説明

ゴム組成物

【課題】無機充填剤を配合したゴム組成物において、無機充填剤の分散性を向上すると共に、低発熱性及び引張り応力を向上するようにしたゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対し、無機充填剤を1〜150重量部、ポリアミド系重合体からなるセグメントと数平均分子量が10000以上のジエン系重合体からなるセグメントとからなる共重合体を0.1〜30重量部配合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、無機充填剤の分散性を向上すると共に低発熱性及び引張り応力を向上するようにしたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤには、燃費性能を高くするためトレッドゴムの補強充填剤として、カーボンブラックの一部又は全部に代えてシリカを配合することによりヒステリシスロス(tanδ)を小さくして転がり抵抗(発熱性)を低減することが行なわれている。しかし、シリカはゴムに対する分散性が悪いため、シリカを配合しても低発熱性を実現することが難しいと共に、ゴム組成物のゴム強度(特に、100%変形時引張り応力)が十分に得られないという問題がある。この対策として、シリカと共に含硫黄シランカップリング剤を配合することによりシリカの分散性を向上することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、含硫黄シランカップリング剤を配合すると早期加硫が起こることからその配合量が制限されるため、シリカの分散性をさらに向上することが困難であった。このため、ゴム組成物の低発熱性及び引張り応力を一層向上するには限界があった。また、シリカ以外の無機充填剤もゴムに対する分散性が悪いものがあるが、含硫黄シランカップリング剤を用い分散性を向上するには限界があった。
【特許文献1】特開平7−48476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、無機充填剤を配合したゴム組成物において、無機充填剤の分散性を向上すると共に、低発熱性及び引張り応力を向上するようにしたゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、無機充填剤を1〜150重量部、ポリアミド系重合体からなるセグメントと数平均分子量が10000以上のジエン系重合体からなるセグメントとからなる共重合体を0.1〜30重量部配合したことを特徴とする。
【0006】
前記共重合体は、グラフト共重合体であることが好ましく、ジエン系重合体からなるセグメントが、ポリイソプレン又はポリブタジエンであるとよい。
【0007】
前記共重合体におけるポリアミド系重合体からなるセグメントは、数平均分子量が300〜10000であるとよく、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12及びこれらナイロンの単量体を含む共重合体からなる群から選ばれた重合体であることが好ましい。
【0008】
前記無機充填剤は、シリカ、クレイ及び炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種であるとよい。このゴム組成物は、タイヤ構成材用に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物によれば、ジエン系ゴム100重量部に対し、無機充填剤を1〜150重量部と共に、ポリアミド系重合体からなるセグメントと数平均分子量が10000以上のジエン系重合体からなるセグメントとからなる共重合体を0.1〜30重量部配合しており、その共重合体はポリアミド系重合体セグメントが無機充填剤との親和性が高く、ジエン系重合体セグメントがジエン系ゴムと架橋しやすく親和性が高いという特性を有するため、このような特性をもつ共重合体を介することにより、ジエン系ゴムに対する無機充填剤の分散性を著しく向上することができる。このように無機充填剤としてシリカの分散性を向上することにより、ゴム組成物の低発熱性及び引張り応力を向上可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分にはジエン系ゴムが使用される。ジエン系ゴムとしては、特に制限されるものではなく、ゴム組成物に通常使用されるゴム成分であればよい。例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。好ましくは天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムがよい。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0011】
本発明のゴム組成物で配合する無機充填剤としては、シリカ、クレイ、炭酸カルシウムなどのジエン系ゴムに対する分散性が悪いもののほか、例えば、酸化亜鉛、タルク、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等を例示することができる。なかでも、シリカ、クレイ、炭酸カルシウムが好ましい。これらの無機充填剤は単独で用いてもよいし、複数の種類を共に使用してもよい。
【0012】
本発明において好適に使用するシリカは、ゴム組成物に通常使用されるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、無水微粉ケイ酸、含水微粉ケイ酸等を例示することができる。また、クレイは、ゴム組成物の強度や耐摩耗性を高くする作用があり、例えばカオリンクレイ、焼成クレイ、ロウ石クレイ、合成含水ケイ酸アルミニウム等を使用することができる。
【0013】
無機充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し1〜150重量部、好ましくは10〜100重量部である。無機充填剤の配合量が1重量部未満であると、ゴム組成物を補強する効果が十分に得られない。また、シリカの場合、ヒステリシスロス(tanδ)を低減することができない。また、無機充填剤の配合量が150重量部を超えると、分散性が悪化すると共にゴム組成物の粘度が大きくなるため加工性が悪化する。
【0014】
