説明

ゴム補強用ポリエステルスリットヤーン及びその製造方法

【課題】ゴムとの接着性、屈曲疲労性、耐久性に優れ、タイヤ、ベルト、ホース等のゴム補強材をして好適なゴム補強用ポリエステルスリットヤーン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルからなるスリットヤーンであって、該スリットヤーンの表面に少なくとも2層の剤が付着し、該表面から第一層目がポリ塩化ビニルラテックス、架橋剤を含有するプライマーであり、第二層目がポリ塩化ビニルラテックスを含むレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系接着剤であることを特徴とするゴム補強用ポリエステルスリットヤーンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用ポリエステルスリットヤーンに関し、さらに詳しくはゴムとの接着性、屈曲疲労性、耐久性に優れ、タイヤ、ベルト、ホース等の補強材として好適に用いられるゴム補強用ポリエステルスリットヤーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境破壊、石油資源枯渇といった課題に対し、自動車、電機機器をはじめ省エネルギー化、エネルギー代替化が非常に注目され、特に燃費向上のための自動車の軽量化に伴う、タイヤ、ベルト、ホースなど自動車ゴム部材の軽量化、コンパクト化のニーズが急速に高まっている。こういったゴム部材はポリエステルをはじめとする有機繊維で補強されているのが一般的であり、その中でも補強繊維としてはもっとも汎用性のあるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びその誘導体に代表されるポリエステル繊維が多く用いられている。しかしながら、極性が低い分子構造からなるポリエステル繊維はゴムとの接着性が良好ではないという欠点を有しており、ポリエステル繊維とゴムとの接着剤としては、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤が用いられているのが一般的である。
【0003】
こういう背景のもと、ゴム補強用ポリエステル繊維の形態を変えることによるゴム部材の省エネルギー、耐久性、軽量化など高性能化を図る試みがなされている。例えば、特許文献1(特開2009−13860号公報)には、ベルト幅方向に200dtex以上のモノフィラメントをベルト張力帯用原反5cmあたりに30,000dtex以上打ち込むことにより推力ロスを抑制する高負荷伝動用Vベルトが開示されている。しかし、この方法では直径の大きなモノフィラメントを多く使用するためにベルトのサイズ、重量が大きくなるため軽量化、コンパクト化に対しては課題を有している。また、特許文献2(特開平9−67732号公報)には、タイヤのカーカス材として耐疲労性、操縦安定性に優れたポリエステルモノフィラメントコードが開示されている。しかし、モノフィラメントは曲げに対する柔軟性が低いため、実用上耐え得る耐疲労性には至っておらず、実用化できていないのが現状である。さらに、特許文献3(特開2004−224277号公報)には、テープ状のポリエチレンナフタレートをタイヤのベルト補強層に用いることによって補強層薄肉化によるタイヤ軽量化を図るとともに、高速耐久性、操縦安定性を高めることが開示されている。補強材をテープ状にすることによってモノフィラメントに比べて曲げ歪みに対する耐久性は大幅に向上するものの、補強材形態が平面状であるため、実用化されている撚糸コード形態とは異なって接着のアンカー効果がないためにゴム接着性が低い課題があり、現状実用化には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−13860号公報
【特許文献2】特開平9−67732号公報
【特許文献3】特開2004−224277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、ゴムとの接着性、屈曲疲労性、耐久性に優れ、タイヤ、ベルト、ホース等のゴム補強材をして好適なゴム補強用ポリエステルスリットヤーン及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため検討を行い、表面に凹凸の少なく平滑なポリエステルスリットヤーンにおいても、十分なゴム接着性を付与することができ、屈曲疲労性が良好であり、そのため耐久性にも優れたゴム補強用ポリエステルスリットヤーンが得られる表面改質剤を見出したものである。
【0007】
かくして本発明によれば、ポリエステルからなるスリットヤーンであって、該スリットヤーンの表面に少なくとも2層の剤が付着し、該表面から第一層目がポリ塩化ビニルラテックス、架橋剤を含有するプライマーであり、第二層目がポリ塩化ビニルラテックスを含むレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系接着剤であることを特徴とするゴム補強用ポリエステルスリットヤーンが提供される。
【0008】
