サイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物および使用方法
本発明は、一種の免疫細胞を活性化する方法を提供する。これは、以下の、サイトメガロウイルス(CMV)由来のペプチドを含む免疫原組成物および免疫細胞を混合して混合培養物を形成するステップと、該混合培養物を適当な培地で培養するステップとを含み、これにより、活性化した免疫細胞が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種の抗ヘルペスウイルス(herpes virus)のワクチンに関し、特に抗ヘルペスウイルスの免疫エフェクター細胞(immune effector cells)の産生に使用される免疫原組成物に関する。本発明は、さらに前記免疫原組成物の用途、および免疫細胞の活性化に応用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスウイルスはヘルペスウイルス科(Herpesviridae)のウイルスに属する。現在までに、8種のウイルスに関して、ヒトにおける疾病の原因となることが知られている。この種のウイルスはヒトヘルペスウイルス(human herpes virus、HHV)と総称され、その中には以下が含まれる。(1)ヒトヘルペスウイルス−1(human herpes virus−1、HHV−1)であり、単純ヘルペスウイルス−1(herpes simplex virus−1、HSV−1)とも言われる。(2)ヒトヘルペスウイルス−2(HHV−2)であり、単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)とも言われる。(3)ヒトヘルペスウイルス−3(HHV−3)、すなわち水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus、VZV)であり、水痘および帯状疱疹を引き起こすことがあり、水痘ウイルスとも呼ばれる。(4)ヒトヘルペスウイルス−4(HHV−4)、すなわちエプスタイン−バールウイルス(Epstein−Barr Virus、EBV)で、一種のリンパ球ウイルスである。バーキットリンパ腫および上咽頭癌を引き起こすことがある。(5)ヒトヘルペスウイルス−5(HHV−5)、すなわちサイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)である。(6)ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)、すなわちロゼオロウイルスであり、小児バラ疹および突発性発疹を含む第六病を引き起こすことがある。(7)ヒトヘルペスウイルス−7(HHV−7)であり、HHV−6と近似し、症状はだいたい同じである。(8)ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)であり、ラジノウイルス属で、kSHVと略される。カポジ肉腫から発見された。
【0003】
移植を受けた患者のヘルペスウイルス(herpes virus、HV)に対する感染管理は、既存技術では、主に抗ウイルス薬を使用し、先制的治療(preemptive treatment)または予防治療(prophylaxis)を行う。サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)を例とすると、前者は、培養実験により陽性が示されるか、または検査によってウイルスが自発的複製をしていることが示されると、無症状であっても先制的治療を行う。後者は、血清に対して陽性である患者は、感染の証拠がなくても予防治療を行う。既存技術において、CMV複製の制御に使用される数種の抗ウイルス薬には、ガンシクロビル(ganciclovir)、フォスカネット(foscarnet)およびシドフォビル(cidofovir)(Gandhi MK、et al.、Lancet Infect.Dis.、2004年、4:725〜38)が含まれる。移植を受けた患者に対して、これらの試薬を用いて、治療としてヘルペスウイルス感染の制御を行い、現在すでに顕著な進歩を遂げている。
【0004】
しかしながら、これらの薬理学的戦略(pharmacological strategies)には制限がある。例えば、薬物毒性、薬剤耐性の発生、低経口バイオアベイラビリティ(oral bioavailability)および低効力などの問題である。抗ウイルス薬を利用して治療しても、死亡率は依然として高く、特に、可能な限り早期に治療を始めていない場合に高い(Gandhi MK、et al.、上述と同じ、Ison MG、et al.、Clin.Chest Med.、2005年、26:691〜705、Gandhi MK、et al.、Blood Rev.、2003年、17:259〜64)。そのほか、患者がこれらの試薬を長期間使用すると、抗ウイルス薬に対する薬剤耐性が徐々に発生することがある(Ison MG、et al.、上述と同じ、Biron KK.、Antiviral Res.、2006年、71:154〜63)。
【0005】
既存の、ヘルペスウイルス感染症に対する免疫療法は、生ウイルスを基にしたヘルペスウイルス抗原の供給源(herpes virus antigen sources based on live virus)、ヘルペスウイルスに感染した細胞(herpes virus−infected cells)、ヘルペスウイルス遺伝子発現ベクター(herpes virus gene expression vector)、または合成されたヘルペスウイルスタンパク質もしくはペプチドを使用し、ヘルペスウイルス特異的免疫応答を活性化する抗原提示細胞(antigen presenting cells)を刺激する。ウイルスまたはウイルス感染した細胞を抗原の供給源とすると、ウイルス汚染および感染を引き起こすという潜在的な危険性があり、全長のヘルペスウイルス遺伝子またはタンパク質を抗原の供給源とすると、免疫抑制作用(immune suppression)または免疫寛容(immune tolerance)を誘発する潜在的危険がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gandhi MK、et al.、Lancet Infect.Dis.、2004年、4:725〜38
【非特許文献2】Ison MG、et al.、Clin.Chest Med.、2005年、26:691〜705
【非特許文献3】Gandhi MK、et al.、Blood Rev.、2003年、17:259〜64
【非特許文献4】Biron KK.、Antiviral Res.、2006年、71:154〜63
【非特許文献5】Science、288:522〜527、2000年
【非特許文献6】Curr.Med.Chem.、 13(14):1591〜607、2006年
【非特許文献7】Nat.Rev.Cancer、8(5):351〜60、2008年
【非特許文献8】Han S.et al.、2008年、Molecular Therapy、16:269〜279
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、既存技術が前述したウイルス汚染による感染、および免疫寛容などを含む問題を有することに基づき、一種のヘルペスウイルス疾患に対する免疫療法を提供することにある。これは、前述したような、生ウイルス、ヘルペスウイルス感染細胞、または全長のヘルペスウイルスタンパク質を使用することにより生じる種々の問題が起こることはない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、第1の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)を提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチド断片の少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチド断片と、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドを含む。
【0009】
第2の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)を提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチドプールのうちの少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールと、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドプールを含む。
【0010】
第3の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物を提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチド断片を含む。
【0011】
第4の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物を提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチドプールを含む。
【0012】
本発明の好ましい実施例において、前記免疫原組成物のうちのCMV pp65は、SEQ ID NO:1と実質的に同じ配列を有する。CMV IE−1は、SEQ ID NO:2と実質的に同じ配列を有する。CMV VGLBは、SEQ ID NO:3と実質的に同じ配列を有する。CMV VPAPは、SEQ ID NO:4と実質的に同じ配列を有する。CMV p100はSEQ ID NO:5と実質的に同じ配列を有する。
【0013】
好ましくは、前述した免疫原組成物は、CMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールを含む。
【0014】
第5の局面において、本発明は、前述した第1から第4の局面のいずれか1つの免疫原組成物が、生体外でヘルペスウイルスに対する免疫応答を誘発する用途を提供する。
【0015】
第6の局面において、本発明は、前述した第1から第4の局面のいずれか1つの免疫原組成物が、ヘルペスウイルス感染症を治療する医薬品の製造に使用される用途を提供する。
【0016】
第7の局面において、本発明は、一種の生体外(ex vivo)で免疫細胞を活性化する方法を提供する。これは次に挙げる、免疫細胞および前述の第1から第4の局面のいずれか1つの免疫原組成物を混合し、細胞混合培養物を形成するステップと、この細胞混合培養物を適当な培地で培養し、活性化した免疫細胞が得られるステップとを含む。
【0017】
第8の局面において、本発明は、一種の生体外(ex vivo)で免疫エフェクター細胞(immune effector cells)の産生を誘発する方法を提供する。これは次に挙げる、一種の前述した第1から第4の局面のいずれか1つの方法によって得られる活性化された免疫細胞、および一種のリンパ球(lymphocyte)を提供するステップと、この活性化された免疫細胞およびリンパ球を、適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、免疫原組成物が抗CMV免疫応答(anti−CMV immune response)を効果的に活性化することができ、さらにこれらのペプチドプールは生ウイルス、CMV感染した細胞を使用しないため、不必要な感染の問題および免疫抑制作用、免疫寛容などの潜在的な危険性がないことを実証した。そのほか、本発明による方法は、免疫細胞を効果的に活性化し、またリンパ球をさらに活性化することにも使用され、抗CMVウイルス活性を有する免疫エフェクター細胞を産生する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の方法の簡単なフローチャートである。
【図2】図2は、CMVポリペプチド由来のペプチドプールの概要図である。このポリペプチドはpp65を例としている。
【図3】図3は、樹状細胞によって活性化されるリンパ球の調製プロセスである。
【図4】図4は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプール、およびその組合せによってPBMCの細胞が刺激され、増殖作用が生じる効果を示す。そのうち、AはCFSE染色分析の結果であり、Bは細胞内サイトカイン染色分析の結果である。
【図5】図5は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプール、およびその組合せによってPBMCの細胞が刺激され、免疫応答が生じる効果を示す。そのうち、A、Bは、それぞれ異なるドナーからのPBMCの試験結果である。
【図6】図6は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプール、およびその組合せの、PBMC中のCD4+およびCD8+グループの細胞の増殖作用に対する影響を示す。
【図7】図7のAおよびBは、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せによって、異なる供給源のPBMCが刺激され、PBMCにおいて分泌されるサイトカインの状況を示したものである。
【図8】図8は、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを有する混合プールにより処理を行った樹状細胞(DCs pulsed with the mixed pool of 5 CMV pentadecapeptides)が、非接着性末梢血単核細胞(non−adherent PBMC)を刺激し、そのうちのCMV特異的免疫エフェクター細胞(IE)の細胞内サイトカイン染色の結果を示す。
【図9】図9は、図8の結果を棒グラフで示したものである。図9のAは、各グループのIL−2の発現状態を示し、図9のBは、各グループのCD107aの発現状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、出願人は、一種の抗ヘルペスウイルスの免疫エフェクター細胞(immune effector cells)を産生する免疫原組成物および方法を研究開発した。図1を組み合わせて参照されたい。本発明の方法は、主に以下の各局面を包含する。まず、サイトメガロウイルス(CMV)由来のペプチドを含む異なる免疫原組成物(10)により免疫細胞(20)が刺激される。そのうち免疫原組成物(10)は、例えばCMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAP、およびCMV p100ポリペプチド由来ペプチドプール(11)(12)(13)(14)(15)が含まれ、活性化した免疫細胞(21)が得られる。これは、例えばTリンパ球などのリンパ球(30)を活性化する能力を有する。次に、活性化した免疫細胞(21)およびリンパ球(30)を一緒に培養すると、免疫エフェクター細胞(31)が得られる。続いて、得られた免疫エフェクター細胞(31)を、さらに個体(40)の体内へ移植することができ、ヘルペスウイルスの関連疾患を予防および治療する目的を達成する。
【0021】
出願人は、2、3、4または5種類のCMVペプチドプールを組み合わせた混合プール(mixed pool)が、単一または2つのCMVタンパク質由来のペプチドプールと比較すると、抗CMV免疫応答(anti−CMV immune response)をさらに効果的に活性化することができ、特に、CMV特異的なCD8+およびCD4+Tリンパ球が活性化されて、高いエフェクター機能(effector functions)を生じることができることを実証した。本発明のCMV免疫原組成物および免疫治療方法が、ヘルペスウイルス関連疾患の予防及び治療に使用することができることを示した。
【0022】
したがって、本発明は、1つの局面において、一種のサイトメガロウイルス(CMV)由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)を提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチド断片の少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAP、およびCMV p100ポリペプチド由来のペプチド断片と、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドを含む。
【0023】
本発明は、別の局面において、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)をさらに提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチドプールのうちの少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールと、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドプールを含む。
【0024】
本発明は、別の局面において、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物も提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチド断片を含む。
【0025】
