サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、およびレセプター結合活性が保存されたそのアンタゴニストのポリマー結合体
【課題】サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモンおよびこれらのレセプター結合アンタゴニストのポリマー結合体の合成方法が提供される。これらの結合体は、通常高いレセプター結合活性を保持する。
【解決手段】ポリマー結合体の調製物は、レセプター−リガンド相互作用の立体的阻害を減少または回避する。この減少または回避は、通常、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンならびにそのアゴニスト性アナログおよびアンタゴニスト性アナログのレセプター結合領域に対する、ポリマーの付加によって生じる。また、このような方法によって生成された結合体および組成物。
【解決手段】ポリマー結合体の調製物は、レセプター−リガンド相互作用の立体的阻害を減少または回避する。この減少または回避は、通常、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンならびにそのアゴニスト性アナログおよびアンタゴニスト性アナログのレセプター結合領域に対する、ポリマーの付加によって生じる。また、このような方法によって生成された結合体および組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、タンパク質生化学、ならびに薬科学および医科学の分野にある。特に、本発明は、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)およびその誘導体)と特定の生物活性成分との間の結合体の産生のための方法を提供し、ここで、この結合体は、標準的なポリマー−生物活性成分の結合体と比較して増加したレセプター結合活性を有する。より具体的には、本発明は、異常に高いレセプター結合活性を有する特定のレセプター結合タンパク質のポリマー結合体の産生のための方法を提供する。本発明はまた、このような方法により産生された結合体、このような結合体を含む組成物、このような結合体および組成物を含むキット、そして、種々の医学的および獣医学的状態の予防、診断および処置における結合体および組成物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
以下の関連技術の説明は、本発明自体ではなく、関連技術における、本発明者の解釈を含む。サイトカインは、内分泌、パラクリンまたはオートクライン様式において、細胞の生存、増殖、分化および/またはエフェクター機能を制御する、分泌調節タンパク質である(Nicola,N.A.(1994)Guidebook to Cytokines and Their Receptors,Nicola,N.A.,編、pp.1−7,Oxford University Press,New Yorkにおいて総説される)。ケモカインは、強力な白血球活性化および/または化学走性活性を有する、構造的に関連した糖タンパク質のファミリーである(Oppenheim,J.J.,ら(1997)Clin Cancer Res 3:2682−2686において総説されている)。これらの密接な関係性と同様に、ポリペプチドホルモンと増殖因子、サイトカインとケモカインは、その標的細胞の表面上の特定のレセプタータンパク質に結合することによって、その調節性機能を開始する(Kossiakoff,A.A.,ら(1998)Adv Protein Chem 52:67−108;Onuffer,J.J.,ら(2002)Trends Pharmacol Sci 23:459−467において総説されている)。これらの能力、特異性、小さなサイズおよび組換え生物体における産生の相対的容易さに起因して、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンは、治療剤として多くの潜在的な用途を有する。
【0003】
2つの重要な因子が、特に、サイトカインのそして、一般には、組換えタンパク質の治療剤としての開発を妨害する−循環におけるこれらの一般に短い半減期、ならびにこれらの潜在的な抗原性および免疫原性。本明細書中、および一般に当該分野で用いられる場合、用語「抗原性」とは、分子が既存の抗体に結合する能力を言い、一方で、用語「免疫原性」とは、分子が、インビボで免疫応答を惹起する能力を言い、その応答は、抗体の形成(「体液性応答」)または細胞性免疫応答の刺激のいずれかを含む。
【0004】
組換え治療用タンパク質の投与について、最も高い循環活性を達成し、そして、バイオアベイラビリティおよび分解の問題を最小限にするために静脈内(i.v.)投与がしばしば望まれる。しかし、i.v.投与後の小さなタンパク質の半減期は、通常、非常に短い(例えば、Mordenti,J.,ら(1991)Pharm Res 8:1351−1359;Kuwabara,T.,ら(1995)Pharm Res 12:1466−1469を参照のこと)。約36オングストロームのStokes半径および約66,000ダルトン(66kDa)の分子量を有する、血清アルブミンの水力学的半径を超える半径を有するタンパク質は、一般に、健常な腎臓により血流に保持される。しかし、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターフェロン−α(「IFN−α」)およびインターフェロン−γ(「IFN−γ」)のようなサイトカインを含むより小さなタンパク質は、糸球体濾過により血流から迅速に除去される(Brenner,B.M.,ら(1978)Am J Physiol 234:F455−F460;Venkatachalam,M.A.ら(1978)Circ Res 43:337−347;Wilson,G.,(1979)J Gen Physiol 74:495−509;Knauf,M.J.,ら(1988)J Biol Chem 263:15064−15070;Kita,Y.,ら(1990)Drug Des Deliv 6:157−167;Rostaing,L.,ら(1998),J Am Soc Nephrol 9:2344−2348)。結果として、循環中の治療的有効濃度の小さな組換えタンパク質の維持は、注射後に問題となる。従って、より高い濃度のこのようなタンパク質、およびより高頻度での注射が、代表的に投与されなければならない。得られる用量レジメンは、治療費を増加させ、患者のコンプライアンスの可能性を減少させ、そして、有害な事象(例えば、免疫反応)の危険性を増加させる。細胞性免疫応答および体液性免疫応答の両方が、有効用量の投与を不可能にし得るか、または、クリアランスの加速、効力の中和およびアナフィラキシーを含む、治療を制限する事象をもたらし得る程度まで、注射された組換えタンパク質の循環濃度を減少し得る(Ragnhammar,P.,ら(1994)Blood 84:4078−4087;Wadhwa,M.,ら(1999)Clin Cancer Res 5:1353−1361;Hjelm Skog,A.−L.,ら(2001)Clin Cancer Res 7:1163−1170;Li,J.,ら(2001)Blood 98:3241−3248;Basser,R.L.,ら(2002)Blood 99:2599−2602;Schellekens,H.,(2002)Clin Ther 24:1720−1740)。
【0005】
ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)の共有結合による組換えタンパク質の改変は、上で議論した欠点に取り組む手段として広範に調査されている(Sherman,M.R.,ら(1997)Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications,Harris,J.M.,ら編、pp.155−169,American Chemical Society,Washington,D.C.;Roberts,M.J.,ら(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:459−476において総説されている)。PEGのタンパク質への結合は、インビボにおいてタンパク質を安定化させ、そのバイオアベイラビリティを改善し、そして/またはその免疫原性を低下させることが示されている(PEGのタンパク質もしくは他の物質への共有結合は、本明細書中で、そして、当該分野で公知であるように、「PEG化」と呼ばれる)。さらに、PEG化は、タンパク質の水力学的半径を有意に増加させ得る。サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのように小さなタンパク質が、単一のPEGの長鎖(例えば、少なくとも約18kDaの分子量を有する)に結合される場合、得られる結合体は、血清アルブミンの水力学的半径を超えない半径を有し、腎糸球体を介する循環からのそのクリアランスを劇的に遅延させる。PEG化の組み合わせ効果−タンパク質溶解の減少、免疫認識の減少および腎クリアランス速度の減少−は、PEG化されたタンパク質に、治療剤としてかなりの利点を与える。
【0006】
1970年代から、ポリマーの共有結合を使用して、薬学的用途のための種々のタンパク質の安全性および性能を改善する試みがなされている(例えば、Davis,F.F.,ら、米国特許第4,179,337号を参照のこと)。いくつかの例としては、重症複合免疫不全疾患の処置における使用のためのPEGまたはポリ(エチレンオキシド)(「PEO」)のアデノシンデアミナーゼ(EC 3.5.4.4)へのカップリング(Davis,S.,ら(1981)Clin Exp Immunol 46:649−652;Hershfield,M.S.,ら(1987)N Engl J Med 316:589−596)、炎症性状態の処置のためのスーパーオキシドジスムターゼ(EC 1.15.1.1)へのカップリング(Saifer,M.,ら、米国特許第5,006,333号および同第5,080,891号)、ならびに血液および尿からの過剰の尿酸の排除のための尿酸オキシダーゼ(EC 1.7.3.3)へのカップリング(Kelly,S.J.,ら(2001)J Am Soc Nephrol 12:1001−1009;Williams,L.D.,ら、PCT公開番号WO 00/07629 A2およびA3ならびに米国特許第6,576,235号;Sherman,M.R.,ら、PCT公開番号WO 01/59078 A2)が挙げられる。
【0007】
PEOおよびPEGは、共有結合されたエチレンオキシド単位から構成されるポリマーである。これらのポリマーは、以下の一般構造を有する:
R1−(OCH2CH2)n−R2
ここで、R2はヒドロキシル基(またはその反応性誘導体)であり得、そして、R1は、ジヒドロキシPEG(「PEGジオール」)においては水素、モノメトキシPEG(「mPEG」)においてはメチル基、または、例えば、イソプロポキシPEGもしくはt−ブトキシPEGにおいては別の低級アルキル基であり得る。PEGの一般構造におけるパラメーターnは、ポリマー中のエチレンオキシド単位の数を示し、そして、本明細書中、および当該分野において、「重合の程度」と呼ばれる。同じ一般構造のポリマー(R1はC1〜7アルキル基である)はまた、オキシラン誘導体と称されている(Yasukohchi,T.,ら、米国特許第6,455,639号)。PEGおよびPEOは、直鎖であっても分枝であっても(Fuke,I.,ら(1994)J Control Release 30:27−34)、星型の形状であってもよい(Merrill,E.W.,(1993)J Biomater Sci Polym Ed 5:1−11)。PEGおよびPEOは、両親媒性であり、すなわち、これらは、水および特定の有機溶媒に可溶性であり、かつ、これらは、脂質含有物質(被膜ウイルス、ならびに動物細胞および細菌細胞の膜が挙げられる)に接着し得る。エチレンオキシド(OCH2CH2)およびプロピレンオキシドの、特定のランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーもしくは交互性コポリマーは、以下の構造を有し:
【0008】
【化1】
これらのポリマーが、特定の用途においてPEGについての適切な代替品であると考えられるのに十分な、PEGの特性と類似の特性を有する(例えば、Hiratani,H.,米国特許第4,609,546号およびSaifer,M.,ら、米国特許第5,283,317号を参照のこと)。用語「ポリアルキレンオキシド」および略語「PAO」は、本明細書中で、このようなコポリマー、ならびに、PEGもしくはPEOおよびポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)コポリマーを指すために、本明細書中で使用される(Pitt,C.G.,ら、米国特許第5,476,653号)。本明細書中で使用される場合、用語「ポリアルキレングリコール」および略語「PAG」は、本発明の結合体における用途に適切なポリマー、具体的には、PEG、より具体的には、単一の反応基を含有するPEG(「単官能基の活性型PEG」)を一般的に指すために使用される。
【0009】
PEGもしくは他のポリアルキレンオキシドのタンパク質への共有結合は、ポリマーの少なくとも1つの端基の反応性官能基内への変換を必要とする。このプロセスは、しばしば「活性化」と呼ばれ、そして、この生成物は、「活性型PEG」もしくは活性型ポリアルキレンオキシドと呼ばれる。モノメトキシPEG((「メトキシル基」を生じるために)1端における酸素が、不活性の化学的に安定なメチル基でキャッピングされており、他の端が、タンパク質分子のアミノ基に対して反応性である官能基でキャッピングされている)が、このような用途に最も一般的に使用される。いわゆる「分枝の」mPEG(単一の活性型官能基から離れて2つ以上のメトキシル基を含む)は、あまり一般的には使用されない。分枝PEGの例は、ジ−mPEG−リジンであり、ここで、PEGは、両方のアミノ基に結合し、リジンのカルボキシル基が、最もしばしば、N−ヒドロキシスクシンイミドを用いるエステル化によって活性化される(Martinez,A.,ら、米国特許第5,643,575号;Greenwald,R.B.,ら、米国特許第5,919,455号;Harris,J.M.,ら、米国特許第5,932,462号)。
【0010】
通常、活性型ポリマーは、結合部位として機能する求核性官能基を有する生物活性化合物と反応する。通常結合部位として使用される1つの求核性官能基は、リジン残基のεアミノ基である。溶媒アクセス可能なα−アミノ基、カルボン酸基、グアニジノ基、イミダゾール基、適切に活性化されたカルボニル基、酸化された炭化水素部分、およびチオール基がまた、結合部位として使用されている。
【0011】
PEGのヒドロキシル基は、そのタンパク質への結合の前に、塩化シアヌルを用いて活性化される(Abuchowski,A.,ら(1977)J Biol Chem 252:3582−3586;Abuchowski,A.,ら(1981)Cancer Treat Rep 65:1077−1081)。しかし、この方法の使用は、塩化シアヌルの毒性およびアミン以外の官能基を有するタンパク質に対する非特異的な反応性、ならびに、機能に必須であり得る、溶媒アクセス可能なシステイン残基もしくはチロシン残基のような不利益を有する。これらおよび他の不利益を克服するために、PEGのコハク酸スクシンイミジル誘導体(「SS−PEG」)(Abuchowski,A.,ら(1984)Cancer Biochem Biophys 7:175−186)、PAGの炭酸スクシンイミジル誘導体(「SC−PAG」)(Saifer,M.,ら、米国特許第5,006,333号)、およびPEGのアルデヒド誘導体(Royer,G.P.,米国特許第4,002,531号)のような代替的な活性型PEGが導入されている。
【0012】
通常、1つ以上のPAG(例えば、約5kDa〜約10kDaの分子量を有する1つ以上のPEG)のいくつか(例えば、5〜10個)の鎖は、第1級アミノ基(リジン残基のεアミノ基、そして、可能であれば、アミノ末端(「N−末端」)アミノ酸のαアミノ基)を介して標的タンパク質に結合される。より近年、高分子量(例えば、12kDa、20kDaもしくは30kDa)のmPEGの単鎖を含む結合体が合成されている。結合体の血漿半減期と、分子量の増加および/またはカップリングされたPEGの鎖数の増加との間に、直接的な相関性が示されている(Knauf,M.J.,ら、前出;Katre,N.V.(1990)J Immunol 144:209−213;Clark,R.,ら(1996)J Biol Chem 271:21969−21977;Leong,S.R.,ら(2001)Cytokine 16:106−119)。一方で、タンパク質の各分子にカップリングされるPEGの鎖数が増加するにつれ、タンパク質の不可欠な領域のアミノ基が改変され、従って、特に、レセプター結合タンパク質の場合、このタンパク質の生物学的機能が損なわれる可能性が増加する。多くのアミノ基を含むより大きなタンパク質について、そして、低分子量の基質を有する酵素について、作用期間の増加と、比活性の減少との間の交換(tradeoff)は、受容可能であり得る。なぜならば、これらは、最終的にインビボにおいてPEG含有結合体の生物学的活性の増加を生じるからである。しかし、細胞表面レセプターとの相互作用を介して機能するより小さなタンパク質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモン)については、比較的高い程度の置換が、血流における半減期の延長という利点をなくす程度まで、機能的活性を減少させると報告されている(Clark,R.,ら、前出)。
【0013】
従って、ポリマー結合体化は、酵素のような治療用タンパク質の生物活性を延長し、そして、免疫反応性を減少させるための、十分に確立された技術である(例えば、米国仮出願番号60/436,020(2002年12月26日出願)、ならびに米国仮出願番号60/479,913および同60/479,914(両方とも、2003年6月20日出願)(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。しかし、細胞表面レセプターに特異的に結合することによって機能するレセプター結合タンパク質へのポリマーの結合体化は、通常:1)このような結合と干渉し;2)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのアゴニストのシグナル伝達効力を顕著に消失し;そして3)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのアンタゴニストの競合的効力を顕著に消失する。レセプター結合活性が消失したこのような結合体の刊行された例としては、とりわけ、ヒト成長ホルモン(「hGH」)(Clark,R.,ら、前出);hGHアンタゴニスト(Ross,R.J.M.,ら(2001)J Clin Endocrinol Metab 86:1716−1723;IFN−α(Bailon,P.,ら(2001)Bioconjug Chem 12:195−202;Wylie,D.C.,ら(2001)Pharm Res 18:1354−1360;Wang,Y.−S.,ら(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:547−570)およびG−CSF(Kinstler,O.,ら、PCT公開番号WO 96/11953;Bowen,S.,ら(1999)Exp Hematol 27:425−432)が挙げられる。極端な場合、インターロイキン−15(「IL−15」)へのポリマーのカップリングは、このIL−2様増殖因子を、細胞増殖のインヒビターに変換した(Pettit,D.K.,ら(1997)J Biol Chem 272:2312−2318)。理論に束縛されることは意図しないが、このような所望でないPEG化の効果についての機構は、かさ高いPEG基によるレセプター相互作用の立体障害、電荷の中性化もしくはこの両方を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、実質的な生物活性(例えば、少なくとも約40%)、ほとんど完全な生物活性(例えば、少なくとも約80%)または本質的に完全な生物活性(例えば、少なくとも約90%)を保存した、PEG含有(例えば、PEG含有および/またはPEO含有)結合体、特に、このような水溶性ポリマーとレセプター結合タンパク質との間の結合体を産生するための方法に対する必要性が存在する。このような結合体は、インビボにおける溶解性、安定性、半減期およびバイオアベイラビリティが増加したポリマー成分により提供される利益を有し、かつ、この結合体が、予防、治療もしくは診断の目的で導入された動物において、従来のポリマー結合体と比較して、実質的に増加した効力もしくは有用性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、上で同定された必要性に取り組み、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)およびその誘導体)の生物活性成分(特に、レセプター結合タンパク質(特に、サイトカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモンおよびポリペプチド増殖因子のような治療用もしくは診断用生物活性成分))との結合体の調製のための方法を提供し、このようなサイトカインとしては、インターフェロン−β、そしてより具体的には、インターフェロン−β−1bが挙げられる。本発明はまた、このような方法により産生される結合体を提供する。対応する結合体化していない生物活性成分と比較して、本発明の結合体は、安定性が増加している(すなわち、インビボにおいてより長い保存性およびより長い半減期を有する)。さらに、ポリペプチド鎖に沿って、溶媒アクセス可能な部位にランダムに結合されるポリマー鎖との同じ生物活性成分の結合体と比較して、本発明の結合体は、インビトロで測定もしくは採用され得るレセプター結合活性が増加しており、かつ、インビボにおいて効力が増加している。本発明はまた、産業的な細胞培養における用途のためのこのような改善された結合体を提供する。さらに、本発明は、このような結合体を含む組成物、このような結合体および組成物を含むキット、ならびに、種々の予防レジメン、診断レジメンおよび治療レジメンにおける、この結合体および組成物の使用方法を提供する。
【0016】
1つの実施形態において、本発明は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンのレセプター結合能力を保存するための方法を提供し、この方法は、1つ以上の合成水溶性ポリマーを、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストのアミノ末端のアミノ酸に選択的にカップリングする工程を包含し、ここで、アミノ末端のアミノ酸は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストの1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて位置している。関連する実施形態において、本発明は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストのレセプター結合能力を保存するための方法を提供し、この方法は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストの1つ以上のグリコシル化部位において、もしくはその付近に、1つ以上の合成水溶性ポリマーを選択的にカップリングする工程を包含し、ここで、1つ以上のグリコシル化部位は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンの1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて位置している。
【0017】
本発明のこれらの方法における用途に適切なポリマーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:1つ以上のポリアルキレングリコール(1つ以上のポリ(エチレングリコール)、1つ以上のモノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)および1つ以上のポリ(エチレングリコール)、1つ以上のモノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)および1つ以上のモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)が挙げられるがこれらに限定されない)、1つ以上のポリアルキレンオキシド、1つ以上のポリオキシラン、1つ以上のポリオレフィンアルコール(例えば、ポリビニルアルコール)、1つ以上のポリカルボキシレート、1つ以上のポリ(ビニルピロリドン)、1つ以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、1つ以上のポリ(アミノ酸)、1つ以上のポリアクリロイル−モルホリン、1つ以上のアミドと1つ以上のアルキレンオキシドとの1つ以上のコポリマー、1つ以上のデキストランおよび1つ以上のヒアルロン酸。本発明の方法における用途に適切なポリマーは、代表的に、約1kDaと約100kDaとの間(端を含めて)、より具体的には、約1kDaと約5kDaとの間(端を含めて);約10kDaと約20kDaとの間(端を含めて);約18kDaと約60kDaとの間(端を含めて);約12kDaと約30kDaとの間(端を含めて);または約10kDa、約20kDaもしくは約30kDaの分子量を有する。
【0018】
その特異的な細胞表面レセプターにより媒介される、対応するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンの生物学的効果を模倣(すなわち、アゴナイズする)もしくは拮抗する、種々のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンは、本発明の結合体の調製における用途に適切である。これらとしては、4つのヘリックス束構造を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン(顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病抑制因子(LIF)、エリスロポイエチン(Epo)、トロンボポイエチン(Tpo)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)(IFN−β−1bが挙げられる)、コンセンサスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモンならびにそのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体が挙げられるがこれらに限定されない)、β−シートもしくはβ−バレル構造を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン(腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮増殖因子(EGF)、インシュリン様増殖因子−1(IGF−1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにそのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体が挙げられるがこれらに限定されない);混合型α/β構造を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン(好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質性細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学遊走タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄球前駆体阻害因子−1(MPIF−1)。ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)およびGRO/黒色腫成長刺激活性(GRO−α/MGSA)、ならびにそのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられる。本発明における用途に適切なポリペプチドホルモンとしては、インシュリン、およびインシュリンレセプターにより媒介されるインシュリンの生物学的効果を模倣もしくはアンタゴナイズするインシュリンアナログ;プララクチン、およびプロラクチンレセプターにより媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣もしくはアンタゴナイズするプロラクチンアナログ;ならびに、成長ホルモン(特にヒト成長ホルモン)、および成長ホルモンレセプターにより媒介される成長ホルモンの生物学的効果を模倣もしくはアンタゴナイズする成長ホルモンアナログが挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
本発明に従う用途に適切な特に好ましいサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンとしては、IL−2;IL−10;IFN−α;IFN−β(IFN−β−1bが挙げられる);TNF−α;IGF−1;EGF;bFGF;hGH;プロラクチン;およびインシュリンが挙げられる。また、用途に特に適切なのは、上記のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンの競合的アンタゴニスト(例えば、TNF−α、hGHもしくはプロラクチンのアンタゴニスト)、ならびにこれらのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのムテイン、改変体および誘導体である。
【0020】
特定の実施形態において、その1以上のポリマーは、(特に、第二級アミン結合を介して)、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン上のアミノ末端のアミノ酸のαアミノ基に共有結合される。他の実施形態において、その1以上のポリマーは、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのアミノ末端のアミノ酸の化学的に反応性の側鎖基(例えば、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、イミダゾール基、アミノ基、カルボキシル基、またはアルデヒド誘導体)に共有結合される。さらなる実施形態において、アミノ末端のアミノ酸での、または1以上のグリコシル化部位でのもしくはその付近での、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンへのそのポリマーの結合は、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのグリコシル化の有益な効果を模倣する。関連する実施形態において、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン上のアミノ末端のアミノ酸での、または1以上のグリコシル化部位でのもしくはその付近での、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンへのそのポリマーの結合は、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの過剰グリコシル化の有益な効果を模倣し、ここで「過剰グリコシル化」とは、ネイティブな構造に存在する単純な炭水化物部分もしくは複雑な炭水化物部分の共有結合に加えて、単純な炭水化物部分もしくは複雑な炭水化物部分の共有結合を示す。
【0021】
本発明はまた、本発明の方法によって生成される結合体を提供する。本発明の結合体は、1以上の合成水溶性ポリマー(例えば、上記のもの)に結合された、選択されたサイトカイン、選択されたケモカイン、選択された増殖因子、選択されたポリペプチドホルモンまたは選択されたそれらのアンタゴニスト(例えば、上記のもの)を包含する。ここでその1以上のポリマーは、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのアミノ末端のアミノ酸に連結され、そのアミノ末端のアミノ酸は、その選択されたサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの1以上のレセプター結合ドメインから離れて位置する。さらに、本発明の結合体は、1以上の合成水溶性ポリマー(例えば、上記のもの)に結合された、選択されたサイトカイン、選択されたケモカイン、選択された増殖因子または選択されたポリペプチドホルモン、またはそれらの選択されたアンタゴニスト(例えば、上記のもの)を包含する。ここでその選択されたサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン、またはそれらのアンタゴニストの1以上のグリコシル化部位に結合されたその1以上のポリマーは、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン、またはそれらのアンタゴニストの1以上のレセプター結合ドメインから離れて位置する。本発明のアゴニストのポリマー結合体については、ポリマー結合の部位がそのレセプター結合ドメインの全てから離れていることが好ましい。本発明の特定の化合物のポリマー結合体については、ポリマー結合の部位が、結合が生じるのに必須の特定のレセプター結合ドメインから離れていることが好ましいが、アゴニストによるシグナル伝達に必須のレセプター結合ドメインの全てから必ずしも離れていなくてもよい。本発明はまた、1以上の本発明の結合体および1以上のさらなる成分(例えば、1以上の薬学的に受容可能な希釈剤、賦形剤もしくはキャリア)を含む、組成物、特に薬学的組成物を提供する。本発明はまた、1以上の本発明の結合体、組成物、および/または薬学的組成物を含むキットを提供する。
【0022】
本発明はまた、身体的障害(physical disorder)に罹患しているか、またはその肉体的障害に罹りやすい動物(例えば、ヒトのような哺乳動物)における肉体的障害を予防、診断または処置する方法を提供する。このような方法は、例えば、本発明の1以上の結合体、組成物または薬学的組成物の有効量をその動物に投与する工程を包含し得る。このような本発明の方法に従って適切に処置または予防される肉体的障害としては、癌(例えば、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、胃腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、骨の癌、神経学的癌、頭部および頸部の癌、皮膚癌、肉腫、腺腫、癌腫および骨髄腫);感染性疾患(例えば、細菌性疾患、真菌性疾患、寄生生物性疾患およびウイルス性疾患(例えば、ウイルス性肝炎、心臓向性ウイルス(cardiotropic virus)により引き起こされる疾患);HIV/AIDS;など));ならびに遺伝性障害(例えば、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、小人症および重症複合免疫不全(「SCID」);自己免疫障害(例えば、乾癬、全身性エリテマトーデスおよび慢性関節リウマチ)ならびに神経変性障害(例えば、多発性硬化症、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルツハイマー病などの種々の形態および段階)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の他の好ましい実施形態は、本発明の以下の図面および説明、ならびに特許請求の範囲に鑑みて、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1〜8は、結晶学的データに基づいて、RasMolソフトウェア(Sayle,R.A.ら,(1995)Trends Biochem Sci 20:374−376)で作成される、種々のサイトカインおよび増殖因子の分子モデルを示す。これらのモデルの各々は、特に目的の特定の残基(これらは、「ボールとスティック」形式で示される)を除いて、「リボン」または「コンピューター画像プリントアウト(cartoon)」形式で示される。これらの形式は、RasMolソフトウェアを使用して選択される選択肢である。そのリボンの暗い部分は、それらのレセプターへの結合に関与すると報告されている、サイトカインおよび増殖因子のドメインを示す。各構造について、Protein Data Bank(「PDB」)における取得コードが示される(Laskowski,R.A.,(2001) Nucleic Acids Res 29:221−222;Peitsch,M.C.,(2002)Bioinformatics 18:934−938;Schein,C.H.,(2002)Curr Pharm Des 8:2113−2129を参照のこと)。
【図1a】図1aは、インターフェロン−α−2a(配列番号1)のモデルを示し、このモデルにおいて、RocheのPEG−インターフェロン製品(PEGASYS(登録商標))におけるPEG化の主な部位であると報告されているその4つのリジン残基(Lys31、Lys121、Lys131およびLys134)は、「ボールとスティック」形式で示される(Bailon,P.ら,前出のデータに基づく)。そのレセプターへの結合に関与する領域(「結合部位1および結合部位2」)が同定される。PEGASYSにおいてPEG化されていると報告されたそのリジン残基の4つ全ては、結合部位1の領域に存在する。(PDBコード1ITF)。
【図1b】図1bは、インターフェロン−α−2b(配列番号2)のモデルを示し、このモデルにおいて、Schering−PloughのPEG−INTRON(登録商標)におけるPEG化の主な部位であると報告されている残基(His34、Lys31、Lys121、Tyr129およびLys131)は、「ボールとスティック」形式で示される(Wylie,D.C.ら,前出のデータに基づく)。これらのアミノ酸残基は、結合部位1の領域に存在する。
【図1c】図1cは、インターフェロン−α−2bのモデルを示し、このモデルにおいて、そのアミノ末端のシステイン残基(「Cys1」)(本発明に従うPEG化の標的)は、「ボールとスティック」形式で示される。Cys1は、結合部位1および結合部位2から離れている。
【図1d】図1dは、インターフェロン−α−2bの、図1cに示されるモデルと同じモデルを示す。図1cのモデルに対して、20kDa PEGの一本鎖が、そのN末端システイン残基(「Cys1」)において結合されている。PEGの構造を、Lee,L.S.ら,((1999)Bioconjug Chem 10:973−981)によって記載されるプログラムの適合を用いて生成した。その構造は、そのタンパク質と同じスケールにされる。
【図2】図2は、ヒトインターフェロン−β−1a(配列番号3)の分子モデルを示し、このモデルにおいて、そのレセプター結合ドメイン内に存在するかまたはそのレセプター結合ドメインに隣接するいくつかのリジン残基(Lys19、Lys33、Lys99およびLys134)が、示される。さらに、そのグリコシル化部位(Asn80)およびそのN末端メチオニン残基(「Met1」)は、(Karpusas,M.ら,(1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:11813−11818;Karpusas,M.ら,(1998)Cell Mol Life Sci 54:1203−1216;Runkel,L.ら,(2000)Biochemistry 39:2538−2551のデータに基づいて)「ボールとスティック」形式で示される。Met1は、結合部位1および結合部位2から離れているのに対して、いくつかのリジン残基は、そのレセプター結合ドメイン内に位置する。(PDBコード1AUI)。インターフェロン−β−1bの構造は、N末端メチオニン残基および炭水化物部分を欠き、対形成しないシステイン残基(Cys17)で置換されるセリン残基を有することにおいて、インターフェロン−β−1aの構造とは異なる。
【図3】図3は、ヒト顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」;配列番号5)の分子モデルを示し、このモデルにおいて、そのレセプター結合ドメイン内に存在する3つのリジン残基(Lys72、Lys107およびLys111)および結晶構造において可視化されるそのアミノ末端近くにある最初のアミノ酸残基(「Arg4」)は、(Rozwarski,D.A.ら,(1996)Proteins 26:304−313のデータに基づいて)「ボールとスティック」形式で示される。GM−CSFのアミノ末端領域は、結合部位1および結合部位2から離れている。(PDBコード2GMF)。
【図4】図4は、ヒトインターロイキン−2(「IL−2」;配列番号6)の分子モデルを示し、このモデルにおいて、3つのレセプター(α、βおよびγ)の各々に関与すると報告されているアミノ酸残基は、そのレセプター結合ドメイン内またはその近くに存在するいくつかのリジン残基と同様に、「ボールとスティック」形式で示される。その結晶構造において可視化されるアミノ末端に最も近いアミノ酸残基は、セリン6(「Ser6」)である。このセリン6は、(Bamborough,P.ら,(1994)Structure 2:839−851;Pettit,D.K.ら,前出のデータに基づいて)そのレセプター結合ドメインから離れている。(PDBコード3INK)。
【図5】図5は、ヒト上皮増殖因子(「EGF」;配列番号7)の分子モデルを、レセプター結合に関連している残基およびレセプター結合領域に隣接している2つのリジン残基(Lys28およびLys48)を除いて、「コンピューター画像プリントアウト」形式で示す。その鎖内ジスルフィド結合は、破線として示される。このモデルが基づく結晶構造において可視化されるアミノ末端に最も近いアミノ酸残基は、(Carpenter,G.ら,(1990)J Biol Chem 265:7709−7712;Lu,H.−S.ら,(2001)J Biol Chem 276:34913−34917に基づいて)システイン6(「Cys6」)である。結晶構造において可視化されていないそのEGFのアミノ末端の可撓性部分(残基1〜5)は、レセプター結合領域中に存在しないようである。(PDBコード1JL9)。
【図6】図6は、塩基性線維芽細胞増殖因子(「bFGF」;配列番号8)の分子モデルを、「コンピューター画像プリントアウト」形式で示し、この形式において、そのレセプターへ、およびヘパリンへの結合に関与する残基は、(Schlessinger,J.ら,(2000)Mol Cell 6:743−750のデータに基づいて)「ボールとスティック」形式で示すことによって同定される。そのアミノ末端からの最初の12個のアミノ酸残基は、レセプター結合に関与していない。(PDBコード1FQ9)。
【図7】図7は、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」;配列番号9)の分子モデルを、レセプター結合に関与する残基(23〜25および28〜37)、ならびに結晶構造において可視化されるアミノ末端に最も近いアミノ酸残基であるグルタミン酸残基3(「Glu3」)を除いて、「コンピューター画像プリントアウト」形式で示す。そのリジン残基のうちの2つが同定され、(Brzozowski,A.M.ら,(2002)Biochemistry 41:9389−9397のデータに基づいて)そのうちの一方(Lys27)は、レセプター結合ドメインに隣接し、その他方は、レセプター結合ドメインから離れている。IGF−1のアミノ末端は、そのレセプター結合ドメインから離れている。(PDBコード1GZR)。
【図8】図8は、インターフェロン−γ(「IFN−γ」;配列番号4)の分子モデルを示し、これは、ホモダイマーである。その2つのポリペプチド鎖の間の相互作用を明らかにするために、そのモノマーのうちの一方(「鎖A」)を、「リボン」形式で示し、他方(「鎖B」)を、「骨格」形式で示す。リジン残基(明色の「ボールとスティック」形式で示される)は、ポリペプチド鎖(そのモノマー間の界面に含まれる領域を含む)に沿って存在するか、またはレセプター結合に関与するアミノ酸残基に隣接する。IFN−γのアミノ末端領域は、その二量体化界面から離れているが、グルタミン1(Gln1)は、レセプター結合に関与する(Thiel,D.J.ら,(2000)Structure 8 :927−936;PDBコード1FG9)。
【図9】図9は、IFN、20kDa mPEG−アルデヒドおよび還元剤を含む反応混合物のカチオン交換クロマトグラフィーによる、非PEG化インターフェロン−α−2b(「IFN」)、モノPEG化インターフェロン−α−2b(「PEG1−IFN」)およびジPEG化インターフェロン−α−2b(「PEG2−IFN」)の分画を示す。
【図10】図10は、図9に示されるように分画した反応混合物、および結果が図9に示されるイオン交換カラムから収集した、選択された画分のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
【図11】図11は、ヒトIL−2、20−kDa mPEG−アルデヒドおよび還元剤を含む反応混合物のカチオン交換クロマトグラフィーによる分画を示す。示された溶出条件下で、その残りの非PEG化IL−2は、図9に示されるインターフェロン−α−2bについての結果とは異なって、そのカラムから溶出しなかった。
【図12】図12は、図11に示されるように分画した反応混合物、およびそのカラムから溶出した、選択された画分のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
【図13】図13は、PEG化インターロイキン−2(「PEG−IL−2」)の反応混合物、およびそのクロマトグラムが図11に示されるカチオン交換カラムからの画分の電気泳動分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
別段規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料に類似するかまたはこれらに等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験に使用されうるが、好ましい方法および材料が、本明細書以降に記載される。
【0026】
(定義)
約:本明細書で使用されるように、任意の数値に言及する場合、用語「約」は、その示された値の±10%の値を意味する(例えば、「約50℃」とは、45℃〜55℃(両端の値を含む)の温度範囲を包含する;同様に、「約100mM」とは、90mM〜110mM(両端の値を含む)の濃度範囲を包含する)。
【0027】
アミノ酸残基:本明細書で使用されるように、用語「アミノ酸残基」とは、ポリペプチド骨格または側鎖中の2つのペプチド結合におけるその関与の結果として、しかしそのアミノ酸が、直鎖状ポリペプチド鎖の各々の端部に存在する場合、1つのペプチド結合に関与するときもまた、通常脱水される特定のアミノ酸をいう。そのアミノ酸残基は、当該分野で一般的な3文字表記または1文字表記によって言及される。
【0028】
アンタゴニスト:本明細書で使用される場合、用語「アンタゴニスト」とは、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンについてのレセプターを介して媒介される細胞、組織または生物に対する、その所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの生物学的効果および/または生理学的効果を減少させるか、実質的に減少させるか、あるいは完全に阻害する化合物、分子、部分または複合体をいう。アンタゴニストは、種々の様式でこのような効果を成し遂げうる。これらの効果としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:細胞表面上の結合部位またはレセプターについてのアゴニストと競合すること;そのアゴニストが細胞表面レセプターに結合する能力を減少するか、実質的に減少するかまたは阻害するような様式で、そのアゴニストと相互作用すること;その細胞表面レセプターに結合し、その細胞表面レセプターおけるコンホメーション変化を誘導し、その結果、その細胞表面レセプターが、そのアゴニストがもはや結合することができない(または減少したかまたは実質的に減少したアフィニティーおよび/もしくは効率でしか結合することができない)構造をとること;細胞、組織または生物における生理学的変化(例えば、細胞内シグナル伝達複合体を増加させる;転写インヒビターを増大させる;細胞表面リガンドレセプター発現の減少など)を誘導し、その結果、そのアゴニストの結合またはその細胞への結合の際に、そのアゴニストにより誘導された生理学的シグナルが、減少されるか、実質的に減少されるか、または完全に阻害されること;ならびにそのアンタゴニストがそれらの活性を成し遂げ得る、当業者に周知の他の機構。当業者に理解されるように、アンタゴニストは、拮抗するリガンドに類似の構造を有していてもよいし(例えば、そのアンタゴニストは、そのアゴニストのムテイン、改変体、フラグメントもしくは誘導体であり得る)、全く関連しない構造を有していてもよい。
【0029】
生物活性成分:本明細書中で使用される場合、用語「生物活性成分」とは、細胞、組織、器官または生物体において、インビボ、インビトロもしくはエキソビボで特定の生物学的活性を有し、そして一以上のポリアルキレングリコールに結合して本発明の結合体を形成し得る、化合物、分子、部分または複合体をいう。好ましい生物活性成分としては、タンパク質およびポリペプチド(例えば、本明細書に記載のタンパク質およびポリペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
結合:本明細書中で使用される場合、用語「結合」とは、共有結合性(例えば、化学的カップリング)であり得るかまたは非共有結合性(例えば、イオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合など)であり得る結合または付着をいう。共有結合は、例えば、エステル結合、エーテル結合、リン酸エステル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、アミン結合、ペプチド結合、イミド結合、ヒドラゾン結合、ヒドラジド結合、炭素−硫黄結合、炭素−リン結合などであり得る。用語「結合した」は、「カップリングした」、「結合体化した(conjugated)」および「付着した」のような用語よりも広義であり、そしてこれらを包含する。
【0031】
結合体/結合体化:本明細書中で使用される場合、「結合体(conjugate)」とは、ポリマー(例えば、PEGまたはPEO)の、生物活性成分(例えば、タンパク質または糖タンパク質)への共有結合性付着の生成物をいう。「結合体化(conjugation)」とは、前文で定義されるような結合体の形成をいう。当業者によって通常使用される、生物学的に活性な物質へポリマーを結合体化する任意の方法が、本発明において使用され得る。
【0032】
カップリングされた:本明細書中で使用される場合、用語「カップリングされた」とは、共有結合または強い非共有結合性相互作用による付着をいい、代表的におよび好ましくは、共有結合による付着をいう。当業者によって通常使用される、生物学的に活性な物質のカップリングのための任意の方法が、本発明において使用され得る。
【0033】
サイトカイン/ケモカイン:本明細書中で使用される場合、用語「サイトカイン」は、内分泌様式、傍分泌様式または自己分泌様式で、細胞の生存、増殖、分化および/またはエフェクター機能を制御する分泌性調節タンパク質として定義される(Nicola,N.A.,前出;Kossiakoff,A.A.ら,前出)。同様に、本明細書中で使用される場合、用語「ケモカイン」は、強力な白血球活性化活性および/または走化性活性を有する構造的に関連のある糖タンパク質のファミリーのメンバーとして定義される(Oppenheim,J.J.ら、前出において概説されている)。この定義によると、サイトカインおよびケモカインとしては、インターロイキン、コロニー刺激因子、増殖因子、および種々の細胞によって産生される他のペプチド因子が挙げられ、これらとしては、本明細書において具体的に開示または例示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの近縁物であるポリペプチドホルモンおよび増殖因子と同様に、サイトカインおよびケモカインは、それらの標的細胞の表面上の特異的レセプタータンパク質に結合することによって、それらの調節機能を開始する。
【0034】
疾患、障害、状態:本明細書中で使用される場合、用語「疾患」または「障害」とは、ヒトまたは動物のあらゆる有害な状態をいい、この有害な状態としては、腫瘍、癌、
アレルギー、嗜癖、自己免疫、感染、中毒または最適な精神もしくは身体機能の障害が挙げられる。本明細書中で使用される場合、「状態」は、疾患および障害を含むが、しかしまた生理学的状態も指す。例えば、受精能は、生理学的状態であるが、疾患でも障害でもない。したがって、受精能を減少させることによって妊娠を予防するのに適切な本発明の組成物は、状態(受精能)の処置として記載され、障害または疾患の処置としては記載されない。他の状態は、当業者によって理解される。
【0035】
有効量:本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、所望の生物学的効果を実現するのに必要または十分な、所定の結合体もしくは組成物の量をいう。本発明の所定の結合体もしくは組成物の有効量は、この選ばれた結果を達成する量であり、そしてこのような量は、当業者による慣習的な事項として、過度な実験の必要なしに、当該分野で公知のアッセイおよび/または本明細書において記載されるアッセイを用いて決定され得る。例えば、免疫系の欠損を処置するための有効量は、免疫系の活性化を引き起こし、抗原への曝露の際に抗原特異的免疫応答の発生をもたらすのに必要な量であり得る。この用語はまた、「十分な量」と同義である。任意の特定用途のための有効量は、処置される疾患または状態、投与される特定の組成物、投与経路、被験体の大きさ、および/または疾患もしくは状態の重症度のような因子に依存して変動し得る。当業者は、本発明の特定の結合体または組成物の有効量を、過度な実験の必要なしに、経験的に決定し得る。
【0036】
一つ(one、aまたはan):本開示において、用語「一つ(one、aまたはan)」が使用される場合、それらは、他に示されない限り、「少なくとも一つ」または「一つ以上」を意味する。
【0037】
PEG:本明細書中で使用される場合、「PEG」は、直鎖状であるか分枝状であるか多数の腕があるかにかかわらず、そして末端がキャップされているかヒドロキシル末端になっているかにかかわらず、全てのエチレンオキシドポリマーを含む。「PEG」は、ポリ(エチレングリコール)、メトキシポリ(エチレングリコール)もしくはmPEGのような当該分野で公知のポリマーを含むか、またはエチレンオキシドのポリマーについて当該分野で使用される名前の中でもとりわけ、ポリ(エチレングリコール)−モノメチルエーテル、アルコキシポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)もしくはPEO、α−メチル−ω−ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、およびポリオキシランを含む。
【0038】
PEG化、PEG化された、および偽PEG化された:本明細書中で使用される場合、「PEG化」とは、PEGの、生物活性標的分子(特にレセプター結合タンパク質)への共有結合によるカップリングのための任意のプロセスをいう。PEG化によって生成された結合体は、「PEG化された」と呼ばれる。本明細書中で使用される場合、「偽PEG化された」とは、PEG化反応混合物中の、PEGが共有結合になっていないタンパク質部分または他の生物活性成分をいう。それにもかかわらず、偽PEG化された生成物は、(例えば、PEG化の間での還元剤への曝露の結果として)還元的アルキル化によって、ならびに/または前述の加工工程および/もしくは精製工程の間に一つ以上阻害剤、化合物等を除去されることによって、反応の間またはその後の精製工程の間に変化され得る。
【0039】
ポリペプチド:本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」とは、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子をいう。これは、アミノ酸の分子鎖を示すが、特定の長さの生成物を言及しない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾(例えば、グリコシル化、過グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)の生成物に言及することを意図する。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来し得るか、または組み換え技術によって生成され得るが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。これは、化学合成を含む任意の様式で生成され得る。
【0040】