また、ポリエステルからなるスリットヤーンに、ポリ塩化ビニルラテックス及び架橋剤を含有するプライマーを付与した後、ポリ塩化ビニルラテックス及びレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスを含む接着剤を付与することを特徴とするゴム補強用ポリエステルスリットヤーンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴムとの接着性、屈曲疲労性、耐久性に優れ、タイヤ、ベルト、ホース等の補強材として好適に用いることができるゴム補強用ポリエステルスリットヤーンが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例および比較例における屈曲疲労性試験法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明においては、タイヤの軽量化、操縦安定性が図れる繊維素材として、ポリエステルスリットヤーンに着目したが、接着性や屈曲性の問題が有り、実用化の点でこれらが大きな課題であることがわかった。
【0012】
本発明に用いるゴム補強用ポリエステルスリットヤーン(単にポリエステルスリットヤーン、スリットヤーンと称することがある)は、ポリエステルフィルムを特定の幅にスリットし、フィラメント状としたものである。
【0013】
上記ポリエステルスリットヤーンは厚さが0.01〜0.5mmであることが好ましい。厚さが低すぎると実用上に耐えうる強度が得られず、一方、0.5mmを越える範囲で厚すぎると曲げに対して非常に硬くなるため、ゴム部材の成型が難しくなるばかりでなく、屈曲疲労性が著しく低下してしまう恐れがある。厚さは0.05〜0.3mmであることがより好ましい。
【0014】
また、本発明の該ポリエステルスリットヤーンは幅が0.1〜5mmであることが好ましい。この範囲であれば、ポリエステル処理コードのディップ処理工程に充分適用できるため工業的な観点から望ましい。幅が0.1mm未満では実用上に耐えうる強度が得られず、一方、幅が5mm以上ではディップ処理工程における腰折れ等の欠点が生じやすくという問題がある。該ポリエステルスリットヤーンの幅としては0.5〜3mmであることがより好ましい。
【0015】
さらに、本発明の該ポリエステルスリットヤーンは厚さに対する幅の比が2〜30であることが本発明の特徴である耐疲労性、耐久性を発揮する上で好ましい。該スリットヤーンの厚さに対する幅の比が2未満であると曲げに対する伸長圧縮歪みが大きくなるため耐疲労性が低下してしまい、一方、30を越えると垂直方向からの歪み入力に対してスリットヤーンが折れたりすることによって耐久性が著しく低下してしまう恐れがある。該ポリエステルスリットヤーンは厚さに対する幅の比は5〜20であることがより好ましい。
【0016】
本発明における該スリットヤーンの厚さ、幅の調整は、ポリエステルフィルムの厚みやスリットでカットする際のスリット幅で調整できるとともに、さらに後述するディップ処理工程での延伸によっても目的のサイズに調整することができる。
【0017】
また、本発明における該スリットヤーンの弾性率としては1〜30GPaであることがゴム補強材として実用上好ましく、より好ましくは3〜20GPaである。弾性率が1GPa未満であると高負荷時に伸びてしまうため補強材として実用性がなく、一方、30GPaを超えると補強材が硬いために曲げに対する耐久性や耐疲労性が著しく低下してしまう。
【0018】
本発明のポリエステルスリットヤーンを構成するポリエステルとしては、主にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート及びこれらを主体とするポリエステルであることが望ましく、繊度、糸質物性、微細構造、添加剤含有の有無、末端カルボキシル基濃度や分子量等のポリマー性状は何等限定されるものではない。
【0019】
本発明においては、上記ポリエステルスリットヤーンの表面に、少なくとも2層の剤が付着し、該表面から第一層目がポリ塩化ビニルラテックスと架橋剤を含むプライマーであり、第二層目がポリ塩化ビニルラテックスを含むレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系接着剤であることが肝要である。
【0020】
本発明においては上記プライマーに使用するゴムラテックスとして、ポリ塩化ビニルラテックスを用いることが特徴である。つまり、撚糸コードのようなマクロ的な凹凸のない平面状のスリットヤーンにおいては、ゴムとの接着において物理的なアンカー効果がなくてもポリエステルと親和性が非常に高いために良好なゴム接着力が得られ、また、緻密な皮膜構造が得られることによって共加硫時やゴム部材長期使用下における熱履歴を受けた際の接着力の低下を抑制でき、さらには、第二層目の接着剤にもポリ塩化ビニルラテックスを併用することによって、従来平面状のスリットヤーンでは不可能であった充分実用レベルのゴム接着力を発揮することがわかった。ラテックス成分としては、使用するゴムマトリックス組成物に応じて、例えば天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン系ゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス等を併用して使用することもでき、中でも、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを併用使用するのが好ましい。
【0021】
ポリ塩化ビニルラテックスは、耐薬品性に優れ、緻密な膜を形成することから、特に第一層目として付与して前記効果が得られること確認されている。更に高い性能を得ようとした場合、緻密性向上のため、高Tgの樹脂を使用することが好ましいが、この場合、接着剤層が固くなり、耐疲労性の低下などの問題が生じる。また、脆くなることからコードが伸張圧縮などの疲労を受けた場合、皮膜が割れて当初の性能を発現できない問題がある。
