説明

ゴム製品補強用スチ−ルコ−ド及びタイヤ

【課題】ゴム製品の補強材として使用されるクロ−ズ撚りのゴム製品補強用スチ−ルコ−ドにおいて、破断までの全伸びを5%以上と大きくできるようにすることと併せて、スチ−ルコ−ド内部空洞部へのゴムの充填性の改善を図ったゴム製品補強用スチ−ルコ−ドを提供する。
【解決手段】3本の素線a1,a2,a1が当該スチ−ルコ−ドの撚り合わせピッチよりも小さなくせを有する1×3構造のゴム製品補強用のスチ−ルコ−ドにおいて、S−Sカ−ブの二次伸度領域でコ−ド破断強度の10%あたり0.25%〜0.75%の伸び率を有するように撚り合わせることで課題解決の手段としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用タイヤ、コンベアベルトなどのゴム製品の補強材として使用されるクロ−ズ撚りのゴム製品補強用スチ−ルコ−ドに関し、さらに詳しくは、スチ−ルコ−ドの破断までの全伸びを大きくできるようにすることと併せて、スチ−ルコ−ド内部空洞部へのゴムの充填性の改善を図ったゴム製品補強用スチ−ルコ−ド及びこのスチ−ルコ−ドを補強材としたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高い伸び特性を必要とするタイヤやコンベアベルトなどのゴム製品の補強用スチールコ−ドとして、ハイエロンゲ−ションコ−ド(通常3%以下の全伸びに対して5%以上の全伸びを有するコ−ド)が提案されている。このコ−ドは、撚りピッチを非常に小さくして撚り合わせたコ−ドであって5%以上の高い全伸びを得ることができる(「全伸び」とは切断するまでの伸びをいう)。
しかし、このコ−ドは、撚りピッチが非常に小さい分だけ生産性が落ち、また、コ−ドが密に撚られているため、コ−ドの内部にゴムが侵入しないという欠点がある。
【0003】
また、撚りピッチを小さくすることなく(生産性を落とすことなく)、高い伸び率を有し、しかもゴムの侵入性に優れたコ−ドとして、素線を緩く撚り合わせたオ−プン構造のスチ−ルコ−ド(オ−プンコ−ド)が開発されている。このコ−ドは全伸びが非常に大きく、しかも緩く撚り合わされているので、素線間にゴムの侵入できる隙間が撚り線加工時に形成される。
【0004】
しかしながら、このオ−プンコ−ドは、緩い撚り合わせであるため、小さな荷重で大きく伸びることから、取り扱い作業性が悪い。しかもタイヤ製造工程のカレンダ−工程において、コ−ドをリ−ルから引き出す際の小さな張力でコ−ドが伸び、この伸びによって素線間の隙間がなくなってしまう。そしてこの状態でカレンダ−処理が行われるので、カレンダ−工程においてコ−ドがゴムシ−トにはさまれると、その後の加硫処理工程時にゴムがコ−ド内部に侵入することができず、コ−ド内部にゴムの侵入のないタイヤが製造されることになる。
【0005】
これらの各コ−ドの欠点を解決する手段として特許文献1に示すような、ジグザグ状のくせを全素線に施したコ−ドが提案されている。
【0006】
特許文献1のスチ−ルコ−ドについて、図9、10により説明する。
このスチールコードSは、図10に示す長さ方向にジグザグ状の型付け部12を形成された素線11を5本撚り合わせた、図9にその断面形状を示す1×5構造に形成されている。このスチールコードSの型付け部12を有する各素線11は、長手方向に一致して周方向に相隣れる関係であったり、あるいは長手方向にズレていて周方向には相互に隣会わない態様であったりする。
なお、このスチ−ルコ−ドSは、図9に示すように、中心部13に通じる隙間14を有している。図10中の符号Aは素線11に付与されたくせのピッチを示す。
【特許文献1】特開平2−307994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1に記載の発明は、同公報第2頁第7〜10行に記載されているように、スチ−ルコ−ド内部空洞部へのゴムの充填性の、それ以前のクロ−ズ撚りのゴム製品補強用スチ−ルコ−ドよりも改善を図るとともに、低負荷での伸びを小さくすることを目的としている。
したがって、特許文献1に記載のスチ−ルコ−ド(以下「従来のスチ−ルコ−ド」という)は、後に詳述するように本発明のスチ−ルコ−ドが5%以上という高い伸びを有するのに対して、高い伸び(例えば5%以上の伸び)を得られないという課題がある。
【0008】