タンパク質および糖タンパク質:本明細書中で使用される場合、用語、タンパク質とは、一般的に約10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1,000以上、または2,000以上のアミノ酸のサイズのポリペプチドをいう。タンパク質は、一般的に、規定された3次元構造を有するが、それらは必ずしもこのような構造を有さず、そしてしばしば、ペプチドおよびポリペプチド(これらは、しばしば規定された3次元構造を有さないが、むしろより多くの異なる構造をとり得る)とは対照的に、折り畳まれていると称され、そして折り畳まれていないと称される。しかし、ペプチドもまた、規定された3次元構造を有し得る。本明細書中で使用される場合、用語、糖タンパク質とは、少なくとも一つの炭水化物部分にカップリングされたタンパク質をいう。この炭水化物部分は、アミノ酸残基(例えば、セリン残基またはアスパラギン残基)の酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介してタンパク質に付着される。
【0041】
遠隔性:本明細書中で使用される場合、用語「遠隔」(「遠隔N末端アミノ酸」または「遠隔グリコシル化部位」におけるような用語)とは、分子モデル化によって評価されるような、タンパク質上の一つ以上のポリマーに対する一つ以上の付着部位の位置が、そのタンパク質の一つ以上のレセプター結合領域もしくはレセプター結合ドメインから遠位にあるか、または空間的に離れている構造をいう。このような遠隔付着部位(通常、N末端アミノ酸(レセプター結合タンパク質に関する、したがって「遠隔N末端」レセプター結合タンパク質もしくは「RN」レセプター結合タンパク質と称される)、または糖タンパク質上の一つ以上の炭水化物部分もしくはグリコシル化部位(レセプター結合タンパク質に関して、したがって「遠隔グリコシル化」レセプター結合タンパク質もしくは「RG」レセプター結合タンパク質と称される))におけるポリマーの結合体化は、タンパク質の、そのレセプターに対する結合の実質的な立体障害を引き起こさない。故に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン上のアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位は、このアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位それぞれへの水溶性ポリマーの結合体化(例えば、共有結合による付着)が、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのそのレセプター(特に、細胞表面レセプター)に結合する能力を実質的に妨害しない場合、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの「一つ以上のレセプター結合ドメインから離れて配置されている」といわれる。当然ながら、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンが、一つより多くのレセプター結合ドメインを含み得ることが認識される。このような状況において、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位は、このようなドメインの一つから、またはこのようなドメインの一つより多くから、離れて配置され得、そしてさらに、このアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位の結合体化が、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの、一つ以上のレセプター結合ドメインを介したそのレセプターへの結合を実質的に妨害しない限り、「一つ以上のレセプター結合ドメインから離れて配置されている」とみなされ得る。結合体化が、タンパク質のそのレセプターに結合する能力を実質的に妨害するか否かは、当該分野で公知の、当業者によく知られたリガンド−レセプター結合アッセイを用いて、容易に決定され得る。
【0042】
リガンド−レセプター結合を評価する方法としては、限定としてではなく、競合的結合アッセイ、放射性レセプター結合アッセイ、細胞ベースのアッセイ、表面プラズモン共鳴測定法、動的光散乱法、および超遠心分離法挙げられる。
【0043】
本明細書の図1dに示されるように、PEGは、高度に延長された可撓性ポリマーであり、同様の分子量のタンパク質に対して、溶液中で大きな体積を占める。PEGが付着されたアミノ酸残基は、一つ以上のレセプター結合部位から離れている可能性があるが、それにもかかわらず、ポリマー部分は、レセプター結合をある程度妨害し得る。このような妨害の可能性は、その分子量にしたがって、故に、溶液中のポリマーによって占められる体積にしたがって、増加する。最終的に、レセプター結合領域から離れた一つ以上の部位を標的とするPEG化は、ランダムなPEG化よりはレセプター結合を妨害しない。
【0044】
実質的に、実質的な:本明細書で使用される場合、レセプターに結合体化されたタンパク質の結合の速度および/または量が、結合体化されていない対応するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドプチドホルモンの結合の速度および/または量の約40%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上もしくは約100%以上である場合、タンパク質の結合体化は、そのレセプターに結合するタンパク質の能力を「実質的に」妨害しないことをいう。
【0045】
処置:本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置する」、「処置した」または「処置している」は、予防および/または治療をいう。感染性疾患に関連して使用される場合、例えば、それらの用語は、病原体への感染に対する被験体の耐性を増大させる予防的処置、すなわち、いいかえると、被験体が、病原体に感染することになるか、または感染に原因があり得る疾病の兆候を示す可能性を減少させる処置、ならびに、被験体が感染した後でその感染と戦うため(例えば、感染を減少もしくは排除するためか、またはより悪くなることを防ぐため)の処置を言及し得る。
【0046】
(概要)
本発明は、同じレセプター結合タンパク質のポリマー結合体と比較して予想外に高いレセプター結合活性を保持するレセプター結合タンパク質のポリマー結合体の合成方法を提供し、この方法において1つ以上のポリマーが無作為に付着される。x線結晶構造分析および核磁気共鳴に基づく構造分析、変異分析ならびに分子モデリングソフトウェアの使用によって、本発明者らは、それらのレセプターへの結合に関連するか、または関連しない、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのPEG化標的部位を同定した。タンパク質の分類として、これらのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子ならびにポリペプチドホルモンのアゴニストおよびアンタゴニストは、本明細書においてレセプター結合タンパク質と称される。レセプター相互作用に関連しないレセプター結合タンパク質領域にポリマー付着を標的化する合成ストラテジーの選択によって、特定の望まれない立体障害が回避され、得られるポリマー結合体は著しく高い効力を保持する。1つ以上のレセプター結合領域もしくはレセプター結合ドメインから離れてアミノ末端残基を有するレセプター結合タンパク質は、本明細書において「離れたN末端」レセプター結合タンパク質または「RN」レセプター結合タンパク質として規定される;これらとしては、タンパク質のレセプター結合部位から離れて存在するアミノ末端アミノ酸を有する全てのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニストが挙げられる。
【0047】
本発明の別の実施形態において、1つ以上のレセプター結合領域もしくはレセプター結合ドメインから離れて天然グリコシル化部位を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンに共有結合によりカップリングした1つ以上の合成ポリマー(例えば、1つ以上のポリ(エチレングリコール))を含む結合体が生成される。本発明のこの局面にしたがって、結合体の生物活性成分(例えば、タンパク質)は、合成ポリマーがグリコシル化部位の領域に結合される場合、十分に保存されたレセプター結合活性を提示する。レセプター結合タンパク質のこのサブセットは、本明細書において「RG」レセプター結合タンパク質という。親水性ポリマーまたは両親媒性ポリマーがこのような「離れたグリコシル化」部位またはその付近において選択的にカップリングされる場合、特に、標的タンパク質が天然にグリコシル化されたタンパク質の非グリコシル化形態である場合、このポリマーは、天然に存在する炭水化物の好都合な効果(例えば、凝集、安定性および/または溶解性)を模倣し得、そして、それ故、その結合は本明細書中において、「偽グリコシル化」と称される。従って、グリコシル化部位またはその付近へのポリマーの付着は、本明細書において「偽グリコシル化」と称される。従って、本発明は、合成ポリマーの部位選択的カップリングが、天然に存在する炭水化物部分を効果的に置換する、結合体の合成のための方法を提供する。生じた偽グリコシル化は、このタンパク質の他の非グリコシル化形態と比較して、改善した溶解性、減少した凝集および血流からの遅延したクリアランスに寄与する。従って、このアプローチは、原核生物宿主細胞(例えば、Escherichia coliのような細菌)において、組換えDNA技術によって生成されるタンパク質の結合体および組成物を調製するのに特に好都合である。なぜなら、原核生物は、通常、それらが発現するタンパク質をグリコシル化しないからである。同様に、糖タンパク質の炭水化物部分の選択的なPEG化は、糖タンパク質の「偽過剰グリコシル化」を生じ得る。このプロセスは、例えば、PCT公報番号WO96/40731(その開示全体が本明細書中に参考として援用される)においてC.Bonaらによって記載された。従って、このアプローチは、真核生物宿主細胞(例えば、酵母、植物細胞および動物細胞(哺乳動物細胞および昆虫細胞が挙げられる))において組換えDNA技術によって生成されるタンパク質の結合体および組成物を調製するために特に有利である。なぜなら、真核生物体は、一般的に、それらが発現するタンパク質が、天然に存在するグリコシル化シグナルまたは組換えDNA技術によって導入されるグリコシル化シグナルを含む場合に、それらのタンパク質をグリコシル化するからである。そのような偽グリコシル化RGレセプター結合タンパク質および偽過剰グリコシル化RGレセプター結合タンパク質は、本発明の範囲内にある。
【0048】
従って、本発明はまた、実質的にか、ほとんど完全にか、または本質的に完全に、レセプター結合活性を保持する「RN」レセプター結合タンパク質と、実質的にか、ほとんど完全にか、または本質的に完全に、レセプター結合活性を保持する擬似グリコシル化「RG」レセプター結合タンパク質または擬似過剰グリコシル化「RG」レセプター結合タンパク質のポリマー結合体を包含する。本明細書において使用する場合、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンは、本発明に従って1つ以上の水溶性ポリマーと結合体化する場合に、そのタンパク質がそのレセプターに結合する能力をそのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの結合体化が実質的に妨げないならば(すなわち、結合体化したタンパク質がその対応するレセプターに結合する速度および/または量が、対応するタンパク質の結合体化していない形態の結合速度および/または量の、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または、約100%以上、あるいはそれより多いならば)、「実質的にか、ほとんど完全にか、または本質的に完全に、レセプター結合活性を保持する」と言われる。また、本発明の範囲には、「RN」レセプター結合タンパク質および「RG」レセプター結合タンパク質の両方に分類されるレセプター結合タンパク質のポリマー結合体が含まれる。後者のタンパク質の2つの例は、インターフェロンβ(特に、インターフェロンβ1b)およびIL−2である。
【0049】
さらなる実施形態において、本発明は、1つ以上のポリマーがランダムに結合した、同一のレセプター結合タンパク質のポリマー結合体と比較して、予想外に高度のレセプター結合活性を保持するレセプター結合タンパク質のポリマー結合体の合成方法を提供する。本発明はまた、そのような方法によって産生された結合体、ならびに、本発明のこれら結合体の1つ以上を含む組成物であって、1つ以上のさらなる成分または試薬(例えば、1つ以上の緩衝塩、1つ以上の炭水化物賦形剤、1つ以上のキャリアタンパク質、1つ以上の酵素、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の核酸分子、1つ以上のポリマー(例えば、結合体化していないPEGまたはポリアルキレングリコール)など)をさらに含み得る組成物を提供する。本発明はまた、本発明の結合体および/または組成物を含むキットを提供する。
【0050】
本発明はまた、本発明の結合体、および薬学的用途または獣医学的用途に許容可能な少なくとも1つの賦形剤またはキャリアを含む、薬学的組成物または獣医学的組成物を提供する。本発明はまた、そのような組成物を使用して種々の身体的障害を処置または予防するための方法であって、本発明の結合体または組成物の1つ以上の有効量を、身体的障害または状態を罹患しているか、または罹患しやすい動物に対して投与する工程を包含する方法を提供する。
【0051】
さらに、本発明は、安定化されたレセプター結合タンパク質、および、工業的細胞培養における使用のためのそのタンパク質の産生方法を提供し、これによって、生物学的活性の実質的な保持および工業的使用における作用の持続時間の増加の組合せ効果の結果として、予想外に高い効力が得られる。本発明の結合体の異常に高い効力は、異常に高いバイオマス生産、異常に高レベルの組換えタンパク質の発現、およびバイオプロセシングの効率の他の点での改善に反映され得る。
【0052】
(方法)
本発明者は、ポリマーを「RN」レセプター結合タンパク質のアミノ末端アミノ酸に、または「RG」レセプター結合タンパク質のグリコシル化部位の近傍に標的化することで、上記ポリマーが、1個以上の上記タンパク質のレセプター結合領域またはレセプター結合ドメインから遠く離れた部位に結合されることが保証され、その結果、結合されたポリマー分子によるレセプター相互作用の立体障害を最小にしているということを発見した。その結果、本発明の方法に従ってタンパク質を結合させることにより、上記ポリマーが、上記分子のレセプターとの結合に関与する部分の内部かまたは近傍に結合した場合に生じるレセプター結合活性よりも高い割合のレセプター−結合活性が保たれ得る。この原理は、予想外に高いレセプター結合活性の保持という結果を招き得るが、塩基性線維芽細胞増殖因子(「bFGF]または「FGF−2」)、上皮増殖因子(「EGF」)、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)、インターフェロン−α(「IFN−alpha」)、インターフェロン−β(IFN−beta−1bを含むがこれに限定されない「IFN−beta」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、単球コロニー刺激因子(「M−CSF」)、Flt3リガンド、幹細胞因子(「SCF」)、インターロイキン2、3、4、6、10、12、13および15、腫瘍壊死因子−α(「TNF−alpha」)、腫瘍壊死因子−β(「TNF−beta」)、トランスホーミング増殖因子α(「TGF−alpha」)、トランスホーミング増殖因子β(「TGF−beta」)、ケラチノサイト増殖因子(「KGF」)、ヒト成長ホルモン(「hGH」)、プロラクチン、胎盤乳腺刺激ホルモン、毛様体神経栄養因子(「CNTF」)、レプチンおよびこれらのレセプター−結合タンパク質の作用とよく似た作用を持つレセプター結合タンパク質の構造的アナログまたはそれらのレセプター−結合アンタゴニストであるこれらのレセプター結合タンパク質の構造的アナログの間から選択されるレセプター−結合タンパク質として立証され得る。その一方、IFN−γのアミノ末端に大きいポリマーを選択的に結合することは、このサイトカインの活性の大部分が保たれないと予想される。なぜなら、そのような連結は、上記活性ダイマーをそれのレポーターに結合することを妨げると予想されるからである(Walter,M.R.ら、(1995)Nature 376:230〜235およびThiel,D.J.ら(前出)のデーターに基づく)。
【0053】
本発明の関連するそのような実施形態では、ポリマーは、レセプター結合タンパク質(そのレセプター結合タンパク質は、1個以上の同一レセプターに結合することにより、上記天然タンパク質の競合的アンタゴニスト(シグナル伝達を開始しない)として機能する)のムテインのアミノ末端残基に結合する。例としては、点変異G120RhGHアンタゴニスト(Sundstoem,M.ら、(1996)J Biol Chem 271:32197〜32203)のポリマー結合体および点変異G129Rを含むプロラクチンのアゴニストのポリマー結合体(Goffin,V.ら,(1997)J Mammary Gland Biol Neoplasia 2:7〜17:Chen,W.Y.ら,(1999)Clin Cancer Res 5:3583〜3593;Chen,W.Y.、PCT出願番号WO 99/58142 A1)がある。レセプター結合タンパク質の他のアンタゴニストは、選択的点変異、短縮または欠失により産生され得る(例えば、Tchelet,A.ら,(1997)Mol Cell Endocrinol 130:141〜152;Peterson,F.C.,(1998) Identification of Motifs Associated with the Lactogenic and Somatoropic Actions of Human Growth Hormone,Ph.D. Dissertation,Ohio State University,UMI#9822357)。
【0054】
本発明の別の実施形態では、「RG」レセプター結合タンパク質に関して、本発明の方法は、糖タンパク質であるそれらのレセプター結合タンパク質の炭水化物部分の天然の結合部位の近傍に1個以上の合成ポリマーの結合を生じる。これは、(例えば、それらが組換えDNA技術により、翻訳後のグリコシル化を行わないE.coliまたは他の原核細胞において発現される場合)これらのレセプター結合タンパク質の「擬似グリコシル化」が生じるか、または(例えば、天然に産生される糖タンパク質に関して、または真核生物宿主細胞(例えば、実際に翻訳後グリコシル化を行う酵母、植物細胞ならびに(哺乳動物細胞および昆虫細胞を含む)動物細胞)により産生される糖タンパク質に関して)それらの糖タンパク質形態の「過剰擬似グリコシル化」が生じる。例として、インターフェロンαおよびβ、ならびにエリスロポエチン(「EPO」)およびインターロイキン2がある。天然のグリコシル化部位における合成ポリマーの結合または天然のグリコシル化部位の近傍の合成ポリマーの結合は、当該分野で公知の任意の方法(R.J.Goodsonら,((1990)Biotechnology 8:343〜346)の変異方法およびR.S.Larsonら,((2001)、Bioconjug Chem 12:861〜869)の方法を含む)で行われ得、これは、上記炭水化物の先の酸化を伴う;これらの参考文献の開示は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0055】
特定のタンパク質のアミノ末端修飾は、以前に開示された(例えば、Dixon,H.B.F.(1984)J Protein Chem 3:99〜108を参照のこと)。例えば、タンパク質のN末端修飾は、特定のタンパク質をアミノペプチダーゼの作用に対して安定化するか(Guerra,P.I.ら,(1998)Pharm Res 15:1822〜1827)、上記タンパク質の溶解性を改善するか(Hinds,K.,ら、(2000)Bioconjug Chem 11:195〜201)、上記N−末端アミノ基上の電荷を減少させるか、または上記生じた結合体の同質性を改善する(Kinstler,O.ら,欧州特許公報EP0822199A2;Kinstler,O.ら(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:477〜485)ことが特に報告されている。ポリマーを、「ネイティブケミカルライゲーション(native chemical ligation)」として当該分野で公知の手順を適用させることによりN末端システイン残基またはヒスチジン残基のαアミノ基に連結する代替の方法が開示された(Roberts,M.J.ら、PCT出願公開番号WO 03/31581A2および米国特許出願公開番号2003/0105224)。しかし、レセプター結合タンパク質の上記「RN」サブクラスおよび「RG」サブクラスの存在、それらのクラスのメンバーを選択するのに一般的に適用可能な方法、ならびにそのようなレセプター結合タンパク質の予想外に高い機能的活性を保つための方法としてのポリマー結合体の調製および使用は、以前は認識されもしなかったし、記述されもしなかった。
【0056】
従って、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンが、上記リガンドのレセプター結合部位から遠く離れたN末端および/またはグリコシル化部位を有するか否かを決定することにメリットがある。上記リガンドがポリマーと結合するのに先立って、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドが「RN」リガンドであるか、または「RG」リガンドであるかを予測する能力は、ポリマーリガンド結合体(例えば、ポリマー(例えばPEG)と結合されたそれらのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニスト)を産生するのに必要とされる実験を実質的に減らす。ここで、このポリマーリガンド結合体において、上記結合体の抗原性/免疫原性は、非結合リガンドの抗原性および免疫原性に比較して減少する一方、上記結合リガンドのレセプター結合および生理学的活性は、実質的に減少しない。
【0057】
従って、更なる実施形態では、本発明は、タンパク質リガンドのレセプター結合部位から遠く離れたN末端および/またはグリコシル化部位を有するレセプター結合タンパク質リガンド(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンおよびそれらのアンタゴニスト)を同定し、そして選択する方法(すなわち、「RN]タンパク質または「RG」タンパク質にたいして、同定し、そして選択する方法)を提供する。本発明のそのような特定の実施形態では、1個以上のポリマー(例えば、1個以上のPEG)の結合化のための最適部位は、分子モデリング(例えば、分子モデリングソフトウェアを用いて上記タンパク質(サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニスト)の三次元構造を見て、1個以上のポリマーが実質的にそのタンパク質の生物学的活性またはレセプター結合活性を失うことなく上記タンパク質に結合され得る部位を予測すること(Schein,C.H.(前出)もまた参照のこと))を用いて決定され得る。類似のアプローチが、例えば、タンパク質分解的消化に対する耐性を改善する試みにおけるPEGのG−CSFへの結合体に関して、立証された(T.D.Osslundの公開された米国特許出願番号2001/0016191 A1(その開示は、本明細書にその全体が参考として援用されている)を参照のこと)。本発明で用いる適切な分子モデリングソフトウェア(例えば、RASMOL(Sayle,R.A.ら(前出))およびProtein Data Bankに巨大分子構造のデータベースを作成する際に用いる他のプログラムは、当該分野において周知であり、そして当業者によく知られている。そのような分子モデリングソフトウェアを用いて、ポリペプチド(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニスト)の三次元構造は、上記リガンドおよびそれらのレセプターの結晶解析に基づく高度の確信をもって推定されるか、または決定される。このようにして、当業者は、どのリガンドが、本発明に基づく使用に適した「RN」リガンドであるか、または「RG」リガンドであるかを容易に決定し得る。
【0058】
本発明を実施するために、水溶性ポリマーをタンパク質のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基に共有結合的に連結するための、一つの便利な経路は、単一のアルデヒド基を有するポリマーを用いて形成されるシッフ塩基の還元的アルキル化による(例えば、G.P.Royerにより特許請求されたような方法(米国特許第4,002,531号)であって、J.M.Harrisらにより特許請求された方法(米国特許第5,252,714号)ではない。なぜなら、後者の発明者達は、両端にアルデヒド基で誘導化されたポリマーのみを請求し、そのポリマーは、架橋剤であり、それゆえ実質的にレセプター結合活性を保持する長期作用のレセプター結合タンパク質の合成に不向きであるからである。
【0059】
PEG−モノアルデヒドのシッフ塩基の還元的アルキル化を、レセプター結合タンパク質のN末端アミノ酸のαアミノ基に対して方向付け、そしてレセプター結合タンパク質のリジン残基のεアミノ基から遠ざけることは、Proteins Amino Acids and Peptides as Ions and Dipolar Ions((1943)、pp.75〜115およびpp.116〜39、Reinhold Publishing Corporation,New York)の4章および5章のJ.T.Edsallにおける開示に基づいて、種々の方法で達成され得る。そして、その開示は、本明細書中に参考文献としてそのまま援用される。そして、その開示は、本明細書中にその全体が参考として援用される。ポリペプチドのN末端アミノ酸のαアミノ基の酸解離定数(「pKa」)は、7.6未満であると予想される一方、ポリペプチドにおけるリジン残基のεアミノ基の上記pKa値は、およそ9.5であると予想される。Edsall(1943、前出)は、アルデヒドは、「それの等電点のアルカリ側においてのみ」アミノ酸のアミノ基と結合することを明記した。
【0060】
それゆえ、本開示および当該分野で容易に入手可能である情報に基づいて、当業者は、以下のことを認識する:(1)アルデヒドとタンパク質のαアミノ基との選択的反応は、9.5(およそ、このタンパク質におけるεアミノ基のpKa)未満であるpH範囲が有利である;(2)アルデヒドとεアミノ基との反応速度は、この反応のpHが7.6(およそ、このタンパク質のαアミノ基のpKa)に向かって低下すると減少する;(3)アルデヒドとαアミノ基との反応速度は、反応pHが7.6に向かって低下するにつれ、εアミノ基の反応速度未満に減少する、そして(4)アルデヒドとαアミノ基との反応についての選択性は、pHを6.6に向かって低下させることにより、いくらか改善される。後者の値は、αアミノ基のpKaよりもおよそ1pH単位低く、そしてεアミノ基のpKaよりも3pH単位低いので、αアミノ基のおよそ10%およびεアミノ基のおよそ0.1%は、それらの反応性の非プロトン化状態にある。従って、pH6.6において、非プロトン化αアミノ基の割合は、非プロトン化εアミノ基の割合よりも100倍高い。それゆえ、反応のpHを例えば5.6までさらに低下させることによって、選択性における極めてわずかな増加が得られる。ここでは、理論的に、αアミノ基の1%およびεアミノ基の0.01%がそれらの反応性の非プロトン化状態にある。従って、本発明の特定の実施形態では、タンパク質リガンド(特に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモンおよびそれらのアンタゴニストを含め、「RN」リガンドまたは「RG」リガンド)は、約5.6〜約7.6のpHにおいて;;約5.6〜約7.0のpHにおいて;約6.0〜約7.0のpHにおいて;約6.5〜約7.0のpHにおいて;約6.6〜約7.6のpHにおいて;約6.6〜約7.0のpHにおいて;または約6.6のpHにおいて、リガンドと1以上のポリマーとの間で混合物を形成することにより、1以上のポリマーに結合体化され得る。従って、本発明の方法は、リガンドのN末端アミノ酸残基上のαアミノ基へのポリマーのカップリングが約5のpHにおいて実施される(Kinstler,O.ら,(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:477−485;欧州特許公開番号EP 0 822 199 A2;米国特許第5,824,784号および同第5,985,265号;Roberts,M.J.ら,(2002),前出;Delgado,C.ら,米国出願公開第2002/0127244号A1)、一方、リガンドポリペプチド骨格におけるリジン残基のεアミノ基へのポリマーのカップリングが8.0のpHにおいて実施される(Kinstler,O.ら,EP 0 822 199 A2;米国特許第5,824,784号および同第5,985,265号)当該分野で公知の方法とは顕著に異なる。同様にして、本発明の方法はまた、7.5のpHにおいて実施される、トランスグルタミナーゼを用いてポリ(エチレングリコール)のアルキルアミン誘導体を、特定のタンパク質へとカップリングするために用いられている酵素方法とは有意に区別される(Sato,H.(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:487−504)。
【0061】
中程度の還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはピリジンボラン)での、得られるシッフ塩基の還元(Cabacungan,J.C.ら(1982)Anal Biochem 124:272−278)は、生理学的pHにおいてタンパク質のN末端αアミノ基の正の荷電を保持する二級アミン結合を形成する。ネイティブなタンパク質と同じ荷電を保持するこのような結合は、例えばアミド結合(Burg,J.ら,PCT公開番号WO 02/49673 A2;Kinstler,O.ら,欧州特許出願第EP 0 822 199号A2;Kinstler,O.B.ら(1996)Pharm Res,13:996−1002;Kita,Y.ら,前出)またはウレタン結合(Gilbert,C.W.ら,米国特許第6,042,822号;Grace,M.ら,(2001)J Interferon Cytokine Res 21:1103−1115;Youngster,S.ら,(2002)Curr Pharm Des 8:2139−2157)の形成によって荷電を中和する代替結合化学よりも、その生物学的活性を保存する可能性がより高い。
【0062】
N末端アミノ酸残基へのポリマーの選択的カップリングに対する代替的アプローチは、当業者に公知である。含まれるのは、ヒドラジド、ヒドラジン、セミカルバジドまたは他のアミン含有ポリマーを、過ヨウ素酸塩を用いてアルデヒドへと酸化的に切断されたN末端セリン残基またはN末端トレオニン残基へとカップリングするための方法である(Dixon,H.B.F.,前出;Geoghegan,K.F.,米国特許第5,362,852号;Gaertner,H.F.ら,(1996)Bioconjug Chem 7:38−44;Drummond,R.J.ら,米国特許第6,423,685号)。
【0063】
(適切なポリマー)
本発明の特定の実施形態では、ポリマーが生物活性成分へとカップリングされて本発明の結合体を生成する反応の間にPEGのようなポリマーによる分子内架橋および分子間架橋の形成を最少にすることが望ましい。これは、一方のみの末端において活性化されたポリマー(本明細書中では、「一官能性活性化PEG」または「一官能性活性化PAG」と呼ばれる)または二官能性活性化(直鎖状PEGの場合、「二活性化PEGジオール」と呼ばれる)もしくは多官能性活性化ポリマーの百分率が約30%未満、もしくはより好ましくは約10%未満もしくは最も好ましくは約2%(w/w)未満であるポリマー調製物を用いることにより、達成され得る。完全にまたはほぼ完全に一官能性である活性化ポリマーの使用は、以下の全ての形成を最少にし得る:個々のタンパク質分子内での分子内架橋、ポリマーの1つの鎖が2つのタンパク質分子を連結する「アレイ」構造、およびより大きな凝集物またはゲル。
【0064】
本発明の方法および組成物における使用のために適切である活性化形態のポリマーとしては、当該分野で公知の、任意の直鎖状または分枝状の、一官能性活性化形態のポリマーが挙げられ得る。例えば、含まれるのは、約1kDa〜約100kDaの範囲の分子量(活性化基の質量を除く)を有するポリマーである。分子量の適切な範囲としては、約5kDa〜約30kDa;約10kDa〜約20kDa;約18kDa〜約60kDa;約12kDa〜約30kDa、約5kDa、約10kDa、約20kDaまたは約30kDaが挙げられるがこれらに限定されない。直鎖状PEGの場合、約10kDa、約20kDaまたは約30kDaの分子量は、それぞれ、約230、約450または約680という、エチレンオキシドモノマー単位の重合度(n)に相当する。インビトロでの使用については、活性化ポリマーの分子量の適切な範囲は、約1kDa〜約5kDaを含む。「RN」クラスおよび「RG」クラスのレセプター−結合タンパク質の存在が認識される前には長らく、治療用タンパク質を、比較的高分子量(すなわち、約20〜30kDaより大きい)を有するポリマーにカップリングすることの利点が、最初に観察されたことに留意すべきである(Saifer,M.ら,PCT公開番号WO89/01033 A1、1989年2月9日公開、これは、その全体が、本明細書中に参考として援用される)。
【0065】
本発明の他の実施形態では、通常高い百分率の生物活性が保持されているレセプター−結合タンパク質の結合体は、約1kDa、約2kDaまたは約5kDaの一官能性活性化ポリマーを本発明の方法に従ってカップリングすることにより、インビトロでの(例えば、細胞培養での)使用のために調製され得る。このようなインビトロ適用については、このより低い範囲の分子量が、好適であり得る。
【0066】
必要に応じて、直鎖状ポリマーは、反応性基を一方の末端または両方の末端に有し得、それにより、「反応性ポリマー」を作製し得る。本発明の特定の実施形態では、J.M.Harrisら,米国特許第5,672,662号(これは、完全に本明細書中に参考として援用される)に開示される通りのPEGのモノプロピオン酸誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、または他のN−ヒドロキシスクシンイミド活性化PEG−モノカルボン酸を使用することが所望され得る。特定の他の実施形態では、M.Saiferら,米国特許第5,006,333号;同第5,080,891号;同第5,283,317号および同第5,468,478号中に記載された通りのPEGのモノスクシンイミジルカルボネート誘導体(「SC−PEG」)、またはS.J.Kellyら,前出;L.D.Williamsら、PCT公開番号WO 00/07629 A2およびA3、L.D.Williamsら,米国特許第6,576,235号およびM.R.Shermanら,PCT公開番号No.WO 01/59078A2に開示された通りのPEGのモノ−p−ニトロフェニルカルボネート誘導体のいずれかを用いることが所望され得る。さらに、他の型の反応性基を用いて、タンパク質のポリマー結合体を合成し得る。これらの誘導体としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:PEGのモノアルデヒド誘導体(Royer,G.P.,米国特許第4,002,531号;Harris,J.M.ら,米国特許第5,252,714号)、PEGのモノアミン誘導体、PEGのモノ−トリブロモフェニルカルボネート誘導体、PEGのモノカルボニル−イミダゾール誘導体、PEGのモノ−トリクロロフェニルカルボネート誘導体、PEGのモノ−トリフルオロフェニルカルボネート誘導体、PEGのモノヒドラジド誘導体、PEGのモノセミカルバジド誘導体、PEGのモノカルバゼート(monocarbazate)誘導体、PEGのモノ−チオセミカルバジド誘導体、PEGのモノヨードアセトアミド誘導体、PEGのモノマレイミド誘導体、PEGのモノ−オルトピリジルジスルフィド誘導体、PEGのモノ−オキシム誘導体、PEGのモノ−フェニルグリオキサール誘導体、PEGのモノ−チアゾリジン−2−チオン誘導体、PEGのモノチオエステル誘導体、PEGのモノチオール誘導体、PEGのモノトリアジン誘導体およびPEGのモノビニルスルホン誘導体。さらなる実施形態では、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモンおよびそれらのアンタゴニストは、共有に係る、同時係属中の米国特許出願第10/669,597号(この開示は、その全体が、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、1以上のポリマーにカップリングされ得る。
【0067】
(生物活性成分)
上記の通り、本発明の結合体は、1つ以上の生物活性成分に共有結合された、1つのPAGまたはPAO、および特にPEGの1つの鎖を含む。1つ以上のポリマー(またはそれらの鎖)が共有結合されている生物活性成分は、本明細書中で、種々に、そして等価に、「結合体化した生物活性成分」または「改変された生物活性成分」と言われる。これらの用語は、本明細書中で、「未結合の生物活性成分」、「最初の生物活性成分」または「未改変の生物活性成分」とは区別され、これらの用語は全て、ポリマーが共有結合されていない生物活性成分をいう。しかし、「未結合の」、「未改変の」または「最初の」生物学的成分が、野生型分子またはネイティブ分子と比較した場合、他の非ポリマー結合または改変を含み得、そして本発明による「未結合」、「未改変」または「最初」であると依然として考えられることを理解すべきである。なぜなら、生物活性成分は、本明細書中で「偽PEG化」と呼ばれる生物活性成分の場合についてと同様に、ポリマーの結合に関して「未結合」、「未改変」または「最初」であるからである。
【0068】
用語生物活性成分を「安定化させる」(または「安定化の方法」または「安定化された生物活性成分」)とは、生物活性成分が、本発明の方法に従って安定化されたことを示す(すなわち、本発明の方法に従ってポリマーが共有結合した生物活性成分)。このような安定化された生物活性成分は、安定化されていない生物活性成分(すなわち、ポリマーが共有結合していない生物活性成分)と比較される場合に、特定の変化した生化学的特徴および生物理学的特徴を示す。このような変化された生化学的パラメータおよび生物理学的パラメータには特に、レセプター結合タンパク質に関して、タンパク質分解による分解に対する低下した感受性、および特に、特定の厳しい環境条件または厳しい実験条件のもとでのインキュベーションの間のレセプター結合タンパク質の活性の維持が含まれ得る。本発明の特定の実施形態において、変化した生化学的パラメータおよび生物理学的パラメータとしては、例えば、インビボでの循環における増加した半減期、増加したバイオアベイラビリティ、インビトロでの作用の増加した持続時間などが挙げられ得る。
【0069】
分子のアミノ末端または天然に存在するグリコシル化部位もしくは変異により導入されたグリコシル化部位から離れたその分子の部分に関連する生物学的(すなわち、生理学的、生化学的、または薬学的)活性を有する、任意のレセプター結合タンパク質(代表的に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン)は、本発明において、最初の成分として適切に使用され得る。このような生物活性成分としては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質などが挙げられるが、これらに限定されない。生物活性成分としてはまた、このようなペプチド、ポリペプチド、タンパク質などのフラグメント、ムテインおよび誘導体が挙げられ、特に、生物学的(すなわち、生理学的、生化学的、または薬学的)活性を有するこのようなフラグメント、ムテイン、および誘導体が挙げられる。
【0070】
本発明における生物活性成分として有用な、適切なペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、糖タンパク質などとしては、その生物活性成分のレセプター結合領域から離れている、ポリマーが選択的に付着し得る1つ以上の利用可能なアミノ基、チオール基、または他の基を有する、任意のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質などが挙げられる。このようなペプチド、ポリペプチドタンパク質、糖タンパク質などとしては、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンが挙げられ、これらは、任意の種々の構造を有し得る(Nicola N.A.、前出;Schein,C.H.、前出)。
【0071】
例えば、目的の適切なペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質としては、4つのαヘリックス束(長鎖サブクラスと短鎖サブクラスとの両方)を含む構造を有するサイトカインのクラスが挙げられるが、これらに限定されない(概説については、Schein,C.H.、前出を参照のこと)。種々のこのような4ヘリックス束タンパク質は、本発明において使用するために適切であり、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15およびIL−17);コロニー刺激因子(例えば、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF;Rozwarski、D.A.ら(1996)Proteins 26:304−313);インターフェロン(例えば、IFN−α、IFN−β(IFN−β−1bが挙げられる)およびコンセンサスIFN);白血病抑止因子(LIF);エリスロポエチン(Epo);トロンボポエチン(Tpo);巨核球増殖発生因子(MGDF);幹細胞因子(SCF)(当該分野において、SL因子としてもまた公知(Morrissey,P.J.ら(1994)Cell Immunol 157:118−131;MucNiece,I.K.ら、(1995)J Leukoc Biol 58:14−22));オンコスタチンM(OSM);ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP);神経栄養因子;ならびにこれらのペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。プロラクチンおよび成長ホルモンは、古典的なホルモンであるが、これらは、サイトカインとは異なり、体内で広範に循環する。サイトカインは、通常、それらの標的細胞の近くで産生される。プロラクチンおよび成長ホルモンは、4つのαヘリックス束を有するサイトカインと同じ構造的クラスに属し(Nicola,N.A.、前出;Goffin,V.ら、前出)、そしてこれらは、同様に、ポリマーカップリングのため、および本発明に従う本発明の結合体の産生のための、適切な標的である。これらのペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質のアナログ、ムテイン、アンタゴニスト、改変体および誘導体もまた、本発明において使用するために適切であり、従って、本発明に含まれる。
【0072】
長鎖βシートクラスまたはβバレル構造クラスのレセプター結合タンパク質(概説については、Schein,C.H.、前出を参照のこと)はまた、本発明の結合体および組成物を調製する際に使用するために適切である。これらとしては、サイトカインの腫瘍壊死因子ファミリー(例えば、TNF−α、TNF−βおよびFasリガンド(これらは、βゼリーロール構造を示す));IL−1(IL−1αおよびIL−1βを含む)ならびにFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)が挙げられる)ファミリー(これらは、β三葉型折り畳みを示す(Schein,C.H.ら、前出;Schlessinger,J.ら、前出));IL−12;IL−16;上皮増殖因子(EGF;Lu,H.−S.ら、前出);ならびに血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(トランスフォーミング増殖因子−αおよびトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)が挙げられる)、および神経増殖因子(これらは、シスチンノット(cystine−knot)構造を採用する)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質のアナログ、ムテイン、アンタゴニスト、改変体および誘導体もまた、本発明において使用するために適切であり、従って、本発明に含まれる。
【0073】
本発明の結合体および組成物において有利に使用されるタンパク質のさらなる構造クラスは、ジスルフィドリッチな混合されたα/βサイトカイン、ケモカインおよび増殖因子のクラスであり(概説については、Schein,C.H.、前出を参照のこと)、このクラスとしては、EGFファミリー(これは、β曲折(beta−meander)構造を有する);IL−8;RANTES;好中球活性化ペプチド−2(NAP−2);間質細胞由来因子1α(SDF−1α);単球化学誘引物質タンパク質(MCP−1、MCP−2およびMCP−3);エオタキシン(例えば、エオタキシン−1、エオタキシン−2およびエオタキシン−3);骨髄性前駆体阻害因子−1(MPIF−1);ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF);増殖関連癌遺伝子/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA);ソマトメジン;ならびにインスリンおよびインスリン様増殖因子(例えば、IGF−1およびIGF−2)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の結合体および組成物において有用な関連する構造クラスのタンパク質は、モザイク構造を有するサイトカインであり、これには、IL−12および肝細胞増殖因子のような増殖因子が挙げられる(Nicola,N.A.、前出)。これらのペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質のアナログ、ムテイン、アンタゴニスト、改変体および誘導体もまた、本発明において使用するために適切であり、従って、本発明に含まれる。
【0074】
目的の他のタンパク質としては、成長ホルモン(特に、ヒト成長ホルモン(hGH;Tchelet,A.ら(前出)を参照のこと)およびそのアンタゴニスト(例えば、Sundstroem,M.ら(前出)を参照のこと)、プロラクチンおよびそのアンタゴニスト、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、色素ホルモン、ケラチノサイト増殖因子、視床下部ホルモン放出因子、抗利尿ホルモン、ならびに上記構造クラスの全てのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのレセプター結合アンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。多くのこのようなタンパク質は、グリコシル化形態と非グリコシル化形態との両方で存在する。非グリコシル化形態は、原核生物において組換えDNA技術を使用するそれらの産生から生じ得るか、または化学合成を使用するそれらの産生から生じ得る。このような非グリコシル化産物は、本発明の適切な生物活性成分であるペプチドおよびタンパク質の範囲内である。最後に、いくつかの抗体は、レセプター結合アゴニストまたはレセプター結合アンタゴニストとして機能するが(例えば、Morris,J.C.,ら(2000)Ann Rheum Dis 59(補遺I):i109−i114を参照のこと)、このような免疫グロブリンは、本発明の範囲内のN末端ポリマーカップリングのための適切な候補ではない。すなわち、これらは、RNレセプター結合タンパク質ではない。なぜなら、軽鎖と重鎖との両方のアミノ末端領域が、抗原認識に関与するからである。
【0075】
本発明のポリマー結合体を調製する際に使用するための生物活性成分として特に有用なものは、インターフェロン−α、インターフェロン−β(IFN−β−1bを含む)、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、hGH、プロラクチン、インスリン、IGF−1、EGF、bFGFおよびエリスロポエチン(Epo)である。特に有用なものはまた、このような生物活性成分のムテインおよびフラグメントであり、特に、対応する野生型ポリペプチドまたはインタクトなポリペプチドについてのレセプターに結合し得るものである(この結合が生物学的効果または生理学的効果を誘導しようとそうでなかろうと)。特定のこのような実施形態において、生物活性成分のムテインおよびフラグメントは、対応するリガンドに対するアンタゴニストとして作用し得、これは、リガンドのそれらのレセプターへの結合を減少させるか、かなり減少させるか、もしくは完全に阻害し、そして/またはそれらの標的細胞、標的組織および/もしくは標的生物のリガンドの活性を減少させるか、かなり減少させるか、もしくは完全に阻害する。他のアンタゴニスト(これは、目的のリガンドの構造的なアナログ、ムテイン、改変体または誘導体であってもそうでなくてもよい)もまた、本発明に従う結合体の調製のために適切である。実際問題として、所定のムテイン、フラグメント、改変体、誘導体またはアンタゴニストが、所定のリガンドの生物学的効果および/または生理学的効果と拮抗するか否かは、過度の実験をすることなく、そのリガンド自体の生物学的効果/生理学的効果についてのアッセイを使用して決定され得、その種々のアッセイは、当該分野において周知であり、そして/または本明細書中に記載される。
【0076】
本発明に従って有利に使用される、これらおよび他の目的のポリペプチドについての構造(一次構造、二次構造、三次構造、および適用可能な場合、四次構造)は、当該分野において周知であり、そして当業者に馴染み深い。特に、本明細書中および本明細書中に援用される参考文献(これらは、その全体が本明細書中に参考として援用される)に提供される構造の観点で、そうである。
【0077】
(結合体)
本発明は、種々の適用において使用するための、生物活性成分(特に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、およびポリペプチドホルモン)の安定な結合体を提供する。このような本発明の結合体は、当該分野において公知の結合体の以下の非限定的かつ例示的な比較によって示されるように、当該分野において以前に公知であったものより優れた多数の利点を有する。
【0078】
H.Hiratani(欧州特許番号EP 0 098 110および米国特許第4,609,546号)は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー(「PEG−PPG」、PAGの一般的なクラスのメンバー)と、タンパク質(インターフェロンおよびインターロイキンが挙げられる)との結合体を開示し、ここで、レセプター結合に関与するタンパク質の領域の回避に関する優先は、開示されていない。これらの参考文献において、インターフェロンα、インターフェロンβおよびインターフェロンγは、本発明とは異なり、PAGの結合のための等価な標的とみなされた。本発明において、インターフェロン−γは、N末端結合のための適切な標的とみなされない。なぜなら、アミノ末端がサイトカインのレセプター結合領域内にあるからである。さらに、Hirataniは、1kDa〜10kDaのPAGのみを用いて合成された結合体を開示し、一方で、本発明の方法は、治療適用のために、10kDaを超える分子量を有する水溶性の合成ポリマーの結合を好む。同様に、N.V.Katre((1990)J Immunol 144:209−213)は、5kDaのmPEGのより多数の鎖をヒト組換えインターロイキン−2に結合させることによって、得られる結合体の、マウスおよびウサギの血流における半減期が増加することを開示する。しかし、この参考文献は、本発明によって提供されるような、より少ない数のより長いPEG鎖の結合の利点も、単一の高分子量のPEG鎖をIL−2のアミノ末端へと結合する利点も、開示も認識もしなかった。
【0079】
G.Shaw(米国特許第4,904,584号およびPCT公開番号WO89/05824A2)は、アミン反応性ポリマーの部位選択的な付着を、標的タンパク質(特に、Epo、G−CSFおよびIL−2)におけるリジン残基の導入、置換または欠失により誘導するための方法を開示する。しかし、本発明の開示とは異なり、これらの参考文献は、アミン反応性ポリマーが、リジン残基のεアミノ基以外の標的タンパク質における任意のアミンと反応し得ることを開示せず、このことは、明らかに、これらの開示を、本発明から区別する。
【0080】
D.E.Niteckiら(米国特許第4,902,502号)は、PEGの種々のクロロホルメート誘導体(これらは、リジン残基のεアミノ基と反応することが意図された)から調製された、マルチPEG化IL−2結合体を開示する。しかし、本発明とは対照的に、この参考文献は、レセプター結合に関与するIL−2タンパク質の領域におけるリジン残基のPEG化を回避するための方法も、このような部位の回避が有利であることのいかなる意識も、開示しない。
【0081】
N.Katreら(米国特許第5,206,344号)は、PEGが、リジン残基のεアミノ基とか、125位(アミノ末端から数える)に天然に存在するシステイン残基の対になっていないスルフヒドリル基とか、またはIL−2のアミノ末端から最初の残基と20番目の残基との間に変異により導入されたシステイン残基のスルフヒドリル基と結合体化している、PEG−IL−2結合体を開示する。’344号特許に開示されるムテインには、「des−ala−1」IL−2(すなわち、アミノ末端のアラニンが欠失され、そしてPEG化されていないムテイン)が含まれる。しかし、本開示と対照的に、’344特許は、レセプターへの結合に関与するアミノ酸残基へのPEGの結合を回避するためのいかなる方法も、このようなアプローチが有利であるといういかなる認識も、開示しない。この概念に一致し、そして本発明とは対照的に、’344特許において提唱される広範な付着点は、PEGをIL−2のアミノ末端に結合体化させることが、特に有利であることを示唆しない。
【0082】
S.P.Monkarshら(1997)Anal Biochem 247:434−440およびS.P.Monkarshら(1997)Harris,J.M.ら編、Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications,pp.207−216,American Chemical Society,Washington,D.C.は、インターフェロン−α−2aを、3倍モル過剰の、5,300ダルトンの分子量を有する活性化PEGと反応させることにより、モノPEG−インターフェロンの11種の位置異性体(インターフェロン−α−2aにおける11個のリジン残基に対応する)が生成されることを開示する。PEGがインターフェロンのアミノ末端のαアミノ基に結合した、PEG−インターフェロンは、報告されなかった。これらの参考文献において報告された11個の位置異性体は、細胞培養物中で、非改変型インターフェロンの6%〜40%の範囲の抗ウイルス活性、および細胞培養物中で、非改変型インターフェロンの9%〜29%の範囲の抗増殖活性を示した。このような結果は、これらの調査者によって実施されたリジン残基のランダムなPEG化が、本発明の方法によって調製された結合体とは対照的に、そのレセプターによって媒介されるインターフェロン−α−2aの機能を妨害することを明らかに実証する。さらに、本発明の結合体とは異なり、これらの参考文献において報告される結合体において、N末端をPEG化されたインターフェロンは、存在しなかった。
【0083】
O.Nishimuraら(米国特許法定発明登録番号H1662)は、活性化された「ポリエチレングリコールメチルエーテルアルデヒド」をシアノホウ素化水素ナトリウムによって、pH7.0(インターフェロン結合体について)またはpH7.15(IL−2結合体について)で還元的アルキル化することによって調製された、インターフェロン−α、インターフェロン−γおよびIL−2の結合体を開示する。しかし、このような方法によって調製される結合体は、複数のポリマー付着の部位(これらの全ては、リジン残基のεアミノ基上にあると報告された)の存在に明らかに起因して、非改変型タンパク質の生物活性の95%までを失ったことが報告されている(本発明の図1および4を参照のこと)。
【0084】
D.K.Pettitら(前出)は、インターロイキン−15(「IL−15」)のポリマー結合体を開示する。しかし、この参考文献において報告される結合体化したIL−15は、レセプター結合に関与するタンパク質の領域におけるリジン残基にポリマーを結合させることの結果として、そのIL−2様増殖促進能力を失うのみでなく、これはまた、作動よりむしろ拮抗を示した。これらの著者らは、IL−15がいくつかの細胞表面レセプターのうちの1つに結合することの選択的阻害が、ポリマー結合体化の結果であり得ること、およびこのような阻害が、レセプター結合を低下させ得るのみでなく、そのタンパク質の生物学的効果を逆転させ得ると結論付ける。レセプター結合タンパク質のレセプターとの相互作用に関与する部分へのポリマーの結合を回避することによって、本発明は、ポリマー結合の望ましくない結果を回避する。
【0085】