本発明は、別の局面において、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物も提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチドプールを含む。
【0026】
CMV pp65は、一種のCMV構造タンパク質(structural protein)であり、HCMVのリン酸化マトリックスタンパク質(phosphorylated matrix protein)を指す。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:pp65は、65kDa低マトリックスリンタンパク質(lower matrix phosphoprotein)、すなわちテグメントタンパク質UL83(Tegument protein UL83)である。(2)生物種(Organism):ヒトサイトメガロウイルス(Human cytomegalovirus)であり、ヒトヘルペスウイルス−5(Human herpesvirus−5、HHV−5)に属する。(3)配列長:561アミノ酸である。(4)機能:HCMVウイルス粒子(virion)のマトリックスの1部分を形成する。好ましい具体的実例は、番号がSwiss−Prot:P06725の配列、NCBI Accession NO:NP_040018、またはSEQ ID NO:1のような配列を有する。
【0027】
CMV IE−1は、一種のCMVの主要前初期タンパク質−1(major immediate early protein−1)であり、一種の転写調節タンパク質(transcription regulatory protein)である。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:IE−1は、すなわちUL123である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:491アミノ酸である。(4)機能:前初期転写調節因子に属し、EI−2のE1.7プロモーター遺伝子(promoter)に対する活性化を増強する。好ましい具体的実例は、番号がSwiss−Prot:のP13202配列、NCBI Accession:NP_040060、またはSEQ ID NO:2のような配列を有する。
【0028】
CMV VGLBは、一種のCMVのウイルスエンベロープ糖タンパク質(viral envelope glycoprotein)であり、次に挙げる特性を有する。(1)名称:糖タンパク質Bは、糖タンパク質GP55とも呼ばれ、すなわちUL55である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:907アミノ酸である。(4)機能:1型膜タンパク質(Type 1 membrane protein)に属し、CD209/DC−SIGNのウイルス配位子である。これらの作用は、ウイルス粒子を樹状細胞に取り込ませ、主に許容細胞(permissive cells)にする。好ましい具体的実例は、番号がNCBI Accession NO:YP_081514の配列、またはSEQ ID NO:3のような配列を有する。
【0029】
CMV VPAPは、一種のCMVのポリメラーゼプロセシビティ因子(DNA polymerase processivity factor)、つまりHCMVポリメラーゼタンパク質のサブユニットである。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:DNAポリメラーゼプロセシビティ因子であり、ポリメラーゼアクセサリータンパク質(Polymerase accessory protein、PAP)とも呼ばれ、すなわちUL44である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:433アミノ酸である。(4)機能:DNAポリメラーゼのアクセサリーサブユニット(accessory subunit)の働きは、重合反応のプロセシビティを高めることである。好ましい具体的実例は、番号がNCBI Accession NO:AAO73452の配列、またはSEQ ID NO:4のような配列を有する。
【0030】
CMV p100は、一種のCMVのテグメントタンパク質であり、大きさが150KDaのHCMVマトリックスリンタンパク質(phosphoprotein)を指す。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:pp150であり、塩基性リンタンパク質(Basic phosphoprotein、BPP)とも呼ばれ、すなわちUL32である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:1046アミノ酸である。(4)機能:CMVの大きい構造リンタンパク質である。好ましい具体的実例は、番号がNCBI ACCESSION:AAG31644の配列、またはSEQ ID NO:5のような配列を有する。
【0031】
本発明の好ましい実施例において、前述したCMV pp65、IE−1、VGLB、VPAPおよびCMV p100ポリペプチドは、それぞれ前述した対応する配列と、実質的に同じ配列を有する。
【0032】
本発明によると、「に由来のペプチド断片」という語は、前記タンパク質配列のすべて、もしくは一部分の配列を有するペプチドまたはペプチド断片を指す。
【0033】
本発明によると、「実質的に同じ」という語は、異なる種において、アミノ酸配列の変異が、それが構成するタンパク質の活性に必ずしも影響を及ぼすわけではないため、アミノ酸配列が一定程度の相同性を有していれば、そのタンパク質の活性に影響がないことを意味する。上述の一定程度の相同性とは、好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0034】
本発明の好ましい実施例において、前述の免疫原組成物は、CMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールを含む。ここで使用する「ペプチドプール(peptide pool)」という語は、一種の遺伝子産物全体の配列に及ぶ(spanning)、部分的にアミノ酸の重複を有する、複数のペプチドから構成される組合せを指す。
【0035】
本発明の好ましい実施例において、各ポリペプチド由来のペプチドプールにおける、各ペプチドの長さは、12から18個のアミノ酸である。
【0036】
本発明の好ましい実施例において、各ペプチドプールにおける、隣接する2つのペプチドの配列は、10から15個の連続したアミノ酸残基の重複を有する。
【0037】
例を挙げると、前述したポリペプチド由来のペプチドプールが、「ペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)」である場合、これは、一種の遺伝子産物全体の配列に及ぶ(spanning)、部分的にアミノ酸の重複(overlapping)を有する、15量体ペプチドで構成されるペプチドプール(peptide pool)を意味する。同じ理由で、その他の大きさのペプチドを有するペプチドプールも、同じである。
【0038】
本発明の好ましい具体例において、各ポリペプチド由来のペンタデカペプチドプールにおける、2つの隣接するペンタデカペプチドは、11個の連続したアミノ酸残基の重複を有する。例えば、図2に示すように、CMVのpp65遺伝子の遺伝子産物は、SEQ ID NO:1に記載した配列を有し、561個のアミノ酸を含む。CMVのpp65ポリペプチド由来のペンタデカペプチドプール(11)は、多くのペプチドを含むことができ、そのうち15量体ペプチド(111)は1から15の位置の15個のアミノ酸が連続する配列を有する。その隣接した別の15量体ペプチド(112)は、5から15の位置の連続する11個のアミノ酸が重複し、それに続く16から19の位置の4個の連続するアミノ酸残基配列を有する。さらに隣接した15量体ペプチド(113)は、9から19の位置の連続する11個のアミノ酸が重複し、それに続く20から23の位置の4個の連続するアミノ酸残基配列を有する。これから類推すると、最後に残る、4個の連続するアミノ酸残基が不足するとき、重複部分のアミノ酸配列を伸長し、各ペンタデカペプチドを満足させることを、15量体(15−mer)の条件とする。
【0039】
本発明によると、前記原則は、前述したCMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールにも適用される。
【0040】
本発明によると、前述したペプチドプールを、本技術分野で周知の方法によって合成することができる。本発明の好ましい具体例において、前述のペプチドプールは人工的に合成されたペプチドで構成される。
【0041】
本発明によると、前述したペプチドプールにおける隣接したペプチドとは、設定した最長の重複である連続するアミノ酸配列を有する2つのペプチドを意味する。前述の15量体ペプチドのペプチドプールを例とすると、このペプチドプールが11個の連続したアミノ酸配列の重複を有すると設定する場合、この隣接した2つのペプチドは、それぞれC末端に近い11個の連続したアミノ酸配列、およびN末端に近い11個の連続したアミノ酸が同じである。
【0042】
本発明によると、前述の免疫原組成物は、さらに生理的に受容できる支持剤または賦形剤を含む。
【0043】
本発明によると、前述の免疫原組成物は、さらに免疫促進剤(immunostimulant)を含む。
【0044】
ここで使用される「免疫促進剤(immuno−stimulant)」という語は、外来抗原に対する抗体または細胞調節を含む免疫応答を、実質的に増進または増強することができる任意の物質を意味する。一種の好ましい免疫促進剤は、アジュバント(adjuvant)を含む。アジュバントは、抗原を保護し、高代謝しないように設計された物質を含む。例えば、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)または鉱油(mineral oil)および免疫応答刺激剤(stimulator of immune responses)、例えば界面活性剤(surface active agent)に属する共重合体(copolymer)であり、リピドA(lipid A)などを含む。そのほか、さらに百日咳菌由来のタンパク質(Bordetalla pertussis derived proteins)と、由来するタンパク質である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、免疫調節剤とみなすことができる、例えばα−galatosylceramide(α−GalCer)およびその誘導体などの糖脂質、ならびにCpG由来のポリヌクレオチド(polynucleotides)を含む。
【0045】
特定のアジュバントは、市販の試薬でよく、例えば不完全フロイントアジュバントおよび完全フロイントアジュバント(Freund’s Incomplete Adjuvant and Complete Adjuvant)(Difco Laboratories、デトロイト、ミシガン州)、Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.、ローウェイ、ニュージャージ州)、AS−2(SmithKline Beecham、フィラデルフィア、ペンシルベニア州)、例えば水酸化アルミニウムゲル(aluminum hydroxide gel)またはリン酸アルミニウム(aluminum phosphate)などのアルミニウム塩(aluminum salts)、カルシウム、鉄または亜鉛の塩類、アシル化チロシンの不溶性浮遊物(insoluble suspension of acylated tyrosine)、アシル化糖類(acylated sugars)、陽イオンまたは陰イオン由来の多糖(cationically or anionically derivatized polysaccharides)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、生分解性ミクロスフェア(biodegradable microspheres)、モノホスホリルリピドA(monophosphoryl lipid A)と、キラヤサポナリアA(Quillaja saponaria A、Quil A)、ならびに、その他の例えばGM−CSF、インターロイキン2、−7、−12などのサイトカイン(cytokine)などであり、その他の類似する成長ホルモンもアジュバントとして使用できる。
【0046】
本発明は、別の局面において、一種の生体外(ex vivo)で免疫細胞を活性化する方法を提供する。これは、免疫細胞および前述した免疫原組成物を混合し、細胞混合培養物を形成することと、この細胞混合培養物を適当な培地で培養し、活性化した免疫細胞が得られることとを含む。
【0047】
本発明によると、前述した免疫細胞は、一種の抗原提示細胞(antigen presenting cell)である。好ましくは、前述した免疫細胞は、樹状細胞(dendritic cells)を含む。好ましい樹状細胞(dendritic cells)は、末梢血単核細胞、骨髄細胞(bone marrow cell)、造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cell)または幹細胞(stem cell)由来である。
【0048】
当業者には周知のように、樹状細胞(dendritic cell)は、哺乳動物の一種の白血球(leukocyte)に存在する。主に血液、環境中にさらされる組織およびその他の組織、例えば皮膚、鼻腔、肺、胃および小腸の上皮組織などに存在する。これらの働きは、環境刺激により生じる先天的および後天的免疫応答を調節する。そのうちの1つの最も重要な機能は、抗原を処理(process)した後、免疫システムのその他の白血球に提示(present)することであり、したがって、一種の抗原提示細胞(antigen presenting cell)である(Science、288:522〜527、2000年、Curr.Med.Chem.、 13(14):1591〜607、2006年、Nat.Rev.Cancer、8(5):351〜60、2008年)。本発明の好ましい実施例において、該樹状細胞は、ヒトの樹状細胞である。
【0049】
本発明によると、前述の適当な培地は、サイトカインまたは成長ホルモンを含む。該サイトカインは、次に挙げるIL−2、IL−7、IL−15およびその組合せで構成される群から選択される。
【0050】
本発明は、別の局面において、一種の生体外(ex vivo)で免疫エフェクター細胞(immune effector cell)の産生を誘発する方法を提供する。これは次に挙げる、一種の前述した方法で得られる活性化した免疫細胞および一種のリンパ球(lymphocyte)を提供するステップと、この活性化した免疫細胞およびリンパ球を、適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップとを含む。
【0051】
好ましい該リンパ球は、一種の自己または異種リンパ球(autologous or allogeneic lymphocyte)である。さらに好ましい該リンパ球は、一種の自己リンパ球(autologous lymphocyte)である。
【0052】
本発明によると、該リンパ球は、非接着性の末梢血単核細胞に由来する。本発明の好ましい実施例において、該リンパ球はTリンパ球またはBリンパ球である。さらに好ましくは、Tリンパ球は自己Tリンパ球である。
【0053】
ここで使用される「自己の(autologous)」という語は、当業者には周知のように、同一個体に由来することを示す。例を挙げると、示された自己免疫細胞(autologous immune cells)が、提供された樹状細胞と同一個体(selfsame individual)に由来する免疫細胞であることを示す。これにより、不必要な免疫応答、例えば異種免疫応答(heterologous immune response)などの発生が誘発されるのを防止する。
【0054】
本発明による免疫原組成物は、一種のヘルペスウイルスファミリーに属するサイトメガロウイルスに由来する。本発明の方法により得られる活性化した免疫細胞も、ヘルペスウイルス特異性を有するリンパ球を活性化することができ、さらにはヘルペスウイルス(herpes virus)に対する免疫応答を誘発することに応用される。
【0055】
示したヘルペスウイルスは、これに限定されないが、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)、単純ヘルペスウイルス−1(Herpes simplex virus−1、HSV−1)、単純ヘルペスウイルス−2(Herpes simplex virus−2、HSV−2)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster virus、VSV)、エプスタイン−バールウイルス(Epstein−Barr Virus、EBV)、ヒトヘルペスウイルス−6(Human herpes virus−6、HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス−7(Human herpes virus−7、HHV−7)、およびヒトヘルペスウイルス−8(Human herpes virus−8、HHV−8)でよい。
【0056】