【0022】
この問題を解決する手段として、弱い二次結合を利用して緻密な架橋構造を得ることが考えられる。
導入する手法として各種存在するが、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などを導入することが考えられる。カルボキシル基は、アクリル酸などを共重合することにより容易に導入可能であり、入手も容易である。
【0023】
カルボキシル基を分子内に有するポリ塩化ビニルラテックスを用いた場合、メイン骨格構造による分子間相互作用だけでなく、カルボキシル基に起因する相互作用を形成することが可能である。この結合は比較的弱い相互作用であるため、皮膜の柔軟性を維持しつつ緻密な膜構造を持つことが可能と考えられる。
【0024】
このために、ゴム中に存在するアミンが接着剤層を通過して起こるアミノリシスを抑制し、ゴム・ポリエステル複合体が高温にさらされた後に起こる接着低下を防ぐことが可能である。
【0025】
本発明で用いるカルボキシル変性ポリ塩化ビニルラテックスとしては、分子内にカルボキシル基を有しつつ、皮膜形成温度が240℃以下、特に180℃以下が好ましい。この塩化ビニル成分が共重合されたポリマーとしては、塩化ビニルの単独もしくは各種共重合した化合物であり、塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデン、塩化ビニルとアクリロニトリル、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合化合物、塩化ビニル、酢酸ビニル及び無水マレイン酸の三元重合体、あるいはそれらの混合物を挙げることができる。
【0026】
また、ガラス転移点が60〜100℃であるものが好ましい。ガラス転移点が上記温度以下のときは、膜としての緻密さが不十分であり、高温にさらされた後に起こる十分な接着性能を発現することができない。上記温度以上では、皮膜が硬くなり疲労性が低下すると共に、膜がもろくなることにより疲労を受けた後の膜均一性が低下することにより、製品での高温にさらされた後に起こる十分な接着性能を発現することができない。
【0027】
該カルボキシル変性ポリ塩化ビニルラテックスは、プライマー成分中の含有量が30〜60重量%であることが好ましい。該含有量が30重量%未満の場合、接着剤膜の緻密性が十分に上がらず、高温における接着性能が十分に得られない傾向にある。一方、該含有量が60重量%より多い場合、第二層との親和性が低下し、初期接着力も含め接着性能が低下する。
【0028】
一方、前記プライマーは、架橋剤を含む必要があり、該架橋剤として、ポリエポキシド化合物および/またはブロックドイソシアネート化合物を含有することが好ましい。さらに加えてゴムラテックスを含有させると、被着体であるゴムとの共加硫がおこり、剥離テスト時に高いゴム付きが実現されるため好ましい。
【0029】
上記ポリエポキシド化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を該化合物1kg当り2g当量以上含有する化合物が好ましい。具体的には、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ピス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸又は過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、即ち3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3、4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジベートなどを挙げることができる。これらのうち、特に多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、即ち多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現するので好ましい。
【0030】
同じく、上記ブロックドポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加化合物であり、加熱によりブロック成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生じるものである。
【0031】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフエニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート等が挙げられる。特にトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフエニルイソシアネートの如き芳香族ポリイソシアネートが優れた性能を発現するので好ましい。
【0032】
ブロックドポリイソシアネート化合物のブロック化剤としては、例えばフェノール,チオフェノール,クレゾール,レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類,フタル酸イミド類、カプロラクタム,バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類及び酸性亜硫酸ソーダ等がある。
【0033】