本発明のゴム組成物において、ポリアミド系重合体からなるセグメントとジエン系重合体からなるセグメントとからなる共重合体は、ジエン系ゴムに対する無機充填剤の分散性を向上する作用を行なう。すなわち、共重合体中のポリアミド系重合体セグメントは無機充填剤との親和性が高く、ジエン系重合体セグメントはジエン系ゴムに対する架橋作用があり親和性が高いという特性を有しているため、この共重合体を媒体としてジエン系ゴムに対する無機充填剤の分散性を著しく向上する。すなわち、共重合体のジエン系重合体セグメントとジエン系ゴムとが、加硫成形時に架橋することにより共重合体とジエン系ゴムとの結合が強固になるので、ジエン系ゴムと無機充填剤とのカップリング作用をより高くすることができる。
【0015】
無機充填剤の分散剤としては、従来は硫黄含有シランカップリング剤が多く使用されていたが、このポリアミド系重合体セグメントとジエン系重合体セグメントからなる共重合体を使用すると、含硫黄シランカップリング剤を配合した場合と比べて、より高い無機充填剤の分散性を与えることができる。また、含硫黄シランカップリング剤と異なり硫黄を含まないため、配合量を多くしてもゴム組成物の混合中に早期加硫(スコーチ)を起こすことがない。
【0016】
ポリアミド系重合体セグメントとジエン系重合体セグメントを有する共重合体の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜8重量部である。共重合体の配合量が0.1重量部未満であると、ゴム組成物中の無機充填剤の分散性を向上する効果が得られない。また、共重合体の配合量が30重量部を超えると、効果が頭打ちになり、さらに過剰に配合すると機械的強度が低下すると共に、経済的にも不利になる。
【0017】
本発明のゴム組成物で使用する共重合体は、ポリアミド系重合体セグメントとジエン系重合体セグメントとを有するものであれば、ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、グラフト重合体のいずれでもよいが、ポリアミド系重合体セグメントとジエン系重合体セグメントとのグラフト共重合体が、合成が容易であるため好ましい。
【0018】
共重合体を構成するジエン系重合体からなるセグメントは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン等のジエン化合物を単量体として重合したセグメントである。ジエン系重合体セグメントは、ジエン化合物の単独重合体であっても、2種以上のジエン化合物同士の共重合体又はエチレンやジエン化合物と炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。なかでもジエン系重合体セグメントとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレンが好ましい。
【0019】
また、本発明で使用する共重合体は、ジエン系重合体からなるセグメントは、数平均分子量が10000以上、好ましくは10000〜200000である。ジエン系重合体セグメントの数平均分子量が10000未満であると、ジエン系ゴムに対する架橋性が十分に得られなくなり、共重合体とジエン系ゴムとの親和性が不足する。また、ジエン系重合体セグメントの数平均分子量の上限は、無機充填剤との親和性及び加工粘度の観点から200000以下にするとよい。なお、ジエン系重合体セグメントの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用してポリスチレン換算により測定する。
【0020】
本発明のゴム組成物で使用する共重合体を構成するポリアミド系重合体セグメントは、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物又はジアミンとジカルボン酸を重合したセグメントである。アミノカルボン酸としては、炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸が好ましく、例えば6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などを例示することができる。ラクタム化合物としては、炭素数4〜15の脂肪族ラクタム化合物が好ましく、例えばγ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ζ−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタムなどを例示することができる。
【0021】
また、ジアミンとジカルボン酸から重合されるポリアミド系重合体セグメントにおいて、ジアミンは炭素数2〜20の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンが好ましく例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、1,4−シクロヘキシルジアミン、1,3−シクロヘキシルジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキシルジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3/1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミンなどの脂環式ジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0022】
ジカルボン酸としては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が好ましく、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を例示することができる。
【0023】
