説明

サウンドマスキング設備

【課題】天井板の直下で部屋と部屋とを連通させているような状況の下で、隣の部屋で発生する会話や物音等が此方に聞こえ伝わるのを有効に抑制する。
【解決手段】天井板5の下方に配置されフロアを複数の部屋R1、R2に区画するとともに天井板5との間に欄間空間7を形成する間仕切1と、天井板5の上方に敷設され間仕切1によって区画される複数の部屋R1、R2に対してサウンドマスキング用の音声Sを出力するサウンドマスキング用音源2と、天井板5における欄間空間7に対応する部位に設けられ会話や物音等の騒音を吸音する吸音材3とを具備するサウンドマスキング設備を構成した。吸音材3は、天井板5に当たって反射する等して欄間空間7を経由し一の部屋R1/R2から他の部屋R2/R1へと伝わる騒音を吸音、低減する。これにより、サウンドマスキングシステム単体で用いる場合と比較して、隣の部屋の会話や物音等の了解度が低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアを複数の部屋に区画して使用する際に、隣の部屋の会話や物音等が此方に聞こえ伝わるのを抑制するサウンドマスキング設備に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル等にあって、フロアを間仕切によって複数の部屋に区画することはしばしば行われており、そのための間仕切も各種市場に流通している。例えば、下記非特許文献1に記載の間仕切は、複数の部屋で照明灯を共用するべく、最上部に透明なガラス板またはアクリル板を嵌め込むことのできる欄間を設けているものである。この間仕切を用いるにあたり、複数の部屋で空調装置や防火用スプリンクラ等をも共用したい場合には、欄間に透明板を嵌め込まずこれを開通させておけばよい。
【0003】
欄間を介して部屋と部屋とを連通させていると、隣接する部屋間で会話や物音が漏れ伝わりやすくなり、それがうるさく感じられたり、あるいは、プライバシーまたは情報セキュリティの防護に差し障ったりするおそれがある。このような問題を緩和ないし解消するための手段として、マスキング効果及びカクテルパーティ効果を応用したサウンドマスキングシステムが開発されている。下記非特許文献2に記載のシステムは、部屋の天井裏に数m間隔で設置したスピーカからピンクノイズやホワイトノイズ等のマスキング音を放射して騒音をマスキングするものである。
【非特許文献1】“プランナーウォールAPシリーズ”,コクヨ総合カタログ2008年版ファニチャー編,コクヨ株式会社,平成19年12月,p.231
【非特許文献2】“サウンドマスキングシステム”,コクヨ総合カタログ2008年版ファニチャー編,コクヨ株式会社,平成19年12月,p.223
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上掲のサウンドマスキングシステムを採用したとしても、なおその効果が不十分であることがある。
【0005】
本発明は、天井板の直下で部屋と部屋とを連通させているような状況の下で、隣の部屋で発生する会話や物音等が此方に聞こえ伝わるのを有効に抑制することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、天井板の上方または天井板近傍に敷設され天板の下方に配置された間仕切によって区画されている複数の部屋に対してサウンドマスキング用の音声を出力するサウンドマスキング用音源と、前記天井板における当該天井板と前記間仕切との間に形成される欄間空間に対応する部位に設けられ会話や物音等の騒音を吸音する吸音材とを具備するサウンドマスキング設備を構成した。ここで、間仕切とは、全高が天井近傍に達するハイパーティション、全高が天井よりも低いローパーティションの双方を包括した概念である。また、欄間空間とは、一の部屋を他の部屋から遮蔽する間仕切の面板の上縁と天井板との間に存在してそれら部屋同士を連通する空間をいう。ハイパーティションの最上部の面板を取り外して開通させた欄間、ローパーティションの上縁と天井板との間の空隙は、ともに欄間空間である。
【0007】
本発明によれば、天井板に当たって反射する等して欄間空間を経由し一の部屋から他の部屋へと伝わる騒音を吸音、低減することができる。従って、サウンドマスキングシステム単体で用いる場合と比較して、隣の部屋の会話や物音等の了解度がより低下する。
【0008】
吸音材は、騒音だけでなくマスキング音をも吸音し得る。であるから、前記天井板において、前記欄間空間に対応する部位にのみ吸音材が設けられており、欄間空間から部屋の内方に偏倚した部位に吸音材が設けられていない領域が存在していることが好ましい。さすれば、マスキング音が当該領域を通過して部屋に伝搬することができ、吸音材の存在によるサウンドマスキング効果の損失が回避される。これにより、音源から出力するマスキング音のパワーが高くなくとも、十分なサウンドマスキング効果を得られる。
