説明

ゴム組成物及びそれを用いた更生タイヤ用クッションゴム並びに更生タイヤ

【課題】低温高速加硫性と熱老化後の耐破壊特性の双方を満足し得るゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対して、(A)成分:脂肪酸及び脂肪酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部と、(B)成分:アミン類、グアニジン類、アルデヒドとアミンとの縮合物類、アンモニウム塩類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜3.0質量部と、(C)成分:チオカルバモイルジチオ系化合物及びチウラム系化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部とを含むゴム組成物であって、(A)成分の添加モル数が(B)成分の添加モル数の1.9〜3.5倍であることを特徴とするゴム組成物及びそれを用いた更生タイヤ用クッションゴムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫特性と熱老化後の耐破壊特性との双方に優れるゴム組成物に関し、特に、更生タイヤ用クッションゴムに好適なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム組成物を低温、例えば120℃で加硫することがあるが、この場合、加硫時間が長いため生産性が悪いという問題があった。特に、更生タイヤ用クッションゴムは、更生用台タイヤと加硫済みのトレッド部材とを接着するために更生用台タイヤと加硫済みトレッド部材との間に配設されるシート状のゴム部材であるため、モールドと直接接するトレッド部材と比較して加硫時の温度上昇が遅くなり、その上通常低温で加硫するため低温時の加硫速度を上げることが要望されている。
しかし、加硫速度を上げると、(1)スコーチ(焦け)時間が短くなり、生産性が悪化する。(2)熱老化後の加硫物性、特に、熱老化後の高温時の切断時引張応力(TSb)や切断時伸び(Eb)の低下が著しくなる。
【0003】
上記問題を解決すべく、特許文献1では、ゴム成分100重量部に対し、チウラム類化合物及びジチオカルバミン酸塩化合物よりなる群から選択された化合物のうち少なくとも1つを0.1質量部〜1.0質量部配合すると共に、1,6−ヘキサメチレン−ジチオ硫酸ナトリウム・2水和物を0.5質量部〜2.0質量部配合してなるゴム組成物を提案している。
【0004】
また、特許文献2では、ゴム成分100重量部に対し、チウラム類化合物及びジチオカルバミン酸塩化合物よりなる群から選択された化合物のうち少なくとも1つを0.1重量部〜1.0重量部配合すると共に、アミン系加硫促進剤を0.1重量部〜1.0重量部配合し、かつ、DBP吸油量が70〜100(ml/100g)、N2SA(窒素吸着比表面積)が70〜130(m2/g)のカーボンブラックを25〜45重量部配合してなるゴム組成物を提案している。
【0005】
更に、特許文献3では、ゴム成分100重量部に対して、特定のチウラム類化合物及び/又は特定のジチオカルバミン酸塩化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0重量部と、(2)ベンゾチアジルジスルフィド類,ベンゾチアゾール類,ベンゾチアゾール類のアミン塩又は亜鉛塩,及びベンゾチアゾリルスルフェンアミド類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜2.0重量部と、(3)アミン類,グアニジン類,アルデヒドアミン類,及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜2.0重量部とを配合してなるゴム組成物をタイヤ殻内部のゴム部材として用いることを提案している。
しかしながら、未加硫ゴム組成物の低粘度、低温高速加硫性と熱老化後の耐破壊特性の鼎立の観点からは、未だ満足すべきものは得られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−69236号公報
【特許文献2】特開2002−69237号公報
【特許文献3】特開2002−356102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、未加硫ゴム組成物の低粘度、低温高速加硫性及び熱老化後の耐破壊特性を鼎立して満足し得るゴム組成物を提供することであり、そのゴム組成物を更生タイヤ用クッションゴムに適用することにより更生タイヤの生産性を向上すると共に、更生タイヤの耐久性を大幅に向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の加硫活性剤とアミン系化合物との比率を適正にすることにより、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、ゴム成分100質量部に対して、(A)成分:脂肪酸及び脂肪酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部と、(B)成分:アミン類、グアニジン類、アルデヒドとアミンとの縮合物類、アンモニウム塩類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜3.0質量部と、(C)成分:下記の一般式(I)で表わされる化合物及び下記の一般式(II)で表わされるチウラム系化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部とを含むゴム組成物であって、(A)成分の添加モル数が(B)成分の添加モル数の1.9〜3.5倍であることを特徴とするゴム組成物である。
【0009】
【化1】

