説明

ゴム補強用ガラス繊維

【課題】 ガラス繊維コードとゴムの接着に対し好ましい接着強さを有した被覆層を得て、さらに、耐熱ベルトに用いた際の長時間の使用において、被覆層が接着の初期強さを持続し、寸法安定性に優れたゴム補強用ガラス繊維を提供することを目的とする。
【解決手段】 ガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂のエマルジョンとモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンを混合させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させて被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ゴム製品の補強用に用いるガラス繊維コードと母材ゴムとの接着をより良好に行うために表面処理を施したゴム補強用ガラス繊維に関し、例えば、自動車用タイミングベルト等の伝動ベルトに用いるために、母材ゴムとしてのクロロピレンゴムまたは水素化ニトリルゴム等に埋め込み、引っ張り強さ、寸法安定性を高めるためのゴム補強用ガラス繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルト、タイヤ等のゴム製品に強さを持たせるために、ガラス繊維、ナイロン繊維およびポリエステル繊維等の高強度繊維コードを補強材として埋め込むことが一般的に広く行われており、ゴムに埋め込む補強用繊維には、母材であるゴムとの密着性がよく、界面が強固で剥離しないことが必要とされる。しかしながら、ガラス繊維コードをそのまま母材ゴムに埋め込んで使用しても全く密着しないか、密着したとしても密着性が弱く界面が剥離してしまい補強材としての要をなさない。
【0003】
伝動ベルトには、母材であるゴムとガラス繊維コードの密着性を向上させ、界面の剥離を防止するために、通常、フィラメントを束ねてなるガラス繊維コードに、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と各種ラテックスとを水に分散させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させ被覆層としたゴム補強用ガラス繊維が用いられる。該被覆層は、高温の環境下で、ガラス繊維コードを母材であるゴムに埋め込んでベルトに成形する際、ゴムとガラス繊維コードを接着する効果を有するが、接着力、即ち、接着強さは必ずしも十分な強さではない。例えば、自動車用タイミングベルトはエンジンル−ム内の高温の環境下で使用されるため、母材には耐熱性ゴムである、硫黄または過酸化物により架橋された水素化ニトリルゴム等が用いられる。しかしながら、前記被覆処理のみでは、タイミングベルトとしての高温時において屈曲し続ける使用状況下、初期の接着強さが持続されず、長時間の使用において、界面の剥離をきたすことがある。
【0004】
水素化ニトリルゴムとガラス繊維コードとの接着強さを持続し界面の剥離をきたさず、高温の環境下においても長期信頼性のある伝動ベルトを提供するためのゴム補強ガラス繊維として、上記被覆処理を行った後に得られた被覆を一次被覆層として、該一次被覆層上に異なる組成の第ニ液を塗布し乾燥させて二次被覆層としたゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1において、クロロスルホン化ポリエチレンとイソシアネートを含む第2液で処理する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ガラス繊維コードに、レゾルシン・ホルマリン縮合物とゴムラテックスを含む処理剤を塗布し乾燥硬化させ第1被覆層とし、当該第1被覆層上にさらに異なる処理剤を塗布し乾燥硬化させ形成させた第2被覆層を有するゴム補強用繊維コードであって、当該第2被覆層用の処理剤が、ゴム配合物、加硫剤およびマレイミド系加硫助剤を主成分とすることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に開示されている2層の被覆層からなるゴム補強用ガラス繊維を用い耐熱ゴムの中に埋め込んだとしても、母材である耐熱ゴムとガラス繊維コードとの接着強さは必ずしも十分といえる強さではない。特に母材ゴムとして、特許文献1においては水素化ニトリルゴムを、特許文献2は水素化ニトリルゴムまたはメタクリル亜鉛を分散させた水素化ニトリルゴムを用いているが、特許文献1または特許文献2に記載の2層の被覆層からなるゴム補強用ガラス繊維を用い耐熱ゴムの中に埋め込んだとしても、母材である耐熱ゴムとガラス繊維コードとの、接着強さは未だ不十分である。
【0008】
一方、衣類用、記録シート用バインダー等に用いられる糊量組成物としてのアクリルエマルジョンが、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特特許文献7および特許文献8に開示されている。特に、特許文献4には、(メタ)アクリル酸エステルから選択されるモノマーを含むモノマー混合物を、ケン価度70〜98モル%、平均重合度300〜3000のポリビニルアルコール又はその変性物を保護コロイドとして使用して重合させることにより得られる、ガラス転移温度が−40〜80℃のアクリル系共重合体のエマルジョンを含有してなることを特徴とする糊料組成物が開示されている。
【0009】
また、ホルマリンを発生せずに重合体を架橋することができ架橋剤、架橋法及び耐熱性、耐水性、耐薬品性等に優れる架橋体として、さらに、特許文献9にアクリル酸エステル及びメタクリル酸から成る重合体のラテックスと、架橋剤としてのビス[1,3,2−ジオキソチオラン−2−オキシド−4−イルメチル]マロネートを添加混合して重合体組成物を得、この重合体組成物を室温下に放置して得られる架橋体が開示されている。さらに、特許文献10にアクリル酸エステル及びメタクリル酸からなる重合体のラテックスと、架橋剤としての5−エチル−3−フェニル−1−アザ−4,6−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタンの分散液とを混合して重合体組成物を得、この重合体組成物を130℃に加熱して得られた架橋体が開示されている。
【0010】
また、本出願人の出願に係わる特許文献11には、ガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物とを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させてなる被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
【0011】
前記アクリル酸エステル系樹脂には、アクリル酸エステルからなるモノマーを含むモノマー混合物を、ポリビニルアルコールまたはその変性物を保護コロイドとして重合させることにより得られるアクリル酸エステル系重合体のエマルジョンを用いることが好ましい。
【0012】
本出願人の特許出願に係わる特許文献12には、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とクロロスルホン化ポリエチレンとを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維コードに被覆するためのガラス繊維被覆用塗布液が開示されている。
【0013】
本出願人の特許出願に係わる特許文献13には、特許文献12に記載のガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布し1次被覆層とし、その上層にクロロスルホン化ポリエチレンとビスアリルナジイミドを含有する2次被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンとマレイミドを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレン、有機ジイソシアネートおよびメタクリル酸亜鉛を含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、および該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンとトリアジン系化合物を含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
