈折計(「Waters 2410」)及びそれに関連した操作用ソフトウェア(「Waters empower」)による検出。
【0053】
別の好ましい本発明の代わりの態様において、C5留分/ビニル芳香族コポリマー(特にC5留分/スチレン又はC5留分/C9留分コポリマー)樹脂は、(ジ)シクロペンタジエン(いわゆる、シクロペンタジエン(CPD)又はジシクロペンタジエン(DCPD)又はこれら2種の混合物)を欠いているか、又は非常に少ないが、それらの質量分率で30%未満、好ましくは20%未満(樹脂の質量%)を含有する。このような条件は、本発明のタイヤに関して、転がり抵抗及び湿った地面上のグリップに関する改善された性能を予想外に生じることはわかっている。より好ましくは、同じ理由で、本発明の組成物中の(D)CPDレベルは、0〜10%未満の範囲で、特に0〜5%未満(質量%)の範囲内で選択される。
【0054】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー、特にC5留分/スチレン又はC5留分/C9留分(より一般にはC5留分/C8-C10留分)コポリマーで形成された樹脂は、例えばNeville Chemical Companyから「Super Nevtac 78」、「Super Nevtac 85」又は「Super Nevtac 99」の名称で、Goodyear Chemicalsから「Wingtack Extra」の名称で、Kolonから「Hikorez T1095」及び「Hikorez T1100」の名称で、Exxonから「Escorez 2101」及び「ECR 373」の名称で市販されている。
【0055】
本発明の好ましい態様において、特に本発明の組成物がタイヤトレッドについて企図される場合、本発明の可塑化系は、追加的に、5〜35phr(より一般には10〜30phr)のグリセロール不飽和(C12-C22)脂肪酸トリエステル、特に例えばヒマワリ又はナタネ植物油の形で存在するグリセロールトリオレエート(オレイン酸及びグリセロールに由来する)を含有する。このようなトリエステルは、該トレッドにおいて、一方では回転下での圧縮による総可塑化系の滲出を、及び他方では該可塑剤のトレッドに隣接する混合物への移動を最小化することを可能にする。これは、同じくトレッドについて最小化される沈降(settling)及び硬化(hardening)により反映され、結果的にグリップ性能の長期間の保持により反映されている。このような場合好ましくは、脂肪酸(又は数種類存在する場合は、脂肪酸の組合せ)は、質量分率で少なくとも60%と等しい、好ましくは少なくとも70%と等しいオレイン酸を含有する。
【0056】
本発明の可塑化系は、他の非芳香族可塑剤又は非常にわずかな芳香族可塑剤、例えばナフテン系油又はパラフィン系油、好ましくは25℃を超える高Tgを示す他の可塑化炭化水素樹脂、例えばα-ピネン、β-ピネン、ジピネン(又はポリリモネン)、C5留分のホモ-もしくはコポリマーで形成された樹脂、先に説明されたC5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂及びMES油又はTDAE油との組合せも含むことができる。
【0057】
II-4. 様々な添加剤
本発明のゴム組成物は、例えば、顔料、保護剤、例えばオゾン劣化防止用ワックス、オゾン劣化防止用化学物質、抗酸化剤、耐疲労剤、補強用樹脂、例えば国際公開公報第02/10269号(又はUS2003/212185)において開示されたようなメチレンアクセプター(例えばフェノール系ノボラック樹脂)もしくはメチレンドナー(例えばHMT又はH3M)、イオウもしくはイオウドナー及び/又は過酸化物及び/又はビスマレイミドのいずれかをベースにした架橋系、加硫促進剤又は加硫活性化剤などの、タイヤ、特にトレッドの製造について企図されたエラストマー組成物において一般に使用される通常の添加剤の全て又は一部も含有する。
【0058】
これらの組成物は、カップリング剤に加え、カップリング活性化剤、無機充填剤の被覆剤、又は公知の方法で、ゴムマトリックス中の充填剤の分散を改善し及び組成物の粘度を低下し、生状態でのそれらの加工特性を改善することが可能である加工助剤も含有することができ、これらの物質は、例えば加水分解性シラン、例えばアルキルアルコキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、第1級、第2級もしくは第3級アミン、又はヒドロキシル化されたもしくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0059】
II-5. ゴム組成物の調製
前述の組成物は、適当なミキサー中で、当業者に周知のふたつの連続調製相を用いて製造される:最高温度110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃までの高温での熱力学的作業又は混練の第一相(「非生産的」相と称される)、それに続くより低温、典型的には110℃未満、例えば40℃〜100℃での機械的作業の第二相(「生産的」相と称される)、架橋系が混入される時の完成相。
【0060】
改善された耐摩耗性及び耐カット性を示すゴム組成物を調製する本発明の方法は、以下の段階を含む:
・最高温度110℃〜190℃に到達するまでに、全てを1又は複数回熱力学的に混練することにより、第一段階(「非生産的」と称される)の間に、少なくとも補強充填剤及び可塑化系を、ジエンエラストマー中に混入する工程;
・混合物全体を温度100℃未満に冷却する工程;
・第二段階(「生産的」と称される)の間に、架橋系を引き続き混入する工程;
・最高温度110℃未満に到達するまで全てを混練する工程;
を含み、並びに、該可塑化系が:
−5〜35phrのMES油又はTDAE油;
−5〜35phrのC5留分/ビニル芳香族コポリマー(好ましくはC5留分/スチレン又はC5留分/C9留分コポリマー)樹脂;を含有することを特徴とする。
【0061】