本発明は、さらに以下の実施例によって説明を行う。しかし、明らかであることは、これらの実施例は説明のために用いたに過ぎず、本発明を実施する上での制限であるとみなされるべきではない。
【実施例】
【0057】
実験材料および方法
1.ペプチドおよび抗原
以下の実施例で使用した15量体ペプチドプール(15−mer peptide pools)は、JPT Peptide Technologies GmbH(ベルリン、ドイツ)から購入した。これは、次に挙げる、HCMVA pp65(SEQ ID NO:1)(561個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは138種のペプチドを含む)、HCMVA IE−1(SEQ ID NO:2)(491個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは120種のペプチドを含む)、HCMVA VPAP(SEQ ID NO:3)(433個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは106種のペプチドを含む)、HCMVA p100(SEQ ID NO:4)(1048個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは259種のペプチドを含む)、およびHCMVT VGLB(SEQ ID NO:5)(907個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは224種のペプチドを含む)の全長に及び(spanning)、11個のアミノ酸が部分的に重複する配列を有するペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)を含む。その他の抗原およびペプチドは、異なる方法で合成することができる。そのうち、WT−1(Wilm’s tumor 1)(Swiss prot:P19544、この配列をSEQ ID.NO:6に示す)由来のペプチドプール(WT33、JPT Peptide Technoogies GmbH、ベルリン、ドイツ)、およびC型肝炎ウイルスのコアウイルス(core protein of Hepatitis C virus)(NCBI ACCESSION:ABV46234(1−191//product=“core protein”、この配列をSEQ ID.NO:7に示す)由来のペプチドプールは、Peptide Scan 15/11の方式で、JPT Peptide Technologies社(JPT Peptide Technologies GmbH、ベルリン、ドイツに発注した。これらは、非特異的ペプチドプールとして使用した。
【0058】
2.末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells、PBMCs)の分離
血漿を分離した血液(apheresis blood)および全血は、健康なドナーから採取した。末梢血単核細胞は、前に述べたようにFicoll−Hypaque(GE Healthcare Bio−Sciences AB、ニュージャージ州、米国)を使用し、密度勾配遠心分離により調製した(Han S.et al.、2008年、Molecular Therapy、16:269〜279)。ヒト末梢血単核細胞の生存率は、トリパンブルー染色(trypan blue staining)により測定し、細胞生存率が80%より大きいグループの細胞だけを以下の実施例に使用した。
【0059】
3.樹状細胞(dendritic cells、DC)の調製
末梢血単核細胞を、1×107細胞/ウェル(cells/well)の細胞密度で6ウェルプレートに播き、末梢血単核細胞をAIM−V培地(Gibco−BRL、カリフォルニア州、米国)で2時間培養し、接着を行った。続いて、未接着の細胞(non−adherent cells)を慎重に取り除いて冷凍し、後の共培養実験に使用するTリンパ球(T lymphocytes)の供給源とした。接着した細胞(adherent cells)を、50ng/mLのGM−CSF(Biosource、カリフォルニア州、米国)および25ng/mLのIL−4(Biosource、カリフォルニア州、米国)を添加したAIM−V培地で培養した。樹状細胞を産生するため、細胞をGM−CSFおよびIL−4で24時間培養し、さらにIFN−γ(20ng/mL)(Gentaur)、TNF−α(50ng/mL)(R&D systems、ミネソタ州、米国)、IL−1β(10ng/mL)(R&D systems、ミネソタ州、米国)、IL−6(10ng/mL)(R&D systems)、およびPGE2(1μM)(Sigma−Aldrich、ミズーリ州、米国)で24時間培養し、成熟反応(maturation)を行った。樹状細胞の表現型(phenotype)は、フローサイトメトリー法で分析した。
【0060】
4.樹状細胞を活性化することによる、生体外(ex vivo)での抗原特異的リンパ球の増幅
図3を合わせて参照されたい。前記方法は、おおよそ図中に示されるプロセスで行った。樹状細胞によって活性化されたリンパ球は、先に記載した方法に基づき調製される(Han et al.、上述と同じ)。簡単に述べると、成熟した樹状細胞を、ペプチド(5μg/mL)またはその他の抗原で3時間負荷(loaded)し、放射線照射を行った(2,500rads)。樹状細胞および相同な非接着性末梢血単核細胞(PBMC)を1:20の比率で、2%ヒトAB血清を含むAIM−V培地で共培養し、3日目に、IL−2(Gentaur、アーヘン、ドイツ)、IL−7(Gentaur)およびIL−15(Gentaur)を添加した。続いて、1日おきに、これらのサイトカイン(cytokines)を含む新鮮な培地を添加した。共培養物中のTリンパ球の機能分析は、細胞内サイトカイン染色(intracellular cytokine staining)によって行った。
【0061】
5.カルボキシフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステルを基礎とした細胞増殖分析法、CFSEを基礎とした細胞増殖分析法(carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester−based cell proliferating analysis、CFSE−based cell proliferating analysis)
簡単に述べると、1×106PBMCsを、カルボキシフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステル(CFSE)を利用して標識し、続いて抗原を利用して培養を刺激した。3日目に、IL−2(Gentaur、アーヘン、ドイツ)およびIL−15(Gentaur)を添加した。次に、1日おきにこれらのサイトカイン(cytokines)を含む新鮮な培地を添加し、7日目まで続けた。細胞のCD4およびCD8について染色し、フローサイトメトリー法で分析した。
【0062】
6.CD107aおよび細胞内サイトカイン染色(CD107a and intracellular cytokine staining)
細胞染色の分析は、Hanらの文献のように行った(Han et al.、上述と同じ)。簡単に述べると、3×105の増幅したCMV特異的免疫エフェクター細胞(expanded CMV immune effector cells)は、抗原負荷した相同な樹状細胞(antigen−loaded autologous DCs)もしくは単核細胞を使用して、抗CD107a−FITCを有するか、または有さないAIM−V培地で刺激を行った。刺激反応を1時間行った後、モネンシン(Monensin)(Sigma)を添加した。5時間後、細胞のCD4およびCD8について染色、固定(fixed)、透過(permeablized)し、さらにIFN−γ、TNF−αまたはIL−2に対する抗体(すべてBD Bioscienceから)を利用し、FIX/PERMおよびPERM/Wash solution(BD)を使用して、染色を行った。
【0063】
7.酵素結合イムノスポットアッセイ(Enzyme−linked ImmunoSpot assay、ELISpot assay)
分離したばかりのPBMCを、1×105cell/wellの密度で、10μg/ml anti−IFN−γ(1−D1K、MabTech)でコート(coated)した96ウェルプレートに播き、なおかつ5%不活化ヒトAB血清(inactivated human AB serum)(Valley Biomedical、米国)を使用し、ブロック(block)を行った。異なるペプチドプールの組合せを利用し、2重の方式で細胞の刺激反応を行った。37℃、5%CO2下で18から20時間培養を行った後、細胞を単離し、1μg/mlのビオチン標識した抗IFN−γ(biotin labeled anti−IFN−γ)(7−B6−1、MabTech)を添加した。ストレプトアビジン標識アルカリホスファターゼ(Streptavidin conjugated alkaline phosphatase、Streptavidin conjugated ALP)(MabTech)を添加することにより、呈色反応(color reaction)の[スポット(spots)]が形成され、続いて基質のBCIP/NBT−plus(Bio−Rad)を添加した。スポットの数は、ELISPOT読取装置(ELISPOT reader)(AutoImmune Diagnostika)で算出した。106PBMCごとに含まれるスポット形成細胞(spot−forming cell、SFC)が示される。
【0064】
実施例1 異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールまたはその組合せによって、末梢血単核細胞(PBMC)が刺激される効果の分析−−−CFSE染色法を利用
本実施例の目的は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せを利用して、末梢血単核細胞を刺激し、さらにCFSE染色を利用して、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せの、末梢血単核細胞の細胞増殖活性に対する影響を分析し、それによって異なる組合せで免疫応答を刺激して生じる効果について理解することにある。
【0065】
CFSE標識した抹消血単核細胞(PBMC)は、それぞれ「実験材料および方法」に記載した方法に基づき、以下に記載するグループに分け、異なるペプチドプールの組合せによって末梢血単核細胞を刺激し、7日間培養を行った。
【0066】
(1)pp65のペンタデカペプチドプール(CMV pentadecapeptides)であり、サンプル「1」で示す。
(2)VGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「2」で示す。
(3)IE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「3」で示す。
(4)p100のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「4」で示す。
(5)VPAPのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「5」で示す。
(6)pp65およびVGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「6」で示す。
(7)pp65およびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「7」で示す。
(8)VGLBおよびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「8」で示す。
(9)pp65、VGLBおよびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「9」で示す。
(10)pp65、VGLB、IE−1およびp100のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「10」で示す。
(11)pp65、VGLB、IE−1、p100およびVPAPのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「11」で示す。
【0067】
そのほか、以下のグループをコントロール群とした。
【0068】
(12)CFSE標識した末梢血単核細胞を単独で培養し、未刺激のコントロール群(no stimulation control)とした。サンプル「12」で示し、実験のバックグラウンド値とした。
(13)CFSE標識した末梢血単核細胞、およびC型肝炎ウイルスのコアウイルス(core protein of Hepatitis C virus)由来のペプチドプールを負荷した樹状細胞を共培養し、ネガティブコントロール群(Negative control)とした。サンプル「13」で示す。
【0069】
上述で刺激されたPBMCは、続いて「実験材料および方法」に示す方法の通り、抗原特異的細胞増殖(antigen−specific proliferation)および分析を行った。さらに「細胞内サイトカイン染色」分析を行い、得られた実験データから先にPBMCの数値を差し引き、図を作成した。
【0070】
結果は、図4に示す通りである。図4Aは、異なるペプチドプールの組合せによる刺激下での、細胞増殖の状態を示す。図4Bは、異なるペプチドプールの組合せで増殖した細胞を示し、これは、IFN−γの能力を表す。
【0071】
上述の結果から以下のことがわかる。(1)5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを単独で使用するとき、そのすべてにおいて反応がある。(2)pp65、VGLBおよびp100のような単一ポリペプチド由来のペプチドプールもまた、免疫応答を誘発することができる。(3)2種類以上のペプチドプールの組合せは、単一のペプチドプールで得られる結果より比較的良好である。(4)この5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールにおいて、pp65およびVGLBの2種類のペプチドプールの免疫応答は比較的強く、組み合わせると免疫応答は付加効果を有する。ペプチドプールの組合せは数が多いほど、付加効果は良好である。
【0072】
実施例2 異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールまたはその組合せによって、末梢血単核細胞(PBMC)が刺激される効果の分析−−−ELISpot分析法を利用
本実施例の目的は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せを利用して、末梢血単核細胞を刺激し、さらにELISpotを利用して、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せの、PBMCの細胞機能に対する影響を分析することにある。
【0073】
異なるドナーから分離されたばかりの末梢血単核細胞は、それぞれ「実験材料および方法」に記載の方法により得られた。以下に記載するグループにおいて、異なるペプチドの組合せによってPBMCを刺激し、培養して20時間刺激した。また「実験材料および方法」に記載のELISpot分析法を利用して、IFN−γの分析を行った。
【0074】
(1)pp65のペンタデカペプチドプール(CMV pentadecapeptides)であり、サンプル「1」で示す。
(2)VGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「2」で示す。
(3)IE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「3」で示す。
(4)pp65およびVGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「4」で示す。
(5)pp65およびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「5」で示す。
(6)pp65、VGLBおよびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「6」で示す。
(7)pp65、VGLB、IE−1およびp100のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「7」で示す。
(8)pp65、VGLB、IE−1、p100およびVPAPのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「8」で示す。
【0075】
結果は図5に示す通りである。pp65+VGLB[棒4(bar4)を参照]またはpp65+IE−1[棒5(bar5)を参照]は、PBMCを刺激してIFN−γを産生する効果について、pp65[棒1(bar1)を参照]より比較的顕著である。また、そのうちpp65+VGLB(棒4を参照)の刺激効果は、pp65+IE−1(棒5を参照)より優れている。複数種のCMVタンパク質由来のペプチドプールの組合せのグループの効果(棒6、7、8を参照)は、2種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含むグループ(棒4、5を参照)、またはpp65単独のグループ(棒1を参照)より、わずかに優れている。