上記、ポリエポキシド化合物、ブロックドイソシアネート化合物、塩化ビニル成分が共重合されたポリマーらの成分は、通常乳化液、水分散液、あるいは水溶液として接着剤組成物に配合される。乳化液または水分散液にするには、例えばその化合物を、そのままあるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解した後、公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化または分散させればよい。
【0034】
本発明におけるプライマー、接着剤のマトリックス成分を水分散物として用いる際の分散剤、即ち界面活性剤の適当な量は、プライマーの全固型分に対し、0〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%であり、上記範囲を超えると接着性が低下する傾向にある。アルキレングリコールや水溶性シリコーンなどの表面張力低下剤の添加も有効であり、これらの添加により加工時の濡れ性が向上するため、低濃度で処理した場合の性能が向上する。
【0035】
また、かかるプライマーをスリットヤーンに付着せしめるには、ローラーとの接触、ドクターナイフを用いたコーティング、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、該スリットヤーンに対する固形分付着量は、0.1〜3重量%の範囲が好ましい。該繊維に対する固形分付着量を制御するためには、圧接ローラーによる絞り、スクレーパー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引等手段により行うことができ、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
【0036】
本発明では、このようなプライマーをスリットヤーンに付与した後、50℃以上で、ポリエステルの融点より10℃以上低い温度の範囲で乾燥・熱処理する。より好ましくは、200〜270℃の温度範囲で、0.5〜5分間、好ましくは、1〜3分間乾燥・熱処理する。この乾燥・熱処理温度が、低すぎるとゴム類との接着が不十分となりやすく、また、該乾燥・熱処理温度が高すぎると著しく強度低下を起こしたり、処理時に切断するなど実用に供し得なくなる。
【0037】
本発明では、このように該プライマーを付与した後に、第二層目として、ポリ塩化ビニルラテックスを含むレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む接着剤の付与する。
【0038】
上記該接着剤に使用されるレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)は、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.8〜1:5の範囲にあるものが使用され、より好ましくは、1:1〜1:4の範囲で用いられる。該ホルムアルデヒドの割合が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより接着性が低下するおそれがあり、また、該ホルムアルデヒドの割合が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下すると共に、耐疲労性が低下する問題が出てくるので好ましくない。
【0039】
該接着剤におけるレゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、前記のブロックドポリイソシアネート化合物の添加割合によって変化するが、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:3〜1:20の範囲にあるものが使用され、特に、1:5〜1:15の範囲にあるものが好ましく使用される。該ゴムラテックスの比率が少なすぎると接着剤皮膜が硬く耐疲労性が低下しやすくなり、また、被着体であるゴムとの共加硫が不十分となり、接着性が低くなるおそれがあり、逆に、該ゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として充分な強度を得ることができないため、満足な接着力やゴム付着率が得られないおそれがあるだけで無く、スリットヤーンの粘着性が著しく高くなりディップ処理工程の汚れや、ゴム製品製造工程での汚れの原因となり、好ましくない。
【0040】
ポリ塩化ビニルは、耐薬品性に優れ、緻密な膜を形成することから、更に高い性能を得るため、プライマーへの添加量を増やすことが考えられるが、そうした場合、接着剤との親和性が低下し、ゴムとの接着性が低下してしまう。
【0041】
この問題を解決する手段として、第二層目の接着剤中にポリ塩化ビニルを若干量添加することで上記制限が緩和されるとともに、飛躍的にゴム接着性が向上し、特に平面状であるポリエステルスリットヤーンにおいても充分実用レベルの高い接着性を達成することができる。
【0042】
これは、接着剤にポリ塩化ビニルラテックスを若干量添加することにより、接着剤に対してもアミンの透過性を防ぐ能力を付与することが可能であるとともに、プライマーのポリ塩化ビニルラテックスとの親和性が増大し、プライマーとの相溶性が向上するためと考えられる。この場合、プライマー中に更に多くのポリ塩化ビニルを添加しても接着低下を引き起こさないといった特徴も現れる。
【0043】
つまり、ゴム中に存在するアミンが接着剤層を通過して起こるアミノリシスを更に抑制し、また、相溶性が向上することによってプライマー層、接着剤層を界してポリエステルとゴム間の親和性が発現し、優れた接着性が実現できると考えられる。
