説明

ゴム製防水型物

【課題】形状が複雑でシートの敷設や接合に熟練した技術を要するような凹所に防水をするためのものであって、金型や押出成形機を要せず、必要に応じて形状も自由に設定することができるゴム製防水型物を提供する。
【解決手段】下地に防水や遮水などを施す工事に使用するゴム製の防水型物3であって、厚みが0.5〜3.0mmの加硫ゴムシート7を予め工場にて施工箇所の形状に合わせた形状に切り取り・折り曲げ加工し、接着剤12を接合部に介在して接合することによって形状を保持するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は庭の地下や公園などの地下に雨水を貯留する際に使用する貯水槽や建物の屋上などに設ける池など、小規模な定型の凹所を防水する際に用いるゴム製防水型物であり、複雑な形状にも対応できると共にコスト的にも有利な型物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から溜め池などを造成する際に池の下地には水が漏れてしまわないように防水工事が行われる。広大な凹所を防水する場合にはゴムなどの材料からなる防水シートをロールの状態で現場に持ち込んで敷設し、現場で接合することによって凹所の形状に作り上げて凹所全面に防水を施すといった作業が行われている。
【0003】
防水シートを現場で接合する方法としては、熱可塑性の素材からなる防水シートであれば例えば熱風による熱融着であったり、溶剤にて素材を融かすことによる溶着が行われており、ゴムシートを使用するようなものの場合にはゴム系の接着剤を接合部に介在させてシート同士の接合が行われている。
【0004】
しかし、この現場でのシートの接合作業は熱融着、溶着、接着剤などの方法に限らず未経験者でもできるといった簡単な作業ではなく、ある程度の熟練を必要とする作業であり、未熟練者では接合作業に大幅に時間がかかったり、接合不良が発生して漏水してしまう問題があった。
【0005】
例えば特許文献1には建物の屋上などにおいて防水シートを敷設する場合に、平坦な防水シートをそのまま敷設することができない出隅部や入隅部、パイプ周り等の複雑箇所において、予めその場所の形状の型物を押出し成形やプレス成形などで一体的に成形しておき、それを現場に持ち込んで複雑箇所に装着することによって防水シートの接合をより簡単に行えるようにするといった技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】実開平7−10159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような型物を用いることによって特に複雑箇所の接合など従来熟練を必要としていたシートの接合作業をより簡単なものにし、接合不良などの問題が生じにくくなってきている。
【0008】
しかし、反面、型物を成形するには高額な金型や押出機などそれ相応の設備を必要とすることもあり、同じ形状の型物が多数必要とされるような場合には、設備を整えて型物を作ることもできるが、ケース毎に多少なりとも形状が異なってくるような部位や、また型物のサイズが大型となってくるような部位の場合は、このような型物を作ることができなかった。よって、相変わらず熟練した作業者に頼らざるを得ない状況が続いていた。
【0009】
そこで本発明では、形状が複雑でシートの敷設や接合に熟練した技術を要するような凹所に防水をするためのものであって、高額な金型や押出成形機を必要とせず、必要に応じて形状も自由に設定することができるゴム製防水型物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような課題を解決するために本発明の請求項1では、厚みが0.5〜3.0mmの加硫ゴムシートを予め工場にて施工箇所の形状に合わせた形状に切り取り・折り曲げ加工し、未加硫ゴムテープを接合部に介在させ加硫して接合することによって形状を保持するようにしたゴム製防水型物とする。
【0011】
請求項2では、ゴム製防水型物に使用する加硫ゴムシートとしてゴム中に補強材を埋設したものを用いたゴム製防水型物としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のように加硫ゴムシートを必要に応じて切り取り・折り曲げ加工して所定の形状になるようにし、それを未加硫ゴムテープにて接着接合して形状を保持させることによって、所望の形状のゴム製防水型物とすることができ、また、金型や押出し機などの設備も必要としないので、個々のケースに応じて特殊な形状であっても容易に対応することができるものである。