J.Hakimiら(米国特許第5,792,834号および同第5,834,594号)は、タンパク質(インターフェロン−α、IL−2、インターロイキン−1(「IL−1」)およびIL−1レセプターのアンタゴニストが挙げられる)の、ウレタン連結PEG結合体を開示し、これらは、報告によれば、それぞれのタンパク質の免疫原性を低下させ、溶解度を増加させ、そして生物学的半減期を増加させるために調製された。これらの参考文献において、PEGは、「種々の遊離アミノ基」と結合され、N末端PEG化に関する言及もなく、N末端αアミノ基がPEG化され得ることもPEG化されるべきであることも開示されない。これらの特許はまた、そこに開示される結合体が、出発タンパク質の元々の生物学的活性「の少なくとも一部を有し」、従って、かなりの生物活性の損失の可能性があることを示すことを言及する。この結果は、それらの特許に開示される標的化されないPEG化方法の使用に一致する。本発明とは対照的に、これらの特許は、その特許に開示されるPEG化プロセスの選択性を変化させることによって、それらの結合体の生物活性の保持を改善するいかなる試みも開示しない。
【0086】
O.B.Kinstlerら(欧州特許公開番号EP 0 822 199 A2)は、ポリ(エチレングリコール)を、ポリペプチド(特に、コンセンサスインターフェロンおよびG−CSF(これらは、この特許出願の譲受人であるAmgen,Inc.によって製造されるタンパク質のうちの2つである))のアミノ末端のアミノ酸のαアミノ基と反応させるためのプロセスを開示する。この刊行物は、「上記αアミノ基を選択的に活性化させるために十分に酸性のpH」が、開示されるプロセスの必要な特徴であることを示す。対照的に、本発明によって、pHを低下させることによって、PEGアルデヒドとのアミノ基の反応性が低下すること、および上記αアミノ基は、プロトン化されない場合に(すなわち、そのpKaより高いpHにおいて)より反応性であることが発見された。従って、本発明者らは、pHが、本発明のRNサイトカインのいずれの「αアミノ基を選択的に活性化させるためにも十分に酸性で」はないことを見出す。J.T.Edsall(前出)およびR.S.Larsenら((2001)Bioconjug Chem 12:861−869)によって与えられる、N末端αアミノ基の、アルデヒドとの反応性のpH依存性の説明は、本発明者らの経験とより適合性である。さらに、Kinstlerらは、得られる結合体の増加した均一性、およびプロテイナーゼによる分解からのアミノ末端の保護のための、ペプチドのN末端PEG化の使用を報告するが、N末端PEG化が特定のレセプター結合タンパク質のレセプター結合活性のより大きい部分を保存し得ることを開示しない(例えば、PCT公開番号WO96/11953;欧州特許番号EP 0 733 067、ならびに米国特許第5,770,577号、同第5,824,784号、および同第5,985,265号(全て、Kinstler,O.B.ら)を参照のこと)。
【0087】
Kinstlerらの欧州出願(EP 0 822 199 A2)はまた、全てのポリペプチドに対するN末端PEG化の利点を一般化する。これは、本発明者らの経験ではなかった。具体的には、抗体分子のアミノ末端は、抗体タンパク質の抗原結合領域の近くに存在するので(Chapman,A.P.(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:531−545)、抗体のN末端PEG化は、Larsen,R.S.ら、前出によって開示されるように、リジン残基のランダムなPGE化と比較して、生物活性に対して予測不可能に有害である。同様に、「RN」レセプター結合タンパク質ではないレセプター結合タンパク質(例えば、インターフェロン−γ(図8を参照のこと))のN末端PEG化は、このようなレセプター結合タンパク質のリジン残基のランダムなPEG化よりも、レセプターとの相互作用を阻害すると予測される。
【0088】
従って、上記のように、本発明の方法は、本発明の結合体が、RNレセプター結合タンパク質として選択された1つ以上のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニストを、1つ以上のポリマーと、そのリガンドと1つ以上のそのポリマーとの混合物を、約5.6〜約7.6のpH;約5.6〜約7.0のpH;約6.0〜約7.0のpH;約6.5〜約7.0のpH;約6.6〜約7.6のpH;約6.6〜約7.0のpH;または約6.6のpHで形成することによって、結合させることによって調製する点で、本明細書中に引用される刊行物においてKinstlerらによって開示されたものと区別される。対照的に、Kinstlerらの方法は、5.5未満のpHでのリガンドの結合体化に依存する。このpH範囲は、離れたN末端アミノ酸および/または離れたグリコシル化部位において、ポリマーと選択的に結合体化したリガンドの調製物の調製のために最適ではないか、または劣っていることを、本発明者らは見出した。
【0089】
R.B.Pepinskyら(PCT公開番号WO00/23114および米国特許出願公開番号2003/0021765 A1)は、抗ウイルスアッセイにおいて非グリコシル化インターフェロン−β−1bより活性な、グリコシル化インターフェロン−β−1aのポリマー結合体を開示する。この参考文献はまた、ポリアルキレングリコールが、グリコシル化タンパク質の種々の部位(アミノ末端、カルボキシル末端および糖質部分が挙げられる)において種々の結合基を介して、インターフェロン−β−1aに結合され得ることを開示する。しかし、この刊行物には、記載される方法が他のタンパク質に一般化され得るとは開示されない:「これらの研究は、インターフェロン−β−1aとインターフェロン−β−1bとの間の配列の保存にもかかわらず、これらが異なる生化学的実体であり、従って、インターフェロン−β−1bに関して既知であることの多くが、インターフェロン−β−1aに対して適用され得ず、そして逆もまたそうであることを示す」。対照的に、本発明は、本明細書中に規定されるような、「RN」レセプター結合タンパク質および「RG」レセプター結合タンパク質に現われる共通の特徴を開示する。本発明によれば、インターフェロン−β−1aとインターフェロン−β−1bとの両方が、「RN」レセプター結合タンパク質である。さらに、インターフェロン−β−1bは、「RG」レセプター結合タンパク質である。したがって、WO 00/23114の方法とは対照的に、本発明の方法は、インターフェロン−β−1bとインターフェロン−β−1aとの両方の、安定な生物活性結合体を調製するために有用である。
【0090】
Z.Weiら(米国特許第6,077,939号)は、水溶性ポリマー(特に、PEG)を、ポリペプチド(特に、エリスロポエチン)のN末端α炭素原子に結合するための方法を開示し、ここで、N末端アミノ酸のα炭素のアミンが、まずαカルボニル基にアミノ交換され、これが次いで、PEG誘導体と反応されて、オキシム結合またはヒドラゾン結合を形成する。この参考文献の開示される目的は、タンパク質に一般的に適用可能な方法を開発することであったので、特定のレセプター結合タンパク質のPEG化部位としてのアミノ末端の選択から生じ得る、レセプター結合活性の保存に対して、何も考慮はなされなかった。従って、Weiらの開示とは対照的に、本発明は、N末端αアミノ基の除去を必要とせず、逆に、N末端αアミノ基の電荷を、そのタンパク質とポリマーとの間の二次アミン結合の形成の間中、中性のpHで維持し得る。
【0091】
C.W.Gilbertら(米国特許第6,042,822号;欧州特許番号EP 1 039 922)は、PEG−インターフェロン−α−2bの位置異性体の混合物の望ましさを開示し、ここで、特に望ましい異性体は、インターフェロン−α−2bのヒスチジン残基(特に、ヒスチジン−34)に結合したPEGを有し、そしてヒスチジン−34へのPEG結合が不安定であることを実証する。ヒスチジン−34は、シグナル伝達を誘発する目的でインターフェロンレセプターと密接に接触しなければならない領域において、インターフェロン−α−2bの表面に存在するので(本明細書の図1bを参照のこと)、これらの参考文献に開示される、PEGとヒスチジン−34との間の結合の不安定性は、そこに開示されるPEG−インターフェロン結合体の機能のために重要であるようである。実質的に純粋なヒスチジン結合タンパク質ポリマー結合体が、S.Leeら、米国特許第5,985,263号によって記載された。対照的に、本発明は、1つの好ましい結合体が、PEGが、インターフェロン成分のレセプター結合ドメインから離れた部位で安定に結合している、PEG−インターフェロン結合体であることを実証する。
【0092】
P.Bailonら((2001)Bioconjug Chem 12:195−202)は、インターフェロン1分子あたり1分子の40−kDaジ−mペグ−リジンでペグ化されるインターフェロン−α−2aが4つの主要な位置異性体からなることを開示している。この参考文献は、このペグのほとんど全てが、アミド結合によってリジン31、121、131または134に付着され、これらリジンの各々は、インターフェロン−α−2aのレセプター結合領域内またはレセプター結合領域(Bailonらによると、残基29−35および123−140;本明細書の図1a参照のこと)に隣接することを開示している。N−末端のペグ化は、Bailonらに報告されていない。インビトロでのMadin−Darbyウシの腎臓細胞の水疱性口炎ウイルス感染に対する単離された混合物の位置異性体のペグ−インターフェロンの抗ウイルス活性は、試験された、結合体化されていないインターフェロン−α−2aのものの7%であると報告された。N−末端にペグ化されたインターフェロンを含まないこれらのペグ−インターフェロン結合体について観察された生物活性の実質的な減少は、Bailonらの結合体と本発明の結合体とをこのようにはっきりと区別している。
【0093】
R.B.Pepinskyら((2001)J Pharmacol Exp Ther 297:1059−1066)は、(1)N−末端のメチオニン残基を有するグリコシル化されたインターフェロン−β−1aおよび(2)20−kDaペグ−アルデヒド由来の結合体の合成を開示している。その参考文献において、N−末端のメチオニンでモノペグ化されると称される結合体は、抗ウイルスアッセイにおいて十分な生物活性を保持すると言われているが、より高い分子量のペグの結合は抗ウイルス活性を減少または除去させた。これらの著者は、グリコシル化されたインターフェロン−β−1aのペグ化のためのN−末端部位の選択が、部位選択ペグ化試薬および分子モデリングの利用によって決定されることを開示しているが、彼らは「いくつかの効果が生成物に特異的である」と認識している。さらに、本発明とは対照的に、その中に報告されている所見は、本明細書中で「RN」レセプター結合タンパク質として定義されるクラスのレセプター結合タンパク質を含むことを一般化していなかった。
【0094】
J.Burgら(PCT公開番号WO01/02017A2)は、エリスロポエチン糖タンパク質のアルコキシペグ結合体の生成を開示しており、ここで、メトキシペグの1〜3本の鎖は、この糖タンパク質の表面上のリジン残基のεアミノ基の改変によって化学的に導入されたスルフヒドリル基で反応された。しかしながら、本発明とは対照的に、この参考文献は、ペグとエリスロポイエチンのN末端のアミノ酸の遊離αアミノ基とを結合しようとするいかなる試みも、エリスロポイエチンレセプターとの相互作用に必要不可欠であるエリスロポイエチン糖タンパク質の領域のリジン残基を改変することを避けようとするいかなる試みも開示していない。
【0095】
J.Burgら(PCT公開番号WO02/49673A2)は、ペグ化前および糖タンパク質のリジン残基の全てのεアミノ基の可逆的なシトラコニル化後に開裂される選択的に開裂可能なN末端のペプチド伸長を使用するプロセスによる天然および変異のエリスロポイエチン糖タンパク質のN末端にアミド連結されたペグ結合体の合成を開示している。この参考文献において開示された多段階プロセスについての原理は、同質のモノペグ化された結合体を生成するためにそのペグ化プロセスをN末端アミノ酸の遊離αアミノ基についての選択的とし、それによって、多数のペグ化された誘導体からモノペグ化された結合体を分離する必要性を避けることであった。この方法は以下:(1)Burgらのアプローチは、アミド結合によってアルコキシペグが連結されるエリスロポイエチン糖タンパク質に限定されるが、他方本発明は、種々の合成ポリマーを使用して結合される種々の生物活性成分に適用可能であり;(2)本発明は、グリコシル化ならびに非グリコシル化の「RN」および「RG」レセプター結合タンパク質の両方に適用するが、他方、Burgらは、糖タンパク質の結合体化のみを開示しており;(3)本発明は、アルコキシペグ(例えば、mペグ)、および単官能基が活性化されるヒドロキシペグの両方を包含するが、他方、Burgらは、アルコキシペグの使用のみを開示しており;および(4)本発明において、ポリマーとこのタンパク質との間の第二級アミン結合が、Burgらによって使用されるアミド結合より好ましい(なぜなら本発明は、より安定で、アミノ基上の正電荷を保存しているからである)、に限定されないが、これらを含む多くの重要な点で、本発明の方法とは異なる。同じグループからの類似の研究において、J.Burgら(米国特許第6,340,742号)は、エリスロポイエチン糖タンパク質のアミド結合された結合体の生成を開示しており、ここで、アルコキシペグの1〜3本の鎖は、タンパク質の1〜3個のアミノ基に結合される。しかしながら、本発明とは対照的に、この参考文献は、N末端アミノ酸のαアミノ基についての優先性もレセプターとの相互作用に関与する領域でないアミノ基についての優先性も報告していない。
【0096】
C.Delgadoら(米国特許第6,384,195号)は、トレシルモノメトキシペグとして表され、その明細書中で「TMペグ」と称される反応性ポリマーを使用して調整される顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の結合体を開示している。この参考文献は、TMペグが組み換えヒトGM−CSFと接触する場合、「改変された物質は、活性を有さない種および改変されていない物質より高い活性を有する種を含むことを示す」。当業者が容易に理解するように、活性を有さない種は、生物活性ポリマー成分の結合体の混合物(特にそのような結合体を含む治療上の使用についての組成物)において好ましくないので、それらは有益な効果に寄与せずに、そのような投与を必要とする患者に結合体を投与することの危険性の原因となり得る。本明細書中で記されているように、本発明は、GM−CSFおよびレセプター結合活性に関与するタンパク質上の部位での他のレセプター結合タンパク質の改変を避けることによって、少なくとも部分的に当該分野におけるこの制限を克服し、それによって、活性を有さない種の合成を減少または除去する。本発明はまた、ポリマーによるタンパク質の異なるサイズ、異なる電荷および/または異なる電荷の遮蔽の範囲を有する結合体の分画および精製のための方法を提供する(図9〜12参照のこと)。
【0097】
米国特許第6,384,195号は、GM−CSFのN末端のペグ化について述べておらず、それによって、本発明の方法の利点を認識していないことは特筆すべきである。最終的に、米国特許第6,384,195号は、GM−CSF分子上のペグ分子が付着される(リジン残基に結合される以外の)場所を考慮せずに、1つより多くのペグがGM−CSFの各々の分子に結合される結合体についての優先性を示す。GM−CSF一つにつき6個までのペグ分子を有する結合体についての優先性を述べることによって、その参考文献は、ペグが全ての可能なリジン残基に付着され得、それによって、ペグが細胞表面レセプターへのタンパク質の接近したアプローチを立体的に阻害する位置に付着され得ることを確実にする結合体についての優先性を述べている(本明細書の図3参照のこと)。対照的に、本発明はリジン残基が、レセプターとの相互作用およびそれによって、シグナル伝達に必要不可欠であるレセプター結合タンパク質の領域から離れているか(アゴニストの場合において)、またはシグナル伝達を競合的に阻害する(アンタゴニストの場合において)場合を除いて、リジン残基に結合するペグが望ましくないことを示す。
【0098】
T.Nakamuraら(PCT公開番号WO02/32957A1)は、エリスロポイエチンレセプターのための結合体の親和性を減少させるが、エリスロポイエチン糖タンパク質の52位でのリジン残基のεアミノ基に結合されるペグの分子量の増加は、インビボでの結合体のエリスロポイエチン効果を増加させることを開示している。しかしながら、本発明とは対照的に、この参考文献は、アミノ末端または近接したグリコシル化部位でのペグの結合を開示しておらず、そのようにすることのいかなる利点も認識していない。
【0099】
従って、本発明は、以前に開示された結合体より、別の構造および機能的利点を有する合成ポリマーに結合される生物活性成分の結合体および結合体の合成のための方法を提供する。
【0100】
(組成物)
本発明は、1個以上の生物活性成分、適切に1個以上のより安定化ポリマー(例えば、1個以上のペグ)に結合される、1個以上のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンを含む結合体または複合体を提供する。代表的に、そのような結合体は、本明細書中に記載された本発明の方法によって生成され;しかしながら、本明細書中に記載された結合体以外の構造および活性を有する結合体は、それらが本方法によって生成される場合、同等物とみなされるので、本発明に包含される。関連した局面において、本発明はまた、1個以上のそのような結合体または複合体を含む組成物を提供する。本発明のこの局面による組成物は、1個以上(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、10個など)の上記の本発明の結合体または複合体を含む。特定のそのような局面において、組成物は1個以上のさらなる成分(例えば、1個以上の緩衝塩、1個以上のカオトロピック剤、1個以上の界面活性剤、1個以上のタンパク質(例えば、アルブミンまたは1個以上の酵素)、1個以上の非結合性ポリマー、1個以上の浸透活性剤など)を含み得る。本発明のこの局面の組成物は、固体(例えば、乾燥粉末)または溶液(特に本発明の1個以上の結合体を含む生理的に適合する緩衝された塩溶液の形態)を含む、任意の形態であり得る。
【0101】
(A.薬学的組成物)
本発明の特定の組成物は、予防、診断または治療の適用における使用のための薬学的組成物としての使用のために特に処方される。そのような組成物は、代表的に、本発明の1個以上の結合体、複合体または組成物および1個以上の薬学的に受容可能なキャリヤーまたは賦形剤を含む。本明細書中で使用される「薬学的に受容可能なキャリヤーまたは賦形剤」という用語は、添加の結果生じる有害作用を有さずに、薬学的組成物が取り込まれるヒトまたは他の哺乳動物を含む、レシピエント動物に許容され得る、非毒性の固体、半固体もしくは液体充填剤、希釈液、カプセル化物質または任意のタイプの補助的な処方物を言う。
本発明の薬学的組成物は、任意の適切な投与方法(例えば、経口、直腸、非経口、全身内部、経膣、腹腔、局所(粉末、軟膏、点滴または経皮貼布によって)、経口または鼻腔用スプレーまたは吸入によって頬側)によって受容体に投与され得る。本明細書中で使用される「非経口」という用語は、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、大槽内、皮下ならびに間接内注射および注入を含む投与の方法を言う。
【0102】
非経口のための本発明によって提供される薬学的組成物は、薬学的に受容可能な無菌水溶液もしくは非水溶液、分散、懸濁液または乳濁液、ならびに、使用する前に無菌注射剤または分散に水を加えてもとに戻すための無菌粉末を含み得る。適切な水溶液および非水溶液キャリヤー、希釈剤、溶剤またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロールなど、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール))、カルボキシメチルセルロースおよびその適切な混合物、植物性油脂(例えば、オリーブオイル)、ならびに注入可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性が、例えば、コーティング物質(例えば、レシチン)の使用、分散の場合において必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって、保持され得る。
そのような本発明の薬学的組成物はまた、アジュバント(例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤)を含み得る。微生物の作用の防止は、種々の殺菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの包含によって確実にされ得る。それはまた、浸透圧物質(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)含むことを所望され得る。注射可能な薬学的形態の長期の吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、アルミニウムモノステアレート、ヒドロゲルおよびゼラチン)の包含によって、引き起こされ得る。
【0103】
いくつかの場合において、薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉注射からの吸収を遅延させることが所望される。これは、水溶性の体液中で低い溶解度を有する結晶質または非晶質の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次いで、薬物の吸収の速度は、その溶解の速度に依存し、次に、その物理的形状に依存し得る。代替的に、非経口的に投与された薬物形態の遅らせた吸収は、油ビヒクル中で薬物を溶解または懸濁することによって達成され得る。
【0104】
蓄積注射形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)においてマイクロカプセルに入れた薬物のマトリックスを形成することによって作製される。使用されるキャリヤーポリマーおよび天然の特定のキャリヤーポリマーの薬物の割合に依存して、薬物放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、生体適合性ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。蓄積注射製剤はまた、体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を閉じ込めることによって調整される。
【0105】
注射用の製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用する前に滅菌水中もしくは他の無菌注射剤媒体中で溶解または分散され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を取り込むことによって滅菌され得る。
【0106】
経口投与のための固体投薬形態は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および顆粒を含む。そのような固体投薬形態において、活性成分は、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリヤー(例えば、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムおよび/またはa)充填剤もしくは増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアゴム
)、c)湿潤剤(humectant)(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(wetting agent)(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート)、h)吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレー)、およびi)滑択剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ペグ、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物))と混合される。カプセル、錠剤、丸剤の場合において、投薬形態はまた、緩衝剤を含み得る。
【0107】
類似のタイプの固体組成物もまた、ラクトース(乳糖)のような賦形剤、ならびに高分子量PEGなどを使用して、軟らかい充填ゼラチンカプセルおよび硬い充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。
【0108】
錠剤、糖剤、カプセル、丸剤ならびに顆粒の固体投薬形態は、コーティングおよび殻(例えば、腸またはクロノモジュレート(chronomodulating)コーティングおよび薬学的処方の分野において周知である他のコーティング)を用いて調製され得る。それらは必要に応じて、不透明の薬剤を含み得、また、それらは活性成分のみを放出するか、または必要に応じて、遅延様式において胃腸管のある特定の部分に優先的に放出するような組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、重合体物質およびワックスが挙げられる。活性成分はまた、適切な場合、1つ以上の上記賦形剤を有するマイクロカプセルに入れた形態であり得る。
【0109】
経口投与についての液体の投薬形態としては、薬学的に受容可能な乳濁液、水溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体の投薬形態は、当該分野において一般的に使用される不活性な希釈剤(例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリ(エチレングリコール)およびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにその混合物))を含み得る。
【0110】
不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント(例えば、界面活性剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味料および香料)を含み得る。
【0111】
活性成分に加えて、懸濁液は、懸濁化剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカント、およびその混合物)を含み得る。
【0112】
局所投与は、肺および眼の表面を含む、皮膚または粘膜への投与を含む。吸入のための投与を含む、局所投与についての組成物は、加圧され得るか、または加圧され得ない乾燥粉末として調整され得る。加圧されない粉末組成物において、細かく分けられた形態の活性成分は、例えば、直径で100ミクロメートルまでのサイズを有する粒子を含む、より大きなサイズの薬学的に受容可能な不活性なキャリヤーを有する混合物中で使用され得る。適切な不活性なキャリヤーは、糖(例えば、ラクトースおよびスクロース)を含む。好ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%は、0.01〜10ミクロメートルの範囲における効果的な粒子サイズを有する。
【0113】
代替として、薬学的組成物は、加圧され得、圧縮ガス(例えば、窒素または液化ガス噴霧剤)を含み得る。液化性の噴霧剤媒体および実際には全組成物は、活性成分が任意の十分な程度まで、その中に溶解しないことが好まれ得る。加圧された組成物はまた、界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、液体もしくは固体の非イオン性界面活性剤であり得るか、または固体の陰イオン性界面活性剤であり得る。ナトリウム塩の形態において、固体の陰イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0114】
さらに局所投与の形態は眼への投与である。この投与の方法において、本発明の結合体または組成物は、薬学的に受容可能な眼のビヒクルにおいて送達されるので、活性成分は、成分を粘膜または角膜および眼の内部の領域(例えば、前房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜および強膜)に浸透することを可能にするために、十分な時間の間、成分を眼の表面と接触することを保持される。薬学的に受容可能な眼のビヒクルは、例えば、軟膏剤、植物油またはカプセル化している物質である。
【0115】
直腸投与または膣投与のための組成物は、好ましくは、適切な非刺激性の賦形剤またはキャリヤー(例えば、カカオ脂、ペグまたは坐薬ワックス)を有する本発明の結合体または組成物を混合することによって調整され得る坐薬であり、それは室温で固体であるが、体温で液体であるので、それによって、直腸または膣の窩で溶け、薬物を放出する。
【0116】
本発明の治療方法で使用される薬学的組成物はまた、リポソームの形態で投与され得る。当該分野において公知であるように、リポソームは一般的に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水溶性の培地中で分散される単一層状の水和結晶または多層状の水和結晶によって形成される。任意の非毒性で、リポソームを形成し得る薬学的に受容可能および代謝可能な脂質が使用され得る。本発明の1つ以上の結合体または組成物に加えて、リポソーム形態における本薬学的組成物はまた、1つ以上の安定剤、防腐剤、賦形剤などを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソーム形態の方法は、当該分野において公知である(例えば、Zalipsky,Sら,米国特許第5,395,619号参照のこと)。ペグに結合されるリン脂質を含むリポソーム、通常、モノメトキシペグに結合されるホスファチジルエタノールアミンは、哺乳類の血液循環において寿命を延長させることを含む、有益な特性を有する(Fisher,D,米国特許第6,132,763号)。
【0117】
(B.使用)
本明細書中の他の場所に記載されたように、本発明の方法、結合体および組成物は、それらのレセプターに結合するための生物学的成分の能力を妨げずに、生物学的成分の生物活性を保持するための方法において有利に使用される。本発明の特定のそのような方法は、1つ以上の結合体および組成物を細胞、組織、器官または生物体に送達することを必要とし得る。特に、本発明は、細胞、組織、器官または生物体に複合体または組成物の1つ以上の制御された送達を提供し、それによって、細胞、組織、器官または生物体に活性を放出される特定の成分の量を、時間的および空間的に、規制するための能力を有する使用者に提供する。
【0118】
一般に、本発明のそのような方法は、1つ以上の活性を含む。例えば、本発明のそのような1つの方法は、以下:(a)本明細書中で述べられたような、本発明の1つ以上の結合体または組成物を調整する工程;および(b)細胞、組織、器官または生物体への本発明の1つ以上の結合体または組成物の結合を有利にする条件下で、1つ以上の細胞、組織、器官または生物体を1つ以上の結合体または組成物に接触する工程を含む。いったん、本発明の結合体および/または組成物の生物活性成分が、細胞、組織、器官または生物体に結合される(または、いくつかの場合において、内在化される)と、その成分は、それらの意図された生物学的機能の実行へ進む。例えば、ペプチド成分は細胞、組織、器官または生物体上もしくは内で、レセプターまたは他の成分に結合し得;細胞、組織、器官または生物体内の代謝反応に関係し;細胞、組織、器官または生物体内の1つ以上の酵素活性を増加もしくは活性化、または減少もしくは阻害することを実行し;細胞、組織、器官または生物体に失っている構造上の成分を提供し;細胞、組織、器官または生物体に1つ以上の栄養性の必要物を提供し;疾患または身体疾患の1つ以上の進行または兆候を阻害、処置、転換または改善し;その他同様のことをする。
【0119】
さらなる実施形態において、本発明の結合体および組成物は、産業用の細胞培養に使用され得、それらの生物活性の十分な保持の組み合わされた効力の結果として取得される結合体の生物活性成分の予想外に高い効力に起因し、産業用の使用の厳しい条件下でさえ、作用の持続時間を増加させる。本結合体のこれらの予想外に高い効力は、著しく高い生物体生成物、著しく高いレベルの組み換えタンパク質の発現、およびバイオプロセスの有効性における他の改良をもたらし得る。
【0120】
(C.用量レジメン)
本発明の結合体、複合体または組成物は、それに1つ以上の生物活性成分(すなわち、1つ以上のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニスト)を送達するために、細胞、組織、器官もしくは生物体にインビトロ、エキソビボまたはインビボで投与され得る。当業者は、与えられた活性化合物、結合体、複合体または組成物の有効な量は、経験的に決定され得、また純粋な形態で使用され得、または、ここでそのような形態は、薬学的に受容可能な処方物もしくはプロドラッグの形態で存在する。本発明の化合物、結合体、複合体もしくは組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせて獣医学または薬学的組成物としてその必要とする動物(哺乳類(例えばヒト)を含む)患者に投与され得る。任意の特定の患者についての治療的に有効量のレベルは、達成されるための細胞の反応のタイプおよび度合いを含む種々の要因;使用される特定の化合物、結合体、複合体もしくは組成物の同一性および/または活性;患者の年齢、体重または表面積、身体全体の健康、性別および食事;投与時間、投与経路、および活性化合物の排出の割合;処置の期間;特定の化合物、結合体、複合体または組成物と組み合わせてもしくは同時に使用される他の薬物;ならびに薬学的および医学的分野における当業者に周知であるような要因次第である。例えば、本発明の与えられた化合物、結合体、複合体または組成物の投与量を、所望される治療効果を達成するために必要とされるより低いレベルで始めて、所望される効果が達成されるまで、投薬量を除々に増加させることは当業者に周知である。
【0121】
用法はまた、当該分野において認容および慣例の技術(例えば、サイズ排除、イオン交換もしくは逆相高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)、バイオアッセイまたは免疫学的アッセイ)によって決定された、血液中の与えられた活性化合物の所定の濃度を提供するために、患者特定の様式において調整され得る。このように、患者の用量レジメンは、医学、薬学および/または薬理学分野における当業者に慣用されもしくは周知の方法に従って、HPLCまたは免疫学的検定によって測定された、比較的一定の血中濃度を達成するために調整され得る。
【0122】
(D.診断的使用および治療的使用)
本発明の結合体の診断的使用は、動物(特に、ヒト)の身体内において、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、またはポリペプチドホルモンに対する異常に高い結合能を有する細胞または組織(例えば、癌)を、本発明の結合体または組成物の投与によって位置付けるためであり得、その結合体(または1つ以上の成分(すなわち、生物活性成分および/または合成ポリマー))は、標識されているか、あるいは当該分野で公知の方法に従う検出(例えば、光学的検出、放射測定検出、蛍光検出、または共鳴検出による)を可能にするような1種以上の検出可能な標識を含む。例えば、非小細胞肺癌の大部分は、異常に高濃度の上皮増殖因子レセプターを発現する(Bunn,P.A.ら(2002)Semin Oncol 29(Suppl 14):38〜44)。従って、本発明の別の局面において、本発明の結合体および組成物は、診断方法または治療方法において、例えば、種々の身体的障害に対する素因を有するかまたはそのような障害に罹患している動物(特に、哺乳動物(例えば、ヒト))においてそのような障害を診断、処置、または予防する際に、使用され得る。そのようなアプローチにおいて、治療の目的は、上記障害の発症を遅延または予防すること、および/あるいは上記障害を治癒すること、上記障害の寛解を誘導すること、または上記障害の寛解を維持すること、および/あるいは他の治療レジメンの副作用を減少もしくは最小にすることである。
【0123】
従って、本発明の結合体、複合体、および組成物は、身体的障害(例えば、感染症または疾患)の防御、抑制、または処置のために使用され得る。身体的障害からの「防御」という用語は、本明細書中で使用される場合、「予防」、「抑制」および「処置」を包含する。「予防」とは、上記疾患または身体的障害を誘導する前に本発明の複合体または組成物を投与することを包含し、一方、「抑制」とは、上記疾患の臨床的出現の前に上記結合体または組成物を投与することを包含する。従って、身体的障害の「予防」および「抑制」は、代表的には、上記障害の素因があるかまたは上記障害に対して感受性であるが未だ上記障害に罹患はしていない、動物において行われる。しかし、身体的障害の「処置」とは、上記疾患の出現後に本発明の治療結合体または治療組成物を投与することを包含する。ヒトおよび脊椎動物の医療において、身体的障害を「予防すること」と「抑制すること」とを区別することが常に可能であるわけではないことが、理解される。多くの場合、最終的誘導事象は、未知または潜在的であり得、患者も医師も、その誘導事象が出現した充分に後になるまで、その誘導事象に気づかないかもしれない。従って、本明細書中で定義される「予防すること」および「抑制すること」の両方を包含するために、「処置」とは別個に用語「予防」を使用することが、一般的である。従って、本発明の方法に従って使用される用語「防御」とは、「予防」を包含することになる。本発明のこの局面に従う方法は、医師が上記の治療目標を達成するのを可能にする、1つ以上の工程を包含し得る。本発明のそのような一方法は、例えば、(a)身体的障害に罹患しているかまたはそのような障害に対する素因がある動物(好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト))を同定する工程;および(b)その動物に、有効量の本明細書中に記載される本発明の一つ以上の結合体、複合体または組成物を投与し、その結合体、複合体、または組成物の投与によって、その動物における身体的障害の発症が予防、遅延もしくは診断されるか、またはその身体的障害が治癒されるかもしくはその身体的障害の寛解が誘導されるかもしくはその寛解が維持されるようにする工程を包含し得る。
【0124】
本明細書中で使用される場合、身体的障害に「対する素因がある」動物とは、その障害の複数の明白な身体的症状を示さないが、遺伝的、精神的、または他の様式でその障害を発症する危険がある動物として、定義される。本方法において、所定の身体的障害の素因があるかまたはその障害の危険があるかまたはその障害に罹患している動物の同定は、当業者が精通している標準的な当該分野で公知の方法(例えば、放射線学的アッセイ、生化学的アッセイ(例えば、動物から得たサンプルにおける、特定のペプチド、タンパク質、電解質などの相対レベルのアッセイ)、外科的方法、遺伝的スクリーニング、家族歴、身体触診、病理試験または組織学的試験(例えば、組織もしくは体液のサンプルもしくは塗抹の顕微鏡評価、免疫学的アッセイなど)、体液(例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、精液など)の試験、画像化(例えば、放射線画像化、蛍光画像化、光学的画像化、共鳴画像化(例えば、核磁気共鳴(「NMR」)または電子スピン共鳴(「ESR」)を使用する)などが挙げられる)に従って達成され得る。一旦、動物がこのような1種以上の方法によって同定されると、その動物は、上記身体的障害を予防、抑制、遅延、または治癒するために、積極的および/または前向きに処置され得る。
【0125】
本発明の結合体、複合体、組成物、および方法を用いて予防、診断、または処置され得る身体的障害としては、上記結合体または組成物の生物活性成分(代表的には、そのサイトカイン、増殖因子、ケモカイン、もしくはポリペプチドホルモン成分、またはそのアンタゴニスト)が上記の予防、診断、または処置において使用され得る、任意の身体的障害が挙げられる。そのような障害としては、種々の癌(例えば、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、白血病、リンパ腫、肺癌、神経学的癌、皮膚癌、頭部および頚部の癌、骨の癌、結腸癌および他の胃腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、ならびに他の癌腫、肉腫、腺腫、および骨髄腫);医原性疾患;感染性疾患(例えば、細菌疾患、真菌疾患、ウイルス疾患(肝炎、心臓向性ウイルスにより引き起こされる疾患、HIV/AIDSなどを含む)、寄生生物疾患など);遺伝的障害(例えば、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、ゴーシェ病、ポーンプ病、重症複合型免疫不全障害、小人症など)、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、および他の血液障害;神経変性障害(例えば、多発性硬化症、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルツハイマー病など);酵素障害(例えば、痛風、尿毒症、高コレステロール血症など);不特定病因または多病巣性病因の障害(例えば、心血管疾患、高血圧、炎症性腸疾患など);自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、乾癬など)、ならびに当業者が容易に精通している医学的に重要な他の障害が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の結合体、複合体、組成物、および方法はまた、疾患の進行の予防において、例えば、前悪性病変から悪性病変への進行の化学的予防において、使用され得る。
【0126】
従って、本発明の治療方法は、必要とされる動物に種々の投与経路によって投与され得る本発明の1種以上の結合体、複合体、または組成物、あるいは本発明の薬学的組成物のうちの1種以上を使用し、上記投与経路としては、経口投与、直腸投与、非経口投与(静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、槽内投与、皮下投与、ならびに関節内注射および関節内注入を包含する)、全身内投与、膣内投与、腹腔内投与、局所投与(粉末、軟膏、点滴、または経皮パッチによる)、口腔内投与、口腔スプレーまたは経鼻スプレー、または吸入による投与が挙げられる。本発明によって、有効量の上記結合体、複合体、または組成物が、特定の障害に罹患しているかまたはその障害に対する素因がある細胞または動物に、インビトロ、エキソビボ、またはインビボで投与され得、それによって、その動物においてその障害が予防、遅延、診断、または処置される。本明細書中で使用される場合、「有効量の結合体(または複合体または組成物)」とは、その結合体(または複合体または組成物)が、その結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニスト)の生物学的活性を実行し、それによって、本発明の結合体、複合体、または組成物が投与された動物においてその身体的障害を予防、遅延、診断、処置、もしくは治癒する、量を指す。当業者は、有効量の本発明の結合体、複合体、または組成物は、薬学および医学の分野において当業者にとって周知である標準的方法に従って、経験的に決定され得ることを認識する。例えば、Beers,M.H.ら編(1999)Merck Manual of Diagnosis & Therapy,第17版、Merck and Co.,Rahway,NJ;Hardman,J.G.ら編(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版、McGraw−Hill Medical Publishing Division,New York;Speight,T.M.ら編(1997)Avery’s Drug Treatment,第4版,Adis International,Aukland,New Zealand;Katzung,B.G.編(2000)Basic and Clinical Pharmacology.第8版,Lange Medical Books/McGraw−Hill,New York(これらの参考文献およびその中に引用された参考文献は、その全体が参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0127】
ヒト患者に対して投与される場合、本発明の結合体、複合体、および組成物の全一日投与量、全一週間投与量、または全一ヶ月間投与量は、信頼できる医学的判断の範囲内で主治医により決定されることが理解される。例えば、満足のいく結果が、使用される具体的な生物活性化合物に依存する適切な投与量にて特定の本発明の結合体、複合体、または組成物を投与することによって得られ、その投与量は、当業者が容易に精通しているか、または慣用的な実験のみを使用して経験的に容易に決定され得る。本発明のこの局面によると、上記結合体、複合体、または組成物は、1回で、または分割投与で(例えば、1日当たり1回もしくは2回、または1週間当たり1回もしくは2回、または1ヶ月間当たり1回もしくは2回など)投与され得る。種々の投与経路(例えば、非経口経路、皮下経路、筋肉内経路、眼内経路、鼻内経路など)についての適切な投与レジメンもまた、慣用的実験のみを使用して経験的に容易に決定され得るか、または当業者にとって容易に明らかであり、それは、上記結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、もしくはそのアンタゴニスト)の正体に依存する。
【0128】
さらなる適用において、本発明の結合体、複合体、および組成物は、診断剤または治療剤を、上記結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニスト)のレセプターを発現するか、その生物活性成分を結合するか、その生物活性成分を組み込むか、またはその生物活性成分を取り込み得る、細胞、組織、器官、または生物に特異的に標的化するために使用され得る。本発明のこの局面に従う方法は、例えば、上記細胞、組織、器官、または生物を、本発明の1種以上の結合体、複合体、または組成物(これらは、1種以上の診断剤または治療剤をさらに含む)と接触し、その結果、上記結合体、複合体、または組成物が、上記細胞、組織、器官、または生物によって結合されるかもしくは取り込まれ、それによって上記診断剤または治療剤が上記細胞、組織、器官、または生物に送達される、工程を包含し得る。本発明のこの局面に従って使用される診断剤または治療剤は、核酸、有機化合物、タンパク質もしくはペプチド、抗体、酵素、糖タンパク質、リポタンパク質、元素、脂質、糖質、同位体、炭化水素、画像化剤、検出プローブ、またはこれらの任意の組み合わせ(これらは、本明細書中に記載されるように検出可能に標識され得る)から選択される少なくとも1種の因子であり得るが、これらに限定はされない。本発明のこの局面において使用される治療剤は、上記標的細胞(または組織、器官、もしくは生物)に対する治療効果を有し得、この効果は、欠損遺伝子もしくは欠損タンパク質の修正、薬物作用、毒性効果、増殖刺激効果、増殖阻害効果、代謝効果、異化効果、同化効果、抗ウイルス効果、抗真菌効果、抗細菌効果、ホルモン効果、神経液効果、細胞分化刺激効果、細胞分化阻害効果、神経調節効果、抗新生物効果、抗腫瘍効果、インスリン刺激効果もしくはインスリン阻害効果、骨髄刺激効果、多能性肝細胞刺激効果、免疫系刺激効果、および本発明のこの局面に従う送達系を介して細胞(または組織、器官、もしくは生物)に送達される治療剤により提供され得る他の公知の任意の治療効果から選択されるが、これらに限定されない。
【0129】
そのようなさらなる治療剤は、公知および新規な化合物および組成物(抗生物質、ステロイド類、細胞傷害剤、血管作用剤、抗体および他の治療剤を包含する)から選択され得るが、これらに限定されない。そのような因子の非限定的例としては、抗生物質、および細菌性ショックの処置において使用される他の薬物(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ナフシリン、非経口セファロスポリンなど);副腎皮質ステロイドおよびそのアナログ(例えば、デキサメタゾン)(これは、エンドトキシンにより引き起こされる細胞傷害を緩和する);血管作用性薬物(例えば、αアドレナリン作用性レセプター遮断剤(例えば、フェノキシベンズアミン)、βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト(例えば、イソプロテレノール)、およびドーパミンが、挙げられる。
【0130】
本発明の結合体、複合体、および組成物はまた、疾患の診断のため、および治療応答をモニターするために、使用され得る。特定のこのような方法において、本発明の結合体、複合体、または組成物は、1種以上の検出可能な標識(例えば、本明細書中の他の場所に記載される標識)を含み得る。具体的なそのような方法において、本発明の検出可能に標識されたこれらの結合体、複合体、または組成物は、上記結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、もしくはポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニスト)のレセプターを発現するかもしくはその生物活性成分を取り込む、細胞、組織、器官、もしくは生物を検出するために使用され得る。そのような方法の一例において、上記細胞、組織、器官、または生物は、本発明の結合体、複合体、または組成物のうちの1つ以上と、上記細胞、組織、または生物による(例えば、上記結合体の細胞表面レセプターへの結合によるか、または上記細胞中への上記結合体のピノサイトーシスもしくは拡散による)上記結合体の結合もしくは取り込みを支持する条件下で接触され、その後、使用される標識に特異的な検出手段(例えば、経口標識された結合体についての蛍光検出;磁気標識された結合体についての磁気共鳴画像化;放射標識結合体についての放射性画像化など)を使用して、上記細胞に結合したかまたは取り込まれた結合体が、検出される。検出可能に標識されたそのような結合体の他の用途としては、例えば、有効量の本発明の結合体の1つ以上の標識形態を投与してその細胞、組織、器官、または生物(もしくは動物)に関係する検出可能な放射線を測定することによる、細胞、組織、器官、もしくは生物の画像化、または動物(ヒトを含む)の内部構造の画像化が挙げられ得る。診断画像化剤および治療画像化剤における種々の型の標識を検出する方法およびその使用は、当業者にとって周知であり、本明細書中の他の場所に記載されている。
【0131】
別の局面において、本発明の結合体および組成物は、上記結合体の生物活性成分の特異的なレセプターの濃度または活性を、そのようなレセプターを発現する細胞表面上で調節するための方法において、使用され得る。所定のレセプターの活性を「調節すること」によって、上記結合体は、上記レセプターに結合した際に、そのレセプターを介して媒介される生理学的活性(例えば、細胞内シグナル伝達カスケード)を活性化または阻害のいずれかを行うことが、意味される。本発明の結合体の調節活性についてのいかなる特定の機構的説明によっても拘束されることは意図しないが、そのような結合体は、細胞レセプターの生理学的活性を、上記結合体の生物活性成分を介して上記レセプターに結合することによってアンタゴナイズし得、それにより、天然のアゴニスト(例えば、非結合型生物活性成分)の結合をブロックし、そしてその天然のアゴニストによるそのレセプターの活性化を妨げると同時に、そのレセプター自体の生理学的活性の実質的な活性化は誘導しない。本発明のこの局面に従う方法は、1つ以上の工程(例えば、上記細胞を(これは、インビトロで行っても、エキソビボで行っても、インビボで行ってもよい)本発明の結合体のうちの1つ以上と、その結合体(すなわち、上記結合体の生物活性成分部分)が、上記細胞表面上の生物活性成分のレセプターには結合するがそのレセプターを実質的には活性化しない条件下で、接触させる工程)を包含し得る。そのような方法は、当業者が容易に認識するように、種々の診断適用および治療適用において有用である。
【0132】
(キット)
本発明はまた、本発明の結合体および/または組成物を含むキットを提供する。そのようなキットは、代表的には、密に閉じ込められた状態で、1つ以上の容器(例えば、バイアル、チューブ、アンプル、ボトル、シリンジなど)を有するキャリア(例えば、箱、ボール紙、チューブなど)を備え、第一容器は、本発明の結合体および/または組成物のうちの1つ以上を含む。本発明のこの局面によって包含されるキットは、本発明の結合体および組成物の1種以上の特定の適用を実行するために必要な1種以上のさらなる成分(例えば、試薬および化合物)(例えば、特定の疾患または身体的障害のために有用な1種以上の成分(例えば、1種以上のさらなる治療化合物もしくは治療組成物、1種以上の診断試薬、1種以上のキャリアもしくは賦形剤など)、本発明の1種以上のさらなる結合体または組成物など)をさらに含み得る。
【0133】
本明細書中に記載される方法および適用に対する他の適切な改変および適合が、本発明の範囲からもそのいかなる実施形態からも逸脱することなくなされ得ることが、当業者にとって容易に明らかである。ここに本発明が詳細に記載されているが、本発明は、以下の実施例に対する参照によってより明確に理解される。以下の実施例は、例示のためだけに本明細書中に包含され、本発明の限定であることは意図されない。
【実施例】
【0134】
(実施例1:PEG−インターフェロンα結合体)
インターフェロンαは、2001年に2億米ドルを超える世界市場を有する、主にC型肝炎ウイルス(「HCV」)感染を有する患者の処置のための商業的に重要な医療タンパク質である。米国において、300万人〜400万人の人々が、慢性C型肝炎に罹患し、約10,000件のHCV関連死が毎年生じる(Chander,G.ら(2002)Hepatology 36:5135〜5144)。IFN−αの有用性を改善する試みにおいて、その開発および市販を主に担う会社(Schering−Plough Corp.およびF.Hoffmann−La Roche AG)の両方が、モノメトキシプロピル(エチレングリコール)すなわち「mPEG」とIFN−αとの結合体を開発して市販した。各場合において、mPEGは、唯一の結合点においてインターフェロンαの各分子に連結される。各場合において、その製品は、非改変型インターフェロンと比較して顕著に減少したレセプター結合活性を有する、位置異性体の混合物を含む。各場合において、その結合体の増加したバイオアベイライビリティおよび作用期間は、1週間当たり1回のその結合体の注射の改善された臨床的有効性によって測定した場合、1週間当たり3回のその非改変型タンパク質の注射と比較して、慢性HCV感染症の処置について、PEG結合体化から生じるインビトロでの減少した生物活性をインビボではより補償する(Manns,M.P.ら(2001)Lancet 358:958〜965)。
【0135】
F.Hoffman−La RocheのPEG−インターフェロンα2a結合体(PEGASYS(登録商標))において、2本の20kDa mPEG鎖が、1つのリジンリンカーに結合しており(いわゆる、「分枝型PEG」)、このリンカーは、主に、Lys31、Lys121、Lys131またはLys134のうちの1つに連結される(Bailon,P.ら(前出))。これらはすべて、インターフェロンα2aのレセプター結合ドメイン内にあるかまたはそのドメインに近接する(図1aの結合部位1および配列番号1を参照のこと)。
【0136】
Schering−Plough Corp.のPEG−インターフェロンα2b結合体において、一本の12kDa mPEG鎖が、34位のヒスチジン残基に優先的に結合している(His34;Wylie,D.C.ら(前出);Gilbert,C.W.ら、米国特許第6,042,822号;Wang,Y.S.ら(前出))。このヒスチジン残基は、レセプターへの結合のために重要な領域中にある(図1b参照)。Schering−PloughのPEG−イントロン製品における他のPEG結合部位(Lys121、Tyr129およびLys131)もまた、結合部位1(図1bおよび配列番号2)内またはその付近にあることが観察されている。
【0137】
これらの2つの商業製品とは対照的に、本発明の結合体は、N末端アミノ酸残基に結合した一本の水溶性合成ポリマー(好ましくは、PEGまたはmPEG)鎖を有し、このN末端残基は、このタンパク質のレセプター結合領域とは離れている(図1cおよび1dにおけるCyts−1と結合部位との間の空間的関係を参照のこと)。このことは、インターフェロンαが、「RN」サイトカインであることを示す。図9および図10は、本発明の例示的PEG−インターフェロンα結合体の、それぞれ、カチオン交換クロマトグラムおよびサイズ排除クロマトグラムを示す。この反応混合物は、さらなるメチオニン残基がアミの末端のCys−1(これは、天然配列の最初の残基である)の前に存在する、インターフェロンα2bを含んだ。この反応性PEGは、20kDa PEG−アルデヒドであった。これは、0.2mM濃度で存在した。還元剤は、最終濃度14mMのナトリウムシアノボロヒドリドであった。この反応の進行を、4℃でインキュベーションする間にサイズ排除クロマトグラフィーによって定期的にモニターした。IFN−αは、記載された条件下でPEG化されるために充分に可溶性であったが、他のサイトカイン(例えば、IFN−β)は、より可溶性が低い。他のサイトカインは、C.W.Gilbertら(米国特許第5,711,944号)によってINF−αについて記載され、R.B.Greenwaldら(米国特許第5,738,846号)によってインターフェロンαおよびインターフェロンβについて記載されるように、界面活性剤の存在下でPEG化される必要があり得る。
【0138】