例として、非生産的相は、第一の工程において、必要な基本の構成成分全て(ジエンエラストマー、補強充填剤及びカップリング剤、必要ならば可塑化系)が、通常の内部ミキサーのような適当なミキサーへ導入され、それに続く第二工程において、例えば混練後1〜2分間の、架橋系を除く、他の添加剤、任意の追加的被覆剤又は加工助剤導入で、単独の熱力学的段階において、実行される。こうして得られた混合物の冷却後、次に架橋系が、低温(例えば40℃〜100℃)に維持された、オープンミルのような、外部ミキサーへ混入される。その後この全体が、数分間、例えば2〜15分間混合される(生産的相)。
【0062】
この架橋系は好ましくは、イオウ及び促進剤をベースにした加硫系である。イオウの存在下ジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用することが可能な任意の化合物を使用することができ、特に2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(略号「MBTS」)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(略号「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(略号「DCBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(略号「TBBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(略号「TBSI」)及びこれらの化合物の混合物からなる群より選択される。好ましくは、スルフェンアミド型の一次促進剤が使用される。
【0063】
この加硫系に加え、第一の非生産的相及び/又は生産的相の期間に混入される、様々な公知の二次促進剤又は加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)などがある。本発明の組成物をタイヤトレッドとして使用する場合、イオウのレベルは、例えば0.5〜3.0phrであり、一次促進剤のレベルは、0.5〜5.0phrである。
こうして得られた最終組成物は、例えばフィルム又はシートの形に引き続き圧延されるか、又はそうでなければ押出され、トレッド、プライ又は他のストリップ、下層、様々なゴムブロックのような、例えばタイヤ半-完成品の製造に使用されるゴムの型出しされた要素を形成することができ、これらは、タイヤの構造の一部、より特定するとそのトレッドを形成することが企図された、繊維又は金属製の補強要素で補強されてもよく又はされなくてもよい。
【0064】
引き続き加硫(又は硬化)を、公知の方法で、温度が一般に130℃〜200℃、好ましくは加圧下で、十分な時間、例えば特に検討されている組成物の硬化温度、適合された加硫系及び加硫速度論に応じて左右され、5〜90分間変動し得る時間、実行することができる。
本発明は、「生」状態(すなわち硬化前)及び「硬化された」又は加硫された状態(すなわち加硫後)の両方における、先に説明されたゴム組成物に関する。
【0065】
III. 実施例
III-1. 試験1:耐カット性及び耐チッピング性の試験
本発明の組成物(以下にC-3と記す)を、2種の対照組成物(C-1及びC-2と記す)と比較し、これら3種の組成物は、以下の相違点以外は同じように試験した:
−組成物C-1:芳香族油(37phr)を含む先行技術の対照;
−組成物C-2:MES油単独(31.5phr)を含む対照;
−組成物C-3:本発明の可塑化系(11.5phrのMES油及び20phrのC5留分/スチレンコポリマー樹脂の組合せ)を含む組成物。
【0066】
これら3種の組成物は、それらの可塑化系以外は、タイヤトレッドに関するゴム組成物の通常の配合を有し、すなわち本質的に、ジエンエラストマー(SSBR 70/BR 30)、シリカ(80phr)、カーボンブラック(5phr)及び加硫化系のブレンドである。組成物C-1及びC-2は、可塑化油の同じ容積と配合した。対照組成物C-2と比較するために、組成物C-3において、約2/3(すなわち、20phr)のMES油を、C5留分/スチレン樹脂(「Super Nevtac 85」の20phr)と交換した。
【0067】
これら3種の組成物は、常法で製造され、及びトレッドの構成成分であるゴム組成物以外は全てに関して同一である、サイズ195/65 R15(スピード指標H)で、ラジアル-カーカス乗用車用タイヤのトレッドとして試験した。これらのタイヤは、各々、P-1、P-2及びP-3として記録し;ゴム組成物の耐カット性及び耐チッピング性の評価を可能にするI-4項の耐久試験を行うために、これらは、乗用車に装着した(シトロエンモデル「C5」車両-フロント及びリア圧力:2.2bar-試験したタイヤは、車両のフロントに装着−周囲温度25℃)。
【0068】
耐チッピング性試験は、本発明の組成物の、2種の対照組成物に対する、全ての利点を明らかにした。
これらの結果は、下記表1に、相対単位で示し、ベース100は、そのトレッドが通常の芳香族油を含有する有する対照タイヤP-1について選択されている(100よりも大きい値は、ベース100の対照に対して、改善された性能を示す):
【0069】
【表1】

【0070】
芳香族油のMES油との交換(タイヤP-2のタイヤP-1との比較)は、全く特筆すべきことであるが、耐チッピング性の15%の予想外の低下により反映され、及びこのタイヤのある種の使用に関して全般的に受け入れがたいと見なされることがまず最初にわかった。
対照的に、MES油の一部のC5留分/スチレンポリマー樹脂との交換は、驚くべきことに、性能の目を見張る回復(タイヤP-3について、タイヤP-2と比べ33%の増加)を反映しており、本発明のタイヤP-3に対して認められた耐チッピング性は、出発参照物を構成するタイヤP-1のそれよりも13%更に優れている。
【0071】
III-2. 試験2:他のゴム試験