【0044】
本発明の接着剤中に用いるポリ塩化ビニルラテックスとしては、皮膜形成温度が240℃以下、特に180℃以下が好ましい。この塩化ビニル成分が共重合されたポリマーとしては、塩化ビニルの単独もしくは各種共重合を行なった化合物であり、塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデン、塩化ビニルとアクリロニトリル、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合化合物、塩化ビニル、酢酸ビニル及び無水マレイン酸の三元重合体、あるいはそれらの混合物を挙げることができる。
【0045】
また、本発明において接着剤に用いる該ポリ塩化ビニルラテックスのガラス転移点は0〜50℃であるものが好ましい。ガラス転移点が0℃未満の場合は、膜としての接着剤層の緻密さが不十分であり、高温にさらされた後に起こる十分な接着性能を発現することができない。一方、ガラス転移点が50℃を超える場合は、接着剤皮膜が硬くなり疲労性が低下するとともに、膜がもろくなり接着性能が低下しやすくなる。
【0046】
また、該接着剤に用いる該ポリ塩化ビニルラテックスの含有量は、接着剤のラテックス成分中、3%以上20%以下であることが好ましい。含有量が3%未満の場合、接着剤膜の緻密性を上げるのが難しくなるなり、十分な接着性能が得られない傾向にある。一方、含有量が20%より多い場合、接着剤中の他の成分との相溶性が不十分となり、耐疲労性および接着性能が低下しやすくなる。
【0047】
第二層目の接着剤には架橋剤として、アミン、エチレン尿素、ブロックポリイソシアネート化合物などを含有することができ、処理剤の経時安定性、環境への影響などを踏まえ、ブロックドポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
【0048】
該接着剤におけるブロックドポリイソシアネート化合物の含有量は、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)に対して0.5〜40重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲であるものが好ましい。該含有量が40重量%を下回るとRFLの凝集エネルギーを十分なレベルに向上させることができなくなり、良好な接着力が得られない傾向にある。また、該含有量が0.5重量%を超えると、該接着剤のゴムに対する相容性が低下し、ゴムとの接着力が低下し、耐疲労性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0049】
また、該接着剤には、カーボンブラック、シリカのような増強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合物に使用されるものを必要に応じて添加しても構わない。
【0050】
該接着剤において、総固形分濃度は1〜30重量%とすることが好ましい。該接着剤の総固形分濃度が、1重量%よりも低い場合には、接着剤表面張力が増加し、スリットヤーン表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下する傾向にある。逆に、該総固形分濃度が30重量%よりも高い場合には、接着剤の粘度が高くなるため、固形分付着量が多くなりすぎ、ディップ処理工程や製品の製造工程において汚れの原因になるだけでなく、表層皮膜が硬くなってしまうため耐疲労性が低下しやすい。
【0051】
また、該接着剤をスリットヤーンに付着せしめるには、ローラーとの接触、ドクターナイフによるコーティング、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、該スリットヤーンに対する固形分付着量は、0.1〜10重量%が好ましく、1.0〜5.0重量%がより好ましい。該スリットヤーンに対する固形分付着量を制御するためには、前記と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレーパー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引等の手段により行うことができ、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。なお、本発明においては該プライマーに対する該接着剤の固形分付着量の比が0.5〜5であることが、皮膜特性、耐疲労性および接着性能の観点から好ましい。
【0052】
本発明では、このような接着剤をスリットヤーンにそれぞれ付与した後に、50℃以上からポリエステルの融点より10℃以上低い温度の範囲で乾燥・熱処理する。より好ましくは、220〜270℃の温度範囲で、0.5〜5分間、好ましくは、1〜3分間乾燥・熱処理する。この乾燥・熱処理温度が低すぎるとゴム類との接着が不十分となりやすく、また、該乾燥・熱処理温度が高すぎると著しく強度低下を起こしたり、処理時に切断したりするため実用に供し得なくなる。
【0053】
上記熱処理を施す際、必要に応じてスリットヤーンを延伸してもよい。延伸は上記熱処理と同時に熱処理炉前後のローラー速度を変更することによって行うことができ、延伸倍率を向上することによって、強度・弾性率を高める、伸度を低下させる、繊度・幅・厚みを低下させるなどスリットヤーンの形状や物性を任意に調整することが可能である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、実施例は説明のためのものであって、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本発明の実施例における評価は下記の測定法で行った。
