説明

サイドエアバッグ装置の取付構造

【課題】 サイドエアバッグ装置を車体のルーフサイドレールへ取付ける取付部の上下幅を小さくし、かつエアバッグ膨張展開時に上記取付部に作用する力に対して取付部の強度を向上させること。
【解決手段】 エアバッグ袋体1にガスを注入するインフレータ2を設置する範囲ではエアバッグ袋体1を、その上縁に形成した筒状の支持部13でインフレータ2に支持せしめ、他の範囲では、エアバッグ袋体1を、その上縁に所定の間隔で形成した取付片12をルーフサイドレール4に締結することで支持せしめた。また支持部13はエアバッグ袋体1と一体の織り組織で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
折り畳まれた状態で車体のルーフサイドレールに沿って取付けられるサイドエアバッグ装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のサイドエアバッグ装置は、図5、図6に示すように、エアバッグ袋体1が上下に折り畳まれた状態で、車体のフロントピラー3からルーフサイドレール4にかけてこれらの車室側のパネル面に沿って配置され、エアバッグ袋体1はその上縁に沿って所定の間隔をおいて設けられた複数の締結用の取付片12によりルーフサイドレール4にネジ締め固定されている。また、エアバッグ袋体1の上縁には前後方向中間位置にガス導入部11が設けられ、これには緊急時にエアバッグ袋体1の内部へガスを送り込むインフレータ2が連結してある。インフレータ2は、エアバッグ袋体1とは別にブラケット21を用いてルーフサイドレール4に締結固定されている(例えば、特許文献1参照。)。図6中、5はルーフ、6は天井トリム、Nはネジ部材を示す。
【0003】
ところで、上記サイドエアバッグ装置の取付構造において、エアバッグ袋体1とインフレータ2との間隔Yは、ルーフサイドレール4の上下幅により制約され、幅の小さいルーフサイドレールでは間隔Yは狭くなる。この為、インフレータ2の設置範囲にあるエアバッグ袋体1の取付片12をねじ締めする工具等を間隔Yに挿入し難く、また挿入できない場合があり、エアバッグ装置の取付作業性がよくない。
【0004】
インフレータ2の設置範囲では、取付片12によるルーフサイドレール4への締結を省略することが考えられるが、インフレータ2からエアバッグ袋体1にガスを注入してエアバッグ袋体1を膨張展開するとき、エアバッグ袋体1の上縁部、特にガス導入部11に近いインフレータ2の下方ではエアバッグ袋体1の上縁部にこれを引き下げようとする力が作用し、この部分が取付片12により支持されていないと下方へ垂れ下がってしまうという問題がある。特に、ワゴン車等に設置される前後長の長いエアバッグ装置ではこの傾向が大きい。
【0005】
そこで下記特許文献2に記載されたように、エアバッグ袋体の上縁の前後中間部に、上記締結用の取付片の代わりに、エアバッグ袋体1の生地と同様な布材からなる連結支持片を縫着しておき、該連結支持片をルーフサイドレールに固定されたインフレータに連結して、インフレータによりエアバッグ袋体1の上縁の前後中間部を支持させることが提案されている。
【0006】
しかしながら、エアバッグ袋体に別体の連結支持片を縫着した構成では、両者の連結強度が十分とはいえない。連結支持片の縫着部はインフレータからのガス導入部が近いので、ガスの注入により下方へ引き下げる力が特に強く作用して、エアバッグ袋体と連結支持片との間の縫い目で破損するおそれがある。他に下記特許文献3,4に従来の袋織りのサイドエアバッグが記載されている。
【特許文献1】特開2004−175225号公報
【特許文献2】特開2003−306119号公報
【特許文献3】特開平10−236255号公報