本発明は、従来のスチ−ルコ−ドの有する上記の課題を解決し、ゴム製品の補強材として使用されるゴム製品補強用スチ−ルコ−ドにおいて、破断までの全伸びを5%以上と大きくできるようにすることと併せて、スチ−ルコ−ド内部空洞部へのゴムの充填性の改善を図ったゴム製品補強用スチ−ルコ−ドを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、3〜6本のすべての素線が当該スチ−ルコ−ドの撚り合わせピッチよりも小さなくせを有する1×n構造のゴム製品補強用のスチ−ルコ−ドにおいて、上記スチ−ルコ−ドがS−Sカ−ブの二次伸度領域でコ−ド破断強度の10%あたり0.25%〜0.75%の伸びを有するものとすることで課題解決の手段としている。
【0010】
また、上記素線を、少なくとも二種類の異なったくせを有する構成とすることで課題解決の手段としている。
【0011】
さらに、上記素線に少なくとも二種類の異なったくせを形成するために、(くせの)波高を少なくとも二種類の異なったものとしたり、(くせの)ピッチを少なくとも二種類の異なった数値としたりすることで課題解決の手段としている。
【0012】
さらにまた、上記素線の本数が奇数である場合の一本を除き、互いに隣り合う各素線同士はくせが異なるように素線を配列することで課題解決の手段としている。
【0013】
さらに本発明は、素線に施すくせをスパイラル形状に形成することで課題解決の手段としている。
【0014】
本発明において、スチ−ルコ−ドがS−Sカ−ブの二次伸度領域でコ−ド破断強度の10%あたり0.25%〜0.75%の伸びを有するものとしたのは、オ−プンコ−ド構造を採用することなく、5%以上の伸度を有するスチ−ルコ−ドを得たいためである。 すなわち、上記の伸びが0.25%以下の場合、カレンダ−時の張力でクロ−ズになってしまい、ゴムの浸入性が悪くなる。また上記の伸びが0.75%以上の場合、波付けの高さを非常に大きくしなければならない為、コードの形状が不安定でタイヤ中での耐疲労性が悪くなる。
【0015】
また、素線を少なくとも二種類の異なったくせを有する構成としたので、位相が揃ってしまい、ゴムの浸入性が悪くなるのを防止できる。
【0016】
さらにまた、本発明は、素線の本数が奇数である場合の一本を除き、互いに隣り合う各素線同士はそれらのくせピッチが異なるように素線を配列することにより、2種類以上の異なるくせを有する素線を可能な範囲で交互に撚り合わせることが可能となり、その結果同じピッチの素線を撚り合わせた場合のように、位相が揃って隙間がなくなってしまうというような事態の発生を防止でき、十分なゴム侵入隙間を完全に確保することができる。
【0017】
また、本発明のスチ−ルコ−ドは、タイヤになった後も伸びが確保できるので、このスチールコードをタイヤのカーカス部、ブレーカー部などに補強材とした場合、対カット性に優れたタイヤが得られる。
【発明の効果】
【0018】
上記のように、本発明のスチ−ルコ−ドでは、素線自体の引っ張り時の伸び率が5%以上と向上できる。さらに、ゴムの侵入性が良好となるばかりか、疲労試験での結果(疲労性)や形状安定性も良好となる。
通常のオ−プンコ−ドの場合、実際のタイヤの中ではゴムが邪魔をして伸びが小さくなるが、本発明のスチ−ルコ−ドは後に述べる通りタイヤになった後も引っ張り時の伸び率が5%以上の伸びを確保できる。
また、2種類以上の異なるくせを有する素線を可能な範囲で交互に撚り合わせると、同じピッチの素線を撚り合わせた場合のように、位相が揃って隙間がなくなってしまうというような事態の発生を防止でき、十分なゴム侵入隙間を完全に確保することができる。
また、素線同士の接触部が格段に多くなり、接触抵抗によって低荷重での伸びが抑制される。
【0019】
本発明のタイヤは、長寿命化が図れ、省資源化が図れるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図に示す実施形態により具体的に説明する。
図1は実施例1に係る1×3構造の素線により構成されたスチ−ルコ−ドの断面図、図2は同実施例2としての1×4構造のスチ−ルコ−ドの断面図、図3は同実施例3としての1×5構造のスチ−ルコ−ドの断面図、図4は同実施例4としての1×6構造のスチ−ルコ−ドの断面図、図5は実施例1に係る1×3構造の素線により構成されたスチ−ルコ−ドの側面図、図6はS−Sカ−ブの二次伸度領域でのコ−ド破断強度の説明図、図7は本発明のスチ−ルコ−ドの破断曲線を示すグラフ、図8は本発明のスチ−ルコ−ドの耐疲労性の試験結果を示すグラフである。