【0013】
請求項2では、補強材を埋設したゴムシートを用いることで強度を向上させることができ丈夫なゴム製防水型物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明のゴム製防水型物の一例を示す斜視図であり、図2はゴム製防水型物を配置したところの貯水槽の断面図である。図3は中詰材を設置した後の断面図、図4はゴム製防水型物のプレス加工部を示す拡大斜視図である。図5は貯水槽内に設置する中詰材を積み上げたところの斜視図である。
【0015】
貯水槽1は駐車場や公園などの地下に設けて使用するものであり、貯水槽1の上の土地を他の目的で使用するために、貯水槽1の貯水スペースには、例えば貯水槽1の上部を駐車場などの別用途に使用するため、上からの圧力に耐えられるよう空隙を有する中詰材を配置するような貯水槽に関するものである。
【0016】
貯水槽1は、下地に図2に示すような凹所2が掘削形成しており、そこに遮水シートからなるゴム製防水型物3で囲まれた貯水スペース4内に中詰材5を設置して形成される。
【0017】
まず、凹所2には図1に示すような、予め貯水槽1の形状の合わせて成形したゴム製防水型物3を配置する。ゴム製防水型物3は、底面6と側面7を有する直方体の槽形状で、側面7の一つには、貯水槽1に水を供給するための流入管と接続する流入管用ジョイント部8およびオーバーフローした水を排出するための排水管に接続する排水管用ジョイント部9が形成されている。
【0018】
流入管用ジョイント部8と排水管用ジョイント部9は、ゴム製防水型物3のひとつの側面7に貫通孔を設けるとともに、外部に筒状物を突出させており、外部から導入されている流入管や排水管と接続できるようになっている。
【0019】
また、凹所2の一部には、他の場所よりも深さの大なる取水区域10が形成されている。取水区域を他の所よりも深くしておくことによって、貯水槽1内に貯めた水をほぼ全部くみ上げることができるようになる。その場合は、ゴム製防水型物3の取水区域10に相当する箇所には、同様に底面7から突出しており、他の部分よりも深さの大なる取水部11を設けている。
【0020】
続いて、ゴム製防水型物3の内部に中詰材5を設置してゆく。中詰材5を設置することによって、貯水槽1は上からの圧力にも耐えられるようになり、貯水槽を駐車場などの別の用途に使うことができる。
【0021】
中詰材5を図5のように貯水スペース2の高さまで積み上げたら、積み上げられた中詰材5の上を防水シートで覆う。この防水シートはゴム製防水型物3と別体のシートを用いても構わないし、予めゴム製防水型物3と一体に成形されたものでも構わない。
【0022】
次いで、ゴム製防水型物3の側面7と凹所2との間の隙間を埋め戻し、上にも土を被せて通常の下地と同様に仕上げる。取水区域に相当するところは、別途、マンホールを設置するなどして貯水槽1に貯めた水を外部から取水できるようにしている。
【0023】
ゴム製防水型物3は、EPDM、ブチルゴム、クロロプレンゴムやそれらのブレンド物などのゴムからなる不透水性の素材からなっており、材質は限定されるものではないが、成形体とした状態で工場などから現場まで搬送するということを考えると軽量のシート素材で、出隅、入隅などのコーナー部に沿わせて曲げ加工することから、EPDMなどからなる0.5〜3.0mm程度の厚みのゴムで構成することが好ましい。
【0024】
また、ゴムのみからなるシートであると例えば大量の水を貯留する貯水槽の型物として利用する場合は強度的に不安であるということや、整地が十分でない場所に使用すると石等な突起により損傷してしまうという問題があるので、簡単に破断しないよう強度を持たせるためにゴム中に補強材を埋設したものを用いてもよい。
【0025】
補強材として用いることができるものとしては、基布や短繊維等が挙げられる。補強材は遮水シートに引裂抵抗性を付与するためと、耐衝撃性を増すために埋設されるもので、素材としてはポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の有機合成樹脂からなるフィルムや、同様に合成樹脂からなる糸や偏平テープ状のものを編織したり、単にクロスして重ね合わせ部分を熱融着しネット状にしたりしたもの、また粗目の不織布によってネットを形成したもの等、その他、ガラス繊維等の無機繊維や金属繊維からなる織物等が挙げられる。その中でもポリエステル繊維からなる織布を用いることが高強度で耐熱性、耐水性にも優れ、汎用品であることから価格的にも安価であるという理由から好ましい。また、伸びが15〜35%で強度が100〜700N/cm程度のものを用いることが好ましい。