図9に示される分画のために使用したカチオン交換カラムは、ToyoPearl MD−G SP(1×6.8cm;Tosoh Biosep,Montgomeryvile,PA)であり、20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6)中の0〜0.4M NaClの直線勾配を用いて、流量0.5mL/分で展開させた。図10におけるデータを得るために使用したサイズ排除カラムは、SUPERDEX(登録商標)200(HR 10/30;Amersham Bioscience,Piscataway,NJ)であり、150mM NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6)中で0.5mL/分にて溶出させた。他の適切なイオン交換クロマトグラフ媒体およびサイズ排除クロマトグラフ媒体ならびに分画条件は、当業者にとって公知である。本発明の精製モノPEG−IFNα2bの自動Edman分解によるアミノ末端アミノ酸分析は、このPEGのうちの90%より多くがそのN末端残基に結合していることを示した。この分析は、Commonwealth Biotechnologies,Inc.(Richmond,VA)によって実施された。
【0139】
(実施例2:PEG−インターロイキン2結合体)
インターロイキン2(「IL−2」)は、特定の癌(腎細胞癌腫および悪性黒色腫を含む)に対する免疫調節活性を示すサイトカインである。しかし、臨床的効力は乏しく、わずかな割合の患者しか部分的応答も完全応答も経験しないという結果である(Weinreich,D.M.ら(2002)J Immunother 25:185〜187)。IL−2は、血流中での短い半減期を有し、これは、癌患者における寛解の低い誘導速度に関係付けられる。リジン残基のランダムPEG化によってIL−2をより有用にある試みは、最適ではなかった(Chen,S.A.ら(2000)J Pharmacol Exp Ther 293:248〜259)。PEGをそのグリコシル化部位(Goodson,R.J.ら(前出))または非必須システイン(Cys 125)にてIL−2に選択的に結合する試み、またはPEGを残基1と残基20との間にシステインを含むIL−2のムテイン(Karte,N.ら、米国特許第5,206,344号)に選択的に結合する試みは、臨床的に有用な生成物をもたらさなかった。
【0140】
図4は、IL−2のレセプター−結合領域に対するリジン残基の分布を示し、これは表面にアクセス可能なリジン残基が多く、レセプター結合に関与する領域内にあることを示している。実際、Lys−35およびLys−43は、IL−2についてα−レセプターと相互作用するのに必要とされるものとして同定されており、これはリジン残基(配列番号6を参照のこと)のPEG化によるIL−2の不活性化のための機構を示唆している。図4はまた、IL−2のN−末端領域が、このタンパク質のレセプター結合領域から離れていることも示し、これはIL−2が、「RN」サイトカインの構造を有することを示す。IL−2は、「RN」サイトカインであるという発明者らの結論は、H.Satoら((2000)Bioconjug Chem 11:502−509)の観察と矛盾しない。Satoらは、酵素学的なグルタミン転移を用いて10kDa mPEGの一本鎖または二本鎖を、これらの著作者らが、N末端の伸長の際、IL−2変異タンパク質へ導入したAQQIVM配列中の、一個または二個のグルタミン残基(「Q」)に対して結合させた。Satoらは、そのムテインのトランスグルタミネーションによってアミノ末端付近でPEG化したそれらの結合体が、IL−2ムテイン中リジンのランダムなPEG化によって調製した結合体よりもより多く生理活性を保持することを報告した。他のタンパク質をPEG化する類似するアプローチの概説については、Sato,H.(2002)(前出)を参照のこと。図4に示すように、タンパク質のレセプター結合領域からIL−2のアミノ末端の空間的な分離に基づいて、Thr−3残基におけるグリコシル化部位(示さず)が、本明細書中に定義するように、IL−2を「RG」レセプター−結合タンパク質にすることが理解され得る。従って、IL−2は、RNサイトカインおよびRGサイトカインの両方である。
【0141】
図11および図12は、実施例1のようにN末端の選択的な還元性アルキル化によって、PEG化した、本発明の例示的なPEG−IL−2結合体のカチオン交換クロマトグラムおよびサイズ排除クロマトグラムをそれぞれ示す。分画のために用いた条件は、図9および図10について記載した条件とそれぞれ同一であった。図13は、図11に示すように、イオン交換クロマトグラフィーによって精製する前後の、同一結合体のドデシル硫酸ナトリウム存在下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動(「SDS−PAGE」)分析を示す。このゲルは、Bis−Tris緩衝液(カタログ番号NP0335、Invitrogen,Carlsbad,CA)における4%〜12%の全アクリルアミドの勾配を含んだ。それぞれ約1mcg〜2mcgのタンパク質を含むサンプルを、分析前に90℃で10分間加熱した。このゲルを、冷却しながら約135分間、117〜120の定電圧で電気泳動した。このゲルの一部を、Sypro(登録商標)Rubyタンパク質ゲル染色(Molecular Probes,Eugene,OR)を用いて染色し、そして他のタンパク質部分を、C.E.Childsの方法((1975)Microchem J 20:190−192)およびB.Skoog((1979)Vox Sang 37:345−349)の適用によってPEGについて染色した。図11の二つのピークの各々における精製したモノPEG−IL−2の自動化エドマン分解によるアミノ末端のアミノ酸分析は、90%を越えるPEGが、N−末端残基に結合したことを示した。この分析は、Commonwealth Biotechnologies,Inc.(Richmond,VA)によって実施された。
【0142】
(実施例3:N末端のPEG化EGFおよびN−末端のPEG化IGF−1の合成ならびに分析)
上皮細胞増殖因子(「EGF」;配列番号7)およびインスリン様増殖因子−1
(「IGF−1」;配列番号9)を、それぞれ、図5および図7の分子モラルに基づいてN末端のPEG化について選択した。このN末端のPEG化は、EGFおよびIGF−1が、RN増殖因子であることを示している。5kDa PEG−アルデヒドの3mM溶液を、1mM HClに5kDa PEG−プロピオンアルデヒド(NOF Corporation、Tokyo)を終濃度15mg/mLで溶解することによって調製した。ボランーピリジンを、0.15mLの水を加えた0.3mLアセトニトリル中に35mcLの8M ボランーピリジン(Aldrich)を0.58Mの終濃度を生じるまで希釈することによって調製した。0.2Mのリン酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムの各々を含有する緩衝液(pH6.3)を、調製し、そして0.1ミクロン孔の滅菌フィルターを通して濾過した。Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA)からの組換えヒトEGFを、1mg/mLの濃度で水中に溶解した。0.6mLのこの溶液に対して、70mcLの3mM PEG−アルデヒド溶液、35mcLのリン酸塩−酢酸塩緩衝液および30mcLの0.58Mボラン−ピリジン溶液を添加し、そしてこの混合物を、冷却した。アリコートを、4℃〜8℃で4日間インキュベーションした後、100mM NaClを含有する炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.1)中におけるSuperdex 75 HR 10/30カラム上でサイズ−排除HPLCによって分析し、そしてこの溶出物を、280nmでの吸光度でかつ屈折率によってモニタリングした。5日間インキュベートした反応混合物を0.65mL注射した後、画分を280nmの吸光度の主要ピークの中心から回収した。このプールのpHは、酢酸の添加によっておよそpH5.5を下回った。サイズ−排除HPLCによるこの産物のプールの再分析は、100%のタンパク質が、PEG1−EGF(「モノ−PEG−EGF」)と対応する位置にあり、このプールのタンパク質濃度は、約0.32mg/mLであることを示した。SDS−PAGEによる分析は、全てのタンパク質が、EGFのモノ−PEG結合体からなることを確認した。この産物プールを、実施例4に記載するような細胞ベースのバイオアッセイにより試験する前に0.2ミクロン孔Corningシリンジフィルターを通して濾過滅菌した。EGFの10kDa PEG結合体を、5kDa PEG−アルデヒドの代わりにNOF Corporationに由来する10kDa PEG−プロピオンアルデヒドを用いた点を除いては、類似する方法によって合成、精製および分析した。10kDa PEG結合体の終タンパク質濃度は、約0.36mg/mLであった。
【0143】
Invitrogen Corp.に由来する組換えヒトインスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)のサンプルを、対応するEGF結合体について記載した方法によって5kDaのPEG−アルデヒドまたは10−kDaのPEG−アルデヒドに結合させた。IGF−1への5kDaのPEG−アルデヒドの結合の生成物は、約99%の純粋なモノ−PEG−IGF−1結合体であり、そしてPEG−EGFについて記載される結合体の精製は、終タンパク質濃度が、約0.20mg/mLであった。SDS−PAGE分析は、このタンパク質が、モノ−PEG結合体に主に存在することを確認した。電気泳動分析はまた、ゲル上のローディングが、高かった場合、微量のジ−PEG結合体の存在も示した。IGF−1への10kDa PEG−アルデヒド結合産物のサイズ−排除HPLC分析は、この産物が、95%のモノ−PEG結合体および約5%のジ−PEG結合体からなり、そして約0.23mg/mLの総タンパク質濃度を有することを示した。
【0144】
(実施例4:N末端のPEG化EGFおよびN末端のPEG化IGF−1のバイオアッセイ)
EGFおよびIGF−1のN末端のPEG化が、それぞれの増殖因子のレセプター結合能力を減少させるか否かの評価を、細胞培養アッセイによって実施する。PEG−EGFのアッセイについて、3T3繊維芽細胞を、EGFについて以前に記載される(Crouch,M.F.ら、(2001)J Cell Biol 152:263〜273)ように用いる。PEG−IGF−1のアッセイについて、チャイニーズハムスターの卵巣(「CHO」)細胞を、IGF−1について以前に記載された(Amoui,M.ら(2001)J Endocrinol 171:153〜162;Morris,A.E.ら(2000)Biotechnol Prog 16:693〜697)ように用いる。実施例3に記載するように調製したPEG−EGFおよびPEG−IGF−1の産物プールを、0.2ミクロン孔のCorningシリンジフィルターを通して濾過滅菌し、次いで細胞ベースのバイオアッセイで試験した。5kDa PEGおよび10kDa PEGを用いて合成した、濾過滅菌したEGFおよびモノ−PEG結合体の連続希釈を、最適な増殖に必要とされる血清よりも低い割合の血清を含有する培地中の3T3細胞の培養物へ添加した。この細胞を、標準的な条件(37℃、5%CO2/気体)下で培養し、一週間に数回の間隔でCoulterカウンター(Model Z1,Miami,FL)を用いて計数した。増殖因子を添加せずに観察した細胞数に比例して、細胞の数は、本発明のモノ−PEG結合体によって、非改変EGFによって増加する割合と、少なくとも同一の割合で増加する。同様に、IGF−1および非改変IGF−1の濾過滅菌したモノ−PEG結合体の連続希釈物を、最適な増殖に必要とされる血清よりも低い割合で血清を含有する培地中のCHO細胞の培養物へと添加し、そして細胞を、インキュベートし、EGF試験培養物について上に記載したように計数した。EGFおよびそのN末端のモノ−PEG結合体について観察したように、数日の後に観察した細胞数は、IGF−1のモノ−PEG結合体によって非改変増殖因子によって増加する割合と、少なくとも同一の割合で増加する。従って、EGFおよびIGF−1の両方は、レセプター結合領域から離れたアミノ末端残基にPEG結合しているタンパク質について予想したとおり、N−末端のペグ化の後完全に機能的であることが示される。
【0145】
(実施例5:「RN」レセプター−結合タンパク質クラスのメンバーおよび非メンバー)
図2、図3および図5〜図8は、そのレセプター結合領域に対するレセプター−結合タンパク質のインターフェロン−β、顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子(「GM−CSF」)、上皮細胞増殖因子(「EGF」)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(「bFGF」、また「FGF−2」として当該分野において公知)、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)およびインターフェロン−γ(「IFN−γ」)のリジン残基の表面分布を示し、ならびにこれらタンパク質は、「RN」サイトカインおよび増殖因子であることを示す。さらに、図2は、インターフェロン−βが、「RG」サイトカインであることを示す。
【0146】
図2は、インターフェロン−βの結合部位1および結合部位2の領域全体に分布したリジン残基を示す。それに対してポリペプチド鎖のアミノ末端は、そのタンパク質のレセプター結合領域から離れており、これはIFN−βが、RNサイトカインであることを示す(配列番号3を参照のこと)。
【0147】
図3は、GM−CSFのαレセプターに結合する結合部位1およびβレセプターに結合する結合部位2の領域全体に分布するリジン残基を示す。それに対してポリペプチド鎖のアミノ末端は、そのタンパク質のレセプター結合領域から離れており、これはGM−CSFが、RNサイトカインであることを示す(配列番号5を参照のこと)。
【0148】
図5は、上皮細胞増殖因子(「EGF」)のポリペプチド鎖に沿って分布したリジン残基を示し、これは、このタンパク質のレセプター結合領域中またはその付近のリジン残基を含む。それに対して、このポリペプチド鎖のアミノ末端は、このタンパク質のレセプター結合領域からより離れている(配列番号7を参照のこと)。
【0149】
図6は、レセプターまたはヘパリンに対する結合に関係する塩基性繊維芽細胞増殖因子(「bFGF」)のいくつかのリジン残基を示す。レセプターまたはヘパリンの両方は、bFGFによるシグナル伝達に必要である。(Schlessinger,J.ら、前出)。bFGFのアミノ末端は、bFGFのヘパリン−結合領域から離れており、bFGFをRN増殖因子にするためにレセプター結合部位から十分に離れ得る(配列番号8を参照のこと)。
【0150】
図7は、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)のいくつかのリジン残基が、ポリペプチドのレセプター結合領域内であるか、またはそれに隣接することを示す。それに対してIGF−1のアミノ末端は、レセプター結合ドメインから離れており、これはIGF−1が、RN増殖因子であることを示す(配列番号9を参照のこと)。
【0151】
図8は、インターフェロン−γ(「IFN−γ」)が、二つのポリペプチド鎖が、広範な相互作用を有する二量体として存在することを示す。各ポリペプチドのいくつかのリジン残基は、レセプターに対する結合に関係しているIFN−γのアミノ酸残基に隣接するか、または二量体化境界にある。アミノ酸残基Gln−1の「球および棒(ball−and−stick)」型は、このN−末端残基の機能的重要性についての証拠を示すことを意図する。(この図が基づく結晶構造は、天然のタンパク質には存在しない「Met0」と標識した包含される付加的なメチオニン残基を含む。)(配列番号4を参照のこと)IFN−γのN−末端残基が、二量体化境界面から離れているために、N−末端のPEG化は、IFN−γのホモ二量体化におけるリジンのPEG化の抑制効果を回避し得る。一方、そのレセプターとの二量体の相互作用は、特にポリマーの長い鎖が、結合される場合、おそらくアミノ末端へのポリマーのカップリングによって阻害される。
【0152】
IFN−γ、IL−10および幹細胞因子は、ホモ二量体として機能するサイトカインの例である(Walter,M.R.ら、前出;Josephson,K.ら、(2000)J Biol Chem 275:13552−13557;Thiel,D.J.ら、前出;McNiece,I.K.ら、前出)。レセプター結合タンパク質の二量体化は、そのN−末端のモノPEG化結合体の特徴づけに対する特有の問題点を示す。それは、異なる可能な分子構造は、類似のまたは同一の大きさおよび形状を有する結合体の調製に存在し得るためである。例えば、一つのジPEG化単量体および一つの非PEG化単量体から成る二量体(PEG2−タンパク質1+タンパク質1)は、二量体の結合体の最大の大きさに基づく分析(例えば、サイズ−排除クロマトグラフィーまたは沈殿係数、光散乱計数もしくは拡散係数の評価)によって二つのN−末端PEG化単量体(PEG1−タンパク質1)2から成る二量体と区別することは困難であるかまたは不可能であるが、タンパク質単量体あたり平均1PEGをそれぞれ含有するこれら二つの結合体のレセプター結合能力は、全く異なり得る。
【0153】
ホモ三量体(例えば、腫瘍壊死因子α(「TNF−α」))を形成する長鎖βシートレセプター結合タンパク質について、PEG3−タンパク質3三量体のアイソマーの数は、ホモ二量体として溶液中に生じるレセプター結合タンパク質についての数よりもさらに多い。アミノ末端に近接するTNFの化学的改変が、このサイトカインを非活性化することを示しているため(Utsumi,T.ら、(1992)Mol Immunol 29:77−81)、TNF−αは、試薬を用いてPEG化した場合、およびN−末端残基について選択的である条件化において、実質的な活性を保持しなくてもよい。それでもなお、Apo2L/TRAILのようなTNF−αアンタゴニスト(Hymowitz,S.G.ら(2000),Biochemistry 39:633−640)は、本発明を用いるPEG化に適している。
【0154】
オリゴマーとして機能するサイトカインの結合体の特徴付けのために、分析方法の併用を、必要とする。アミノ末端配列分析は、遊離N−末端αアミノ基を有する単量体の存在を検出し得、そして解離単量体の電気泳動分析(例えば、SDS−PAGEまたはキャピラリー電気泳動)は、レセプター結合タンパク質の非PEG化単量体よび複数のPEG化単量体の存在を示し得る。このような証拠がない場合、このようなホモ二量体形成タンパク質およびホモ三量体形成タンパク質のようなモノPEG化結合体の合成が、明白に示され得る。
【0155】
これらの例は、特に図1〜8に図のモノペグ化結合体の合成を用いて例証するように、これらの生物学活性構成要素のレセプター結合ドメイン内またはこのドメインに隣接するレセプター結合タンパク質のPEG化によるタンパク質−レセプター相互作用の立体障害の潜在的な役割を理解するために簡単に可視化した基本を提供する。高度に伸長しかつ可撓性のあるPEG鎖(図1dを参照のこと)によって占められる大きな体積はまた、PEGが、単量体間の相互作用のために必要とされることが報告されている領域内に結合している場合、機能的ホモ二量体または機能的ホモ三量体への特定のレセプター結合タンパク質の単量体の結合を立体的に妨げた。従って、レセプター結合タンパク質のレセプター結合領域から離れている部位に対するPEG化の標的化は、PEG化が、分子間相互作用の機能に必要とされる分子間相互作用に干渉する可能性を減少させる。本発明の方法による処置によって、レセプター結合タンパク質のPEG化から予期されるさらなる利点を、実現し得る。生じた結合体は、改善した溶解性、増加したバイオアベイラビリティー、より大きな安定性および減少した免疫原性の予期される利点を予想外に高い生物活性の保持と結びつける。
【0156】
本発明は、特定の実施形態およびその特定の実施例を参照して記載される。本発明の方法は、特定のレセプター結合ペプチド、ならびにサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモン以外のタンパク質、またはこれらのアンタゴニストならびに他の結合試薬に対して同様に適用可能である。従って、本発明の範囲は、記載した実施形態に限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。当業者は、他の実施形態が、本発明の範囲を逸脱することなく実施され得ることを容易に理解し得る。全てのこのような変化は、本発明の一部であると考えられる。
【0157】
本明細書中で言及した全ての出版物、特許および特許出願は、本発明の属する分野における当業者の技術のレベルを示し、それぞれの個々の出版物、特許または特許出願が、具体的にかつ個々に参考として援用されるように示されるのと同一程度まで参考として本明細書中に援用される。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、タンパク質生化学、ならびに薬科学および医科学の分野にある。特に、本発明は、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)およびその誘導体)と特定の生物活性成分との間の結合体の産生のための方法を提供し、ここで、この結合体は、標準的なポリマー−生物活性成分の結合体と比較して増加したレセプター結合活性を有する。より具体的には、本発明は、異常に高いレセプター結合活性を有する特定のレセプター結合タンパク質のポリマー結合体の産生のための方法を提供する。本発明はまた、このような方法により産生された結合体、このような結合体を含む組成物、このような結合体および組成物を含むキット、そして、種々の医学的および獣医学的状態の予防、診断および処置における結合体および組成物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
以下の関連技術の説明は、本発明自体ではなく、関連技術における、本発明者の解釈を含む。サイトカインは、内分泌、パラクリンまたはオートクライン様式において、細胞の生存、増殖、分化および/またはエフェクター機能を制御する、分泌調節タンパク質である(Nicola,N.A.(1994)Guidebook to Cytokines and Their Receptors,Nicola,N.A.,編、pp.1−7,Oxford University Press,New Yorkにおいて総説される)。ケモカインは、強力な白血球活性化および/または化学走性活性を有する、構造的に関連した糖タンパク質のファミリーである(Oppenheim,J.J.,ら(1997)Clin Cancer Res 3:2682−2686において総説されている)。これらの密接な関係性と同様に、ポリペプチドホルモンと増殖因子、サイトカインとケモカインは、その標的細胞の表面上の特定のレセプタータンパク質に結合することによって、その調節性機能を開始する(Kossiakoff,A.A.,ら(1998)Adv Protein Chem 52:67−108;Onuffer,J.J.,ら(2002)Trends Pharmacol Sci 23:459−467において総説されている)。これらの能力、特異性、小さなサイズおよび組換え生物体における産生の相対的容易さに起因して、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンは、治療剤として多くの潜在的な用途を有する。
【0003】
2つの重要な因子が、特に、サイトカインのそして、一般には、組換えタンパク質の治療剤としての開発を妨害する−循環におけるこれらの一般に短い半減期、ならびにこれらの潜在的な抗原性および免疫原性。本明細書中、および一般に当該分野で用いられる場合、用語「抗原性」とは、分子が既存の抗体に結合する能力を言い、一方で、用語「免疫原性」とは、分子が、インビボで免疫応答を惹起する能力を言い、その応答は、抗体の形成(「体液性応答」)または細胞性免疫応答の刺激のいずれかを含む。
【0004】
組換え治療用タンパク質の投与について、最も高い循環活性を達成し、そして、バイオアベイラビリティおよび分解の問題を最小限にするために静脈内(i.v.)投与がしばしば望まれる。しかし、i.v.投与後の小さなタンパク質の半減期は、通常、非常に短い(例えば、Mordenti,J.,ら(1991)Pharm Res 8:1351−1359;Kuwabara,T.,ら(1995)Pharm Res 12:1466−1469を参照のこと)。約36オングストロームのStokes半径および約66,000ダルトン(66kDa)の分子量を有する、血清アルブミンの水力学的半径を超える半径を有するタンパク質は、一般に、健常な腎臓により血流に保持される。しかし、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターフェロン−α(「IFN−α」)およびインターフェロン−γ(「IFN−γ」)のようなサイトカインを含むより小さなタンパク質は、糸球体濾過により血流から迅速に除去される(Brenner,B.M.,ら(1978)Am J Physiol 234:F455−F460;Venkatachalam,M.A.ら(1978)Circ Res 43:337−347;Wilson,G.,(1979)J Gen Physiol 74:495−509;Knauf,M.J.,ら(1988)J Biol Chem 263:15064−15070;Kita,Y.,ら(1990)Drug Des Deliv 6:157−167;Rostaing,L.,ら(1998),J Am Soc Nephrol 9:2344−2348)。結果として、循環中の治療的有効濃度の小さな組換えタンパク質の維持は、注射後に問題となる。従って、より高い濃度のこのようなタンパク質、およびより高頻度での注射が、代表的に投与されなければならない。得られる用量レジメンは、治療費を増加させ、患者のコンプライアンスの可能性を減少させ、そして、有害な事象(例えば、免疫反応)の危険性を増加させる。細胞性免疫応答および体液性免疫応答の両方が、有効用量の投与を不可能にし得るか、または、クリアランスの加速、効力の中和およびアナフィラキシーを含む、治療を制限する事象をもたらし得る程度まで、注射された組換えタンパク質の循環濃度を減少し得る(Ragnhammar,P.,ら(1994)Blood 84:4078−4087;Wadhwa,M.,ら(1999)Clin Cancer Res 5:1353−1361;Hjelm Skog,A.−L.,ら(2001)Clin Cancer Res 7:1163−1170;Li,J.,ら(2001)Blood 98:3241−3248;Basser,R.L.,ら(2002)Blood 99:2599−2602;Schellekens,H.,(2002)Clin Ther 24:1720−1740)。
【0005】
ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)の共有結合による組換えタンパク質の改変は、上で議論した欠点に取り組む手段として広範に調査されている(Sherman,M.R.,ら(1997)Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications,Harris,J.M.,ら編、pp.155−169,American Chemical Society,Washington,D.C.;Roberts,M.J.,ら(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:459−476において総説されている)。PEGのタンパク質への結合は、インビボにおいてタンパク質を安定化させ、そのバイオアベイラビリティを改善し、そして/またはその免疫原性を低下させることが示されている(PEGのタンパク質もしくは他の物質への共有結合は、本明細書中で、そして、当該分野で公知であるように、「PEG化」と呼ばれる)。さらに、PEG化は、タンパク質の水力学的半径を有意に増加させ得る。サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのように小さなタンパク質が、単一のPEGの長鎖(例えば、少なくとも約18kDaの分子量を有する)に結合される場合、得られる結合体は、血清アルブミンの水力学的半径を超えない半径を有し、腎糸球体を介する循環からのそのクリアランスを劇的に遅延させる。PEG化の組み合わせ効果−タンパク質溶解の減少、免疫認識の減少および腎クリアランス速度の減少−は、PEG化されたタンパク質に、治療剤としてかなりの利点を与える。
【0006】
1970年代から、ポリマーの共有結合を使用して、薬学的用途のための種々のタンパク質の安全性および性能を改善する試みがなされている(例えば、Davis,F.F.,ら、米国特許第4,179,337号を参照のこと)。いくつかの例としては、重症複合免疫不全疾患の処置における使用のためのPEGまたはポリ(エチレンオキシド)(「PEO」)のアデノシンデアミナーゼ(EC 3.5.4.4)へのカップリング(Davis,S.,ら(1981)Clin Exp Immunol 46:649−652;Hershfield,M.S.,ら(1987)N Engl J Med 316:589−596)、炎症性状態の処置のためのスーパーオキシドジスムターゼ(EC 1.15.1.1)へのカップリング(Saifer,M.,ら、米国特許第5,006,333号および同第5,080,891号)、ならびに血液および尿からの過剰の尿酸の排除のための尿酸オキシダーゼ(EC 1.7.3.3)へのカップリング(Kelly,S.J.,ら(2001)J Am Soc Nephrol 12:1001−1009;Williams,L.D.,ら、PCT公開番号WO 00/07629 A2およびA3ならびに米国特許第6,576,235号;Sherman,M.R.,ら、PCT公開番号WO 01/59078 A2)が挙げられる。
【0007】
PEOおよびPEGは、共有結合されたエチレンオキシド単位から構成されるポリマーである。これらのポリマーは、以下の一般構造を有する:
R1−(OCH2CH2)n−R2
ここで、R2はヒドロキシル基(またはその反応性誘導体)であり得、そして、R1は、ジヒドロキシPEG(「PEGジオール」)においては水素、モノメトキシPEG(「mPEG」)においてはメチル基、または、例えば、イソプロポキシPEGもしくはt−ブトキシPEGにおいては別の低級アルキル基であり得る。PEGの一般構造におけるパラメーターnは、ポリマー中のエチレンオキシド単位の数を示し、そして、本明細書中、および当該分野において、「重合の程度」と呼ばれる。同じ一般構造のポリマー(R1はC1〜7アルキル基である)はまた、オキシラン誘導体と称されている(Yasukohchi,T.,ら、米国特許第6,455,639号)。PEGおよびPEOは、直鎖であっても分枝であっても(Fuke,I.,ら(1994)J Control Release 30:27−34)、星型の形状であってもよい(Merrill,E.W.,(1993)J Biomater Sci Polym Ed 5:1−11)。PEGおよびPEOは、両親媒性であり、すなわち、これらは、水および特定の有機溶媒に可溶性であり、かつ、これらは、脂質含有物質(被膜ウイルス、ならびに動物細胞および細菌細胞の膜が挙げられる)に接着し得る。エチレンオキシド(OCH2CH2)およびプロピレンオキシドの、特定のランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーもしくは交互性コポリマーは、以下の構造を有し:
【0008】
【化1】
これらのポリマーが、特定の用途においてPEGについての適切な代替品であると考えられるのに十分な、PEGの特性と類似の特性を有する(例えば、Hiratani,H.,米国特許第4,609,546号およびSaifer,M.,ら、米国特許第5,283,317号を参照のこと)。用語「ポリアルキレンオキシド」および略語「PAO」は、本明細書中で、このようなコポリマー、ならびに、PEGもしくはPEOおよびポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)コポリマーを指すために、本明細書中で使用される(Pitt,C.G.,ら、米国特許第5,476,653号)。本明細書中で使用される場合、用語「ポリアルキレングリコール」および略語「PAG」は、本発明の結合体における用途に適切なポリマー、具体的には、PEG、より具体的には、単一の反応基を含有するPEG(「単官能基の活性型PEG」)を一般的に指すために使用される。
【0009】
PEGもしくは他のポリアルキレンオキシドのタンパク質への共有結合は、ポリマーの少なくとも1つの端基の反応性官能基内への変換を必要とする。このプロセスは、しばしば「活性化」と呼ばれ、そして、この生成物は、「活性型PEG」もしくは活性型ポリアルキレンオキシドと呼ばれる。モノメトキシPEG((「メトキシル基」を生じるために)1端における酸素が、不活性の化学的に安定なメチル基でキャッピングされており、他の端が、タンパク質分子のアミノ基に対して反応性である官能基でキャッピングされている)が、このような用途に最も一般的に使用される。いわゆる「分枝の」mPEG(単一の活性型官能基から離れて2つ以上のメトキシル基を含む)は、あまり一般的には使用されない。分枝PEGの例は、ジ−mPEG−リジンであり、ここで、PEGは、両方のアミノ基に結合し、リジンのカルボキシル基が、最もしばしば、N−ヒドロキシスクシンイミドを用いるエステル化によって活性化される(Martinez,A.,ら、米国特許第5,643,575号;Greenwald,R.B.,ら、米国特許第5,919,455号;Harris,J.M.,ら、米国特許第5,932,462号)。
【0010】
通常、活性型ポリマーは、結合部位として機能する求核性官能基を有する生物活性化合物と反応する。通常結合部位として使用される1つの求核性官能基は、リジン残基のεアミノ基である。溶媒アクセス可能なα−アミノ基、カルボン酸基、グアニジノ基、イミダゾール基、適切に活性化されたカルボニル基、酸化された炭化水素部分、およびチオール基がまた、結合部位として使用されている。
【0011】
PEGのヒドロキシル基は、そのタンパク質への結合の前に、塩化シアヌルを用いて活性化される(Abuchowski,A.,ら(1977)J Biol Chem 252:3582−3586;Abuchowski,A.,ら(1981)Cancer Treat Rep 65:1077−1081)。しかし、この方法の使用は、塩化シアヌルの毒性およびアミン以外の官能基を有するタンパク質に対する非特異的な反応性、ならびに、機能に必須であり得る、溶媒アクセス可能なシステイン残基もしくはチロシン残基のような不利益を有する。これらおよび他の不利益を克服するために、PEGのコハク酸スクシンイミジル誘導体(「SS−PEG」)(Abuchowski,A.,ら(1984)Cancer Biochem Biophys 7:175−186)、PAGの炭酸スクシンイミジル誘導体(「SC−PAG」)(Saifer,M.,ら、米国特許第5,006,333号)、およびPEGのアルデヒド誘導体(Royer,G.P.,米国特許第4,002,531号)のような代替的な活性型PEGが導入されている。
【0012】
通常、1つ以上のPAG(例えば、約5kDa〜約10kDaの分子量を有する1つ以上のPEG)のいくつか(例えば、5〜10個)の鎖は、第1級アミノ基(リジン残基のεアミノ基、そして、可能であれば、アミノ末端(「N−末端」)アミノ酸のαアミノ基)を介して標的タンパク質に結合される。より近年、高分子量(例えば、12kDa、20kDaもしくは30kDa)のmPEGの単鎖を含む結合体が合成されている。結合体の血漿半減期と、分子量の増加および/またはカップリングされたPEGの鎖数の増加との間に、直接的な相関性が示されている(Knauf,M.J.,ら、前出;Katre,N.V.(1990)J Immunol 144:209−213;Clark,R.,ら(1996)J Biol Chem 271:21969−21977;Leong,S.R.,ら(2001)Cytokine 16:106−119)。一方で、タンパク質の各分子にカップリングされるPEGの鎖数が増加するにつれ、タンパク質の不可欠な領域のアミノ基が改変され、従って、特に、レセプター結合タンパク質の場合、このタンパク質の生物学的機能が損なわれる可能性が増加する。多くのアミノ基を含むより大きなタンパク質について、そして、低分子量の基質を有する酵素について、作用期間の増加と、比活性の減少との間の交換(tradeoff)は、受容可能であり得る。なぜならば、これらは、最終的にインビボにおいてPEG含有結合体の生物学的活性の増加を生じるからである。しかし、細胞表面レセプターとの相互作用を介して機能するより小さなタンパク質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモン)については、比較的高い程度の置換が、血流における半減期の延長という利点をなくす程度まで、機能的活性を減少させると報告されている(Clark,R.,ら、前出)。
【0013】
従って、ポリマー結合体化は、酵素のような治療用タンパク質の生物活性を延長し、そして、免疫反応性を減少させるための、十分に確立された技術である(例えば、米国仮出願番号60/436,020(2002年12月26日出願)、ならびに米国仮出願番号60/479,913および同60/479,914(両方とも、2003年6月20日出願)(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。しかし、細胞表面レセプターに特異的に結合することによって機能するレセプター結合タンパク質へのポリマーの結合体化は、通常:1)このような結合と干渉し;2)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのアゴニストのシグナル伝達効力を顕著に消失し;そして3)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのアンタゴニストの競合的効力を顕著に消失する。レセプター結合活性が消失したこのような結合体の刊行された例としては、とりわけ、ヒト成長ホルモン(「hGH」)(Clark,R.,ら、前出);hGHアンタゴニスト(Ross,R.J.M.,ら(2001)J Clin Endocrinol Metab 86:1716−1723;IFN−α(Bailon,P.,ら(2001)Bioconjug Chem 12:195−202;Wylie,D.C.,ら(2001)Pharm Res 18:1354−1360;Wang,Y.−S.,ら(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:547−570)およびG−CSF(Kinstler,O.,ら、PCT公開番号WO 96/11953;Bowen,S.,ら(1999)Exp Hematol 27:425−432)が挙げられる。極端な場合、インターロイキン−15(「IL−15」)へのポリマーのカップリングは、このIL−2様増殖因子を、細胞増殖のインヒビターに変換した(Pettit,D.K.,ら(1997)J Biol Chem 272:2312−2318)。理論に束縛されることは意図しないが、このような所望でないPEG化の効果についての機構は、かさ高いPEG基によるレセプター相互作用の立体障害、電荷の中性化もしくはこの両方を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、実質的な生物活性(例えば、少なくとも約40%)、ほとんど完全な生物活性(例えば、少なくとも約80%)または本質的に完全な生物活性(例えば、少なくとも約90%)を保存した、PEG含有(例えば、PEG含有および/またはPEO含有)結合体、特に、このような水溶性ポリマーとレセプター結合タンパク質との間の結合体を産生するための方法に対する必要性が存在する。このような結合体は、インビボにおける溶解性、安定性、半減期およびバイオアベイラビリティが増加したポリマー成分により提供される利益を有し、かつ、この結合体が、予防、治療もしくは診断の目的で導入された動物において、従来のポリマー結合体と比較して、実質的に増加した効力もしくは有用性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、上で同定された必要性に取り組み、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)およびその誘導体)の生物活性成分(特に、レセプター結合タンパク質(特に、サイトカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモンおよびポリペプチド増殖因子のような治療用もしくは診断用生物活性成分))との結合体の調製のための方法を提供し、このようなサイトカインとしては、インターフェロン−β、そしてより具体的には、インターフェロン−β−1bが挙げられる。本発明はまた、このような方法により産生される結合体を提供する。対応する結合体化していない生物活性成分と比較して、本発明の結合体は、安定性が増加している(すなわち、インビボにおいてより長い保存性およびより長い半減期を有する)。さらに、ポリペプチド鎖に沿って、溶媒アクセス可能な部位にランダムに結合されるポリマー鎖との同じ生物活性成分の結合体と比較して、本発明の結合体は、インビトロで測定もしくは採用され得るレセプター結合活性が増加しており、かつ、インビボにおいて効力が増加している。本発明はまた、産業的な細胞培養における用途のためのこのような改善された結合体を提供する。さらに、本発明は、このような結合体を含む組成物、このような結合体および組成物を含むキット、ならびに、種々の予防レジメン、診断レジメンおよび治療レジメンにおける、この結合体および組成物の使用方法を提供する。
【0016】
1つの実施形態において、本発明は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンのレセプター結合能力を保存するための方法を提供し、この方法は、1つ以上の合成水溶性ポリマーを、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストのアミノ末端のアミノ酸に選択的にカップリングする工程を包含し、ここで、アミノ末端のアミノ酸は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストの1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて位置している。関連する実施形態において、本発明は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストのレセプター結合能力を保存するための方法を提供し、この方法は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストの1つ以上のグリコシル化部位において、もしくはその付近に、1つ以上の合成水溶性ポリマーを選択的にカップリングする工程を包含し、ここで、1つ以上のグリコシル化部位は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンの1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて位置している。
【0017】
本発明のこれらの方法における用途に適切なポリマーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:1つ以上のポリアルキレングリコール(1つ以上のポリ(エチレングリコール)、1つ以上のモノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)および1つ以上のポリ(エチレングリコール)、1つ以上のモノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)および1つ以上のモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)が挙げられるがこれらに限定されない)、1つ以上のポリアルキレンオキシド、1つ以上のポリオキシラン、1つ以上のポリオレフィンアルコール(例えば、ポリビニルアルコール)、1つ以上のポリカルボキシレート、1つ以上のポリ(ビニルピロリドン)、1つ以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、1つ以上のポリ(アミノ酸)、1つ以上のポリアクリロイル−モルホリン、1つ以上のアミドと1つ以上のアルキレンオキシドとの1つ以上のコポリマー、1つ以上のデキストランおよび1つ以上のヒアルロン酸。本発明の方法における用途に適切なポリマーは、代表的に、約1kDaと約100kDaとの間(端を含めて)、より具体的には、約1kDaと約5kDaとの間(端を含めて);約10kDaと約20kDaとの間(端を含めて);約18kDaと約60kDaとの間(端を含めて);約12kDaと約30kDaとの間(端を含めて);または約10kDa、約20kDaもしくは約30kDaの分子量を有する。
【0018】
その特異的な細胞表面レセプターにより媒介される、対応するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンの生物学的効果を模倣(すなわち、アゴナイズする)もしくは拮抗する、種々のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンは、本発明の結合体の調製における用途に適切である。これらとしては、4つのヘリックス束構造を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン(顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病抑制因子(LIF)、エリスロポイエチン(Epo)、トロンボポイエチン(Tpo)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)(IFN−β−1bが挙げられる)、コンセンサスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモンならびにそのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体が挙げられるがこれらに限定されない)、β−シートもしくはβ−バレル構造を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン(腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮増殖因子(EGF)、インシュリン様増殖因子−1(IGF−1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにそのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体が挙げられるがこれらに限定されない);混合型α/β構造を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン(好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質性細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学遊走タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄球前駆体阻害因子−1(MPIF−1)。ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)およびGRO/黒色腫成長刺激活性(GRO−α/MGSA)、ならびにそのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられる。本発明における用途に適切なポリペプチドホルモンとしては、インシュリン、およびインシュリンレセプターにより媒介されるインシュリンの生物学的効果を模倣もしくはアンタゴナイズするインシュリンアナログ;プララクチン、およびプロラクチンレセプターにより媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣もしくはアンタゴナイズするプロラクチンアナログ;ならびに、成長ホルモン(特にヒト成長ホルモン)、および成長ホルモンレセプターにより媒介される成長ホルモンの生物学的効果を模倣もしくはアンタゴナイズする成長ホルモンアナログが挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
本発明に従う用途に適切な特に好ましいサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンとしては、IL−2;IL−10;IFN−α;IFN−β(IFN−β−1bが挙げられる);TNF−α;IGF−1;EGF;bFGF;hGH;プロラクチン;およびインシュリンが挙げられる。また、用途に特に適切なのは、上記のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンの競合的アンタゴニスト(例えば、TNF−α、hGHもしくはプロラクチンのアンタゴニスト)、ならびにこれらのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのムテイン、改変体および誘導体である。
【0020】
特定の実施形態において、その1以上のポリマーは、(特に、第二級アミン結合を介して)、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン上のアミノ末端のアミノ酸のαアミノ基に共有結合される。他の実施形態において、その1以上のポリマーは、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのアミノ末端のアミノ酸の化学的に反応性の側鎖基(例えば、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、イミダゾール基、アミノ基、カルボキシル基、またはアルデヒド誘導体)に共有結合される。さらなる実施形態において、アミノ末端のアミノ酸での、または1以上のグリコシル化部位でのもしくはその付近での、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンへのそのポリマーの結合は、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのグリコシル化の有益な効果を模倣する。関連する実施形態において、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン上のアミノ末端のアミノ酸での、または1以上のグリコシル化部位でのもしくはその付近での、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンへのそのポリマーの結合は、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの過剰グリコシル化の有益な効果を模倣し、ここで「過剰グリコシル化」とは、ネイティブな構造に存在する単純な炭水化物部分もしくは複雑な炭水化物部分の共有結合に加えて、単純な炭水化物部分もしくは複雑な炭水化物部分の共有結合を示す。
【0021】
本発明はまた、本発明の方法によって生成される結合体を提供する。本発明の結合体は、1以上の合成水溶性ポリマー(例えば、上記のもの)に結合された、選択されたサイトカイン、選択されたケモカイン、選択された増殖因子、選択されたポリペプチドホルモンまたは選択されたそれらのアンタゴニスト(例えば、上記のもの)を包含する。ここでその1以上のポリマーは、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのアミノ末端のアミノ酸に連結され、そのアミノ末端のアミノ酸は、その選択されたサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの1以上のレセプター結合ドメインから離れて位置する。さらに、本発明の結合体は、1以上の合成水溶性ポリマー(例えば、上記のもの)に結合された、選択されたサイトカイン、選択されたケモカイン、選択された増殖因子または選択されたポリペプチドホルモン、またはそれらの選択されたアンタゴニスト(例えば、上記のもの)を包含する。ここでその選択されたサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン、またはそれらのアンタゴニストの1以上のグリコシル化部位に結合されたその1以上のポリマーは、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン、またはそれらのアンタゴニストの1以上のレセプター結合ドメインから離れて位置する。本発明のアゴニストのポリマー結合体については、ポリマー結合の部位がそのレセプター結合ドメインの全てから離れていることが好ましい。本発明の特定の化合物のポリマー結合体については、ポリマー結合の部位が、結合が生じるのに必須の特定のレセプター結合ドメインから離れていることが好ましいが、アゴニストによるシグナル伝達に必須のレセプター結合ドメインの全てから必ずしも離れていなくてもよい。本発明はまた、1以上の本発明の結合体および1以上のさらなる成分(例えば、1以上の薬学的に受容可能な希釈剤、賦形剤もしくはキャリア)を含む、組成物、特に薬学的組成物を提供する。本発明はまた、1以上の本発明の結合体、組成物、および/または薬学的組成物を含むキットを提供する。
【0022】
本発明はまた、身体的障害(physical disorder)に罹患しているか、またはその肉体的障害に罹りやすい動物(例えば、ヒトのような哺乳動物)における肉体的障害を予防、診断または処置する方法を提供する。このような方法は、例えば、本発明の1以上の結合体、組成物または薬学的組成物の有効量をその動物に投与する工程を包含し得る。このような本発明の方法に従って適切に処置または予防される肉体的障害としては、癌(例えば、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、胃腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、骨の癌、神経学的癌、頭部および頸部の癌、皮膚癌、肉腫、腺腫、癌腫および骨髄腫);感染性疾患(例えば、細菌性疾患、真菌性疾患、寄生生物性疾患およびウイルス性疾患(例えば、ウイルス性肝炎、心臓向性ウイルス(cardiotropic virus)により引き起こされる疾患);HIV/AIDS;など));ならびに遺伝性障害(例えば、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、小人症および重症複合免疫不全(「SCID」);自己免疫障害(例えば、乾癬、全身性エリテマトーデスおよび慢性関節リウマチ)ならびに神経変性障害(例えば、多発性硬化症、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルツハイマー病などの種々の形態および段階)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の他の好ましい実施形態は、本発明の以下の図面および説明、ならびに特許請求の範囲に鑑みて、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1〜8は、結晶学的データに基づいて、RasMolソフトウェア(Sayle,R.A.ら,(1995)Trends Biochem Sci 20:374−376)で作成される、種々のサイトカインおよび増殖因子の分子モデルを示す。これらのモデルの各々は、特に目的の特定の残基(これらは、「ボールとスティック」形式で示される)を除いて、「リボン」または「コンピューター画像プリントアウト(cartoon)」形式で示される。これらの形式は、RasMolソフトウェアを使用して選択される選択肢である。そのリボンの暗い部分は、それらのレセプターへの結合に関与すると報告されている、サイトカインおよび増殖因子のドメインを示す。各構造について、Protein Data Bank(「PDB」)における取得コードが示される(Laskowski,R.A.,(2001) Nucleic Acids Res 29:221−222;Peitsch,M.C.,(2002)Bioinformatics 18:934−938;Schein,C.H.,(2002)Curr Pharm Des 8:2113−2129を参照のこと)。
【図1a】図1aは、インターフェロン−α−2a(配列番号1)のモデルを示し、このモデルにおいて、RocheのPEG−インターフェロン製品(PEGASYS(登録商標))におけるPEG化の主な部位であると報告されているその4つのリジン残基(Lys31、Lys121、Lys131およびLys134)は、「ボールとスティック」形式で示される(Bailon,P.ら,前出のデータに基づく)。そのレセプターへの結合に関与する領域(「結合部位1および結合部位2」)が同定される。PEGASYSにおいてPEG化されていると報告されたそのリジン残基の4つ全ては、結合部位1の領域に存在する。(PDBコード1ITF)。
【図1b】図1bは、インターフェロン−α−2b(配列番号2)のモデルを示し、このモデルにおいて、Schering−PloughのPEG−INTRON(登録商標)におけるPEG化の主な部位であると報告されている残基(His34、Lys31、Lys121、Tyr129およびLys131)は、「ボールとスティック」形式で示される(Wylie,D.C.ら,前出のデータに基づく)。これらのアミノ酸残基は、結合部位1の領域に存在する。
【図1c】図1cは、インターフェロン−α−2bのモデルを示し、このモデルにおいて、そのアミノ末端のシステイン残基(「Cys1」)(本発明に従うPEG化の標的)は、「ボールとスティック」形式で示される。Cys1は、結合部位1および結合部位2から離れている。