【特許文献1】特許第1627859号
【特許文献2】特許第3201330号
【特許文献3】特開2002−160443号
【特許文献4】特開2001−348781号公報
【特許文献5】特開2001−199152号公報
【特許文献6】特開平9−118857号公報
【特許文献7】特開平7−119080号公報
【特許文献8】特開昭62−288076号公報
【特許文献9】特開平6−345977号公報
【特許文献10】特開平6−345978号公報
【特許文献11】特開2004−203730号公報
【特許文献12】特開2006−104595号公報
【特許文献13】WO/2006/038490
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のゴム補強用ガラス繊維は、耐熱ゴム、例えば酸化亜鉛で架橋されたクロロプレンゴムや、硫黄または過酸化物で架橋された水素化ニトリルゴム等に埋め込んだ際に、ガラス繊維コードと該ゴムの接着性を改善するための被覆剤が塗布被覆されているが、その効果が不十分で、耐熱ベルトに用いた際の使用において、ガラス繊維コードと耐熱ゴムの接着強さが弱く、ガラス繊維コードと耐熱ゴムの界面が剥離する、寸法安定性に劣る等の問題があった。
【0015】
本発明は、ガラス繊維コードと前記ゴムの接着に対し好ましい接着強さを有した被覆層を得て、さらに、耐熱ベルトに用いた際、寸法安定性に優れたゴム補強用ガラス繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果、アクリル酸エステル系樹脂、アクリル酸エステルおよび/またはメタアクリル酸エステルからなるモノマーを含むモノマー混合物を、ポリビニルアルコールまたはその変性物を保護コロイドとして重合させることにより得られるアクリル酸エステル系重合体および/またはメタアクリル酸エステル系重合体のエマルジョンに加え、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体を加えガラス繊維被覆用塗布液とし、該ガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布した後に乾燥させて被覆層としたところ、耐熱ゴムに埋めこんだ際にガラス繊維コードと耐熱ゴムの好ましい接着強さを得、耐熱ベルトとした際に寸法安定性に優れたゴム補強用ガラス繊維が得られた。
【0017】
さらに、アクリル酸エステルをベースにカルボキシル基等の官能基を導入し変性したアクリル酸エステル共重合体ラテックスに、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体を加え、これらの組成を調整しガラス繊維被覆用塗布液とし、該ガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布した後に乾燥させて被覆層としたところ、耐熱ゴムに埋めこんだ際にガラス繊維コードと耐熱ゴムの好ましい接着強さを得、耐熱ベルトとした際に寸法安定性に優れたゴム補強用ガラス繊維を得られた。
【0018】
即ち、本発明は、ガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンとモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンとを混合させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させて被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
【0019】
さらに、本発明は、前記アクリル酸エステル系樹脂(A)が、アクリル酸エステルおよび/またはメタアクリル酸エステルからなるモノマーを含むモノマー混合物を、ポリビニルアルコールまたはその変性物を保護コロイドとして重合させることにより得られるアクリル酸エステル系重合体および/またはメタアクリル酸のエマルジョンであることを特徴とする上記のゴム補強用ガラス繊維である。
【0020】
さらに、本発明は、前記アクリル酸エステル系樹脂(A)が分子構造中にカルボキシル基を有してなるアクリル酸エステル系共重合体ラテックスであることを特徴とする上記のゴム補強用ガラス繊維である。
【0021】
また、本発明は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、モノヒドロキシベンゼン(D)に対するホルムアルデヒド(E)のモル比を、E/D=0.5以上、3.0以下としたことを特徴とする上記のゴム補強用ガラス繊維である。
【0022】
また、本発明は、上記のゴム補強用ガラス繊維であって、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とからなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C)=3.0%以上、40.0%以下、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C)=1.0%以上、15.0%以下、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)が、C/(A+B+C)=45.0%以上、82.0%以下の範囲に含まれてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
【0023】
さらに、本発明は、上記のゴム補強用ガラス繊維であって、被覆層中のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)の、F/C=5.0重量%以上、80.0重量%以下を、スチレン−ブタジエン共重合体(F)に替えてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
【0024】
さらに、本発明は、上記のゴム補強用ガラス繊維にクロロスルホン化ポリエチレン(G)と、クロロスルホン化ポリエチレン(G)の重量に対して、H/G=0.3重量%以上、10.0重量%以下のビスアリルナジイミド(H)とを有機溶剤に分散させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布し、更なる被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維である。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、ガラス繊維と耐熱ゴムの接着に対し好ましい接着強さを有した被覆層を得て、寸法安定性に優れたゴム補強用ガラス繊維が提供された。
【0026】
本発明によるゴム補強用ガラス繊維によって補強されたゴム製品、即ち伝動ベルトは耐熱性に優れる。よって、本発明のゴム補強用ガラス繊維は、熱および外力の双方を同時に受ける、例えば、タイミングベルトの芯線として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、ガラス繊維コードに、アクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンとモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンとを混合させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させて被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
【0028】
従来のゴム補強用ガラス繊維に比較して、伝動ベルトに使用した際のガラス繊維コードと耐熱ゴムの接着強さを改善するために、本発明のゴム補強用ガラス繊維において、ゴム補強用ガラス繊維の被覆層を形成するためのガラス繊維被覆用塗布液には、アクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンに、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンを加える。
【0029】