[式中、R1〜R4は、それぞれ独立にベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基であり、Xは平均数として2〜18である]
【0010】
【化2】

[式中、R5〜R8は、それぞれ独立にベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基である]
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、未加硫ゴム組成物の低粘度、低温高速加硫性及び熱老化後の耐破壊特性を鼎立して満足し得るゴム組成物を提供することができる。また、そのゴム組成物を更生タイヤ用クッションゴムに適用することにより更生タイヤの生産性を向上すると共に、更生タイヤの耐久性を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ゴム成分100質量部に対して、(A)成分:脂肪酸及び脂肪酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部と、(B)成分:アミン類、グアニジン類、アルデヒドとアミンとの縮合物類、アンモニウム塩類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜3.0質量部と、(C)成分:下記の一般式(I)で表わされる化合物及び下記の一般式(II)で表わされるチウラム系化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部とを含むゴム組成物であり、(A)成分の添加モル数が(B)成分の添加モル数の1.9〜3.5倍であることを特徴とするゴム組成物である。
【0013】
【化3】

ここで、R1〜R4は、それぞれ独立にベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基であり、Xは平均数として2〜18である。
【0014】
【化4】

ここで、R5〜R8は、それぞれ独立にベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基である。
【0015】
本発明のゴム組成物に用いられるゴム成分としては、天然ゴム及びジエン系合成ゴムからなるジエン系ゴムが好ましい。ジエン系合成ゴムとしては、例えば合成ポリイソプレンゴム(IR)、シス−1,4−ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム等が挙げられる。ゴムは二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの内、天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴムがより好ましく、ゴム成分中、天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴムが10質量%以上含まれることが好ましく、30質量%以上含まれることが更に好ましく、50質量%以上含まれることが特に好ましい。天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴムが10質量%以上含まれると、耐破壊特性が良化するからである。
【0016】
本発明のゴム組成物に用いられる(A)成分としては、脂肪酸及び脂肪酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物が用いられる。脂肪酸として、炭素数8〜10の中鎖炭化水素の1価のカルボン酸である中鎖脂肪酸又は炭素数12〜30の長鎖炭化水素の1価のカルボン酸である長鎖脂肪酸が好ましい。飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれでも良い。具体的には、ステアリン酸、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、パルミチン酸、ペンタデシル酸(ペンタデカン酸)、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリル酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、メリシン酸(オクタドコサン酸)、バクセン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトイル酸等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、これらの脂肪酸の亜鉛(Zn)塩が好ましい。これらの内、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸及びそれらの亜鉛塩が特に好ましい。
(A)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜4.0質量部配合される。0.1質量部未満であると未加硫ゴム組成物の作業性及び更生タイヤ等のゴム製品の生産性が低下するからであり、4.0質量部を超えると加硫ゴム物性が低下するからである。(A)成分は2.0〜4.0質量部配合されることがより好ましい。(A)成分が2.0質量部以上あれば、未加硫ゴム組成物の粘度を押さえ、未加硫ゴム組成物の作業性がより向上するからである。
【0017】
本発明のゴム組成物に用いられる(B)成分としては、アミン類、グアニジン類、アルデヒドとアミンとの縮合物類、アンモニウム塩類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物が用いられる。これら(B)成分の具体例としては、ジフェニルグアニジン(DPG),ジオルトトリルグアジニン(DOTG),オルトトリルビグアニド(OTBG),n−ブチルアルデヒド・アニリン反応生成物(BAA),ヘキサメチレンテトラミン(H),アセトアルデヒド・アンモニア(AA)等が挙げられる。
(B)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜3.0質量部配合される。0.1質量部未満であると加硫速度が低下し、一方、3.0質量部を超えると加硫ゴム物性が低下するからである。(B)成分は0.2〜2.5質量部配合されることがより好ましい。
【0018】