【図1d】図1dは、インターフェロン−α−2bの、図1cに示されるモデルと同じモデルを示す。図1cのモデルに対して、20kDa PEGの一本鎖が、そのN末端システイン残基(「Cys1」)において結合されている。PEGの構造を、Lee,L.S.ら,((1999)Bioconjug Chem 10:973−981)によって記載されるプログラムの適合を用いて生成した。その構造は、そのタンパク質と同じスケールにされる。
【図2】図2は、ヒトインターフェロン−β−1a(配列番号3)の分子モデルを示し、このモデルにおいて、そのレセプター結合ドメイン内に存在するかまたはそのレセプター結合ドメインに隣接するいくつかのリジン残基(Lys19、Lys33、Lys99およびLys134)が、示される。さらに、そのグリコシル化部位(Asn80)およびそのN末端メチオニン残基(「Met1」)は、(Karpusas,M.ら,(1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:11813−11818;Karpusas,M.ら,(1998)Cell Mol Life Sci 54:1203−1216;Runkel,L.ら,(2000)Biochemistry 39:2538−2551のデータに基づいて)「ボールとスティック」形式で示される。Met1は、結合部位1および結合部位2から離れているのに対して、いくつかのリジン残基は、そのレセプター結合ドメイン内に位置する。(PDBコード1AUI)。インターフェロン−β−1bの構造は、N末端メチオニン残基および炭水化物部分を欠き、対形成しないシステイン残基(Cys17)で置換されるセリン残基を有することにおいて、インターフェロン−β−1aの構造とは異なる。
【図3】図3は、ヒト顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」;配列番号5)の分子モデルを示し、このモデルにおいて、そのレセプター結合ドメイン内に存在する3つのリジン残基(Lys72、Lys107およびLys111)および結晶構造において可視化されるそのアミノ末端近くにある最初のアミノ酸残基(「Arg4」)は、(Rozwarski,D.A.ら,(1996)Proteins 26:304−313のデータに基づいて)「ボールとスティック」形式で示される。GM−CSFのアミノ末端領域は、結合部位1および結合部位2から離れている。(PDBコード2GMF)。
【図4】図4は、ヒトインターロイキン−2(「IL−2」;配列番号6)の分子モデルを示し、このモデルにおいて、3つのレセプター(α、βおよびγ)の各々に関与すると報告されているアミノ酸残基は、そのレセプター結合ドメイン内またはその近くに存在するいくつかのリジン残基と同様に、「ボールとスティック」形式で示される。その結晶構造において可視化されるアミノ末端に最も近いアミノ酸残基は、セリン6(「Ser6」)である。このセリン6は、(Bamborough,P.ら,(1994)Structure 2:839−851;Pettit,D.K.ら,前出のデータに基づいて)そのレセプター結合ドメインから離れている。(PDBコード3INK)。
【図5】図5は、ヒト上皮増殖因子(「EGF」;配列番号7)の分子モデルを、レセプター結合に関連している残基およびレセプター結合領域に隣接している2つのリジン残基(Lys28およびLys48)を除いて、「コンピューター画像プリントアウト」形式で示す。その鎖内ジスルフィド結合は、破線として示される。このモデルが基づく結晶構造において可視化されるアミノ末端に最も近いアミノ酸残基は、(Carpenter,G.ら,(1990)J Biol Chem 265:7709−7712;Lu,H.−S.ら,(2001)J Biol Chem 276:34913−34917に基づいて)システイン6(「Cys6」)である。結晶構造において可視化されていないそのEGFのアミノ末端の可撓性部分(残基1〜5)は、レセプター結合領域中に存在しないようである。(PDBコード1JL9)。
【図6】図6は、塩基性線維芽細胞増殖因子(「bFGF」;配列番号8)の分子モデルを、「コンピューター画像プリントアウト」形式で示し、この形式において、そのレセプターへ、およびヘパリンへの結合に関与する残基は、(Schlessinger,J.ら,(2000)Mol Cell 6:743−750のデータに基づいて)「ボールとスティック」形式で示すことによって同定される。そのアミノ末端からの最初の12個のアミノ酸残基は、レセプター結合に関与していない。(PDBコード1FQ9)。
【図7】図7は、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」;配列番号9)の分子モデルを、レセプター結合に関与する残基(23〜25および28〜37)、ならびに結晶構造において可視化されるアミノ末端に最も近いアミノ酸残基であるグルタミン酸残基3(「Glu3」)を除いて、「コンピューター画像プリントアウト」形式で示す。そのリジン残基のうちの2つが同定され、(Brzozowski,A.M.ら,(2002)Biochemistry 41:9389−9397のデータに基づいて)そのうちの一方(Lys27)は、レセプター結合ドメインに隣接し、その他方は、レセプター結合ドメインから離れている。IGF−1のアミノ末端は、そのレセプター結合ドメインから離れている。(PDBコード1GZR)。
【図8】図8は、インターフェロン−γ(「IFN−γ」;配列番号4)の分子モデルを示し、これは、ホモダイマーである。その2つのポリペプチド鎖の間の相互作用を明らかにするために、そのモノマーのうちの一方(「鎖A」)を、「リボン」形式で示し、他方(「鎖B」)を、「骨格」形式で示す。リジン残基(明色の「ボールとスティック」形式で示される)は、ポリペプチド鎖(そのモノマー間の界面に含まれる領域を含む)に沿って存在するか、またはレセプター結合に関与するアミノ酸残基に隣接する。IFN−γのアミノ末端領域は、その二量体化界面から離れているが、グルタミン1(Gln1)は、レセプター結合に関与する(Thiel,D.J.ら,(2000)Structure 8 :927−936;PDBコード1FG9)。
【図9】図9は、IFN、20kDa mPEG−アルデヒドおよび還元剤を含む反応混合物のカチオン交換クロマトグラフィーによる、非PEG化インターフェロン−α−2b(「IFN」)、モノPEG化インターフェロン−α−2b(「PEG1−IFN」)およびジPEG化インターフェロン−α−2b(「PEG2−IFN」)の分画を示す。
【図10】図10は、図9に示されるように分画した反応混合物、および結果が図9に示されるイオン交換カラムから収集した、選択された画分のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
【図11】図11は、ヒトIL−2、20−kDa mPEG−アルデヒドおよび還元剤を含む反応混合物のカチオン交換クロマトグラフィーによる分画を示す。示された溶出条件下で、その残りの非PEG化IL−2は、図9に示されるインターフェロン−α−2bについての結果とは異なって、そのカラムから溶出しなかった。
【図12】図12は、図11に示されるように分画した反応混合物、およびそのカラムから溶出した、選択された画分のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
【図13】図13は、PEG化インターロイキン−2(「PEG−IL−2」)の反応混合物、およびそのクロマトグラムが図11に示されるカチオン交換カラムからの画分の電気泳動分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
別段規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料に類似するかまたはこれらに等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験に使用されうるが、好ましい方法および材料が、本明細書以降に記載される。
【0026】
(定義)
約:本明細書で使用されるように、任意の数値に言及する場合、用語「約」は、その示された値の±10%の値を意味する(例えば、「約50℃」とは、45℃〜55℃(両端の値を含む)の温度範囲を包含する;同様に、「約100mM」とは、90mM〜110mM(両端の値を含む)の濃度範囲を包含する)。
【0027】
アミノ酸残基:本明細書で使用されるように、用語「アミノ酸残基」とは、ポリペプチド骨格または側鎖中の2つのペプチド結合におけるその関与の結果として、しかしそのアミノ酸が、直鎖状ポリペプチド鎖の各々の端部に存在する場合、1つのペプチド結合に関与するときもまた、通常脱水される特定のアミノ酸をいう。そのアミノ酸残基は、当該分野で一般的な3文字表記または1文字表記によって言及される。
【0028】
アンタゴニスト:本明細書で使用される場合、用語「アンタゴニスト」とは、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンについてのレセプターを介して媒介される細胞、組織または生物に対する、その所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの生物学的効果および/または生理学的効果を減少させるか、実質的に減少させるか、あるいは完全に阻害する化合物、分子、部分または複合体をいう。アンタゴニストは、種々の様式でこのような効果を成し遂げうる。これらの効果としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:細胞表面上の結合部位またはレセプターについてのアゴニストと競合すること;そのアゴニストが細胞表面レセプターに結合する能力を減少するか、実質的に減少するかまたは阻害するような様式で、そのアゴニストと相互作用すること;その細胞表面レセプターに結合し、その細胞表面レセプターおけるコンホメーション変化を誘導し、その結果、その細胞表面レセプターが、そのアゴニストがもはや結合することができない(または減少したかまたは実質的に減少したアフィニティーおよび/もしくは効率でしか結合することができない)構造をとること;細胞、組織または生物における生理学的変化(例えば、細胞内シグナル伝達複合体を増加させる;転写インヒビターを増大させる;細胞表面リガンドレセプター発現の減少など)を誘導し、その結果、そのアゴニストの結合またはその細胞への結合の際に、そのアゴニストにより誘導された生理学的シグナルが、減少されるか、実質的に減少されるか、または完全に阻害されること;ならびにそのアンタゴニストがそれらの活性を成し遂げ得る、当業者に周知の他の機構。当業者に理解されるように、アンタゴニストは、拮抗するリガンドに類似の構造を有していてもよいし(例えば、そのアンタゴニストは、そのアゴニストのムテイン、改変体、フラグメントもしくは誘導体であり得る)、全く関連しない構造を有していてもよい。
【0029】
生物活性成分:本明細書中で使用される場合、用語「生物活性成分」とは、細胞、組織、器官または生物体において、インビボ、インビトロもしくはエキソビボで特定の生物学的活性を有し、そして一以上のポリアルキレングリコールに結合して本発明の結合体を形成し得る、化合物、分子、部分または複合体をいう。好ましい生物活性成分としては、タンパク質およびポリペプチド(例えば、本明細書に記載のタンパク質およびポリペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
結合:本明細書中で使用される場合、用語「結合」とは、共有結合性(例えば、化学的カップリング)であり得るかまたは非共有結合性(例えば、イオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合など)であり得る結合または付着をいう。共有結合は、例えば、エステル結合、エーテル結合、リン酸エステル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、アミン結合、ペプチド結合、イミド結合、ヒドラゾン結合、ヒドラジド結合、炭素−硫黄結合、炭素−リン結合などであり得る。用語「結合した」は、「カップリングした」、「結合体化した(conjugated)」および「付着した」のような用語よりも広義であり、そしてこれらを包含する。
【0031】
結合体/結合体化:本明細書中で使用される場合、「結合体(conjugate)」とは、ポリマー(例えば、PEGまたはPEO)の、生物活性成分(例えば、タンパク質または糖タンパク質)への共有結合性付着の生成物をいう。「結合体化(conjugation)」とは、前文で定義されるような結合体の形成をいう。当業者によって通常使用される、生物学的に活性な物質へポリマーを結合体化する任意の方法が、本発明において使用され得る。
【0032】
カップリングされた:本明細書中で使用される場合、用語「カップリングされた」とは、共有結合または強い非共有結合性相互作用による付着をいい、代表的におよび好ましくは、共有結合による付着をいう。当業者によって通常使用される、生物学的に活性な物質のカップリングのための任意の方法が、本発明において使用され得る。
【0033】
サイトカイン/ケモカイン:本明細書中で使用される場合、用語「サイトカイン」は、内分泌様式、傍分泌様式または自己分泌様式で、細胞の生存、増殖、分化および/またはエフェクター機能を制御する分泌性調節タンパク質として定義される(Nicola,N.A.,前出;Kossiakoff,A.A.ら,前出)。同様に、本明細書中で使用される場合、用語「ケモカイン」は、強力な白血球活性化活性および/または走化性活性を有する構造的に関連のある糖タンパク質のファミリーのメンバーとして定義される(Oppenheim,J.J.ら、前出において概説されている)。この定義によると、サイトカインおよびケモカインとしては、インターロイキン、コロニー刺激因子、増殖因子、および種々の細胞によって産生される他のペプチド因子が挙げられ、これらとしては、本明細書において具体的に開示または例示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの近縁物であるポリペプチドホルモンおよび増殖因子と同様に、サイトカインおよびケモカインは、それらの標的細胞の表面上の特異的レセプタータンパク質に結合することによって、それらの調節機能を開始する。
【0034】
疾患、障害、状態:本明細書中で使用される場合、用語「疾患」または「障害」とは、ヒトまたは動物のあらゆる有害な状態をいい、この有害な状態としては、腫瘍、癌、
アレルギー、嗜癖、自己免疫、感染、中毒または最適な精神もしくは身体機能の障害が挙げられる。本明細書中で使用される場合、「状態」は、疾患および障害を含むが、しかしまた生理学的状態も指す。例えば、受精能は、生理学的状態であるが、疾患でも障害でもない。したがって、受精能を減少させることによって妊娠を予防するのに適切な本発明の組成物は、状態(受精能)の処置として記載され、障害または疾患の処置としては記載されない。他の状態は、当業者によって理解される。
【0035】
有効量:本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、所望の生物学的効果を実現するのに必要または十分な、所定の結合体もしくは組成物の量をいう。本発明の所定の結合体もしくは組成物の有効量は、この選ばれた結果を達成する量であり、そしてこのような量は、当業者による慣習的な事項として、過度な実験の必要なしに、当該分野で公知のアッセイおよび/または本明細書において記載されるアッセイを用いて決定され得る。例えば、免疫系の欠損を処置するための有効量は、免疫系の活性化を引き起こし、抗原への曝露の際に抗原特異的免疫応答の発生をもたらすのに必要な量であり得る。この用語はまた、「十分な量」と同義である。任意の特定用途のための有効量は、処置される疾患または状態、投与される特定の組成物、投与経路、被験体の大きさ、および/または疾患もしくは状態の重症度のような因子に依存して変動し得る。当業者は、本発明の特定の結合体または組成物の有効量を、過度な実験の必要なしに、経験的に決定し得る。
【0036】
一つ(one、aまたはan):本開示において、用語「一つ(one、aまたはan)」が使用される場合、それらは、他に示されない限り、「少なくとも一つ」または「一つ以上」を意味する。
【0037】
PEG:本明細書中で使用される場合、「PEG」は、直鎖状であるか分枝状であるか多数の腕があるかにかかわらず、そして末端がキャップされているかヒドロキシル末端になっているかにかかわらず、全てのエチレンオキシドポリマーを含む。「PEG」は、ポリ(エチレングリコール)、メトキシポリ(エチレングリコール)もしくはmPEGのような当該分野で公知のポリマーを含むか、またはエチレンオキシドのポリマーについて当該分野で使用される名前の中でもとりわけ、ポリ(エチレングリコール)−モノメチルエーテル、アルコキシポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)もしくはPEO、α−メチル−ω−ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、およびポリオキシランを含む。
【0038】
PEG化、PEG化された、および偽PEG化された:本明細書中で使用される場合、「PEG化」とは、PEGの、生物活性標的分子(特にレセプター結合タンパク質)への共有結合によるカップリングのための任意のプロセスをいう。PEG化によって生成された結合体は、「PEG化された」と呼ばれる。本明細書中で使用される場合、「偽PEG化された」とは、PEG化反応混合物中の、PEGが共有結合になっていないタンパク質部分または他の生物活性成分をいう。それにもかかわらず、偽PEG化された生成物は、(例えば、PEG化の間での還元剤への曝露の結果として)還元的アルキル化によって、ならびに/または前述の加工工程および/もしくは精製工程の間に一つ以上阻害剤、化合物等を除去されることによって、反応の間またはその後の精製工程の間に変化され得る。
【0039】
ポリペプチド:本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」とは、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子をいう。これは、アミノ酸の分子鎖を示すが、特定の長さの生成物を言及しない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾(例えば、グリコシル化、過グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)の生成物に言及することを意図する。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来し得るか、または組み換え技術によって生成され得るが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。これは、化学合成を含む任意の様式で生成され得る。
【0040】
タンパク質および糖タンパク質:本明細書中で使用される場合、用語、タンパク質とは、一般的に約10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1,000以上、または2,000以上のアミノ酸のサイズのポリペプチドをいう。タンパク質は、一般的に、規定された3次元構造を有するが、それらは必ずしもこのような構造を有さず、そしてしばしば、ペプチドおよびポリペプチド(これらは、しばしば規定された3次元構造を有さないが、むしろより多くの異なる構造をとり得る)とは対照的に、折り畳まれていると称され、そして折り畳まれていないと称される。しかし、ペプチドもまた、規定された3次元構造を有し得る。本明細書中で使用される場合、用語、糖タンパク質とは、少なくとも一つの炭水化物部分にカップリングされたタンパク質をいう。この炭水化物部分は、アミノ酸残基(例えば、セリン残基またはアスパラギン残基)の酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介してタンパク質に付着される。
【0041】
遠隔性:本明細書中で使用される場合、用語「遠隔」(「遠隔N末端アミノ酸」または「遠隔グリコシル化部位」におけるような用語)とは、分子モデル化によって評価されるような、タンパク質上の一つ以上のポリマーに対する一つ以上の付着部位の位置が、そのタンパク質の一つ以上のレセプター結合領域もしくはレセプター結合ドメインから遠位にあるか、または空間的に離れている構造をいう。このような遠隔付着部位(通常、N末端アミノ酸(レセプター結合タンパク質に関する、したがって「遠隔N末端」レセプター結合タンパク質もしくは「RN」レセプター結合タンパク質と称される)、または糖タンパク質上の一つ以上の炭水化物部分もしくはグリコシル化部位(レセプター結合タンパク質に関して、したがって「遠隔グリコシル化」レセプター結合タンパク質もしくは「RG」レセプター結合タンパク質と称される))におけるポリマーの結合体化は、タンパク質の、そのレセプターに対する結合の実質的な立体障害を引き起こさない。故に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン上のアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位は、このアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位それぞれへの水溶性ポリマーの結合体化(例えば、共有結合による付着)が、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのそのレセプター(特に、細胞表面レセプター)に結合する能力を実質的に妨害しない場合、そのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの「一つ以上のレセプター結合ドメインから離れて配置されている」といわれる。当然ながら、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンが、一つより多くのレセプター結合ドメインを含み得ることが認識される。このような状況において、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンのアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位は、このようなドメインの一つから、またはこのようなドメインの一つより多くから、離れて配置され得、そしてさらに、このアミノ末端アミノ酸またはグリコシル化部位の結合体化が、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの、一つ以上のレセプター結合ドメインを介したそのレセプターへの結合を実質的に妨害しない限り、「一つ以上のレセプター結合ドメインから離れて配置されている」とみなされ得る。結合体化が、タンパク質のそのレセプターに結合する能力を実質的に妨害するか否かは、当該分野で公知の、当業者によく知られたリガンド−レセプター結合アッセイを用いて、容易に決定され得る。
【0042】
リガンド−レセプター結合を評価する方法としては、限定としてではなく、競合的結合アッセイ、放射性レセプター結合アッセイ、細胞ベースのアッセイ、表面プラズモン共鳴測定法、動的光散乱法、および超遠心分離法挙げられる。
【0043】
本明細書の図1dに示されるように、PEGは、高度に延長された可撓性ポリマーであり、同様の分子量のタンパク質に対して、溶液中で大きな体積を占める。PEGが付着されたアミノ酸残基は、一つ以上のレセプター結合部位から離れている可能性があるが、それにもかかわらず、ポリマー部分は、レセプター結合をある程度妨害し得る。このような妨害の可能性は、その分子量にしたがって、故に、溶液中のポリマーによって占められる体積にしたがって、増加する。最終的に、レセプター結合領域から離れた一つ以上の部位を標的とするPEG化は、ランダムなPEG化よりはレセプター結合を妨害しない。
【0044】
実質的に、実質的な:本明細書で使用される場合、レセプターに結合体化されたタンパク質の結合の速度および/または量が、結合体化されていない対応するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドプチドホルモンの結合の速度および/または量の約40%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上もしくは約100%以上である場合、タンパク質の結合体化は、そのレセプターに結合するタンパク質の能力を「実質的に」妨害しないことをいう。
【0045】
処置:本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置する」、「処置した」または「処置している」は、予防および/または治療をいう。感染性疾患に関連して使用される場合、例えば、それらの用語は、病原体への感染に対する被験体の耐性を増大させる予防的処置、すなわち、いいかえると、被験体が、病原体に感染することになるか、または感染に原因があり得る疾病の兆候を示す可能性を減少させる処置、ならびに、被験体が感染した後でその感染と戦うため(例えば、感染を減少もしくは排除するためか、またはより悪くなることを防ぐため)の処置を言及し得る。
【0046】
(概要)
本発明は、同じレセプター結合タンパク質のポリマー結合体と比較して予想外に高いレセプター結合活性を保持するレセプター結合タンパク質のポリマー結合体の合成方法を提供し、この方法において1つ以上のポリマーが無作為に付着される。x線結晶構造分析および核磁気共鳴に基づく構造分析、変異分析ならびに分子モデリングソフトウェアの使用によって、本発明者らは、それらのレセプターへの結合に関連するか、または関連しない、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのPEG化標的部位を同定した。タンパク質の分類として、これらのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子ならびにポリペプチドホルモンのアゴニストおよびアンタゴニストは、本明細書においてレセプター結合タンパク質と称される。レセプター相互作用に関連しないレセプター結合タンパク質領域にポリマー付着を標的化する合成ストラテジーの選択によって、特定の望まれない立体障害が回避され、得られるポリマー結合体は著しく高い効力を保持する。1つ以上のレセプター結合領域もしくはレセプター結合ドメインから離れてアミノ末端残基を有するレセプター結合タンパク質は、本明細書において「離れたN末端」レセプター結合タンパク質または「RN」レセプター結合タンパク質として規定される;これらとしては、タンパク質のレセプター結合部位から離れて存在するアミノ末端アミノ酸を有する全てのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニストが挙げられる。
【0047】
本発明の別の実施形態において、1つ以上のレセプター結合領域もしくはレセプター結合ドメインから離れて天然グリコシル化部位を有するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンに共有結合によりカップリングした1つ以上の合成ポリマー(例えば、1つ以上のポリ(エチレングリコール))を含む結合体が生成される。本発明のこの局面にしたがって、結合体の生物活性成分(例えば、タンパク質)は、合成ポリマーがグリコシル化部位の領域に結合される場合、十分に保存されたレセプター結合活性を提示する。レセプター結合タンパク質のこのサブセットは、本明細書において「RG」レセプター結合タンパク質という。親水性ポリマーまたは両親媒性ポリマーがこのような「離れたグリコシル化」部位またはその付近において選択的にカップリングされる場合、特に、標的タンパク質が天然にグリコシル化されたタンパク質の非グリコシル化形態である場合、このポリマーは、天然に存在する炭水化物の好都合な効果(例えば、凝集、安定性および/または溶解性)を模倣し得、そして、それ故、その結合は本明細書中において、「偽グリコシル化」と称される。従って、グリコシル化部位またはその付近へのポリマーの付着は、本明細書において「偽グリコシル化」と称される。従って、本発明は、合成ポリマーの部位選択的カップリングが、天然に存在する炭水化物部分を効果的に置換する、結合体の合成のための方法を提供する。生じた偽グリコシル化は、このタンパク質の他の非グリコシル化形態と比較して、改善した溶解性、減少した凝集および血流からの遅延したクリアランスに寄与する。従って、このアプローチは、原核生物宿主細胞(例えば、Escherichia coliのような細菌)において、組換えDNA技術によって生成されるタンパク質の結合体および組成物を調製するのに特に好都合である。なぜなら、原核生物は、通常、それらが発現するタンパク質をグリコシル化しないからである。同様に、糖タンパク質の炭水化物部分の選択的なPEG化は、糖タンパク質の「偽過剰グリコシル化」を生じ得る。このプロセスは、例えば、PCT公報番号WO96/40731(その開示全体が本明細書中に参考として援用される)においてC.Bonaらによって記載された。従って、このアプローチは、真核生物宿主細胞(例えば、酵母、植物細胞および動物細胞(哺乳動物細胞および昆虫細胞が挙げられる))において組換えDNA技術によって生成されるタンパク質の結合体および組成物を調製するために特に有利である。なぜなら、真核生物体は、一般的に、それらが発現するタンパク質が、天然に存在するグリコシル化シグナルまたは組換えDNA技術によって導入されるグリコシル化シグナルを含む場合に、それらのタンパク質をグリコシル化するからである。そのような偽グリコシル化RGレセプター結合タンパク質および偽過剰グリコシル化RGレセプター結合タンパク質は、本発明の範囲内にある。
【0048】
従って、本発明はまた、実質的にか、ほとんど完全にか、または本質的に完全に、レセプター結合活性を保持する「RN」レセプター結合タンパク質と、実質的にか、ほとんど完全にか、または本質的に完全に、レセプター結合活性を保持する擬似グリコシル化「RG」レセプター結合タンパク質または擬似過剰グリコシル化「RG」レセプター結合タンパク質のポリマー結合体を包含する。本明細書において使用する場合、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンは、本発明に従って1つ以上の水溶性ポリマーと結合体化する場合に、そのタンパク質がそのレセプターに結合する能力をそのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンの結合体化が実質的に妨げないならば(すなわち、結合体化したタンパク質がその対応するレセプターに結合する速度および/または量が、対応するタンパク質の結合体化していない形態の結合速度および/または量の、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または、約100%以上、あるいはそれより多いならば)、「実質的にか、ほとんど完全にか、または本質的に完全に、レセプター結合活性を保持する」と言われる。また、本発明の範囲には、「RN」レセプター結合タンパク質および「RG」レセプター結合タンパク質の両方に分類されるレセプター結合タンパク質のポリマー結合体が含まれる。後者のタンパク質の2つの例は、インターフェロンβ(特に、インターフェロンβ1b)およびIL−2である。
【0049】
さらなる実施形態において、本発明は、1つ以上のポリマーがランダムに結合した、同一のレセプター結合タンパク質のポリマー結合体と比較して、予想外に高度のレセプター結合活性を保持するレセプター結合タンパク質のポリマー結合体の合成方法を提供する。本発明はまた、そのような方法によって産生された結合体、ならびに、本発明のこれら結合体の1つ以上を含む組成物であって、1つ以上のさらなる成分または試薬(例えば、1つ以上の緩衝塩、1つ以上の炭水化物賦形剤、1つ以上のキャリアタンパク質、1つ以上の酵素、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の核酸分子、1つ以上のポリマー(例えば、結合体化していないPEGまたはポリアルキレングリコール)など)をさらに含み得る組成物を提供する。本発明はまた、本発明の結合体および/または組成物を含むキットを提供する。
【0050】
本発明はまた、本発明の結合体、および薬学的用途または獣医学的用途に許容可能な少なくとも1つの賦形剤またはキャリアを含む、薬学的組成物または獣医学的組成物を提供する。本発明はまた、そのような組成物を使用して種々の身体的障害を処置または予防するための方法であって、本発明の結合体または組成物の1つ以上の有効量を、身体的障害または状態を罹患しているか、または罹患しやすい動物に対して投与する工程を包含する方法を提供する。
【0051】
さらに、本発明は、安定化されたレセプター結合タンパク質、および、工業的細胞培養における使用のためのそのタンパク質の産生方法を提供し、これによって、生物学的活性の実質的な保持および工業的使用における作用の持続時間の増加の組合せ効果の結果として、予想外に高い効力が得られる。本発明の結合体の異常に高い効力は、異常に高いバイオマス生産、異常に高レベルの組換えタンパク質の発現、およびバイオプロセシングの効率の他の点での改善に反映され得る。
【0052】
(方法)
本発明者は、ポリマーを「RN」レセプター結合タンパク質のアミノ末端アミノ酸に、または「RG」レセプター結合タンパク質のグリコシル化部位の近傍に標的化することで、上記ポリマーが、1個以上の上記タンパク質のレセプター結合領域またはレセプター結合ドメインから遠く離れた部位に結合されることが保証され、その結果、結合されたポリマー分子によるレセプター相互作用の立体障害を最小にしているということを発見した。その結果、本発明の方法に従ってタンパク質を結合させることにより、上記ポリマーが、上記分子のレセプターとの結合に関与する部分の内部かまたは近傍に結合した場合に生じるレセプター結合活性よりも高い割合のレセプター−結合活性が保たれ得る。この原理は、予想外に高いレセプター結合活性の保持という結果を招き得るが、塩基性線維芽細胞増殖因子(「bFGF]または「FGF−2」)、上皮増殖因子(「EGF」)、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)、インターフェロン−α(「IFN−alpha」)、インターフェロン−β(IFN−beta−1bを含むがこれに限定されない「IFN−beta」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、単球コロニー刺激因子(「M−CSF」)、Flt3リガンド、幹細胞因子(「SCF」)、インターロイキン2、3、4、6、10、12、13および15、腫瘍壊死因子−α(「TNF−alpha」)、腫瘍壊死因子−β(「TNF−beta」)、トランスホーミング増殖因子α(「TGF−alpha」)、トランスホーミング増殖因子β(「TGF−beta」)、ケラチノサイト増殖因子(「KGF」)、ヒト成長ホルモン(「hGH」)、プロラクチン、胎盤乳腺刺激ホルモン、毛様体神経栄養因子(「CNTF」)、レプチンおよびこれらのレセプター−結合タンパク質の作用とよく似た作用を持つレセプター結合タンパク質の構造的アナログまたはそれらのレセプター−結合アンタゴニストであるこれらのレセプター結合タンパク質の構造的アナログの間から選択されるレセプター−結合タンパク質として立証され得る。その一方、IFN−γのアミノ末端に大きいポリマーを選択的に結合することは、このサイトカインの活性の大部分が保たれないと予想される。なぜなら、そのような連結は、上記活性ダイマーをそれのレポーターに結合することを妨げると予想されるからである(Walter,M.R.ら、(1995)Nature 376:230〜235およびThiel,D.J.ら(前出)のデーターに基づく)。
【0053】
本発明の関連するそのような実施形態では、ポリマーは、レセプター結合タンパク質(そのレセプター結合タンパク質は、1個以上の同一レセプターに結合することにより、上記天然タンパク質の競合的アンタゴニスト(シグナル伝達を開始しない)として機能する)のムテインのアミノ末端残基に結合する。例としては、点変異G120RhGHアンタゴニスト(Sundstoem,M.ら、(1996)J Biol Chem 271:32197〜32203)のポリマー結合体および点変異G129Rを含むプロラクチンのアゴニストのポリマー結合体(Goffin,V.ら,(1997)J Mammary Gland Biol Neoplasia 2:7〜17:Chen,W.Y.ら,(1999)Clin Cancer Res 5:3583〜3593;Chen,W.Y.、PCT出願番号WO 99/58142 A1)がある。レセプター結合タンパク質の他のアンタゴニストは、選択的点変異、短縮または欠失により産生され得る(例えば、Tchelet,A.ら,(1997)Mol Cell Endocrinol 130:141〜152;Peterson,F.C.,(1998) Identification of Motifs Associated with the Lactogenic and Somatoropic Actions of Human Growth Hormone,Ph.D. Dissertation,Ohio State University,UMI#9822357)。
【0054】
本発明の別の実施形態では、「RG」レセプター結合タンパク質に関して、本発明の方法は、糖タンパク質であるそれらのレセプター結合タンパク質の炭水化物部分の天然の結合部位の近傍に1個以上の合成ポリマーの結合を生じる。これは、(例えば、それらが組換えDNA技術により、翻訳後のグリコシル化を行わないE.coliまたは他の原核細胞において発現される場合)これらのレセプター結合タンパク質の「擬似グリコシル化」が生じるか、または(例えば、天然に産生される糖タンパク質に関して、または真核生物宿主細胞(例えば、実際に翻訳後グリコシル化を行う酵母、植物細胞ならびに(哺乳動物細胞および昆虫細胞を含む)動物細胞)により産生される糖タンパク質に関して)それらの糖タンパク質形態の「過剰擬似グリコシル化」が生じる。例として、インターフェロンαおよびβ、ならびにエリスロポエチン(「EPO」)およびインターロイキン2がある。天然のグリコシル化部位における合成ポリマーの結合または天然のグリコシル化部位の近傍の合成ポリマーの結合は、当該分野で公知の任意の方法(R.J.Goodsonら,((1990)Biotechnology 8:343〜346)の変異方法およびR.S.Larsonら,((2001)、Bioconjug Chem 12:861〜869)の方法を含む)で行われ得、これは、上記炭水化物の先の酸化を伴う;これらの参考文献の開示は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0055】
特定のタンパク質のアミノ末端修飾は、以前に開示された(例えば、Dixon,H.B.F.(1984)J Protein Chem 3:99〜108を参照のこと)。例えば、タンパク質のN末端修飾は、特定のタンパク質をアミノペプチダーゼの作用に対して安定化するか(Guerra,P.I.ら,(1998)Pharm Res 15:1822〜1827)、上記タンパク質の溶解性を改善するか(Hinds,K.,ら、(2000)Bioconjug Chem 11:195〜201)、上記N−末端アミノ基上の電荷を減少させるか、または上記生じた結合体の同質性を改善する(Kinstler,O.ら,欧州特許公報EP0822199A2;Kinstler,O.ら(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:477〜485)ことが特に報告されている。ポリマーを、「ネイティブケミカルライゲーション(native chemical ligation)」として当該分野で公知の手順を適用させることによりN末端システイン残基またはヒスチジン残基のαアミノ基に連結する代替の方法が開示された(Roberts,M.J.ら、PCT出願公開番号WO 03/31581A2および米国特許出願公開番号2003/0105224)。しかし、レセプター結合タンパク質の上記「RN」サブクラスおよび「RG」サブクラスの存在、それらのクラスのメンバーを選択するのに一般的に適用可能な方法、ならびにそのようなレセプター結合タンパク質の予想外に高い機能的活性を保つための方法としてのポリマー結合体の調製および使用は、以前は認識されもしなかったし、記述されもしなかった。
【0056】
従って、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンが、上記リガンドのレセプター結合部位から遠く離れたN末端および/またはグリコシル化部位を有するか否かを決定することにメリットがある。上記リガンドがポリマーと結合するのに先立って、所定のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドが「RN」リガンドであるか、または「RG」リガンドであるかを予測する能力は、ポリマーリガンド結合体(例えば、ポリマー(例えばPEG)と結合されたそれらのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニスト)を産生するのに必要とされる実験を実質的に減らす。ここで、このポリマーリガンド結合体において、上記結合体の抗原性/免疫原性は、非結合リガンドの抗原性および免疫原性に比較して減少する一方、上記結合リガンドのレセプター結合および生理学的活性は、実質的に減少しない。
【0057】
従って、更なる実施形態では、本発明は、タンパク質リガンドのレセプター結合部位から遠く離れたN末端および/またはグリコシル化部位を有するレセプター結合タンパク質リガンド(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンおよびそれらのアンタゴニスト)を同定し、そして選択する方法(すなわち、「RN]タンパク質または「RG」タンパク質にたいして、同定し、そして選択する方法)を提供する。本発明のそのような特定の実施形態では、1個以上のポリマー(例えば、1個以上のPEG)の結合化のための最適部位は、分子モデリング(例えば、分子モデリングソフトウェアを用いて上記タンパク質(サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニスト)の三次元構造を見て、1個以上のポリマーが実質的にそのタンパク質の生物学的活性またはレセプター結合活性を失うことなく上記タンパク質に結合され得る部位を予測すること(Schein,C.H.(前出)もまた参照のこと))を用いて決定され得る。類似のアプローチが、例えば、タンパク質分解的消化に対する耐性を改善する試みにおけるPEGのG−CSFへの結合体に関して、立証された(T.D.Osslundの公開された米国特許出願番号2001/0016191 A1(その開示は、本明細書にその全体が参考として援用されている)を参照のこと)。本発明で用いる適切な分子モデリングソフトウェア(例えば、RASMOL(Sayle,R.A.ら(前出))およびProtein Data Bankに巨大分子構造のデータベースを作成する際に用いる他のプログラムは、当該分野において周知であり、そして当業者によく知られている。そのような分子モデリングソフトウェアを用いて、ポリペプチド(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンまたはそれらのアンタゴニスト)の三次元構造は、上記リガンドおよびそれらのレセプターの結晶解析に基づく高度の確信をもって推定されるか、または決定される。このようにして、当業者は、どのリガンドが、本発明に基づく使用に適した「RN」リガンドであるか、または「RG」リガンドであるかを容易に決定し得る。
【0058】
本発明を実施するために、水溶性ポリマーをタンパク質のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基に共有結合的に連結するための、一つの便利な経路は、単一のアルデヒド基を有するポリマーを用いて形成されるシッフ塩基の還元的アルキル化による(例えば、G.P.Royerにより特許請求されたような方法(米国特許第4,002,531号)であって、J.M.Harrisらにより特許請求された方法(米国特許第5,252,714号)ではない。なぜなら、後者の発明者達は、両端にアルデヒド基で誘導化されたポリマーのみを請求し、そのポリマーは、架橋剤であり、それゆえ実質的にレセプター結合活性を保持する長期作用のレセプター結合タンパク質の合成に不向きであるからである。
【0059】
PEG−モノアルデヒドのシッフ塩基の還元的アルキル化を、レセプター結合タンパク質のN末端アミノ酸のαアミノ基に対して方向付け、そしてレセプター結合タンパク質のリジン残基のεアミノ基から遠ざけることは、Proteins Amino Acids and Peptides as Ions and Dipolar Ions((1943)、pp.75〜115およびpp.116〜39、Reinhold Publishing Corporation,New York)の4章および5章のJ.T.Edsallにおける開示に基づいて、種々の方法で達成され得る。そして、その開示は、本明細書中に参考文献としてそのまま援用される。そして、その開示は、本明細書中にその全体が参考として援用される。ポリペプチドのN末端アミノ酸のαアミノ基の酸解離定数(「pKa」)は、7.6未満であると予想される一方、ポリペプチドにおけるリジン残基のεアミノ基の上記pKa値は、およそ9.5であると予想される。Edsall(1943、前出)は、アルデヒドは、「それの等電点のアルカリ側においてのみ」アミノ酸のアミノ基と結合することを明記した。
【0060】
それゆえ、本開示および当該分野で容易に入手可能である情報に基づいて、当業者は、以下のことを認識する:(1)アルデヒドとタンパク質のαアミノ基との選択的反応は、9.5(およそ、このタンパク質におけるεアミノ基のpKa)未満であるpH範囲が有利である;(2)アルデヒドとεアミノ基との反応速度は、この反応のpHが7.6(およそ、このタンパク質のαアミノ基のpKa)に向かって低下すると減少する;(3)アルデヒドとαアミノ基との反応速度は、反応pHが7.6に向かって低下するにつれ、εアミノ基の反応速度未満に減少する、そして(4)アルデヒドとαアミノ基との反応についての選択性は、pHを6.6に向かって低下させることにより、いくらか改善される。後者の値は、αアミノ基のpKaよりもおよそ1pH単位低く、そしてεアミノ基のpKaよりも3pH単位低いので、αアミノ基のおよそ10%およびεアミノ基のおよそ0.1%は、それらの反応性の非プロトン化状態にある。従って、pH6.6において、非プロトン化αアミノ基の割合は、非プロトン化εアミノ基の割合よりも100倍高い。それゆえ、反応のpHを例えば5.6までさらに低下させることによって、選択性における極めてわずかな増加が得られる。ここでは、理論的に、αアミノ基の1%およびεアミノ基の0.01%がそれらの反応性の非プロトン化状態にある。従って、本発明の特定の実施形態では、タンパク質リガンド(特に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモンおよびそれらのアンタゴニストを含め、「RN」リガンドまたは「RG」リガンド)は、約5.6〜約7.6のpHにおいて;;約5.6〜約7.0のpHにおいて;約6.0〜約7.0のpHにおいて;約6.5〜約7.0のpHにおいて;約6.6〜約7.6のpHにおいて;約6.6〜約7.0のpHにおいて;または約6.6のpHにおいて、リガンドと1以上のポリマーとの間で混合物を形成することにより、1以上のポリマーに結合体化され得る。従って、本発明の方法は、リガンドのN末端アミノ酸残基上のαアミノ基へのポリマーのカップリングが約5のpHにおいて実施される(Kinstler,O.ら,(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:477−485;欧州特許公開番号EP 0 822 199 A2;米国特許第5,824,784号および同第5,985,265号;Roberts,M.J.ら,(2002),前出;Delgado,C.ら,米国出願公開第2002/0127244号A1)、一方、リガンドポリペプチド骨格におけるリジン残基のεアミノ基へのポリマーのカップリングが8.0のpHにおいて実施される(Kinstler,O.ら,EP 0 822 199 A2;米国特許第5,824,784号および同第5,985,265号)当該分野で公知の方法とは顕著に異なる。同様にして、本発明の方法はまた、7.5のpHにおいて実施される、トランスグルタミナーゼを用いてポリ(エチレングリコール)のアルキルアミン誘導体を、特定のタンパク質へとカップリングするために用いられている酵素方法とは有意に区別される(Sato,H.(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:487−504)。
【0061】
中程度の還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはピリジンボラン)での、得られるシッフ塩基の還元(Cabacungan,J.C.ら(1982)Anal Biochem 124:272−278)は、生理学的pHにおいてタンパク質のN末端αアミノ基の正の荷電を保持する二級アミン結合を形成する。ネイティブなタンパク質と同じ荷電を保持するこのような結合は、例えばアミド結合(Burg,J.ら,PCT公開番号WO 02/49673 A2;Kinstler,O.ら,欧州特許出願第EP 0 822 199号A2;Kinstler,O.B.ら(1996)Pharm Res,13:996−1002;Kita,Y.ら,前出)またはウレタン結合(Gilbert,C.W.ら,米国特許第6,042,822号;Grace,M.ら,(2001)J Interferon Cytokine Res 21:1103−1115;Youngster,S.ら,(2002)Curr Pharm Des 8:2139−2157)の形成によって荷電を中和する代替結合化学よりも、その生物学的活性を保存する可能性がより高い。
【0062】
N末端アミノ酸残基へのポリマーの選択的カップリングに対する代替的アプローチは、当業者に公知である。含まれるのは、ヒドラジド、ヒドラジン、セミカルバジドまたは他のアミン含有ポリマーを、過ヨウ素酸塩を用いてアルデヒドへと酸化的に切断されたN末端セリン残基またはN末端トレオニン残基へとカップリングするための方法である(Dixon,H.B.F.,前出;Geoghegan,K.F.,米国特許第5,362,852号;Gaertner,H.F.ら,(1996)Bioconjug Chem 7:38−44;Drummond,R.J.ら,米国特許第6,423,685号)。
【0063】
(適切なポリマー)
本発明の特定の実施形態では、ポリマーが生物活性成分へとカップリングされて本発明の結合体を生成する反応の間にPEGのようなポリマーによる分子内架橋および分子間架橋の形成を最少にすることが望ましい。これは、一方のみの末端において活性化されたポリマー(本明細書中では、「一官能性活性化PEG」または「一官能性活性化PAG」と呼ばれる)または二官能性活性化(直鎖状PEGの場合、「二活性化PEGジオール」と呼ばれる)もしくは多官能性活性化ポリマーの百分率が約30%未満、もしくはより好ましくは約10%未満もしくは最も好ましくは約2%(w/w)未満であるポリマー調製物を用いることにより、達成され得る。完全にまたはほぼ完全に一官能性である活性化ポリマーの使用は、以下の全ての形成を最少にし得る:個々のタンパク質分子内での分子内架橋、ポリマーの1つの鎖が2つのタンパク質分子を連結する「アレイ」構造、およびより大きな凝集物またはゲル。
【0064】
本発明の方法および組成物における使用のために適切である活性化形態のポリマーとしては、当該分野で公知の、任意の直鎖状または分枝状の、一官能性活性化形態のポリマーが挙げられ得る。例えば、含まれるのは、約1kDa〜約100kDaの範囲の分子量(活性化基の質量を除く)を有するポリマーである。分子量の適切な範囲としては、約5kDa〜約30kDa;約10kDa〜約20kDa;約18kDa〜約60kDa;約12kDa〜約30kDa、約5kDa、約10kDa、約20kDaまたは約30kDaが挙げられるがこれらに限定されない。直鎖状PEGの場合、約10kDa、約20kDaまたは約30kDaの分子量は、それぞれ、約230、約450または約680という、エチレンオキシドモノマー単位の重合度(n)に相当する。インビトロでの使用については、活性化ポリマーの分子量の適切な範囲は、約1kDa〜約5kDaを含む。「RN」クラスおよび「RG」クラスのレセプター−結合タンパク質の存在が認識される前には長らく、治療用タンパク質を、比較的高分子量(すなわち、約20〜30kDaより大きい)を有するポリマーにカップリングすることの利点が、最初に観察されたことに留意すべきである(Saifer,M.ら,PCT公開番号WO89/01033 A1、1989年2月9日公開、これは、その全体が、本明細書中に参考として援用される)。
【0065】
本発明の他の実施形態では、通常高い百分率の生物活性が保持されているレセプター−結合タンパク質の結合体は、約1kDa、約2kDaまたは約5kDaの一官能性活性化ポリマーを本発明の方法に従ってカップリングすることにより、インビトロでの(例えば、細胞培養での)使用のために調製され得る。このようなインビトロ適用については、このより低い範囲の分子量が、好適であり得る。
【0066】
必要に応じて、直鎖状ポリマーは、反応性基を一方の末端または両方の末端に有し得、それにより、「反応性ポリマー」を作製し得る。本発明の特定の実施形態では、J.M.Harrisら,米国特許第5,672,662号(これは、完全に本明細書中に参考として援用される)に開示される通りのPEGのモノプロピオン酸誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、または他のN−ヒドロキシスクシンイミド活性化PEG−モノカルボン酸を使用することが所望され得る。特定の他の実施形態では、M.Saiferら,米国特許第5,006,333号;同第5,080,891号;同第5,283,317号および同第5,468,478号中に記載された通りのPEGのモノスクシンイミジルカルボネート誘導体(「SC−PEG」)、またはS.J.Kellyら,前出;L.D.Williamsら、PCT公開番号WO 00/07629 A2およびA3、L.D.Williamsら,米国特許第6,576,235号およびM.R.Shermanら,PCT公開番号No.WO 01/59078A2に開示された通りのPEGのモノ−p−ニトロフェニルカルボネート誘導体のいずれかを用いることが所望され得る。さらに、他の型の反応性基を用いて、タンパク質のポリマー結合体を合成し得る。これらの誘導体としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:PEGのモノアルデヒド誘導体(Royer,G.P.,米国特許第4,002,531号;Harris,J.M.ら,米国特許第5,252,714号)、PEGのモノアミン誘導体、PEGのモノ−トリブロモフェニルカルボネート誘導体、PEGのモノカルボニル−イミダゾール誘導体、PEGのモノ−トリクロロフェニルカルボネート誘導体、PEGのモノ−トリフルオロフェニルカルボネート誘導体、PEGのモノヒドラジド誘導体、PEGのモノセミカルバジド誘導体、PEGのモノカルバゼート(monocarbazate)誘導体、PEGのモノ−チオセミカルバジド誘導体、PEGのモノヨードアセトアミド誘導体、PEGのモノマレイミド誘導体、PEGのモノ−オルトピリジルジスルフィド誘導体、PEGのモノ−オキシム誘導体、PEGのモノ−フェニルグリオキサール誘導体、PEGのモノ−チアゾリジン−2−チオン誘導体、PEGのモノチオエステル誘導体、PEGのモノチオール誘導体、PEGのモノトリアジン誘導体およびPEGのモノビニルスルホン誘導体。さらなる実施形態では、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモンおよびそれらのアンタゴニストは、共有に係る、同時係属中の米国特許出願第10/669,597号(この開示は、その全体が、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、1以上のポリマーにカップリングされ得る。
【0067】
(生物活性成分)
上記の通り、本発明の結合体は、1つ以上の生物活性成分に共有結合された、1つのPAGまたはPAO、および特にPEGの1つの鎖を含む。1つ以上のポリマー(またはそれらの鎖)が共有結合されている生物活性成分は、本明細書中で、種々に、そして等価に、「結合体化した生物活性成分」または「改変された生物活性成分」と言われる。これらの用語は、本明細書中で、「未結合の生物活性成分」、「最初の生物活性成分」または「未改変の生物活性成分」とは区別され、これらの用語は全て、ポリマーが共有結合されていない生物活性成分をいう。しかし、「未結合の」、「未改変の」または「最初の」生物学的成分が、野生型分子またはネイティブ分子と比較した場合、他の非ポリマー結合または改変を含み得、そして本発明による「未結合」、「未改変」または「最初」であると依然として考えられることを理解すべきである。なぜなら、生物活性成分は、本明細書中で「偽PEG化」と呼ばれる生物活性成分の場合についてと同様に、ポリマーの結合に関して「未結合」、「未改変」または「最初」であるからである。
【0068】
用語生物活性成分を「安定化させる」(または「安定化の方法」または「安定化された生物活性成分」)とは、生物活性成分が、本発明の方法に従って安定化されたことを示す(すなわち、本発明の方法に従ってポリマーが共有結合した生物活性成分)。このような安定化された生物活性成分は、安定化されていない生物活性成分(すなわち、ポリマーが共有結合していない生物活性成分)と比較される場合に、特定の変化した生化学的特徴および生物理学的特徴を示す。このような変化された生化学的パラメータおよび生物理学的パラメータには特に、レセプター結合タンパク質に関して、タンパク質分解による分解に対する低下した感受性、および特に、特定の厳しい環境条件または厳しい実験条件のもとでのインキュベーションの間のレセプター結合タンパク質の活性の維持が含まれ得る。本発明の特定の実施形態において、変化した生化学的パラメータおよび生物理学的パラメータとしては、例えば、インビボでの循環における増加した半減期、増加したバイオアベイラビリティ、インビトロでの作用の増加した持続時間などが挙げられ得る。