アクリル酸エステル系樹脂(A)は、ガラス繊維コードと耐熱ゴムに粘着性を与え、伝動ベルトとした際に耐熱性を与える材料であり、母材をビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)として、さらに、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)を加えることで、伝動ベルトとした際に耐熱性および耐水性を与える。従来のOH基が豊富なレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を用いたゴム補強用ガラス繊維に比較して、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)を用いることで、本発明のゴム補強用ガラス繊維は、伝動ベルトとした際に耐熱性および耐水性が明らかに向上する。
【0030】
前記アクリル酸エステル系樹脂(A)には、アクリル酸エステルおよび/またはメタアクリル酸エステルからなるモノマーを含むモノマー混合物を、ポリビニルアルコールまたはその変性物を保護コロイドとして重合させることにより得られるアクリル酸エステル系重合体のエマルジョンを挙げられる。尚、前記アクリル酸エステル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステルから選択されるモノマーを含むモノマー混合物を特定のポリビニルアルコールを保護コロイドとして重合させて得られるアクリル酸エステル系共重合体のエマルジョンを配合してなるものであり、ここで使用する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルコールとの(メタ)アクリル酸エステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、これらの(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる1種のモノマーを単独で使用してもよいが、通常は2種以上のモノマーを混合して使用する。
【0031】
尚、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。さらに、モノマーとして、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを併用することができる。エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジルアリルエーテル等が挙げられる。
【0032】
このようなアクリル系モノマーに水溶性コロイドとしてのポリビニルアルコールまたは、その変性物を加えて乳化重合したアクリル酸エステル系エマルジョン、言い換えれば、一般的な低分子量の界面活性剤を使用せず、水溶性高分子を保護コロイドとして重合させたものであるアクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンとして、例えば、日信化学工業株式会社より、商品名ビニブラン、保護コロイド重合系グレードとして型番2680、2683、2684、2685、2687、2689等が粘着剤、繊維加工剤、シーラント、接着剤として市販されており、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層を形成するための成分の一つとして、ガラス繊維被覆用塗布液に使用できる。
【0033】
一方、本発明のゴム補強用ガラス繊維において、ゴム補強用ガラス繊維の被覆層を形成するためのガラス繊維被覆用塗布液に、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンに加える、他のアクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンとして、アクリル酸エステルをベースにカルボキシル基等の官能基を導入して変性したアクリル酸エステル系ラテックス、具体的には分子構造中にカルボキシル基を有してなるアクリル酸エステル系共重合体ラテックスである自己架橋型アクリレートラテックスが挙げられる。
【0034】
このようなアクリル系共重合体ラテックスとして、例えば、日本ゼオン株式会社より、商品名Nipol、型番LX851、LX852が市販されており、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層を形成するための成分の一つとして、ガラス繊維被覆用塗布液に使用される。
【0035】
本発明のゴム補強用繊維の被覆層の成分の一つとして用いるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)には、例えば、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエンの比が、重量比で10〜20:10〜20:60〜80の範囲のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)であるとして、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテクス、JSR株式会社製、商品名、0650、および日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol、型番1218FS等が市販されており、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層を形成するためのガラス繊維被覆用塗布液に使用できる。尚、前記重合比を外れたビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を用いたガラス繊維被覆用塗布液を使用し、被覆を施したゴム補強用ガラス繊維は、母材であるゴムとの接着性に劣るとされている。
【0036】
本発明のゴム補強用繊維の被覆層の成分の一つとして用いるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)は、モノヒドロキシベンゼン(D)とホルムアルデヒド(E)とを水酸化アルカリ等のアルカリ性触媒の存在下で反応して得られ、水溶性である。また、モノヒドロキシベンゼン(D)とホルムアルデヒド(E)とのモル比、E/D=0.5以上、3.0未満の範囲で反応させたものが好ましい。E/D=0.5未満では、得られるゴム補強用ガラス繊維の、母材ゴムとの接着性が悪くなり、E/D=3.0を越えるとガラス繊維被覆用塗布液がゲル化し易くなる。好ましくは、2.5以下である。
【0037】
伝動ベルトに使用した際に、ガラス繊維コードと母材ゴムとに所望の接着強さを得るには、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とからなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C)=3.0%以上、40.0%以下、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C)=1.0%以上、15.0%以下、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)が、C/(A+B+C)=45.0%以上、82.0%以下の範囲であることが好ましい。
【0038】
前記被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C)=3.0%より少ないと、伝動ベルトにした際に所望の耐熱性が得難く、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C)=40.0%より多いと、ガラス繊維コードと母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。所望の接着性、耐熱性が得られる被覆層中の好適なアクリル樹脂の組成範囲は、A/(A+B+C)=3.0%以上、40.0%以下である。
【0039】
前記被覆層中の、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C)=1.0%より少ないと、ガラス繊維コードと母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C)=15.0%より多いと、ゴム補強用ガラス繊維の被覆に粘着性が生じ被覆層が転写し易くなり、工程が汚れたりして作業性が悪くなる。よって、被覆層中の好適なモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の組成範囲は、B/(A+B+C)=1.0%以上、15.0%以下である。
【0040】