本発明における(C)成分としては、上記の一般式(I)で表わされる化合物及び上記の一般式(II)で表わされるチウラム系化合物が用いられる。上記の一般式(I)で表わされる化合物の具体例としては、1,6−ビス−(N,N'−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(LANXESS社製、商標「VULCUREN KA9188」)、1,6−ビス−(N,N'−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ)−ヘキサン、1,6−ビス−(N,N'−ジエチルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン、1,6−ビス−(N,N'−ジメチルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン等が挙げられる。また、上記の一般式(II)で表わされるチウラム系化合物としては、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)、テトラ(n−ドデシル)チウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)等が挙げられる。
(C)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜4.0質量部配合される。0.1質量部未満であると加硫速度が低下するからであり、4.0質量部を超えると加硫ゴム物性が低下するからである。(C)成分は0.2〜2.5質量部配合されることがより好ましい。
【0019】
本発明においては、(A)成分の添加モル数が(B)成分の添加モル数の1.9〜3.5倍であることを要する。1.9倍未満であると未加硫ゴム組成物の作業性(粘度が低い程良好である)と加硫ゴム組成物の熱老化後の耐破壊特性(例えば、100℃の破壊強度で評価する)との両立が困難となり、3.5倍を超えると加硫速度が遅くなり、熱老化後の耐破壊特性が低下するからである。そして、(A)成分の添加モル数が(B)成分の添加モル数の1.9〜3.4倍であることが好ましく、1.9〜3.0倍であることが特に好ましい。3.0倍以下であれば、加硫速度の低温高速性と熱老化後の破壊特性とを同時に改良でき好ましい。
【0020】
本発明のゴム組成物は、上述の(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加えて、更に(D)成分:ベンゾチアジルジスルフィド類、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾール類のアミン塩又は亜鉛塩、及びベンゾチアゾリルスルフェンアミド類からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが高い加硫速度を得る上で好ましい。ベンゾチアジルジスルフィド類としては、ジベンゾチアジルジスルフィド等が挙げられる。また、ベンゾチアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、N,N'−ジエチルチオカルバモイル−2−ベンゾチアゾリルスルフィド、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロ−フェニル)−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。ベンゾチアゾール類のアミン塩又は亜鉛塩としては、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩等が挙げられ、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N'−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。
(D)成分は、ゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜2.0質量部配合されることが好ましい。0.1質量部以下であると十分な加硫速度を得るという利点を享受し得なくなり、2.0質量部を超えると加硫ゴム物性が低下するからである。(D)成分は
0.2〜1.2質量部配合されることがより好ましい。
【0021】
本発明のゴム組成物は、120℃での90%加硫時間(t0.9)が9〜18分であることが好ましい。この範囲であれば、トラックバス用タイヤを中心とする更生タイヤに用いられる更生用クッションゴムとして低温高速加硫性を享受し得るので、更生タイヤの生産性向上を達成することができる。
【0022】
本発明のゴム組成物は、通常ゴム組成物に用いられる、加硫剤、亜鉛華等の加硫活性剤、充填剤、軟化剤、老化防止剤等の各種配合剤が、必要に応じ配合される。
また、本発明のゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー等を用いて混練りされ製造される。例えば、更生タイヤ用クッションゴムとして用いられる場合は、ロールにより、シート形状に成形される。また、更生タイヤ製造時に直接台タイヤ上に押出されることもある。更生タイヤ用クッションゴムは更生用台タイヤに貼付され、例えば、貼付されたクッションゴムの上に、事前に加硫されたトレッド部材を配設した後、加硫缶(オートクレーブ)内で加硫され、更生タイヤとなる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、未加硫ゴム組成物の90%加硫時間(T0.9)(min、120℃)及びムーニー粘度 ML1+4 (100℃)並びに加硫ゴム組成物の耐破壊特性 (MPa)を下記の方法により評価した。
【0024】
(1)90%加硫時間(T0.9)(min、120℃)
ジェイエスアール(株)製のキュラストメーターを用いて、120℃±1℃で加硫トルクカーブを測定し、最大値の90%に達するまでに要する時間(min)を90%加硫時間(T0.9)とした。
(2)ムーニー粘度 ML1+4 (100℃)
JIS K 6300−1:2001に準拠し、100℃で測定した。
(3)耐破壊特性
JIS K 6251:2004に準拠し、ダンベル状3号型試験片を用いて、100℃24時間熱老化したサンプルの100℃での切断時引張応力(TSb)(MPa)を測定し、耐破壊特性の評価とした。切断時引張応力の高いもの程、耐破壊特性が良好である。
【0025】
実施例1〜5及び比較例1〜4
表1に示す配合処方内容により、バンバリーミキサーで混練して、9種類のゴム組成物を調製した。これら9種類のゴム組成物について、90%加硫時間(T0.9)及びムーニー粘度 ML1+4を評価した。次に、120℃で30分加硫した後、耐破壊特性を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