【0076】
実施例3 CMVタンパク質由来のペプチドプールまたは組合せによって、PBMC各グループの細胞が刺激される増殖作用の分析
本実施例の目的は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せを利用してPBMCを刺激し、さらに異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せの、PBMC中のCD4+およびCD8+グループの細胞に対する増殖作用の影響を分析することにある。
【0077】
CFSE標識したPBMCは、それぞれ(1)HCMVA pp65のペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)であり、「pp65」で示し、(2)HCMVA pp65およびHCMVA IE−1の2つのペンタデカペプチドを含む混合プール(mixed pool)であり、HCMVA pp65ペプチドプールおよびHCMVA IE−1ペプチドプールを含み、「pp65/IE−1」で示し、(3)HCMVA pp65、HCMVA IE−1、HCMVA VPAP、HCMVA p100、HCMVT VGLBの5つのペンタデカペプチドプールを含む混合プールであり、「5pepmix」で示し、(4)非特異的ペンタデカペプチドプールであり、「WT−1」で示し、(5)抗CD3抗体であり、ポジティブコントロール群(positive control)とし、「anti−CD3」で示す、などを刺激物として、7日間培養を行った。また「実験材料および方法」に記載した方法のように、抗原特異的細胞増殖(antigen−specific proliferation)の分析を、特に、CD4+およびCD8+グループの細胞の増殖作用について行った。またCFSE標識したPBMCの単独培養を未刺激のコントロール群(no stimulation control)とし、「PBMC」と示す。
【0078】
結果は図6に示す通りである。各グループのCFSE希釈の細胞(CFSE−diluted cells)(つまり増殖細胞)の割合は、図6に明示する通りである。単一のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(pp65)、または2種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(pp65/IE−1)と比較して、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(5pepmix)は、PBMC中のCD4+またはCD8+グループの細胞に関わらず、すべて最高の増殖作用を誘発した。これは、この5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む組合せが、最も強い免疫原性(immunogenicity)を有することを示す。
【0079】
実施例4 各種のCMVタンパク質由来のペプチドプールまたは組合せによって刺激される末梢血単核細胞(PBMC)の機能性分析
本実施例は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せによって、異なる供給源からのPBMCの細胞を刺激し、さらにPBMCのサイトカイン分泌の状態を分析して、免疫機能を判定することにより、各種組合せの免疫原性を確定した。
【0080】
ドナー2人からのPBMCは、それぞれ(1)HCMVA pp65のペンタデカペプチドプール(CMV pentadecapeptides)であり、「pp65」で示し、(2)HCMVA pp65およびHCMVA IE−1の2つのペンタデカペプチドプールを含む混合プール(mixed pool)であり、HCMVA pp65ペプチドプールおよびHCMVA IE−1ペプチドプールを含み、「pp65/IE−1」で示し、(3)HCMVA pp65、HCMVA IE−1、HCMVA VPAP、HCMVA p100、HCMVT VGLBの5つのペンタデカペプチドプールを含む混合プールであり、「5pepmix」で示し、(4)非特異的ペンタデカペプチドプールであり、「WT−1」で示し、(5)抗CD3抗体であり、ポジティブコントロール(positive control)とし、「anti−CD3」で示す、などを刺激物として7日間培養を行った。さらに「実験材料および方法」に記載の方法のように、細胞内サイトカイン染色分析(intracellular cytokine staining、ICCS)を行い、各グループの細胞のIL−2およびIFN−γの発現に対して分析を行った。PBMC単独培養を未刺激のコントロール群(no stimulation control)とし、「PBMC only」と示す。
【0081】
図7AおよびBは、それぞれ異なる供給源のPBMCに関する、前述の試験で得られた結果を示す。そのうち各棒グラフは、図中に明示されるように、それぞれIL−2および/またはIFN−γを発現するPBMCを具体的に表す。結果を、単一のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む混合プール(pp65)、または2種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む混合プール(pp65/IE−1)と比較して述べると、該5種類のCMV抗原のペプチドプールを含む混合プール(5pepmix)は、PBMCを刺激し、細胞に対してIL−2および/またはIFN−γを発現する能力が最も優れている。これは、5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む組合せが、最も強い免疫原性(immunogenicity)を有することを示す。
【0082】
実施例5 樹状細胞がPBMCを刺激することによる、CMV特異的免疫エフェクター細胞の産生
本実施例は、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プールを利用して処理した樹状細胞(DCs pulsed with the mixed pool of 5CMV pentadecapeptides)が、非接着性末梢血単核細胞(non−adherent PBMC)を刺激し、CMV特異的免疫エフェクター細胞が産生される効果について理解する。
【0083】
5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(mixed pool)を使用して処理した樹状細胞、および非接着性末梢血単核細胞(non−adherent PBMC)(Tリンパ球の供給源とする)を、「実験材料および方法」に記載の方法を利用して調製し、共培養を行った(図3を参照)。共培養を15日間行い、DCにより活性化されたリンパ球(DC−activatedlymphocyte)を、それぞれ単一のCMVタンパク質由来のペプチドプール(pp65、IE−1、VGLB、VPAP、p100)またはこの5種類のペプチドプールの組合せを含む樹状細胞によって、5時間再刺激(re−stimulation)した。それと同時に、ホルボールミリスチン酸アセタートにイオノマイシンを加えて(PMA+Ionomycin)、DCにより活性化されたリンパ球を刺激し、ポジティブコントロール群とし、非特異的抗原(WT−1)で処理した相同な樹状細胞をコントロール群とした。再刺激されたリンパ球は、IFN−γ、IL−2およびTNF−αに対する細胞内サイトカイン染色(ICCS)と、脱顆粒作用の細胞標識CD107aに対する染色により、抗原特異的免疫エフェクター細胞の機能について、評価を行った。
【0084】
図8は、前記細胞内サイトカイン染色の結果である。IFN−γ、IL−2およびTNF−αなどのサイトカインと、CD107aの発現は、図8に明示する通りである。図9AおよびBは、図8の結果に基づき作成した棒グラフである。それぞれIL−2および/またはTNF−αを発現した細胞の全体に占める割合と、IFN−γおよび/またはCD107aを発現した細胞の全体に占める割合を示す。結果は、5種類のペプチドプールの組合せ(5pepmix)の刺激によって産生された活性化免疫細胞は、いずれか1つの単一のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールに対して、特異的応答(specific response)が生じ、そのうち、pp65およびVGLBの免疫応答が最も強いことを示した。5種類のペプチドプールの組合せで処理した樹状細胞で再刺激したグループは、免疫エフェクター細胞中で、最も高いサイトカイン産生をもたらすことができる。
【0085】
前記実施例の結果は、複数のCMVタンパク質由来(最高で5種類まで)のペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)を混合した組合せが、短時間の暴露でCD4+およびCD8+の2つのTリンパ球を同時に、効果的に活性化することができることを示した。CD4+およびCD8+のTリンパ球の抗原特異的増殖反応と、エフェクターサイトカイン(effector cytokine)の産生が顕著に向上した。これは、CMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールの組合せが、抗CMV免疫力を形成する、一種の効果的なワクチンまたは免疫療法とすることができることを示す。図6および図7に示すように、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールの組合せは、PBMC中のCD4+およびCD8+の細胞の増殖反応とサイトカイン合成を誘発することができる。単独および2種類を混合したCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールも免疫応答を刺激するが、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールの組合せは、最も強い抗原特異的免疫応答を生じることができる。免疫エフェクター細胞の機能は、数種類の免疫活性化サイトカインおよび脱顆粒作用の標識CD107aに対する多色フローサイトメトリーにより、分析評価を行った。図8および図9に示すように、単一または2種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールと比較すると、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを混合した組合せ(5pepmix)は、エフェクターサイトカイン(effector cytokine)の産生、およびCD107aの脱顆粒化作用(degranulation)を誘発する上で、最も効果的であった。これは、5種類のCMVペプチドプールを混合した組合せが、一種の最も効果的なCMVワクチンまたは免疫原(immunogen)であることをさらに実証した。
【0086】
以上の記述は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明に対し、いかなる形式での制限も行わない。いかなる当業者も、本発明で提起した技術的特徴から逸脱しない範囲内において、本発明で開示された技術内容を利用し、部分的な変更または修飾を行った同等の実施例、さらに本発明から逸脱しない技術的特徴の内容は、すべて本発明の技術的特徴の範囲内に属するべきである。
【符号の説明】
【0087】
10 免疫原組成物
11 CMV pp65ペプチドプール
12 CMV IE−1ペプチドプール
13 CMV VGLBペプチドプール
14 CMV VPAPペプチドプール
15 CMV p100ペプチドプール
111 15量体ペプチド
112 15量体ペプチド
113 15量体ペプチド
20 免疫細胞
21 活性化された免疫細胞
30 リンパ球
31 免疫エフェクター細胞
40 個体
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種の抗ヘルペスウイルス(herpes virus)のワクチンに関し、特に抗ヘルペスウイルスの免疫エフェクター細胞(immune effector cells)の産生に使用される免疫原組成物に関する。本発明は、さらに前記免疫原組成物の用途、および免疫細胞の活性化に応用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスウイルスはヘルペスウイルス科(Herpesviridae)のウイルスに属する。現在までに、8種のウイルスに関して、ヒトにおける疾病の原因となることが知られている。この種のウイルスはヒトヘルペスウイルス(human herpes virus、HHV)と総称され、その中には以下が含まれる。(1)ヒトヘルペスウイルス−1(human herpes virus−1、HHV−1)であり、単純ヘルペスウイルス−1(herpes simplex virus−1、HSV−1)とも言われる。(2)ヒトヘルペスウイルス−2(HHV−2)であり、単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)とも言われる。(3)ヒトヘルペスウイルス−3(HHV−3)、すなわち水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus、VZV)であり、水痘および帯状疱疹を引き起こすことがあり、水痘ウイルスとも呼ばれる。(4)ヒトヘルペスウイルス−4(HHV−4)、すなわちエプスタイン−バールウイルス(Epstein−Barr Virus、EBV)で、一種のリンパ球ウイルスである。バーキットリンパ腫および上咽頭癌を引き起こすことがある。(5)ヒトヘルペスウイルス−5(HHV−5)、すなわちサイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)である。(6)ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)、すなわちロゼオロウイルスであり、小児バラ疹および突発性発疹を含む第六病を引き起こすことがある。(7)ヒトヘルペスウイルス−7(HHV−7)であり、HHV−6と近似し、症状はだいたい同じである。(8)ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)であり、ラジノウイルス属で、kSHVと略される。カポジ肉腫から発見された。
【0003】
移植を受けた患者のヘルペスウイルス(herpes virus、HV)に対する感染管理は、既存技術では、主に抗ウイルス薬を使用し、先制的治療(preemptive treatment)または予防治療(prophylaxis)を行う。サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)を例とすると、前者は、培養実験により陽性が示されるか、または検査によってウイルスが自発的複製をしていることが示されると、無症状であっても先制的治療を行う。後者は、血清に対して陽性である患者は、感染の証拠がなくても予防治療を行う。既存技術において、CMV複製の制御に使用される数種の抗ウイルス薬には、ガンシクロビル(ganciclovir)、フォスカネット(foscarnet)およびシドフォビル(cidofovir)(Gandhi MK、et al.、Lancet Infect.Dis.、2004年、4:725〜38)が含まれる。移植を受けた患者に対して、これらの試薬を用いて、治療としてヘルペスウイルス感染の制御を行い、現在すでに顕著な進歩を遂げている。
【0004】
しかしながら、これらの薬理学的戦略(pharmacological strategies)には制限がある。例えば、薬物毒性、薬剤耐性の発生、低経口バイオアベイラビリティ(oral bioavailability)および低効力などの問題である。抗ウイルス薬を利用して治療しても、死亡率は依然として高く、特に、可能な限り早期に治療を始めていない場合に高い(Gandhi MK、et al.、上述と同じ、Ison MG、et al.、Clin.Chest Med.、2005年、26:691〜705、Gandhi MK、et al.、Blood Rev.、2003年、17:259〜64)。そのほか、患者がこれらの試薬を長期間使用すると、抗ウイルス薬に対する薬剤耐性が徐々に発生することがある(Ison MG、et al.、上述と同じ、Biron KK.、Antiviral Res.、2006年、71:154〜63)。
【0005】
既存の、ヘルペスウイルス感染症に対する免疫療法は、生ウイルスを基にしたヘルペスウイルス抗原の供給源(herpes virus antigen sources based on live virus)、ヘルペスウイルスに感染した細胞(herpes virus−infected cells)、ヘルペスウイルス遺伝子発現ベクター(herpes virus gene expression vector)、または合成されたヘルペスウイルスタンパク質もしくはペプチドを使用し、ヘルペスウイルス特異的免疫応答を活性化する抗原提示細胞(antigen presenting cells)を刺激する。ウイルスまたはウイルス感染した細胞を抗原の供給源とすると、ウイルス汚染および感染を引き起こすという潜在的な危険性があり、全長のヘルペスウイルス遺伝子またはタンパク質を抗原の供給源とすると、免疫抑制作用(immune suppression)または免疫寛容(immune tolerance)を誘発する潜在的危険がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gandhi MK、et al.、Lancet Infect.Dis.、2004年、4:725〜38