【0021】
図1の実施例では、径φ0.38mmの3本の素線が一度に撚り合わされてスチ−ルコ−ド10を構成している。また、図2の実施例では、径φ0.35mmの4本の素線が一度に撚り合わされて撚りピッチ12mmのスチ−ルコ−ド10を構成している。さらに、図3の実施例では、径φ0.38mmの5本の素線が一度に撚り合わされて撚りピッチ16mmのスチ−ルコ−ド10を構成している。さらにまた、図4の実施例では、径φ0.35mmの6本の素線が一度に撚り合わされてスチ−ルコ−ド10を構成している。
【0022】
これらいずれのスチールコードも、S−Sカ−ブの二次伸度領域でコ−ド破断強力の10%あたり0.25%〜0.75%の伸びを有するように撚り加工されており、かつ各素線には、撚りピッチよりも小さなスパイラル状のくせが施されている。
【0023】
図6のグラフにおいて、縦軸はスチ−ルコ−ドの荷重Nを、横軸は伸び率(%)を表している。本発明ではこのグラフにおける破断荷重の50%に相当する荷重負荷時の伸び率〔E(50)〕と破断荷重の40%に相当する荷重負荷時の伸び率〔E(40)〕との差〔E(50)−E(40)〕を、以下「S−Sカ−ブの二次伸度領域でコ−ド破断強力の10%あたりの伸び」とする。
【0024】
また、上述のいずれのスチールコードにおいても、各素線に付与されるスパイラル形状のくせは、スチ−ルコ−ドを構成する素線毎に相違していることが望ましいが、本発明の場合、スチ−ルコ−ドを構成する複数の素線は、すくなくとも2種類の異なったくせを有する。
素線のくせが異なるとは、素線に付与されるくせの「波高」および/または「ピッチ」が素線毎に異なることをいう。なお、本発明では、くせは、スパイラル形状に限定するものではない。
【0025】
次に実施例を示す。
図1に示す実施例1では、径φ0.38mmの3本の素線が一度に撚り合わされる構成となっている。素線はピッチが6mmで波高が0.58mmのくせを有する2本の素線a1と、ピッチが4mmで波高が0.32mmのくせを有する1本の素線a2とからなり、これら3本の素線がa1/a2/a1なる撚り合わせ順で撚り合わされて、素線a1の内の一本の素線a1を除き、互いに隣り合う各素線同志はそれらのくせが異なる状態で撚り合わされ、撚りピッチpが12mmで、E(50)−E(40)=0.730%の伸びを有する1×3構造のスチ−ルコ−ド1に構成されている。
【0026】
図2に示す実施例2では、径φ0.35mmの4本の素線が一度に撚り合わされる構成となっている。素線はピッチが4mmで波高が0.30mmのくせを有する2本の素線b1と、ピッチが5.5mmで波高が0.45mmのくせを有する2本の素線b2とが、b1/b2/b1/b2なる撚り合わせ順に撚り合わされて、互いに隣り合う各素線同志はそれらのくせが異なる状態で撚り合わさった、撚りピッチpが12mmの、E(50)−E(40)=0.355%の伸びを有する1×4構造のスチ−ルコ−ドに構成されている。
【0027】
図3に示す実施例3では、径φ0.38mmの5本の素線が一度に撚り合わされる構成となっている。素線はピッチが4mmで波高が0.20mmのくせを有する2本の素線c1と、ピッチが5mmで波高が0.20mmのくせを有する2本の素線c2と、ピッチが5.5mmで波高が0.40mmのくせを有する1本の素線c3とが、c1/c2/c3/c1/c2なる撚り合わせ順で撚り合わされて、互いに隣り合う各素線同志はそれらのくせが異なる状態で撚り合わさった、撚りピッチpが16mmの、E(50)−E(40)=0.396%の伸びを有する1×5構造のスチ−ルコ−ドに構成されている。
【0028】
図4に示す実施例4では、径φ0.35mmの6本の素線が一度に撚り合わされる構成となっている。素線はピッチが4mmで波高が0.20mmのくせを有する2本の素線d1と、ピッチが5mmで波高が0.20mmのくせを有する2本の素線d2と、ピッチが5.5mmで波高が0.40mmのくせを有する1本の素線d3と、ピッチが6mmで波高が0.40mmのくせを有する1本の素線d4とが、d1/d2/d3/d4/d1/d2なる撚り合わせ順で6本の素線が撚り合わされて、互いに隣り合う各素線同志はそれらのくせが異なる状態で撚り合わさった、撚りピッチpが16mmの、E(50)−E(40)=0.259%の伸びを有する1×6構造のスチ−ルコ−ド1が構成されている。