【0009】
前記間仕切の内部にもサウンドマスキング用音源が実装されていれば、部屋の内におけるサウンドマスキング効果が補強される。
【0010】
並びに、前記欄間空間に対向した壁に設けられ会話や物音等の騒音を吸音する吸音材をさらに具備していれば、欄間空間を通過した騒音をこの吸音材によって吸音でき、隣の部屋の会話や物音等の了解度がさらに低下する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、天井板の直下で部屋と部屋とを連通させているような状況の下で、隣の部屋で発生する会話や物音等が此方に聞こえ伝わるのを有効に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態のサウンドマスキング設備は、天井板5の下方に配置されフロアを複数の部屋R1、R2に区画するとともに天井板5との間に欄間空間7を形成する間仕切1と、天井板5の上方即ち天井裏に敷設され間仕切1によって区画される複数の部屋R1、R2に対してサウンドマスキング用の音声Sを出力するサウンドマスキング用音源2と、天井板5における欄間空間7に対応する部位に設けられ会話や物音等の騒音を吸音する吸音材3とを構成要素とする。
【0013】
間仕切1は、最上部の面板を外して欄間7を開通させたハイパーティション、または全高が低く天井板5との間に空隙7を生ずるローパーティションである。図示例では、対向する壁面6間のフロアを二つの部屋R1、R2に区切っている。
【0014】
サウンドマスキング用音源2は、他人の会話や作業に伴って発生する物音、各種機器の作動音等をマスキングする効果のある音Sを放射するスピーカを主体とする。好適なマスキング音Sはピンクノイズ(少なくとも可聴域にて、パワーが周波数に反比例する傾向を有した雑音)、ホワイトノイズ(少なくとも可聴域にて、パワーが周波数によらず略均一な傾向を有した雑音)等であるが、これらノイズに鳥の囀りのような環境音やバックグランドミュージックを重畳した音Sを出力しても構わない。スピーカ2は、一部屋につき少なくとも一基設置する。各スピーカ2は、当該スピーカ2を介して出力する音声Sを再生するための図示しない音響再生装置、即ちオーディオ機器やパーソナルコンピュータ等と接続している。本実施形態にあって、スピーカ2は、上向きにマスキング音Sを発する。そのマスキング音Sは、一旦建築スラブに当たって反射し、天井板5の下方の部屋R1、R2の広範囲に拡散する。
【0015】
吸音材3は、欄間空間7を経由して部屋R1、R2間を伝わる騒音を吸音、低減する役割を担う。吸音材3は、例えばロックウール、グラスウール、ウレタン発泡材等を素材とする。この吸音材3は、間仕切1の延伸方向に沿って拡張している。騒音の吸音という意味では、吸音材3を幅広く設けた方が効果が高い。一方で、スピーカ2が天井板5の上に存在していることから、吸音材3を大きくし過ぎるとマスキング音Sの部屋R1、R2内への伝搬を遮ってしまう。そこで、本実施形態では、間仕切1の面板に面する壁6付近に着席姿勢で所在する人H1が欄間空間7を介して見通すことのできる天井板5の幅L1、または、間仕切1の面板に面する壁付近6に立位姿勢で所在する人H2が欄間空間7を介して見通すことのできる天井板5の幅L2に相当する寸法分だけ、吸音材3を間仕切1の直上から部屋R1、R2の内方(換言すれば、間仕切1の面板の法線方向)に向かって広げている。幅寸L1、L2をこのように設定することで、一方の部屋R1/R2から天井板5に当たって反射する等して他方の部屋R2/R1へと伝わる騒音を吸音するのに必要十分な面積の吸音材3を設けることができる。幅寸L1、L2は、部屋R1、R2の大きさや天井の高さ等にもよるが、一般的には600mmないし1000mmである。
【0016】
加えて、本実施形態では、壁6における欄間空間7に対向した部位にも吸音材4を設けている。尤も、この吸音材4は必須でない。
【0017】
本実施形態のサウンドマスキング設備によれば、天井板5に当たって反射する等して欄間空間7を経由し一の部屋R1/R2から他の部屋R2/R1へと伝わる騒音を吸音材3、4が吸音し低減するので、サウンドマスキングシステム単体で用いる場合と比較して、隣の部屋の会話や物音等の了解度が大いに低下する。
【0018】
前記天井板5において、前記欄間空間7に対応する部位にのみ吸音材3が設けられており、欄間空間7から部屋R1、R2の内方に偏倚した部位に吸音材3が設けられていない領域が存在しているため、音源2から発せられたマスキング音Sが当該領域を通過して適確に部屋R1、R2に伝搬する。つまり、吸音材3の存在によるサウンドマスキング効果の損失が回避される。従って、音源2から出力するマスキング音Sのパワーが高くなくとも、十分なサウンドマスキング効果を得られる。