前記被覆層中の、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)が、C/(A+B+C)=45.0%より少ないと、ガラス繊維コードと母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)が、C/(A+B+C)=82.0%より多いと、ゴム補強用ガラス繊維の被覆に粘着性が生じ被覆層が転写し易くなり、工程が汚れたりして作業性が悪くなる。よって、被覆層中の好適なビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)の組成範囲は、C/(A+B+C)=45.0%以上、82.0%以下である。
【0041】
本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維被覆用塗布液の組成物の一つであるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)の一部を、他のゴムエラストマーに替えても良い。ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のみでは、ゴム補強用ガラス繊維の被覆に粘着性が生じ被覆層が転写し易くなり、工程が汚れたりして作業性が悪くなる。他のゴムエラストマーとしてカルボキシル基変性スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム等も挙げられるが、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)との相性が良いスチレン−ブタジエン共重合体(F)が特に好適に使用でき、本発明のゴム補強用ガラス繊維の特徴であるゴムとの接着性および耐熱性を損なわないF/C=5.0重量%〜80.0重量%の範囲で、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)に替えて使用できる。このようなスチレン−ブタジエン共重合体として、例えば、日本エイアンドエル株式会社から、商品名、J−9049が市販されており、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層を形成するためのガラス繊維被覆用塗布液に使用できる。
【0042】
さらに、本発明のゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムに埋設させ伝動ベルトとして用いた際、高温の環境下における長時間の使用において、被覆層が接着の初期強さを持続し且つ寸法安定性に優れること、即ち、耐熱性を必要とする際は、ゴムに埋設する前にクロロスルホン化ポリエチレン(G)とビスアリルナジイミド(H)とを有機溶剤に分散させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布し、更なる被覆層を設けることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、キシレンが挙げられる。
【0043】
この際のビスアリルナジイミド(H)の配合率は、重量%で表して、クロロスルホン化ポリエチレン(G)の重量に対してH/G=0.3%以上、10.0%以下である。H/G=0.3%より少ないと、前述の耐熱性改善の効果が得がたい。H/G=10.0%より多いとガラス繊維と母材ゴムとの接着強さが弱くなる。
【0044】
ビスアリルナジイミド(H)は熱硬化性イミドの一種であり、低分子量のビスアリルナジイミド(H)は他の樹脂との相溶性に優れており、硬化後のビスアリルナジイミド(H)樹脂は、ガラス転移点が300℃以上で、前記伝動ベルトの耐熱性を高める効果がある。
【0045】
ビスアリルナジイミド(H)は、その硬化前において化2の構造式で表され、化1の構造式のアルキル基は、化2または化3の構造式などで示され、特に、N−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドが好適に使用される。
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
ビスアリルナジイミド(H)は、丸善石油化学株式会社よりBANI−M、BANI−H、BANI−X等の商品名で市販され、本発明のゴム補強用ガラス繊維に好適に使用される。
【0050】
尚、ガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンとモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンとを混合させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させて被覆層を設けてなることを特徴とする本発明のゴム補強用ガラス繊維に、更なる2次被覆を設ける際、ビスアリルナジイミド(H)に換えて、マレイミドを含有する2次被覆層を設ける、有機ジイソシアネートおよびメタクリル酸亜鉛を含有する2次被覆層を設ける、またはトリアジン系化合物を含有する2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維も考えられるが、上述の理由で伝動ベルトの耐熱性において、言い換えれば、伝動ベルトに耐熱性を必要とする際は、ゴムに埋設する前にクロロスルホン化ポリエチレン(G)とビスアリルナジイミド(H)とを有機溶剤に分散させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布し、更なる被覆層を設けることが特に好ましい。
【0051】
本発明のゴム補強用ガラス繊維に耐熱性を与えるためには、2次被覆の組成物として、クロロスルホン化ポリエチレン(G)を用いることが好ましく、さらに、加硫剤としてのニトロソ化合物、例えば、p−ニトロソベンゼン、無機充填剤、例えばカーボンブラックまたは酸化マグネシウムを前記ガラス繊維2次被覆用塗布液に添加し、ゴム補強用ガラス繊維に2次被覆層に加えることは、該ゴム補強用ガラス繊維をゴムに埋設して作製した伝動ベルトの耐熱性を高める一層の効果がある。ガラス繊維2次被覆用塗布液に、塗布液中のクロロスルホン化ポリエチレン(G)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、加硫剤を0.5%以上、20.0%以下、無機充填材を10.0%以上、70.0%以下の範囲で添加すると、作製した伝動ベルトは、いっそうの耐熱性を発揮する。加硫剤の含有が0.5%より少ない、無機充填材の含有が10.0%より少ないと耐熱性を向上させる効果が発揮されず、加硫剤を、20.0%を超えて、無機充填材を、70.0%を超えて加える必要はない。
【0052】
本発明のゴム補強用ガラス繊維に被覆層を形成するためのガラス繊維被覆用塗布液には、老化防止剤、pH調整剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物、pH調整剤にはアンモニアが挙げられる。
【0053】
本発明のゴム補強用ガラス繊維は、種々のゴム、特にクロロプレンゴムおよび水素化ニトリルゴム等の耐熱ゴムに埋設した際に、優れた接着性を示し伝動ベルトを作製する際のゴム補強用として有効に働く。
【0054】
このように、本発明のゴム補強用ガラス繊維は、従来のゴム補強用ガラス繊維に比較して、耐熱ゴム、例えばHNBRに埋設して伝動ベルトとした際に、伝動ベルトに優れた耐熱性を与え、耐水性および耐熱性を併せ持たせる。
【0055】
尚、本発明において、伝動ベルトとは、エンジン、その他機械を運転するために、エンジン、モーター等の駆動源の駆動力を伝えるベルトのことであり、かみ合い伝動で駆動力を伝える歯付きベルト、摩擦伝動で駆動力を伝えるVベルトが挙げられる。
【0056】
また、自動車用伝動ベルトとは自動車のエンジンルーム内で用いられる耐熱性の前記伝動ベルトのことである。
【0057】
タイミングベルトとは、前記自動車用伝動ベルトの中で、カムシャフトを有するエンジンにおいて、クランクシャフトの回転をタイミングギヤに伝えカムシャフト駆動させバルブの開閉を設定されたタイミングで行うための、プーリーの歯とかみ合う歯を設けた歯付きベルトのことである。自動車用伝動ベルトには、エンジンの熱に対する耐熱性と雨天走行における耐水性が必要であり、高温下および多湿下での長時間の走行後において、引っ張り強さを持続し寸法安定性に優れていること、即ち、耐熱性および耐水性が要求される。本発明のゴム補強用ガラス繊維、該ゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムに埋設してなる伝動ベルト、例えばHNBRに該ゴム補強用ガラス繊維を埋設してなるタイミングベルトは耐熱性および耐久性に優れる。