【0029】
本発明のスチールコード10は、図5に示すようにゴムが侵入できる隙間9を長手方向に多数存在する。
【0030】
本発明のスチールコードを構成する素線に施す小さなスパイラル状のくせ付けは、特公昭63−63293号公報に示されるように、供給される素線を軸心として回転するくせ付け装置でもって、所望のピッチと波高とを有するくせ付与する。また、同装置により、E(50)−E(40)=0.25〜0.75%の伸び率を有するように撚り合わせる。 このとき所望のくせや伸び率を得るために、くせ付けピンの間隔、ピンの寸法および/あるいは素線を軸心として回転する回転数を調整することはいうまでもない。ただし、素線に施す小さなスパイラル状のくせ付け手段や伸び率調節手段は上記に限定されるものではない。
【0031】
上記の各実施例のスチ−ルコ−ドのデ−タならびに実験結果を次の表1に示す。
従来例として、特許文献1に記載された事項によるスチ−ルコ−ドのついて2例を製作し、それらを従来例1、2として表1に示してある。さらに、比較例1〜3として、実施例1〜4のものと素線のくせの種類、素線配列において同様乃至類似であるが、コ−ドのE(50)−E(40)の伸び率が、請求項1などに記載の数値限定の範囲外の3種類のスチ−ルコ−ドについての実験結果も表1に示してある。さらに参考例1〜3についての試験結果も表1に示してある。(参考例1〜3のスチ−ルコ−ドの構成については表のデ−タを参照)
【0032】
スパイラル状くせの波高およびピッチは、コードを解いて取り出した素線を投影機に映出しその画像により測定した。
【0033】
【表1】

【0034】
スチ−ルコ−ドの全伸度、ゴム侵入性、耐疲労性などの比較試験条件、評価方法は次の通りである。
【0035】
全伸度は、引張試験機によって測定した破断までの伸び率(%)である。
【0036】
ゴム侵入性は、各コードをゴム中に埋め込み、加圧加硫した後、コードをゴム中から取り出してそのコードを分解して素線の一定長さを観察し、観察した長さに対してゴムと接触した形跡のある長さの比をパーセント表示した。この値が高いほどゴム侵入性が高いことを示しており、90%以上が合格である。
【0037】
耐疲労性は、複数本のスチールコードをゴムシートに埋め込んだ複合体シートを用いて3点プーリー曲げ疲労試験機により疲労試験を行い、埋設したスチールコードがフレッティング磨耗、座屈等を経て破断に至るまでの繰り返し回数を計数したものである。そして参考例1の繰り返し数を100として指数表示した。この値が高いほど耐疲労性が高いことを示している。図8のグラフはその試験結果を示す。
【0038】
表1に示す実験結果により、本発明のスチ−ルコ−ドは、引っ張り時の破断までの全伸度(伸び率)が5%以上と、従来のスチ−ルコ−ドよりも向上しており、またゴムの侵入性の点において良好となるばかりか、耐疲労性も良好であることが判明した。
【0039】
このことは、従来のスチ−ルコ−ドが、E(50)−E(40)=0.155〜0.194%の伸び率であったのに対して、本発明のスチ−ルコ−ドが、E(50)−E(40)=0.259〜0.730%の伸び率とすることにより、伸び特性を向上させたためである。
ちなみに、本発明のスチ−ルコ−ドの破断曲線は図7の曲線(a)に示す通りとなる。つまりこのスチ−ルコ−ドは、引っ張り時の破断までの全伸度(伸び率)が大きい。一方従来例1、2のような伸び率が E(50)−E(40)≦0.25% のスチ−ルコ−ドの破断曲線は図7の曲線(b)に示す通りとなる。曲線(b)が示す通り、このスチ−ルコ−ドは引っ張り時の破断までの全伸度(伸び率)が小さい。また比較例3のような伸び率が E(50)−E(40)≧0.75% のスチ−ルコ−ドの破断曲線は図7の曲線(c)に示す通りとなる。曲線(c)が示す通り、このスチ−ルコ−ドは低荷重伸度が大きく、したがってカレンダ−時にクロ−ズになる。
【0040】
また、従来のスチ−ルコ−ドの素線のくせがジグザグ形状という二次元波であったのに対して、上記の各実施例のスチ−ルコ−ドが、素線に施すくせの形状をスパイラル形状という三次元波として素線自体の伸び率を向上させたためであるとも考えられるが、引っ張り時の破断までの全伸度(伸び率)が大きいという効果の主たる要因は、本発明のスチ−ルコ−ドが、E(50)−E(40)=0.259〜0.730%の伸び率として伸び特性を向上させたためであると考えられる。