【0069】
分子のアミノ末端または天然に存在するグリコシル化部位もしくは変異により導入されたグリコシル化部位から離れたその分子の部分に関連する生物学的(すなわち、生理学的、生化学的、または薬学的)活性を有する、任意のレセプター結合タンパク質(代表的に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモン)は、本発明において、最初の成分として適切に使用され得る。このような生物活性成分としては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質などが挙げられるが、これらに限定されない。生物活性成分としてはまた、このようなペプチド、ポリペプチド、タンパク質などのフラグメント、ムテインおよび誘導体が挙げられ、特に、生物学的(すなわち、生理学的、生化学的、または薬学的)活性を有するこのようなフラグメント、ムテイン、および誘導体が挙げられる。
【0070】
本発明における生物活性成分として有用な、適切なペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、糖タンパク質などとしては、その生物活性成分のレセプター結合領域から離れている、ポリマーが選択的に付着し得る1つ以上の利用可能なアミノ基、チオール基、または他の基を有する、任意のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質などが挙げられる。このようなペプチド、ポリペプチドタンパク質、糖タンパク質などとしては、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンが挙げられ、これらは、任意の種々の構造を有し得る(Nicola N.A.、前出;Schein,C.H.、前出)。
【0071】
例えば、目的の適切なペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質としては、4つのαヘリックス束(長鎖サブクラスと短鎖サブクラスとの両方)を含む構造を有するサイトカインのクラスが挙げられるが、これらに限定されない(概説については、Schein,C.H.、前出を参照のこと)。種々のこのような4ヘリックス束タンパク質は、本発明において使用するために適切であり、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15およびIL−17);コロニー刺激因子(例えば、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF;Rozwarski、D.A.ら(1996)Proteins 26:304−313);インターフェロン(例えば、IFN−α、IFN−β(IFN−β−1bが挙げられる)およびコンセンサスIFN);白血病抑止因子(LIF);エリスロポエチン(Epo);トロンボポエチン(Tpo);巨核球増殖発生因子(MGDF);幹細胞因子(SCF)(当該分野において、SL因子としてもまた公知(Morrissey,P.J.ら(1994)Cell Immunol 157:118−131;MucNiece,I.K.ら、(1995)J Leukoc Biol 58:14−22));オンコスタチンM(OSM);ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP);神経栄養因子;ならびにこれらのペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。プロラクチンおよび成長ホルモンは、古典的なホルモンであるが、これらは、サイトカインとは異なり、体内で広範に循環する。サイトカインは、通常、それらの標的細胞の近くで産生される。プロラクチンおよび成長ホルモンは、4つのαヘリックス束を有するサイトカインと同じ構造的クラスに属し(Nicola,N.A.、前出;Goffin,V.ら、前出)、そしてこれらは、同様に、ポリマーカップリングのため、および本発明に従う本発明の結合体の産生のための、適切な標的である。これらのペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質のアナログ、ムテイン、アンタゴニスト、改変体および誘導体もまた、本発明において使用するために適切であり、従って、本発明に含まれる。
【0072】
長鎖βシートクラスまたはβバレル構造クラスのレセプター結合タンパク質(概説については、Schein,C.H.、前出を参照のこと)はまた、本発明の結合体および組成物を調製する際に使用するために適切である。これらとしては、サイトカインの腫瘍壊死因子ファミリー(例えば、TNF−α、TNF−βおよびFasリガンド(これらは、βゼリーロール構造を示す));IL−1(IL−1αおよびIL−1βを含む)ならびにFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)が挙げられる)ファミリー(これらは、β三葉型折り畳みを示す(Schein,C.H.ら、前出;Schlessinger,J.ら、前出));IL−12;IL−16;上皮増殖因子(EGF;Lu,H.−S.ら、前出);ならびに血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(トランスフォーミング増殖因子−αおよびトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)が挙げられる)、および神経増殖因子(これらは、シスチンノット(cystine−knot)構造を採用する)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質のアナログ、ムテイン、アンタゴニスト、改変体および誘導体もまた、本発明において使用するために適切であり、従って、本発明に含まれる。
【0073】
本発明の結合体および組成物において有利に使用されるタンパク質のさらなる構造クラスは、ジスルフィドリッチな混合されたα/βサイトカイン、ケモカインおよび増殖因子のクラスであり(概説については、Schein,C.H.、前出を参照のこと)、このクラスとしては、EGFファミリー(これは、β曲折(beta−meander)構造を有する);IL−8;RANTES;好中球活性化ペプチド−2(NAP−2);間質細胞由来因子1α(SDF−1α);単球化学誘引物質タンパク質(MCP−1、MCP−2およびMCP−3);エオタキシン(例えば、エオタキシン−1、エオタキシン−2およびエオタキシン−3);骨髄性前駆体阻害因子−1(MPIF−1);ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF);増殖関連癌遺伝子/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA);ソマトメジン;ならびにインスリンおよびインスリン様増殖因子(例えば、IGF−1およびIGF−2)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の結合体および組成物において有用な関連する構造クラスのタンパク質は、モザイク構造を有するサイトカインであり、これには、IL−12および肝細胞増殖因子のような増殖因子が挙げられる(Nicola,N.A.、前出)。これらのペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質のアナログ、ムテイン、アンタゴニスト、改変体および誘導体もまた、本発明において使用するために適切であり、従って、本発明に含まれる。
【0074】
目的の他のタンパク質としては、成長ホルモン(特に、ヒト成長ホルモン(hGH;Tchelet,A.ら(前出)を参照のこと)およびそのアンタゴニスト(例えば、Sundstroem,M.ら(前出)を参照のこと)、プロラクチンおよびそのアンタゴニスト、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、色素ホルモン、ケラチノサイト増殖因子、視床下部ホルモン放出因子、抗利尿ホルモン、ならびに上記構造クラスの全てのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモンのレセプター結合アンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。多くのこのようなタンパク質は、グリコシル化形態と非グリコシル化形態との両方で存在する。非グリコシル化形態は、原核生物において組換えDNA技術を使用するそれらの産生から生じ得るか、または化学合成を使用するそれらの産生から生じ得る。このような非グリコシル化産物は、本発明の適切な生物活性成分であるペプチドおよびタンパク質の範囲内である。最後に、いくつかの抗体は、レセプター結合アゴニストまたはレセプター結合アンタゴニストとして機能するが(例えば、Morris,J.C.,ら(2000)Ann Rheum Dis 59(補遺I):i109−i114を参照のこと)、このような免疫グロブリンは、本発明の範囲内のN末端ポリマーカップリングのための適切な候補ではない。すなわち、これらは、RNレセプター結合タンパク質ではない。なぜなら、軽鎖と重鎖との両方のアミノ末端領域が、抗原認識に関与するからである。
【0075】
本発明のポリマー結合体を調製する際に使用するための生物活性成分として特に有用なものは、インターフェロン−α、インターフェロン−β(IFN−β−1bを含む)、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、hGH、プロラクチン、インスリン、IGF−1、EGF、bFGFおよびエリスロポエチン(Epo)である。特に有用なものはまた、このような生物活性成分のムテインおよびフラグメントであり、特に、対応する野生型ポリペプチドまたはインタクトなポリペプチドについてのレセプターに結合し得るものである(この結合が生物学的効果または生理学的効果を誘導しようとそうでなかろうと)。特定のこのような実施形態において、生物活性成分のムテインおよびフラグメントは、対応するリガンドに対するアンタゴニストとして作用し得、これは、リガンドのそれらのレセプターへの結合を減少させるか、かなり減少させるか、もしくは完全に阻害し、そして/またはそれらの標的細胞、標的組織および/もしくは標的生物のリガンドの活性を減少させるか、かなり減少させるか、もしくは完全に阻害する。他のアンタゴニスト(これは、目的のリガンドの構造的なアナログ、ムテイン、改変体または誘導体であってもそうでなくてもよい)もまた、本発明に従う結合体の調製のために適切である。実際問題として、所定のムテイン、フラグメント、改変体、誘導体またはアンタゴニストが、所定のリガンドの生物学的効果および/または生理学的効果と拮抗するか否かは、過度の実験をすることなく、そのリガンド自体の生物学的効果/生理学的効果についてのアッセイを使用して決定され得、その種々のアッセイは、当該分野において周知であり、そして/または本明細書中に記載される。
【0076】
本発明に従って有利に使用される、これらおよび他の目的のポリペプチドについての構造(一次構造、二次構造、三次構造、および適用可能な場合、四次構造)は、当該分野において周知であり、そして当業者に馴染み深い。特に、本明細書中および本明細書中に援用される参考文献(これらは、その全体が本明細書中に参考として援用される)に提供される構造の観点で、そうである。
【0077】
(結合体)
本発明は、種々の適用において使用するための、生物活性成分(特に、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、およびポリペプチドホルモン)の安定な結合体を提供する。このような本発明の結合体は、当該分野において公知の結合体の以下の非限定的かつ例示的な比較によって示されるように、当該分野において以前に公知であったものより優れた多数の利点を有する。
【0078】
H.Hiratani(欧州特許番号EP 0 098 110および米国特許第4,609,546号)は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー(「PEG−PPG」、PAGの一般的なクラスのメンバー)と、タンパク質(インターフェロンおよびインターロイキンが挙げられる)との結合体を開示し、ここで、レセプター結合に関与するタンパク質の領域の回避に関する優先は、開示されていない。これらの参考文献において、インターフェロンα、インターフェロンβおよびインターフェロンγは、本発明とは異なり、PAGの結合のための等価な標的とみなされた。本発明において、インターフェロン−γは、N末端結合のための適切な標的とみなされない。なぜなら、アミノ末端がサイトカインのレセプター結合領域内にあるからである。さらに、Hirataniは、1kDa〜10kDaのPAGのみを用いて合成された結合体を開示し、一方で、本発明の方法は、治療適用のために、10kDaを超える分子量を有する水溶性の合成ポリマーの結合を好む。同様に、N.V.Katre((1990)J Immunol 144:209−213)は、5kDaのmPEGのより多数の鎖をヒト組換えインターロイキン−2に結合させることによって、得られる結合体の、マウスおよびウサギの血流における半減期が増加することを開示する。しかし、この参考文献は、本発明によって提供されるような、より少ない数のより長いPEG鎖の結合の利点も、単一の高分子量のPEG鎖をIL−2のアミノ末端へと結合する利点も、開示も認識もしなかった。
【0079】
G.Shaw(米国特許第4,904,584号およびPCT公開番号WO89/05824A2)は、アミン反応性ポリマーの部位選択的な付着を、標的タンパク質(特に、Epo、G−CSFおよびIL−2)におけるリジン残基の導入、置換または欠失により誘導するための方法を開示する。しかし、本発明の開示とは異なり、これらの参考文献は、アミン反応性ポリマーが、リジン残基のεアミノ基以外の標的タンパク質における任意のアミンと反応し得ることを開示せず、このことは、明らかに、これらの開示を、本発明から区別する。
【0080】
D.E.Niteckiら(米国特許第4,902,502号)は、PEGの種々のクロロホルメート誘導体(これらは、リジン残基のεアミノ基と反応することが意図された)から調製された、マルチPEG化IL−2結合体を開示する。しかし、本発明とは対照的に、この参考文献は、レセプター結合に関与するIL−2タンパク質の領域におけるリジン残基のPEG化を回避するための方法も、このような部位の回避が有利であることのいかなる意識も、開示しない。
【0081】
N.Katreら(米国特許第5,206,344号)は、PEGが、リジン残基のεアミノ基とか、125位(アミノ末端から数える)に天然に存在するシステイン残基の対になっていないスルフヒドリル基とか、またはIL−2のアミノ末端から最初の残基と20番目の残基との間に変異により導入されたシステイン残基のスルフヒドリル基と結合体化している、PEG−IL−2結合体を開示する。’344号特許に開示されるムテインには、「des−ala−1」IL−2(すなわち、アミノ末端のアラニンが欠失され、そしてPEG化されていないムテイン)が含まれる。しかし、本開示と対照的に、’344特許は、レセプターへの結合に関与するアミノ酸残基へのPEGの結合を回避するためのいかなる方法も、このようなアプローチが有利であるといういかなる認識も、開示しない。この概念に一致し、そして本発明とは対照的に、’344特許において提唱される広範な付着点は、PEGをIL−2のアミノ末端に結合体化させることが、特に有利であることを示唆しない。
【0082】
S.P.Monkarshら(1997)Anal Biochem 247:434−440およびS.P.Monkarshら(1997)Harris,J.M.ら編、Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications,pp.207−216,American Chemical Society,Washington,D.C.は、インターフェロン−α−2aを、3倍モル過剰の、5,300ダルトンの分子量を有する活性化PEGと反応させることにより、モノPEG−インターフェロンの11種の位置異性体(インターフェロン−α−2aにおける11個のリジン残基に対応する)が生成されることを開示する。PEGがインターフェロンのアミノ末端のαアミノ基に結合した、PEG−インターフェロンは、報告されなかった。これらの参考文献において報告された11個の位置異性体は、細胞培養物中で、非改変型インターフェロンの6%〜40%の範囲の抗ウイルス活性、および細胞培養物中で、非改変型インターフェロンの9%〜29%の範囲の抗増殖活性を示した。このような結果は、これらの調査者によって実施されたリジン残基のランダムなPEG化が、本発明の方法によって調製された結合体とは対照的に、そのレセプターによって媒介されるインターフェロン−α−2aの機能を妨害することを明らかに実証する。さらに、本発明の結合体とは異なり、これらの参考文献において報告される結合体において、N末端をPEG化されたインターフェロンは、存在しなかった。
【0083】
O.Nishimuraら(米国特許法定発明登録番号H1662)は、活性化された「ポリエチレングリコールメチルエーテルアルデヒド」をシアノホウ素化水素ナトリウムによって、pH7.0(インターフェロン結合体について)またはpH7.15(IL−2結合体について)で還元的アルキル化することによって調製された、インターフェロン−α、インターフェロン−γおよびIL−2の結合体を開示する。しかし、このような方法によって調製される結合体は、複数のポリマー付着の部位(これらの全ては、リジン残基のεアミノ基上にあると報告された)の存在に明らかに起因して、非改変型タンパク質の生物活性の95%までを失ったことが報告されている(本発明の図1および4を参照のこと)。
【0084】
D.K.Pettitら(前出)は、インターロイキン−15(「IL−15」)のポリマー結合体を開示する。しかし、この参考文献において報告される結合体化したIL−15は、レセプター結合に関与するタンパク質の領域におけるリジン残基にポリマーを結合させることの結果として、そのIL−2様増殖促進能力を失うのみでなく、これはまた、作動よりむしろ拮抗を示した。これらの著者らは、IL−15がいくつかの細胞表面レセプターのうちの1つに結合することの選択的阻害が、ポリマー結合体化の結果であり得ること、およびこのような阻害が、レセプター結合を低下させ得るのみでなく、そのタンパク質の生物学的効果を逆転させ得ると結論付ける。レセプター結合タンパク質のレセプターとの相互作用に関与する部分へのポリマーの結合を回避することによって、本発明は、ポリマー結合の望ましくない結果を回避する。
【0085】
J.Hakimiら(米国特許第5,792,834号および同第5,834,594号)は、タンパク質(インターフェロン−α、IL−2、インターロイキン−1(「IL−1」)およびIL−1レセプターのアンタゴニストが挙げられる)の、ウレタン連結PEG結合体を開示し、これらは、報告によれば、それぞれのタンパク質の免疫原性を低下させ、溶解度を増加させ、そして生物学的半減期を増加させるために調製された。これらの参考文献において、PEGは、「種々の遊離アミノ基」と結合され、N末端PEG化に関する言及もなく、N末端αアミノ基がPEG化され得ることもPEG化されるべきであることも開示されない。これらの特許はまた、そこに開示される結合体が、出発タンパク質の元々の生物学的活性「の少なくとも一部を有し」、従って、かなりの生物活性の損失の可能性があることを示すことを言及する。この結果は、それらの特許に開示される標的化されないPEG化方法の使用に一致する。本発明とは対照的に、これらの特許は、その特許に開示されるPEG化プロセスの選択性を変化させることによって、それらの結合体の生物活性の保持を改善するいかなる試みも開示しない。
【0086】
O.B.Kinstlerら(欧州特許公開番号EP 0 822 199 A2)は、ポリ(エチレングリコール)を、ポリペプチド(特に、コンセンサスインターフェロンおよびG−CSF(これらは、この特許出願の譲受人であるAmgen,Inc.によって製造されるタンパク質のうちの2つである))のアミノ末端のアミノ酸のαアミノ基と反応させるためのプロセスを開示する。この刊行物は、「上記αアミノ基を選択的に活性化させるために十分に酸性のpH」が、開示されるプロセスの必要な特徴であることを示す。対照的に、本発明によって、pHを低下させることによって、PEGアルデヒドとのアミノ基の反応性が低下すること、および上記αアミノ基は、プロトン化されない場合に(すなわち、そのpKaより高いpHにおいて)より反応性であることが発見された。従って、本発明者らは、pHが、本発明のRNサイトカインのいずれの「αアミノ基を選択的に活性化させるためにも十分に酸性で」はないことを見出す。J.T.Edsall(前出)およびR.S.Larsenら((2001)Bioconjug Chem 12:861−869)によって与えられる、N末端αアミノ基の、アルデヒドとの反応性のpH依存性の説明は、本発明者らの経験とより適合性である。さらに、Kinstlerらは、得られる結合体の増加した均一性、およびプロテイナーゼによる分解からのアミノ末端の保護のための、ペプチドのN末端PEG化の使用を報告するが、N末端PEG化が特定のレセプター結合タンパク質のレセプター結合活性のより大きい部分を保存し得ることを開示しない(例えば、PCT公開番号WO96/11953;欧州特許番号EP 0 733 067、ならびに米国特許第5,770,577号、同第5,824,784号、および同第5,985,265号(全て、Kinstler,O.B.ら)を参照のこと)。
【0087】
Kinstlerらの欧州出願(EP 0 822 199 A2)はまた、全てのポリペプチドに対するN末端PEG化の利点を一般化する。これは、本発明者らの経験ではなかった。具体的には、抗体分子のアミノ末端は、抗体タンパク質の抗原結合領域の近くに存在するので(Chapman,A.P.(2002)Adv Drug Deliv Rev 54:531−545)、抗体のN末端PEG化は、Larsen,R.S.ら、前出によって開示されるように、リジン残基のランダムなPGE化と比較して、生物活性に対して予測不可能に有害である。同様に、「RN」レセプター結合タンパク質ではないレセプター結合タンパク質(例えば、インターフェロン−γ(図8を参照のこと))のN末端PEG化は、このようなレセプター結合タンパク質のリジン残基のランダムなPEG化よりも、レセプターとの相互作用を阻害すると予測される。
【0088】
従って、上記のように、本発明の方法は、本発明の結合体が、RNレセプター結合タンパク質として選択された1つ以上のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニストを、1つ以上のポリマーと、そのリガンドと1つ以上のそのポリマーとの混合物を、約5.6〜約7.6のpH;約5.6〜約7.0のpH;約6.0〜約7.0のpH;約6.5〜約7.0のpH;約6.6〜約7.6のpH;約6.6〜約7.0のpH;または約6.6のpHで形成することによって、結合させることによって調製する点で、本明細書中に引用される刊行物においてKinstlerらによって開示されたものと区別される。対照的に、Kinstlerらの方法は、5.5未満のpHでのリガンドの結合体化に依存する。このpH範囲は、離れたN末端アミノ酸および/または離れたグリコシル化部位において、ポリマーと選択的に結合体化したリガンドの調製物の調製のために最適ではないか、または劣っていることを、本発明者らは見出した。
【0089】
R.B.Pepinskyら(PCT公開番号WO00/23114および米国特許出願公開番号2003/0021765 A1)は、抗ウイルスアッセイにおいて非グリコシル化インターフェロン−β−1bより活性な、グリコシル化インターフェロン−β−1aのポリマー結合体を開示する。この参考文献はまた、ポリアルキレングリコールが、グリコシル化タンパク質の種々の部位(アミノ末端、カルボキシル末端および糖質部分が挙げられる)において種々の結合基を介して、インターフェロン−β−1aに結合され得ることを開示する。しかし、この刊行物には、記載される方法が他のタンパク質に一般化され得るとは開示されない:「これらの研究は、インターフェロン−β−1aとインターフェロン−β−1bとの間の配列の保存にもかかわらず、これらが異なる生化学的実体であり、従って、インターフェロン−β−1bに関して既知であることの多くが、インターフェロン−β−1aに対して適用され得ず、そして逆もまたそうであることを示す」。対照的に、本発明は、本明細書中に規定されるような、「RN」レセプター結合タンパク質および「RG」レセプター結合タンパク質に現われる共通の特徴を開示する。本発明によれば、インターフェロン−β−1aとインターフェロン−β−1bとの両方が、「RN」レセプター結合タンパク質である。さらに、インターフェロン−β−1bは、「RG」レセプター結合タンパク質である。したがって、WO 00/23114の方法とは対照的に、本発明の方法は、インターフェロン−β−1bとインターフェロン−β−1aとの両方の、安定な生物活性結合体を調製するために有用である。
【0090】
Z.Weiら(米国特許第6,077,939号)は、水溶性ポリマー(特に、PEG)を、ポリペプチド(特に、エリスロポエチン)のN末端α炭素原子に結合するための方法を開示し、ここで、N末端アミノ酸のα炭素のアミンが、まずαカルボニル基にアミノ交換され、これが次いで、PEG誘導体と反応されて、オキシム結合またはヒドラゾン結合を形成する。この参考文献の開示される目的は、タンパク質に一般的に適用可能な方法を開発することであったので、特定のレセプター結合タンパク質のPEG化部位としてのアミノ末端の選択から生じ得る、レセプター結合活性の保存に対して、何も考慮はなされなかった。従って、Weiらの開示とは対照的に、本発明は、N末端αアミノ基の除去を必要とせず、逆に、N末端αアミノ基の電荷を、そのタンパク質とポリマーとの間の二次アミン結合の形成の間中、中性のpHで維持し得る。
【0091】
C.W.Gilbertら(米国特許第6,042,822号;欧州特許番号EP 1 039 922)は、PEG−インターフェロン−α−2bの位置異性体の混合物の望ましさを開示し、ここで、特に望ましい異性体は、インターフェロン−α−2bのヒスチジン残基(特に、ヒスチジン−34)に結合したPEGを有し、そしてヒスチジン−34へのPEG結合が不安定であることを実証する。ヒスチジン−34は、シグナル伝達を誘発する目的でインターフェロンレセプターと密接に接触しなければならない領域において、インターフェロン−α−2bの表面に存在するので(本明細書の図1bを参照のこと)、これらの参考文献に開示される、PEGとヒスチジン−34との間の結合の不安定性は、そこに開示されるPEG−インターフェロン結合体の機能のために重要であるようである。実質的に純粋なヒスチジン結合タンパク質ポリマー結合体が、S.Leeら、米国特許第5,985,263号によって記載された。対照的に、本発明は、1つの好ましい結合体が、PEGが、インターフェロン成分のレセプター結合ドメインから離れた部位で安定に結合している、PEG−インターフェロン結合体であることを実証する。
【0092】
P.Bailonら((2001)Bioconjug Chem 12:195−202)は、インターフェロン1分子あたり1分子の40−kDaジ−mペグ−リジンでペグ化されるインターフェロン−α−2aが4つの主要な位置異性体からなることを開示している。この参考文献は、このペグのほとんど全てが、アミド結合によってリジン31、121、131または134に付着され、これらリジンの各々は、インターフェロン−α−2aのレセプター結合領域内またはレセプター結合領域(Bailonらによると、残基29−35および123−140;本明細書の図1a参照のこと)に隣接することを開示している。N−末端のペグ化は、Bailonらに報告されていない。インビトロでのMadin−Darbyウシの腎臓細胞の水疱性口炎ウイルス感染に対する単離された混合物の位置異性体のペグ−インターフェロンの抗ウイルス活性は、試験された、結合体化されていないインターフェロン−α−2aのものの7%であると報告された。N−末端にペグ化されたインターフェロンを含まないこれらのペグ−インターフェロン結合体について観察された生物活性の実質的な減少は、Bailonらの結合体と本発明の結合体とをこのようにはっきりと区別している。
【0093】
R.B.Pepinskyら((2001)J Pharmacol Exp Ther 297:1059−1066)は、(1)N−末端のメチオニン残基を有するグリコシル化されたインターフェロン−β−1aおよび(2)20−kDaペグ−アルデヒド由来の結合体の合成を開示している。その参考文献において、N−末端のメチオニンでモノペグ化されると称される結合体は、抗ウイルスアッセイにおいて十分な生物活性を保持すると言われているが、より高い分子量のペグの結合は抗ウイルス活性を減少または除去させた。これらの著者は、グリコシル化されたインターフェロン−β−1aのペグ化のためのN−末端部位の選択が、部位選択ペグ化試薬および分子モデリングの利用によって決定されることを開示しているが、彼らは「いくつかの効果が生成物に特異的である」と認識している。さらに、本発明とは対照的に、その中に報告されている所見は、本明細書中で「RN」レセプター結合タンパク質として定義されるクラスのレセプター結合タンパク質を含むことを一般化していなかった。
【0094】
J.Burgら(PCT公開番号WO01/02017A2)は、エリスロポエチン糖タンパク質のアルコキシペグ結合体の生成を開示しており、ここで、メトキシペグの1〜3本の鎖は、この糖タンパク質の表面上のリジン残基のεアミノ基の改変によって化学的に導入されたスルフヒドリル基で反応された。しかしながら、本発明とは対照的に、この参考文献は、ペグとエリスロポイエチンのN末端のアミノ酸の遊離αアミノ基とを結合しようとするいかなる試みも、エリスロポイエチンレセプターとの相互作用に必要不可欠であるエリスロポイエチン糖タンパク質の領域のリジン残基を改変することを避けようとするいかなる試みも開示していない。
【0095】
J.Burgら(PCT公開番号WO02/49673A2)は、ペグ化前および糖タンパク質のリジン残基の全てのεアミノ基の可逆的なシトラコニル化後に開裂される選択的に開裂可能なN末端のペプチド伸長を使用するプロセスによる天然および変異のエリスロポイエチン糖タンパク質のN末端にアミド連結されたペグ結合体の合成を開示している。この参考文献において開示された多段階プロセスについての原理は、同質のモノペグ化された結合体を生成するためにそのペグ化プロセスをN末端アミノ酸の遊離αアミノ基についての選択的とし、それによって、多数のペグ化された誘導体からモノペグ化された結合体を分離する必要性を避けることであった。この方法は以下:(1)Burgらのアプローチは、アミド結合によってアルコキシペグが連結されるエリスロポイエチン糖タンパク質に限定されるが、他方本発明は、種々の合成ポリマーを使用して結合される種々の生物活性成分に適用可能であり;(2)本発明は、グリコシル化ならびに非グリコシル化の「RN」および「RG」レセプター結合タンパク質の両方に適用するが、他方、Burgらは、糖タンパク質の結合体化のみを開示しており;(3)本発明は、アルコキシペグ(例えば、mペグ)、および単官能基が活性化されるヒドロキシペグの両方を包含するが、他方、Burgらは、アルコキシペグの使用のみを開示しており;および(4)本発明において、ポリマーとこのタンパク質との間の第二級アミン結合が、Burgらによって使用されるアミド結合より好ましい(なぜなら本発明は、より安定で、アミノ基上の正電荷を保存しているからである)、に限定されないが、これらを含む多くの重要な点で、本発明の方法とは異なる。同じグループからの類似の研究において、J.Burgら(米国特許第6,340,742号)は、エリスロポイエチン糖タンパク質のアミド結合された結合体の生成を開示しており、ここで、アルコキシペグの1〜3本の鎖は、タンパク質の1〜3個のアミノ基に結合される。しかしながら、本発明とは対照的に、この参考文献は、N末端アミノ酸のαアミノ基についての優先性もレセプターとの相互作用に関与する領域でないアミノ基についての優先性も報告していない。
【0096】
C.Delgadoら(米国特許第6,384,195号)は、トレシルモノメトキシペグとして表され、その明細書中で「TMペグ」と称される反応性ポリマーを使用して調整される顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の結合体を開示している。この参考文献は、TMペグが組み換えヒトGM−CSFと接触する場合、「改変された物質は、活性を有さない種および改変されていない物質より高い活性を有する種を含むことを示す」。当業者が容易に理解するように、活性を有さない種は、生物活性ポリマー成分の結合体の混合物(特にそのような結合体を含む治療上の使用についての組成物)において好ましくないので、それらは有益な効果に寄与せずに、そのような投与を必要とする患者に結合体を投与することの危険性の原因となり得る。本明細書中で記されているように、本発明は、GM−CSFおよびレセプター結合活性に関与するタンパク質上の部位での他のレセプター結合タンパク質の改変を避けることによって、少なくとも部分的に当該分野におけるこの制限を克服し、それによって、活性を有さない種の合成を減少または除去する。本発明はまた、ポリマーによるタンパク質の異なるサイズ、異なる電荷および/または異なる電荷の遮蔽の範囲を有する結合体の分画および精製のための方法を提供する(図9〜12参照のこと)。
【0097】
米国特許第6,384,195号は、GM−CSFのN末端のペグ化について述べておらず、それによって、本発明の方法の利点を認識していないことは特筆すべきである。最終的に、米国特許第6,384,195号は、GM−CSF分子上のペグ分子が付着される(リジン残基に結合される以外の)場所を考慮せずに、1つより多くのペグがGM−CSFの各々の分子に結合される結合体についての優先性を示す。GM−CSF一つにつき6個までのペグ分子を有する結合体についての優先性を述べることによって、その参考文献は、ペグが全ての可能なリジン残基に付着され得、それによって、ペグが細胞表面レセプターへのタンパク質の接近したアプローチを立体的に阻害する位置に付着され得ることを確実にする結合体についての優先性を述べている(本明細書の図3参照のこと)。対照的に、本発明はリジン残基が、レセプターとの相互作用およびそれによって、シグナル伝達に必要不可欠であるレセプター結合タンパク質の領域から離れているか(アゴニストの場合において)、またはシグナル伝達を競合的に阻害する(アンタゴニストの場合において)場合を除いて、リジン残基に結合するペグが望ましくないことを示す。
【0098】
T.Nakamuraら(PCT公開番号WO02/32957A1)は、エリスロポイエチンレセプターのための結合体の親和性を減少させるが、エリスロポイエチン糖タンパク質の52位でのリジン残基のεアミノ基に結合されるペグの分子量の増加は、インビボでの結合体のエリスロポイエチン効果を増加させることを開示している。しかしながら、本発明とは対照的に、この参考文献は、アミノ末端または近接したグリコシル化部位でのペグの結合を開示しておらず、そのようにすることのいかなる利点も認識していない。
【0099】
従って、本発明は、以前に開示された結合体より、別の構造および機能的利点を有する合成ポリマーに結合される生物活性成分の結合体および結合体の合成のための方法を提供する。
【0100】
(組成物)
本発明は、1個以上の生物活性成分、適切に1個以上のより安定化ポリマー(例えば、1個以上のペグ)に結合される、1個以上のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子またはポリペプチドホルモンを含む結合体または複合体を提供する。代表的に、そのような結合体は、本明細書中に記載された本発明の方法によって生成され;しかしながら、本明細書中に記載された結合体以外の構造および活性を有する結合体は、それらが本方法によって生成される場合、同等物とみなされるので、本発明に包含される。関連した局面において、本発明はまた、1個以上のそのような結合体または複合体を含む組成物を提供する。本発明のこの局面による組成物は、1個以上(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、10個など)の上記の本発明の結合体または複合体を含む。特定のそのような局面において、組成物は1個以上のさらなる成分(例えば、1個以上の緩衝塩、1個以上のカオトロピック剤、1個以上の界面活性剤、1個以上のタンパク質(例えば、アルブミンまたは1個以上の酵素)、1個以上の非結合性ポリマー、1個以上の浸透活性剤など)を含み得る。本発明のこの局面の組成物は、固体(例えば、乾燥粉末)または溶液(特に本発明の1個以上の結合体を含む生理的に適合する緩衝された塩溶液の形態)を含む、任意の形態であり得る。
【0101】
(A.薬学的組成物)
本発明の特定の組成物は、予防、診断または治療の適用における使用のための薬学的組成物としての使用のために特に処方される。そのような組成物は、代表的に、本発明の1個以上の結合体、複合体または組成物および1個以上の薬学的に受容可能なキャリヤーまたは賦形剤を含む。本明細書中で使用される「薬学的に受容可能なキャリヤーまたは賦形剤」という用語は、添加の結果生じる有害作用を有さずに、薬学的組成物が取り込まれるヒトまたは他の哺乳動物を含む、レシピエント動物に許容され得る、非毒性の固体、半固体もしくは液体充填剤、希釈液、カプセル化物質または任意のタイプの補助的な処方物を言う。
本発明の薬学的組成物は、任意の適切な投与方法(例えば、経口、直腸、非経口、全身内部、経膣、腹腔、局所(粉末、軟膏、点滴または経皮貼布によって)、経口または鼻腔用スプレーまたは吸入によって頬側)によって受容体に投与され得る。本明細書中で使用される「非経口」という用語は、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、大槽内、皮下ならびに間接内注射および注入を含む投与の方法を言う。
【0102】
非経口のための本発明によって提供される薬学的組成物は、薬学的に受容可能な無菌水溶液もしくは非水溶液、分散、懸濁液または乳濁液、ならびに、使用する前に無菌注射剤または分散に水を加えてもとに戻すための無菌粉末を含み得る。適切な水溶液および非水溶液キャリヤー、希釈剤、溶剤またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロールなど、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール))、カルボキシメチルセルロースおよびその適切な混合物、植物性油脂(例えば、オリーブオイル)、ならびに注入可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性が、例えば、コーティング物質(例えば、レシチン)の使用、分散の場合において必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって、保持され得る。
そのような本発明の薬学的組成物はまた、アジュバント(例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤)を含み得る。微生物の作用の防止は、種々の殺菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの包含によって確実にされ得る。それはまた、浸透圧物質(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)含むことを所望され得る。注射可能な薬学的形態の長期の吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、アルミニウムモノステアレート、ヒドロゲルおよびゼラチン)の包含によって、引き起こされ得る。
【0103】
いくつかの場合において、薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉注射からの吸収を遅延させることが所望される。これは、水溶性の体液中で低い溶解度を有する結晶質または非晶質の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次いで、薬物の吸収の速度は、その溶解の速度に依存し、次に、その物理的形状に依存し得る。代替的に、非経口的に投与された薬物形態の遅らせた吸収は、油ビヒクル中で薬物を溶解または懸濁することによって達成され得る。
【0104】
蓄積注射形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)においてマイクロカプセルに入れた薬物のマトリックスを形成することによって作製される。使用されるキャリヤーポリマーおよび天然の特定のキャリヤーポリマーの薬物の割合に依存して、薬物放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、生体適合性ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。蓄積注射製剤はまた、体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を閉じ込めることによって調整される。
【0105】
注射用の製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用する前に滅菌水中もしくは他の無菌注射剤媒体中で溶解または分散され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を取り込むことによって滅菌され得る。
【0106】
経口投与のための固体投薬形態は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および顆粒を含む。そのような固体投薬形態において、活性成分は、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリヤー(例えば、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムおよび/またはa)充填剤もしくは増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアゴム
)、c)湿潤剤(humectant)(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(wetting agent)(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート)、h)吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレー)、およびi)滑択剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ペグ、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物))と混合される。カプセル、錠剤、丸剤の場合において、投薬形態はまた、緩衝剤を含み得る。
【0107】
類似のタイプの固体組成物もまた、ラクトース(乳糖)のような賦形剤、ならびに高分子量PEGなどを使用して、軟らかい充填ゼラチンカプセルおよび硬い充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。
【0108】
錠剤、糖剤、カプセル、丸剤ならびに顆粒の固体投薬形態は、コーティングおよび殻(例えば、腸またはクロノモジュレート(chronomodulating)コーティングおよび薬学的処方の分野において周知である他のコーティング)を用いて調製され得る。それらは必要に応じて、不透明の薬剤を含み得、また、それらは活性成分のみを放出するか、または必要に応じて、遅延様式において胃腸管のある特定の部分に優先的に放出するような組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、重合体物質およびワックスが挙げられる。活性成分はまた、適切な場合、1つ以上の上記賦形剤を有するマイクロカプセルに入れた形態であり得る。
【0109】
経口投与についての液体の投薬形態としては、薬学的に受容可能な乳濁液、水溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体の投薬形態は、当該分野において一般的に使用される不活性な希釈剤(例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリ(エチレングリコール)およびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにその混合物))を含み得る。
【0110】
不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント(例えば、界面活性剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味料および香料)を含み得る。
【0111】
活性成分に加えて、懸濁液は、懸濁化剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカント、およびその混合物)を含み得る。
【0112】
局所投与は、肺および眼の表面を含む、皮膚または粘膜への投与を含む。吸入のための投与を含む、局所投与についての組成物は、加圧され得るか、または加圧され得ない乾燥粉末として調整され得る。加圧されない粉末組成物において、細かく分けられた形態の活性成分は、例えば、直径で100ミクロメートルまでのサイズを有する粒子を含む、より大きなサイズの薬学的に受容可能な不活性なキャリヤーを有する混合物中で使用され得る。適切な不活性なキャリヤーは、糖(例えば、ラクトースおよびスクロース)を含む。好ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%は、0.01〜10ミクロメートルの範囲における効果的な粒子サイズを有する。
【0113】
代替として、薬学的組成物は、加圧され得、圧縮ガス(例えば、窒素または液化ガス噴霧剤)を含み得る。液化性の噴霧剤媒体および実際には全組成物は、活性成分が任意の十分な程度まで、その中に溶解しないことが好まれ得る。加圧された組成物はまた、界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、液体もしくは固体の非イオン性界面活性剤であり得るか、または固体の陰イオン性界面活性剤であり得る。ナトリウム塩の形態において、固体の陰イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0114】
さらに局所投与の形態は眼への投与である。この投与の方法において、本発明の結合体または組成物は、薬学的に受容可能な眼のビヒクルにおいて送達されるので、活性成分は、成分を粘膜または角膜および眼の内部の領域(例えば、前房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜および強膜)に浸透することを可能にするために、十分な時間の間、成分を眼の表面と接触することを保持される。薬学的に受容可能な眼のビヒクルは、例えば、軟膏剤、植物油またはカプセル化している物質である。
【0115】
直腸投与または膣投与のための組成物は、好ましくは、適切な非刺激性の賦形剤またはキャリヤー(例えば、カカオ脂、ペグまたは坐薬ワックス)を有する本発明の結合体または組成物を混合することによって調整され得る坐薬であり、それは室温で固体であるが、体温で液体であるので、それによって、直腸または膣の窩で溶け、薬物を放出する。
【0116】
本発明の治療方法で使用される薬学的組成物はまた、リポソームの形態で投与され得る。当該分野において公知であるように、リポソームは一般的に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水溶性の培地中で分散される単一層状の水和結晶または多層状の水和結晶によって形成される。任意の非毒性で、リポソームを形成し得る薬学的に受容可能および代謝可能な脂質が使用され得る。本発明の1つ以上の結合体または組成物に加えて、リポソーム形態における本薬学的組成物はまた、1つ以上の安定剤、防腐剤、賦形剤などを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソーム形態の方法は、当該分野において公知である(例えば、Zalipsky,Sら,米国特許第5,395,619号参照のこと)。ペグに結合されるリン脂質を含むリポソーム、通常、モノメトキシペグに結合されるホスファチジルエタノールアミンは、哺乳類の血液循環において寿命を延長させることを含む、有益な特性を有する(Fisher,D,米国特許第6,132,763号)。
【0117】
(B.使用)
本明細書中の他の場所に記載されたように、本発明の方法、結合体および組成物は、それらのレセプターに結合するための生物学的成分の能力を妨げずに、生物学的成分の生物活性を保持するための方法において有利に使用される。本発明の特定のそのような方法は、1つ以上の結合体および組成物を細胞、組織、器官または生物体に送達することを必要とし得る。特に、本発明は、細胞、組織、器官または生物体に複合体または組成物の1つ以上の制御された送達を提供し、それによって、細胞、組織、器官または生物体に活性を放出される特定の成分の量を、時間的および空間的に、規制するための能力を有する使用者に提供する。
【0118】
一般に、本発明のそのような方法は、1つ以上の活性を含む。例えば、本発明のそのような1つの方法は、以下:(a)本明細書中で述べられたような、本発明の1つ以上の結合体または組成物を調整する工程;および(b)細胞、組織、器官または生物体への本発明の1つ以上の結合体または組成物の結合を有利にする条件下で、1つ以上の細胞、組織、器官または生物体を1つ以上の結合体または組成物に接触する工程を含む。いったん、本発明の結合体および/または組成物の生物活性成分が、細胞、組織、器官または生物体に結合される(または、いくつかの場合において、内在化される)と、その成分は、それらの意図された生物学的機能の実行へ進む。例えば、ペプチド成分は細胞、組織、器官または生物体上もしくは内で、レセプターまたは他の成分に結合し得;細胞、組織、器官または生物体内の代謝反応に関係し;細胞、組織、器官または生物体内の1つ以上の酵素活性を増加もしくは活性化、または減少もしくは阻害することを実行し;細胞、組織、器官または生物体に失っている構造上の成分を提供し;細胞、組織、器官または生物体に1つ以上の栄養性の必要物を提供し;疾患または身体疾患の1つ以上の進行または兆候を阻害、処置、転換または改善し;その他同様のことをする。
【0119】
さらなる実施形態において、本発明の結合体および組成物は、産業用の細胞培養に使用され得、それらの生物活性の十分な保持の組み合わされた効力の結果として取得される結合体の生物活性成分の予想外に高い効力に起因し、産業用の使用の厳しい条件下でさえ、作用の持続時間を増加させる。本結合体のこれらの予想外に高い効力は、著しく高い生物体生成物、著しく高いレベルの組み換えタンパク質の発現、およびバイオプロセスの有効性における他の改良をもたらし得る。
【0120】
(C.用量レジメン)
本発明の結合体、複合体または組成物は、それに1つ以上の生物活性成分(すなわち、1つ以上のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニスト)を送達するために、細胞、組織、器官もしくは生物体にインビトロ、エキソビボまたはインビボで投与され得る。当業者は、与えられた活性化合物、結合体、複合体または組成物の有効な量は、経験的に決定され得、また純粋な形態で使用され得、または、ここでそのような形態は、薬学的に受容可能な処方物もしくはプロドラッグの形態で存在する。本発明の化合物、結合体、複合体もしくは組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせて獣医学または薬学的組成物としてその必要とする動物(哺乳類(例えばヒト)を含む)患者に投与され得る。任意の特定の患者についての治療的に有効量のレベルは、達成されるための細胞の反応のタイプおよび度合いを含む種々の要因;使用される特定の化合物、結合体、複合体もしくは組成物の同一性および/または活性;患者の年齢、体重または表面積、身体全体の健康、性別および食事;投与時間、投与経路、および活性化合物の排出の割合;処置の期間;特定の化合物、結合体、複合体または組成物と組み合わせてもしくは同時に使用される他の薬物;ならびに薬学的および医学的分野における当業者に周知であるような要因次第である。例えば、本発明の与えられた化合物、結合体、複合体または組成物の投与量を、所望される治療効果を達成するために必要とされるより低いレベルで始めて、所望される効果が達成されるまで、投薬量を除々に増加させることは当業者に周知である。
【0121】
用法はまた、当該分野において認容および慣例の技術(例えば、サイズ排除、イオン交換もしくは逆相高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)、バイオアッセイまたは免疫学的アッセイ)によって決定された、血液中の与えられた活性化合物の所定の濃度を提供するために、患者特定の様式において調整され得る。このように、患者の用量レジメンは、医学、薬学および/または薬理学分野における当業者に慣用されもしくは周知の方法に従って、HPLCまたは免疫学的検定によって測定された、比較的一定の血中濃度を達成するために調整され得る。
【0122】
(D.診断的使用および治療的使用)
本発明の結合体の診断的使用は、動物(特に、ヒト)の身体内において、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、またはポリペプチドホルモンに対する異常に高い結合能を有する細胞または組織(例えば、癌)を、本発明の結合体または組成物の投与によって位置付けるためであり得、その結合体(または1つ以上の成分(すなわち、生物活性成分および/または合成ポリマー))は、標識されているか、あるいは当該分野で公知の方法に従う検出(例えば、光学的検出、放射測定検出、蛍光検出、または共鳴検出による)を可能にするような1種以上の検出可能な標識を含む。例えば、非小細胞肺癌の大部分は、異常に高濃度の上皮増殖因子レセプターを発現する(Bunn,P.A.ら(2002)Semin Oncol 29(Suppl 14):38〜44)。従って、本発明の別の局面において、本発明の結合体および組成物は、診断方法または治療方法において、例えば、種々の身体的障害に対する素因を有するかまたはそのような障害に罹患している動物(特に、哺乳動物(例えば、ヒト))においてそのような障害を診断、処置、または予防する際に、使用され得る。そのようなアプローチにおいて、治療の目的は、上記障害の発症を遅延または予防すること、および/あるいは上記障害を治癒すること、上記障害の寛解を誘導すること、または上記障害の寛解を維持すること、および/あるいは他の治療レジメンの副作用を減少もしくは最小にすることである。
【0123】
従って、本発明の結合体、複合体、および組成物は、身体的障害(例えば、感染症または疾患)の防御、抑制、または処置のために使用され得る。身体的障害からの「防御」という用語は、本明細書中で使用される場合、「予防」、「抑制」および「処置」を包含する。「予防」とは、上記疾患または身体的障害を誘導する前に本発明の複合体または組成物を投与することを包含し、一方、「抑制」とは、上記疾患の臨床的出現の前に上記結合体または組成物を投与することを包含する。従って、身体的障害の「予防」および「抑制」は、代表的には、上記障害の素因があるかまたは上記障害に対して感受性であるが未だ上記障害に罹患はしていない、動物において行われる。しかし、身体的障害の「処置」とは、上記疾患の出現後に本発明の治療結合体または治療組成物を投与することを包含する。ヒトおよび脊椎動物の医療において、身体的障害を「予防すること」と「抑制すること」とを区別することが常に可能であるわけではないことが、理解される。多くの場合、最終的誘導事象は、未知または潜在的であり得、患者も医師も、その誘導事象が出現した充分に後になるまで、その誘導事象に気づかないかもしれない。従って、本明細書中で定義される「予防すること」および「抑制すること」の両方を包含するために、「処置」とは別個に用語「予防」を使用することが、一般的である。従って、本発明の方法に従って使用される用語「防御」とは、「予防」を包含することになる。本発明のこの局面に従う方法は、医師が上記の治療目標を達成するのを可能にする、1つ以上の工程を包含し得る。本発明のそのような一方法は、例えば、(a)身体的障害に罹患しているかまたはそのような障害に対する素因がある動物(好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト))を同定する工程;および(b)その動物に、有効量の本明細書中に記載される本発明の一つ以上の結合体、複合体または組成物を投与し、その結合体、複合体、または組成物の投与によって、その動物における身体的障害の発症が予防、遅延もしくは診断されるか、またはその身体的障害が治癒されるかもしくはその身体的障害の寛解が誘導されるかもしくはその寛解が維持されるようにする工程を包含し得る。
【0124】