【非特許文献2】Ison MG、et al.、Clin.Chest Med.、2005年、26:691〜705
【非特許文献3】Gandhi MK、et al.、Blood Rev.、2003年、17:259〜64
【非特許文献4】Biron KK.、Antiviral Res.、2006年、71:154〜63
【非特許文献5】Science、288:522〜527、2000年
【非特許文献6】Curr.Med.Chem.、 13(14):1591〜607、2006年
【非特許文献7】Nat.Rev.Cancer、8(5):351〜60、2008年
【非特許文献8】Han S.et al.、2008年、Molecular Therapy、16:269〜279
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、既存技術が前述したウイルス汚染による感染、および免疫寛容などを含む問題を有することに基づき、一種のヘルペスウイルス疾患に対する免疫療法を提供することにある。これは、前述したような、生ウイルス、ヘルペスウイルス感染細胞、または全長のヘルペスウイルスタンパク質を使用することにより生じる種々の問題が起こることはない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、第1の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)を提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチド断片の少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチド断片と、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドを含む。
【0009】
第2の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)を提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチドプールのうちの少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールと、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドプールを含む。
【0010】
第3の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物を提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチド断片を含む。
【0011】
第4の局面において、本発明は、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物を提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチドプールを含む。
【0012】
本発明の好ましい実施例において、前記免疫原組成物のうちのCMV pp65は、SEQ ID NO:1と実質的に同じ配列を有する。CMV IE−1は、SEQ ID NO:2と実質的に同じ配列を有する。CMV VGLBは、SEQ ID NO:3と実質的に同じ配列を有する。CMV VPAPは、SEQ ID NO:4と実質的に同じ配列を有する。CMV p100はSEQ ID NO:5と実質的に同じ配列を有する。
【0013】
好ましくは、前述した免疫原組成物は、CMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールを含む。
【0014】
第5の局面において、本発明は、前述した第1から第4の局面のいずれか1つの免疫原組成物が、生体外でヘルペスウイルスに対する免疫応答を誘発する用途を提供する。
【0015】
第6の局面において、本発明は、前述した第1から第4の局面のいずれか1つの免疫原組成物が、ヘルペスウイルス感染症を治療する医薬品の製造に使用される用途を提供する。
【0016】
第7の局面において、本発明は、一種の生体外(ex vivo)で免疫細胞を活性化する方法を提供する。これは次に挙げる、免疫細胞および前述の第1から第4の局面のいずれか1つの免疫原組成物を混合し、細胞混合培養物を形成するステップと、この細胞混合培養物を適当な培地で培養し、活性化した免疫細胞が得られるステップとを含む。
【0017】
第8の局面において、本発明は、一種の生体外(ex vivo)で免疫エフェクター細胞(immune effector cells)の産生を誘発する方法を提供する。これは次に挙げる、一種の前述した第1から第4の局面のいずれか1つの方法によって得られる活性化された免疫細胞、および一種のリンパ球(lymphocyte)を提供するステップと、この活性化された免疫細胞およびリンパ球を、適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、免疫原組成物が抗CMV免疫応答(anti−CMV immune response)を効果的に活性化することができ、さらにこれらのペプチドプールは生ウイルス、CMV感染した細胞を使用しないため、不必要な感染の問題および免疫抑制作用、免疫寛容などの潜在的な危険性がないことを実証した。そのほか、本発明による方法は、免疫細胞を効果的に活性化し、またリンパ球をさらに活性化することにも使用され、抗CMVウイルス活性を有する免疫エフェクター細胞を産生する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の方法の簡単なフローチャートである。
【図2】図2は、CMVポリペプチド由来のペプチドプールの概要図である。このポリペプチドはpp65を例としている。
【図3】図3は、樹状細胞によって活性化されるリンパ球の調製プロセスである。
【図4】図4は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプール、およびその組合せによってPBMCの細胞が刺激され、増殖作用が生じる効果を示す。そのうち、AはCFSE染色分析の結果であり、Bは細胞内サイトカイン染色分析の結果である。
【図5】図5は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプール、およびその組合せによってPBMCの細胞が刺激され、免疫応答が生じる効果を示す。そのうち、A、Bは、それぞれ異なるドナーからのPBMCの試験結果である。
【図6】図6は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプール、およびその組合せの、PBMC中のCD4+およびCD8+グループの細胞の増殖作用に対する影響を示す。
【図7】図7のAおよびBは、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せによって、異なる供給源のPBMCが刺激され、PBMCにおいて分泌されるサイトカインの状況を示したものである。
【図8】図8は、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを有する混合プールにより処理を行った樹状細胞(DCs pulsed with the mixed pool of 5 CMV pentadecapeptides)が、非接着性末梢血単核細胞(non−adherent PBMC)を刺激し、そのうちのCMV特異的免疫エフェクター細胞(IE)の細胞内サイトカイン染色の結果を示す。
【図9】図9は、図8の結果を棒グラフで示したものである。図9のAは、各グループのIL−2の発現状態を示し、図9のBは、各グループのCD107aの発現状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、出願人は、一種の抗ヘルペスウイルスの免疫エフェクター細胞(immune effector cells)を産生する免疫原組成物および方法を研究開発した。図1を組み合わせて参照されたい。本発明の方法は、主に以下の各局面を包含する。まず、サイトメガロウイルス(CMV)由来のペプチドを含む異なる免疫原組成物(10)により免疫細胞(20)が刺激される。そのうち免疫原組成物(10)は、例えばCMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAP、およびCMV p100ポリペプチド由来ペプチドプール(11)(12)(13)(14)(15)が含まれ、活性化した免疫細胞(21)が得られる。これは、例えばTリンパ球などのリンパ球(30)を活性化する能力を有する。次に、活性化した免疫細胞(21)およびリンパ球(30)を一緒に培養すると、免疫エフェクター細胞(31)が得られる。続いて、得られた免疫エフェクター細胞(31)を、さらに個体(40)の体内へ移植することができ、ヘルペスウイルスの関連疾患を予防および治療する目的を達成する。
【0021】
出願人は、2、3、4または5種類のCMVペプチドプールを組み合わせた混合プール(mixed pool)が、単一または2つのCMVタンパク質由来のペプチドプールと比較すると、抗CMV免疫応答(anti−CMV immune response)をさらに効果的に活性化することができ、特に、CMV特異的なCD8+およびCD4+Tリンパ球が活性化されて、高いエフェクター機能(effector functions)を生じることができることを実証した。本発明のCMV免疫原組成物および免疫治療方法が、ヘルペスウイルス関連疾患の予防及び治療に使用することができることを示した。
【0022】
したがって、本発明は、1つの局面において、一種のサイトメガロウイルス(CMV)由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)を提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチド断片の少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAP、およびCMV p100ポリペプチド由来のペプチド断片と、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドを含む。
【0023】
本発明は、別の局面において、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物(immunogenic composition)をさらに提供する。これは、(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチドプールのうちの少なくとも1つ、ならびに(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールと、前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドプールを含む。
【0024】
本発明は、別の局面において、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物も提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチド断片を含む。
【0025】
本発明は、別の局面において、一種のサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物も提供する。これは、CMV VGLBポリペプチド由来のペプチドプールを含む。
【0026】
CMV pp65は、一種のCMV構造タンパク質(structural protein)であり、HCMVのリン酸化マトリックスタンパク質(phosphorylated matrix protein)を指す。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:pp65は、65kDa低マトリックスリンタンパク質(lower matrix phosphoprotein)、すなわちテグメントタンパク質UL83(Tegument protein UL83)である。(2)生物種(Organism):ヒトサイトメガロウイルス(Human cytomegalovirus)であり、ヒトヘルペスウイルス−5(Human herpesvirus−5、HHV−5)に属する。(3)配列長:561アミノ酸である。(4)機能:HCMVウイルス粒子(virion)のマトリックスの1部分を形成する。好ましい具体的実例は、番号がSwiss−Prot:P06725の配列、NCBI Accession NO:NP_040018、またはSEQ ID NO:1のような配列を有する。
【0027】
CMV IE−1は、一種のCMVの主要前初期タンパク質−1(major immediate early protein−1)であり、一種の転写調節タンパク質(transcription regulatory protein)である。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:IE−1は、すなわちUL123である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:491アミノ酸である。(4)機能:前初期転写調節因子に属し、EI−2のE1.7プロモーター遺伝子(promoter)に対する活性化を増強する。好ましい具体的実例は、番号がSwiss−Prot:のP13202配列、NCBI Accession:NP_040060、またはSEQ ID NO:2のような配列を有する。
【0028】
CMV VGLBは、一種のCMVのウイルスエンベロープ糖タンパク質(viral envelope glycoprotein)であり、次に挙げる特性を有する。(1)名称:糖タンパク質Bは、糖タンパク質GP55とも呼ばれ、すなわちUL55である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:907アミノ酸である。(4)機能:1型膜タンパク質(Type 1 membrane protein)に属し、CD209/DC−SIGNのウイルス配位子である。これらの作用は、ウイルス粒子を樹状細胞に取り込ませ、主に許容細胞(permissive cells)にする。好ましい具体的実例は、番号がNCBI Accession NO:YP_081514の配列、またはSEQ ID NO:3のような配列を有する。
【0029】
CMV VPAPは、一種のCMVのポリメラーゼプロセシビティ因子(DNA polymerase processivity factor)、つまりHCMVポリメラーゼタンパク質のサブユニットである。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:DNAポリメラーゼプロセシビティ因子であり、ポリメラーゼアクセサリータンパク質(Polymerase accessory protein、PAP)とも呼ばれ、すなわちUL44である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:433アミノ酸である。(4)機能:DNAポリメラーゼのアクセサリーサブユニット(accessory subunit)の働きは、重合反応のプロセシビティを高めることである。好ましい具体的実例は、番号がNCBI Accession NO:AAO73452の配列、またはSEQ ID NO:4のような配列を有する。
【0030】
CMV p100は、一種のCMVのテグメントタンパク質であり、大きさが150KDaのHCMVマトリックスリンタンパク質(phosphoprotein)を指す。これは、次に挙げる特性を有する。(1)名称:pp150であり、塩基性リンタンパク質(Basic phosphoprotein、BPP)とも呼ばれ、すなわちUL32である。(2)生物種:ヒトサイトメガロウイルスであり、HHV−5に属する。(3)配列長:1046アミノ酸である。(4)機能:CMVの大きい構造リンタンパク質である。好ましい具体的実例は、番号がNCBI ACCESSION:AAG31644の配列、またはSEQ ID NO:5のような配列を有する。
【0031】
本発明の好ましい実施例において、前述したCMV pp65、IE−1、VGLB、VPAPおよびCMV p100ポリペプチドは、それぞれ前述した対応する配列と、実質的に同じ配列を有する。
【0032】
本発明によると、「に由来のペプチド断片」という語は、前記タンパク質配列のすべて、もしくは一部分の配列を有するペプチドまたはペプチド断片を指す。
【0033】
本発明によると、「実質的に同じ」という語は、異なる種において、アミノ酸配列の変異が、それが構成するタンパク質の活性に必ずしも影響を及ぼすわけではないため、アミノ酸配列が一定程度の相同性を有していれば、そのタンパク質の活性に影響がないことを意味する。上述の一定程度の相同性とは、好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0034】