以下の試験において、3種の前述の組成物(C-1からC-3)を、様々なゴム試験において、前記組成物C-3と同様の本発明の3種の別の組成物(C-4からC-6)と、比較した。これらの組成物C-4からC-6は、第三のモノマーとして変動する質量分率のDCPD(ジシクロペンタジエン)を追加的に含有する、C5留分/スチレンコポリマー樹脂を混入している。
【0072】
より詳細に述べると、組成物C-4、C-5及びC-6は、前記組成物C-3と、使用される樹脂の性質(質量%)以外は同じである:
−組成物C-4(樹脂A):C5留分/スチレン/DCPD(5%)コポリマー;
−組成物C-5(樹脂B):C5留分/スチレン/DCPD(15.5%)コポリマー;
−組成物C-6(樹脂C):C5留分/スチレン/DCPD(33%)コポリマー。
比較のためには、前記組成物C-3の樹脂のC5留分/スチレンコポリマー(市販の樹脂)は、(D)CPDを事実上欠いている(すなわち、0〜5%未満を含有)とみなされる。
【0073】
この試験の必要要件に関して、組成物C-4からC-6の樹脂(各々、樹脂A、B及びCと表される)は、公知の方法で、以下の方法に従い合成された:反応器に、トルエン1206ml、並びにDCPD質量w1(樹脂A、B及びCについて、各々、8.8mg、28mg及び61mg)を投入した。引き続き三塩化アルミニウム(Aldrich, 純度=99%)4.6gを温度25℃で添加した。その直後に、この懸濁液へ、スチレン約61mg及びC5留分(主にイソプレンであり、(D)CPDを欠いている)質量w2(樹脂A、B及びCについて、各々、105mg、88mg及び56mg)で構成された混合物を、5分間かけて滴下した。反応媒体の温度は上昇し(各々、最大58℃、59℃及び50℃)、引き続き40℃で維持した。120分間重合した後、この反応を、脱塩水250mlにより停止した。有機相を除去した。抗酸化剤として2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール)1.6gを、依然溶液である樹脂へ添加した。トルエンの大半を、回転蒸発器により減圧下70℃で除去した。200℃の炉で減圧下で乾燥後、最終生成物を得た。
【0074】
こうして本質的にC5留分/スチレン/DCPD単位を含むコポリマーで形成された樹脂が、茶色-物質の、及びモノマー類が事実上完全に転換された(ガスクロマトグラフィーにより94〜100%)形で得られ、これらの樹脂は、下記の質量分率を有し:
−樹脂A:C5留分60%/スチレン35%/DCPD 5%;
−樹脂B:C5留分50.5%/スチレン34%/DCPD 15.5%;
−樹脂C:C5留分32%/スチレン35%/DCPD 33%。
並びに、各々、以下のTg、Mn及びIp特性を有する:
−樹脂A:Tg=20℃;Mn=780;Ip=3.1;
−樹脂B:Tg=40℃;Mn=960;Ip=4.3;
−樹脂C:Tg=31℃;Mn=835;Ip=4.0。
【0075】
表2及び3は、試験した様々な組成物の配合(表2-様々な生成物のレベル、phrで表す)及びそれらの硬化後の通常の性質(表3)を示している。組成物C-4からC-6は、組成物C-3のように、すなわちMES油の20phrを、C5留分/スチレン/DCPDコポリマーで形成された樹脂20phrと交換して配合された。
表3を検討し、本発明の組成物(C-3からC-6)の全ての特性は、ショア硬度、及び(as)引張弾性、低(10%)伸長及び(as)高(100%及び300%)伸長が、実質的に同一であることが注目された。
【0076】
予想外のことに、これら4種の組成物間の差異は、ΔG*値において存在し、これはDCPDレベルが低下するにつれて低下し、並びにそれらの一部についてtan(δ)max(温度)の値は、同じDCPDレベルの低下につれて増加する。当業者に周知の方法で、ΔG*値は、ヒステリシス及び転がり抵抗を説明するが(より低いΔG*は、より低いヒステリシス、従って転がり抵抗である)、ここで測定されたtan(δ)max(温度)(温度掃引に従い、所定の応力で)は、湿った地面上でのグリップ能を説明する(より大きいtan(δ)maxは、より良いグリップである)ことは留意すべきである。
【0077】
ちなみに、芳香族油のMES油による交換(組成物C-2の組成物C-1との比較)は、既にΔG*の有意な増加及びtan(δ)max(温度)の実質的低下を、別の表現をすると、先に想起されたグリップの劣化/転がり抵抗の妥協の程度を反映していることは注目される。
【0078】
本試験の結論は、転がり抵抗及び湿った地面上のグリップの両方の改善のために、低レベルの(D)CPD、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満を含有するC5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂を使用することが好ましいことである。これらの観点から、組成物C-3及びC-4に関して、最良の結果は、(D)CPDのレベル10%未満、事実上ゼロ(すなわち0〜5%未満)で得られる。
従って本発明は、本発明のトレッドの転がり抵抗及び湿った地面上でのグリップの両方を改善すると同時に、それらの耐チッピング性を増大することが可能である。



















【0079】
【表2】

(1)油で希釈されたSBR溶液(乾燥SBRとして表されたレベル);スチレン25%、1,2-ポリブタジエン単位58%及びtrans-1,4-ポリブタジエン単位23%(Tg=-24℃);
(2)1,2- 4.3%;trans- 2.7%;cis-1,4- 93%を含むBR(Tg=-106℃);
(3)Rhodiaから入手したシリカ「Zeosil 1165MP」、「HD」型(BET及びCTAB:約160m2/g);
(4)カップリング剤TESPT(Degussaから入手した「Si69」);
(5)カーボンブラックN234(ASTM等級);
(6)総芳香族油(SBRのための希釈油を含有);