ポリアミド系重合体セグメントは、上述した単量体の単独重合体であっても、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。ポリアミド系重合体セグメントとしては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリアミノウンデカン酸(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)、ポリα−ピロリドン(ナイロン4)、ポリヘキサメチレンジアミノアジピン酸(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン612)などの重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン6/11)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/アミノドデカン二酸共重合体(ナイロン6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ナイロン6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカン二酸共重合体(ナイロン6/66/612)、カプロラクタム/ヘキサメチレンテレフタル酸共重合体(6/6T)などの共重合体などを例示することができる。なかでもポリアミド系重合体セグメントとしては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12が好ましく、又これらナイロンを構成する単量体を含むナイロン共重合体を用いることも好ましい。
【0024】
ポリアミド系重合体セグメントの数平均分子量は、好ましくは300〜10000、より好ましくは500〜5000にするとよい。ポリアミド系重合体セグメントの数平均分子量が300未満であると、無機充填剤との親和性が十分に得られない。また、ポリアミド系重合体セグメントの数平均分子量が10000を超えると、セグメントが剛直になり過ぎるため、この場合も無機充填剤との親和性が十分に得られなくなる。なお、ポリアミド系重合体セグメントの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用してポリスチレン換算により測定する。
【0025】
本発明のゴム組成物で使用する共重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる重合方法により行なうことができる。例えば、(1)分子内に少なくとも一つのカルボキシル基又はアミノ基を有するジエン系重合体の存在下で、アミノカルボン酸化合物又はラクタム化合物を重合し、ポリアミド系重合体セグメントを直接結合する方法、(2)分子内に少なくとも一つのカルボキシル基又はアミノ基を有するジエン系重合体の存在下で、ジアミンとジカルボン酸を重合し、ポリアミド系重合体セグメントを直接結合する方法、(3)ジエン系共重合体を酸無水物と反応させた後、ジアミンとジカルボン酸を重合するか、ラクタム化合物やアミノカルボン酸を重合する方法、(4)ジアミンとジカルボン酸のうち少なくとも一方が、二重結合等ラジカル重合性の官能基を持つものを少量混合した状態で、通常のポリアミドの製造方法でポリアミドを合成した後、ジエンモノマーを添加し重合する方法等が挙げられる。
【0026】
これらの製造方法の中でも、(1)カルボキシル基を有するジエン系重合体の存在下で、ラクタム化合物を重合しポリアミド系重合体セグメントを直接結合する方法が合成の容易さ、分子量の調整の容易さの点から好ましい。このようなラクタム化合物として、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタムが特に好ましい。
【0027】
上述した本発明で使用する共重合体の製造において、分子内に少なくとも一つのカルボキシル基を有するジエン系重合体が好適に用いられる。このような分子内にカルボキシル基を有するジエン系重合体は市販されており、容易に入手可能である。また、市販されていないジエン系重合体も通常知られた重合方法により製造可能である。分子内に少なくとも一つのカルボキシル基を有するジエン系重合体としては、例えばカルボキシル基含有ポリブタジエン(デグサ社製OC800S)、カルボキシル基含有ポリイソプレン(クラレ社製LIR−410)等が例示される。
【0028】
本発明のゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、カップリング剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0029】
以上、詳細を説明したように、本発明のゴム組成物は、含硫黄シランカップリング剤の代わりにポリアミド系重合体セグメントとジエン系重合体セグメントとを有する共重合体を配合することにより無機充填剤の分散性を向上することができる。とりわけシリカの分散性を向上することによりゴム組成物のtanδを小さくし低発熱性にすると共に、引張り応力を向上することができる。したがって、本発明のゴム組成物を空気入りタイヤに使用した場合には、燃費性能或いは耐久性、タイヤ性能などを向上することができる。
【0030】
本発明のゴム組成物は、タイヤ構成材用として好適であり、例えば空気入りタイヤのキャップトレッド部、アンダートレッド部、サイドウォール部、ビードフィラー部、リムクッション部を構成するのに好適である。このような部材を少なくとも一つ備えた空気入りタイヤは、燃費性能或いは耐久性、タイヤ性能などが優れる。
【0031】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
共重合体の調製
共重合体1
カルボン酸変性ポリイソプレン(クラレ社製LIR−410、数平均分子量25000)とε−カプロラクタムとを重量比2:1でオートクレーブに仕込み、250℃で10分間重合反応を行なった。その後、アセトンを加えて、未反応のε−カプロラクタムを洗って除去し乾燥することにより、共重合体1を得た。
【0033】
得られた共重合体1を赤外線吸収スペクトルで解析したところ、カルボン酸のC=O伸縮振動1715cm−1が消失し、アミド結合のC=O伸縮振動1659cm−1、N−H伸縮振動3299cm−1が現れた。また、H−NMRを用いてポリアミド部の分子量を測定したところ、数平均分子量は、約600(5量体)であった。共重合体1は、数平均分子量が25000であるポリイソプレンセグメントにナイロン6からなるセグメントをグラフトさせた共重合体である。
【0034】
共重合体2
カルボン酸変性ポリイソプレンとε−カプロラクタムとの重量比を1:1にしたことを除き、上記共重合体1の製造方法と同様にして、共重合体2を得た。
【0035】
得られた共重合体2を赤外線吸収スペクトルで解析したところ、カルボン酸のC=O伸縮振動1715cm−1が消失し、アミド結合のC=O伸縮振動1659cm−1、N−H伸縮振動3299cm−1が現れた。また、H−NMRを用いてポリアミド部の分子量を測定したところ、数平均分子量は、約900(8量体)であった。共重合体2は、数平均分子量が25000であるポリイソプレンセグメントにナイロン6からなるセグメントをグラフトさせた共重合体である。