本明細書中で使用される場合、身体的障害に「対する素因がある」動物とは、その障害の複数の明白な身体的症状を示さないが、遺伝的、精神的、または他の様式でその障害を発症する危険がある動物として、定義される。本方法において、所定の身体的障害の素因があるかまたはその障害の危険があるかまたはその障害に罹患している動物の同定は、当業者が精通している標準的な当該分野で公知の方法(例えば、放射線学的アッセイ、生化学的アッセイ(例えば、動物から得たサンプルにおける、特定のペプチド、タンパク質、電解質などの相対レベルのアッセイ)、外科的方法、遺伝的スクリーニング、家族歴、身体触診、病理試験または組織学的試験(例えば、組織もしくは体液のサンプルもしくは塗抹の顕微鏡評価、免疫学的アッセイなど)、体液(例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、精液など)の試験、画像化(例えば、放射線画像化、蛍光画像化、光学的画像化、共鳴画像化(例えば、核磁気共鳴(「NMR」)または電子スピン共鳴(「ESR」)を使用する)などが挙げられる)に従って達成され得る。一旦、動物がこのような1種以上の方法によって同定されると、その動物は、上記身体的障害を予防、抑制、遅延、または治癒するために、積極的および/または前向きに処置され得る。
【0125】
本発明の結合体、複合体、組成物、および方法を用いて予防、診断、または処置され得る身体的障害としては、上記結合体または組成物の生物活性成分(代表的には、そのサイトカイン、増殖因子、ケモカイン、もしくはポリペプチドホルモン成分、またはそのアンタゴニスト)が上記の予防、診断、または処置において使用され得る、任意の身体的障害が挙げられる。そのような障害としては、種々の癌(例えば、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、白血病、リンパ腫、肺癌、神経学的癌、皮膚癌、頭部および頚部の癌、骨の癌、結腸癌および他の胃腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、ならびに他の癌腫、肉腫、腺腫、および骨髄腫);医原性疾患;感染性疾患(例えば、細菌疾患、真菌疾患、ウイルス疾患(肝炎、心臓向性ウイルスにより引き起こされる疾患、HIV/AIDSなどを含む)、寄生生物疾患など);遺伝的障害(例えば、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、ゴーシェ病、ポーンプ病、重症複合型免疫不全障害、小人症など)、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、および他の血液障害;神経変性障害(例えば、多発性硬化症、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルツハイマー病など);酵素障害(例えば、痛風、尿毒症、高コレステロール血症など);不特定病因または多病巣性病因の障害(例えば、心血管疾患、高血圧、炎症性腸疾患など);自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、乾癬など)、ならびに当業者が容易に精通している医学的に重要な他の障害が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の結合体、複合体、組成物、および方法はまた、疾患の進行の予防において、例えば、前悪性病変から悪性病変への進行の化学的予防において、使用され得る。
【0126】
従って、本発明の治療方法は、必要とされる動物に種々の投与経路によって投与され得る本発明の1種以上の結合体、複合体、または組成物、あるいは本発明の薬学的組成物のうちの1種以上を使用し、上記投与経路としては、経口投与、直腸投与、非経口投与(静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、槽内投与、皮下投与、ならびに関節内注射および関節内注入を包含する)、全身内投与、膣内投与、腹腔内投与、局所投与(粉末、軟膏、点滴、または経皮パッチによる)、口腔内投与、口腔スプレーまたは経鼻スプレー、または吸入による投与が挙げられる。本発明によって、有効量の上記結合体、複合体、または組成物が、特定の障害に罹患しているかまたはその障害に対する素因がある細胞または動物に、インビトロ、エキソビボ、またはインビボで投与され得、それによって、その動物においてその障害が予防、遅延、診断、または処置される。本明細書中で使用される場合、「有効量の結合体(または複合体または組成物)」とは、その結合体(または複合体または組成物)が、その結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニスト)の生物学的活性を実行し、それによって、本発明の結合体、複合体、または組成物が投与された動物においてその身体的障害を予防、遅延、診断、処置、もしくは治癒する、量を指す。当業者は、有効量の本発明の結合体、複合体、または組成物は、薬学および医学の分野において当業者にとって周知である標準的方法に従って、経験的に決定され得ることを認識する。例えば、Beers,M.H.ら編(1999)Merck Manual of Diagnosis & Therapy,第17版、Merck and Co.,Rahway,NJ;Hardman,J.G.ら編(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版、McGraw−Hill Medical Publishing Division,New York;Speight,T.M.ら編(1997)Avery’s Drug Treatment,第4版,Adis International,Aukland,New Zealand;Katzung,B.G.編(2000)Basic and Clinical Pharmacology.第8版,Lange Medical Books/McGraw−Hill,New York(これらの参考文献およびその中に引用された参考文献は、その全体が参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0127】
ヒト患者に対して投与される場合、本発明の結合体、複合体、および組成物の全一日投与量、全一週間投与量、または全一ヶ月間投与量は、信頼できる医学的判断の範囲内で主治医により決定されることが理解される。例えば、満足のいく結果が、使用される具体的な生物活性化合物に依存する適切な投与量にて特定の本発明の結合体、複合体、または組成物を投与することによって得られ、その投与量は、当業者が容易に精通しているか、または慣用的な実験のみを使用して経験的に容易に決定され得る。本発明のこの局面によると、上記結合体、複合体、または組成物は、1回で、または分割投与で(例えば、1日当たり1回もしくは2回、または1週間当たり1回もしくは2回、または1ヶ月間当たり1回もしくは2回など)投与され得る。種々の投与経路(例えば、非経口経路、皮下経路、筋肉内経路、眼内経路、鼻内経路など)についての適切な投与レジメンもまた、慣用的実験のみを使用して経験的に容易に決定され得るか、または当業者にとって容易に明らかであり、それは、上記結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、もしくはそのアンタゴニスト)の正体に依存する。
【0128】
さらなる適用において、本発明の結合体、複合体、および組成物は、診断剤または治療剤を、上記結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニスト)のレセプターを発現するか、その生物活性成分を結合するか、その生物活性成分を組み込むか、またはその生物活性成分を取り込み得る、細胞、組織、器官、または生物に特異的に標的化するために使用され得る。本発明のこの局面に従う方法は、例えば、上記細胞、組織、器官、または生物を、本発明の1種以上の結合体、複合体、または組成物(これらは、1種以上の診断剤または治療剤をさらに含む)と接触し、その結果、上記結合体、複合体、または組成物が、上記細胞、組織、器官、または生物によって結合されるかもしくは取り込まれ、それによって上記診断剤または治療剤が上記細胞、組織、器官、または生物に送達される、工程を包含し得る。本発明のこの局面に従って使用される診断剤または治療剤は、核酸、有機化合物、タンパク質もしくはペプチド、抗体、酵素、糖タンパク質、リポタンパク質、元素、脂質、糖質、同位体、炭化水素、画像化剤、検出プローブ、またはこれらの任意の組み合わせ(これらは、本明細書中に記載されるように検出可能に標識され得る)から選択される少なくとも1種の因子であり得るが、これらに限定はされない。本発明のこの局面において使用される治療剤は、上記標的細胞(または組織、器官、もしくは生物)に対する治療効果を有し得、この効果は、欠損遺伝子もしくは欠損タンパク質の修正、薬物作用、毒性効果、増殖刺激効果、増殖阻害効果、代謝効果、異化効果、同化効果、抗ウイルス効果、抗真菌効果、抗細菌効果、ホルモン効果、神経液効果、細胞分化刺激効果、細胞分化阻害効果、神経調節効果、抗新生物効果、抗腫瘍効果、インスリン刺激効果もしくはインスリン阻害効果、骨髄刺激効果、多能性肝細胞刺激効果、免疫系刺激効果、および本発明のこの局面に従う送達系を介して細胞(または組織、器官、もしくは生物)に送達される治療剤により提供され得る他の公知の任意の治療効果から選択されるが、これらに限定されない。
【0129】
そのようなさらなる治療剤は、公知および新規な化合物および組成物(抗生物質、ステロイド類、細胞傷害剤、血管作用剤、抗体および他の治療剤を包含する)から選択され得るが、これらに限定されない。そのような因子の非限定的例としては、抗生物質、および細菌性ショックの処置において使用される他の薬物(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ナフシリン、非経口セファロスポリンなど);副腎皮質ステロイドおよびそのアナログ(例えば、デキサメタゾン)(これは、エンドトキシンにより引き起こされる細胞傷害を緩和する);血管作用性薬物(例えば、αアドレナリン作用性レセプター遮断剤(例えば、フェノキシベンズアミン)、βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト(例えば、イソプロテレノール)、およびドーパミンが、挙げられる。
【0130】
本発明の結合体、複合体、および組成物はまた、疾患の診断のため、および治療応答をモニターするために、使用され得る。特定のこのような方法において、本発明の結合体、複合体、または組成物は、1種以上の検出可能な標識(例えば、本明細書中の他の場所に記載される標識)を含み得る。具体的なそのような方法において、本発明の検出可能に標識されたこれらの結合体、複合体、または組成物は、上記結合体、複合体、または組成物の生物活性成分(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、もしくはポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニスト)のレセプターを発現するかもしくはその生物活性成分を取り込む、細胞、組織、器官、もしくは生物を検出するために使用され得る。そのような方法の一例において、上記細胞、組織、器官、または生物は、本発明の結合体、複合体、または組成物のうちの1つ以上と、上記細胞、組織、または生物による(例えば、上記結合体の細胞表面レセプターへの結合によるか、または上記細胞中への上記結合体のピノサイトーシスもしくは拡散による)上記結合体の結合もしくは取り込みを支持する条件下で接触され、その後、使用される標識に特異的な検出手段(例えば、経口標識された結合体についての蛍光検出;磁気標識された結合体についての磁気共鳴画像化;放射標識結合体についての放射性画像化など)を使用して、上記細胞に結合したかまたは取り込まれた結合体が、検出される。検出可能に標識されたそのような結合体の他の用途としては、例えば、有効量の本発明の結合体の1つ以上の標識形態を投与してその細胞、組織、器官、または生物(もしくは動物)に関係する検出可能な放射線を測定することによる、細胞、組織、器官、もしくは生物の画像化、または動物(ヒトを含む)の内部構造の画像化が挙げられ得る。診断画像化剤および治療画像化剤における種々の型の標識を検出する方法およびその使用は、当業者にとって周知であり、本明細書中の他の場所に記載されている。
【0131】
別の局面において、本発明の結合体および組成物は、上記結合体の生物活性成分の特異的なレセプターの濃度または活性を、そのようなレセプターを発現する細胞表面上で調節するための方法において、使用され得る。所定のレセプターの活性を「調節すること」によって、上記結合体は、上記レセプターに結合した際に、そのレセプターを介して媒介される生理学的活性(例えば、細胞内シグナル伝達カスケード)を活性化または阻害のいずれかを行うことが、意味される。本発明の結合体の調節活性についてのいかなる特定の機構的説明によっても拘束されることは意図しないが、そのような結合体は、細胞レセプターの生理学的活性を、上記結合体の生物活性成分を介して上記レセプターに結合することによってアンタゴナイズし得、それにより、天然のアゴニスト(例えば、非結合型生物活性成分)の結合をブロックし、そしてその天然のアゴニストによるそのレセプターの活性化を妨げると同時に、そのレセプター自体の生理学的活性の実質的な活性化は誘導しない。本発明のこの局面に従う方法は、1つ以上の工程(例えば、上記細胞を(これは、インビトロで行っても、エキソビボで行っても、インビボで行ってもよい)本発明の結合体のうちの1つ以上と、その結合体(すなわち、上記結合体の生物活性成分部分)が、上記細胞表面上の生物活性成分のレセプターには結合するがそのレセプターを実質的には活性化しない条件下で、接触させる工程)を包含し得る。そのような方法は、当業者が容易に認識するように、種々の診断適用および治療適用において有用である。
【0132】
(キット)
本発明はまた、本発明の結合体および/または組成物を含むキットを提供する。そのようなキットは、代表的には、密に閉じ込められた状態で、1つ以上の容器(例えば、バイアル、チューブ、アンプル、ボトル、シリンジなど)を有するキャリア(例えば、箱、ボール紙、チューブなど)を備え、第一容器は、本発明の結合体および/または組成物のうちの1つ以上を含む。本発明のこの局面によって包含されるキットは、本発明の結合体および組成物の1種以上の特定の適用を実行するために必要な1種以上のさらなる成分(例えば、試薬および化合物)(例えば、特定の疾患または身体的障害のために有用な1種以上の成分(例えば、1種以上のさらなる治療化合物もしくは治療組成物、1種以上の診断試薬、1種以上のキャリアもしくは賦形剤など)、本発明の1種以上のさらなる結合体または組成物など)をさらに含み得る。
【0133】
本明細書中に記載される方法および適用に対する他の適切な改変および適合が、本発明の範囲からもそのいかなる実施形態からも逸脱することなくなされ得ることが、当業者にとって容易に明らかである。ここに本発明が詳細に記載されているが、本発明は、以下の実施例に対する参照によってより明確に理解される。以下の実施例は、例示のためだけに本明細書中に包含され、本発明の限定であることは意図されない。
【実施例】
【0134】
(実施例1:PEG−インターフェロンα結合体)
インターフェロンαは、2001年に2億米ドルを超える世界市場を有する、主にC型肝炎ウイルス(「HCV」)感染を有する患者の処置のための商業的に重要な医療タンパク質である。米国において、300万人〜400万人の人々が、慢性C型肝炎に罹患し、約10,000件のHCV関連死が毎年生じる(Chander,G.ら(2002)Hepatology 36:5135〜5144)。IFN−αの有用性を改善する試みにおいて、その開発および市販を主に担う会社(Schering−Plough Corp.およびF.Hoffmann−La Roche AG)の両方が、モノメトキシプロピル(エチレングリコール)すなわち「mPEG」とIFN−αとの結合体を開発して市販した。各場合において、mPEGは、唯一の結合点においてインターフェロンαの各分子に連結される。各場合において、その製品は、非改変型インターフェロンと比較して顕著に減少したレセプター結合活性を有する、位置異性体の混合物を含む。各場合において、その結合体の増加したバイオアベイライビリティおよび作用期間は、1週間当たり1回のその結合体の注射の改善された臨床的有効性によって測定した場合、1週間当たり3回のその非改変型タンパク質の注射と比較して、慢性HCV感染症の処置について、PEG結合体化から生じるインビトロでの減少した生物活性をインビボではより補償する(Manns,M.P.ら(2001)Lancet 358:958〜965)。
【0135】
F.Hoffman−La RocheのPEG−インターフェロンα2a結合体(PEGASYS(登録商標))において、2本の20kDa mPEG鎖が、1つのリジンリンカーに結合しており(いわゆる、「分枝型PEG」)、このリンカーは、主に、Lys31、Lys121、Lys131またはLys134のうちの1つに連結される(Bailon,P.ら(前出))。これらはすべて、インターフェロンα2aのレセプター結合ドメイン内にあるかまたはそのドメインに近接する(図1aの結合部位1および配列番号1を参照のこと)。
【0136】
Schering−Plough Corp.のPEG−インターフェロンα2b結合体において、一本の12kDa mPEG鎖が、34位のヒスチジン残基に優先的に結合している(His34;Wylie,D.C.ら(前出);Gilbert,C.W.ら、米国特許第6,042,822号;Wang,Y.S.ら(前出))。このヒスチジン残基は、レセプターへの結合のために重要な領域中にある(図1b参照)。Schering−PloughのPEG−イントロン製品における他のPEG結合部位(Lys121、Tyr129およびLys131)もまた、結合部位1(図1bおよび配列番号2)内またはその付近にあることが観察されている。
【0137】
これらの2つの商業製品とは対照的に、本発明の結合体は、N末端アミノ酸残基に結合した一本の水溶性合成ポリマー(好ましくは、PEGまたはmPEG)鎖を有し、このN末端残基は、このタンパク質のレセプター結合領域とは離れている(図1cおよび1dにおけるCyts−1と結合部位との間の空間的関係を参照のこと)。このことは、インターフェロンαが、「RN」サイトカインであることを示す。図9および図10は、本発明の例示的PEG−インターフェロンα結合体の、それぞれ、カチオン交換クロマトグラムおよびサイズ排除クロマトグラムを示す。この反応混合物は、さらなるメチオニン残基がアミの末端のCys−1(これは、天然配列の最初の残基である)の前に存在する、インターフェロンα2bを含んだ。この反応性PEGは、20kDa PEG−アルデヒドであった。これは、0.2mM濃度で存在した。還元剤は、最終濃度14mMのナトリウムシアノボロヒドリドであった。この反応の進行を、4℃でインキュベーションする間にサイズ排除クロマトグラフィーによって定期的にモニターした。IFN−αは、記載された条件下でPEG化されるために充分に可溶性であったが、他のサイトカイン(例えば、IFN−β)は、より可溶性が低い。他のサイトカインは、C.W.Gilbertら(米国特許第5,711,944号)によってINF−αについて記載され、R.B.Greenwaldら(米国特許第5,738,846号)によってインターフェロンαおよびインターフェロンβについて記載されるように、界面活性剤の存在下でPEG化される必要があり得る。
【0138】
図9に示される分画のために使用したカチオン交換カラムは、ToyoPearl MD−G SP(1×6.8cm;Tosoh Biosep,Montgomeryvile,PA)であり、20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6)中の0〜0.4M NaClの直線勾配を用いて、流量0.5mL/分で展開させた。図10におけるデータを得るために使用したサイズ排除カラムは、SUPERDEX(登録商標)200(HR 10/30;Amersham Bioscience,Piscataway,NJ)であり、150mM NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6)中で0.5mL/分にて溶出させた。他の適切なイオン交換クロマトグラフ媒体およびサイズ排除クロマトグラフ媒体ならびに分画条件は、当業者にとって公知である。本発明の精製モノPEG−IFNα2bの自動Edman分解によるアミノ末端アミノ酸分析は、このPEGのうちの90%より多くがそのN末端残基に結合していることを示した。この分析は、Commonwealth Biotechnologies,Inc.(Richmond,VA)によって実施された。
【0139】
(実施例2:PEG−インターロイキン2結合体)
インターロイキン2(「IL−2」)は、特定の癌(腎細胞癌腫および悪性黒色腫を含む)に対する免疫調節活性を示すサイトカインである。しかし、臨床的効力は乏しく、わずかな割合の患者しか部分的応答も完全応答も経験しないという結果である(Weinreich,D.M.ら(2002)J Immunother 25:185〜187)。IL−2は、血流中での短い半減期を有し、これは、癌患者における寛解の低い誘導速度に関係付けられる。リジン残基のランダムPEG化によってIL−2をより有用にある試みは、最適ではなかった(Chen,S.A.ら(2000)J Pharmacol Exp Ther 293:248〜259)。PEGをそのグリコシル化部位(Goodson,R.J.ら(前出))または非必須システイン(Cys 125)にてIL−2に選択的に結合する試み、またはPEGを残基1と残基20との間にシステインを含むIL−2のムテイン(Karte,N.ら、米国特許第5,206,344号)に選択的に結合する試みは、臨床的に有用な生成物をもたらさなかった。
【0140】
図4は、IL−2のレセプター−結合領域に対するリジン残基の分布を示し、これは表面にアクセス可能なリジン残基が多く、レセプター結合に関与する領域内にあることを示している。実際、Lys−35およびLys−43は、IL−2についてα−レセプターと相互作用するのに必要とされるものとして同定されており、これはリジン残基(配列番号6を参照のこと)のPEG化によるIL−2の不活性化のための機構を示唆している。図4はまた、IL−2のN−末端領域が、このタンパク質のレセプター結合領域から離れていることも示し、これはIL−2が、「RN」サイトカインの構造を有することを示す。IL−2は、「RN」サイトカインであるという発明者らの結論は、H.Satoら((2000)Bioconjug Chem 11:502−509)の観察と矛盾しない。Satoらは、酵素学的なグルタミン転移を用いて10kDa mPEGの一本鎖または二本鎖を、これらの著作者らが、N末端の伸長の際、IL−2変異タンパク質へ導入したAQQIVM配列中の、一個または二個のグルタミン残基(「Q」)に対して結合させた。Satoらは、そのムテインのトランスグルタミネーションによってアミノ末端付近でPEG化したそれらの結合体が、IL−2ムテイン中リジンのランダムなPEG化によって調製した結合体よりもより多く生理活性を保持することを報告した。他のタンパク質をPEG化する類似するアプローチの概説については、Sato,H.(2002)(前出)を参照のこと。図4に示すように、タンパク質のレセプター結合領域からIL−2のアミノ末端の空間的な分離に基づいて、Thr−3残基におけるグリコシル化部位(示さず)が、本明細書中に定義するように、IL−2を「RG」レセプター−結合タンパク質にすることが理解され得る。従って、IL−2は、RNサイトカインおよびRGサイトカインの両方である。
【0141】
図11および図12は、実施例1のようにN末端の選択的な還元性アルキル化によって、PEG化した、本発明の例示的なPEG−IL−2結合体のカチオン交換クロマトグラムおよびサイズ排除クロマトグラムをそれぞれ示す。分画のために用いた条件は、図9および図10について記載した条件とそれぞれ同一であった。図13は、図11に示すように、イオン交換クロマトグラフィーによって精製する前後の、同一結合体のドデシル硫酸ナトリウム存在下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動(「SDS−PAGE」)分析を示す。このゲルは、Bis−Tris緩衝液(カタログ番号NP0335、Invitrogen,Carlsbad,CA)における4%〜12%の全アクリルアミドの勾配を含んだ。それぞれ約1mcg〜2mcgのタンパク質を含むサンプルを、分析前に90℃で10分間加熱した。このゲルを、冷却しながら約135分間、117〜120の定電圧で電気泳動した。このゲルの一部を、Sypro(登録商標)Rubyタンパク質ゲル染色(Molecular Probes,Eugene,OR)を用いて染色し、そして他のタンパク質部分を、C.E.Childsの方法((1975)Microchem J 20:190−192)およびB.Skoog((1979)Vox Sang 37:345−349)の適用によってPEGについて染色した。図11の二つのピークの各々における精製したモノPEG−IL−2の自動化エドマン分解によるアミノ末端のアミノ酸分析は、90%を越えるPEGが、N−末端残基に結合したことを示した。この分析は、Commonwealth Biotechnologies,Inc.(Richmond,VA)によって実施された。
【0142】
(実施例3:N末端のPEG化EGFおよびN−末端のPEG化IGF−1の合成ならびに分析)
上皮細胞増殖因子(「EGF」;配列番号7)およびインスリン様増殖因子−1
(「IGF−1」;配列番号9)を、それぞれ、図5および図7の分子モラルに基づいてN末端のPEG化について選択した。このN末端のPEG化は、EGFおよびIGF−1が、RN増殖因子であることを示している。5kDa PEG−アルデヒドの3mM溶液を、1mM HClに5kDa PEG−プロピオンアルデヒド(NOF Corporation、Tokyo)を終濃度15mg/mLで溶解することによって調製した。ボランーピリジンを、0.15mLの水を加えた0.3mLアセトニトリル中に35mcLの8M ボランーピリジン(Aldrich)を0.58Mの終濃度を生じるまで希釈することによって調製した。0.2Mのリン酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムの各々を含有する緩衝液(pH6.3)を、調製し、そして0.1ミクロン孔の滅菌フィルターを通して濾過した。Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA)からの組換えヒトEGFを、1mg/mLの濃度で水中に溶解した。0.6mLのこの溶液に対して、70mcLの3mM PEG−アルデヒド溶液、35mcLのリン酸塩−酢酸塩緩衝液および30mcLの0.58Mボラン−ピリジン溶液を添加し、そしてこの混合物を、冷却した。アリコートを、4℃〜8℃で4日間インキュベーションした後、100mM NaClを含有する炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.1)中におけるSuperdex 75 HR 10/30カラム上でサイズ−排除HPLCによって分析し、そしてこの溶出物を、280nmでの吸光度でかつ屈折率によってモニタリングした。5日間インキュベートした反応混合物を0.65mL注射した後、画分を280nmの吸光度の主要ピークの中心から回収した。このプールのpHは、酢酸の添加によっておよそpH5.5を下回った。サイズ−排除HPLCによるこの産物のプールの再分析は、100%のタンパク質が、PEG1−EGF(「モノ−PEG−EGF」)と対応する位置にあり、このプールのタンパク質濃度は、約0.32mg/mLであることを示した。SDS−PAGEによる分析は、全てのタンパク質が、EGFのモノ−PEG結合体からなることを確認した。この産物プールを、実施例4に記載するような細胞ベースのバイオアッセイにより試験する前に0.2ミクロン孔Corningシリンジフィルターを通して濾過滅菌した。EGFの10kDa PEG結合体を、5kDa PEG−アルデヒドの代わりにNOF Corporationに由来する10kDa PEG−プロピオンアルデヒドを用いた点を除いては、類似する方法によって合成、精製および分析した。10kDa PEG結合体の終タンパク質濃度は、約0.36mg/mLであった。
【0143】
Invitrogen Corp.に由来する組換えヒトインスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)のサンプルを、対応するEGF結合体について記載した方法によって5kDaのPEG−アルデヒドまたは10−kDaのPEG−アルデヒドに結合させた。IGF−1への5kDaのPEG−アルデヒドの結合の生成物は、約99%の純粋なモノ−PEG−IGF−1結合体であり、そしてPEG−EGFについて記載される結合体の精製は、終タンパク質濃度が、約0.20mg/mLであった。SDS−PAGE分析は、このタンパク質が、モノ−PEG結合体に主に存在することを確認した。電気泳動分析はまた、ゲル上のローディングが、高かった場合、微量のジ−PEG結合体の存在も示した。IGF−1への10kDa PEG−アルデヒド結合産物のサイズ−排除HPLC分析は、この産物が、95%のモノ−PEG結合体および約5%のジ−PEG結合体からなり、そして約0.23mg/mLの総タンパク質濃度を有することを示した。
【0144】
(実施例4:N末端のPEG化EGFおよびN末端のPEG化IGF−1のバイオアッセイ)
EGFおよびIGF−1のN末端のPEG化が、それぞれの増殖因子のレセプター結合能力を減少させるか否かの評価を、細胞培養アッセイによって実施する。PEG−EGFのアッセイについて、3T3繊維芽細胞を、EGFについて以前に記載される(Crouch,M.F.ら、(2001)J Cell Biol 152:263〜273)ように用いる。PEG−IGF−1のアッセイについて、チャイニーズハムスターの卵巣(「CHO」)細胞を、IGF−1について以前に記載された(Amoui,M.ら(2001)J Endocrinol 171:153〜162;Morris,A.E.ら(2000)Biotechnol Prog 16:693〜697)ように用いる。実施例3に記載するように調製したPEG−EGFおよびPEG−IGF−1の産物プールを、0.2ミクロン孔のCorningシリンジフィルターを通して濾過滅菌し、次いで細胞ベースのバイオアッセイで試験した。5kDa PEGおよび10kDa PEGを用いて合成した、濾過滅菌したEGFおよびモノ−PEG結合体の連続希釈を、最適な増殖に必要とされる血清よりも低い割合の血清を含有する培地中の3T3細胞の培養物へ添加した。この細胞を、標準的な条件(37℃、5%CO2/気体)下で培養し、一週間に数回の間隔でCoulterカウンター(Model Z1,Miami,FL)を用いて計数した。増殖因子を添加せずに観察した細胞数に比例して、細胞の数は、本発明のモノ−PEG結合体によって、非改変EGFによって増加する割合と、少なくとも同一の割合で増加する。同様に、IGF−1および非改変IGF−1の濾過滅菌したモノ−PEG結合体の連続希釈物を、最適な増殖に必要とされる血清よりも低い割合で血清を含有する培地中のCHO細胞の培養物へと添加し、そして細胞を、インキュベートし、EGF試験培養物について上に記載したように計数した。EGFおよびそのN末端のモノ−PEG結合体について観察したように、数日の後に観察した細胞数は、IGF−1のモノ−PEG結合体によって非改変増殖因子によって増加する割合と、少なくとも同一の割合で増加する。従って、EGFおよびIGF−1の両方は、レセプター結合領域から離れたアミノ末端残基にPEG結合しているタンパク質について予想したとおり、N−末端のペグ化の後完全に機能的であることが示される。
【0145】
(実施例5:「RN」レセプター−結合タンパク質クラスのメンバーおよび非メンバー)
図2、図3および図5〜図8は、そのレセプター結合領域に対するレセプター−結合タンパク質のインターフェロン−β、顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子(「GM−CSF」)、上皮細胞増殖因子(「EGF」)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(「bFGF」、また「FGF−2」として当該分野において公知)、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)およびインターフェロン−γ(「IFN−γ」)のリジン残基の表面分布を示し、ならびにこれらタンパク質は、「RN」サイトカインおよび増殖因子であることを示す。さらに、図2は、インターフェロン−βが、「RG」サイトカインであることを示す。
【0146】
図2は、インターフェロン−βの結合部位1および結合部位2の領域全体に分布したリジン残基を示す。それに対してポリペプチド鎖のアミノ末端は、そのタンパク質のレセプター結合領域から離れており、これはIFN−βが、RNサイトカインであることを示す(配列番号3を参照のこと)。
【0147】
図3は、GM−CSFのαレセプターに結合する結合部位1およびβレセプターに結合する結合部位2の領域全体に分布するリジン残基を示す。それに対してポリペプチド鎖のアミノ末端は、そのタンパク質のレセプター結合領域から離れており、これはGM−CSFが、RNサイトカインであることを示す(配列番号5を参照のこと)。
【0148】
図5は、上皮細胞増殖因子(「EGF」)のポリペプチド鎖に沿って分布したリジン残基を示し、これは、このタンパク質のレセプター結合領域中またはその付近のリジン残基を含む。それに対して、このポリペプチド鎖のアミノ末端は、このタンパク質のレセプター結合領域からより離れている(配列番号7を参照のこと)。
【0149】
図6は、レセプターまたはヘパリンに対する結合に関係する塩基性繊維芽細胞増殖因子(「bFGF」)のいくつかのリジン残基を示す。レセプターまたはヘパリンの両方は、bFGFによるシグナル伝達に必要である。(Schlessinger,J.ら、前出)。bFGFのアミノ末端は、bFGFのヘパリン−結合領域から離れており、bFGFをRN増殖因子にするためにレセプター結合部位から十分に離れ得る(配列番号8を参照のこと)。
【0150】
図7は、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)のいくつかのリジン残基が、ポリペプチドのレセプター結合領域内であるか、またはそれに隣接することを示す。それに対してIGF−1のアミノ末端は、レセプター結合ドメインから離れており、これはIGF−1が、RN増殖因子であることを示す(配列番号9を参照のこと)。
【0151】
図8は、インターフェロン−γ(「IFN−γ」)が、二つのポリペプチド鎖が、広範な相互作用を有する二量体として存在することを示す。各ポリペプチドのいくつかのリジン残基は、レセプターに対する結合に関係しているIFN−γのアミノ酸残基に隣接するか、または二量体化境界にある。アミノ酸残基Gln−1の「球および棒(ball−and−stick)」型は、このN−末端残基の機能的重要性についての証拠を示すことを意図する。(この図が基づく結晶構造は、天然のタンパク質には存在しない「Met0」と標識した包含される付加的なメチオニン残基を含む。)(配列番号4を参照のこと)IFN−γのN−末端残基が、二量体化境界面から離れているために、N−末端のPEG化は、IFN−γのホモ二量体化におけるリジンのPEG化の抑制効果を回避し得る。一方、そのレセプターとの二量体の相互作用は、特にポリマーの長い鎖が、結合される場合、おそらくアミノ末端へのポリマーのカップリングによって阻害される。
【0152】
IFN−γ、IL−10および幹細胞因子は、ホモ二量体として機能するサイトカインの例である(Walter,M.R.ら、前出;Josephson,K.ら、(2000)J Biol Chem 275:13552−13557;Thiel,D.J.ら、前出;McNiece,I.K.ら、前出)。レセプター結合タンパク質の二量体化は、そのN−末端のモノPEG化結合体の特徴づけに対する特有の問題点を示す。それは、異なる可能な分子構造は、類似のまたは同一の大きさおよび形状を有する結合体の調製に存在し得るためである。例えば、一つのジPEG化単量体および一つの非PEG化単量体から成る二量体(PEG2−タンパク質1+タンパク質1)は、二量体の結合体の最大の大きさに基づく分析(例えば、サイズ−排除クロマトグラフィーまたは沈殿係数、光散乱計数もしくは拡散係数の評価)によって二つのN−末端PEG化単量体(PEG1−タンパク質1)2から成る二量体と区別することは困難であるかまたは不可能であるが、タンパク質単量体あたり平均1PEGをそれぞれ含有するこれら二つの結合体のレセプター結合能力は、全く異なり得る。
【0153】
ホモ三量体(例えば、腫瘍壊死因子α(「TNF−α」))を形成する長鎖βシートレセプター結合タンパク質について、PEG3−タンパク質3三量体のアイソマーの数は、ホモ二量体として溶液中に生じるレセプター結合タンパク質についての数よりもさらに多い。アミノ末端に近接するTNFの化学的改変が、このサイトカインを非活性化することを示しているため(Utsumi,T.ら、(1992)Mol Immunol 29:77−81)、TNF−αは、試薬を用いてPEG化した場合、およびN−末端残基について選択的である条件化において、実質的な活性を保持しなくてもよい。それでもなお、Apo2L/TRAILのようなTNF−αアンタゴニスト(Hymowitz,S.G.ら(2000),Biochemistry 39:633−640)は、本発明を用いるPEG化に適している。
【0154】
オリゴマーとして機能するサイトカインの結合体の特徴付けのために、分析方法の併用を、必要とする。アミノ末端配列分析は、遊離N−末端αアミノ基を有する単量体の存在を検出し得、そして解離単量体の電気泳動分析(例えば、SDS−PAGEまたはキャピラリー電気泳動)は、レセプター結合タンパク質の非PEG化単量体よび複数のPEG化単量体の存在を示し得る。このような証拠がない場合、このようなホモ二量体形成タンパク質およびホモ三量体形成タンパク質のようなモノPEG化結合体の合成が、明白に示され得る。
【0155】
これらの例は、特に図1〜8に図のモノペグ化結合体の合成を用いて例証するように、これらの生物学活性構成要素のレセプター結合ドメイン内またはこのドメインに隣接するレセプター結合タンパク質のPEG化によるタンパク質−レセプター相互作用の立体障害の潜在的な役割を理解するために簡単に可視化した基本を提供する。高度に伸長しかつ可撓性のあるPEG鎖(図1dを参照のこと)によって占められる大きな体積はまた、PEGが、単量体間の相互作用のために必要とされることが報告されている領域内に結合している場合、機能的ホモ二量体または機能的ホモ三量体への特定のレセプター結合タンパク質の単量体の結合を立体的に妨げた。従って、レセプター結合タンパク質のレセプター結合領域から離れている部位に対するPEG化の標的化は、PEG化が、分子間相互作用の機能に必要とされる分子間相互作用に干渉する可能性を減少させる。本発明の方法による処置によって、レセプター結合タンパク質のPEG化から予期されるさらなる利点を、実現し得る。生じた結合体は、改善した溶解性、増加したバイオアベイラビリティー、より大きな安定性および減少した免疫原性の予期される利点を予想外に高い生物活性の保持と結びつける。
【0156】
本発明は、特定の実施形態およびその特定の実施例を参照して記載される。本発明の方法は、特定のレセプター結合ペプチド、ならびにサイトカイン、ケモカイン、増殖因子およびポリペプチドホルモン以外のタンパク質、またはこれらのアンタゴニストならびに他の結合試薬に対して同様に適用可能である。従って、本発明の範囲は、記載した実施形態に限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。当業者は、他の実施形態が、本発明の範囲を逸脱することなく実施され得ることを容易に理解し得る。全てのこのような変化は、本発明の一部であると考えられる。
【0157】
本明細書中で言及した全ての出版物、特許および特許出願は、本発明の属する分野における当業者の技術のレベルを示し、それぞれの個々の出版物、特許または特許出願が、具体的にかつ個々に参考として援用されるように示されるのと同一程度まで参考として本明細書中に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上の合成水溶性ポリマーとサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストとの結合体を合成するための方法であって、該結合体は、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストのレセプター結合効力を、このようなポリマーがランダムに結合される場合に保存されるよりも多く保存し、該方法は、
(a)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンを選択する工程であって、アミノ末端アミノ酸が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストの1つ以上のレセプター結合ドメインから遠位に離れて位置する、工程;および
(b)該1つ以上のポリマーを選択的に該アミノ末端アミノ酸に結合する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記一種以上のポリマーが、一種以上のポリアルキレングリコール、一種以上のポリアルキレンオキシド、一種以上のポリビニルアルコール、一種以上のポリカルボキシレート、一種以上のポリ(ビニルピロリドン)、一種以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一種以上のポリ(アミノ酸)、一種以上のポリアクリロイルモルホリン、一種以上のアミドと一種以上のアルキレンオキシドとの一種以上のコポリマー、一種以上のデキストラン、ならびに一種以上のヒアルロン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、四螺旋束構造を有する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病阻害因子(LIF)、トロンボポイエチン(Tpo)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、コンセンサセスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シートまたはβ−バレル構造を有する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4、およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、および増殖関連癌遺伝子/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、インシュリン、TNF−αアンタゴニスト、hGHアンタゴニストおよびプロラクチンアンタゴニストからなる群より選択される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインがIL−2である、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインがインターフェロン−αである、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインがTNF−αである、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法であって、前記増殖因子がEGFである、方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法であって、前記増殖因子がIGF−1である、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸のαアミノ基に共有結合される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記ポリマーの前記αアミノ基への共有結合が、第二級アミン連結を介する、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸の化学的に反応性の側鎖基に結合される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記反応性側鎖が、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、イミダゾール基、アミノ基、カルボキシル基およびアルデヒド基からなる群より選択される、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、前記水溶性ポリマーがポリアルキレングリコールである、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノメトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、方法。
【請求項31】
請求項4に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項32】
請求項4に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、成長ホルモンおよび成長ホルモンレセプターによって媒介される成長ホルモンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項33】
請求項4に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポイエチンおよびエリスロポイエチンレセプターによって媒介されるエリスロポイエチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するエリスロポイエチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項34】
請求項1に記載の方法であって、前記アミノ末端アミノ酸における前記ポリマーの、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストへの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストのグリコシル化または過剰グリコシル化の有利な効果を模倣する、方法。
【請求項35】
請求項1に記載の方法であって、前記レセプター結合効力が、超遠心分離、細胞ベースアッセイ、競合的結合アッセイ、ラジオレセプターアッセイ、表面プラスモン共鳴および動的光散乱を含む群から選択される1つ以上の方法によって測定される、方法。
【請求項36】
請求項1に記載の方法によって作製された、結合体。
【請求項37】
一種以上の請求項36に記載の結合体と一種以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項38】
結合体であって、一種以上の合成水溶性ポリマーに結合されたサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストを含み、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストが、レセプター結合タンパク質およびポリペプチドの群においてそのメンバーとして選択され、ここで、アミノ末端アミノ酸が、1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて配置され、そしてここで該一種以上のポリマーが、該アミノ末端アミノ酸に結合される、結合体。
【請求項39】
請求項38に記載の結合体であって、前記一種以上のポリマーが、一種以上のポリアルキレングリコール、一種以上のポリアルキレンオキシド、一種以上のポリビニルアルコール、一種以上のポリカルボキシレート、一種以上のポリ(ビニルピロリドン)、一種以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一種以上のポリ(アミノ酸)、一種以上のポリアクリロイルモルホリン、一種以上のアミドと一種以上のアルキレンオキシドとの一種以上のコポリマー、一種以上のデキストラン、ならびに一種以上のヒアルロン酸からなる群より選択される、結合体。
【請求項40】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、四螺旋束構造を有する、結合体。
【請求項41】
請求項40に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病阻害因子(LIF)、トロンボポイエチン(Tpo)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、コンセンサセスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項42】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シートまたはβ−バレル構造を有する、結合体。
【請求項43】
請求項42に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4、およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項44】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、結合体。
【請求項45】
請求項44に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2およびMCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、およびGRO/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項46】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、hGHインシュリン、およびプロラクチン、ならびにこれらのアンタゴニストからなる群より選択される、結合体。
【請求項47】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインがIL−2である、結合体。
【請求項48】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインがインターフェロン−αである、結合体。
【請求項49】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインがTNF−αである、結合体。
【請求項50】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、結合体。
【請求項51】
請求項46に記載の結合体であって、前記増殖因子がEGFである、結合体。
【請求項52】
請求項46に記載の結合体であって、前記増殖因子がIGF−1である、結合体。
【請求項53】
請求項38に記載の結合体であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸のαアミノ基に共有結合される、結合体。
【請求項54】
請求項53に記載の結合体であって、前記ポリマーの前記αアミノ基への共有結合が、第二級アミン連結を介する、結合体。
【請求項55】
請求項38に記載の結合体であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸の化学的に反応性の側鎖基に結合される、結合体。
【請求項56】
請求項55に記載の結合体であって、前記反応性側鎖が、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、イミダゾール基、アミノ基、カルボキシル基およびアルデヒド基からなる群より選択される、結合体。
【請求項57】
請求項38に記載の結合体であって、前記水溶性ポリマーがポリアルキレングリコールである、結合体。
【請求項58】
請求項57に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノメトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、結合体。
【請求項59】
請求項58に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項60】
請求項58に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項61】
請求項57に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項62】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項63】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項64】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項65】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項66】
請求項65に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項67】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項68】
請求項40に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項69】
請求項40に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、成長ホルモンおよび成長ホルモンレセプターによって媒介される成長ホルモンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項70】
請求項41に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポイエチンおよびエリスロポイエチンレセプターによって媒介されるエリスロポイエチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するエリスロポイエチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項71】
請求項38に記載の結合体であって、前記アミノ末端アミノ酸における前記ポリマーの、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストへの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストのグリコシル化または過剰グリコシル化の有利な効果を模倣する、結合体。
【請求項72】
請求項38に記載の結合体と薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項73】
請求項37に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項74】
請求項38に記載の結合体を含む、キット。
【請求項75】
請求項40に記載の結合体を含む、キット。
【請求項76】
請求項72に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項77】
一種以上の合成水溶性ポリマーとサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストとの結合体を合成するための方法であって、該結合体が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストのレセプター結合効力を、このようなポリマーがランダムに結合される場合に保存されるよりも多く保存し、該方法が、
(a)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストを選択する工程であって、天然に存在するグリコシル化部位または遺伝的に操作されたグリコシル化部位が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストの1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて位置する、工程;および
(b)該1つ以上のポリマーを選択的に該グリコシル化部位または該グリコシル化部位に結合する炭水化物部分に結合する工程、
を包含する、方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法であって、前記一種以上のポリマーが、一種以上のポリアルキレングリコール、一種以上のポリアルキレンオキシド、一種以上のポリビニルアルコール、一種以上のポリカルボキシレート、一種以上のポリ(ビニルピロリドン)、一種以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一種以上のポリ(アミノ酸)、一種以上のポリアクリロイルモルホリン、一種以上のアミドと一種以上のアルキレンオキシドとの一種以上のコポリマー、一種以上のデキストラン、ならびに一種以上のヒアルロン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項79】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、四螺旋束構造を有する、方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病阻害因子(LIF)、トロンボポイエチン(Tpo)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、コンセンサセスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項81】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シートまたはβ−バレル構造を有する、方法。