【実施例】
【0058】
本発明のアクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンを用いたゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜8)、比較としてアクリル系化合物を何ら用いていない従来のゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜3)のクロロプレンゴム、およびクロロプレンゴムに対してより使用温度の高い水素化ニトリルゴムに対する接着強さの評価、および高温の環境下における長時間の使用において、被覆層が接着の初期強さを持続し且つ寸法安定性に優れること、即ち、耐熱性の評価を行った。
【0059】
表1が、接着強さおよび耐熱性の評価結果である。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例1
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
アクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョン(日信化学工業株式会社製、商品名、ビニブラン、型番2684、固形分、30重量%)、113重量部と、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液(固形分、8.7重量%)、233重量部と、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の重量割合で含有するビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41重量%)、527重量部と、アンモニア水(濃度、25重量%)、22重量部とに、水を添加し全体として1000重量部になるようにして、ガラス繊維被覆用塗布液を調製した。尚、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)には、モノヒドロキシベンゼン(D)に対するホルムアルデヒド(E)のモル比、E/D=2.0のものを用いた。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
次いで、径9μmのガラス繊維フィラメントを200本集束したガラス繊維コード3本を引き揃え、前記ガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させて被覆層を設けた。
【0062】
この時の固形分付着率、即ち、被覆層の重量割合は、被覆層を設けたガラス繊維コードの全重量に対して、19重量%であった。
【0063】
前記被覆層を設けたガラス繊維コードを、280℃で22秒間乾燥させた後、2.54cm当たり2.0回の下撚りを与え、さらに13本引き揃えて2.54cm当たり2.0回の上撚りを施し得られたものをゴム補強用ガラス繊維とした。
【0064】
該ゴム補強用ガラス繊維において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とからなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C)=12.5%、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C)=7.5%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)が、C/(A+B+C)=80.0%である。
(使用ゴム)
ゴム補強用繊維を埋没させるための母材ゴムとして、クロロプレンゴム100重量部に対して、カーボンブラック、45重量部と、亜鉛華、5重量部と、老化防止剤、5重量部と、プロセスオイル、5重量部と、酸化マグネシウム、4重量部と、ステアリン酸、1重量部と、硫黄、0.5重量部と、加硫促進剤、1.5重量部と、パラフィンワックス、0.5重量部とを配合させてなる耐熱ゴムを使用した。
(接着強さの評価)
前記耐熱ゴムからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維を20本並べ、その上から布をかぶせ、温度、140℃下、196ニュートン/cm2
(以下、ニュートンをNとする)の条件で端部を除き押圧し、25分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のための試験片を得た。この試験片の接着強さの測定を、端部においてゴムとゴム補強用繊維を個別にクランプにてはさみ、剥離速度を50mm/分とし、ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を剥離時の強さとした。
【0065】
表1の実施例1に示すように、剥離時の接着強さは、260Nであり、比較例1、2に示した従来のゴム補強用繊維に比べて、大きな接着強さを有していた。尚、表1において、ガラス繊維とゴムが界面から剥離していない状態を完全ゴム破壊とし、界面から一部のみでも剥離している状態を部分ゴム破壊としたが、実施例1に示す様に完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。
(耐熱性の評価)
幅5mm、深さ2.5mmの溝を施した金型の溝部に、幅5mmに裁断した布を敷き、その上に9.8Nの張力で1本のゴム補強用ガラス繊維を張り、その上から5mm幅に裁断した3mm厚の前記クロロピレンゴムからなるゴムシートを被せ、温度、140℃下、196N/cm2の条件で、25分間押圧して平ベルトを成形した。その後、長さ、25cmに切断し、温度、140℃下、24時間加熱処理した後、MIT屈曲試験機に片方の端部を取りつけて、もう片方の端部に3kgの重りを吊し、MIT屈曲試験機に取りつけた方の端部を動かし、曲げ角、120゜、120回/分の屈曲条件で1200回折り曲げた。次いで、両端を固定して、片側の端部を、引っ張り速度、250mm/分、クランプ間隔、250mmで引っ張り、破壊される際の最大強さである残存強さ、即ち、ゴム補強用繊維が破断する際の強さを測定し、耐熱性の評価行った。
【0066】
表1の実施例1に示すように、残存強さは600Nであり、好ましい耐熱性を有していた。
実施例2
アクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョン(日信化学工業株式会社製、商品名、ビニブラン、型番、2684、固形分、30重量%)113重量部と、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液(固形分、8.7重量%)234量部と、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の割合で含有するビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名ピラテックス、固形分、41重量%)408重量部と、スチレン−ブタジエン共重合体(F)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、型番J−9049、固形分、48重量%)101重量部と、アンモニア水(濃度、25重量%)22重量部とに水を添加して全体として1000重量部になるようにガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1に示した手順でゴム補強用ガラス繊維を用意した。
【0067】
該ゴム補強用ガラス繊維において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)からなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C+F)=12.5%、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C+F)=7.5%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)を合わせて、(C+F)/(A+B+C+F)=80.0%である。