本発明の好ましい実施例において、前述の免疫原組成物は、CMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールを含む。ここで使用する「ペプチドプール(peptide pool)」という語は、一種の遺伝子産物全体の配列に及ぶ(spanning)、部分的にアミノ酸の重複を有する、複数のペプチドから構成される組合せを指す。
【0035】
本発明の好ましい実施例において、各ポリペプチド由来のペプチドプールにおける、各ペプチドの長さは、12から18個のアミノ酸である。
【0036】
本発明の好ましい実施例において、各ペプチドプールにおける、隣接する2つのペプチドの配列は、10から15個の連続したアミノ酸残基の重複を有する。
【0037】
例を挙げると、前述したポリペプチド由来のペプチドプールが、「ペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)」である場合、これは、一種の遺伝子産物全体の配列に及ぶ(spanning)、部分的にアミノ酸の重複(overlapping)を有する、15量体ペプチドで構成されるペプチドプール(peptide pool)を意味する。同じ理由で、その他の大きさのペプチドを有するペプチドプールも、同じである。
【0038】
本発明の好ましい具体例において、各ポリペプチド由来のペンタデカペプチドプールにおける、2つの隣接するペンタデカペプチドは、11個の連続したアミノ酸残基の重複を有する。例えば、図2に示すように、CMVのpp65遺伝子の遺伝子産物は、SEQ ID NO:1に記載した配列を有し、561個のアミノ酸を含む。CMVのpp65ポリペプチド由来のペンタデカペプチドプール(11)は、多くのペプチドを含むことができ、そのうち15量体ペプチド(111)は1から15の位置の15個のアミノ酸が連続する配列を有する。その隣接した別の15量体ペプチド(112)は、5から15の位置の連続する11個のアミノ酸が重複し、それに続く16から19の位置の4個の連続するアミノ酸残基配列を有する。さらに隣接した15量体ペプチド(113)は、9から19の位置の連続する11個のアミノ酸が重複し、それに続く20から23の位置の4個の連続するアミノ酸残基配列を有する。これから類推すると、最後に残る、4個の連続するアミノ酸残基が不足するとき、重複部分のアミノ酸配列を伸長し、各ペンタデカペプチドを満足させることを、15量体(15−mer)の条件とする。
【0039】
本発明によると、前記原則は、前述したCMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールにも適用される。
【0040】
本発明によると、前述したペプチドプールを、本技術分野で周知の方法によって合成することができる。本発明の好ましい具体例において、前述のペプチドプールは人工的に合成されたペプチドで構成される。
【0041】
本発明によると、前述したペプチドプールにおける隣接したペプチドとは、設定した最長の重複である連続するアミノ酸配列を有する2つのペプチドを意味する。前述の15量体ペプチドのペプチドプールを例とすると、このペプチドプールが11個の連続したアミノ酸配列の重複を有すると設定する場合、この隣接した2つのペプチドは、それぞれC末端に近い11個の連続したアミノ酸配列、およびN末端に近い11個の連続したアミノ酸が同じである。
【0042】
本発明によると、前述の免疫原組成物は、さらに生理的に受容できる支持剤または賦形剤を含む。
【0043】
本発明によると、前述の免疫原組成物は、さらに免疫促進剤(immunostimulant)を含む。
【0044】
ここで使用される「免疫促進剤(immuno−stimulant)」という語は、外来抗原に対する抗体または細胞調節を含む免疫応答を、実質的に増進または増強することができる任意の物質を意味する。一種の好ましい免疫促進剤は、アジュバント(adjuvant)を含む。アジュバントは、抗原を保護し、高代謝しないように設計された物質を含む。例えば、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)または鉱油(mineral oil)および免疫応答刺激剤(stimulator of immune responses)、例えば界面活性剤(surface active agent)に属する共重合体(copolymer)であり、リピドA(lipid A)などを含む。そのほか、さらに百日咳菌由来のタンパク質(Bordetalla pertussis derived proteins)と、由来するタンパク質である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、免疫調節剤とみなすことができる、例えばα−galatosylceramide(α−GalCer)およびその誘導体などの糖脂質、ならびにCpG由来のポリヌクレオチド(polynucleotides)を含む。
【0045】
特定のアジュバントは、市販の試薬でよく、例えば不完全フロイントアジュバントおよび完全フロイントアジュバント(Freund’s Incomplete Adjuvant and Complete Adjuvant)(Difco Laboratories、デトロイト、ミシガン州)、Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.、ローウェイ、ニュージャージ州)、AS−2(SmithKline Beecham、フィラデルフィア、ペンシルベニア州)、例えば水酸化アルミニウムゲル(aluminum hydroxide gel)またはリン酸アルミニウム(aluminum phosphate)などのアルミニウム塩(aluminum salts)、カルシウム、鉄または亜鉛の塩類、アシル化チロシンの不溶性浮遊物(insoluble suspension of acylated tyrosine)、アシル化糖類(acylated sugars)、陽イオンまたは陰イオン由来の多糖(cationically or anionically derivatized polysaccharides)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、生分解性ミクロスフェア(biodegradable microspheres)、モノホスホリルリピドA(monophosphoryl lipid A)と、キラヤサポナリアA(Quillaja saponaria A、Quil A)、ならびに、その他の例えばGM−CSF、インターロイキン2、−7、−12などのサイトカイン(cytokine)などであり、その他の類似する成長ホルモンもアジュバントとして使用できる。
【0046】
本発明は、別の局面において、一種の生体外(ex vivo)で免疫細胞を活性化する方法を提供する。これは、免疫細胞および前述した免疫原組成物を混合し、細胞混合培養物を形成することと、この細胞混合培養物を適当な培地で培養し、活性化した免疫細胞が得られることとを含む。
【0047】
本発明によると、前述した免疫細胞は、一種の抗原提示細胞(antigen presenting cell)である。好ましくは、前述した免疫細胞は、樹状細胞(dendritic cells)を含む。好ましい樹状細胞(dendritic cells)は、末梢血単核細胞、骨髄細胞(bone marrow cell)、造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cell)または幹細胞(stem cell)由来である。
【0048】
当業者には周知のように、樹状細胞(dendritic cell)は、哺乳動物の一種の白血球(leukocyte)に存在する。主に血液、環境中にさらされる組織およびその他の組織、例えば皮膚、鼻腔、肺、胃および小腸の上皮組織などに存在する。これらの働きは、環境刺激により生じる先天的および後天的免疫応答を調節する。そのうちの1つの最も重要な機能は、抗原を処理(process)した後、免疫システムのその他の白血球に提示(present)することであり、したがって、一種の抗原提示細胞(antigen presenting cell)である(Science、288:522〜527、2000年、Curr.Med.Chem.、 13(14):1591〜607、2006年、Nat.Rev.Cancer、8(5):351〜60、2008年)。本発明の好ましい実施例において、該樹状細胞は、ヒトの樹状細胞である。
【0049】
本発明によると、前述の適当な培地は、サイトカインまたは成長ホルモンを含む。該サイトカインは、次に挙げるIL−2、IL−7、IL−15およびその組合せで構成される群から選択される。
【0050】
本発明は、別の局面において、一種の生体外(ex vivo)で免疫エフェクター細胞(immune effector cell)の産生を誘発する方法を提供する。これは次に挙げる、一種の前述した方法で得られる活性化した免疫細胞および一種のリンパ球(lymphocyte)を提供するステップと、この活性化した免疫細胞およびリンパ球を、適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップとを含む。
【0051】
好ましい該リンパ球は、一種の自己または異種リンパ球(autologous or allogeneic lymphocyte)である。さらに好ましい該リンパ球は、一種の自己リンパ球(autologous lymphocyte)である。
【0052】
本発明によると、該リンパ球は、非接着性の末梢血単核細胞に由来する。本発明の好ましい実施例において、該リンパ球はTリンパ球またはBリンパ球である。さらに好ましくは、Tリンパ球は自己Tリンパ球である。
【0053】
ここで使用される「自己の(autologous)」という語は、当業者には周知のように、同一個体に由来することを示す。例を挙げると、示された自己免疫細胞(autologous immune cells)が、提供された樹状細胞と同一個体(selfsame individual)に由来する免疫細胞であることを示す。これにより、不必要な免疫応答、例えば異種免疫応答(heterologous immune response)などの発生が誘発されるのを防止する。
【0054】
本発明による免疫原組成物は、一種のヘルペスウイルスファミリーに属するサイトメガロウイルスに由来する。本発明の方法により得られる活性化した免疫細胞も、ヘルペスウイルス特異性を有するリンパ球を活性化することができ、さらにはヘルペスウイルス(herpes virus)に対する免疫応答を誘発することに応用される。
【0055】
示したヘルペスウイルスは、これに限定されないが、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)、単純ヘルペスウイルス−1(Herpes simplex virus−1、HSV−1)、単純ヘルペスウイルス−2(Herpes simplex virus−2、HSV−2)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster virus、VSV)、エプスタイン−バールウイルス(Epstein−Barr Virus、EBV)、ヒトヘルペスウイルス−6(Human herpes virus−6、HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス−7(Human herpes virus−7、HHV−7)、およびヒトヘルペスウイルス−8(Human herpes virus−8、HHV−8)でよい。
【0056】
本発明は、さらに以下の実施例によって説明を行う。しかし、明らかであることは、これらの実施例は説明のために用いたに過ぎず、本発明を実施する上での制限であるとみなされるべきではない。
【実施例】
【0057】
実験材料および方法
1.ペプチドおよび抗原
以下の実施例で使用した15量体ペプチドプール(15−mer peptide pools)は、JPT Peptide Technologies GmbH(ベルリン、ドイツ)から購入した。これは、次に挙げる、HCMVA pp65(SEQ ID NO:1)(561個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは138種のペプチドを含む)、HCMVA IE−1(SEQ ID NO:2)(491個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは120種のペプチドを含む)、HCMVA VPAP(SEQ ID NO:3)(433個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは106種のペプチドを含む)、HCMVA p100(SEQ ID NO:4)(1048個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは259種のペプチドを含む)、およびHCMVT VGLB(SEQ ID NO:5)(907個のアミノ酸、これに由来するペプチドプールは224種のペプチドを含む)の全長に及び(spanning)、11個のアミノ酸が部分的に重複する配列を有するペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)を含む。その他の抗原およびペプチドは、異なる方法で合成することができる。そのうち、WT−1(Wilm’s tumor 1)(Swiss prot:P19544、この配列をSEQ ID.NO:6に示す)由来のペプチドプール(WT33、JPT Peptide Technoogies GmbH、ベルリン、ドイツ)、およびC型肝炎ウイルスのコアウイルス(core protein of Hepatitis C virus)(NCBI ACCESSION:ABV46234(1−191//product=“core protein”、この配列をSEQ ID.NO:7に示す)由来のペプチドプールは、Peptide Scan 15/11の方式で、JPT Peptide Technologies社(JPT Peptide Technologies GmbH、ベルリン、ドイツに発注した。これらは、非特異的ペプチドプールとして使用した。
【0058】
2.末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells、PBMCs)の分離
血漿を分離した血液(apheresis blood)および全血は、健康なドナーから採取した。末梢血単核細胞は、前に述べたようにFicoll−Hypaque(GE Healthcare Bio−Sciences AB、ニュージャージ州、米国)を使用し、密度勾配遠心分離により調製した(Han S.et al.、2008年、Molecular Therapy、16:269〜279)。ヒト末梢血単核細胞の生存率は、トリパンブルー染色(trypan blue staining)により測定し、細胞生存率が80%より大きいグループの細胞だけを以下の実施例に使用した。
【0059】
3.樹状細胞(dendritic cells、DC)の調製
末梢血単核細胞を、1×107細胞/ウェル(cells/well)の細胞密度で6ウェルプレートに播き、末梢血単核細胞をAIM−V培地(Gibco−BRL、カリフォルニア州、米国)で2時間培養し、接着を行った。続いて、未接着の細胞(non−adherent cells)を慎重に取り除いて冷凍し、後の共培養実験に使用するTリンパ球(T lymphocytes)の供給源とした。接着した細胞(adherent cells)を、50ng/mLのGM−CSF(Biosource、カリフォルニア州、米国)および25ng/mLのIL−4(Biosource、カリフォルニア州、米国)を添加したAIM−V培地で培養した。樹状細胞を産生するため、細胞をGM−CSFおよびIL−4で24時間培養し、さらにIFN−γ(20ng/mL)(Gentaur)、TNF−α(50ng/mL)(R&D systems、ミネソタ州、米国)、IL−1β(10ng/mL)(R&D systems、ミネソタ州、米国)、IL−6(10ng/mL)(R&D systems)、およびPGE2(1μM)(Sigma−Aldrich、ミズーリ州、米国)で24時間培養し、成熟反応(maturation)を行った。樹状細胞の表現型(phenotype)は、フローサイトメトリー法で分析した。
【0060】
4.樹状細胞を活性化することによる、生体外(ex vivo)での抗原特異的リンパ球の増幅
図3を合わせて参照されたい。前記方法は、おおよそ図中に示されるプロセスで行った。樹状細胞によって活性化されたリンパ球は、先に記載した方法に基づき調製される(Han et al.、上述と同じ)。簡単に述べると、成熟した樹状細胞を、ペプチド(5μg/mL)またはその他の抗原で3時間負荷(loaded)し、放射線照射を行った(2,500rads)。樹状細胞および相同な非接着性末梢血単核細胞(PBMC)を1:20の比率で、2%ヒトAB血清を含むAIM−V培地で共培養し、3日目に、IL−2(Gentaur、アーヘン、ドイツ)、IL−7(Gentaur)およびIL−15(Gentaur)を添加した。続いて、1日おきに、これらのサイトカイン(cytokines)を含む新鮮な培地を添加した。共培養物中のTリンパ球の機能分析は、細胞内サイトカイン染色(intracellular cytokine staining)によって行った。
【0061】