【請求項82】
請求項81に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4、およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項83】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、方法。
【請求項84】
請求項83に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)およびGRO/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)、ならびにこれらのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項85】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、hGH、プロラクチン、インシュリン、およびこれらのアンタゴニストからなる群より選択される、方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインが、IL−2である、方法。
【請求項87】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインが、インターフェロン−αである、方法。
【請求項88】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインが、TNF−αである、方法。
【請求項89】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、方法。
【請求項90】
請求項85に記載の方法であって、前記増殖因子が、EGFである、方法。
【請求項91】
請求項85に記載の方法であって、前記増殖因子が、IGF−1である、方法。
【請求項92】
請求項77に記載の方法であって、前記水溶性ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、方法。
【請求項93】
請求項92に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノメトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、方法。
【請求項94】
請求項93に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項95】
請求項93に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項96】
請求項92に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項97】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項98】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項99】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項100】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項101】
請求項100に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、方法。
【請求項102】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、方法。
【請求項103】
請求項77に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣または拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項104】
請求項77に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニストが、成長ホルモンおよび成長ホルモンレセプターによって媒介される、成長ホルモンの生物学的効果を模倣または拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項105】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポエチンおよびエリスロポエチンレセプターによって媒介されるエリスロポエチンの生物学的効果を模倣または拮抗する、エリスロポエチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項106】
請求項77に記載の方法であって、前記グリコシル化部位またはグリコシル化部位の近傍における、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストに対する前記ポリマーの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンのグリコシル化または過グリコシル化の有益な効果を模倣する、方法。
【請求項107】
請求項77に記載の方法によって作製された、結合体。
【請求項108】
一以上の請求項107に記載の結合体と、一以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項109】
結合体であって、一以上の合成水溶性ポリマーに結合されたサイトカイン、増殖因子、ケモカインもしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストを含み、ここで、該サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストは、グリコシル化部位が一以上のレセプター結合ドメインから離れて配置されるレセプター結合タンパク質およびポリペプチドの群のメンバーとして選択され、そしてここで、該一以上のポリマーは、一以上のグリコシル化部位またはグリコシル化部位の近傍で結合されるか、またはそれらに結合する炭水化物部分に結合される、結合体。
【請求項110】
請求項109に記載の結合体であって、前記一以上のポリマーが、一以上のポリアルキレングリコール、一以上のポリアルキレンオキシド、一以上のポリビニルアルコール、一以上のポリカルボキシレート、一以上のポリ(ビニルピロリドン)、一以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一以上のポリ(アミノ酸)、一以上のポリアクリロイルモルホリン、一以上のアミドと一以上のアルキレンオキシドとの一以上のコポリマー、一以上のデキストラン、および一以上のヒアルロン酸からなる群から選択される、結合体。
【請求項111】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモンまたは、これらのアンタゴニストが、4つの螺旋束構造を有する、結合体。
【請求項112】
請求項111に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血球阻害因子(LIF)、トロンボポエチン(Tpo)、エリスロポエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、コンセンサスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項113】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シート構造またはβ−バレル構造を有する、結合体。
【請求項114】
請求項113に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項115】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、結合体。
【請求項116】
請求項115に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)および増殖関連癌遺伝子/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)、ならびにこれらのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項117】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、hGH、プロラクチン、インシュリン、およびこれらのアンタゴニストからなる群より選択される、結合体。
【請求項118】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインが、IL−2である、結合体。
【請求項119】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインが、インターフェロン−αである、結合体。
【請求項120】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインが、TNF−αである、結合体。
【請求項121】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、結合体。
【請求項122】
請求項117に記載の結合体であって、前記増殖因子が、EGFである、結合体。
【請求項123】
請求項117に記載の結合体であって、前記増殖因子が、IGF−1である、結合体。
【請求項124】
請求項109に記載の結合体であって、前記水溶性ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、結合体。
【請求項125】
請求項124に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノ−メトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、結合体。
【請求項126】
請求項125に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項127】
請求項125に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項128】
請求項124に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項129】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項130】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項131】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項132】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項133】
請求項132に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項134】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項135】
請求項109に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介される、プロラクチンの生物学的効果を模倣または拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項136】
請求項109に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストが、成長ホルモンレセプターによって媒介される、成長ホルモンおよび成長ホルモンの生物学的効果を模倣または拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項137】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポエチンおよびエリスロポエチンレセプターによって媒介されるエリスロポエチンの生物学的効果を模倣または拮抗する、エリスロポエチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項138】
請求項109に記載の結合体であって、グリコシル化部位またはグリコシル化部位の近傍における、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストに対する前記ポリマーの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンのグリコシル化または過グリコシル化の有益な効果を模倣する、結合体。
【請求項139】
請求項109に記載の結合体と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項140】
請求項107に記載の結合体を含む、キット。
【請求項141】
請求項108に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項142】
請求項109に記載の結合体を含む、キット。
【請求項143】
請求項139に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項144】
身体障害に罹患しているかまたは罹患する素因のある動物において、該身体障害を予防、診断、または処置するための方法であって、該動物に、有効量の、請求項36、38、107および109のいずれか一項に記載の結合体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項145】
身体障害に罹患しているかまたは罹患する素因のある動物において、該身体障害を予防、診断、または処置するための方法であって、該動物に、有効量の、請求項37、72、108および139のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項146】
請求項144に記載の方法であって、前記動物が、哺乳動物である、方法。
【請求項147】
請求項145に記載の方法であって、前記動物が、哺乳動物である、方法。
【請求項148】
請求項146または147に記載の方法であって、前記哺乳動物が、ヒトである、方法。
【請求項149】
請求項144に記載の方法であって、前記身体障害が、癌、感染性疾患、神経変性障害、自己免疫障害、および遺伝的障害からなる群より選択される、方法。
【請求項150】
請求項149に記載の方法であって、前記癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、消化管の癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、骨の癌、神経の癌、頭頸部の癌、皮膚癌、肉腫、癌腫、腺腫、および骨髄腫からなる群より選択される、方法。
【請求項151】
請求項149に記載の方法であって、前記感染性疾患が、細菌性疾患、真菌性疾患、ウイルス性疾患および寄生虫病からなる群より選択される、方法。
【請求項152】
請求項151に記載の方法であって、前記ウイルス性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、心向性ウイルスにより引き起こされる疾患およびHIV/AIDSからなる群より選択される、方法。
【請求項153】
請求項149に記載の方法であって、前記自己免疫障害が、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび乾癬からなる群より選択される、方法。
【請求項154】
請求項149に記載の方法であって、前記遺伝的障害が、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、小人症および重症複合型免疫不全(「SCID」)からなる群より選択される、方法。
【請求項155】
請求項149に記載の方法であって、前記神経変性障害が、多発性硬化症である、方法。
【請求項156】
請求項149に記載の方法であって、前記神経変性疾患が、クロイツフェルト−ヤコブ病またはアルツハイマー病である、方法。
【請求項157】
請求項145に記載の方法であって、前記身体障害が、癌、感染性疾患、神経変性障害、自己免疫障害、および遺伝的障害からなる群より選択される、方法。
【請求項158】
請求項157に記載の方法であって、前記癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、消化管の癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、骨の癌、神経の癌、頭頸部の癌、皮膚癌、癌腫、肉腫、腺腫、および骨髄腫からなる群より選択される、方法。
【請求項159】
請求項157に記載の方法であって、前記感染性疾患が、細菌性疾患、真菌性疾患、ウイルス性疾患および寄生虫病からなる群より選択される、方法。
【請求項160】
請求項159に記載の方法であって、前記ウイルス性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、心向性ウイルスにより引き起こされる疾患およびHIV/AIDSからなる群より選択される、方法。
【請求項161】
請求項157に記載の方法であって、前記自己免疫障害が、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび乾癬からなる群より選択される、方法。
【請求項162】
請求項157に記載の方法であって、前記遺伝的障害が、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、小人症および重症複合型免疫不全(「SCID」)からなる群より選択される、方法。
【請求項163】
請求項157に記載の方法であって、前記神経変性障害が、多発性硬化症である、方法。
【請求項164】
請求項157に記載の方法であって、前記神経変性疾患が、クロイツフェルト−ヤコブ病またはアルツハイマー病である、方法。
【請求項1】
一種以上の合成水溶性ポリマーとサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストとの結合体を合成するための方法であって、該結合体は、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストのレセプター結合効力を、このようなポリマーがランダムに結合される場合に保存されるよりも多く保存し、該方法は、
(a)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンを選択する工程であって、アミノ末端アミノ酸が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストの1つ以上のレセプター結合ドメインから遠位に離れて位置する、工程;および
(b)該1つ以上のポリマーを選択的に該アミノ末端アミノ酸に結合する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記一種以上のポリマーが、一種以上のポリアルキレングリコール、一種以上のポリアルキレンオキシド、一種以上のポリビニルアルコール、一種以上のポリカルボキシレート、一種以上のポリ(ビニルピロリドン)、一種以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一種以上のポリ(アミノ酸)、一種以上のポリアクリロイルモルホリン、一種以上のアミドと一種以上のアルキレンオキシドとの一種以上のコポリマー、一種以上のデキストラン、ならびに一種以上のヒアルロン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、四螺旋束構造を有する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病阻害因子(LIF)、トロンボポイエチン(Tpo)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、コンセンサセスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シートまたはβ−バレル構造を有する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4、およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、および増殖関連癌遺伝子/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、インシュリン、TNF−αアンタゴニスト、hGHアンタゴニストおよびプロラクチンアンタゴニストからなる群より選択される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインがIL−2である、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインがインターフェロン−αである、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインがTNF−αである、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法であって、前記増殖因子がEGFである、方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法であって、前記増殖因子がIGF−1である、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸のαアミノ基に共有結合される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記ポリマーの前記αアミノ基への共有結合が、第二級アミン連結を介する、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸の化学的に反応性の側鎖基に結合される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記反応性側鎖が、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、イミダゾール基、アミノ基、カルボキシル基およびアルデヒド基からなる群より選択される、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、前記水溶性ポリマーがポリアルキレングリコールである、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノメトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、方法。
【請求項31】
請求項4に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項32】
請求項4に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、成長ホルモンおよび成長ホルモンレセプターによって媒介される成長ホルモンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項33】
請求項4に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポイエチンおよびエリスロポイエチンレセプターによって媒介されるエリスロポイエチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するエリスロポイエチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項34】
請求項1に記載の方法であって、前記アミノ末端アミノ酸における前記ポリマーの、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストへの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストのグリコシル化または過剰グリコシル化の有利な効果を模倣する、方法。
【請求項35】
請求項1に記載の方法であって、前記レセプター結合効力が、超遠心分離、細胞ベースアッセイ、競合的結合アッセイ、ラジオレセプターアッセイ、表面プラスモン共鳴および動的光散乱を含む群から選択される1つ以上の方法によって測定される、方法。
【請求項36】
請求項1に記載の方法によって作製された、結合体。
【請求項37】
一種以上の請求項36に記載の結合体と一種以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項38】
結合体であって、一種以上の合成水溶性ポリマーに結合されたサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストを含み、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストが、レセプター結合タンパク質およびポリペプチドの群においてそのメンバーとして選択され、ここで、アミノ末端アミノ酸が、1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて配置され、そしてここで該一種以上のポリマーが、該アミノ末端アミノ酸に結合される、結合体。
【請求項39】
請求項38に記載の結合体であって、前記一種以上のポリマーが、一種以上のポリアルキレングリコール、一種以上のポリアルキレンオキシド、一種以上のポリビニルアルコール、一種以上のポリカルボキシレート、一種以上のポリ(ビニルピロリドン)、一種以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一種以上のポリ(アミノ酸)、一種以上のポリアクリロイルモルホリン、一種以上のアミドと一種以上のアルキレンオキシドとの一種以上のコポリマー、一種以上のデキストラン、ならびに一種以上のヒアルロン酸からなる群より選択される、結合体。
【請求項40】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、四螺旋束構造を有する、結合体。
【請求項41】
請求項40に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病阻害因子(LIF)、トロンボポイエチン(Tpo)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、コンセンサセスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項42】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シートまたはβ−バレル構造を有する、結合体。
【請求項43】
請求項42に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4、およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項44】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、結合体。
【請求項45】
請求項44に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2およびMCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、およびGRO/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項46】
請求項38に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、hGHインシュリン、およびプロラクチン、ならびにこれらのアンタゴニストからなる群より選択される、結合体。
【請求項47】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインがIL−2である、結合体。
【請求項48】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインがインターフェロン−αである、結合体。
【請求項49】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインがTNF−αである、結合体。
【請求項50】
請求項46に記載の結合体であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、結合体。
【請求項51】
請求項46に記載の結合体であって、前記増殖因子がEGFである、結合体。
【請求項52】
請求項46に記載の結合体であって、前記増殖因子がIGF−1である、結合体。
【請求項53】
請求項38に記載の結合体であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸のαアミノ基に共有結合される、結合体。
【請求項54】
請求項53に記載の結合体であって、前記ポリマーの前記αアミノ基への共有結合が、第二級アミン連結を介する、結合体。
【請求項55】
請求項38に記載の結合体であって、前記ポリマーが、前記アミノ末端アミノ酸の化学的に反応性の側鎖基に結合される、結合体。
【請求項56】
請求項55に記載の結合体であって、前記反応性側鎖が、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、イミダゾール基、アミノ基、カルボキシル基およびアルデヒド基からなる群より選択される、結合体。
【請求項57】
請求項38に記載の結合体であって、前記水溶性ポリマーがポリアルキレングリコールである、結合体。
【請求項58】
請求項57に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノメトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、結合体。
【請求項59】
請求項58に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項60】
請求項58に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項61】
請求項57に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項62】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項63】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項64】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項65】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)の分子量を有する、結合体。
【請求項66】
請求項65に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項67】
請求項61に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項68】
請求項40に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項69】
請求項40に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモン、またはそのアンタゴニストが、成長ホルモンおよび成長ホルモンレセプターによって媒介される成長ホルモンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項70】
請求項41に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポイエチンおよびエリスロポイエチンレセプターによって媒介されるエリスロポイエチンの生物学的効果を模倣するかまたは拮抗するエリスロポイエチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項71】
請求項38に記載の結合体であって、前記アミノ末端アミノ酸における前記ポリマーの、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストへの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストのグリコシル化または過剰グリコシル化の有利な効果を模倣する、結合体。
【請求項72】
請求項38に記載の結合体と薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項73】
請求項37に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項74】
請求項38に記載の結合体を含む、キット。
【請求項75】
請求項40に記載の結合体を含む、キット。
【請求項76】
請求項72に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項77】
一種以上の合成水溶性ポリマーとサイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストとの結合体を合成するための方法であって、該結合体が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストのレセプター結合効力を、このようなポリマーがランダムに結合される場合に保存されるよりも多く保存し、該方法が、
(a)サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストを選択する工程であって、天然に存在するグリコシル化部位または遺伝的に操作されたグリコシル化部位が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストの1つ以上のレセプター結合ドメインから離れて位置する、工程;および
(b)該1つ以上のポリマーを選択的に該グリコシル化部位または該グリコシル化部位に結合する炭水化物部分に結合する工程、
を包含する、方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法であって、前記一種以上のポリマーが、一種以上のポリアルキレングリコール、一種以上のポリアルキレンオキシド、一種以上のポリビニルアルコール、一種以上のポリカルボキシレート、一種以上のポリ(ビニルピロリドン)、一種以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一種以上のポリ(アミノ酸)、一種以上のポリアクリロイルモルホリン、一種以上のアミドと一種以上のアルキレンオキシドとの一種以上のコポリマー、一種以上のデキストラン、ならびに一種以上のヒアルロン酸からなる群より選択される、方法。
【請求項79】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、四螺旋束構造を有する、方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血病阻害因子(LIF)、トロンボポイエチン(Tpo)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、コンセンサセスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項81】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シートまたはβ−バレル構造を有する、方法。
【請求項82】
請求項81に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4、およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項83】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、方法。
【請求項84】
請求項83に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)およびGRO/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)、ならびにこれらのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、方法。
【請求項85】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、hGH、プロラクチン、インシュリン、およびこれらのアンタゴニストからなる群より選択される、方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインが、IL−2である、方法。
【請求項87】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインが、インターフェロン−αである、方法。
【請求項88】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインが、TNF−αである、方法。
【請求項89】
請求項85に記載の方法であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、方法。
【請求項90】
請求項85に記載の方法であって、前記増殖因子が、EGFである、方法。
【請求項91】
請求項85に記載の方法であって、前記増殖因子が、IGF−1である、方法。
【請求項92】
請求項77に記載の方法であって、前記水溶性ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、方法。
【請求項93】
請求項92に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノメトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、方法。
【請求項94】
請求項93に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項95】
請求項93に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項96】
請求項92に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項97】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項98】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項99】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項100】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)分子量を有する、方法。
【請求項101】
請求項100に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、方法。
【請求項102】
請求項96に記載の方法であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、方法。
【請求項103】
請求項77に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介されるプロラクチンの生物学的効果を模倣または拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項104】
請求項77に記載の方法であって、前記ポリペプチドホルモンまたはそのアンタゴニストが、成長ホルモンおよび成長ホルモンレセプターによって媒介される、成長ホルモンの生物学的効果を模倣または拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項105】
請求項77に記載の方法であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポエチンおよびエリスロポエチンレセプターによって媒介されるエリスロポエチンの生物学的効果を模倣または拮抗する、エリスロポエチンアナログからなる群より選択される、方法。
【請求項106】
請求項77に記載の方法であって、前記グリコシル化部位またはグリコシル化部位の近傍における、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストに対する前記ポリマーの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンのグリコシル化または過グリコシル化の有益な効果を模倣する、方法。
【請求項107】
請求項77に記載の方法によって作製された、結合体。
【請求項108】
一以上の請求項107に記載の結合体と、一以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項109】
結合体であって、一以上の合成水溶性ポリマーに結合されたサイトカイン、増殖因子、ケモカインもしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストを含み、ここで、該サイトカイン、ケモカイン、増殖因子もしくはポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストは、グリコシル化部位が一以上のレセプター結合ドメインから離れて配置されるレセプター結合タンパク質およびポリペプチドの群のメンバーとして選択され、そしてここで、該一以上のポリマーは、一以上のグリコシル化部位またはグリコシル化部位の近傍で結合されるか、またはそれらに結合する炭水化物部分に結合される、結合体。
【請求項110】
請求項109に記載の結合体であって、前記一以上のポリマーが、一以上のポリアルキレングリコール、一以上のポリアルキレンオキシド、一以上のポリビニルアルコール、一以上のポリカルボキシレート、一以上のポリ(ビニルピロリドン)、一以上のポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)、一以上のポリ(アミノ酸)、一以上のポリアクリロイルモルホリン、一以上のアミドと一以上のアルキレンオキシドとの一以上のコポリマー、一以上のデキストラン、および一以上のヒアルロン酸からなる群から選択される、結合体。
【請求項111】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモンまたは、これらのアンタゴニストが、4つの螺旋束構造を有する、結合体。
【請求項112】
請求項111に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、白血球阻害因子(LIF)、トロンボポエチン(Tpo)、エリスロポエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、IL−17、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、コンセンサスインターフェロン、プロラクチンおよび成長ホルモン、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項113】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、β−シート構造またはβ−バレル構造を有する、結合体。
【請求項114】
請求項113に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1α、IL−1β、IL−12(p40サブユニット)、IL−16、上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、FGF−4およびケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF−7)、ならびにこれらのムテイン、アンタゴニスト、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項115】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、混合α/β構造を有する、結合体。
【請求項116】
請求項115に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)、IL−8、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)、MCP−2、MCP−3、エオタキシン−1、エオタキシン−2、エオタキシン−3、RANTES、骨髄前駆体阻害因子−1(MPIF−1)、ニューロタクチン、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)および増殖関連癌遺伝子/黒色腫増殖刺激活性(GRO−α/MGSA)、ならびにこれらのムテイン、改変体、アナログおよび誘導体からなる群より選択される、結合体。
【請求項117】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、IL−2、IL−4、IL−10、TNF−α、IGF−1、EGF、bFGF、hGH、プロラクチン、インシュリン、およびこれらのアンタゴニストからなる群より選択される、結合体。
【請求項118】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインが、IL−2である、結合体。
【請求項119】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインが、インターフェロン−αである、結合体。
【請求項120】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインが、TNF−αである、結合体。
【請求項121】
請求項117に記載の結合体であって、前記サイトカインアンタゴニストが、TNF−αアンタゴニストである、結合体。
【請求項122】
請求項117に記載の結合体であって、前記増殖因子が、EGFである、結合体。
【請求項123】
請求項117に記載の結合体であって、前記増殖因子が、IGF−1である、結合体。
【請求項124】
請求項109に記載の結合体であって、前記水溶性ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、結合体。
【請求項125】
請求項124に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、モノ−メトキシポリ(エチレングリコール)およびモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)からなる群より選択される、結合体。
【請求項126】
請求項125に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノメトキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項127】
請求項125に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)である、結合体。
【請求項128】
請求項124に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約100kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項129】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約1kDa〜約5kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項130】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約10kDa〜約20kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項131】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約18kDa〜約60kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項132】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約12kDa〜約30kDaの間(両端を含む)分子量を有する、結合体。
【請求項133】
請求項132に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約20kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項134】
請求項128に記載の結合体であって、前記ポリアルキレングリコールが、約30kDaの分子量を有する、結合体。
【請求項135】
請求項109に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストが、プロラクチンおよびプロラクチンレセプターによって媒介される、プロラクチンの生物学的効果を模倣または拮抗するプロラクチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項136】
請求項109に記載の結合体であって、前記ポリペプチドホルモンまたはこれらのアンタゴニストが、成長ホルモンレセプターによって媒介される、成長ホルモンおよび成長ホルモンの生物学的効果を模倣または拮抗する成長ホルモンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項137】
請求項109に記載の結合体であって、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストが、非グリコシル化エリスロポエチンおよびエリスロポエチンレセプターによって媒介されるエリスロポエチンの生物学的効果を模倣または拮抗する、エリスロポエチンアナログからなる群より選択される、結合体。
【請求項138】
請求項109に記載の結合体であって、グリコシル化部位またはグリコシル化部位の近傍における、前記サイトカイン、前記ケモカイン、前記増殖因子もしくは前記ポリペプチドホルモン、またはこれらのアンタゴニストに対する前記ポリマーの結合が、該サイトカイン、該ケモカイン、該増殖因子もしくは該ポリペプチドホルモンのグリコシル化または過グリコシル化の有益な効果を模倣する、結合体。
【請求項139】
請求項109に記載の結合体と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項140】
請求項107に記載の結合体を含む、キット。
【請求項141】
請求項108に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項142】
請求項109に記載の結合体を含む、キット。
【請求項143】
請求項139に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項144】
身体障害に罹患しているかまたは罹患する素因のある動物において、該身体障害を予防、診断、または処置するための方法であって、該動物に、有効量の、請求項36、38、107および109のいずれか一項に記載の結合体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項145】
身体障害に罹患しているかまたは罹患する素因のある動物において、該身体障害を予防、診断、または処置するための方法であって、該動物に、有効量の、請求項37、72、108および139のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項146】
請求項144に記載の方法であって、前記動物が、哺乳動物である、方法。
【請求項147】
請求項145に記載の方法であって、前記動物が、哺乳動物である、方法。
【請求項148】
請求項146または147に記載の方法であって、前記哺乳動物が、ヒトである、方法。
【請求項149】
請求項144に記載の方法であって、前記身体障害が、癌、感染性疾患、神経変性障害、自己免疫障害、および遺伝的障害からなる群より選択される、方法。
【請求項150】
請求項149に記載の方法であって、前記癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、消化管の癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、骨の癌、神経の癌、頭頸部の癌、皮膚癌、肉腫、癌腫、腺腫、および骨髄腫からなる群より選択される、方法。
【請求項151】
請求項149に記載の方法であって、前記感染性疾患が、細菌性疾患、真菌性疾患、ウイルス性疾患および寄生虫病からなる群より選択される、方法。
【請求項152】
請求項151に記載の方法であって、前記ウイルス性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、心向性ウイルスにより引き起こされる疾患およびHIV/AIDSからなる群より選択される、方法。
【請求項153】
請求項149に記載の方法であって、前記自己免疫障害が、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび乾癬からなる群より選択される、方法。
【請求項154】
請求項149に記載の方法であって、前記遺伝的障害が、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、小人症および重症複合型免疫不全(「SCID」)からなる群より選択される、方法。
【請求項155】
請求項149に記載の方法であって、前記神経変性障害が、多発性硬化症である、方法。
【請求項156】
請求項149に記載の方法であって、前記神経変性疾患が、クロイツフェルト−ヤコブ病またはアルツハイマー病である、方法。
【請求項157】
請求項145に記載の方法であって、前記身体障害が、癌、感染性疾患、神経変性障害、自己免疫障害、および遺伝的障害からなる群より選択される、方法。
【請求項158】
請求項157に記載の方法であって、前記癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、消化管の癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、骨の癌、神経の癌、頭頸部の癌、皮膚癌、癌腫、肉腫、腺腫、および骨髄腫からなる群より選択される、方法。
【請求項159】
請求項157に記載の方法であって、前記感染性疾患が、細菌性疾患、真菌性疾患、ウイルス性疾患および寄生虫病からなる群より選択される、方法。
【請求項160】
請求項159に記載の方法であって、前記ウイルス性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、心向性ウイルスにより引き起こされる疾患およびHIV/AIDSからなる群より選択される、方法。
【請求項161】
請求項157に記載の方法であって、前記自己免疫障害が、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび乾癬からなる群より選択される、方法。
【請求項162】
請求項157に記載の方法であって、前記遺伝的障害が、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血友病、小人症および重症複合型免疫不全(「SCID」)からなる群より選択される、方法。
【請求項163】
請求項157に記載の方法であって、前記神経変性障害が、多発性硬化症である、方法。
【請求項164】
請求項157に記載の方法であって、前記神経変性疾患が、クロイツフェルト−ヤコブ病またはアルツハイマー病である、方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−51991(P2011−51991A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−221122(P2010−221122)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【分割の表示】特願2005−508614(P2005−508614)の分割
【原出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【出願人】(501052823)マウンテン ビュー ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221122(P2010−221122)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【分割の表示】特願2005−508614(P2005−508614)の分割
【原出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【出願人】(501052823)マウンテン ビュー ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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