【特許文献4】特開平11−208398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、上下平行に配設したエアバッグ袋体とインフレータとの上下寸法を小さくでき、取付作業性が良好で、かつエアバッグ袋体の膨張展開に対して取付け強度の高いサイドエアバッグ装置の取付構造を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、袋織りの織り組織で構成されたエアバッグ袋体を、折り畳んだ状態で車体のルーフサイドレールに沿って取付け、上記エアバッグ袋体の上縁の前後中間部に設けたガス導入部には、エアバッグ袋体の上縁と平行に上記ルーフサイドレールに固定されたインフレータを連結してなるサイドエアバッグ装置の取付構造において、上記エアバッグ袋体にはその上縁に、これに沿って延びる帯状で、エアバッグ袋体の織り組織を構成する織り糸で織り組織を製織して、前後中間部を筒状の袋部とした余剰部を一体に形成しておき、上記余剰部の袋部から、上記ガス導入部と、上記インフレータに対応する筒状の支持部をそれぞれ切り出し形成し、かつ上記余剰部の非袋部から、上記エアバッグ袋体の上縁に沿う複数個所に所定の間隔をおいて取付片を切り出し形成し、上記支持部の筒内へ上記インフレータを挿通せしめ、上記各取付片をルーフサイドレールに締結せしめる(請求項1)。エアバッグ袋体の上縁に設けた支持部を車体のルーフサイドレールに固定されたインフレータに支持せしめたので、インフレータの設置範囲において、エアバッグ袋体の上縁を取付片により車体へ固定しなくても、エアバッグ袋体の膨張展開時にエアバッグ袋体の上縁の垂れ下りを防ぐ。特に支持部はエアバッグ袋体と一体の織り組織で形成した余剰部の袋部から切り出して形成したので、エアバッグ袋体との間に縫い合わせ部がなく、エアバッグ袋体の膨張展開時に破損するおそれが少ない。
【0009】
上記インフレータは、その前後中間位置が上記支持部に挿通され、上記インフレータの前端位置および後端位置にそれぞれ、インフレータを包持せしめる筒部と、該筒部から下方へ突出する締結片部を一体に成形したブラケットが取付けられて、上記両ブラケットの上記締結片部を上記ルーフサイドレールに締結し、これらの締結部に上記エアバッグ袋体が側面視で重なるように配した(請求項2)。ルーフサイドレールへのインフレータの締結部をインフレータの下側に設け、締結部にエアバッグ袋体を側面視で重なるように配したので、エアバッグ袋体とインフレータの取付スペースが上下寸法を小さくでき、上下幅の比較的狭いルーフサイドレールにも対応できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エアバッグ袋体の上縁に筒状の支持部を一体に形成し、支持部を車体に固定されたインフレータに支持せしめたので、上下平行に配設したエアバッグ袋体とインフレータとの上下寸法を小さくでき、取付作業性が良好で、かつエアバッグ袋体の膨張展開に対する取付強度を強化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示すように、本実施形態のサイドエアバッグ装置は、上下方向に折り畳んだ状態で、車体のルーフサイドレール4の室内側の側面に沿って前後方向に延びるエアバッグ袋体1と、該エアバッグ袋体1の上縁の前後中間の前寄りの位置に設けたガス導入部11に連結してエアバッグ袋体1にガスを注入するインフレータ2とを備えている。サイドエアバッグ装置は、車両衝突等で車体に大きな衝撃がかかると、インフレータ2からエアバッグ袋体1にガスが注入されてエアバッグ袋体1が車室側面に沿ってカーテン状に膨張展開して前後の座席に着座した乗員を側方より保護する。図1中、19はエアバッグ袋体1の前端に縫着されたテンションクロスで、フロントピラー3に沿って収納され、展開時にはエアバッグ袋体1の展開位置を保持する。40は車体のセンターピラーである。
【0012】
エアバッグ袋体1は袋織りの布製で、図1ないし図3に示すように、前後方向に長方形状をなし、その上端部に前後方向に延びる袋状のガス通路部15が形成してある。さらにガス通路部15に連通してガス通路部15から下方へ縦方向に延びる複数の袋状の膨張部16が形成してある。エアバッグ袋体1の表面には全体に気密保持用のコーティングが施してある。
【0013】
エアバッグ袋体1の上縁には、前後方向中間部の前寄りの位置にガス導入部11が設けてある。ガス導入部11は、エアバッグ袋体1の上縁より上方かつ後方へ向けてほぼ逆L字状に突設して、ガス通路部15へ連通する筒状のガスの通路を構成しており、該通路の端末は後方へ向けて開口してあり、インフレータ2の先端に設けたディフューザ20を挿通可能としてある。。