【0036】
共重合体3
カルボン酸変性ポリブタジエン(デグサ社製OS800S、数平均分子量2000)とε−カプロラクタムとの重量比2:1にしメタノールと共にオートクレーブに仕込み、温度250℃で10分間重合反応を行なった。その後、アセトンを加えて、未反応のε−カプロラクタムを洗って除去し乾燥し、共重合体3を得た。
【0037】
得られた共重合体3を赤外線吸収スペクトルで解析したところ、カルボン酸のC=O伸縮振動1715cm−1が消失し、アミド結合のC=O伸縮振動1659cm−1、N−H伸縮振動3299cm−1が現れた。また、H−NMRを用いてポリアミド部の分子量を測定したところ、数平均分子量は、約700(6量体)であった。共重合体3は、数平均分子量2000のポリブタジエンセグメントにナイロン6からなるセグメントをグラフトさせた共重合体である。
【0038】
ゴム組成物の調製
表1〜3に示す配合からなる15種類のゴム組成物(実施例1〜8、比較例1〜7)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.7Lのバンバリーミキサーで145℃、5分間混練し、得られたマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.7Lのバンバリーミキサーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え90℃で3分間混合し、ゴム組成物を調製した。
【0039】
得られた15種類のゴム組成物(実施例1〜8、比較例1〜7)をそれぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片(加硫ゴムシート:147×147×2mm)を作製した。この試験片を使用し無機充填剤の分散性能、引張り応力及びtanδを下記に示す方法により測定した。
【0040】
引張り応力
得られた試験片の100%変形時の引張り応力を、JIS K6251に準拠し、3号型ダンベル試験片に成形し、引張り速度500mm/分、温度23℃で測定し、その結果を表1〜3に示した。
【0041】
tanδ
得られた試験片の動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃におけるtanδを測定し、その結果を表1〜3に示した。温度60℃におけるtanδ(60℃)が小さいほど低発熱性が優れることを意味する。
【0042】
無機充填剤の分散性能
無機充填剤の分散性能をISO 11345に準拠し、得られた各試験片の断面を、カーボン分散測定機(Optigrade(Sweden)社製)を使用し、画像解析を行なうことにより、下記式に基づいて10段階評価を行なった。
評点=10−9×(23μm以上の未分散塊の占める画像領域面積)/[0.19×(全体の画像領域面積)]
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
なお、表1〜3において使用した原材料の種類を下記に示す。
SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
NR:天然ゴム、PT.NUSIRA社製SIR 20
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
シリカ:Rhodia社製ZEOSIL 165GR
クレイ:乾式クレイ、竹原化学社製5号クレー
カップリング剤:ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、デクサ社製Si69
酸変性IR:カルボン酸変性ポリイソプレン、クラレ社製LIR−410、数平均分子量25000
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日本油脂社製ビーズステアリン酸YR
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
硫黄:軽井沢精錬所社製5%油処理硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
加硫促進剤2:住友化学工業社製ソクシノールD−G

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対し、無機充填剤を1〜150重量部、ポリアミド系重合体からなるセグメントと数平均分子量が10000以上のジエン系重合体からなるセグメントとからなる共重合体を0.1〜30重量部配合したゴム組成物。
【請求項2】
前記共重合体がグラフト共重合体である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記共重合体におけるジエン系重合体からなるセグメントが、ポリイソプレン又はポリブタジエンである請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記共重合体におけるポリアミド系重合体からなるセグメントの数平均分子量が300〜10000である請求項1,2又は3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記共重合体におけるポリアミド系重合体からなるセグメントが、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12及びこれらナイロンの単量体を含む共重合体からなる群から選ばれた重合体である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記無機充填剤が、シリカ、クレイ及び炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
タイヤ構成材用である請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2010−1438(P2010−1438A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163649(P2008−163649)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】