(7)総MES油(SBRのための希釈油を含む-Catenex SNR de Shell);
(8)C5留分/スチレン樹脂(Neville Chemical Companyから入手した「Super Nevtac 85」);
(9)樹脂A(DCPD 5%);
(10)樹脂B(DCPD 15.5%);
(11)樹脂C(DCPD 33%);
(12)酸化亜鉛(工業用等級-Umicore);
(13)ステアリン(「Pristerene 4931」-Uniqema);
(14)N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(Flexsysから入手したSantoflex 6-PPD);
(15)ジフェニルグアニジン(Flexsysから入手したPerkacit DPG);
(16)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsysから入手したSantocure CBS)。







【0080】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともジエンエラストマー、補強充填剤、可塑化系及び架橋系をベースにしたゴム組成物であり、該可塑化系が(phr=エラストマー100部当たりの質量部):
−5〜35phrのMES油又はTDAE油;
−5〜35phrのC5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂;を含有することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
樹脂のレベルが、5〜25phrである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
樹脂のガラス転移点が、20℃と等しいか又はそれよりも高く、好ましくは25℃よりも高い、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
樹脂の数平均分子量が、400〜2000g/molである、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
コポリマーが、C5留分とスチレンのコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
コポリマーが、C5留分とC8-C10留分のコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
コポリマーが、C5留分とC9留分のコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
MES油又はTDAE油のレベルが、10〜30phrである、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
総可塑化系のレベルが、15〜45phrである、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーのブレンドからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
可塑化系が追加的に、5〜35phrのグリセロール不飽和(C12-C22)脂肪酸トリエステルを含有する、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
トリエステルが、グリセロールトリオレエートである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
補強充填剤が、20〜200phr、好ましくは30〜150phrのレベルで存在する、請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂が、0〜30質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂が、0〜20質量%未満、好ましくは0〜10質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂が、0〜5質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
ジエンエラストマー、補強充填剤、可塑化系及び架橋系をベースにしたゴム組成物の調製法であり、該プロセスが:
・第一の「非生産的」段階と称される期間に、少なくとも補強充填剤及び可塑化系を、最高温度110℃〜190℃に到達するまでに、1又は複数回これら全てを熱力学的に混練することにより、ジエンエラストマー中に混入する工程;
・混合物全体を温度100℃未満に冷却する工程;
・第二の「生産的」段階と称される期間に、架橋系を引き続き混入する工程;
・最高温度110℃未満に到達するまで全てを混練する工程;
を含み、並びに、該可塑化系が:
−5〜35phrのMES油又はTDAE油;
−5〜35phrのC5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂;を含有することを特徴とする、方法。
【請求項18】
樹脂のレベルが、5〜25phrである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
樹脂のガラス転移点が、20℃と等しいか又はそれよりも高く、好ましくは25℃よりも高い、請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
樹脂の数平均分子量(Mn)が、400〜2000g/molである、請求項17〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
コポリマーが、C5留分とスチレンのコポリマーである、請求項17〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