【0019】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。図3に示す例では、上向きにではなく下向きにマスキング音Sを放射するスピーカ2を、天井板5の上方または近傍に設置している。
【0020】
また、図4に示す例では、天井板5において、吸音材3を、欄間空間7に対応する部位のみならず、天井板5の広い面積に亘って設けている。そして、吸音材3の一部に穴を開け、下向きにマスキング音Sを放射するスピーカ2を、その穴に差し入れるか(スピーカ2の振動板を)対面させるようにして天井板5近傍に設置している。上向きにマスキング音Sを放射するスピーカ2を天井裏に設置した場合、天井裏に既設のダクト等の影響によって部屋R1、R2の内にマスキング音Sが十分に伝わらないことがある。部屋R1、R2が狭い等の理由で、スピーカ2を吸音材3から離れた位置に置くことができないケースもある。図3または図4に示す構成をとれば、これらの支障を回避可能である。
【0021】
図5に示す例では、サウンドマスキング用音源たるスピーカ8を間仕切1の内部にも実装している。間仕切1の内部は空洞であり、スピーカ8はその空洞内にあって下向きにマスキング音Sを放射する。間仕切1の空洞は間仕切1の下端部において外部に連通しており、マスキング音Sは間仕切1の下端部から部屋R1、R2の内に拡散する。空洞におけるスピーカ8よりも上方に位置する領域には、吸音材9を充填している。
【0022】
また、図5に示す例では、欄間空間7に対応する部位に吸音材3を設けるにあたり、天井板5の下表面に吸音材3を装着するのではなく、天井板5の一部に穴を開けてそこに吸音材3を埋め込んでいる。あるいは、欄間空間7に対応する部位の天井板5を、普通の天井板5から吸音材3を含有した吸音天井板に置き換えるようにしてもよい。
【0023】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態のサウンドマスキング設備を示す斜視図。
【図2】同サウンドマスキング設備を示す正断面図。
【図3】本発明の変形例の一を示す正断面図。
【図4】本発明の変形例の一を示す正断面図。
【図5】本発明の変形例の一を示す正断面図。
【符号の説明】
【0025】
1…間仕切
2…サウンドマスキング用の音源
3、4…吸音材
5…天井板
6…壁
7…欄間空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井板の上方または天井板近傍に敷設され、天板の下方に配置された間仕切によって区画されている複数の部屋に対してサウンドマスキング用の音声を出力するサウンドマスキング用音源と、
前記天井板における、当該天井板と前記間仕切との間に形成される欄間空間に対応する部位に設けられ、会話や物音等の騒音を吸音する吸音材と
を具備するサウンドマスキング設備。
【請求項2】
天井板の下方に配置され、フロアを複数の部屋に区画するとともに天井板との間に欄間空間を形成する間仕切と、
前記天井板の上方または天井板近傍に敷設され、前記間仕切によって区画される複数の部屋に対してサウンドマスキング用の音声を出力するサウンドマスキング用音源と、
前記天井板における少なくとも前記欄間空間に対応する部位に設けられ、会話や物音等の騒音を吸音する吸音材と
を具備するサウンドマスキング設備。
【請求項3】
前記間仕切の内部にもサウンドマスキング用音源が実装されている請求項1記載のサウンドマスキング設備。
【請求項4】
前記天井板において、前記欄間空間に対応する部位にのみ吸音材が設けられており、欄間空間から部屋の内方に偏倚した部位に吸音材が設けられていない領域が存在している請求項1、2または3記載のサウンドマスキング設備。
【請求項5】
前記欄間空間に対向した壁に設けられ、会話や物音等の騒音を吸音する吸音材をさらに具備する請求項1、2、3または記載のサウンドマスキング設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−31501(P2010−31501A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193235(P2008−193235)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(508196612)コクヨエンジニアリング&テクノロジー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】