5.カルボキシフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステルを基礎とした細胞増殖分析法、CFSEを基礎とした細胞増殖分析法(carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester−based cell proliferating analysis、CFSE−based cell proliferating analysis)
簡単に述べると、1×106PBMCsを、カルボキシフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステル(CFSE)を利用して標識し、続いて抗原を利用して培養を刺激した。3日目に、IL−2(Gentaur、アーヘン、ドイツ)およびIL−15(Gentaur)を添加した。次に、1日おきにこれらのサイトカイン(cytokines)を含む新鮮な培地を添加し、7日目まで続けた。細胞のCD4およびCD8について染色し、フローサイトメトリー法で分析した。
【0062】
6.CD107aおよび細胞内サイトカイン染色(CD107a and intracellular cytokine staining)
細胞染色の分析は、Hanらの文献のように行った(Han et al.、上述と同じ)。簡単に述べると、3×105の増幅したCMV特異的免疫エフェクター細胞(expanded CMV immune effector cells)は、抗原負荷した相同な樹状細胞(antigen−loaded autologous DCs)もしくは単核細胞を使用して、抗CD107a−FITCを有するか、または有さないAIM−V培地で刺激を行った。刺激反応を1時間行った後、モネンシン(Monensin)(Sigma)を添加した。5時間後、細胞のCD4およびCD8について染色、固定(fixed)、透過(permeablized)し、さらにIFN−γ、TNF−αまたはIL−2に対する抗体(すべてBD Bioscienceから)を利用し、FIX/PERMおよびPERM/Wash solution(BD)を使用して、染色を行った。
【0063】
7.酵素結合イムノスポットアッセイ(Enzyme−linked ImmunoSpot assay、ELISpot assay)
分離したばかりのPBMCを、1×105cell/wellの密度で、10μg/ml anti−IFN−γ(1−D1K、MabTech)でコート(coated)した96ウェルプレートに播き、なおかつ5%不活化ヒトAB血清(inactivated human AB serum)(Valley Biomedical、米国)を使用し、ブロック(block)を行った。異なるペプチドプールの組合せを利用し、2重の方式で細胞の刺激反応を行った。37℃、5%CO2下で18から20時間培養を行った後、細胞を単離し、1μg/mlのビオチン標識した抗IFN−γ(biotin labeled anti−IFN−γ)(7−B6−1、MabTech)を添加した。ストレプトアビジン標識アルカリホスファターゼ(Streptavidin conjugated alkaline phosphatase、Streptavidin conjugated ALP)(MabTech)を添加することにより、呈色反応(color reaction)の[スポット(spots)]が形成され、続いて基質のBCIP/NBT−plus(Bio−Rad)を添加した。スポットの数は、ELISPOT読取装置(ELISPOT reader)(AutoImmune Diagnostika)で算出した。106PBMCごとに含まれるスポット形成細胞(spot−forming cell、SFC)が示される。
【0064】
実施例1 異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールまたはその組合せによって、末梢血単核細胞(PBMC)が刺激される効果の分析−−−CFSE染色法を利用
本実施例の目的は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せを利用して、末梢血単核細胞を刺激し、さらにCFSE染色を利用して、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せの、末梢血単核細胞の細胞増殖活性に対する影響を分析し、それによって異なる組合せで免疫応答を刺激して生じる効果について理解することにある。
【0065】
CFSE標識した抹消血単核細胞(PBMC)は、それぞれ「実験材料および方法」に記載した方法に基づき、以下に記載するグループに分け、異なるペプチドプールの組合せによって末梢血単核細胞を刺激し、7日間培養を行った。
【0066】
(1)pp65のペンタデカペプチドプール(CMV pentadecapeptides)であり、サンプル「1」で示す。
(2)VGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「2」で示す。
(3)IE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「3」で示す。
(4)p100のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「4」で示す。
(5)VPAPのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「5」で示す。
(6)pp65およびVGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「6」で示す。
(7)pp65およびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「7」で示す。
(8)VGLBおよびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「8」で示す。
(9)pp65、VGLBおよびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「9」で示す。
(10)pp65、VGLB、IE−1およびp100のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「10」で示す。
(11)pp65、VGLB、IE−1、p100およびVPAPのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「11」で示す。
【0067】
そのほか、以下のグループをコントロール群とした。
【0068】
(12)CFSE標識した末梢血単核細胞を単独で培養し、未刺激のコントロール群(no stimulation control)とした。サンプル「12」で示し、実験のバックグラウンド値とした。
(13)CFSE標識した末梢血単核細胞、およびC型肝炎ウイルスのコアウイルス(core protein of Hepatitis C virus)由来のペプチドプールを負荷した樹状細胞を共培養し、ネガティブコントロール群(Negative control)とした。サンプル「13」で示す。
【0069】
上述で刺激されたPBMCは、続いて「実験材料および方法」に示す方法の通り、抗原特異的細胞増殖(antigen−specific proliferation)および分析を行った。さらに「細胞内サイトカイン染色」分析を行い、得られた実験データから先にPBMCの数値を差し引き、図を作成した。
【0070】
結果は、図4に示す通りである。図4Aは、異なるペプチドプールの組合せによる刺激下での、細胞増殖の状態を示す。図4Bは、異なるペプチドプールの組合せで増殖した細胞を示し、これは、IFN−γの能力を表す。
【0071】
上述の結果から以下のことがわかる。(1)5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを単独で使用するとき、そのすべてにおいて反応がある。(2)pp65、VGLBおよびp100のような単一ポリペプチド由来のペプチドプールもまた、免疫応答を誘発することができる。(3)2種類以上のペプチドプールの組合せは、単一のペプチドプールで得られる結果より比較的良好である。(4)この5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールにおいて、pp65およびVGLBの2種類のペプチドプールの免疫応答は比較的強く、組み合わせると免疫応答は付加効果を有する。ペプチドプールの組合せは数が多いほど、付加効果は良好である。
【0072】
実施例2 異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールまたはその組合せによって、末梢血単核細胞(PBMC)が刺激される効果の分析−−−ELISpot分析法を利用
本実施例の目的は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せを利用して、末梢血単核細胞を刺激し、さらにELISpotを利用して、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せの、PBMCの細胞機能に対する影響を分析することにある。
【0073】
異なるドナーから分離されたばかりの末梢血単核細胞は、それぞれ「実験材料および方法」に記載の方法により得られた。以下に記載するグループにおいて、異なるペプチドの組合せによってPBMCを刺激し、培養して20時間刺激した。また「実験材料および方法」に記載のELISpot分析法を利用して、IFN−γの分析を行った。
【0074】
(1)pp65のペンタデカペプチドプール(CMV pentadecapeptides)であり、サンプル「1」で示す。
(2)VGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「2」で示す。
(3)IE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「3」で示す。
(4)pp65およびVGLBのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「4」で示す。
(5)pp65およびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「5」で示す。
(6)pp65、VGLBおよびIE−1のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「6」で示す。
(7)pp65、VGLB、IE−1およびp100のペンタデカペプチドプールであり、サンプル「7」で示す。
(8)pp65、VGLB、IE−1、p100およびVPAPのペンタデカペプチドプールであり、サンプル「8」で示す。
【0075】
結果は図5に示す通りである。pp65+VGLB[棒4(bar4)を参照]またはpp65+IE−1[棒5(bar5)を参照]は、PBMCを刺激してIFN−γを産生する効果について、pp65[棒1(bar1)を参照]より比較的顕著である。また、そのうちpp65+VGLB(棒4を参照)の刺激効果は、pp65+IE−1(棒5を参照)より優れている。複数種のCMVタンパク質由来のペプチドプールの組合せのグループの効果(棒6、7、8を参照)は、2種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含むグループ(棒4、5を参照)、またはpp65単独のグループ(棒1を参照)より、わずかに優れている。
【0076】
実施例3 CMVタンパク質由来のペプチドプールまたは組合せによって、PBMC各グループの細胞が刺激される増殖作用の分析
本実施例の目的は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せを利用してPBMCを刺激し、さらに異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せの、PBMC中のCD4+およびCD8+グループの細胞に対する増殖作用の影響を分析することにある。
【0077】
CFSE標識したPBMCは、それぞれ(1)HCMVA pp65のペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)であり、「pp65」で示し、(2)HCMVA pp65およびHCMVA IE−1の2つのペンタデカペプチドを含む混合プール(mixed pool)であり、HCMVA pp65ペプチドプールおよびHCMVA IE−1ペプチドプールを含み、「pp65/IE−1」で示し、(3)HCMVA pp65、HCMVA IE−1、HCMVA VPAP、HCMVA p100、HCMVT VGLBの5つのペンタデカペプチドプールを含む混合プールであり、「5pepmix」で示し、(4)非特異的ペンタデカペプチドプールであり、「WT−1」で示し、(5)抗CD3抗体であり、ポジティブコントロール群(positive control)とし、「anti−CD3」で示す、などを刺激物として、7日間培養を行った。また「実験材料および方法」に記載した方法のように、抗原特異的細胞増殖(antigen−specific proliferation)の分析を、特に、CD4+およびCD8+グループの細胞の増殖作用について行った。またCFSE標識したPBMCの単独培養を未刺激のコントロール群(no stimulation control)とし、「PBMC」と示す。
【0078】
結果は図6に示す通りである。各グループのCFSE希釈の細胞(CFSE−diluted cells)(つまり増殖細胞)の割合は、図6に明示する通りである。単一のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(pp65)、または2種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(pp65/IE−1)と比較して、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(5pepmix)は、PBMC中のCD4+またはCD8+グループの細胞に関わらず、すべて最高の増殖作用を誘発した。これは、この5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む組合せが、最も強い免疫原性(immunogenicity)を有することを示す。
【0079】
実施例4 各種のCMVタンパク質由来のペプチドプールまたは組合せによって刺激される末梢血単核細胞(PBMC)の機能性分析
本実施例は、異なるCMVタンパク質由来のペプチドプールおよびその組合せによって、異なる供給源からのPBMCの細胞を刺激し、さらにPBMCのサイトカイン分泌の状態を分析して、免疫機能を判定することにより、各種組合せの免疫原性を確定した。
【0080】
ドナー2人からのPBMCは、それぞれ(1)HCMVA pp65のペンタデカペプチドプール(CMV pentadecapeptides)であり、「pp65」で示し、(2)HCMVA pp65およびHCMVA IE−1の2つのペンタデカペプチドプールを含む混合プール(mixed pool)であり、HCMVA pp65ペプチドプールおよびHCMVA IE−1ペプチドプールを含み、「pp65/IE−1」で示し、(3)HCMVA pp65、HCMVA IE−1、HCMVA VPAP、HCMVA p100、HCMVT VGLBの5つのペンタデカペプチドプールを含む混合プールであり、「5pepmix」で示し、(4)非特異的ペンタデカペプチドプールであり、「WT−1」で示し、(5)抗CD3抗体であり、ポジティブコントロール(positive control)とし、「anti−CD3」で示す、などを刺激物として7日間培養を行った。さらに「実験材料および方法」に記載の方法のように、細胞内サイトカイン染色分析(intracellular cytokine staining、ICCS)を行い、各グループの細胞のIL−2およびIFN−γの発現に対して分析を行った。PBMC単独培養を未刺激のコントロール群(no stimulation control)とし、「PBMC only」と示す。
【0081】
図7AおよびBは、それぞれ異なる供給源のPBMCに関する、前述の試験で得られた結果を示す。そのうち各棒グラフは、図中に明示されるように、それぞれIL−2および/またはIFN−γを発現するPBMCを具体的に表す。結果を、単一のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む混合プール(pp65)、または2種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む混合プール(pp65/IE−1)と比較して述べると、該5種類のCMV抗原のペプチドプールを含む混合プール(5pepmix)は、PBMCを刺激し、細胞に対してIL−2および/またはIFN−γを発現する能力が最も優れている。これは、5種類のCMVタンパク質由来のペプチドプールを含む組合せが、最も強い免疫原性(immunogenicity)を有することを示す。
【0082】
実施例5 樹状細胞がPBMCを刺激することによる、CMV特異的免疫エフェクター細胞の産生
本実施例は、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プールを利用して処理した樹状細胞(DCs pulsed with the mixed pool of 5CMV pentadecapeptides)が、非接着性末梢血単核細胞(non−adherent PBMC)を刺激し、CMV特異的免疫エフェクター細胞が産生される効果について理解する。