【0026】
基布の伸びが15%未満であると地盤沈下があった際などに伸びきってしまって糸が切れてしまうといった問題があり、35%を超えると法面でのシートが滑りやすく伸びやすくなってしまうのでゴムのストレスが大きくなり耐久性の面で影響を受けてしまうので好ましくない。また、強度が100N/cm未満であると強度不足で引裂衝撃などの物性が弱くなるという問題があり、700N/cmを超えるとシートの剛性が高くなりすぎてシート敷設時の施工性が悪くなるので好ましくない。
【0027】
以上のような物性を持たせるためには糸番手は300d〜1500d、厚みが0.25mm〜0.6mm、密度が25本/5cm〜40本/5cm幅であるものが好適に用いられる。
【0028】
図1に示したゴム製防水型物3の場合は、一枚のシートを折ることによって直方体形状のゴム製防水型物にしている。隣り合う側面7同士の間は図4に拡大図を示すようにシートを折り返して、折り返したところを未加硫のEPDM、ブチルゴム、クロロプレンゴムなどからなる接着剤12を介在し、熱プレスすることによって接着している。
【0029】
直方体形状を作る場合に、側面同士の間でこのようにシートを折り返しておさめる方法だけでなく、切り欠きをつくって接合するという方法でも構わない。更に、ゴム製防水型物の形状が直方体のみに限られるものではなく、凹所2の形態に合わせてさまざまな形状を採ることが可能である。
【0030】
中詰材5は特に限定されるものではないが、例えば図5に示すような多数の折り曲げ部20や支柱30を有する形状のポリプロピレン、高密度ポリエチレン、硬質塩化ビニル、不飽和ポリエステルなどの樹脂素材からなる成形体やその他軽量な合金など、水によって腐食しにくく軽量な素材からなり、形状は例えば直方体である場合は平面形状が300〜4000mm、好ましくは500〜2000mm四方で厚みが100〜300mm程度のブロックなどを用いることができる。
【0031】
図5のブロック体中詰材5の場合は、折り曲げ部20の方向を互い違いにして積み上げることによって折り曲げ部20によって間隙が形成されて貯水率を確保することができるものである。
【0032】
以上のように貯水槽1を囲う遮水層として予め工場などで成形したゴム製防水型物3を用いることによって、簡便に施工することが可能であり、作業者の熟練度にかかわらず漏水や外観不良などの問題が起きにくく、出来栄えのよい貯水槽1を作ることができる。また、作業者の人数を減らすこともできるのでコストの面でもかなり有利な工法であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
例えば地上を駐車場や庭など別用途に利用しながら地下に雨水を貯めておくための貯水槽などに使用することができ、人件費の節約や工期の短縮ができるとともに人的な施工ミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のゴム製防水型物の一例を示す斜視図である。
【図2】ゴム製防水型物を配置したところの貯水槽の断面図である。
【図3】ゴム製防水型物内に中詰材を設置した後の断面図である。
【図4】ゴム製防水型物のプレス加工部を示す拡大斜視図である。
【図5】貯水槽内に設置する中詰材を積み上げたところの斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 貯水槽
2 凹所
3 ゴム製防水型物
4 貯水スペース
5 中詰材
6 底面
7 側面
8 流入管用ジョイント部
9 排水管用ジョイント部
10 取水区域
11 取水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.5〜3.0mmの加硫ゴムシートを予め工場にて施工箇所の形状に合わせた形状に切り取り・折り曲げ加工し、未加硫ゴムシートを接合部に介在して接合することによって形状を保持するようにしたことを特徴とするゴム製防水型物。
【請求項2】
補強材を埋設した加硫ゴムシートを用いた請求項1記載のゴム製防水型物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−7756(P2006−7756A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147389(P2005−147389)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】