【0055】
(1)繊度、引張強力、引張弾性率
JIS L1013に準じて測定を行い、それぞれ求めた。
【0056】
(2)初期剥離接着性、ゴム付着面積比率
ゴム補強用ポリエステルスリットヤーンとゴムとの接着力を示すものである。ゴム補強用ポリエステルスリットヤーンを12本/inchで引きそろえ、0.5mm厚の天然ゴムを主成分とする未加硫ゴムシートで挟みつける。これらのシートを、スリットヤーンが互いに平行となるように2枚重ねあわせ、150℃の温度で、30分間、50Kg/cmのプレス圧力(初期値)で加硫し、次いで、スリットヤーン方向に沿って短冊状に切り出す。作成したサンプルを短冊に沿った方のシートをゴムシート面に対し90度の方向へ200mm/分の速度、室温下で剥離するのに要した剥離剥離力(N/inch)を測定した。また、剥離サンプルの該スリットヤーンのゴム付着状態について、スリットヤーン上のゴムで覆われた部分のゴム付着面積比率(%)を求めた。
【0057】
(3)耐熱剥離接着性、ゴム付着面積比率
加硫条件を、180℃で120分間にて行うこと以外、(1)と同様にサンプルを作成し、室温にて剥離を行ない、剥離接着力(N/inch)、ゴム付着面積比率(%)を求めた。
【0058】
(4)屈曲疲労性
ゴム補強用ポリエステルスリットヤーンを、天然ゴムを主成分とする未加硫ゴムシートに埋包したのち、150℃の温度で、30分間、50Kg/cmのプレス圧力(初期値)で加硫し、該スリットヤーンが1本埋設されたゴム成形物を得た。次いでこのゴム成形物を、該スリットヤーンがベルト成形物の中心に配されるようにベルト幅10mmで切断してベルト成形物を製造した。図1に示すように、このベルト成形物1を直径φ20mmの1個の平プーリー2と、モーター3と、4個のガイドプーリー4とからなる試験装置の該プーリーに架けた。そして、モーター3によってベルト成形物1を往復動させ、平プーリー2に沿う箇所において繰り返し屈曲させた。張力0.2MPa、振幅120rpm、ストローク120mmの条件下で室温下、100000回屈曲させ、屈曲疲労性評価のために、屈曲前後のベルト成形物の引張強力を測定し、屈曲後の引張強力維持率を求めた。この際、ベルト成形物の引張強力は、試長10mm×200mm、引張速度200mm/分とし、スリットヤーン長さ方向のベルト成形物の引張強力を求めた。
引張強力維持率(%)=100000回屈曲後のベルト成形物の引張強力/100000回屈曲前の引張強力×100
【0059】
[実施例1]
ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(デナコール EX−614B ナガセケムテックス製)、メチルエチルケトオキシムブロック ジメチルジフェニルジイソシアネート構造を有するブロックドポリイソシアネート(DM−6400 明成化学工業製)、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(ニッポール 2518FS 日本ゼオン製)およびカルボキシル変性ポリ塩化ビニル(カルボキシル変性PVC)ラテックス(VYCar 460X104 日本ルーブリゾール製 ガラス転移点70℃)を固形分で6重量%、4重量%、45重量%、45重量%の割合で混合し、総固形分濃度を6.0重量%とした。得られた配合液をプライマーとした。
【0060】
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6である初期縮合物(住友化学製 スミカノール700S)、水酸化ナトリウム、アンモニアを固形分で5重量%、0.5重量%、0.5重量%で混合した水溶液を調整し、さらにビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターボリマーラテックス(日本エイアンドエル製 Pyratex)、ポリ塩化ビニル(PVC)ラテックス(日本ルーブリゾール製VYCar578、ガラス転移点11℃)、アセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネート分散体(明成化学工業製 DM6011)、ホルマリンを固形分でそれぞれ65重量%、5重量%、22.5重量%、1.5重量%の割合で水と混合したのちに48時間熟成し、総固形分濃度20重量%とした。得られた配合液を接着剤とした。
【0061】
厚さ0.13mmのポリエチレン2,6−ナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製テオネックスフィルム)を2mm幅に裁断したスリットヤーンを使用し、これをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、ディップ処理機)を用いて、11m/分の速度で前記のプライマーに浸漬した後、200℃で2分間乾燥し、次いで240℃で1分間の熱処理およびストレッチを行い、引き続いて、前記接着剤に浸漬した後に170℃で2分間乾燥、次いで240℃で1分間の熱処理・ストレッチを行い、23m/分の速度で巻き取った。の固形分として、プライマーが2.0重量%、接着剤が3.0重量%付着しており、繊度1670dtex、引張強力55N、引張弾性率10GPa、厚さ0.15mm、幅1.0mmのゴム補強用ポリエステルスリットヤーンを得た。得られたポリエステルスリットヤーンを、天然ゴムを主成分とする未加硫ゴム中に埋め込み、加硫後に前記の方法によりゴム接着性および屈曲疲労性の評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0062】