【0083】
5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを含む混合プール(mixed pool)を使用して処理した樹状細胞、および非接着性末梢血単核細胞(non−adherent PBMC)(Tリンパ球の供給源とする)を、「実験材料および方法」に記載の方法を利用して調製し、共培養を行った(図3を参照)。共培養を15日間行い、DCにより活性化されたリンパ球(DC−activatedlymphocyte)を、それぞれ単一のCMVタンパク質由来のペプチドプール(pp65、IE−1、VGLB、VPAP、p100)またはこの5種類のペプチドプールの組合せを含む樹状細胞によって、5時間再刺激(re−stimulation)した。それと同時に、ホルボールミリスチン酸アセタートにイオノマイシンを加えて(PMA+Ionomycin)、DCにより活性化されたリンパ球を刺激し、ポジティブコントロール群とし、非特異的抗原(WT−1)で処理した相同な樹状細胞をコントロール群とした。再刺激されたリンパ球は、IFN−γ、IL−2およびTNF−αに対する細胞内サイトカイン染色(ICCS)と、脱顆粒作用の細胞標識CD107aに対する染色により、抗原特異的免疫エフェクター細胞の機能について、評価を行った。
【0084】
図8は、前記細胞内サイトカイン染色の結果である。IFN−γ、IL−2およびTNF−αなどのサイトカインと、CD107aの発現は、図8に明示する通りである。図9AおよびBは、図8の結果に基づき作成した棒グラフである。それぞれIL−2および/またはTNF−αを発現した細胞の全体に占める割合と、IFN−γおよび/またはCD107aを発現した細胞の全体に占める割合を示す。結果は、5種類のペプチドプールの組合せ(5pepmix)の刺激によって産生された活性化免疫細胞は、いずれか1つの単一のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールに対して、特異的応答(specific response)が生じ、そのうち、pp65およびVGLBの免疫応答が最も強いことを示した。5種類のペプチドプールの組合せで処理した樹状細胞で再刺激したグループは、免疫エフェクター細胞中で、最も高いサイトカイン産生をもたらすことができる。
【0085】
前記実施例の結果は、複数のCMVタンパク質由来(最高で5種類まで)のペンタデカペプチドプール(pentadecapeptides)を混合した組合せが、短時間の暴露でCD4+およびCD8+の2つのTリンパ球を同時に、効果的に活性化することができることを示した。CD4+およびCD8+のTリンパ球の抗原特異的増殖反応と、エフェクターサイトカイン(effector cytokine)の産生が顕著に向上した。これは、CMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールの組合せが、抗CMV免疫力を形成する、一種の効果的なワクチンまたは免疫療法とすることができることを示す。図6および図7に示すように、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールの組合せは、PBMC中のCD4+およびCD8+の細胞の増殖反応とサイトカイン合成を誘発することができる。単独および2種類を混合したCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールも免疫応答を刺激するが、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールの組合せは、最も強い抗原特異的免疫応答を生じることができる。免疫エフェクター細胞の機能は、数種類の免疫活性化サイトカインおよび脱顆粒作用の標識CD107aに対する多色フローサイトメトリーにより、分析評価を行った。図8および図9に示すように、単一または2種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールと比較すると、5種類のCMVタンパク質由来のペンタデカペプチドプールを混合した組合せ(5pepmix)は、エフェクターサイトカイン(effector cytokine)の産生、およびCD107aの脱顆粒化作用(degranulation)を誘発する上で、最も効果的であった。これは、5種類のCMVペプチドプールを混合した組合せが、一種の最も効果的なCMVワクチンまたは免疫原(immunogen)であることをさらに実証した。
【0086】
以上の記述は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明に対し、いかなる形式での制限も行わない。いかなる当業者も、本発明で提起した技術的特徴から逸脱しない範囲内において、本発明で開示された技術内容を利用し、部分的な変更または修飾を行った同等の実施例、さらに本発明から逸脱しない技術的特徴の内容は、すべて本発明の技術的特徴の範囲内に属するべきである。
【符号の説明】
【0087】
10 免疫原組成物
11 CMV pp65ペプチドプール
12 CMV IE−1ペプチドプール
13 CMV VGLBペプチドプール
14 CMV VPAPペプチドプール
15 CMV p100ペプチドプール
111 15量体ペプチド
112 15量体ペプチド
113 15量体ペプチド
20 免疫細胞
21 活性化された免疫細胞
30 リンパ球
31 免疫エフェクター細胞
40 個体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種の免疫細胞を活性化する方法であって、以下の
免疫細胞、およびサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物を混合し、細胞混合培養物を形成するステップと、
該細胞混合培養物を適当な培地で培養し、活性化した免疫細胞が得られるステップと、
を含み、そのうち該免疫原組成物が、
(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチド断片の少なくとも1つ、ならびに
(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチド断片と前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチド、
を含み、あるいは、
(c)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチドプールのうちの少なくとも1つ、ならびに
(d)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールと前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドプール、
を含み、あるいは、
(e)CMV VGLBポリペプチド由来のペプチド断片、
を含む、方法。
【請求項2】
該CMV pp65がSEQ ID NO:1と実質的に同じ配列を有し、該CMV IE−1がSEQ ID NO:2と実質的に同じ配列を有し、該CMV VGLBがSEQ ID NO:3と実質的に同じ配列を有し、該CMV VPAPがSEQ ID NO:4と実質的に同じ配列を有し、該CMV p100がSEQ ID NO:5と実質的に同じ配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
免疫原組成物が、CMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
免疫原組成物における、各ポリペプチド由来のペプチドプールの各ペプチドの長さが、12から18個のアミノ酸である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
免疫原組成物における、各ペプチドプールの2つの隣接するペプチドの配列が、10から15個の連続したアミノ酸残基の重複を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
免疫原組成物における、各ポリペプチド由来のペプチドプールが、ペンタデカペプチドプールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
免疫原組成物における、各ポリペプチド由来のペンタデカペプチドプールの、2つの隣接するペンタデカペプチドの配列が、11個の連続したアミノ酸残基の重複を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫原組成物が、さらに免疫促進剤を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該免疫細胞が、末梢血単核細胞、骨髄細胞、造血前駆細胞または幹細胞由来の樹状細胞である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該適当な培地がサイトカインを含み、該サイトカインが次に挙げるIL−2、IL−7、IL−15およびその組合せで構成される群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一種の免疫エフェクター細胞の産生を誘発する方法であって、以下の、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法で得られる、一種の活性化された免疫細胞および一種のリンパ球を提供するステップと、
該活性化された免疫細胞およびリンパ球を適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
該リンパ球が、非接着性の末梢血単核細胞由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該リンパ球が、Tリンパ球またはBリンパ球である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
一種の免疫エフェクター細胞の産生を誘発する方法であって、以下の、
請求項4に記載の方法で得られる、一種の活性化された免疫細胞および一種のリンパ球を提供するステップと、
該活性化された免疫細胞およびリンパ球を適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
該リンパ球が、非接着性の末梢血単核細胞由来である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該リンパ球が、Tリンパ球またはBリンパ球である、請求項14に記載の方法。
【請求項1】
一種の免疫細胞を活性化する方法であって、以下の
免疫細胞、およびサイトメガロウイルス由来のペプチドを含む免疫原組成物を混合し、細胞混合培養物を形成するステップと、
該細胞混合培養物を適当な培地で培養し、活性化した免疫細胞が得られるステップと、
を含み、そのうち該免疫原組成物が、
(a)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチド断片の少なくとも1つ、ならびに
(b)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチド断片と前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチド、
を含み、あるいは、
(c)CMV pp65およびCMV IE−1ポリペプチド由来のペプチドプールのうちの少なくとも1つ、ならびに
(d)次に挙げるCMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールと前述の任意の組合せで構成される群から選択されるペプチドプール、
を含み、あるいは、
(e)CMV VGLBポリペプチド由来のペプチド断片、
を含む、方法。
【請求項2】
該CMV pp65がSEQ ID NO:1と実質的に同じ配列を有し、該CMV IE−1がSEQ ID NO:2と実質的に同じ配列を有し、該CMV VGLBがSEQ ID NO:3と実質的に同じ配列を有し、該CMV VPAPがSEQ ID NO:4と実質的に同じ配列を有し、該CMV p100がSEQ ID NO:5と実質的に同じ配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
免疫原組成物が、CMV pp65、CMV IE−1、CMV VGLB、CMV VPAPおよびCMV p100ポリペプチド由来のペプチドプールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
免疫原組成物における、各ポリペプチド由来のペプチドプールの各ペプチドの長さが、12から18個のアミノ酸である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
免疫原組成物における、各ペプチドプールの2つの隣接するペプチドの配列が、10から15個の連続したアミノ酸残基の重複を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
免疫原組成物における、各ポリペプチド由来のペプチドプールが、ペンタデカペプチドプールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
免疫原組成物における、各ポリペプチド由来のペンタデカペプチドプールの、2つの隣接するペンタデカペプチドの配列が、11個の連続したアミノ酸残基の重複を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫原組成物が、さらに免疫促進剤を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該免疫細胞が、末梢血単核細胞、骨髄細胞、造血前駆細胞または幹細胞由来の樹状細胞である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該適当な培地がサイトカインを含み、該サイトカインが次に挙げるIL−2、IL−7、IL−15およびその組合せで構成される群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一種の免疫エフェクター細胞の産生を誘発する方法であって、以下の、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法で得られる、一種の活性化された免疫細胞および一種のリンパ球を提供するステップと、
該活性化された免疫細胞およびリンパ球を適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
該リンパ球が、非接着性の末梢血単核細胞由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該リンパ球が、Tリンパ球またはBリンパ球である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
一種の免疫エフェクター細胞の産生を誘発する方法であって、以下の、
請求項4に記載の方法で得られる、一種の活性化された免疫細胞および一種のリンパ球を提供するステップと、
該活性化された免疫細胞およびリンパ球を適当な培地で共培養し、免疫エフェクター細胞が得られるステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
該リンパ球が、非接着性の末梢血単核細胞由来である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該リンパ球が、Tリンパ球またはBリンパ球である、請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図8】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図8】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【公表番号】特表2012−530500(P2012−530500A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516468(P2012−516468)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000718
【国際公開番号】WO2010/148541
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511304372)ヴェクトライト バイオメディカ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(511304394)ベイジン シーティーエル バイオメディカ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000718
【国際公開番号】WO2010/148541
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511304372)ヴェクトライト バイオメディカ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(511304394)ベイジン シーティーエル バイオメディカ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]