【0068】
実施例1と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の実施例2に示すように、剥離時の強さは335Nであり、比較例1、2に示した従来のゴム補強用繊維に比べて、大きな接着強さを有していた。尚、表1の実施例2に示すように、剥離状況は完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。また、表1の実施例2に示すように、残存強さは655Nであり、好ましい耐熱性を有していた。
実施例3
実施例2のガラス繊維被覆用塗布液に対して、アクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョン(日信化学工業株式会社製、2684、固形分30重量%)の添加量を230重量部、スチレン−ブタジエン共重合体(F)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、J−9049、固形分、48重量%)の添加量を31重量部に替え、実施例1に示した手順でゴム補強用繊維を用意した。
【0069】
該ゴム補強用ガラス繊維において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)からなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C+F)=25.0%、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C+F)=7.5%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)を合わせて、(C+F)/(A+B+C+F)=67.5%である。
【0070】
実施例1と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の実施例3に示すように、剥離時の強さは351Nであり、比較例1、2に示した従来のゴム補強用繊維に比べて、大きな接着強さを有していた。尚、表1の実施例3に示すように、剥離状況は完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。また、表1の実施例3に示すように、残存強さは682Nであり、好ましい耐熱性を有していた。
実施例4
実施例2のガラス繊維被覆用塗布液に対して、アクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョン(日信化学工業株式会社製、2684、固形分、30重量%)を同じく日信化学工業株式会社製の型番2689(固形分、30重量%)に替えて113重量部添加し、実施例1に示した手順で、ゴム補強用ガラス繊維を用意した。
【0071】
該ゴム補強用ガラス繊維において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)とからなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C+F)=12.5%、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C+F)=7.5%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体とを合わせて、(C+F)/(A+B+C+F)=80.0%、である。
【0072】
実施例1と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の実施例4に示すように、剥離時の強さは335Nであり、比較例1、2に示した従来のゴム補強用繊維に比べて、大きな接着強さを有していた。尚、表1の実施例4に示すように、剥離状況は完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。また、表1の実施例4に示すように、残存強さは640Nであり、好ましい耐熱性を有していた。実施例5
実施例4のガラス繊維被覆用塗布液に対して、アクリル酸エステル系樹脂(A)エマルジョン(日信化学工業株式会社製、2689、固形分30重量%)の添加量を225重量部、スチレン=ブタジエンエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、型番、J−9049、固形分、48%)の添加量を31重量部として、実施例1に示した手順でゴム補強用繊維を用意した。
【0073】
該ゴム補強用ガラス繊維において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)とからなる固形分の総重量を基準として、重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C+F)=25.0%、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C+F)=7.5%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)とを合わせて、(C+F)/(A+B+C+F)=67.5%、である。
【0074】
実施例1と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の実施例5に示すように、剥離時の強さは312Nであり、比較例1、2に示した従来のゴム補強用繊維に比べて、大きな接着強さを有していた。尚、表1の実施例5に示すように、剥離状況は完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。また、表1の実施例5に示すように、残存強さは670Nであり、好ましい耐熱性を有していた。
実施例6
実施例2におけるゴム補強用ガラス繊維を、クロロスルホン化ポリエチレン(G)(東ソー株式会社製、型番、TS−430)、100重量部と、p−ジニトロベンゼン、40重量部と、ビスアリルナジイミド(H)(丸善石油化学株式会社製、商品名、BANI−H)1重量部と、カーボンブラック、30重量部と、キシレン、1315重量部とを含むガラス繊維被覆用塗布液で塗布し、110℃、2分間乾燥を行い、更なる被覆層(二次被覆層)を得、二層の被覆層からなるゴム補強用ガラス繊維を得た。この二次被覆層による固形分付着率、即ち、二次被覆層の重量割合は、被覆層を設けたガラス繊維コードの全重量に対して、3.5重量%であった。
(使用ゴム)
実施例1〜実施例5で使用したクロロピレンゴムに替えて、水素化ニトリルゴム用いた。水素化ニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製、型番2010)100重量部に対して、カーボンブラック、40重量部と、亜鉛華、5重量部と、ステアリン酸、0.5重量部と、1,3−ジ(t−ブチルペロキシイソプロピル)ベンゼン5重量部とを配合させてなる耐熱ゴムを使用した。
(接着強さの評価)
前記耐熱ゴムからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記の2層の被覆層を有するゴム補強用ガラス繊維を20本並べ、その上から布をかぶせ、温度、170℃下、196N/cm2での条件で端部を除き押圧し、30分間加硫させつつ成形して接着強さ評
価のための試験片を得た。この試験片の接着強さの測定を、端部においてゴムとゴム補強用繊維を個別にクランプにてはさみ、剥離速度を50mm/分とし、ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を剥離時の強さとした。
【0075】
表1の実施例6に示すように、剥離時の強さは、432Nであり、比較例3に示した従来のゴム補強用繊維に比べて好ましい接着強さを有していた。尚、表1の実施例6に示す様に完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。
(耐熱性の評価)
幅、5mm、深さ、2.5mmの溝を有した金型の溝部に、幅5mmに裁断した布を敷き、その上に9.8Nの張力で1本のゴム補強用ガラス繊維を張り、その上に5mm幅に