[実施例2]
プライマーとして用いるPVCラテックスとして、カルボキシル変性で無いガラス転移点が62℃のVYCar 351(日本ルーブリゾール製)を用いた以外は実施例1同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。固形分として、プライマーが1.9重量%、接着剤が3.1重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0063】
[実施例3]
プライマーとして用いるPVCラテックスとして、ガラス転移点が55℃のカルボキシル変性ラテックス(日本ルーブリゾール製、VYCar TN810)を用いた以外実施例1同様の処理を行い、固形分として、プライマーが1.5重量%、接着剤が2.8重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0064】
[実施例4]
接着剤として用いるPVCラテックスとしてガラス転移点が62℃のPVCラテックス(日本ルーブリゾール製、VYCar 351)を用いた以外は実施例1同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。固形分として、プライマーが2.0重量%、接着剤が3.2重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0065】
[比較例1]
プライマーにPVCラテックスを添加せず、ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(デナコール EX−614B ナガセケムテックス製)、メチルエチルケトオキシムブロック ジメチルジフェニルジイソシアネート構造を有するブロックドポリイソシアネート(DM−6400 明成化学工業製)、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(ニッポール 2518FS 日本ゼオン製)を固形分で6重量%、4重量%、90重量%の割合で混合し、総固形分濃度を6.0重量%としたものをプライマーとして用いた以外は実施例1同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。固形分として、プライマーが1.4重量%、接着剤が2.5重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0066】
[比較例2]
接着剤としてPVCラテックスを添加しないこと以外は実施例1同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。固形分として、プライマーが2.2重量%、接着剤が2.6重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0067】
[比較例3]
接着剤としてPVCラテックスを添加しないこと以外はプライマーにもPVCラテックスを添加しない比較例1と同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。固形分として、プライマーが1.4重量%、接着剤が2.2重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0068】
[比較例4]
実施例1の接着剤中のラテックス比率を以下のように変更した。すなわち、レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6である初期縮合物(住友化学製 スミカノール700S)、水酸化ナトリウム、アンモニアを固形分として5重量%、0.5重量%、0.5重量%の水溶液を調整し、さらにビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス(日本エイアンドエル製 Pyratex)、PVCラテックス(日本ルーブリゾール製VYCar578、ガラス転移点11℃)、アセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネート分散体(明成化学工業製 DM6011)、ホルマリンを固形分でそれぞれ49重量%、21重量%、22.5重量%、1.5重量%の割合で水と混合したのちに48時間熟成し、総固形分濃度20重量%とした。得られた配合液を接着剤とした。これ以外は実施例1同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。固形分として、プライマーが2.0重量%、接着剤が3.5重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0069】
[比較例5]