したがって、本発明は、素線に施すくせの形状をスパイラル形状という三次元波とする点に限定するものではない。つまり素線のくせがジグザグ形状という二次元波であったとしても、そのスチ−ルコ−ドの素線がコ−ドの撚りピッチよりも小さなくせを付与されており、かつコ−ドが、E(50)−E(40)=0.259〜0.730%の伸び率を備えておれば、5%以上の引っ張り時の破断までの全伸び(伸び率)を有するスチ−ルコ−ド得ることができる。
【0041】
また本発明は、少なくとも波高とピッチといずれかにおいて、少なくとも二種類の異なった数値のくせを有する素線を撚り合わせた構成とすることで、スチ−ルコ−ド内部空洞部へのゴムの充填性を改善させている。
【0042】
さらにまた、素線の本数が奇数である場合の一本を除き、互いに隣り合う各素線同志はそれらのくせが異なるような構成とすることにより、素線の本数が奇数である場合においてもスチ−ルコ−ド内部空洞部へのゴムの充填性を改善させている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1に係る1×3構造のスチ−ルコ−ドの断面図。
【図2】本発明の実施例2に係る1×4構造のスチ−ルコ−ドの断面図。
【図3】本発明の実施例3に係る1×5構造のスチ−ルコ−ドの断面図。
【図4】本発明の実施例4に係る1×6構造のスチ−ルコ−ドの側面図。
【図5】実施例1に係るスチ−ルコ−ドの側面図。
【図6】S−Sカ−ブの二次伸度の近辺でコ−ド破断強度の説明図。
【図7】本発明のスチ−ルコ−ドの破断曲線を示すグラフ。
【図8】本発明のスチ−ルコ−ドの耐疲労性の試験結果を示すグラフ。
【図9】従来のスチールコードの断面図。
【図10】同素線を拡大して示す側面図。
【符号の説明】
【0044】
10:スチールコード
a1:くせを有する素線
a2:素線a1と異なるくせを有する素線素線
b1:くせを有する素線
b2:素線b1と異なるくせを有する素線
c1:くせを有する素線
c2:素線c1と異なるくせを有する素線
c3:素線c1および素線c2と異なるくせを有する素線
d1:くせを有する素線
d2:素線d1と異なるくせを有する素線
d3:素線d1および素線d2と異なるくせを有する素線
d4:素線d1〜素線d3と異なるくせを有する素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜6本のすべての素線が当該スチ−ルコ−ドの撚り合わせピッチよりも小さなくせを有する1×n構造のゴム製品補強用のスチ−ルコ−ドにおいて、上記スチ−ルコ−ドがS−Sカ−ブの二次伸度領域でコ−ド破断強度の10%あたり0.25%〜0.75%の伸びを有することを特徴とするゴム製品補強用スチ−ルコ−ド。
【請求項2】
上記素線の有するくせは、少なくとも二種類の異なったくせであることを特徴とする請求項1に記載のゴム製品補強用スチ−ルコ−ド。
【請求項3】
上記素線のくせがスパイラル形状であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のゴム製品補強用スチ−ルコ−ド。
【請求項4】
上記素線の本数が奇数である場合の一本を除き、各素線は、互いに隣り合う素線同士のくせが異なる配列であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のゴム製品補強用スチ−ルコ−ド。
【請求項5】
上記素線の少なくとも二種類の異なったくせが、くせ波高を少なくとも二種類の異なったものとすることにより形成されることを特徴とする請求項2に記載のゴム製品補強用スチールコード。
【請求項6】
上記素線の少なくとも二種類の異なったくせが、くせピッチを少なくとも二種類の異なったものとすることにより形成されることを特徴とする請求項2に記載のゴム製品補強用スチールコード。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のゴム製品補強用スチ−ルコ−ドが、カーカス部、ブレーカー部などの補強材として用いられていることを特徴とするタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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