裁断した3mm厚の前記水素化ニトリルゴムからなるゴムシートを被せ、温度、170℃下、196N/cm2も条件で、30分間押圧して平ベルトを成形した。その後、長さ、25cmに切断し、温度、160℃下、24時間加熱処理した後、MIT屈曲試験機に片方の端部を取りつけて、もう片方の端部に3kgの重りを吊し、MIT屈曲試験器に取り付けた方の端部を動かし、曲げ角、120゜、120回/分の屈曲条件で1200回折り曲げた。次いで、両端を固定して、引っ張り速度、250mm/分、クランプ間隔、250mmで引っ張り、破壊される際の最大強さである残存強さ、即ち、ゴム補強用繊維が破断する際の強さを測定し、耐熱性の評価行った。
【0076】
表1の実施例6に示すように、残存強さは845Nであり、好ましい耐熱性を有していた。
実施例7
アクリル酸エステル系共重合体ラテックス(日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol、型番、LX851、固形分、45重量%)75重量部と、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の割合で含有するビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名ピラテックス、固形分、41重量%)408重量部と、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)(固形分、8.7重量%)234重量部とスチレン−ブタジエン共重合体(F)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、型番J−9049、固形分、48重量%)101重量部と、アンモニア水(濃度、25重量%)22重量部とに水を添加して全体として1000重量部になるようにガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1に示した手順でゴム補強用ガラス繊維を用意した。
【0077】
該ゴム補強用ガラス繊維において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)とからなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C+F)=12.5%、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C+F)=7.5%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)を合わせて、(C+F)/(A+B+C+F)=80.0%である。
【0078】
実施例6に示した手順で、クロロスルホン化ポリエチレン(G)(東ソー株式会社製、TS−430)、100重量部と、p−ジニトロベンゼン、40重量部と、ビスアリルナジイミド(H)(丸善石油化学株式会社製、商品名BANI−H)、1重量部と、カーボンブラック、30重量部と、キシレン、1315重量部とを含むガラス繊維被覆用塗布液でさらに処理し、110℃、2分間乾燥を行なった。この処理による固形分付着率は3.5重量%であった。
【0079】
実施例6と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の実施例7に示すように、剥離時の強さは465Nであり、比較例1、2に示した従来のゴム補強用繊維に比べて、大きな接着強さを有していた。尚、表1の実施例7に示すように、剥離状況は完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。また、表1の実施例2に示すように、残存強さは883Nであり、好ましい耐熱性を有していた。
実施例8
アクリル酸エステル系共重合体ラテックス(日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol、型番、LX852、固形分、45重量%)75重量部と、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒドの縮合物の水溶液(固形分、8.7重量%)234重量部と、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の割合で含有するビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名ピラテックス、固形分、41重量%)408重量部と、スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、型番J−9049、固形分、48重量%)101重量部と、アンモニア水(濃度、25重量%)22重量部とに水を添加して全体として1000重量部になるようにガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1に示した手順でゴム補強用ガラス繊維を用意した。
【0080】
該ゴム補強用ガラス繊維において、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)からなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C+F)=12.5%、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C+F)=7.5%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とスチレン−ブタジエン共重合体(F)を合わせて、(C+F)/(A+B+C+F)=80.0%である。
【0081】
実施例6に示した手順で、クロロスルホン化ポリエチレン(G)(東ソー株式会社製、TS−430)、100重量部と、p−ジニトロベンゼン、40重量部と、ビスアリルナジイミド(H)(丸善石油化学株式会社製、商品名BANI−H)、1重量部と、カーボンブラック、30重量部と、キシレン、1315重量部とを含むガラス繊維被覆用塗布液でさらに処理し、110℃、2分間乾燥を行なった。この処理による固形分付着率は3.5重量%であった。
【0082】
実施例6と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の実施例8に示すように、剥離時の強さは425Nであり、比較例3に示した従来のゴム補強用繊維に比べて、大きな接着強さを有していた。尚、表1の実施例8に示すように、剥離状況は完全ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していた。また、表1の実施例8に示すように、残存強さは860Nであり、好ましい耐熱性を有していた。
比較例1
実施例2のガラス繊維被覆用塗布液に対して、アクリル酸エステル系樹脂(A)エマルジョン(日信化学工業株式会社製、2684、固形分30%)を無添加とし、スチレン−ブタジエン(F)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、J−9049、固形分、48%)の添加量を172重量部に替えて、実施例1に示した手順でゴム補強用ガラス繊維を用意した。
【0083】
実施例1と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の比較例1に示すように、剥離時の強さは172Nであり、実施例1〜6に示す本発明のゴム補強用繊維に比べて、接着強さが弱かった。尚、表1の比較例1に示す様に、破壊上状況は部分ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していない。また、表1の比較例1に示すように、残存強さは268Nであり、好ましい耐熱性を有していない。
比較例2
ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを15:15:70の割合で含有するビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名ピラテックス、固形分、41%)、408重量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(G)のエマルジョン(住友精化株式会社製CSM450、固形分、40重量%)、206重量部と、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物(固形分、8.7重量%)233重量部と、アンモニア水(25%)22重量部とを撹拌しながら添加し、全体として1000重量部になるようにガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1に示した手順でゴム補強用ガラス繊維を用意した。