実施例1のプライマー中のラテックス添加量を以下のように変更した。すなわち、ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(デナコール EX−614B ナガセケムテックス製)、メチルエチルケトオキシムブロック ジメチルジフェニルジイソシアネート構造を有するブロックドポリイソシアネート(DM−6400 明成化学工業製)、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(ニッポール 2518FS 日本ゼオン製)およびカルボキシル変性ポリ塩化ビニル(PVC)ラテックス(VYCar 460X104 日本ルーブリゾール製 ガラス転移点 70℃)を固形分で6重量%、4重量%、20重量%、70重量%の割合で混合し、総固形分濃度を6.0重量%とし、得られた配合液をプライマーとした。 これ以外は実施例1同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。処理剤の固形分として、プライマーが1.6重量%、接着剤が2.8重量%付着していた。実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0070】
[実施例5]
厚さ0.10mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 テトロンフィルム)を2mm幅に裁断したスリットヤーンを使用した以外は、実施例1同様のプライマーおよび接着剤を用いて実施例1と同様の処理を行った。処理剤の固形分として、プライマーが1.8重量%、接着剤が3.2重量%付着しており、繊度1680dtex、引張強力58N、引張弾性率4.5GPa、厚さ0.11mm、幅1.0mmのポリエステルスリットヤーンを得た。これを用いて実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0071】
[比較例6]
比較例3と同じくプライマー、接着剤いずれにもPVCラテックスを添加しない比較例3同様のプライマー、接着剤を用い、実施例1と同様の処理を行い、ポリエステルスリットヤーンを得た。これを用いて実施例1と同様の評価を行い、得られた結果を表1にまとめて示す。
【0072】
表1から明らかな通り、プライマーおよび接着剤に本発明範囲のポリ塩化ビニルラテックスを添加することによって本発明の実施例はいずれもゴム接着力、屈曲疲労性が非常に高く、これを用いることによって従来成し得なかったタイヤ、ベルト、ホース等の補強層の薄肉化ができ、ゴム部材の軽量化、コンパクト化等、環境面で大いに特性を発揮できる。
【0073】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のゴム補強用ポリエステルスリットヤーンは、ゴムとの接着性、屈曲疲労性、耐久性に優れ、タイヤ、ベルト、ホース等の補強材として好適に用いることができる。また、本発明の製造方法によれば、上記本発明のゴム補強用ポリエステルスリットヤーンを容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 ベルト成形物
2 平プーリー
3 モーター
4 ガイドプーリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルからなるスリットヤーンであって、該スリットヤーンの表面に少なくとも2層の剤が付着し、該表面から第一層目がポリ塩化ビニルラテックス及び架橋剤を含有するプライマーであり、第二層目がポリ塩化ビニルラテックス及びレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスを含む接着剤であることを特徴とするゴム補強用ポリエステルスリットヤーン。
【請求項2】
ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、または、ポリエチレン2,6−ナフタレートである請求項1記載のゴム補強用ポリエステルスリットヤーン。
【請求項3】
プライマーに用いるポリ塩化ビニルラテックスが、ガラス転移点60〜100℃であるカルボキシル変性ポリビニルラテックスである請求項1記載のゴム補強用ポリエステルスリットヤーン。
【請求項4】
第二層の接着剤に用いるポリ塩化ビニルラテックスが、ガラス転移点が0〜50℃であるポリ塩化ビニルラテックスである請求項1記載のゴム補強用ポリエステルスリットヤーン。
【請求項5】
ポリエステルスリットヤーンの厚さが0.01〜0.5mm、幅が0.1〜5mmである請求項1記載のゴム補強用ポリエステルスリットヤーン。
【請求項6】
ポリエステルからなるスリットヤーンに、ポリ塩化ビニルラテックス及び架橋剤を含有するプライマーを付与した後、ポリ塩化ビニルラテックス及びレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスを含む接着剤を付与することを特徴とするゴム補強用ポリエステルスリットヤーンの製造方法。
【請求項7】
プライマーに用いるポリ塩化ビニルラテックスが、ガラス転移点が60〜100℃である、ポリ塩化ビニルラテックス又はカルボキシル変性ポリビニルラテックスであり、プライマー中の総固形分重量を基準としてポリ塩化ビニルラテックスの含有量が30〜60重量%である請求項6記載のゴム補強用ポリエステルスリットヤーンの製造方法。
【請求項8】
接着剤に用いるポリ塩化ビニルラテックスが、ガラス転移点が0〜50℃であるポリ塩化ビニルラテックスであり、接着剤中の総固形分重量を基準としてポリ塩化ビニルラテックスの含有量が3〜20重量%である請求項6記載のゴム補強用ポリエステルスリットヤーンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−167391(P2012−167391A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27636(P2011−27636)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】