[注]
a): HAF−LS、東海カーボン(株)製、商標「シースト300」
b): ナフテン系プロセスオイル、出光興産(株)製、商標「ダイアナプロセスオイル NS−100」
c):p−tert−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、BASF社製、商標「コレシン」
d):N−(1,3-ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製、商標「ノクラック6C」
e): 1,6−ビス−(N,N'−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン、LANXESS社製、商標「VULCUREN KA9188」
f): テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)、三新化学(株)製、商標「サンセラー TBZTB」
g): 2−メルカプトベンゾチアゾール、大内新興化学工業(株)製、商標「ノクセラーM」
h): ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業(株)製、商標「ノクセラーD」
【0027】
表1より明らかなように、実施例1〜5のゴム組成物は、比較例1〜3のゴム組成物と比較して、いずれも120℃の90%加硫時間が短く、低温高速加硫性が良好であった。また、熱老化後の耐破壊特性も大幅に向上した。更に、実施例1、2及び5は(A)成分の化合物(ここでは、ステアリン酸)が2.0質量部を超えているので、ムーニー粘度 ML1+4が低く、未加硫ゴム組成物の作業性がより向上した。これに対し、比較例4では、ムーニー粘度が増加したため未加硫ゴム組成物の作業性が悪化した。
次に、実施例1〜5及び比較例1〜4の9種類のゴム組成物をロールによりシート状に成形し、更生用台タイヤ(トラック・バス用ラジアルタイヤ、サイズ1000R20)の踏面部にクッションゴムとして貼付した後、その上に事前に加硫したトレッド部材を配設して、その後125℃の加硫缶内で加硫し、9種類の更生タイヤを製造した。実施例1〜5のゴム組成物からなるクッションゴムを配設した更生タイヤは、比較例1〜4のゴム組成物からなるクッションゴムを配設した更生タイヤと比較して、未加硫ゴム組成物の作業性(低粘度)、低温高速加硫性(加硫時間の短縮)及び熱老化後の耐破壊特性が鼎立し、更生タイヤの生産性及び耐久性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のゴム組成物は、低温高速加硫性と熱老化後の耐破壊特性の双方を満足し得るので、乗用車用、小型トラック用、軽乗用車用、軽トラック用及び大型車両用(トラック・バス用、建設車両用等)等の各種空気入りタイヤ、特に空気入りラジアルタイヤのタイヤ内部に配置されるクッションゴム用部材として好適に用いられる。とりわけ、更生タイヤ用クッションゴムとして、トラック・バス用ラジアルタイヤやその他の更生タイヤに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対して、(A)成分:脂肪酸及び脂肪酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部と、(B)成分:アミン類、グアニジン類、アルデヒドとアミンとの縮合物類、アンモニウム塩類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜3.0質量部と、(C)成分:下記の一般式(I)で表わされる化合物及び下記の一般式(II)で表わされるチウラム系化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物0.1〜4.0質量部とを含むゴム組成物であって、(A)成分の添加モル数が(B)成分の添加モル数の1.9〜3.5倍であることを特徴とするゴム組成物。
【化1】

[式中、R1〜R4は、それぞれ独立にベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基であり、Xは平均数として2〜18である]
【化2】

[式中、R5〜R8は、それぞれ独立にベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基である]
【請求項2】
前記ゴム成分が、天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴムを含むものである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対して、更に(D)成分:ベンゾチアジルジスルフィド類、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾール類のアミン塩又は亜鉛塩、及びベンゾチアゾリルスルフェンアミド類からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物0.1〜2.0質量部を含んでなる請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記(A)成分の化合物2.0〜4.0質量部を含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム組成物の120℃での90%加硫時間(t0.9)が、9〜18分である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いた更生タイヤ用クッションゴム。
【請求項7】
請求項6に記載の更生タイヤ用クッションゴムを用いた更生タイヤ。

【公開番号】特開2009−108117(P2009−108117A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278746(P2007−278746)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】