【0084】
実施例1と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の比較例2に示すように、剥離時の強さは238Nであり、実施例1〜6に示す本発明のゴム補強用繊維に比べて、接着強さが弱かった。尚、表1における比較例2に示す様に、破壊上状況は部分ゴム破壊であり、好ましい接着強さを有していない。また、表1の比較例2に示すように、残存強さは463Nであり、好ましい耐熱性を有していない。
比較例3
比較例2で用意したゴム補強用ガラス繊維に、実施例6に示した手順で、クロロスルホン化ポリエチレン(G)(東ソー株式会社製、TS−430)、100重量部と、p−ジニトロベンゼン、40重量部と、ビスアリルナジイミド(H)(丸善石油化学株式会社製、商品名BANI−H)、1重量部と、カーボンブラック、30重量部と、キシレン、1315重量部とを含むガラス繊維被覆用塗布液でさらに処理し、110℃、2分間乾燥を行なった。この処理による固形分付着率は3.5重量%であった。
【0085】
実施例6と同様の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価、耐熱性の評価を行ったところ、表1の比較例3に示すように、剥離時の強さは282Nであり、実施例6に示す本発明のゴム補強用繊維に比べて、接着強さが弱かった。尚、表1の比較例3に示す様に、破壊上状況は部分ゴム破壊であり、好ましい所望の接着強さを有していない。また、表1の比較例3に示すように、残存強さは578Nであり、実施例6に比べて低い強さであった。
【0086】
本発明者らが鋭意検討した結果、アクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンに、モノヒドロシキシベンゼン(D)にホルムアルデヒド(E)を反応させてなるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンを混合した1次被覆用塗布液を、ガラス繊維コードに塗布後、乾燥させて1次被覆層とし、その上層にクロロスルホン化ポリエチレン(G)とビスアリるナジイミド(H)とを有機溶剤に分散させた2次被覆用塗布液を塗布後、乾燥させた2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維をHNBRに埋設し、伝動ベルトとしたところ、ゴム補強用ガラス繊維とHNBRとに好ましい初期の接着強さを得、伝動ベルトに優れた耐水性および耐熱性を併せ持たせる、具体的には、高温下および注水下の長時間の走行試験後も引っ張り強さを維持し、伝動ベルトに優れた寸法安定性を与えるゴム補強用ガラス繊維が提供されることがわかった。
【0087】
このことは、従来のガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させてなる被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維に比較して、親水性基であるOH基を2個有するレゾルシンとホルムアルデヒドを縮合してなるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物に対し、OH基が1個であるモノヒドロキシベンゼン(D)とホルムアルデヒド(E)を縮合してなるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)を用いることで、本発明のゴム補強用ガラス繊維において、耐熱性および耐水性が向上したことによると思える。
【0088】
また、従来のゴム補強用ガラス繊維における、ともに親水性であるアクリル酸エステル系樹脂とレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の組み合わせにビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体を加えた被覆層より、本発明のゴム補強用ガラス繊維における、アクリル酸エステル系樹脂(A)に、OH基が1個であるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の組み合わせにビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を加えた被覆層の方がより疎水化し、耐熱性および耐水性が向上したことによると思える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂(A)のエマルジョンとモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)の水溶液とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンとを混合させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させて被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
【請求項2】
前記アクリル酸エステル系樹脂(A)が、アクリル酸エステルおよび/またはメタアクリル酸エステルからなるモノマーを含むモノマー混合物を、ポリビニルアルコールまたはその変性物を保護コロイドとして重合させることにより得られるアクリル酸エステル系重合体のエマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項3】
前記アクリル酸エステル系樹脂(A)が分子構造中にカルボキシル基を有してなるアクリル酸エステル系共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項4】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、モノヒドロキシベンゼン(D)に対するホルムアルデヒド(E)のモル比を、E/D=0.5以上、3.0以下としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維であって、被覆層中のアクリル酸エステル系樹脂(A)とモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とからなる固形分の総重量を100%基準とする重量%で表して、アクリル酸エステル系樹脂(A)が、A/(A+B+C)=3.0%以上、40.0%以下、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(B)が、B/(A+B+C)=1.0%以上、15.0%以下、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)がC/(A+B+C)=45.0%以上、82.0%以下の範囲に含まれてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維であって、被覆層中のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のF/C=5.0重量%以上、80.0重量%以下を、スチレン−ブタジエン共重合体(F)に替えてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維にクロロスルホン化ポリエチレン(G)と、クロロスルホン化ポリエチレン(G)の重量に対して、H/G=0.3重量%以上、10.0重量%以下のビスアリルナジイミド(H)とを有機溶剤に分散させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布し、更なる被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維が母材ゴムに埋設されてなることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維が水素化ニトリルゴムに埋設されてなることを特徴とする自動車用タイミングベルト。

【公開番号】特開2008−133553(P2008−133553A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318983(P2006−318983)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】