コポリマーが、C5留分とC8-C10留分のコポリマーである、請求項17〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
コポリマーが、C5留分とC9留分のコポリマーである、請求項17〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
MES油又はTDAE油のレベルが、10〜30phrである、請求項17〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
総可塑化系レベルが、15〜45phrである、請求項17〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーのブレンドからなる群より選択される、請求項17〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
可塑化系が追加的に、5〜35phrのグリセロール不飽和(C12-C22)脂肪酸トリエステルを含有する、請求項17〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
トリエステルが、グリセロールトリオレエートである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
補強充填剤が、20〜200phr、好ましくは30〜150phrのレベルで存在する、請求項17〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂が、0〜30質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項17〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂が、0〜20質量%未満、好ましくは0〜10質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂が、0〜5質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
自動車用接地システムのために意図された完成品又は半-完成品の製造に関する、請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項34】
請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物を含有する、自動車用接地システムのために意図された完成品又は半-完成品。
【請求項35】
ジエンゴム組成物の可塑化に使用することができる可塑化系であり、その中にMES油又はTDAE油及びC5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂を含むことを特徴とする、可塑化系。
【請求項36】
樹脂のガラス転移点が、20℃と等しいか又はそれよりも高く、好ましくは25℃よりも高い、請求項35記載の可塑化系。
【請求項37】
樹脂の数平均分子量(Mn)が、400〜2000g/molである、請求項35又は36記載の可塑化系。
【請求項38】
樹脂のコポリマーが、C5留分とスチレンのコポリマーである、請求項35〜37のいずれか1項記載の可塑化系。
【請求項39】
樹脂のコポリマーが、C5留分とC8-C10留分のコポリマーである、請求項35〜37のいずれか1項記載の可塑化系。
【請求項40】
樹脂のコポリマーが、C5留分とC9留分のコポリマーである、請求項35〜37のいずれか1項記載の可塑化系。
【請求項41】
追加的に5〜35phrのグリセロール不飽和(C12-C22)脂肪酸トリエステルを含有する、請求項35〜40のいずれか1項記載の可塑化系。
【請求項42】
トリエステルが、グリセロールトリオレエートである、請求項41記載の可塑化系。
【請求項43】
C5留分/ビニル芳香族コポリマーで形成された樹脂が、0〜30質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項35〜42のいずれか1項記載の可塑化系。
【請求項44】
C5留分/ビニル芳香族コポリマーで形成された樹脂が、0〜20質量%未満、好ましくは0〜10質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項43記載の可塑化系。
【請求項45】
C5留分/ビニル芳香族コポリマーで形成された樹脂が、0〜5質量%未満の(ジ)シクロペンタジエンを含有する、請求項44記載の可塑化系。
【請求項46】
ジエンゴム組成物の可塑化のための、請求項35〜45のいずれか1項記載の可塑化系の使用。
【請求項47】
請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物を含有する、タイヤトレッド。
【請求項48】
請求項35〜45のいずれか1項記載の可塑化系を含有する、タイヤトレッド。
【請求項49】
請求項47又は48記載のトレッドを含むタイヤ。
【請求項50】
請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物、又は請求項35〜45のいずれか1項記載の可塑化系を含む、タイヤ。

【公表番号】特表2008−518065(P2008−518065A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538340(P2007−538340)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011564
【国際公開番号】WO2006/061064
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(599105403)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (228)
【Fターム(参考)】