【0014】
またエアバッグ袋体1の上縁には支持部13を備えている。支持部13は、ガス導入部11から所定の間隔をおいた後方位置で、エアバッグ袋体1の上縁の前後方向ほぼ中央位置となるように設けてある。支持部13は、エアバッグ袋体1の上縁から上方へ突出し、上記インフレータ2に対応して、これを挿通可能な前後方向の筒状をなす。エアバッグ袋体1の上縁から支持部13の筒状部までの距離はインフレータ2の挿通に支障のない範囲で極力小さくしてある(例えば7mm程度)。
【0015】
更にエアバッグ袋体1の上縁には、ガス導入部11の前方位置、および支持部13の後方位置にそれぞれ、所定の間隔をおいて複数の取付片12が形成してある。各取付片12はエアバッグ袋体1の上縁より上方へ角形に突出する舌片状で、ガス導入部11や支持部13よりも小型の四角形状をなす。各取付片12の中央にはネジ部材を挿通せしめる貫通穴が形成してある。
【0016】
これらガス導入部11、支持部13および取付片12は、予め、エアバッグ袋体1の上縁に、エアバッグ袋体1の織り組織を構成する織り糸で織り組織を製織した余剰部10(図3の仮想線)を一体に形成しておき、余剰部10から切り出すことにより形成してある。
【0017】
余剰部10には前後中間位置に、エアバッグ袋体1のガス通路部15と平行に延びる筒状の袋部101が形成してあり、該袋部101の一端(図の向かって左側)は下方へほぼL字状に屈曲してガス通路部15と連通している。そしてガス導入部11および支持部13は、余剰部10の前後中間部分からガス導入部11および支持部13となるべき部分を除き、不必要部分を切除することにより形成してある。各取付片12は、余剰部10の非袋部102から不必要部分を切除して形成してある。
【0018】
図1、図2ないし図4に示すように、このように構成したエアバッグ袋体1には、筒状の支持部13にインフレータ2を挿通せしめ、かつインフレータ2の先端のディフューザ20をガス導入部11に挿入せしめてエアバッグ袋体1とインフレータ2とを連結する。このとき、インフレータ2はその前後中間位置が支持部13に挿置される。インフレータ2のディフューザ20と連結したガス導入部11はその開口を結束バンドやクランプ等で締めつけて気密性を確保する。
【0019】
次に、インフレータ2には支持部13の挿置位置よりも前側位置および後側位置にそれぞれブラケット21,21を取付ける。両ブラケット21は同一構造で金属板の曲げ成形品からなり、インフレータ2の外周を包持せしめる筒部211と、筒部211から下方へ突出する締結片部212とが一体に形成してある。前後のブラケット21,21は筒部211でインフレータ2の前端外周および後端外周を包持し、ネジ部材Nにより仮止めしておく。尚、一方のブラケット21はインフレータ2をエアバッグ袋体1に連結する前に予めインフレータ2に溶接しておいてもよい。
【0020】
そして、図4に示すように、インフレータ2を、インナパネル41とアウタパネル42とで閉断面をなすルーフサイドレール4のインナパネル41からなる車室側面の上半部側に沿って配し、前後の両ブラケット21,21の各締結片部212をそれぞれ上記ルーフサイドレール4の車室側面の下半部側に重ね合わせる。この場合、インフレータ2とこれに支持部13を介して支持せしめたエアバッグ袋体1とが接近しており、エアバッグ袋体1が両ブラケット21の各締結片部212の車内側の位置に重なるので、エアバッグ袋体1を上方に持ち上げておき(図4の仮想線)、この状態で両ブラケット21,21の各締結片部212をそれぞれネジ部材Nによりルーフサイドレール4の車室側面にねじ締め固定する。これによれば、エアバッグ袋体1が邪魔にならず、インフレータ2の締結作業が容易にできる。
【0021】
インフレータ2をルーフサイドレール4に固定した後、エアバッグ袋体1を元の位置に戻して、図1、図2に示すように、ルーフサイドレール4の上記車室側面の下半部側に沿って配し、かつインフレータ2の上記締結部に側面視で重なるように配した状態で、エアバッグ袋体1の上縁に設けた複数の取付片12をそれぞれ、ルーフサイドレール4の上記車室側面の上半部側にねじ締め固定する。上記テンションクロス19はその前端がフロントピラー3にねじ締めしてある。尚、エアバッグ袋体1およびインフレータ2はルーフパネル5、ルーフサイドレール4と一体に車室の天井を構成するガーニッシュ6(ルーフヘッドライニング)で被覆される。
【0022】
本実施形態によれば、インフレータ2の設置範囲において、エアバッグ袋体1の上縁は、支持部13を介して車体側に固定したインフレータ2に支持され、取付片12を設けて支持させる必要がないから、インフレータ2とエアバッグ袋体1の上縁の間隔を小さくすることができる。また支持部13や取付片12は、エエアバッグ袋体1と一体の余剰部10から切り出し形成したので、エアバッグ袋体1の構造が簡素で生産性がよい。また、エアバッグ袋体1と支持部13は一連の製織体であるから縫い合わせ部がなく、エアバッグ袋体1の膨張展開時に破損が生じるおそれは少ない。
【0023】
また、インフレータ2の下側に設けた車体への締結部にエアバッグ袋体1を側面視で重ねるように配したので、エアバッグ袋体1を支持部13によりインフレータ2に支持させることと相まって、エアバッグ袋体1とインフレータ2の取付スペースの上下寸法を小さくでき、上下幅の比較的狭いルーフサイドレール4にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のサイドエアバッグ装置の取付構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う位置での拡大縦断面図である。
【図3】上記サイドエアバッグ装置に用いるエアバッグ袋体の側面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う位置での拡大縦断面図である。
【図5】従来のサイドエアバッグ装置の取付構造を示す概略側面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う位置での縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 エアバッグ袋体
10 余剰部
101 袋部
102 非袋部
11 ガス導入部
12 取付片
13 支持部
2 インフレータ
21 ブラケット
211 筒部
212 締結片部
4 ルーフサイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋織りの織り組織で構成されたエアバッグ袋体を、折り畳んだ状態で車体のルーフサイドレールに沿って取付け、上記エアバッグ袋体の上縁の前後中間部に設けたガス導入部には、エアバッグ袋体の上縁と平行に上記ルーフサイドレールに固定されたインフレータを連結してなるサイドエアバッグ装置の取付構造において、
上記エアバッグ袋体にはその上縁に、これに沿って延びる帯状で、エアバッグ袋体の織り組織を構成する織り糸で織り組織を製織し、前後中間部を筒状の袋部とした余剰部を一体に形成しておき、
上記余剰部の袋部から、上記ガス導入部と、上記インフレータに対応する筒状の支持部をそれぞれ切り出し形成し、かつ上記余剰部の非袋部から、上記エアバッグ袋体の上縁に沿う複数個所に所定の間隔をおいて取付片を切り出し形成し、
上記支持部の筒内へ上記インフレータを挿通せしめ、上記各取付片をルーフサイドレールに締結せしめたことを特徴とするサイドエアバッグ装置の取付構造。
【請求項2】
上記インフレータは、その前後中間位置が上記支持部に挿通され、上記インフレータの前端位置および後端位置にそれぞれ、インフレータを包持せしめる筒部と、該筒部から下方へ突出する締結片部を一体に成形したブラケットが取付けられて、
上記両ブラケットの上記締結片部を上記ルーフサイドレールに締結固定し、
これら締結固定部に上記エアバッグ袋体が側面視で重なるように配した請求項1に記載のサイドエアバッグ装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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